説明

熱可塑性加硫物用途におけるブロック複合材料

本発明の実施形態は、ブロック複合材料およびそれらの熱可塑性加硫物化合物中での使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年10月2日に出願された米国仮出願第61/248,147号明細書(代理人整理番号69069)の優先権を主張する。本出願は、同様に2009年10月2日に出願された米国仮特許出願の第61/248,160号明細書(代理人整理番号69055);および第61/248,170号明細書(代理人整理番号68186)にも関連している。米国特許実務の目的で、これらの出願の内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ブロック複合材料(block composite)およびそれらの熱可塑性加硫物への使用に関する。
【背景技術】
【0003】
エラストマーは、比較的小さな応力下で大きな可逆変形を示す材料として定義される。市販のエラストマーの例の一部としては、天然ゴム、エチレン/プロピレン(EPM)コポリマー、エチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)コポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマー、塩素化ポリエチレン、およびシリコーンゴムが挙げられる。
【0004】
熱可塑性エラストマーは、熱可塑性を有するエラストマーである。すなわち、熱可塑性エラストマーは、場合により、それらの融点または軟化点よりも高温で、成形またはその他の方法で成形して再処理が行われる。熱可塑性エラストマーの一例はスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロックコポリマーである。SBSブロックコポリマーは、ゴム状ブタジエンセグメントによって連結されたガラス状ポリスチレンドメインからなる2相形態を示す。
【0005】
熱硬化性エラストマーは、熱硬化性を有するエラストマーである。すなわち、熱硬化性エラストマーは、加熱すると、一般に不可逆的な架橋反応のため、不可逆的に固化または「硬化」する。熱硬化性エラストマーの2つの例は、架橋したエチレン−プロピレンモノマーゴム(EPM)および架橋したエチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム(EPDM)である。EPM材料は、エチレンとプロピレンとの共重合によって製造される。EPM材料は、典型的には過酸化物を用いて硬化させることで架橋させ、それによって熱硬化性が得られる。EPDM材料は、エチレンと、プロピレンと、非共役ジエン、例えば1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、またはエチリデンノルボルネンとの線状インターポリマーである。EPDM材料は、典型的には硫黄を用いて加硫させることで、熱硬化性が得られるが、過酸化物を用いて硬化させることもできる。EPMおよびEPDM熱硬化性材料は、より高温での用途に適応できるという点で好都合であるが、EPMおよびEPDMエラストマーは、比較的低いグリーン強度(より低いエチレン含有率において)、比較的低い耐油性、および比較的低い表面改質抵抗性を有する。
【0006】
熱可塑性加硫物(TPV)は、好ましくは結晶性である熱可塑性マトリックスを含み、それらの中に熱硬化性エラストマーが一般に均一に分散している。熱可塑性加硫物の例としては、結晶性ポリプロピレンマトリックス中に分散したエチレン−プロピレンモノマーゴムおよびエチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴムの熱硬化性材料が挙げられる。市販のTPVの一例は、Satoprene(登録商標)熱可塑性ゴムであり、これはAdvanced Elastomer Systemsで製造され、結晶性ポリプロピレンマトリックス中の架橋EPDM粒子の混合物である。これらの材料は、従来加硫ゴムを使用した多くの用途、例えばホース、ガスケットなどにおいて有用性が見いだされている。
【0007】
市販のTPVは、典型的には、フェノール樹脂または硫黄硬化系が加硫、すなわち架橋させるために用いられる加硫ゴム、動的加硫、すなわち熱可塑性マトリックス中で(典型的には激しく)混合しながら架橋させることによるジエン(またはより一般的にはポリエン)コポリマーゴムを主成分とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
多くの種類の熱可塑性加硫物が公知であるが、エラストマー性を有する改善された熱可塑性材料が依然として必要とされている。特に、改善された引張特性、伸び、圧縮永久ひずみ、および/または耐油性を有する熱可塑性加硫物の製造方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
改善されたエラストマー性、特に高温における改善された圧縮永久ひずみを有する熱可塑性加硫物を見いだした。これらの新規熱可塑性加硫物は:
(i)熱可塑性ポリオレフィン
(ii)加硫可能なエラストマー
(iii)架橋剤;および
(iv)ブロック複合材料
を含む反応混合物から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例B1のDSC溶融曲線を示している。
【図2】実施例F1のDSC溶融曲線を示している。
【図3】実施例B1、C1、およびD1のTREFプロファイルを比較している。
【図4】実施例B2およびB3のDSC曲線を示している。
【図5】実施例F2およびF3のDSC曲線を示している。
【図6】実施例B1、F1、C1、H1、D1、およびG1のブロック複合指数(block composite index)を示している。
【図7】実施例B1、V1、Z1、C1、W1、AA1、D1、X1、およびAB1のブロック複合指数を示している。
【図8】実施例B1、C1、およびD1の動的機械分析を示している。
【図9】実施例F1、G1、およびH1の動的機械分析を示している
【図10】5μmおよび1μmスケールにおけるProfax Ultra SG853 Polypropylene Impact CopolymerのTEM顕微鏡写真を示している。
【図11】2μm、1μmおよび0.5μmスケールにおける実施例B1、C1、およびD1のTEM顕微鏡写真を示している。
【図12】2μm、1μm、および0.5μmスケールにおける実施例F1、G1、およびH1のTEM顕微鏡写真を示している。
【図13】0.5μmおよび0.2μmスケールにおける実施例B2、D2、およびB3のTEM顕微鏡写真を示している。
【図14】1μmおよび200nmスケールにおける実施例B2を示している。
【図15】比較例T1(左側)および実施例T4(右側)のAFM画像を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
本明細書での元素周期表へのあらゆる言及は、CRC Press, Inc., 2003が刊行し著作権を有する元素周期表への言及であるとする。また、族へのあらゆる言及は、族の番号付けにIUPAC系を用いたこの元素周期表に反映された族への言及であるとする。反対の意味で言及されたり、文脈で暗示されたり、または当分野の慣例であったりするのでなければ、すべての部数およびパーセント値は重量を基準としている。米国特許実務の目的で、本明細書で参照されるあらゆる特許、特許出願、または刊行物の内容は、それらの全体、特に合成技術、定義(本明細書で提供されるいずれかの定義と矛盾のない程度に)、および当分野の一般知識の開示に関して、参照により本明細書に組み込まれる(またはその同等のUS版が参照により組み込まれる)。
【0012】
用語「含む」(comprising)およびその派生語は、同じものが本明細書で開示されているかどうかには関わらず、あらゆる追加の成分、ステップ、または手順が、排除されることを意図していない。あらゆる疑念を排除するため、用語「含む」を用いることで本明細書において請求されるあらゆる組成物は、反対の意味で言及されない限り、あらゆる追加の添加剤、補助剤、あるいはポリマーまたはその他のいずれかの化合物を含むことができる。対照的に、用語「から実質的になる」は、後に続く全ての列挙の範囲から、実施可能性に関して重要ではないものを除いてあらゆる他の成分、ステップ、または手順を排除している。用語「からなる」は、明確に記載または列挙されていないあらゆる成分、ステップ、または手順を排除している。特に明記しない限り、用語「または」は、列挙される要素を個別に、およびあらゆる組み合わせで言及している。
【0013】
用語「ポリマー」は、従来のホモポリマー、すなわち、1種類のモノマーから調製された均一なポリマーと、1種類のモノマーから形成される場合でさえも化学的に区別されるセグメントまたはブロックを内部に含有する、少なくとも2種類のモノマーなどの反応によって調製されるポリマーを意味するコポリマー(同義で、本明細書ではインターポリマーとも呼ばれる)との両方を含んでいる。より具体的には、用語「ポリエチレン」は、エチレンのホモポリマー、およびエチレンと1つまたはそれ以上のC3−8α−オレフィンのコポリマーであってエチレンが少なくとも50モル%を構成するコポリマーを含んでいる。用語「プロピレンコポリマー」または「プロピレンインターポリマー」は、プロピレンおよび1つまたはそれ以上の共重合性コモノマーを含むコポリマーであって、ポリマー中の少なくとも1つのブロックまたはセグメント(結晶性ブロック)の複数の重合モノマー単位がプロピレンを、好ましくは少なくとも90モル%、より好ましくは少なくとも95モル%、最も好ましくは少なくとも98モル%で含むコポリマーを意味する。主として異なるα−オレフィン、例えば4−メチル−1−ペンテンから製造したポリマーも同様に命名される。用語「結晶性」が用いられる場合、これは、示差走査熱量測定(DSC)または同等の技術によって測定される一次転移または結晶融点(Tm)を有するポリマーまたはポリマーブロックを意味する。この用語は、用語「半結晶質」と同義に用いることができる。用語「非晶質」は、結晶融点を有さないポリマーを意味する。用語「アイソタクチック」は、13C−NMR分析によって測定して少なくとも70%のアイソタクチックペンタッド(pentad)を有するポリマー繰り返し単位として定義される。「高アイソタクチック」は、少なくとも90%のアイソタクチックペンタッドを有するポリマーとして定義される。
【0014】
用語「ブロックコポリマー」または「セグメント化コポリマー」は、線状に結合する事が好ましい2つまたはそれ以上の化学的に異なる領域またはセグメント(「ブロック」と呼ばれる)を含むポリマーを意味し、すなわち、ペンダントやグラフトではなく、重合したエチレン系官能基に関して末端間で結合した化学的に区別される単位を含むポリマーを意味する。好ましい一実施形態では、ブロック間では、それに含まれるコモノマーの量または種類、密度、結晶化度、そのような組成物のポリマーに起因する微結晶の大きさ、タクティシティ(アイソタクチックまたはシンジオタクチック)の種類または程度、位置規則性または位置不規則性、分岐、例えば長鎖分岐または超分岐(hyper-branching)の量、均一性、あるいはその他のあらゆる化学的または物理的性質が異なる。本発明のブロックコポリマーは、両方のポリマー多分散性(PDIまたはMw/Mn)、ブロック長分布および/またはブロック数分布の独特の分布を特徴とし、好ましい一実施形態では、このことは触媒とともにシャトリング剤の効果に起因している。
【0015】
用語「ブロック複合材料」は、ソフトコポリマー、ハードポリマー、およびソフトセグメントとハードセグメントとを有するブロックコポリマーを含む本発明の新規ポリマーを意味し、ブロックコポリマーのハードセグメントは、ブロック複合材料中のハードポリマーと同じ組成であり、ブロックコポリマーのソフトセグメントは、ブロック複合材料の軟質コポリマーと同じ組成である。ブロックコポリマーは、線状または分岐であってよい。より具体的には、連続法で製造される場合、ブロック複合材料は、望ましくはPDIが1.7〜15、好ましくは1.8〜3.5、より好ましくは1.8〜2.2、最も好ましくは1.8〜2.1である。バッチ法またはセミバッチ法で製造される場合、ブロック複合材料は、望ましくはPDIが1.0〜2.9、好ましくは1.3〜2.5、より好ましくは1.4〜2.0、最も好ましくは1.4〜1.8である。
【0016】
「ハード」セグメントは、モノマーが95重量%を超え、好ましくは98重量%を超える量で存在する重合単位の高結晶性ブロックを意味する。言い換えると、ハードセグメント中のコモノマー含有率が5重量%未満、好ましくは2重量%未満である。ある実施形態では、ハードセグメントは、すべてまたは実質的にすべてがプロピレン単位で構成される。他方、「ソフト」セグメントは、コモノマー含有率が10mol%を超える重合単位の非晶質、実質的に非晶質、またはエラストマーのブロックを意味する。
【0017】
用語「熱可塑性加硫物」(TPV)は、硬化したエラストマー相が熱可塑性マトリックス中に分散しているエンジニアリング熱可塑性エラストマーを意味する。これは典型的には、少なくとも1つの熱可塑性材料および少なくとも1つの硬化した(すなわち架橋した)エラストマー材料を含む。好ましくは、熱可塑性材料は連続相を形成し、硬化したエラストマーが不連続相を形成する;すなわち、硬化したエラストマーのドメインが熱可塑性マトリックス中に分散する。好ましくは、硬化したエラストマーのドメインは、約0.1ミクロン〜約100ミクロン、約0.1ミクロン〜約50ミクロン、約0.1ミクロン〜約25ミクロン、約0.1ミクロン〜約10ミクロン、または約0.11ミクロン〜約5ミクロンの範囲内の平均ドメインサイズで完全および均一に分散する。ある実施形態では、TPVのマトリックス相はTPVの約50体積%未満で存在し、分散相はTPVの少なくとも約50体積%で存在する。言い換えると、架橋したエラストマー相はTPV中の主要な相であり、一方、熱可塑性ポリマーは副次的な相である。このような相組成のTPVは良好な圧縮永久ひずみを有する。しかし、主要な相が熱可塑性ポリマーであり、副次的な相が架橋したエラストマーであるTPVを製造することもできる。一般に、硬化したエラストマーは、23℃においてシクロヘキサンに対して不溶性の部分を有する。不溶性部分の量は、好ましくは約75%または約85%を超える。場合により、不溶性の量は全エラストマーの約90%を超える、約93%を超える、約95%を超える、または約97重量%を超える。
【0018】
分岐指数は、選択した熱可塑性ポリマー中の長鎖分岐の程度を定量化するものである。好ましくは、分岐指数は、約0.9、0.8、0.7、0.6、または0.5未満である。ある実施形態では、分岐指数は約0.01〜約0.4の範囲内である。別の実施形態では、分岐指数は約0.01未満、約0.001未満、約0.0001未満、約0.00001未満、または約0.000001未満である。これは次式で定義され:
【数1】

