説明

熱可塑性樹脂の製造装置および熱可塑性樹脂の製造装置の洗浄方法

【課題】複数の反応器間でポンプ等の移送装置を設けなくとも反応液の移送が可能な熱可塑性樹脂の製造装置を提供する。また、洗浄液を円滑に移送でき、簡便に反応器の洗浄が可能な熱可塑性樹脂の製造装置の洗浄方法を提供する。
【解決手段】溶融重合を行う複数の反応器と、反応器のうち上流側の反応器から下流側の反応器へ順次接続し、反応液を移送する移送管とを有する熱可塑性樹脂の製造装置であり、移送管で接続された隣接する反応器である上流側の反応器と隣接する下流側の反応器の位置関係は、上流側の反応器の槽底が、隣接する下流側の反応器の供給口の設置位置より少なくとも高い位置に配置している。また、移送管は、供給口の設置位置と同じ高さ位置または供給口の設置位置より高い位置に配置している。そして、上流側の反応器と隣接する下流側の反応器の内圧とを等しくし、反応液の高低差により洗浄液を移送し、洗浄を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂の製造装置等に関し、詳しくは、複数の反応器間でポンプ等の移送装置を設けなくとも反応液の移送が可能な熱可塑性樹脂の製造装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂を製造する方法には、バッチ式と連続式とがある。そして、大量生産品の場合には、品質およびコストの点で有利な連続式が一般に採用されている。
連続式で熱可塑性樹脂を製造する場合、特に溶融重合にて製造する場合においては、移送管により直列に接続された複数の反応器を使用し、上流側の反応器から下流側の反応器に向けて順次重合反応を進行させつつ、反応液を移送し、重合反応が完結した熱可塑性樹脂を最終の反応器から連続的に排出することにより製造が行われる。
【0003】
ここで、従来の熱可塑性樹脂の製造装置においては、全ての反応器がほぼ水平面上に設置される。そして、反応液を上流側の反応器から下流側の反応器に移送する際には、ポンプを使用して順次移送するのが通例であった(例えば、特許文献1、2、3参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−236439号公報
【特許文献2】特開2000−336162号公報
【特許文献3】特開平11−310632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポンプを使用して反応液を移送する方法では、製造設備が複雑になり、またポンプのメンテナンス等の手間や運転に要するエネルギーもかかるという問題があった。
一方、製造設備の修理、点検等のためには、反応器の運転を停止し、反応器を洗浄する必要がある。そのためには反応器内部に洗浄液を導入し、上流側から下流側の反応器に順次洗浄液を移送して洗浄を行う。このとき反応器の内圧はそれぞれ異なる場合があるため、洗浄液を導入しても、上流側から下流側の反応器へ円滑に洗浄液を移送できないという問題もあった。
【0006】
本発明は、従来の技術が有する上記の問題点に鑑みてなされたものである。
即ち、本発明の目的は、隣接する反応器間でポンプ等の移送装置を設けなくとも反応液の移送が可能な熱可塑性樹脂の製造装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、洗浄液を円滑に移送でき、簡便に反応器や移送管の洗浄が可能な熱可塑性樹脂の製造装置の洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を行った結果、上流側の反応器の位置を隣接する下流側の反応器の位置より所定の位置高く配置することにより、ポンプ等を使用しなくても反応液を上流側の反応器から下流側の反応器へ順次移送できること、また、隣接する2個の反応器において、内圧を等しくすることで洗浄液を反応器の高低差により、移送できることを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成した。
【0008】
かくして本発明によれば、ベント配管を設け、移送管により接続された複数の反応器と、ベント配管を相互に接続する配管と、を有し、複数の反応器は、上流側の反応器の槽底が隣接する下流側の反応器の供給口の設置位置より少なくとも高い位置に配置され、かつ、移送管は、供給口の設置位置と同じ高さ位置または供給口の設置位置より高い位置に配置することを特徴とする熱可塑性樹脂の製造装置が提供される。
【0009】
また、熱可塑性樹脂は、重付加反応、重縮合反応およびエステル交換反応の何れか1つを用いて溶融重合することにより得ることが好ましく、そして熱可塑性樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリアリレート樹脂の何れか1つであることがより好ましく、更に、熱可塑性樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物および炭酸ジエステルを原料とするエステル交換反応により得られるポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
