説明

熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法及びその原料ポリカーボネートオリゴマー組成物

【課題】 優れた耐熱性、耐熱老化性、耐水性、耐光性及び低温特性等を兼備し、かつ成形時にブロック性保持性に優れ、押出成形性やブロー成形時にドローダウンしにくいなど成形性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマーの経済的な製造方法とその原料ポリカーボネートオリゴマー組成物を提供すること。
【解決手段】 芳香族ジカルボン酸と脂肪族又は脂環族ジオールとから構成されたポリエステルからなるハードセグメント、及び、主として脂肪族ポリカーボネートからなるソフトセグメントが結合されてなる熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法であって、末端基の比率が10%以上の末端アルキルカーボネート基もしくは末端アリールカーボネート基を有するポリカーボネートオリゴマーを原料として、当該ポリカーボネートオリゴマーとポリエステルハードセグメントとのエステル交換反応を行って熱可塑性ポリエステルエラストマーを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法及びその製造に用いるのに好適な原料ポリカーボネートオリゴマー組成物に関する。詳しくは、耐熱性、耐光性、耐熱老化性、耐水性(耐水老化性ともいう)、低温特性等に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマー、特に、繊維、フイルム、シートをはじめとする各種成形材料に用いることのできる熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法とその原料ポリカーボネートオリゴマー組成物に関する。さらに詳しくは、弾性糸及びブーツ、ギヤ、チューブ、パッキンなどの成形材料に適し、例えば、自動車、家電部品などの耐熱老化性、耐水性、低温特性及び耐熱性等が要求される用途、例えば、ジョイントブーツや、電線被覆材などに有用な熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法とその原料ポリカーボネートオリゴマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリエステルエラストマーとしては、以前よりポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)をはじめとする結晶性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)などのポリオキシアルキレングリコール類及び/又はポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンアジペート(PBA)などのポリエステルをソフトセグメントとするものなどが知られ、実用化されている(例えば、特許文献1、2)。
【特許文献1】特開平10−17657号公報
【特許文献2】特開2003−192778号公報
【0003】
しかしながら、ソフトセグメントにポリオキシアルキレングリコール類を用いたポリエステルポリエーテル型エラストマーは、耐水性及び低温特性には優れるものの耐熱老化性に劣ることが、また、ソフトセグメントにポリエステルを用いたポリエステルポリエステル型エラストマーは、耐熱老化性に優れるものの、耐水性及び低温特性に劣ることが知られている。
【0004】
上記欠点を解決することを目的として、ソフトセグメントにポリカーボネートを用いたポリエステルポリカーボネート型エラストマーが提案されている(例えば、特許文献3〜8参照)。
【特許文献3】特公平7−39480号公報
【特許文献4】特開平5−295049号公報
【特許文献5】特開平6−306202号公報
【特許文献6】特開平10−182782号公報
【特許文献7】特開2001−206939号公報
【特許文献8】特開2001−240663号公報
【0005】
上記の課題は解決されるが、これらの特許文献において開示されているポリエステルポリカーボネート型エラストマーは、原料に用いられるポリカーボネートジオールの分子量が小さい等の理由で、得られるポリエステルポリカーボネート型エラストマーはブロック性の保持性(以下、単にブロック性保持性と称することもある)が劣るためポリエステルポリカーボネート型エラストマーの融点が低くなるという課題に繋がるので、例えば、上記したジョイントブーツや電線被覆材の場合に、自動車のエンジン周り等の高温環境下で使用される用途においては耐熱性の不足が問題となることがある。上記特許文献4、7及び8においては、ポリエステル成分としてナフタレート骨格を導入することにより高融点化できることが開示されているが、ナフタレート骨格の導入は高価になるので、安価なテレフタレート骨格を有したポリエステル成分での高融点化が望まれている。
【0006】
一方、上記特許文献7および8において、ハードセグメントを形成するポリエステル成分とソフトセグメントを形成するポリカーボネートジオール成分とを溶融状態で反応させてブロックポリマーを形成した後に鎖延長剤で高分子量化する製造方法が開示されている。該製造方法はブロックポリマーの分子量を増大させる方法としては有効な方法であるが、上記のブロック性やブロック性保持性は、主としてブロックポリマーを形成する過程の反応の支配を大きく受けるために、該ブロックポリマーを形成した後に鎖延長剤で高分子量化する方法ではブロック性やブロック性保持性を向上させることは困難である。
【0007】
これを解決するために、芳香族ジカルボン酸と脂肪族又は脂環族ジオールとから構成されたポリエステルと分子量5000〜80000の脂肪族ポリカーボネートジオールとを溶融状態で反応させて製造することが提案されている。
【特許文献9】国際公開第2007/072748号パンフレット
【特許文献10】特開2001-240663号公報
【特許文献11】国際公開第95/27749号パンフレット
【0008】
上記問題は解決されるが、これらの特許文献において開示されているポリエステルポリカーボネート型エラストマーは、原料に用いられる分子量5000以上のポリカーボネートは市場では求め難く、また、調達できても高分子量のポリカーボネートは融解温度が高く、粘度も高いため原料としての仕込み時の作業性が極端に悪く、実用に供さない。
また、高分子量のポリカーボネートジオールとハードセグメントを構成するポリエステルとエステル交換反応を行なう場合も、ポリカーボネートジオールの炭酸エステル結合も並行してエステル交換反応に関与し、各炭酸エステル基のエステル交換反応速度が同一であるためランダムにエステル交換反応が起こり、この結果、形成されるソフトセグメントの分子量の規則性、及びハードセグメントとの順列に起因するブロック性のコントロールが困難であり、高性能の熱可塑性エステルエラストマーを常に安定して得がたく実際に商品化するのに困難を伴う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の熱可塑性ポリエステルエラストマーの有する問題点に鑑み、優れた耐熱性、耐熱老化性、耐水性(耐水老化性ともいう)、耐光性及び低温特性等を兼備し、かつ成形時にブロック性保持性に優れ、押出成形性やブロー成形時にドローダウンしにくいなど成形性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマーの経済的な製造方法及びその原料であるポリカーボネートオリゴマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法は、請求項1記載の通り、芳香族ジカルボン酸と脂肪族又は脂環族ジオールとから構成されたポリエステルからなるハードセグメント、及び、主として脂肪族ポリカーボネートからなるソフトセグメントが結合されてなる熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法であって、末端基の比率が10%以上の末端アルキルカーボネート基もしくは末端アリールカーボネート基を有するポリカーボネートオリゴマーを用いて、当該ポリカーボネートオリゴマーとポリエステルハードセグメントとのエステル交換反応を行なうことを特徴とする。