【0019】
式中、g’は分岐指数であり、IVBrは、分岐熱可塑性ポリマー(例えば、ポリプロピレン)の固有粘度であり、IVLinは、分岐熱可塑性ポリマーと同じ重量平均分子量を有する対応する線状熱可塑性ポリマーの固有粘度であり、コポリマーおよびターポリマーの場合は、モノマー単位の相対分子比が実質的に同じである。
【0020】
極限粘度数としても公知の固有粘度は、最も一般的な意味では、ポリマー分子が溶液の粘度を増加させる能力の尺度である。これは、溶解したポリマー分子の大きさおよび形状の両方に依存する。したがって、実質的に同じ重量平均分子量の非線状ポリマーを線状ポリマーと比較することが、非線状ポリマー分子の配置の指標の1つとなる。実際、上記の固有粘度の比は、非線状ポリマーの分岐の程度の尺度となる。プロピレンポリマー材料の固有粘度の測定方法は、Elliott et al., J. App. Poly. Sci.,14, pp 2947-2963(1970)に記載されている。本明細書において、各場合の固有粘度は、135℃においてデカヒドロナフタレン中に溶解させたポリマーで測定される。ポリマーの固有粘度の別の測定方法は、ASTM D5225-98 - Standard Test Method for Measuring SolutionViscosity of Polymers with a Differential Viscometerであり、その記載内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
本発明の実施形態は、ある種の熱可塑性加硫物(TPV)組成物、および種々のTPVの製造方法を提供する。このようなTPVは、より低い圧縮永久ひずみ、より低い引張永久ひずみ(tensile set)、より高い引張強度、伸び、引裂強度、耐摩耗性、より良好な動的性質、および/または耐油性を有することができる。最初に、典型的な熱可塑性加硫物組成物は、(1)熱可塑性ポリマーと;(2)加硫可能なエラストマーと;(3)エラストマーを加硫させることができる架橋剤との混合物または反応生成物を含む。好ましくは、架橋剤は、熱可塑性ポリマーを実質的に劣化させたり架橋させたりすることがない。あるいは、本発明の熱可塑性加硫物組成物は、(1)熱可塑性ポリマーと;(2)加硫可能なエラストマーと;(3)相溶化剤と;(4)エラストマーを加硫させることができる架橋剤との混合物または反応生成物を含み、あらゆる化学的形態のブロック複合材料が、熱可塑性ポリマーと加硫可能なエラストマーとの間の相溶化剤として用いられる。相溶化剤として用いられる場合、ブロック複合材料は、全組成物の50重量%未満だが0重量%を超えてTPV中に存在する。好ましくは、ブロック複合材料は、40重量%未満だが0重量%を超える、30重量%未満だが0重量%を超える、20重量%未満だが0重量パーセントを超える、10重量%未満だが0重量パーセントを超える、8重量%未満だが0重量パーセントを超える、6重量%未満だが0重量パーセントを超える、または5重量%未満だが0重量パーセントを超える量で存在する。
【0022】
本発明のブロック複合材料ポリマーは、好ましくは、付加重合性モノマーまたはモノマー混合物を、付加重合条件下で、少なくとも1つの付加重合触媒、共触媒、および連鎖シャトリング剤を含む組成物と接触させるステップを含む方法によって調製され、前記方法は、定常状態重合条件下で操作される2つまたはそれ以上の反応器中、または栓流重合条件下で操作される反応器の2つまたはそれ以上のゾーン中、異なるプロセス条件下で、成長ポリマー鎖の少なくとも一部が形成されることを特徴とする。
【0023】
好ましい一実施形態では、本発明のブロック複合材料は、ブロック長の最確分布を有するブロックポリマーの一部分を含む。本発明による好ましいポリマーは、2または3個のブロックまたはセグメントを含有するブロックコポリマーである。3つまたはそれ以上のセグメント(すなわち区別可能なブロックで分離されたブロック)を含有するポリマー中、各ブロックは、同じ場合も、化学的に異なる場合もあり、一般に性質の分布によって特徴付けることができる。ポリマーの製造プロセス中、連鎖シャトリングがポリマー鎖の寿命を延長する手段として用いられ、それによって、ポリマー鎖の実質的な部分が、少なくとも、複数の一連の反応器の第1の反応器、または栓流条件下で実質的に操作される複数のゾーンを有する反応器中の第1の反応器ゾーンから、連鎖シャトリング剤を末端に有するポリマーの形態で出て、ポリマー鎖は次の反応器または重合ゾーンで異なる重合条件にさらされる。それぞれの反応器またはゾーンにおける異なる重合条件としては、異なるモノマー、コモノマー、またはモノマー/コモノマー比、異なる重合温度、圧力、または種々のモノマーの分圧、異なる触媒、異なるモノマー勾配、あるいは区別可能なポリマーセグメントの形成につながる他のあらゆる差の使用が挙げられる。したがって、ポリマーの少なくとも一部には、2、3、またはそれを超える、好ましくは2または3個の区別されるポリマーセグメントが分子内に配置されている。
【0024】
得られたポリマーの以下の数学的処理は、理論的に導出されたパラメータに基づいており、これらのパラメータは、特に2つまたはそれ以上の定常状態において、成長ポリマーがさらされる異なる重合条件を有する直列に接続された連続反応器またはゾーンに適用され論証していると考えられ、各反応器またはゾーン中で形成されるポリマーのブロック長は、最確分布に従い、以下の様式で導出されるものであり、ここでpiは、触媒iからのブロック配列に関する反応器中でポリマーが成長する確率である。この理論的処理は、当分野で公知であり、重合反応速度の分子構造に対する影響の予測に使用される標準的な仮定および方法に基づいており、例えば鎖長またはブロック長に影響されない質量作用反応速度表現、ならびにポリマー鎖の成長が、平均反応器滞留時間と比較して非常に短時間で完了するとの仮定の使用に基づいている。このような方法は、W. H. Ray, J. Macromol. Sci., Rev. Macromol. Chem., C8, 1 (1972)、およびA. E. Hamielec and J. F. MacGregor, 「Polymer Reaction Engineering」, K.H. Reichert and W. Geisler, Eds., Hanser, Munich, 1983において以前に開示されている。さらに、所与の反応器中で連鎖シャトリング反応がそれぞれ発生すると、1つのポリマーブロックが形成され、一方連鎖シャトリング剤を末端に有するポリマーが異なる反応器またはゾーンまで移動して異なる重合条件にさらされると、異なるブロックが形成されると仮定する。触媒iの場合、ある反応器中で生成される長さnの配列の分率はXi[n]で表され、式中、nは、ブロック中のモノマー単位の総数を表す1から無限大までの整数である。
【数2】

【0025】
2種類を超える触媒が1つの反応器またはゾーン中に存在する場合、各触媒は、成長確率(pi)を有し、したがって、その反応器またはゾーン中で生成されるポリマーに関して独自の平均ブロック長および分布を有する。最も好ましい実施形態においては、成長確率は以下のように定義され:
【数3】

(各触媒i={1,2...}の場合)、式中、
Rp[i]=触媒iによるモノマー消費の局所速度(モル数/L/時間)、
Rt[i]=触媒iの連鎖移動および停止の全速度(モル数/L/時間)、
Rs[i]=休止(dormant)ポリマーを有する連鎖シャトリングの局所速度(モル数/L/時間)
である。
【0026】
所与の1つの反応器の場合、ポリマー成長速度Rp[i]は、見掛けの速度定数kpi(上線)に全モノマー濃度[M]を乗じ、さらに触媒iの局所濃度[Ci]を乗じたものを用いて以下のように定義される:
【数4】

【0027】
連鎖移動、停止、およびシャトリングの速度は、水素(H2)への連鎖移動、ベータ水素化物脱離、および連鎖シャトリング剤(CSA)への連鎖移動の関数として求められる。量[H2]および[CSA]はモル濃度であり、下付き文字を有するそれぞれのk値は反応器またはゾーンの速度定数である:
【数5】

【0028】
休止ポリマー鎖は、ポリマー部分がCSAに移動する場合に形成され、反応するすべてのCSA部分がそれぞれ1つの休止ポリマー鎖と対になると仮定される。触媒iの場合の休止ポリマーの連鎖シャトリング速度は以下のように示され、式中の[CSAf]はCSAの供給濃度であり、量([CSAf]−[CSA])は休止ポリマー鎖の濃度を表している:
【数6】

【0029】
以上の理論的処理の結果、得られたブロックコポリマーの各ブロックの全体のブロック長分布は、触媒iの場合の局所ポリマー生成速度で重み付けされた、Xi[n]で前述したブロック長分布の合計であると考えることができる。これは、少なくとも2つの異なるポリマー形成条件下で生成されたポリマーが、少なくとも2つの区別可能なブロックまたはセグメントを有し、そのそれぞれが最確ブロック長分布を有することを意味する。
【0030】
モノマー
本発明のコポリマーの調製に用いると好適なモノマーとしては、あらゆる付加重合性モノマー、好ましくはあらゆるオレフィンまたはジオレフィンモノマー、より好ましくはあらゆるα−オレフィン、最も好ましくはエチレンおよび少なくとも1つの共重合性コモノマー、プロピレンおよび4〜20個の炭素を有する少なくとも1つの共重合性コモノマー、あるいは1−ブテンおよび2または5〜20個の炭素を有する少なくとも1つの共重合性コモノマー、あるいは4−メチル−1−ペンテンおよび4〜20個の炭素を有する少なくとも1つの異なる共重合性コモノマーが挙げられる。好ましくは、コポリマーはプロピレンおよびエチレンを含む。好適なモノマーの例としては、2〜30個、好ましくは2〜20個の炭素原子の直鎖または分岐α−オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、および1−エイコセン;3〜30個、好ましくは3〜20個の炭素原子のシクロオレフィン、例えばシクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、および2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン;ジ−およびポリ−オレフィン、例えばブタジエン、イソプレン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、および5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエン;芳香族ビニル化合物、例えばモノ−またはポリ−アルキルスチレン(例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、およびp−エチルスチレン)、および官能基含有誘導体、例えばメトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、メチルビニルベンゾエート、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、ジビニルベンゼン、3−フェニルプロペン、4−フェニルプロペン、およびα−メチルスチレン、ビニルクロライド、1,2−ジフルオロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、テトラフルオロエチレン、および3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンが挙げられ、但しモノマーは使用される条件下で重合可能なものである。
【0031】
本発明の少なくとも1つのCSAとともに使用すると好ましいモノマーまたはモノマー混合物としては、エチレン;プロピレン;エチレンと、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、およびスチレンからなる群から選択される1つまたはそれ以上のモノマーとの混合物;ならびにエチレン、プロピレン、ならびに共役または非共役ジエンの混合物が挙げられる。
【0032】
触媒および連鎖シャトリング剤
本発明において使用すると好適な触媒および触媒前駆体としては、金属錯体、例えば国際公開第2005/090426号パンフレットに開示されるもの、特にその20ページ30行から53ページ20行に開示されるものが挙げられ、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。好適な触媒は、米国特許出願公開第2006/0199930号明細書;米国特許出願公開第2007/0167578号明細書;米国特許出願公開第2008/0311812号明細書;米国特許第7,355,089B2号明細書;または国際公開第2009/012215号パンフレットにも開示されており、これらは触媒に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
特に好ましい触媒は以下の式の触媒であり:
【化1】

【0034】
式中:
20は、水素以外に5〜20個の原子を含有する芳香族基または不活性置換された芳香族基、あるいはそれらの多価誘導体であり;
【0035】
は、水素以外に1〜20個の原子を有するヒドロカルビレン基またはシラン基、あるいはそれらの不活性置換誘導体であり;
【0036】
は、4族金属、好ましくはジルコニウムまたはハフニウムであり;
【0037】
Gは、アニオン性、中性、またはジアニオン性のリガンド基;好ましくはハライド、水素以外に最大20個の原子を有するヒドロカルビル基またはジヒドロカルビルアミド基であり;
【0038】
gは、そのようなG基の数を示す1〜5の数であり;
【0039】
結合および電子供与相互作用は、それぞれ線および矢印で表されている。
【0040】
好ましくは、このような錯体は下記式に対応しており、
【化2】