【0010】
一方、本発明によれば、段差を有して配置され、移送管により接続された複数の反応器に設けられたベント配管を相互に接続し、反応器内の洗浄液を反応器間の高低差により移送することを特徴とする熱可塑性樹脂の製造装置の洗浄方法が提供される。
また、段差は、上流側の反応器の槽底が隣接する下流側の反応器の供給口の設置位置より少なくとも高い位置に配置することにより作られることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポンプ等の移送装置を使用しなくても反応液を上流側の反応器から下流側の反応器へ順次移送できる熱可塑性樹脂の製造装置等を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、発明の実施の形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0013】
本実施の形態が適用される熱可塑性樹脂の製造装置を説明するのに熱可塑性樹脂としてポリカーボネート樹脂を例にとり、以下説明する。
【0014】
(ポリカーボネート樹脂)
本実施の形態において、ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを原料とし、エステル交換反応に基づく重縮合反応により製造される。
以下、原料として芳香族ジヒドロキシ化合物および炭酸ジエステルを用い、エステル交換触媒の存在下、連続的に重縮合反応を行うことにより、ポリカーボネート樹脂を製造する方法について説明する。
【0015】
(芳香族ジヒドロキシ化合物)
本実施の形態において使用する芳香族ジヒドロキシ化合物としては、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
【0016】
【化1】

【0017】
ここで、一般式(1)において、Aは、単結合または置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状の2価の炭化水素基、又は、−O−、−S−、−CO−若しくは−SO−で示される2価の基である。XおよびYは、ハロゲン原子又は炭素数1〜6の炭化水素基である。pおよびqは、0又は1の整数である。尚、XとYおよびpとqは、それぞれ、同一でも相互に異なるものでもよい。
【0018】
芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノールA」、以下、BPAと略記することがある。)が好ましい。
【0019】
(炭酸ジエステル)
本実施の形態において使用する炭酸ジエステルとしては、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
【0020】
【化2】

【0021】
ここで、一般式(2)中、A’は、置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基である。2つのA’は、同一でも相互に異なるものでもよい。
なお、A’上の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基などが例示される。
【0022】
炭酸ジエステルの具体例としては、ジフェニルカーボネート(以下、DPCと略記することがある。)、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。
【0023】
また、上記の炭酸ジエステルは、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。
【0024】
これら炭酸ジエステル(上記の置換したジカルボン酸又はジカルボン酸エステルを含む。以下同じ。)は、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して過剰に用いられる。
即ち、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常、炭酸ジエステル1.01〜1.30、好ましくは1.02〜1.20のモル比で用いられる。モル比が1.01より小さくなると、得られるポリカーボネート樹脂の末端OH基が多くなり、樹脂の熱安定性が悪化する傾向となる。また、モル比が1.30より大きくなると、エステル交換の反応速度が低下し、所望の分子量を有するポリカーボネート樹脂の生産が困難となる傾向となる他、樹脂中の炭酸ジエステルの残存量が多くなり、成形加工時や成形品の臭気の原因となることがあり、好ましくない。
【0025】