また、請求項2記載の熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法は、請求項1記載の製造方法において、前記ポリカーボネートオリゴマーとして末端基の比率が15%以上の末端アルキルカーボネート基もしくは末端アリールカーボネート基を有するポリカーボネートオリゴマーを用いることを特徴とする。
また、請求項3記載の熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法は、請求項1又は2記載の製造方法において、前記ポリカーボネートオリゴマーの数平均分子量が1000〜5000であることを特徴とする。
また、請求項4記載の熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法は、請求項1乃至3の何れかに記載の製造方法において、前記ハードセグメントを構成するポリエステルの数平均分子量が10000〜40000であることを特徴とする。
また、本発明の原料ポリカーボネートオリゴマー組成物は、請求項5記載の通り、芳香族ジカルボン酸と脂肪族又は脂環族ジオールとから構成されたポリエステルからなるハードセグメント、及び、主として脂肪族ポリカーボネートからなるソフトセグメントが結合されてなる熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造に用いる原料ポリカーボネートオリゴマー組成物であって、末端基の比率が10%以上の末端アルキルカーボネート基もしくは末端アリールカーボネート基を有するポリカーボネートオリゴマーを含むことを特徴とする。
また、請求項6記載の原料ポリカーボネートオリゴマー組成物は、請求項5記載の組成物において、前記ポリカーボネートオリゴマーとして末端基の比率が15%以上の末端アルキルカーボネート基もしくは末端アリールカーボネート基を有するポリカーボネートオリゴマーを含むことを特徴とする。
また、請求項7記載の原料ポリカーボネートオリゴマー組成物は、請求項5又は6記載の組成物において、前記ポリカーボネートオリゴマーの数平均分子量が1000〜5000であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、ポリカーボネートセグメントをソフトセグメントとする熱可塑性ポリエステルエラストマーを安定してかつ短時間に低コストで製造することを可能にする。
本発明によって得られる熱可塑性ポリエステルエラストマー及びその組成物は耐熱性が良好であり、かつ耐熱老化性、耐水性及び低温特性等に優れているというポリエステルポリカーボネート型エラストマーの特徴を維持した上で、用いるポリカーボネートオリゴマーの末端炭酸エステル基と分子内炭酸エステル基の反応速度の差により、短時間に高分子量のポリカーボネートソフトセグメントを導入することを可能にし、熱可塑性ポリエステルエラストマーのブロック性が大幅に改善される。ブロック性が高いことにより高融点が得られ、耐熱性が向上し、硬度、引張強度、弾性率などの機械的性質が向上する。また、ブロック性保持性の改善により、成型加工時におけるブロック性の変動が抑制されるので成型製品の品質の均一性を高めることができる。また、該特性により、リサイクル性が高められるので環境負荷やコスト低減に繋げることができる。本発明で得られる熱可塑性ポリエステルエラストマーは、上記した優れた特性及び利点を有するので、繊維、フイルム、シートをはじめとする各種成形材料に用いることができる。また、弾性糸及びブーツ、ギヤ、チューブ、パッキンなどの成形材料にも適しており、例えば、耐熱老化性、耐水性、低温特性が要求される自動車、家電部品などの用途、具体的には、ジョイントブーツや、電線被覆材などの用途に有用である。特に、自動車のエンジン周りに使用されるジョイントブーツや、電線被覆材などの高度な耐熱性が要求される部品用の材料として好適に用いることができる。
また、本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーの方法は、複雑な工程を必要とせず、安易な条件で上記特性を有した高品質な熱可塑性ポリエステルエラストマーを経済的に、かつ安定して製造できるという利点を有する。
さらに、本発明のポリエステルエラストマー用原料のポリカーボネートオリゴマー組成物は、末端基が選択的反応性を有する他に、低粘度でかつ溶融温度が低いという特徴を有する。このため、従来の高分子量ポリカーボネートジオールが、高粘度・高融点のため不可能であった、製造後一旦製品タンクやコンテナー及びドラムカン・石油カン等に充填し、後にポリエステルエラストマー合成の際に加温及び融解して、分割使用することを可能にし、かつ良好な作業性を有する。このため、当該ポリエステルエラストマー用原料のポリカーボネートオリゴマー組成物を他の場所に運搬し、ポリエステルエラストマーを生産することも可能であり、また、ポリエステルエラストマーの製造業者等に、その原料用に、高分子ソフトセグメント形成用ポリカーボネートオリゴマーとして販売することも可能とした。これにより産業の発展に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法及びその原料ポリカーボネートオリゴマー組成物について詳細に説明する。
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造において、ハードセグメントのポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸は通常の芳香族ジカルボン酸が広く用いられ、特に限定されないが、主たる芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸であることが望ましい。
【0013】
また、本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造において、ハードセグメントのポリエステルを構成する脂肪族又は脂環族ジオールは、一般の脂肪族又は脂環族ジオールが広く用いられ、特に限定されないが、主として炭素数2〜8のアルキレングリコール類であることが望ましい。具体的にはエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。1,4−ブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールが最も好ましい。
【0014】
上記のハードセグメントのポリエステルを構成する成分としては、ブチレンテレフタレート単位あるいはブチレンナフタレート単位よりなるものが物性、成形性、コストパフォーマンスの点より好ましい。なお、ナフタレート単位の場合は、2,6体が好ましい。
【0015】