【0041】
式中:Tは、水素以外に2〜20個の原子2価の架橋基であり、好ましくは置換または非置換のC3−6アルキレン基であり;
【0042】
Arは、出現ごとに独立して、水素以外に6〜20個の原子のアリーレン基、あるいはアルキル置換またはアリール置換アリーレン基であり;
は、4族金属、好ましくはハフニウムまたはジルコニウムであり;
Gは、出現ごとに独立して、アニオン性、中性、またはジアニオン性のリガンド基であり;
gは、そのようなX基の数を示す1〜5の数であり;
電子供与相互作用は矢印で表されている。
上記式の金属錯体の好ましい例としては以下の化合物が挙げられ:
【化3】

【0043】
式中、MはHfまたはZrであり;
【0044】
Arは、C6−20アリールまたはその不活性置換誘導体であり、特に3,5−ジ(イソプロピル)フェニル、3,5−ジ(イソブチル)フェニル、ジベンゾ−1H−ピロール−1−イル、またはアントラセン−5−イルであり、
【0045】
は、出現ごとに独立して、C3−6アルキレン基、C3−6シクロアルキレン基、またはそれらの不活性置換誘導体を含み;
【0046】
21は、出現ごとに独立して、水素、ハロ、水素以外に最大50個の原子のヒドロカルビル、トリヒドロカルビルシリル、またはトリヒドロカルビルシリルヒドロカルビルであり;
【0047】
Gは、出現ごとに独立してハロ、あるいは水素以外に最大20個の原子のヒドロカルビル基またはトリヒドロカルビルシリル基であるか、あるいは2つのG基を合わせたものが、上記ヒドロカルビル基またはトリヒドロカルビルシリル基の2価誘導体となる。
【0048】
特に好ましいものは下記式の化合物であり、
【化4】

【0049】
式中、Arは、3,5−ジ(イソプロピル)フェニル、3,5−ジ(イソブチル)フェニル、ジベンゾ−1H−ピロール−1−イル、またはアントラセン−5−イルであり、
【0050】
21は、水素、ハロ、またはC1−4アルキル、特にメチルであり、
【0051】
は、プロパン−1,3−ジイルまたはブタン−1,4−ジイルであり、
【0052】
Gは、クロロ、メチル、またはベンジルである。
【0053】
他の好適な金属錯体は下記式の金属錯体である。
【化5】