(エステル交換触媒)
本実施の形態において使用するエステル交換触媒としては、通常、エステル交換法によりポリカーボネートを製造する際に用いられる触媒が挙げられ、特に限定されないが、実用的にはアルカリ金属化合物が好ましく、その中でもセシウム化合物が好ましく、さらに、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化セシウムが好ましい。
エステル交換触媒の使用量は、通常、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して1×10−9〜1×10−1モル、好ましくは1×10−7〜1×10−2モルの範囲で用いられる。
【0026】
(ポリカーボネート樹脂の製造方法)
次に、ポリカーボネート樹脂の製造方法について説明する。
ポリカーボネート樹脂の製造は、原料である芳香族ジヒドロキシ化合物および炭酸ジエステルを含む混合物を調製し(原調工程)、これらの化合物の混合物を、エステル交換反応触媒の存在下、溶融状態で複数の反応器を用いて多段階方式で重縮合反応させる(重縮合工程)ことによって行われる。反応方式は、バッチ式、連続式、又はバッチ式と連続式の組合せのいずれでもよい。反応器は、一般に複数基の竪型反応器および/又はこれに続く少なくとも1基の横型反応器が用いられる。通常、これらの反応器は直列に設置され、連続的に処理が行われる。
重縮合工程後、反応を停止させ反応液中の未反応原料や反応副生物を脱揮除去する工程や、熱安定剤、離型剤、色剤等を添加する工程、ポリカーボネート樹脂を所定の粒径のペレットに形成する工程などを適宜追加してもよい。
次に、製造方法の各工程について説明する。
【0027】
(原調工程)
ポリカーボネート樹脂の原料として使用する芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとは、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下、バッチ式、半回分式または連続式の撹拌槽型の装置を用いて、溶融混合物として調製される。溶融混合の温度は、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAを用い、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを用いる場合は、通常120℃〜180℃、好ましくは125℃〜160℃の範囲から選択される。
【0028】
(重縮合工程)
芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応による重縮合は、通常、2段階以上、好ましくは3段〜7段の多段方式で連続的に行われる。
具体的な反応条件としては、温度:150℃〜320℃、圧力:常圧〜1.3Pa、平均滞留時間:5分〜150分の範囲である。
重縮合工程を多段で行う場合の各反応器においては、重縮合反応の進行とともに副生するフェノールをより効果的に排出するために、上記の反応条件内で、通常段階的により高温、より高真空に設定する。尚、得られるポリカーボネート樹脂の色相等の品質低下を防止するためには、できるだけ低温、短滞留時間の設定が好ましい。
【0029】
本実施の形態では、重縮合工程を多段方式で行い、複数基の竪型反応器を設けて、ポリカーボネート樹脂の平均分子量を増大させる。反応器は通常2基〜6基、好ましくは3基〜5基設置される。
【0030】
尚、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの重縮合に使用するエステル交換触媒は、通常、予め水溶液として準備される。触媒水溶液の濃度は特に限定されず、触媒の水に対する溶解度に応じて任意の濃度に調整される。また、水に代えて、アセトン、アルコール、トルエン、フェノール等の有機溶媒を用いることもできる。
触媒の溶解に使用する水としては、含有される不純物の種類ならびに濃度が一定であれば特に限定されないが、通常、蒸留水や脱イオン水等が好ましく用いられる。
【0031】
(製造装置)
次に、図面に基づき、本実施の形態が適用されるポリカーボネート樹脂の製造方法の一例を具体的に説明する。
図1は、熱可塑性樹脂の製造装置の一例を示す図である。図1に示す製造装置において、ポリカーボネート樹脂は、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物および炭酸ジエステルを調製する原調工程と、これらの原料を溶融状態で複数の反応器を用いて重縮合反応させる重縮合工程とを経て製造される。
その後、反応を停止させ重合反応液中の未反応原料や反応副生物を脱揮除去する工程(図示せず)や、熱安定剤、離型剤、色剤等を添加する工程(図示せず)、ポリカーボネート樹脂を所定の粒径のペレットに形成する工程(図示せず)を経て、ポリカーボネート樹脂のペレットが成形される。