また、本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーにおけるハードセグメントを構成するポリエステルとして好適な芳香族ポリエステルは、通常のポリエステルの製造法に従って容易に得ることができる。また、かかるポリエステルは、数平均分子量10000〜40000を有しているものが望ましい。
ハードセグメント構成するポリエステルとして数平均分子量10000以下のポリエステルを使用した場合はポリエステルエラストマーが十分なハードセグメント鎖長をもってを構成されることができないため、得られるポリエステルエラストマーは融点が低く十分な引っ張り強度および曲げ弾性率を得られない。
ハードセグメント構成するポリエステルとして数平均分子量が40000を超えるのポリエステルを使用した場合はポリエステルエラストマーの製造時にソフトセグメント成分であるポリカーボネートオリゴマーとの相溶性が悪く、得らえるポリエステルエラストマーは十分な引っ張り強度を得られない。
【0016】
また、本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーにおけるソフトセグメントを形成する脂肪族ポリカーボネートオリゴマーは、脂肪族ポリオールと、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート及びアルキレンカーボネートからなる群より選ばれるカーボネートモノマーとを反応させて得られる。該脂肪族ポリオールと該カーボネートモノマーとを含む反応混合物から副生物のアルコール類を除去しながら、ポリカーボネートオリゴマーを生成させる。
本発明において用いられるカーボネートモノマーは、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート及びアルキレンカーボネートからなる群より選ばれる。ジアルキルカーボネートとしてはアルキル基の炭素数が1〜12のもの、具体的にはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。ジアリールカーボネートとしてはアリール基の炭素数が6〜20のもの、具体的には、ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられる。アルキレンカーボネートとしては5〜7員環からなり、具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。これらのカーボネートモノマーは単独であるいは2種以上の組合せで用いられる。
【0017】
本発明に用いられる脂肪族ポリオールとしては、主として炭素数2〜12の脂肪族ジオールであることが好ましい。これらの脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2−ジメチルー1,3−プロパンジオール、3−メチルー1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチルー1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチルー1,8−オクタンジオールなどが挙げられる。特に、得られる熱可塑性ポリエステルエラストマーの柔軟性や低温特性の点より炭素数5〜12の脂肪族ジオールが好ましい。これらの成分は、以下に説明する事例に基づき、単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0018】
上記の脂肪族ポリカーボネートオリゴマーは必ずしもポリカーボネート成分のみから構成されるわけではなく、他のグリコール、ジカルボン酸、エステル化合物やエーテル化合物などを少量共重合したものでもよい。
上記共重合成分は、実質的に脂肪族ポリカーボネートセグメントの効果を消失させない程度用いることができる。
【0019】
本発明で製造する熱可塑性ポリエステルエラストマーは、発明の効果を消失しない程度に限り、ソフトセグメントとして、例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリブチレンアジペートなどのポリエステルなどの共重合成分が導入されていてもよい。
【0020】
本発明で製造する熱可塑性ポリエステルエラストマーは、ハードセグメントを構成するポリエステルとソフトセグメントを構成する脂肪族ポリカーボネートオリゴマー及び共重合体成分との質量部比は、一般に、ハードセグメント:ソフトセグメント=30:70〜95:5であり、好ましくは40:60〜90:10、より好ましくは45:55〜87:13、最も好ましくは50:50〜85:15の範囲である。
【0021】
本発明で製造する熱可塑性ポリエステルエラストマーは、上記のような芳香族ジカルボン酸と脂肪族又は脂環族ジオールとから構成されたポリエステルからなるハードセグメント及び主として脂肪族ポリカーボネートセグメントからなるソフトセグメントが結合されてなる熱可塑性ポリエステルエラストマーである。ここで、結合されてなるとは、ハードセグメントとソフトセグメントがイソシアネート化合物などの鎖延長剤で結合されるのではなく、ハードセグメントやソフトセグメントを構成する単位が直接エステル結合やカーボネート結合で結合されている状態が好ましい。
例えば、ハードセグメントを構成するポリエステル、ソフトセグメントを構成するポリカーボネートオリゴマー及び必要であれば各種共重合成分を溶融下、一定時間のエステル交換反応・縮重合及び解重合反応を繰返しながら得ることが好ましい(以下ブロック化反応と称することもある)。
【0022】
上記、ブロック化反応は、好ましくはハードセグメントを構成するポリエステルの融点ないし融点+30℃の範囲内の温度において行われる。この反応において、系中の活性触媒濃度は、反応の行われる温度に応じて任意に設定される。
【0023】
触媒は通常の触媒、例えば、チタニウムテトラブトキシド、シュウ酸チタン酸カリウムなどのチタン化合物、ジブチルスズオキシド、モノヒドロキシブチルスズオキシドなどのスズ化合物を1種又は2種以上用いてもよい。触媒はポリエステルもしくはポリカーボネート中にあらかじめ存在してもよく、その場合は新たに添加する必要はない。さらに、ポリエステルもしくはポリカーボネート中の触媒はあらかじめ任意の方法によって部分的又は実質的に完全に失活させておいてもよい。例えば、触媒としてチタニウムテトラブトキシドを用いている場合、例えば、亜燐酸、燐酸、燐酸トリフェニル、燐酸トリストリエチレングリコール、オルト燐酸、亜燐酸トリフェニル、燐酸トリメチル、亜燐酸トリメチルなどの燐化合物などを添加することによって失活が行われるが、これに限られるわけではない。
【0024】
上記反応は、反応温度、触媒濃度、反応時間の組み合わせを任意に決定して行なうことができる。すなわち、反応条件は、用いるハードセグメント及びソフトセグメントの種類及び量比、用いる装置の形状、撹拌状況などの種々の要因によってその適正値が変化する。
【0025】
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーは、少量に限り三官能以上のポリカルボン酸、ポリオールを含んでもよい。例えば無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメチロールプロパン、グリセリンなどを使用できる。
【0026】
本発明においては、ハードセグメントがポリブチレンテレフタレート単位よりなり、かつ得られる熱可塑性ポリエステルエラストマーの融点が200〜225℃であることが好ましい。205〜225℃がより好ましい。
また、本発明においては、ハードセグメントがポリブチレンナフタレート単位よりなり、かつ得られる熱可塑性ポリエステルエラストマーの融点が215〜240℃であることが好ましい。220〜240℃がより好ましい。