【0054】
上記の多価ルイス塩基錯体は、標準的な金属化、ならびに4族金属源および中性多官能性リガンド源を使用するリガンド交換手順によって、好都合に調製される。さらに、錯体は、対応する4族金属テトラアミドと、ヒドロカルビル化剤、例えばトリメチルアルミニウムとから出発するアミド脱離およびヒドロカルビル化法によって調製することもできる。他の技術も同様に使用することができる。これらの錯体は、特に、米国特許第6,320,005号明細書、第6,103,657号明細書、および第6,953,764号明細書、ならびに国際公開第02/38628号パンフレット、および国際公開第03/40195号パンフレットの開示によって公知である。
【0055】
好適な共触媒は、国際公開第2005/090426号パンフレットに開示されるものであり、特に54ページ1行から60ページ12行に開示されるものであり、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
好適な連鎖シャトリング剤は、国際公開第2005/090426号パンフレット、特に19ページ21行から20ページ12行に開示されるものであり、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。特に好ましい連鎖シャトリング剤は、ジアルキル亜鉛化合物である。
【0057】
ブロック複合材料ポリマー生成物
本発明の方法を用いると、新規なブロック複合材料ポリマーが容易に調製される。好ましくは、このブロック複合材料ポリマーは、プロピレン、1−ブテン、または4−メチル−1−ペンテンと、1つまたはそれ以上のコモノマーとを含む。好ましくは、ブロック複合材料のブロックポリマーは、重合した形態で、プロピレンおよびエチレンおよび/または1つまたはそれ以上のC4−20α−オレフィンコモノマー、および/または1つまたはそれ以上のさらなる共重合性コモノマーを含むか、または4−メチル−1−ペンテンおよびエチレンおよび/または1つまたはそれ以上のC4−20α−オレフィンコモノマーを含むか、または1−ブテンおよびエチレン、プロピレンおよび/または1つまたはそれ以上のC−C20α−オレフィンコモノマーおよび/または1つまたはそれ以上のさらなる共重合性コモノマーを含む。さらなる好適なコモノマーは、ジオレフィン、環状オレフィン、および環状ジオレフィン、ハロゲン化ビニル化合物、およびビニリデン芳香族化合物から選択される。
【0058】
得られるブロック複合材料ポリマー中のコモノマー含有率は、あらゆる好適な技術を用いて測定することができ、核磁気共鳴(NMR)分光法に基づく技術が好ましい。非常に望ましくは、ポリマーブロックの一部またはすべてが、非晶質または比較的非晶質のポリマー、例えばプロピレン、1−ブテン、または4−メチル−1−ペンテンとコモノマーとのコポリマー、特にプロピレン、1−ブテン、または4−メチル−1−ペンテンとエチレンとのランダムコポリマーを含み、残りのポリマーブロック(ハードセグメント)が存在する場合、それは、主としてプロピレン、1−ブテン、または4−メチル−1−ペンテンを重合形態で含む。好ましくはこのようなセグメントは、高結晶性または立体特異的なポリプロピレン、ポリブテン、またはポリ−4−メチル−1−ペンテンであり、特にアイソタクチックホモポリマーである。
【0059】
さらに好ましくは、本発明のブロックコポリマーは、10〜90%の結晶性または比較的硬質のセグメントと、90〜10%の非晶質または比較的非晶質のセグメント(ソフトセグメント)とを含む。ソフトセグメント中、コモノマーのモル%は、5〜90モル%、好ましくは10〜60モル%の範囲であってよい。コモノマーがエチレンである場合、これは好ましくは10重量%〜75重量%、より好ましくは30重量%〜70重量%の量で存在する。
【0060】
好ましくは、コポリマーは、80重量%〜100重量%がプロピレンであるハードセグメントを含む。ハードセグメントは、90重量%を超え、好ましくは95重量%を超え、より好ましくは98重量%を超えてプロピレンであってよい。
【0061】
本発明のブロック複合材料ポリマーは、従来のランダムコポリマー、ポリマーの物理的ブレンド、および逐次モノマー付加によって調製されるブロックコポリマーとは区別することができる。ブロック複合材料は、ランダムコポリマーとは、同等の量のコモノマーの場合はより高い溶融温度、後述のブロック複合指数などの性質によって区別することができ;物理的ブレンドとは、ブロック複合指数、より良好な引張強度、改善された破壊強度、より微細な形態、改善された光学的性質、および低温でのより高い衝撃強度などの性質によって区別することができ;逐次モノマー付加によって調製されるブロックコポリマーとは、分子量分布、レオロジー、剪断減粘性、レオロジー比、およびブロック多分散性が存在するなどの性質によって区別することができる。
【0062】
ある実施形態では、本発明のブロック複合材料は、後述の定義のブロック複合指数(Block Composite Index)(BCI)が、0を超えて約0.4未満、または約0.1〜約0.3である。別の実施形態では、BCIは約0.4を超え、上限が約1.0である。さらに、BCIは、約0.4〜約0.7、約0.5〜約0.7、または約0.6〜約0.9の範囲であってよい。ある実施形態では、BCIは、約0.3〜約0.9、約0.3〜約0.8、または約0.3〜約0.7、約0.3〜約0.6、約0.3〜約0.5、または約0.3〜約0.4の範囲内である。別の実施形態では、BCIは、約0.4〜約1.0、約0.5〜約1.0、または約0.6〜約1.0、約0.7〜約1.0、約0.8〜約1.0、または約0.9〜約1.0の範囲内である。
【0063】
ブロック複合材料は、好ましくはTmが100℃を超え、好ましくは120℃を超え、より好ましくは125℃を超える。好ましくはブロック複合材料のMFR(230℃、2.16kg)は、0.1〜1000dg/分、より好ましくは0.1〜50dg/分、より好ましくは0.1〜30dg/分であり、1〜10dg/分であってもよい。
【0064】
本発明による別の望ましい組成物は、プロピレン、1−ブテン、または4−メチル−1−ペンテンと、エチレン、および場合により1つまたはそれ以上のα−オレフィンまたはジエンモノマーとのエラストマー性ブロックコポリマーである。本発明のこの実施形態に用いると好ましいα−オレフィンは、式CH=CHR(式中、Rは、1〜12個の炭素原子の線状または分岐のアルキル基である)で表される。好適なα−オレフィンの例としては、限定するものではないが、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン(プロピレンとの共重合の場合)、および1−オクテンが挙げられる。このようなポリマー、特にマルチブロックEPDM型ポリマーの調製に用いると好適なジエンとしては、4〜20個の炭素を含有する共役または非共役、直鎖または分岐鎖、環状または多環式のジエンが挙げられる。好ましいジエンとしては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、および5−ブチリデン−2−ノルボルネンが挙げられる。特に好ましいジエンは5−エチリデン−2−ノルボルネンである。得られる生成物は、重合中にその場で形成されるアイソタクチックホモポリマーセグメントと、エラストマー性のコポリマーセグメントとを交互に含むことができる。好ましくは、生成物は、プロピレン、1−ブテン、または4−メチル−1−ペンテンと、1つまたはそれ以上のコモノマー、特にエチレンとのエラストマー性ブロックコポリマーのみを含むことができる。
【0065】
ジエン含有ポリマーは、ジエン(含まない場合もある)およびα−オレフィン(含まない場合もある)をより多いまたはより少ない量で含有する交互のセグメントまたはブロックを含有するため、ジエンおよびα−オレフィンの総量は、後のポリマーの性質を損なうことなく減少させることができる。すなわち、ジエンおよびα−オレフィンモノマーは、ポリマー全体に均一または不規則となるのではなく、ポリマーの1種類のブロック中に優先的に混入されるので、これらはより効率的に利用され、後のポリマーの架橋密度をより十分に制御することが可能となる。このような架橋性エラストマーおよびその硬化生成物は、向上した性質、例えばより高い引張強度およびより良好な弾性回復を有する。
【0066】
さらに好ましくは、本発明のこの実施形態のブロック複合材料は、重量平均分子量(Mw)が10,000〜約2,500,000、好ましくは35000〜約1,000,000、より好ましくは50,000〜約300,000、好ましくは50,000〜約200,000となる。
【0067】
本発明のポリマーは、全組成物重量を基準として5〜約95%、好ましくは10〜60%、より好ましくは20〜50%のプロセスオイルで油展することができる。好適な油としては、油展EPDMゴム配合物の製造に従来使用されているあらゆる油が挙げられる。例としては、ナフテン系油およびパラフィン系油の両方が挙げられ、パラフィン系油が好ましい。
【0068】
EPDMを架橋させることができるあらゆる架橋剤を本発明の実施形態で用いることができる。好適な硬化剤としては、限定するものではないが、フェノール樹脂、過酸化物、アジド、アルデヒド−アミン反応生成物、ビニルシラングラフト部分、ヒドロシリル化、置換尿素類、置換グアニジン類;置換キサンテート類;置換ジチオカルバメート類;硫黄含有化合物、例えばチアゾール類、イミダゾール類、スルフェンアミド類、チウラミジスルフィド(thiuramidisulfide)類、パラキノンジオキシム、ジベンゾパラキノンジオキシム、硫黄;およびそれらの組み合わせが挙げられる。好適な架橋剤は、米国特許第7,579,408号明細書の31欄54行から34欄52行に開示されるものなどを用いることもでき、この文献の開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
本発明のこの実施形態によるエラストマー組成物は、カーボンブラックを含むことができる。好ましくは、カーボンブラックは、全組成物重量を基準として10〜80%、より好ましくは20〜60%の量で存在する。
【0070】
本発明により使用すると有用な本発明の配合物のさらなる成分としては、得られる組成物の性質を低下させない量の種々の他の成分が挙げられる。このような成分としては、限定するものではないが、活性化剤、例えばカルシウムまたは酸化マグネシウム;脂肪酸、例えばステアリン酸およびその塩;フィラーおよび補強剤例えばカルシウムまたは炭酸マグネシウム、シリカ、およびケイ酸アルミニウム;可塑剤、例えばジカルボン酸のジアルキルエステル;劣化防止剤;軟化剤;ワックス;ならびに顔料が挙げられる。
【0071】
重合方法
本発明のブロック複合材料の製造に有用となる好適な方法は、例えば、2008年10月30日に公開された米国特許出願公開第2008/0269412号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に見ることができる。特に、重合は、望ましくは連続重合、好ましくは連続溶液重合として行われ、それによって、触媒成分、モノマー、ならびに場合により溶媒、補助剤、捕捉剤、および重合助剤が1つまたはそれ以上の反応器またはゾーンに連続的に供給され、それよりポリマー生成物が連続的に取り出される。反応物の断続的な添加および短い規則的または不規則な間隔での生成物の除去が行われ、そのため長い時間では全体のプロセスが実質的に連続であるプロセスは、この場合に使用される用語「連続」および「連続的」の範囲内となる。さらに、前述したように、連鎖シャトリング剤は、重合中のあらゆる時点で加えることができ、例えば第1の反応器またはゾーン中、第1の反応器の出口または出口の少し前、第1の反応器またはゾーンと第2または引き続くあらゆる反応器またはゾーンとの間、あるいはさらには第2または引き続くあらゆる反応器またはゾーンのみに加えることができる。直列に接続された少なくとも2つの反応器またはゾーンの間でのモノマーの差、温度差、圧力差、または重合条件のその他の差のために、同じ分子中で、異なる組成、例えばコモノマー含有率、結晶化度、密度、タクティシティ、位置規則性(regio-regularity)、またはその他の化学的または物理的な差が存在するポリマーセグメントが、異なる反応器またはゾーン中で形成される。それぞれのセグメントまたはブロックの大きさは、連続ポリマー反応条件によって決定され、好ましくはポリマーサイズの最確分布となる。
【0072】
一連の各反応器は、高圧重合条件、溶液重合条件、スラリー重合条件、または気相重合条件下で運転することができる。複数ゾーンの重合においては、すべてのゾーンは、同じ種類の重合、例えば溶液重合、スラリー重合、または気相重合下で運転されるが、プロセス条件が異なる。溶液重合法の場合、使用される重合条件下でポリマーが溶解性となる液体希釈剤中の触媒成分の均一分散液を使用することが望ましい。通常、金属錯体または共触媒のいずれかが溶解性が低いそのような均一触媒分散体を得るために非常に微細なシリカまたは類似の分散剤が使用されるそのような方法の1つが、米国特許第5,783,512号明細書に開示されている。高圧法では、通常、100℃〜400℃の温度および500bar(50MPa)を超える圧力で実施される。スラリー法では、典型的には不活性炭化水素希釈剤が使用され、0℃から、得られるポリマーが不活性重合媒体中で実質的に可溶性となる温度未満までの温度が使用される。スラリー重合の好ましい温度は、30℃から、好ましくは60℃から115℃まで、好ましくは100℃までである。圧力は、典型的には大気圧(100kPa)から500psi(3.4MPa)の範囲である。
【0073】
上記方法のすべてにおいて、連続または実質的に連続の重合条件が好ましくは使用される。このような重合条件、特に連続溶液重合法を使用することで、高い反応器温度を使用することができ、その結果、本発明のブロックコポリマーが高い収率および効率で経済的に生成される。
【0074】
重合が行われる溶媒、または最終的な反応混合物と相溶性である希釈剤中に、必要な金属錯体または複数の錯体を加えることによって均一組成物として触媒を調製することができる。所望の共触媒または活性化剤、および場合によりシャトリング剤は、触媒を重合させるモノマーおよびあらゆる追加の反応希釈剤と混合する前、同時、または後に、触媒組成物と混合することができる。
【0075】
常に、個別の成分およびあらゆる活性触媒組成物を酸素、水分、およびその他の触媒毒から保護する必要がある。したがって、触媒成分、シャトリング剤、および活性触媒は、酸素および水分を含有しない雰囲気中、好ましくは乾燥不活性ガス下、例えば窒素下で調製し保管する必要がある。
【0076】
本発明の範囲を限定するものでは決してないが、このような重合方法を行うための手段の1つを以下に示す。溶液重合条件下で運転される1つまたはそれ以上の十分に撹拌されるタンクまたはループ反応器中に、重合すべきモノマーは、あらゆる溶媒または希釈剤とともに、反応器のある部分に連続的に導入される。反応器は、モノマーとともにあらゆる溶媒または希釈剤および溶解したポリマーから実質的に構成される比較的均一な液相を含有する。好ましい溶媒としては、C4−10炭化水素またはそれらの混合物、特にアルカン、例えばヘキサンまたはアルカン混合物、ならびに重合中に使用される1つまたはそれ以上のモノマーが挙げられる。好適なループ反応器およびそれとともに使用される種々の好適な運転条件の例、例えば直列で運転する複数のループ反応器の使用などは、米国特許第5,977,251号明細書、第6,319,989号明細書、および第6,683,149号明細書に見られる。
【0077】
触媒とともに共触媒および場合により連鎖シャトリング剤は、反応器液相中、または最小限1つの位置のそのあらゆる再循環部分に、連続的または間欠的に導入される。反応器の温度および圧力は、溶媒/モノマー比、触媒添加速度の調節、ならびに冷却または加熱用コイル、ジャケットの使用、またはその両方によって制御することができる。重合速度は、触媒添加速度によって制御される。ポリマー生成物中の特定のモノマーの含有率は、反応器中のモノマーの比率の影響を受け、これらの成分の反応器へのそれぞれの供給速度を操作することによって制御される。ポリマー生成物の分子量は、場合により、他の重合変量、例えば温度、モノマー濃度を制御することによって、あるいは前述の連鎖シャトリング剤、または当分野で周知である連鎖停止剤、例えば水素によって制御される。場合により導管またはその他の移送手段によって反応器の排出部分に第2の反応器が接続され、それによって、ポリマー成長を実質的に停止させることなく、第1の反応器中で調製された反応混合物が第2の反応器に排出される。第1および第2の反応器の間では、少なくとも1つのプロセス条件の差が設定される。好ましくは、2種類またはそれ以上のモノマーのコポリマーの形成に使用する場合、この差は、1つまたはそれ以上のコモノマーが存在または比存在、あるいはコモノマー濃度の差である。系内の第2の反応器と類似の方法でそれぞれ配列された追加の反応器も同様に提供することができる。系の最後の反応器を出た後、流出物を、触媒失活剤、例えば水、蒸気、またはアルコール、あるいはカップリング剤と接触させる。
【0078】
結果として得られるポリマー生成物は、反応混合物の揮発性成分、例えば残留モノマーまたは希釈剤を、減圧においてフラッシングすることによって回収され、必要であれば、装置中、例えば液化押出機中でさらに液化が行われる。連続プロセスでは、反応器中の触媒およびポリマーの平均滞留時間は、一般に5分〜8時間、好ましくは10分〜6時間である。
【0079】
あるいは、上記の重合は、異なるゾーンまたはその領域の間で形成されたモノマー、触媒、シャトリング剤、温度、またはその他の勾配を有する栓流反応器中で行うことができ、場合により触媒および/または連鎖シャトリング剤を別々に加えることによって行うことができ、断熱または非断熱重合条件で運転することができる。
【0080】
触媒組成物は、従来開示されているように、必要な成分を不活性無機または有機粒状固体上に吸着させることによって不均一触媒として調製し使用することもできる。好ましい一実施形態では、不均一触媒は、金属錯体、および不活性無機化合物と活性水素含有活性化剤との反応生成物、特に、トリ(C1−4アルキル)アルミニウム化合物と、ヒドロキシアリールトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのアンモニウム塩、例えば(4−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)トリス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのアンモニウム塩との反応生成物を共沈させることによって調製される。不均一または担持形態で調製される場合、触媒組成物は、スラリー重合または気相重合で使用することができる。実際的な制限として、スラリー重合は、ポリマー生成物が実質的に不溶性となる液体希釈剤中で行われる。好ましくは、スラリー重合の希釈剤は、5個未満の炭素原子を有する1つまたはそれ以上の炭化水素である。所望ならば、飽和炭化水素、例えばエタン、プロパン、またはブタンを全体または部分的な希釈剤として使用することができる。溶液重合と同様に、α−オレフィンコモノマー、または異なるα−オレフィンモノマーの混合物を、全体または部分的な希釈剤として使用することができる。最も好ましくは希釈剤の少なくとも過半量が、重合されるα−オレフィンモノマーを含む。
【0081】
TPV組成物
TPV組成物は、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーをマトリックス相として含む。好適な熱可塑性ポリマーとしては、限定するものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、オレフィンブロックコポリマー、ブロック複合材料、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、分岐ポリエチレン(例えば高密度ポリエチレン)、分岐ポリプロピレン、分岐ポリカーボネート、分岐ポリスチレン、分岐ポリエチレンテレフタレート、および分岐ナイロンが挙げられる。他の熱可塑性ポリマーを使用することができるが、熱可塑性ポリオレフィンが好ましい。さらに好適な熱可塑性ポリオレフィンは、例えば、米国特許第7,579,408号明細書の25欄4行から28欄28行に開示される熱可塑性ポリオレフィンであり、この文献の開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
TPV組成物は、少なくとも1つの加硫可能なエラストマーも含む。架橋剤によって架橋(すなわち加硫)させることが可能であれば、あらゆる加硫可能なエラストマーを使用してTPVを形成することができる。加硫可能なエラストマーは、未硬化状態では熱可塑性であるが、熱硬化の不可逆過程によって加工できない状態となるので、熱硬化性と通常は分類される。好ましい加硫可能なエラストマーは、米国特許第7,579,408、29欄61行から31欄40行に開示されるようなエラストマーであり、この文献の開示が参照により本明細書に組み込まれる。特に好ましい加硫可能なエラストマーは、EPDM、エチレン/α−オレフィン、オレフィンブロックコポリマーであり、本明細書に記載のブロック複合材料であってもよい。
【0083】
エラストマーを硬化させることができ、好ましくはTPV中に使用される熱可塑性ポリマーを実質的に分解および/または硬化させることがないあらゆる架橋剤を、本発明の実施形態で使用することができる。好ましい架橋剤の1つはフェノール樹脂である。他の硬化剤としては、限定するものではないが、過酸化物、アジド、アルデヒド−アミン反応生成物、ビニルシラングラフト部分、ヒドロシリル化、置換尿素類、置換グアニジン類;置換キサンテート類;置換ジチオカルバメート類;硫黄含有化合物、例えばチアゾール類、イミダゾール類、スルフェナミド類、チウラミジスルフィド類、パラキノンジオキシム、ジベンゾパラキノンジオキシム、硫黄;およびそれらの組み合わせが挙げられる。好適な架橋剤としては、米国特許第7,579,408号明細書の31欄54行から34欄52行に開示される架橋剤などを使用することもでき、この文献の開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【0084】
EPDMゴム、熱可塑性ポリマー樹脂、およびそれらのブレンドの配合において従来使用されている成分を加えることによって、TPVの性質を、加硫前または後のいずれかで改質することができる。このような成分の例としては、粒子状フィラー、例えばカーボンブラック、非晶質の沈降シリカまたはヒュームドシリカ、二酸化チタン、着色顔料、クレー、タルク、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、マイカ、モンモリロナイト、ガラスビーズ、中空ガラス球、ガラス繊維、酸化亜鉛およびステアリン酸、安定剤、劣化防止剤、難燃剤、加工助剤、接着剤、粘着付与剤、可塑剤、ワックス、不連続繊維、例えば木材セルロース繊維、ならびにエクステンダー油が挙げられる。さらなる添加剤は、米国特許第7,579,408号明細書の34欄54行から35欄39行に開示されるものなどの添加剤であり、この文献の開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【0085】
熱可塑性加硫物は、典型的には、プラスチックおよび硬化ゴムを動的加硫によってブレンドすることで調製される。組成物は、ゴム状ポリマーのあらゆる好適な混合方法によって、例えば、ラバーミル上、または密閉式ミキサー、例えばバンバリーミキサー中での混合によって調製することができる。好適な方法のさらなる詳細は、米国特許第7,579,408号明細書の35欄40行から39欄16行に開示されるものなどが挙げられ、この文献の開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【0086】
熱可塑性加硫物組成物は、種々の物品、例えばタイヤ、ホース、ベルト、ガスケット、成形品、および成形部品の製造に有用である。これらの組成物は、高い溶融強度を必要とする用途、例えば、大型の吹き込み成形品、発泡体、およびワイヤーケーブルに特に有用である。これらの組成物は、熱可塑性樹脂、特に熱可塑性ポリマー樹脂の改質にも有用である。さらなるTPVの用途は、米国特許第7,579,408、39欄25行から40欄45行に開示されており、この文献の開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
試験方法
各樹脂の全体の組成は、DSC、NMR、GPC、DMS、およびTEMの方法によって求められる。ブロックコポリマーの収率を評価するために、キシレン分別がさらに使用される。
【0088】
示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量測定は、RCS冷却アクセサリおよびオートサンプラーが取り付けられたTA Instruments Q1000 DSC上で行う。50ml/分の窒素パージガス流を使用する。サンプルをプレスして薄膜にして、プレス中約190℃で溶融させ、次に空気中で室温(25℃)まで冷却する。次に約3〜10mgの材料を切り取り、正確に秤量し、軽量アルミニウムパン(約50mg)中に入れ、後に圧着して封止する。サンプルの熱挙動を以下の温度プロファイルで調べる:以前のあらゆる熱履歴を除去するために、サンプルを190℃まで急速に加熱し、その温度で3分間維持する。次にサンプルを10℃/分の冷却速度で−90℃まで冷却し、−90℃で3分間維持する。次にサンプルを10℃/分の加熱速度で150℃まで加熱する。冷却および第2の加熱の曲線を記録する。
【0089】
13C核磁気共鳴(NMR)
サンプル調製
クロムアセチルアセトネート(緩和剤)中0.025Mであるテトラクロロエタン−d2/o−ジクロロベンゼンの50/50混合物約2.7gを、10mmNMR管中のサンプル0.21gに加えることによってサンプルを調製する。管およびその内容物を150℃まで加熱することによって、サンプルを溶解させて均質にする。
【0090】
データ取得パラメータ
Bruker Dual DUL高温CryoProbeを取り付けたBruker 400MHz分光計を使用してデータを収集する。データファイル1つ当たり320のトランジェント(transient)、7.3秒のパルス繰り返し遅延(6秒遅延+1.3秒の取得時間)、90°のフリップ角、および逆ゲートデカップリングを、125℃のサンプル温度で使用して、データを取得する。すべての測定は、ロックモードで非スピンサンプルに対して行われる。サンプルは、加熱した(130℃)NMRサンプルチャージャー中に挿入する直前に均質化し、データ取得前に15分間プローブ中で熱平衡化させることができる。
【0091】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
ゲル浸透クロマトグラフィーシステムは、Polymer Laboratories Model PL−210またはPolymer Laboratories Model PL−220のいずれかの装置からなる。カラムおよびカルーセル区画は140℃で運転する。3つのPolymer Laboratories 10−micron Mixed−Bカラムを使用する。溶媒は1,2,4トリクロロベンゼンである。サンプルは、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)200ppmを含有する溶媒50mL中にポリマー0.1gの濃度で調製する。サンプルは、160℃で2時間軽く撹拌することによって調製する。使用した注入体積は100μLであり、流量は1.0ml/分である。
【0092】
GPCカラムセットの較正を、21の狭い分子量分布のポリスチレン標準物質を使用して行い、これらは分子量が580〜8,400,000の範囲であり、個々の分子量の間隔が少なくとも1桁異なる6つの「カクテル」混合物として配置される。これらの標準物質は、Polymer Laboratories(英国シュロップシャー(Shropshire, UK))から購入される。ポリスチレン標準物質は、分子量が1,000,000以上の場合は溶媒50mL中に0.025gで調製され、分子量が1,000,000未満の場合は溶媒50mL中に0.05gで調製される。ポリスチレン標準物質は、80℃において30分間穏やかに撹拌しながら溶解させる。狭い標準物質混合物の測定を最初に行い、分解を最小限にするために最高分子量成分が減少する順序で行う。以下の式(Williams and Ward, J. Polym. Sci., Polym. Let., 6, 621 (1968)に記載される)を使用して、ポリスチレン標準物質のピーク分子量をポリエチレン分子量に変換する:Mポリプロピレン=0.645(Mポリスチレン)。
【0093】
ポリプロピレン相当分子量の計算は、Viscotek TriSECソフトウェアVersion 3.0を使用して行う。
【0094】
高速昇温分別(F−TREF)
F−TREF分析では、分析する組成物をo−ジクロロベンゼン中に溶解させ、温度を30℃まで(好ましい速度の0.4℃/分で)ゆっくり下げることによって、不活性担体(ステンレス鋼ショット)が入ったカラム中で結晶化させる。カラムには赤外検出器が取り付けられる。次に、溶離溶媒(o−ジクロロベンゼン)の温度を(好ましい速度の1.5℃/分で)30℃から140℃までゆっくり上昇させることによって、結晶化したポリマーサンプルをカラムから溶離させることによって、F−TREFクロマトグラム曲線を作成する。
【0095】
高温液体クロマトグラフィー(HTLC)
米国特許出願公開第2010−0093964号明細書および2009年12月21日に出願された米国特許出願第12/643111号明細書(どちらも参照により本明細書に組み込まれる)に開示される方法によりHTLCを行う。サンプルは後述の方法によって分析される。
【0096】
Waters GPCV2000高温SECクロマトグラフを再構成して、HT−2DLC装置を形成した。バイナリミキサー(binary mixer)を介して、2つのShimadzu LC−20ADポンプをGPCV2000のインジェクターバルブに接続した。第1次元(D1)のHPLCカラムは、インジェクターと10ポートのスイッチバルブ(Valco Inc)との間に接続した。第2次元(D2)のSECカラムは、10ポートバルブと、LS(Varian Inc.)、IR(濃度および組成)、RI(屈折率)、およびIV(固有粘度)の検出器との間に接続した。RIおよびIVは、GPCV2000に内蔵された検出器であった。IR5検出器は、スペインのバレンシア(Valencia)のPolymerCharより提供されるものであった。
カラム:D1カラムは、Thermo Scientificより購入した高温Hypercarbグラファイトカラム(2.1×100mm)であった。D2カラムは、Varianより購入したPLRapid−Hカラム(10×100mm)であった。
試薬:HPLCグレードのトリクロロベンゼン(TCB)をFisher Scientificより購入した。1−デカノールおよびデカンはAldrich製であった。2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(Ionol)もAldrichより購入した。
サンプル調製:0.01〜0.15gのポリオレフィンサンプルを10mLのWatersオートサンプラーバイアルに入れた。次に1−デカノールまたはデカンのいずれか7mLと200ppm Ionolとをバイアルに加えた。ヘリウムをサンプルバイアルに約1分間スパージした後、サンプルバイアルを、160℃の温度設定で加熱したシェーカーに配置した。その温度で2時間バイアルを振盪することによって溶解させた。次にバイアルを、注入用のオートサンプラーに移動させた。溶媒の熱膨張のため、溶液の実際の体積は7mLを超えたことに留意されたい。
HT−2DLC:D1流量は0.01mL/分であった。移動相の組成は、運転の最初の10分間は100%の弱溶離液(1−デカノールまたはデカン)であった。489分間で組成を60%の強溶離液(TCB)まで増加させた。生のクロマトグラムの期間として、489分間のデータを収集した。10ポートバルブを3分ごとに切り替えて、489/3=163のSECクロマトグラムを得た。489分間のデータ取得時間の後にポストランのグラジエントを使用して、次のランのためのカラムのクリーニングおよび平衡化を行った:
クリーニングステップ:
1.490分:流量=0.01分;//0〜490分を0.01mL/分の一定流量で維持
2.491分:流量=0.20分;//流量を0.20mL/分まで増加
3.492分:%B=100;//移動相組成を100%TCBまで増加
4.502分:%B=100;//2mLのTCBを使用してカラムを洗浄
平衡化ステップ:
5.503分:%B=0;//移動相組成を100%の1−デカノールまたはデカンに変更
6.513分:%B=0;//2mLの弱溶離液を使用してカラムを平衡化
7.514分:流量=0.2mL/分;//491〜514分を0.2mL/分の一定流量で維持
8.515分:流量=0.01mL/分;//流量を0.01mL/分まで下げる。
【0097】
ステップ8の後、流量および移動相組成は、そのランのグラジエントの初期条件と同じであった。D2流量は2.51mL/分であった。2つの60μLループを10ポートのスイッチバルブ上に取り付けた。D1カラムからの30μLの溶出液を、バルブの切り替えごとにSECカラム上に加えた。IR、LS15(15°における光散乱信号)、LS90(90°における光散乱信号)、およびIV(固有粘度)信号は、SS420Xアナログ−デジタル変換ボックスを介してEZChromに集めた。クロマトグラムは、ASCII形式でエクスポートし、データ整理のため自作のMATLABソフトウェアにインポートした。分析されるブロック複合材料中に含まれるハードブロックおよびソフトブロックと類似の性質のポリマーのポリマー組成および保持体積の適切な較正曲線を使用する。較正ポリマーは、組成(分子量および化学組成の両方)が狭く、分析中に対象の組成に及ぶように妥当な分子量範囲に広がるべきである。生データの分析では以下のように計算した。第1次元のHPLCクロマトグラムは、各カットのIR信号(そのカットの全IR SECクロマトグラムから得られる)を溶出体積の関数としてプロットすることによって再構成した。IR対D1溶出体積は、全IR信号によって規格化して、重量分率対D1溶出体積のプロットを得た。IRメチル/測定値の比を、再構成したIR測定値およびIRメチルクロマトグラムから得た。PP重量%(NMRより)SEC実験から得たメチル/測定値の較正曲線を使用して、この比を組成に変換した。MWは、再構成したIR測定値およびLSクロマトグラムから求めた。PE標準物質を使用してIR検出器およびLS検出器の両方を較正した後、上記比をMWに変換した。単離PPの重量%は、単離ピークと、組成較正曲線によって求められる保持体積とに基づいてハードブロック組成物に相当する面積として測定される。
【0098】
動的機械的分光法(DMS)
動的機械的測定(損失弾性率および貯蔵弾性率対温度)は、TA instruments ARES上で測定される。動的弾性率測定は、厚さ約2mm、幅5mm、および長さ約10mmの固体の棒のねじれに関して行われる。データは10rad/s一定周波数および5℃/分の加熱/冷却速度で記録される。温度掃引は5℃/分で−50から190Cで行われる。
【0099】
透過型電子顕微鏡法
圧縮成形の後、急冷することによって、ポリマーフィルムを作製する。ポリマーは、190℃において1000psiで1分間あらかじめ溶融させ、次に5000psiで2分間プレスし、次に冷却したプラテン(15〜20℃)の間で2分間急冷する。
【0100】
圧縮成形したフィルムは、フィルムの中心付近に断面が集まるように切断する。エラストマー相の汚れを防止するため、染色する前に、ブロックから断面を除去することによって、切断したサンプルを−60℃で冷却研磨(cryopolish)する。冷却研磨したブロックを、2%四酸化ルテニウム水溶液の蒸気相で3時間周囲温度で染色する。0.2gの塩化ルテニウム(III)水和物(RuCl×HO)をねじ蓋付きガラス瓶に量り取り、10mlの5.25%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を瓶に加えることによって、染色溶液を調製する。両面テープを取り付けたスライドガラスを使用してサンプルをガラス瓶中に入れる。染色溶液の約1インチ上にブロックを浮遊させるために、スライドを瓶の底に入れる。Leica EM UC6ミクロトーム上でダイヤモンドナイフを使用して周囲温度で厚さ約90nmの断片を集め、観察用の600メッシュの未使用TEMグリッド上に配置する。
画像収集−TEM画像は、100kVの加速電圧で操作されるJEOL JEM−1230上で収集され、Gatan−791および794デジタルカメラで収集される。
【0101】
キシレン可溶性分別分析
重量を測定した樹脂を、還流条件下の200ml o−キシレン中に2時間溶解させる。次に、溶液を温度制御された水浴中で25℃まで冷却して、キシレン不溶性(XI)画分を結晶化させる。溶液を冷却し、不溶性画分を溶液から沈殿させた後、濾紙で濾過することによってキシレン可溶性(XS)画分をキシレン不溶性画分から分離する。残りのo−キシレン溶液を濾液から蒸発させる。XSおよびXIの両方の画分を真空オーブン中100℃で60分間乾燥させ、次に秤量する。あるいは、ソフトブロックポリマーの溶液の結晶化温度が室温よりも高い場合、分別ステップは、ソフトブロックの結晶化温度よりも10〜20℃高いがハードブロックの結晶化温度よりも低い温度で行うことができる。分離の温度は、参考文献の、TREF and CRYSTAF technologies for Polymer Characterization, Encyclopedia of Analytical Chemistry. 2000 Issue, Pages 8074 - 8094に記載されるTREFまたはCRYSTAF測定によって求めることができる。この分別は、実験室用加熱溶解および濾過装置または分別装置、例えばPreparatory mc(スペインのバレンシア(Valencia)のPolymer Charより入手可能)で行うことができる。
【0102】
メルトインデックスおよびメルトフローレート:
メルトインデックスまたはIは、g/10分の単位で測定され、ASTM D 1238、条件190℃/2.16kgに準拠して行われる。PP樹脂のMFRは、ASTM D 1238、条件230℃/2.16kgに準拠して測定される。
【0103】
ショアA硬度
ショアA硬度はASTM D 2240に準拠して行われる。
【0104】
圧縮永久ひずみ:
圧縮永久ひずみは、ASTM D 395に準拠して70℃で測定される。
【0105】
引張特性:
引張強度および極限伸びは、ASTM D−412に準拠して行われる。
【0106】
原子間力顕微鏡法(AFM)
−120℃で操作されるLeica UCT/FCSミクロトームを使用して、サンプルを極低温条件下で研磨する。サンプルからいくつかの薄い断片(約160nm)を切断し、AFM分析用のマイカ表面上に載せる。NanoScope IVコントローラーが取り付けられたDigital Instruments(現在はVeeco)Multi−Mode AFMを使用して、周囲温度においてトポグラフィー画像および位相画像を取り込む。55N/mのバネ定数および167kHz付近の共鳴周波数を有するナノセンサープローブを位相画像化に使用する。サンプルは、0.5〜2Hzの周波数および約0.8の設定点比で撮像する。
【0107】
TPV組成物の試験方法
ゲル含有率
ゲル含有率は、小規模ソックスレー抽出方法によって測定される。サンプルを約35mg〜86mgの範囲の小片に切断する。各サンプルの3つの小片を個別に上のせ式分析用電子天秤で4箇所精度(4-place accuracy)で秤量する。各小片を、アルミニウムのウィンドウスクリーンで構成される小型シリンダーの内側に入れる。シリンダーの両端を通常のペーパーステープルで閉じる。6つのアルミニウムシリンダーを1つのフリットガラス抽出シンブルの内側に入れる。シンブルをジャケット付きソックスレー抽出器に入れて、還流キシレンで終夜抽出する。最短で12時間の抽出の終了後、依然として暖かいシンブルをメタノール中で急冷する。メタノールによってゲルが沈殿し、ゲルをそのままシリンダーから取り出すのが容易になる。沈殿したゲルが入ったシリンダーに短時間窒素パージして、遊離のメタノールを除去する。鉗子でゲルをアルミニウムシリンダーから取り出し、アルミニウム秤量パン上に置く。ゲルを有するパンを125℃で1時間真空乾燥する。乾燥し冷却したゲルをアルミニウム秤量パンから取り出し、上のせ式分析用天秤上で直接秤量する。乾燥した抽出ゲル重量を出発重量で割ることによって、%ゲル含有率が求められる。
【0108】
原子間力顕微鏡法(AFM)
−120℃で操作されるLeica UCT/FCSミクロトームを使用して、サンプルを極低温条件下で研磨する。サンプルから薄い断片(約160nm)を切断し、AFM分析用のマイカ表面上に載せる。NanoScope IVコントローラーが取り付けられたDigital Instruments(現在はVeeco)Multi−Mode AFMを使用して、周囲温度においてトポグラフィー画像および位相画像を取り込む。55N/mのバネ定数および167kHz付近の共鳴周波数を有するナノセンサープローブを位相画像化に使用する。サンプルは、0.5〜2Hzの周波数および約0.8の設定点比で撮像する。
【0109】
示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量測定(DSC)はTA Instruments Q100 DSC V9.8 Build 296上で、TA InstrumentsのUniversal V3.7A分析ソフトウェアを使用して行う。以前のあらゆる熱履歴を除去するために、サンプルを230℃まで急速に加熱し、その温度で3分間維持する。次にサンプルを10℃/分の冷却速度で−90℃まで冷却し、−90℃で3分間維持する。次にサンプルを10℃/分の加熱速度で230℃まで加熱する。第1の冷却および第2の加熱の曲線を記録する。
【0110】
動的機械的分光法(DMS)
0.1〜100rad/sの周波数範囲で一定温度動的周波数掃引を、窒素パージ下、25mmの平行プレートを取り付けたTA Instruments Advanced Rheometric Expansion System(ARES)を使用して行う。圧縮成形または射出成形で得たプラークのTPOまたはTPVサンプルから、厚さ3mm×直径1インチの円形試験片を打ち抜く。サンプルをプレート上に配置し、5分間溶融させる。次に、プレート間を2.1mmまで近づけ、サンプルの不要部分を切り取り、間隙を2.0mmまで近づけた後、試験を開始する。この方法では、温度平衡のため、さらに5分間の遅延が組み込まれている。TPOおよびTPVの両方のサンプルを230℃で測定する。ひずみ振幅は10%の一定に維持する。応力応答は貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)、および複素粘度(η)として報告される。
【0111】
動的機械的熱分析(DMTA)
材料の固体状態の動的機械的特性は、Rheometric Dynamic Analyzer(RDA III)のねじれ−長方形モードで、長方形バーで測定される。圧縮成形または射出成形したプラークから厚さ3mmおよび幅12.5mmの試験片を打ち抜く。全てのサンプルで初期間隙を10mmに設定する。5℃/分の速度で温度を−100℃から200℃まで変化させ、貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)を10rad/sの一定速度で監視する。加熱中にサンプルが膨張するので、サンプルに対する垂直荷重が最小限になるように間隙を調節する。ひずみ振幅は、低温での0.05%から高温での4%まで変動させることができる。
【0112】
ショアA硬度
硬度測定はショアA型デュロメータで行う。デュロメータは、圧縮成形または射出成形によって作製した厚さ約3mmのプラーク上に載せる。
【0113】
圧縮永久ひずみ
圧縮永久ひずみは、ASTM D 395に準拠して70℃および120℃で測定する。厚さ約3mmの圧縮成形または射出成形したプラークから29mm(±0.5mm)のパックを抽出する。各サンプルについて、4つのパックのノッチ、不均一な厚さ、および不均質性を調べ、全体の高さが12.5mm(±0.5mm)になるように積み重ね、これは25%の圧縮ひずみに等しい。圧縮永久ひずみは、各サンプルについて2つの温度で2つの試験片に対して行う。
【0114】
積み重ねたパックを圧縮装置に入れ、その場に固定し;次に装置を適切な温度で指定の時間維持する(70℃の場合22時間、120℃の場合72時間).この試験中、試験温度で応力を解放し、室温での30分の平衡化時間の後、サンプルの厚さを測定する。
【0115】
圧縮永久ひずみは、圧縮後のサンプルの回復の程度の尺度の1つであり、式CS=(H−H)/(H−H)(式中、Hはサンプルの元の厚さであり、Hは使用したスペーサーバーの厚さであり、Hは圧縮力を除去した後のサンプルの最終厚さである)に従って計算される。
【0116】
応力−ひずみ特性
引張特性は、ミル方向で同じ圧縮成形または射出成形したプラークから打ち抜かれた微小張力(micro-tensile)試験片に対してASTM D−412に準拠して室温で測定される。引張ひずみは、クランプと初期ゲージ長との間の長さの増分の比から計算される。引張応力は、引張荷重をサンプルの初期断面積で割ることによって求められる。
【0117】
表Aは、この研究で使用されるすべての特性決定方法および個別の条件のまとめの一覧である。
【表A】