【0032】
原調工程においては、原料調製槽2と、調製した原料を重縮合工程に供給するための原料供給ポンプ4aとが設けられている。原料調製槽2には、例えばアンカー型撹拌翼3が設けられている。
また、原料調製槽2には、DPC供給口1a−1から、炭酸ジエステルであるジフェニルカーボネート(以下、DPCと記載することがある。)が溶融状態で供給され、BPA供給口1bからは、芳香族ジヒドロキシ化合物であるビスフェノールA(以下、BPAと記載することがある。)が粉末状態(あるいは溶融状態)で供給され、溶融したジフェニルカーボネートにビスフェノールAが溶解(あるいは混合)される。
【0033】
次に、重縮合工程においては、本実施の形態による熱可塑性樹脂の製造装置が使用される。直列に接続した第1竪型反応器6aと、第2竪型反応器6bと、第3竪型反応器6cと、第4竪型反応器6dとが設けられている。そして、第1竪型反応器6a、第2竪型反応器6b、第3竪型反応器6c、および第4竪型反応器6dには、撹拌翼7a,7b,7c,7dがそれぞれ設けられており、移送管11a,11b,11cで直列に接続されている。
【0034】
4基の反応器には、それぞれ重縮合反応により生成する副生物等を排出するためのベント配管8a,8b,8c,8dが取り付けられている。ベント配管8a,8b,8c,8dは、それぞれ凝縮器81a,81b,81c,81dに接続し、また、各反応器は、図示しない減圧装置により、所定の減圧状態に保たれる。
また、ベント配管8a,8b,8c,8dを相互に接続する配管9a,9b,9cが設置され、配管9a,9b,9cには、バルブ10a,10b,10cが設けられている。
なお、各反応器の位置関係などについては後ほど詳述する。
【0035】
図1に示すポリカーボネート樹脂の製造装置において、窒素ガス雰囲気下、所定の温度で調製されたDPC溶融液と、窒素ガス雰囲気下で計量されたBPAとが、それぞれDPC供給口1a−1とBPA供給口1bから原料調製槽2に連続的に供給される。原料調製槽2の液面は、所定のレベルになるように制御され、原料混合物は、原料供給ポンプ4aを経由して第1竪型反応器6aに連続的に供給される。また触媒として、炭酸セシウム水溶液が、原料混合物の移送配管途中の触媒供給口5aから連続的に供給される。
【0036】
第1竪型反応器6aでは、窒素雰囲気下、例えば、温度220℃、圧力13.33kPa、撹拌翼7aの回転数を単位容積当たりの撹拌動力が0.8kW/mになるように保持し、副生したフェノールをベント配管8aから留出させながら平均滞留時間60分になるように液面レベルを一定に保ち、重縮合反応が行われる。次に、第1竪型反応器6aより排出された重合反応液は、引き続き、第2竪型反応器6b、第3竪型反応器6c、第4竪型反応器6dに順次連続供給され、重縮合反応が進行する。各反応器における反応条件は、重縮合反応の進行とともに高温、高真空、低撹拌速度となるようにそれぞれ設定される。重縮合反応の間、各反応器における平均滞留時間は、例えば、60分程度になるように液面レベルを制御し、また各反応器においては、副生するフェノールがベント配管8a,8b,8c,8dから留出される。
【0037】
なお、本実施の形態においては、第1竪型反応器6aと第2竪型反応器6bとにそれぞれ取り付けられた凝縮器81a,81bからは、フェノール等の留出物(未反応のDPC、BPAなども含まれる。)が連続的に液化回収される。また、第3竪型反応器6cと第4竪型反応器6dとにそれぞれ取り付けられた凝縮器81c,81dでは、留出物が連続的に凝縮・固化回収される。
【0038】
次に、第4竪型反応器6dより抜き出されたポリカーボネート樹脂は、出口配管12から溶融状態のまま図示しない押出機に供給される。押出機には添加剤供給口から、たとえば、p−トルエンスルホン酸ブチル、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ステアリン酸モノグリセリド等の各種添加剤がそれぞれ供給される。
押出機より排出されたストランド状のポリカーボネート樹脂は冷却水にて冷却固化された後、カッターでペレット化され、図示しない遠心脱水機にて水分除去した後に製品サイロに輸送される。
【0039】
次に、第1竪型反応器6a、第2竪型反応器6b、第3竪型反応器6c、第4竪型反応器6dの位置関係等について詳述する。
図2は、図1に示した熱可塑性樹脂の製造装置の必要な部分のみを簡略化して図示したものである。
図2に示した熱可塑性樹脂の製造装置は、前述の通り重縮合反応を行う4基の竪型の反応器6a,6b,6c,6dを備えている。また各反応器6a,6b,6c,6dは移送管11a,11b,11cで順次直列に接続されている。
【0040】
そして、各反応器6a,6b,6c,6dの位置関係は、段差を有して配置され、上流側の反応器のそれぞれの槽底が、隣接する下流側の反応器の供給口の設置位置より少なくとも高い位置に配置している。