【0027】
ハードセグメントがポリブチレンテレフタレート単位やポリブチレンナフタレート単位である場合は、市販されているポリエステルであるポリブチレンテレフタレートやポリブチレンナフタレートを用いることができるので経済性の点で有利である。
【0028】
また、本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーは、測定方法の項で記述する方法で評価される熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物の耐熱老化テスト後及び耐水老化テスト後の切断時伸び保持率が、それぞれ50%以上及び80%以上であることが好ましい。
【0029】
本発明においては、原料であるポリカーボネートオリゴマーの分子量及び末端基比率を最適化するのが好ましい。すなわち、前述の本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーにおけるハードセグメントを構成するポリエステルと、末端基の比率15%以上の末端アルキルカーボネート基もしくは末端アリールカーボネート基を有する分子量1000〜5000の脂肪族ポリカーボネートオリゴマーとを溶融状態で反応させて製造してなることが好ましい。
【0030】
該ポリカーボネートオリゴマーの末端基に占めるアルキルカーボネート基もしくはアリールカーボネート基の比率は10%以上である必要があり、15%以上が好ましい。
末端基に占めるアルキルカーボネート基もしくはアリールカーボネート基の比率が10%未満の場合は、該ポリカーボネートオリゴマーの末端OH基との反応速度差によるエステル交換効率向上の効果が出難く、十分なブロック性を保持して良好な物性を有するポリエステルエラストマーが得られない。さらに説明すれば、10%未満の場合は、反応系の均一化が進みすぎて、ポリカーボネートオリゴマー部分とポリエステルハードセグメント部分が海―島構造を取りにくくなり、弾性発現性が低いため、特に破断時伸びが小さくなり、また、ポリエステルハードセグメント部分の分子量が小さくなるため、ハードセグメントとしての必要な凝集力が低下して、エラストマーの耐久性が低下する。尚、末端基に占めるアルキルカーボネート基もしくはアリールカーボネート基の比率が85%を越える場合は、エステル交換が進行しにくくなるため、物性が低下するので、85%以下とするのが好ましい。
【0031】
脂肪族ポリカーボネートオリゴマーの分子量が大きい程、ブロック性保持性やブロック性が高くなる。該ポリカーボネートオリゴマーの分子量は数平均分子量が1000未満の場合は、ポリカーボネートオリゴマー部分とポリエステルハードセグメント部分の海―島構造が不明確となって弾性が小さくなり、また、ソフトセグメントとして導入されるポリカーボネート鎖長が十分でなく十分なブロック性を保持して良好な物性を有するポリエステルエラストマーが得られない。該ポリカーボネートオリゴマーの分子量は上記と同理由で、数平均分子量で2000以上がさらに好ましい。該ポリカーボネートオリゴマーの分子量の上限は、取り扱い時の粘度の関係及びオリゴマーの生産効率から数平均分子量5000以下が好ましい。脂肪族ポリカーボネートオリゴマーの分子量が大きい程、ブロック性が高いポリエステルエラストマーを得る点で有利であるが、分子量が大きい程ポリカーボネートオリゴマーの融点が高く、かつ分子量が大きくなるに従って急激に融解時の粘度が高くなり、数平均分子量が5000を越えると、取り出し、充填、仕込み等の取り扱いが困難となる。また、強度も小さくなる傾向にある。尚、数平均分子量が10000からさらに高いポリエステルエラストマーを使用しても、得られるポリエステルエラストマーの物性に有意さが出難い。
【0032】
該ポリカーボネートオリゴマーの末端基に占めるアルキルカーボネート基もしくはアリールカーボネート基の末端基の比率に関わらず遊離のアルキルカーボネートモノマーもしくはアリールカーボネートモノマーを含有することは可能である。遊離のアルキルカーボネートモノマーもしくはアリールカーボネートモノマーの含有量は該ポリカーボネートオリゴマーに対して5%以下が好ましく、さらに好ましいのは1%以下である。
遊離のアルキルカーボネートモノマーもしくはアリールカーボネートモノマーの含有量が10%以上になるとソフトセグメントとして導入されるカーボネート鎖の鎖長の制御が困難になると同時に、ポリエステルエラストマーの製造過程においてモノマーが反応機外に飛散し実効をなさない場合がある。
【0033】
上記のポリカーボネートオリゴマーを合成する方法は限定されない。
例えば、上記の高分子量脂肪族ポリカーボネートオリゴマーを製造する方法としては、前記した脂肪族ジオールと上記カーボネート、すなわち、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどとを反応させることで得ることができる。
【0034】
また、脂肪族ポリカーボネートオリゴマーを製造する他の方法としては、脂肪族ポリカーボネートジオールとジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどとを反応させることによっても可能である。
【0035】
例えば、市販されている1,6−ヘキサンジオールからなるポリカーボネートジオール(分子量2000)とジエチルカーボネートとを常圧下〜加圧下において仕込み、加熱し、反応により生じるエタノールを除去しながら、溶融状態で反応を進行させることで得ることができる。エタノールを除去する方法は限定されない。150℃以上の反応温度で大方のエタノールは除去される。さらに、真空ポンプやエジェクターなどで減圧にする方法や不活性ガスを流通させる方法なども挙げられる。
上記反応におけるポリカーボネートジオールとジエチルカーボネートとの仕込モル比[ジエチルカーボネート/1,6−ヘキサンジオールからなるポリカーボネートジオール(分子量2000)]は1/100〜50/100の範囲内にすることが好ましく、2/100〜20/100の範囲内にすることがより好ましい。この範囲外であると、所望の分子量を確保することが困難である。上記原料の仕込み時の反応缶内温度は100〜130℃が好ましい。原料を仕込んだ後に180〜220℃に昇温させて30〜120分かけて反応を進める。反応缶内の圧力を常圧から、徐々に減圧を行い、530Pa以下として、反応で脱離したエタノールを除去するのが好ましい。
【0036】
上記の市販されているポリカーボネートジオールを用いる方法は、嘱望される任意の末端基比率を有する脂肪族ポリカーボネートオリゴマーを容易に製造することができ、かつ該製造は本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造装置を用いて熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造に先立ってインプラントで行うこともできる。
【0037】
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法では、目的に応じて種々の添加剤を配合して組成物を得ることができる。添加剤としては、公知のヒンダードフェノール系、硫黄系、燐系、アミン系の酸化防止剤、ヒンダードアミン系、トリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾェート系、ニッケル系、サリチル系などの光安定剤、帯電防止剤、滑剤、過酸化物などの分子調整剤、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物などの反応基を有する化合物、金属不活性剤、有機及び無機系の核剤、中和剤、制酸剤、防菌剤、蛍光増白剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、有機及び無機系の顔料などを添加することができる。