【実施例】
【0118】
実施例
概要
触媒−1([[rel−2’,2’’’−[(1R,2R)−1,2−シクロヘキサンジイルビス(メチレンオキシ−κO)]ビス[3−(9H−カルバゾール−9−イル)−5−メチル[1,1’−ビフェニル]−2−オラト−κO]](2−)]ジメチル−ハフニウム)、および米国特許第5,919,9883号明細書の実施例2に実質的に開示されるように長鎖トリアルキルアミン(Armeen(商標)M2HT、Akzo−Nobel,Inc.より入手可能)、HCl、およびLi[B(C]の反応によって調製されるテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのメチルジ(C14−18アルキル)アンモニウム塩の混合物である共触媒−1は、Boulder Scientificより購入され、さらに精製することなく使用される。CSA−1(ジエチル亜鉛またはDEZ)および変性メチルアルモキサン(MMAO)はAkzo Nobelより購入し、さらに精製することなく使用した。重合反応の溶媒は、Shell Chemical Companyより入手可能な炭化水素混合物(SBP 100/140)であり、使用前に13−Xモレキュラーシーブ床で精製される。
【0119】
A1、E1、U1、およびY1を除いたすべての実施例は、iPPハードブロックを有する。ランB〜Dは、60〜65重量%のC2を含有する半結晶性エチレン−プロピレンソフトブロックを有し、ランF〜Hは、40重量%のC2を含有する非晶質エチレン−プロピレンソフトブロックを有する。アルファベット文字が増加するにつれて、iPPハードブロックの重量分率および長さは、反応器(この場合は反応器2)中の生成速度を増加させることによって、独立して30〜60重量%に制御される。
【0120】
実施例V1、W1、X1、およびY1、Z1、AAは、B、C、Dの設計と類似しているが、異なる反応器条件で製造される。より高いプロピレン変換率および反応器温度の影響については、後に議論する。
【0121】
全ての実施例は水素なしで行われる。全ての実施例における反応器1中のCSA濃度は153mmol/kgである。全ての実施例における反応器2中のMMAO濃度は6mmol/kgである。
【0122】
サンプルA1〜D1
本発明のプロピレン/エチレンコポリマーを、直列に接続された2つの連続撹拌槽反応器(CSTR)を使用して調製した。各反応器は、液圧的に満たされ(hydraulically full)、定常状態条件で動作するように設定される。サンプルA1は、表1に概略を示すプロセス条件に従って、モノマー、溶媒、触媒−1、共触媒−1、およびCSA−1を第1の反応器に流すことによって調製される。サンプルB1を調製するために、表1Aに記載の第1の反応器内容物を直列の第2の反応器に流した。追加の触媒−1および共触媒−1、ならびに捕捉剤としての少量のMMAOを第2の反応器に加えた。サンプルC1およびD1は、表1Aおよび1Bに記載されるように2つの反応器の条件を制御することによって調製した。
【0123】
サンプルE1〜AB1
ジブロックサンプルF1〜H1、V1〜X1、Y1〜AB1の各組は、実施例B1〜D1に関して前述したように調製したが、表1Aおよび1Bに概略が示されるプロセス条件に従った。各組で、第1の反応器の生成物(E1、U1、Y1)は、第1のブロック組成物を目標として調製される。
【表1A】