【0038】
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物は、溶融物から通常の成形技術、例えば、射出成形、フラットフイルム押出、押出ブロー成形、共押出により成形される。
【0039】
本発明においては、芳香族ジカルボン酸と脂肪族又は脂環族ジオールとから構成されたポリエステルと上記脂肪族ポリカーボネートオリゴマーを溶融状態で反応させて製造することが好ましい。また、前記反応は複数段階に分けて行っても構わない。該要件を満たせば、製造条件等は限定されないが、例えば、以下の方法で実施するのが好ましい。
【実施例】
【0040】
以下に実施例及び比較例を用いて、本発明を具体的に説明するがそれらに限定されるものではない。なお、本明細書において各測定は、以下の方法に従って行った。
(1)融点:DSCを用いて室温から20℃/分で昇温し測定した。
(2)切断時引張強度:JIS K6251に準拠して測定した。
(3)曲げ弾性率:ASTM D790に基づいて測定した。
(4)耐熱老化性:ギヤー式熱風乾燥機を用いて150℃、125日間処理を行い、切断時伸び保持率をASTM D638に基づいて測定した。
(5)耐水性:100℃、2週間処理後の切断時伸び保持率をASTM D638に基づいて測定した。
(6)脂肪族ポリカーボネートオリゴマーの末端OH基及び末端エチル基
水酸基価(mg-KOH/g)はアセチル価法で分析した。また、分子末端のエチル基およびアリル基(単位:mg-KOH/g)は、1H−NMRで分析したエチル基およびアリル基の量(単位:mmol/g)をKOH質量換算したものである。(特開2007-154070号公報参照)
(7)脂肪族ポリカーボネートオリゴマーの数平均分子量
GPC測定装置(東ソー製 HLC8820)を用いて下記条件で測定した。
カラム :TSKgel G4000HXL,1本
同 G3000HXL,1本
同 G2000HXL,2本
溶離液 :THF
流 量 :1ml/分
測定温度 :40℃
検出器 :RI
【0041】
実施例1
〔脂肪族ポリカーボネートオリゴマーの製造〕
脂肪族ポリカーボネートオリゴマー(ポリカーボネートオリゴマー1)の製造方法:
攪拌機・温度計・精留塔を備えた反応機に1,6-ヘキサンジオール824質量部、ジエチルカーボネート800質量部及び酢酸鉛0.3質量部を仕込み130℃に昇温しその後攪拌をしながら徐々に昇温し24時間で190℃とした。この間、精留塔の温度を80〜90℃に保ちながら副生するエタノールを除去した。その後温度を190℃に保ちながら反応機内を徐々に減圧し4時間で1300Paとした。内容物を冷却しポリカーボネートオリゴマー1を得た。
得られたポリカーボネートオリゴマー1は末端エチル基10.9mg-KOH/g,末端OH基24.9mg-KOH/g(末端基に占める末端エチルカボネート基の比率は30%)であり数平均分子量は3100であり、75℃の動粘度は8400mm2/sであった。
〔熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造〕
数平均分子量30000を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)100質量部と上記方法で調製した数平均分子量3100を有する(ポリカーボネートオリゴマー1) 45質量部とを230〜245℃、130Pa下で1時間攪拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリマー1(熱可塑性ポリエステルエラストマー)を得た。
得られたポリマー1の各物性を測定し、その結果を表1に示す。本実施例で得られたポリマー1はいずれの特性も良好であり高品質であった。
【0042】
実施例2
〔脂肪族ポリカーボネートオリゴマーの製造〕
脂肪族ポリカーボネートオリゴマー(ポリカーボネートオリゴマー2)の製造方法:
1,6-ヘキサンジオール100質量部とジエチルカーボネート4.0質量部とをそれぞれ仕込み、温度190℃、1300Paで反応させた。4時間後、内容物を冷却しポリカーボネートオリゴマー2を得た。
得られたポリカーボネートオリゴマー2は末端エチル基10mg-KOH/g,末端OH基39mg-KOH/g(末端基に占める末端エチルカボネート基の比率は20%)であり数平均分子量は2300であり、75℃の動粘度は2700mm2/sであった。
〔熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造〕
数平均分子量30000を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)100質量部と上記方法で調製した数平均分子量2300を有する(ポリカーボネートオリゴマー2) 45質量部とを230〜245℃、130Pa下で1時間攪拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリマー2(熱可塑性ポリエステルエラストマー)を得た。
得られたポリマー2の各物性を測定し、その結果を表1に示す。本実施例で得られたポリマー2はいずれの特性も良好であり高品質であった。
【0043】
実施例3
〔脂肪族ポリカーボネートオリゴマーの製造〕
脂肪族ポリカーボネートオリゴマー(ポリカーボネートオリゴマー3)の製造方法:
1,6-ヘキサンジオールと3-メチル-1,5-ペンタンジオールとの共重合体(非結晶性)100質量部とジエチルカーボネート8.0質量部とをそれぞれ仕込み、温度205℃、1300Paで反応させた。2時間後、内容物を冷却しポリカーボネートオリゴマー3を得た。
得られたポリカーボネートオリゴマー3は末端エチル基38mg-KOH/g,末端OH基15mg-KOH/g(末端基に占める末端エチルカボネート基の比率は72%)であり数平均分子量は2100であり、75℃の動粘度は2900mm2/sであった。
〔熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造〕
数平均分子量30000を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)100質量部と上記方法で調製した数平均分子量2100を有する(ポリカーボネートオリゴマー3) 45質量部とを230〜245℃、130Pa下で1時間攪拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリマー3(熱可塑性ポリエステルエラストマー)を得た。
得られたポリマー3の各物性を測定し、その結果を表1に示す。本実施例で得られたポリマー3はいずれの特性も良好であり高品質であった。
【0044】
実施例4
〔脂肪族ポリカーボネートオリゴマーの製造〕
1,6-ヘキサンジオールと1,5-ペンタンジオールとの共重合体(非結晶性)100質量部とジエチルカーボネート8.0質量部とをそれぞれ仕込み、温度205℃、1300Paで反応させた。2時間後、内容物を冷却しポリカーボネートオリゴマー4を得た。
得られたポリカーボネートオリゴマー4は末端エチル基35mg-KOH/g,末端OH基16mg-KOH/g(末端基に占める末端エチルカボネート基の比率は69%)であり数平均分子量は2200であり、75℃の動粘度は3500mm2/sであった。
〔熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造〕
上記反応機に内在するポリカーボネートオリゴマー100質量部に、数平均分子量30000を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)230質量部を追加し(PBT/ポリカーボネートオリゴマーの質量比=100/43)、230〜245℃、130Pa下で1時間攪拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリマー4(熱可塑性ポリエステルエラストマー)を得た。
得られたポリマー4の各物性を測定し、その結果を表1に示す。本実施例で得られたポリマー4はいずれの特性も良好であり高品質であった。
【0045】
実施例5
〔脂肪族ポリカーボネートオリゴマーの製造〕
脂肪族ポリカーボネートオリゴマー(ポリカーボネートオリゴマー5)の製造方法:
1,6-ヘキサンジオールタイプ)100質量部とジエチルカーボネート4質量部とをそれぞれ仕込み、温度205℃、130Paで2時間反応させた。内容物は末端エチル5mg-KOH/g,基末端OH基22mg-KOH/gであり数平均分子量は4050であった。さらにジエチルカーボネート2質量部を仕込み温度205℃、1300Paで反応させた。2時間後、内容物を冷却しポリカーボネートオリゴマー5を得た。
得られたポリカーボネートオリゴマー6は末端エチル基5mg-KOH/g,末端OH基22mg-KOH/g(末端基に占める末端エチルカボネート基の比率は19%)であり数平均分子量は4200であり、75℃の動粘度は18000mm2/sであった。
〔熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造〕
数平均分子量30000を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)100質量部と上記方法で調製した数平均分子量4200を有する(ポリカーボネートオリゴマー5) 45質量部とを230〜245℃、130Pa下で1時間攪拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリマー5(熱可塑性ポリエステルエラストマー)を得た。
得られたポリマー5の各物性を測定し、その結果を表1に示す。本実施例で得られたポリマー5はいずれの特性も良好であり高品質であった。
【0046】
実施例6
〔脂肪族ポリカーボネートオリゴマーの製造〕
脂肪族ポリカーボネートオリゴマー(ポリカーボネートオリゴマー6)の製造方法:
1,6-ヘキサンジオール100質量部とジエチルカーボネート2.6質量部とをそれぞれ仕込み、温度190℃、1300Paで反応させた。2時間後、内容物を冷却しポリカーボネートオリゴマー6を得た。
得られたポリカーボネートオリゴマー6は末端エチル基7mg-KOH/g,末端OH基29mg-KOH/g(末端基に占める末端エチルカボネート基の比率は19%)であり数平均分子量は3100であり、75℃の動粘度は7500mm2/sであった。
〔熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造〕
数平均分子量30000を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)100質量部と上記方法で調製した数平均分子量3100を有する(ポリカーボネートオリゴマー6) 45質量部とを230〜245℃、130Pa下で1時間攪拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリマー6(熱可塑性ポリエステルエラストマー)を得た。
得られたポリマーの各物性を測定し、その結果を表1に示す。本実施例で得られたポリマー1はいずれの特性も良好であり高品質であった。
【0047】
実施例7
〔熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造〕
数平均分子量30000を有するポリブチレンナフタレート(PBN)100質量部と上記方法で調製した数平均分子量3100(末端基に占める末端エチルカボネート基の比率は19%)を有する(ポリカーボネートオリゴマー6)43質量部とを245〜260℃、130Pa下で1時間撹拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリマー7(熱可塑性ポリエステルエラストマー)を得た。得られたポリマー7の各物性を測定し、その結果を表1に示すが、本実施例で得られたポリマー7は実施例6で得られた熱可塑性ポリエステルエラストマーと同等のブロック性及びブロック性保持性を有しており、かつ実施例6で得られた熱可塑性ポリエステルエラストマーよりも融点が高く、さらに高品質であった。
【0048】
実施例8
〔脂肪族ポリカーボネートオリゴマーの製造〕
脂肪族ポリカーボネートオリゴマー(ポリカーボネートオリゴマー8)の製造方法:
1,6-ヘキサンジオール100質量部とジエチルカーボネート5質量部とをそれぞれ仕込み、温度190℃、1300Paで反応させた。2時間後、内容物を冷却しポリカーボネートオリゴマー8を得た。
得られたポリカーボネートオリゴマー8は末端エチル基7mg-KOH/g,末端OH基12mg-KOH/g(末端基に占める末端エチルカボネート基の比率は37%)であり数平均分子量は5900であり、75℃の動粘度は52000mm2/sであった。
〔熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造〕
数平均分子量30000を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)100質量部と上記方法で調製した数平均分子量5900を有する(ポリカーボネートオリゴマー8) 45質量部とを230〜245℃、130Pa下で1時間攪拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリマー8(熱可塑性ポリエステルエラストマー)を得た。
得られたポリマーの各物性を測定し、その結果を表1に示す。本実施例で得られたポリマー8はいずれの特性も良好であり高品質であった。但し、本実施例の合成作業において、数平均分子量5000を越え、数平均分子量5900を有するポリカーボネートジオールの融解温度が高くかつ高粘度であるため融解および反応機への仕込み作業に大変な困難を伴った。
【0049】
実施例9
〔脂肪族ポリカーボネートオリゴマーの製造〕
脂肪族ポリカーボネートオリゴマー(ポリカーボネートオリゴマー9)の製造方法:
1,6-ヘキサンジオール100質量部とジエチルカーボネート6質量部とをそれぞれ仕込み、温度190℃、1300Paで反応させた。2時間後、内容物を冷却しポリカーボネートオリゴマー9を得た。
得られたポリカーボネートオリゴマー9は末端エチル基4mg-KOH/g,末端OH基32mg-KOH/g(末端基に占める末端エチルカボネート基の比率は11%)であり数平均分子量は3100であり、75℃の動粘度は7000mm2/sであった。
〔熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造〕
数平均分子量30000を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)100質量部と上記方法で調製した数平均分子量3100を有する(ポリカーボネートオリゴマー9) 45質量部とを230〜245℃、130Pa下で1時間攪拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリマー9(熱可塑性ポリエステルエラストマー)を得た。