【表1B】

【0124】
分別サンプルの調製
2〜4gのポリマーを還流条件下で200ml o−キシレン中に2時間溶解させる。次に溶液を、温度制御された水浴中で25℃まで冷却して、キシレン不溶性画分を結晶化させる。溶液を冷却し、不溶性画分を溶液から沈殿させた後、濾紙で濾過することによってキシレン可溶性画分をキシレン不溶性画分から分離する。残りのo−キシレン溶媒を濾液から蒸発させる。キシレン可溶性(XS)およびキシレン不溶性(XI)の両方の画分を真空オーブン中100℃で60分間乾燥させ、次に秤量する。
【0125】
各組のサンプルで、キシレン不溶性画分には番号「2」が付けられ、キシレン可溶性画分には番号「3」が付けられる。例えば、サンプルB1に対して抽出手順を行うと、サンプルB2(キシレン不溶性画分)およびサンプルB3(キシレン可溶性画分が生成される。
【0126】
表2は、ランB1〜AB1の分析結果を示している。ポリマーの分子量分布は比較的狭く、Mw/Mnは、サンプルB1〜D1の場合で2.1〜2.3の範囲、サンプルF1〜H1の場合で2.2〜2.8の範囲である。サンプルV1〜AB1の場合、Mw/Mnは2.1〜2.5の範囲である。それぞれのランの対応するキシレン不溶性および可溶性画分(番号2または3で示される)の場合、Mw/Mnは2.0〜2.8の範囲である。
【0127】
表2は、高温液体クロマトグラフィー分離によって同定される単離されたPPの重量%も示している。単離PPの量は、ブロックコポリマー中に含まれていないPPの量を示している。単離PPの重量分率およびキシレン可溶物の重量分率を1から引いたものを、生成したジブロックポリマーの収率と関連づけることができる。
【0128】
ポリマーの分子量分布は比較的狭く、Mw/Mnは、サンプルB1〜D1の場合で2.1〜2.3の範囲、サンプルF1〜H1の場合で2.2〜2.8の範囲である。サンプルV1〜AB1の場合、Mw/Mnは2.1〜2.5の範囲である。それぞれのランの対応するキシレン不溶性および可溶性画分(番号2または3で示される)の場合、Mw/Mnは2.0〜2.8の範囲である。
【表2】