得られたポリマー9の各物性を測定し、その結果を表1に示す。本実施例で得られたポリマー9はいずれの特性も良好であり高品質であった。但し、ポリカーボネートオリゴマー9の末端基の比率が11%であるため、末端基の比率が15%以上のポリカーボネートオリゴマーを用いる場合に比べ、若干物性が劣るものであった。
【0050】
実施例10
〔脂肪族ポリカーボネートオリゴマーの製造〕
脂肪族ポリカーボネートオリゴマー(ポリカーボネートオリゴマー10)の製造方法:
1,6-ヘキサンジオール100質量部とジエチルカーボネート25質量部とをそれぞれ仕込み、温度190℃、1300Paで反応させた。4時間後、内容物を冷却しポリカーボネートオリゴマー10を得た。
得られたポリカーボネートオリゴマー10は末端エチル基40mg-KOH/g,末端OH基160mg-KOH/g(末端基に占める末端エチルカボネート基の比率は20%)であり数平均分子量は600であり、75℃の動粘度は10mm2/s以下であった。
〔熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造〕
数平均分子量30000を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)100質量部と上記方法で調製した数平均分子量600を有する(ポリカーボネートオリゴマー10) 45質量部とを230〜245℃、130Pa下で1時間攪拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリマー10(熱可塑性ポリエステルエラストマー)を得た。
得られたポリマー10の各物性を測定し、その結果を表1に示す。本実施例で得られたポリマー10はいずれの特性も良好であり高品質であった。但し、ポリマー10の数平均分子量が1000未満と小さいため、海−島構造が不明瞭で弾性が小さく伸びがほとんどないものであった。
【0051】
実施例11
〔脂肪族ポリカーボネートオリゴマーの製造〕
脂肪族ポリカーボネートオリゴマー(ポリカーボネートオリゴマー11)の製造方法:
1,6-ヘキサンジオール100質量部とジエチルカーボネート12質量部とをそれぞれ仕込み、温度190℃、1300Paで反応させた。4時間後、内容物を冷却しポリカーボネートオリゴマー11を得た。
得られたポリカーボネートオリゴマー11は末端エチル基48mg-KOH/g,末端OH基5mg-KOH/g(末端基に占める末端エチルカボネート基の比率は91%)であり数平均分子量は2100であり、75℃の動粘度は2900mm2/sであった。
〔熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造〕
数平均分子量30000を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)100質量部と上記方法で調製した数平均分子量2100を有する(ポリカーボネートオリゴマー11) 45質量部とを230〜245℃、130Pa下で1時間攪拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリマー11(熱可塑性ポリエステルエラストマー)を得た。
得られたポリマー11の各物性を測定し、その結果を表1に示す。本実施例で得られたポリマー1はいずれの特性も良好であり高品質であった。但し、ポリカーボネートオリゴマー11の末端基の比率が92%であるため、末端基の比率が85%以下のポリカーボネートオリゴマーに比べ、若干物性が劣るものであった。
【0052】
比較例1
〔熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造〕
数平均分子量30000を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)100質量部と数平均分子量2000を有する1,6-ヘキサンジオール(末端基に占める末端エチルカボネート基の比率0%)43質量部とを230〜245℃、130Pa下で10分撹拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリマー21(熱可塑性ポリエステルエラストマー)を得た。得られたポリマーの各物性を測定し、その結果を表2に示す。本比較例で得られたポリマー21は、耐熱老化性が劣っており低品質であった。また、数平均分子量が低いために、曲げ弾性率を測定できなかった。
【0053】
比較例2
〔熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造〕
数平均分子量30000を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)100質量部と数平均分子量30000を有する1,6-ヘキサンジオール(末端基に占める末端エチルカボネート基の比率は0%)43質量部とを230〜245℃、130Pa下で10分撹拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリマー22(熱可塑性ポリエステルエラストマー)を得た。得られたポリマーの各物性を測定し、その結果を表1に示す。本比較例で得られたポリマー22は、耐熱老化性が劣っており低品質であった。また、分子量が低いために、曲げ弾性率を測定できなかった。
【0054】
比較例3
〔熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造〕
数平均分子量30000を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)100質量部と数平均分子量5000を有する1,6-ヘキサンジオール(末端基に占める末端エチルカボネート基の比率は0%)43質量部とを230〜245℃、130Pa下で10分撹拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリマー23(熱可塑性ポリエステルエラストマー)を得た。得られたポリマー23の各物性を測定し、その結果を表2に示す。本比較例で得られたポリマー23は、耐熱老化性が劣っており低品質であった。また、本比較例の合成作業において、数平均分子量5000を越え、数平均分子量5099を有するポリカーボネートジオールの融解温度が高くかつ高粘度であるため融解および反応機への仕込み作業に大変な困難を伴った。
【0055】
比較例4
〔脂肪族ポリカーボネートオリゴマーの製造〕
脂肪族ポリカーボネートオリゴマー(ポリカーボネートオリゴマー24)の製造方法:
1,6-ヘキサンジオール100質量部とジエチルカーボネート0.6質量部とをそれぞれ仕込み、温度190℃、1300Paで反応させた。2時間後、内容物を冷却しポリカーボネートオリゴマー24を得た。
得られたポリカーボネートオリゴマーは末端エチル基3mg-KOH/g,末端OH基53mg-KOH/g(末端基に占める末端エチルカボネート基の比率は5%)であり数平均分子量は2004であり、75℃の動粘度は2050mm2/sであった。
〔熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造〕
分数平均子量30000を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)100質量部とポリカーボネートジオール24(数平均分子量は2004)45質量部とを230〜245℃、130Pa下で10分撹拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリマー24(熱可塑性ポリエステルエラストマー)を得た。得られたポリマー24の各物性を測定し、その結果を表1に示す。本比較例で得られたポリマー24は、耐熱老化性が劣っており低品質であった。また、分子量が低いために、曲げ弾性率を測定できなかった。