【0129】
図1は、B1サンプルのDSC溶融曲線を示している。130℃におけるピークはiPP「ハード」ポリマーに対応しており、30℃におけるより幅広のピークはEP「ソフト」ポリマーに対応しており;−46℃におけるガラス転移温度は、64重量%エチレン(C)を含有するEP「ソフト」ポリマーにも対応している。
【0130】
図2は、F1サンプルのDSC溶融曲線を示している。135℃におけるピークはiPP「ハード」ポリマーに対応しており、室温よりも低温で結晶性がないことは、40重量%のCを含有するEP「ソフト」ポリマーに対応している。−50℃のTgは、40重量%のCを含有するEP「ソフト」ポリマーの存在を裏付けている。
【0131】
ブロックコポリマーの存在によって、TREFまたは溶液分別によって測定した場合のポリマー鎖の結晶化特性を変化させることができる。図3は、サンプルB1〜D1のTREFプロファイルを比較している。TREFプロファイルは、DSC結果と一致しており、高結晶性画分(40℃より高温で溶出)および低結晶性可溶性画分(40℃未満で溶出する残りの材料)を示している。溶出温度は、存在するiPP量とともに増加する。iPPブロックに結合したEPブロックは、溶媒に対する鎖の溶解性を向上させ、および/またはiPPブロックの結晶化を妨害することができる。
【0132】
図4および5は、B2、B3およびF2、F3の画分の対応するDSC曲線を示している。
【0133】
この分析において、キシレン可溶性画分から、非結晶性ソフトポリマーの量が推定される。サンプルB1〜D1のキシレン可溶性画分の場合、エチレンの重量%は61〜65重量%の間のエチレンであり、残留アイソタクチックプロピレンは検出されない。キシレン可溶性画分のDSCは、高結晶ポリプロピレンが存在しないことと一致している。
【0134】
逆に、不溶性画分(番号2で示される)は、ある量のiPPポリマーおよびiPP−EPジブロックを含むことができる。ポリマー鎖の結晶化および溶出は、その最長結晶性プロピレン配列によって決定されるので、ジブロックコポリマーはiPPポリマーとともに沈殿する。このことは、「不溶性」画分中に多量で他のことでは説明できない量のエチレンが存在することを示すNMRおよびDSC分析によって確認される。iPPおよびEPゴムブレンドの典型的な分離では、アイソタクチックPPは、この分析によってうまく分離される。不溶性画分中に「追加の」エチレンが存在することで、ジブロックの画分の存在が確認される。画分間のモノマーの全物質収支を明らかにすることで、ブロック複合指数を概算することができる。
【0135】
ジブロックの存在の別の兆候は、iPP量の増加とともに不溶性画分の分子量が増加することである。第1の反応器から第2の反応器に移動するときにポリマー鎖が共有結合的にカップリングするので、ポリマーの分子量が増加すると考えられる。表3は、可溶性画分の分子量は比較的一定(120〜140kg/mol)に維持されることを示している。これは、EPソフトブロックを製造するための反応器条件がラン間で変更していないためと考えられる。しかし、不溶性画分の分子量は、反応器2の生成速度の増加とともに増加し、より長いiPPブロックが形成される。
【0136】
ブロック複合指数の概算
本発明の実施例は、ポリマーがiPPホモポリマーとEPコポリマーとの単純なブレンドである場合には存在しない多量のエチレンを不溶性画分が含有することを示す。この「余分なエチレン」を説明するために、物質収支計算を行って、キシレン不溶性画分および可溶性画分の量、ならびにそれぞれの画分中に存在する重量%エチレンからブロック複合指数を概算することができる。
【0137】
式1によりそれぞれの画分の重量%エチレンを合計することで、全体の重量%エチレン(ポリマー中)が求められる。この物質収支の式は、2成分ブレンド中の各成分の量の定量化に使用することもでき、3成分またはn成分のブレンドに拡張することもできる。
【数7】

【0138】
式2〜4を使用して、不溶性画分中に存在するソフトブロック(余分のエチレンの供給源となる)の量が計算される。式2の左辺の不溶性画分の重量%Cを代入することによって、式3および4を使用して重量%iPPハードおよび重量%EPソフトを計算することができる。EPソフト中のエチレンの重量%が、キシレン可溶性画分中の重量%エチレンに等しくなるように設定していることに留意されたい。iPPブロック中の重量%エチレンは0に設定されるか、あるいは、そのDSC融点または他の組成測定から既知となるのであれば、その値が該当箇所に使用される。
【数8】

【0139】
不溶性画分中に存在する「追加の」エチレンが明らかとなった後、不溶性画分中にEPコポリマーが存在する唯一の方法としては、EPポリマー鎖がiPPポリマーブロックに結合する必要がある(そうでないと、キシレン可溶性画分中に抽出される)。したがって、iPPブロックが結晶化するときに、それによってEPブロックの可溶化が妨害される。
【0140】
ブロック複合指数を概算するために、各ブロックの相対量を考慮する必要がある。これを概算するために、EPソフトとiPPハードとの間の比が用いられる。EPソフトポリマーとiPPハードポリマーとの比は、ポリマー中に測定される全エチレンの物質収支から式2を使用して計算することができる。あるいは、重合中のモノマーおよびコモノマーの消費の物質収支から概算することもできる。全てのランのジブロックコポリマー中に存在するiPPおよびEPの比の概算は、表3を参照されたい。iPPハードの重量分率およびEPソフトの重量分率は式2を用いて計算され、iPPハードがエチレンを含有しないと仮定している。EPソフトの重量%エチレンは、キシレン可溶性画分中に存在するエチレンの量である。
【0141】
【表3】

【0142】
例えば、本発明のiPP−EPポリマーが全体で47重量%のCを含有し、67重量%のCを有するEPソフトポリマーおよびエチレンを含有しないiPPホモポリマーを生成する条件下で製造する場合、EPソフトおよびiPPハードの量はそれぞれ70重量%および30重量%となる(式3および4を用いて計算)。EPの%値が70重量%でありiPPが30重量%である場合、EP:iPPブロックの相対比は2.33:1と表すことができる。
【0143】
したがって、当業者が、ポリマーのキシレン抽出を行って、40重量%の不溶物および60重量%の可溶物が回収される場合、これによって予期せぬ結果が得られ、これより、本発明のブロックコポリマーの画分が存在したと結論される。不溶性画分のエチレン含有率を後に測定して25重量%のCとなる場合、式2〜4を解くことでこの追加のエチレンの理由を説明することができ、37.3重量%のEPソフトポリマーおよび62.7重量%のiPPハードポリマーが不溶性画分中に存在する。
【0144】
不溶性画分が37.3重量%のEPコポリマーを含有するので、2.33:1のEP:iPPブロック比に基づいて、これはさらに16重量%のiPPポリマーに結合すべきである。これより、不溶性画分中のジブロックの概算量は53.3重量%となる。全体のポリマー(分別せず)の場合、組成は、21.3重量%のiPP−EPジブロック、18.7重量%のiPPポリマー、および60重量%のEPポリマーと表される。これらのポリマーの組成は新規であるので、ブロック複合指数(BCI)という用語は、ジブロックの重量%値を100%で割ったもの(すなわち重量分率)に等しいと本明細書では定義される。ブロック複合指数の値は0〜1の範囲となることができ、1は100%本発明のジブロックに等しく、0は従来のブレンドまたはランダムコポリマーなどの材料の場合である。前述の実施例では、ブロック複合材料のブロック複合指数は0.213である。不溶性画分の場合、BCIは0.533であり、可溶性画分の場合、BCIの値に0が割り当てられる。
【0145】
全ポリマー組成に対して行われる概算、およびハードブロックおよびソフトブロックの組成の概算に使用される分析測定の誤差に依存して、ブロック複合指数の計算値に5〜10%の間の相対誤差が発生し得る。このような概算としては、DSC融点、NMR分析、またはプロセス条件から測定されるiPPハードブロック中の重量%C2;キシレン可溶物の組成、またはNMRによって、またはソフトブロックのDSC融点(検出される場合)によって概算されるソフトブロック中の平均重量C2が挙げられる。しかし全体として、ブロック複合指数の計算は、不溶性画分中に存在する予期せぬ量の「追加の」エチレンが合理的に明らかとなり、不溶性画分中にEPコポリマーが存在する唯一の方法としては、EPポリマー鎖がiPPポリマーブロックに結合する必要がある(そうでないと、キシレン可溶性画分中に抽出される)。
【0146】
より具体的には、実施例H1は、全体として14.8重量%のCを含有し、キシレン可溶物(H3)中の重量%C2を測定すると、38.1重量%(EPソフトポリマーの組成として表される)であり、iPPホモポリマーはエチレンを含有せず、EPソフトおよびiPPハードの量はそれぞれ61重量%および39重量%である(式3および4を用いて計算)。EPの%値が61重量%でありiPPが39重量%である場合、EP:iPPブロックの相対比は1.56:1と表すことができる。
【0147】
H1ポリマーのキシレン抽出の後、60.6重量%の不溶性(H2)ポリマーおよび39.4重量%の可溶性(B3)ポリマーを回収した。B2不溶性画分を後に測定すると4.4重量%のCとなり、式2〜4を解くことでこの追加のエチレンの理由を説明することができ、11.5重量%のEPソフトポリマーおよび88.5重量%のiPPハードポリマーとなる。
【0148】
不溶性画分が11.5重量%のEPコポリマーを含有するので、1.56:1のEP:iPPブロック比に基づいて、これはさらに7.35重量%のiPPポリマーに結合すべきである。これより、不溶性画分中のジブロックの概算量は29.6重量%となる。全体のポリマー(分別せず)の場合、組成は、18重量%のiPP−EPジブロック、42.6重量%のiPPポリマー、および39.4重量%のEPポリマーと表される。前述のこのH1実施例の場合、ブロック複合材料のブロック複合指数は0.18である。不溶性 画分(H2)の場合、BCIは0.29であり、H3可溶性画分の場合、BCIの値に0が割り当てられる。
【0149】
表3および図6は、ランB1〜AB1のブロック複合指数を示している。ランB1、C1、およびD1の場合、BCI値はそれぞれ0.16、0.17、および0.22である。関連するキシレン不溶性画分である画分B2、C2、D2の場合、BCI値はそれぞれ0.42、0.34、および0.35である。ランF1、G1、およびH1の場合、BCI値はそれぞれ0.10、0.15、および0.18である。関連するキシレン不溶性画分である画分F2、G2、H2の場合、BCI値はそれぞれ0.29、0.29、および0.29である。
【0150】
表3および図7は、ランV1、W1、X1の場合を示しており、プロピレン反応器の変換率が90から95%に増加すると、BCIが0.03〜0.09だけ増加し、その結果BCI値が0.18、0.24、および0.25になる。
【0151】
表3および図7は、ランZ1、AA1、AB1の場合を示しており、反応器温度が90から120℃に上昇すると、その結果BCI値がそれぞれ0.12、0.18、および0.24になる。
【0152】
動的機械分析
図8は、サンプルB1〜D1の動的機械的特性を示しており;G’およびtanδ値対温度が示されている。iPP量が増加すると、G’弾性率が増加し、高温でのプラトーが延びる。サンプルD1は、温度が約140℃まで上昇すると、その融解転移後に完全に軟化するまでは、弾性率が減少することを示している。
【0153】
各サンプルについて、tanδ曲線は、エチレン−プロピレンコポリマーの−48〜−50℃の間の特徴的なTg、およびアイソタクチックポリプロピレンによる約0℃における第2のTgを示している。50℃を超えると、tanδ応答は、融解が始まり弾性率が急速に減少するまで一定に維持される。
【0154】
図9は、サンプルF1〜H1の動的機械的特性を示しており;G’およびtanδ値対温度が示されている。65重量%のCの場合と同様に、iPP量が増加することによって、G’弾性率が増加し、高温でのプラトーが延びる。サンプルH1は、温度が約140℃まで上昇すると、その融解転移後に完全に軟化するまでは、弾性率が減少することを示している。
【0155】
これらのサンプルのtanδ曲線も、エチレン−プロピレンコポリマーの−48〜−50℃の間の特徴的なTg、およびアイソタクチックポリプロピレンに関連する約0℃における第2のTgを示している。50℃を超えると、サンプルG1およびH1のtanδ応答は、融解が始まり弾性率が急速に減少するまで一定に維持される。
【0156】
形態の考察
全体のiPP/EPRゴム形態に対するジブロックの影響を観察するために、TEMによってサンプルを分析する。図10は、アイソタクチックPP連続相および17重量%のゴム相からなり、ゴム中に58重量%のCを含有するProFax Ultra SG853耐衝撃性コポリマー(LyondellBasell Polyolefins)のTEM画像を示している。
【0157】
5μmスケールで示されるこのTEM顕微鏡写真は、2〜5μmの大きなEPRドメインを示している。
【0158】
1μmの倍率ではEPRドメインは、粒子中に存在する暗色および淡色のドメインで示されるように、エチレンおよびプロピレンの不均一組成分布を有する。これは、互いに非混和性の2つの相(iPPおよびEPゴム)を含有する分散形態の古典的な例である。
【0159】
図11は、B1、C1、およびD1の圧縮成形フィルムの2、1、および0.5μmスケールにおけるTEM顕微鏡写真を示している。耐衝撃性コポリマーの画像とは全く対照的に、3つ全てのポリマーが、非常に小さいドメインを有する粒子がより微細に分散していることが示されている。B1の場合、連続EPR相が、幅80〜100nm程度の細長いPPドメインとともに観察される。C1の場合、iPP相とEPR相との間の混合連続状態が、200〜250nmのドメインサイズで観察される。D1の場合、PP連続相が、150〜300nmのサイズで球形および幾分細長いEPRドメインとともに観察される。
【0160】
図12は、F1、G1、およびH1の圧縮成形フィルムの2、1、および0.5μmスケールにおけるTEM顕微鏡写真を示している。耐衝撃性コポリマーの画像とは全く対照的に、3つ全てのポリマーが、非常に小さいドメインを有する粒子がより微細に分散していることが示されている。F1の場合、連続EPR相が、幅200〜400nm程度の細長いPPドメインとともに観察される。C1の場合、iPP相とEPR相との間の混合連続状態が、200〜300nmのドメインサイズで観察される。H1の場合、PP連続相が、150〜300nmのサイズで球形および幾分細長いEPRドメインとともに観察される。
【0161】
ペレットを圧縮成形したポリマーからこれらの顕微鏡写真に示されるような十分に分散した小さなドメインが観察されることは驚くべきことである。通常、微細な形態(本明細書に示されるスケールではなくても)を得るためには、特殊な押出成形および配合履歴が必要となる。ブレンドを用いてサイズスケールが近づく場合でさえも、形態が安定しないことがあり;ゴムドメインが細長くその一部が互いに連結している耐衝撃コポリマーによって示されているように、熱老化によって相の粗大化および凝集が発生することがある。
【0162】
キシレン分別によって得られたポリマー画分を調べることによって、ジブロックコポリマーの形態をさらに検査した。前述したように、不溶性画分はiPP−EPジブロックおよび遊離のiPPホモポリマーを含有し、一方、可溶性画分は非結晶性EPゴムを含有する。
【0163】
図13は、B1およびD1の不溶性画分、ならびにB1の可溶性画分のTEM顕微鏡写真を示している。注目すべきことには、不溶性画分中に観察される形態は、ポリマー全体の形態よりもさらに微細でより明確である。B1不溶性画分は、幅50nmのサイズスケールのワーム状および球状のEPRドメインの混合物を示している。D1不溶性画分は、これも直径約50nmの小さな球状ドメインを示している。参考として、B1キシレン可溶性画分は、65重量%のCを含有するEPエラストマーに予測される典型的な粒状層状構造を示している。この場合も、不溶性画分の形態は、明確でありミクロ相分離していると思われる。
【0164】
B1不溶性画分のTEM顕微鏡写真の図15を、71重量%のsPPを含有するsPP−EP−sPPトリブロックの写真、例えばMacromolecules, Vol.38, No.3, page 857, 2005の図7に示される写真と比較すると興味深い。この図では、sPP−EP−sPPトリブロックはアニオン重合によって生成されており、顕微鏡写真は160℃で1週間にわたってアニール化フィルムのものである。サンプルは合計8日間溶融状態でアニールし、最初の4日間は200℃において以前のあらゆる熱履歴を除去するために行い、さらなる4日は最終温度160℃で行った。高真空オーブン(<10−7mbar)を使用して、酸化による劣化を防止した。アニール後にサンプルを急冷することによって、溶融物の形態が維持された。この論文の著者らは、相分離微細構造を六角形に充填された円柱と関連づけている。B1不溶性画分は急冷した圧縮成形フィルムから調製しているが、その形態は、おそらくはある程度六角形に充填された円柱を有する規則構造に類似している(図14)。
【0165】
TPV配合物および機械的性質
原材料:
原材料を表4に示す。NORDEL MG樹脂は、100部のEPDMエラストマー当たり28部のカーボンブラックを含有する。カーボンブラックは、コアシェル形態で樹脂に接着する。表5は、すべてのポリマー成分の組成および物理的性質を示している。
【表4】