【0056】
比較例5
1,4-ブタンジオールにテトラヒドロフランを開環付加させて得られた数平均分子量2000のポリエーテルジオールに関し、各物性を測定しその結果を表2に示すが、耐熱老化性が劣ることが明らかである。
【0057】
比較例6
エチレングリコールにε-カプロラクトンを開環付加させて得られた数平均分子量2000のポリエステルジオールに関し、各種物性を測定しその結果を表2に示すが、耐水老化性が劣ることが明らかである。また、再溶融した際に、わずかに異臭が感じられた。
【0058】
比較例7
〔脂肪族ポリカーボネートオリゴマーの製造〕
脂肪族ポリカーボネートオリゴマー(ポリカーボネートオリゴマー27)の製造方法:
数平均分子量2000を有する1,6-ヘキサンジオール100質量部とジエチルカーボネート4.7質量部とをそれぞれ仕込み、温度190℃、1300Paで反応させた。2時間後、内容物を冷却しポリカーボネートオリゴマー27を得た。
得られたポリカーボネートオリゴマー27は末端エチル基0mg-KOH/g,末端OH基11mg-KOH/g(末端基に占める末端エチルカボネート基の比率は0%)であり数平均分子量は10000であり、75℃の動粘度は95000mm2/sであった。
〔熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造〕
数平均分子量30000を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)100質量部とポリカーボネートジオール27(数平均分子量は10000)43質量部とを230〜245℃、130Pa下で10分撹拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリマー27(熱可塑性ポリエステルエラストマー)を得た。得られたポリマー27の各物性を測定し、その結果を表1に示す。本比較例で得られたポリマー27は、耐熱老化性が劣っており低品質であった。また、本比較例の合成作業において、数平均分子量5000を越え、数平均分子量10000を有するポリカーボネートジオールの融解温度が高くかつ高粘度であるため融解および反応機への仕込み作業に大変な困難を伴った。
【0059】
【表1】


【表2】

【0060】
以上、本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法及びその原料ポリカーボネートオリゴマー組成物について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、各実施例に記載した構成を適宜組み合わせるなど、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の製造方法によって得られる本熱可塑性ポリエステルエラストマー及びその組成物は耐熱性が良好であり、かつ耐熱老化性、耐水性及び低温特性等に優れているというポリエステルポリカーボネート型エラストマーの特徴を維持した上で、ブロック性及びブロック性保持性が改善されている。ブロック性が高いことにより、融点低下による耐熱性の低下が抑制され、硬度、引張強度、弾性率などの機械的性質が向上する。また、ブロック性保持性の改善により、成型加工時におけるブロック性の変動が抑制されるので成型製品の品質の均一性を高めることができる。また、反応性基を1個以上有する化合物0.01〜20質量部を含有させることで、耐熱老化性、耐水性、残留歪の向上効果やブロー成形、押出成形に適したメルトフローレートを得る事ができる。また、該特性により、リサイクル性が高められるので環境負荷やコスト低減に繋げることができる。従って、このように、本発明の製造方法によって得られる熱可塑性ポリエステルエラストマーは、上記した優れた特性及び利点を有するので、繊維、フイルム、シートをはじめとする各種成形材料に用いることができる。また、弾性糸及びブーツ、ギヤ、チューブ、パッキンなどの成形材料にも適しており、例えば、耐熱老化性、耐水性、低温特性が要求される自動車、家電部品などの用途、具体的には、ジョイントブーツや、電線被覆材などの用途に有用である。特に、自動車のエンジン周りに使用されるジョイントブーツや、電線被覆材などの高度な耐熱性が要求される部品用の材料として好適に用いることができるので、産業界に寄与すること大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸と脂肪族又は脂環族ジオールとから構成されたポリエステルからなるハードセグメント、及び、主として脂肪族ポリカーボネートからなるソフトセグメントが結合されてなる熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法であって、末端基の比率が10%以上の末端アルキルカーボネート基もしくは末端アリールカーボネート基を有するポリカーボネートオリゴマーを用いて、当該ポリカーボネートオリゴマーとポリエステルハードセグメントとのエステル交換反応を行なうことを特徴とする熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法。
【請求項2】
前記ポリカーボネートオリゴマーとして末端基の比率が15%以上の末端アルキルカーボネート基もしくは末端アリールカーボネート基を有するポリカーボネートオリゴマーを用いることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記ポリカーボネートオリゴマーの数平均分子量が1000〜5000であることを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記ハードセグメントを構成するポリエステルの数平均分子量が10000〜40000であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の製造方法。
【請求項5】
芳香族ジカルボン酸と脂肪族又は脂環族ジオールとから構成されたポリエステルからなるハードセグメント、及び、主として脂肪族ポリカーボネートからなるソフトセグメントが結合されてなる熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造に用いる原料ポリカーボネートオリゴマー組成物であって、末端基の比率が10%以上の末端アルキルカーボネート基もしくは末端アリールカーボネート基を有するポリカーボネートオリゴマーを含むことを特徴とする原料ポリカーボネートオリゴマー組成物。
【請求項6】
前記ポリカーボネートオリゴマーとして末端基の比率が15%以上の末端アルキルカーボネート基もしくは末端アリールカーボネート基を有するポリカーボネートオリゴマーを含むことを特徴とする請求項5記載の原料ポリカーボネートオリゴマー組成物。
【請求項7】
前記ポリカーボネートオリゴマーの数平均分子量が1000〜5000であることを特徴とする請求項5又は6記載の原料ポリカーボネートオリゴマー組成物。

【公開番号】特開2009−249465(P2009−249465A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97450(P2008−97450)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】