【表5】

【0166】
TPV例1(NORDEL MGをゴム相として使用する二軸スクリュー押出機連続TPVプロセス):
調製ステップ:
プロセスオイル、EPDM樹脂、ポリプロピレン粉末、OBC樹脂、ワックス、および粉末添加剤をCoperion 25−mm共回転二軸スクリュー押出機(TSE)中で配合する。プロセスオイルの一部は、容積式ギヤポンプおよび逆流を最小限にする注入バルブを使用して、第2バレルセクション中に供給する。最低90℃の温度で撹拌しながら、適切な量の溶融SP 1045硬化性フェノール樹脂をプロセスオイル3000gにゆっくり加える。追加のオイル、および追加のプロセスオイル中に溶融させた硬化性フェノール樹脂を1つのバレル中に注入する。すべてのオイル流は、ジャケット付きリザーバーおよび外部加熱移送ラインを用いてあらかじめ加熱される。低分子量揮発性成分は、揮発分除去ポートによって除去される。次に材料は冷却され、押出機の出口におけるストランドペレタイザーまたは水中ペレタイザーを使用してペレット化される。
【0167】
押出機は12のバレルセクションを有し、その結果、全長対直径(L/D)比が49である。この押出ラインの供給システムは2つのロス・イン・ウェイト・フィーダーを有する。NORDEL MG樹脂ペレット、ワックス、および1%のプロセスオイルは、プラスチック袋中であらかじめ混合され、次にK−Tron KCLQX3シングル・スクリュー・フィーダーを使用して押出機の主供給スロートに加えられる。粉末添加剤は、単独か、またはポリプロピレン粉末とあらかじめ混合されるかのいずれかで供給される。ポリプロピレン粉末は他の全ての粉末添加剤と混合され、プラスチック袋中でタンブルブレンドされ、次にK−Tron KCLKT20ツインスクリュー粉末フィーダーを使用して材料が計量される。
【0168】
2つの外部加熱液体供給システムを有するLeistritz Gear Pumpカートを使用して、プロセスオイルが押出機に加えられる。
【0169】
押出機の末端付近の溶融物から残留揮発性成分を除去するために真空システムが使用される。直列の2つのノックアウトポットにドライアイスおよびイソプロピルアルコールが満たされ、それによって揮発性成分を凝縮させる。配合したペレットの場合、押出機から排出されたポリマーを長さ10フィートの水浴で冷却し、Conairモデル304ストランドペレタイザーで円柱形に切断する。溶融物流中に直接配置された手持ち式熱電対プローブを使用して排出温度を測定する。
NORDEL MG例の処方および性質:
【表6】

【0170】
表6は、NORDEL MGをゴム相として使用してTPV例の配合物を示している。これらの例は、OBC相溶化剤を使用せずに調製される対照例の比較例T1と、全ポリマーベースを基準として5重量%の実施例B1およびC1を相溶化剤として使用して調製されるTPVである2つの本発明の実施例の実施例T4およびT5とを含んでいる。表7は、これらの重要な機械的性質の一覧である。実施例T4を実施例T1と比較すると、実施例B1を加えることでより軟質の組成物が得られ、引張強度は維持されるが70℃および120℃における圧縮永久ひずみが大きく減少することが示されている。実施例T5は、実施例T1と類似の硬度、引張強度、伸び、および70℃における圧縮永久ひずみを有したが、120℃における圧縮永久ひずみは改善が示された。
【表7】

【0171】
比較例T1および実施例T4のAFM位相画像を図15に示している。より暗い相は架橋ゴム粒子であり、より明るい相はポリプロピレンである。TPVの形態は、典型的には熱可塑性マトリックス中に分散した架橋ゴム相である。比較例よりも本発明の実施例で微細な形態が実現されていることが分かり、これはEPDMとPP相の間の相溶性がより良好であることを示している。
【0172】
TPV例2(NORDEL IPをゴム相として使用する密閉式ミキサーバッチTPVプロセス):
調製ステップ:
ガラス瓶中50℃で少なくとも24時間、EPDM(NORDEL IP 4570)に油を吸収させた。油を吸収したEPDMエラストマー、熱可塑性(ポリプロピレン)、および相溶化剤(OBC)を、190℃および35RPMのHaakeミキサーボウルに加えた。材料を75rpmで4分間混合した。硬化パッケージ(ZnO、SnCl2およびフェノール樹脂SP 1045)を溶融混合物に加え、混合をさらに3分間続けた。酸化防止剤を加え、混合をさらに1分間続けた。溶融物を密閉式ミキサーから取り出し、190℃の2本ロールミル上でさらに混合した。溶融物をミキサーに通して、得られたシートをシガー型試験片に巻き取り、次に縦方向にミルに入れて、ミルに通した。この手順を6回繰り返し、次にサンプルをシートとしてミルから取り出した。ミルから得たシートを、加熱したプレス(190℃)中2000psiの圧力下で2分間予備加熱した。次に、シートを190℃において55000psiの圧力下で4分間圧縮成形し、次に55000psiの圧力下で4分間冷却した。この手順によって、目に見える亀裂のない厚さ1/16インチおよび1/8インチの良好な試験プラークが製造された。
【0173】
NORDEL IP例の処方および性質:
表8は、NORDEL IPをゴム相として使用した多数のTPV例の処方を示している。Hydrobrite 550 Oilは75pphで、SP 1045フェノール樹脂は3pphで、塩化第一スズは6pphで、Kadox 720(酸化亜鉛)は2pphで、Irganox 225は1pphで各配合物に加えた。これらの例は、2つの比較例と、3つの異なる濃度レベルで実施例B1およびC1で調製したTPVである6つの本発明の実施例とを含んでいる。実施例C11は、相溶化剤を全く使用せずに調製した対照例であった。実施例C12は、6重量%のランダムエチレン/オクテンコポリマーを相溶化剤として使用して調製した比較例であった。実施例C17は、全ポリマーベースに対して2重量%の実施例B1を使用して調製した。実施例C09は、全ポリマーベースに対して6重量%の実施例B1を使用して調製した。実施例C18は、全ポリマーベースに対して10重量%の実施例B1を使用して調製した。実施例C06は、全ポリマーベースに対して2重量%の実施例C1を使用して調製した。実施例C08は、全ポリマーベースに対して6重量%の実施例C1を使用して調製した。実施例C01は、全ポリマーベースに対して10重量%の実施例C1を使用して調製した。
【表8】

【0174】
表9は表8に示される配合物の物理的性質を示している。引裂強度、引張強度、および極限伸びは、比較例C12および本発明の実施例C06、C08およびC01の場合に増加していることが分かる。しかし、本発明の実施例のみが、はるかに低い圧縮永久ひずみを示しており、弾性回復が良好であることが分かる。
【表9】

【0175】
表10は、NORDEL IPをゴム相として使用し、高分子量PPを熱可塑性相として使用する別の組のTPV例を示している。この例は、OBC相溶化剤を使用せずに調製される対照例と、3つの異なる濃度レベルで実施例B1およびC1で調製したTPVである6つの本発明の実施例とを含んでいる。実施例TM1は、OBC相溶化剤を使用せずに調製した対照例であった。実施例C04、C02、およびC19は、全ポリマーベースに対してそれぞれ2重量%、6重量%、および10重量%の実施例B1を使用して調製した。実施例C20、C16、およびC05は、全ポリマーベースに対してそれぞれ2重量%、6重量%、および10重量%の実施例B1を使用して調製した。
【表10】

【0176】
Hydrobrite 550 Oilは75pphで、SP 1045フェノール樹脂は3pphで、塩化第一スズは6pphで、Kadox 720(酸化亜鉛)は2pphで、Irganox 225は1pphで各配合物に加えた。表11は、TPVサンプルの機械的性質の比較を示している。実施例C04と対照例TM1との間の物理的性質の比較から、2重量%のOBCを加えることによって、顕著に高い伸び、高い引張強度、および低い圧縮永久ひずみを有するより硬質のTPVが得られたことが分かる。OBCを有する他の全ての本発明の実施例で、実施例C04と類似の効果が得られ、各性質の改善が示されている。
【表11】

【0177】
限定された数の実施形態に関して本発明を説明してきたが、1つの実施形態の特定の特徴が、本発明の他の実施形態に帰属するものとすべきではない。1つの実施形態が本発明の全ての態様を表しているわけではない。ある実施形態では、組成物または方法は、本明細書で言及していない多数の化合物またはステップを含むことができる。別の実施形態では、組成物または方法は、本明細書において列挙しなかったあらゆる化合物またはステップを含まない、または実質的に含まない。記載の実施形態からの変形および修正が存在する。最後に、数を表すために単語「約」または「およそ」が使用されるかどうかとは無関係に、本明細書において開示されるあらゆる数は近似値であると解釈すべきである。添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲内となるそれらすべての修正および変形に及ぶことを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)加硫可能なエラストマーと、
b)熱可塑性ポリオレフィンと、
c)架橋剤と、
d)ブロック複合材料と、
を含む、またはこれらを含む反応混合物より得られる熱可塑性加硫物であって、
(d)を有さない熱可塑性加硫物と比較して、70℃における圧縮永久ひずみの減少が5%を超える、熱可塑性加硫物。
【請求項2】
(d)のブロック複合指数が≧0.10である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ブロック複合材料が、アイソタクチックポリプロピレンブロックおよびエチレン−プロピレンブロックを有するジブロックコポリマーを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アイソタクチックポリプロピレンブロックが10重量%〜90重量%の量で存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記エチレン−プロピレンブロックのエチレン含有率が35重量%〜70重量%である、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記ブロック複合材料が、1重量%〜30重量%、好ましくは1重量%〜15重量%、最も好ましくは3重量%〜10重量%の量で存在する、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
230℃および2.16kgの重量で測定される前記ブロック複合材料のメルトフローレートが、0.1dg/分〜50dg/分、好ましくは0.1dg/分〜30dg/分、より好ましくは1dg/分〜10dg/分である、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記加硫可能なエラストマーが、EPDM、エチレン/α−オレフィン、オレフィンブロックコポリマー、およびブロック複合材料からなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記熱可塑性ポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー、およびブロック複合材料からなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
先行する請求項のいずれかに記載の組成物を含む、物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2013−506744(P2013−506744A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532361(P2012−532361)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/051160
【国際公開番号】WO2011/041699
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】