具体的には、上流側の反応器である第1竪型反応器6aと隣接する下流側の反応器である第2竪型反応器6bの位置関係を例にとると、第1竪型反応器6aの槽底13aが、第2竪型反応器6bの供給口の設置位置14bよりh1だけ高い位置に配置している。
同様に、第2竪型反応器6bの槽底13bは、第3竪型反応器6cの供給口の設置位置14cよりh2だけ高い位置に、そして、第3竪型反応器6cの槽底13cは、第4竪型反応器6dの供給口の設置位置14dよりh3だけ高い位置に配置している。
【0041】
また、上流側の反応器から下流側の反応器へ順次接続し、反応液を移送する移送管は、供給口の設置位置と同じ高さ位置または供給口の設置位置より高い位置に配置することが必要である。
一部でも供給口の設置位置より低い部分があると、その部分に反応液が溜まり、反応液を完全に移送できにくくなる。
【0042】
図3は、第1竪型反応器6a、隣接する下流側の反応器である第2竪型反応器6b、および移送管11aで例示し、上記の位置関係を説明した図である。
図3(a)において、第1竪型反応器6aの槽底13aは、第2竪型反応器6bの供給口の設置位置14bよりh4だけ高い位置にあり、かつ、移送管11aは、供給口の設置位置14bと同じ高さ位置または供給口の設置位置14bより高い位置に配置している。この場合は、槽底13a、供給口の設置位置14b、および移送管11aの位置関係は問題ない。
一方、図3(b)において、第1竪型反応器6aの槽底13aは、第2竪型反応器6bの供給口の設置位置14bよりh5だけ低い位置にあるため、槽底13aと供給口の設置位置14bの位置関係に問題がある。
また、図3(c)において、第1竪型反応器6aの槽底13aは、第2竪型反応器6bの供給口の設置位置14bよりh6だけ高い位置にあるので槽底13aと供給口の設置位置14bの位置関係に問題はないが、移送管11aの一部分に、供給口の設置位置14bよりh7だけ低い部分がある。よって、移送管11aの配置関係に問題がある。
【0043】
各反応器6a,6b,6c,6dの内部には撹拌手段(撹拌機)が設置され、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂は、この撹拌手段により撹拌されつつ各反応器内で重縮合反応を進行させる。そして、一定の時間反応器内に滞留後、それぞれの反応器の槽底から隣接する下流側の反応器へ移送管を通して移送される。そして、第4竪型反応器6dで最終的な反応が終了した反応液は、第4竪型反応器6dの槽底13dから次工程へ移送される。
ここで、前述の通り、上流側の反応器は隣接する下流側の反応器に対し、所定の高さ高い位置に配置するため、反応液は、ポンプ等の移送手段を用いないでも、反応器の高低差により下流側の反応器へ移送することができる。
また、前述のh1,h2,h3は、各移送管11a,11b,11cにおける反応液の圧力損失を考慮することで決定することができる。即ち、反応液の位置エネルギーが、反応液による移送管内の圧力損失を上回る位置に上流側の反応器を設置する必要がある。本実施の形態では、上流側の反応器の槽底が、下流側の反応器の供給口の設置位置より高い位置にあればこの条件を満たすことができる。
【0044】
なお、上流側の反応器を設置する高さとしては、上流側の反応器の槽底が、下流側の反応器の供給口の設置位置より高い位置にあれば特に制限されるものではないが、耐震性、コストその他の要因から、現実には、上流側の反応器の槽底の位置は、下流側の反応器の供給口の設置位置から下流側の反応器の1.5倍分高い位置までに留めるのが好ましい。また、1倍分高い位置までに留めるのが更に好ましい。
また、上述の例では、反応器は全て竪型であったが、これに限られるものではなく、横型その他の反応器であってもよい。
【0045】
また、図2において、前述の通り各反応器6a,6b,6c,6dは、上流側の反応器から下流側の反応器へ順次接続し、上流側の反応器と隣接する下流側の反応器の内圧を等しくするための配管9a,9b,9cを備えている。
この配管9a,9b,9cには、バルブ10a,10b,10cが取り付けられている。
【0046】
反応器の検査、修理等のため、反応器内部の洗浄を行う必要がある場合、反応器の運転を全て停止し、洗浄液を上流側の反応器から下流側の反応器に順次移送しつつ各反応器の洗浄を行う。
具体的には、まず、各反応器6a,6b,6c,6dから全て反応液を抜き出し、第1竪型反応器6aに洗浄液を導入する。
そして、第1竪型反応器6aの撹拌機7aを回転させることにより第1竪型反応器6aの洗浄を行う。
【0047】
次に、第2竪型反応器6bの洗浄を行うが、このとき、洗浄液を第1竪型反応器6aから第2竪型反応器6bへ移送する必要がある。第1竪型反応器6aの内圧と第2竪型反応器6bの内圧とが等しくないと、洗浄液を第1竪型反応器6aから第2竪型反応器6bに円滑に移送できない場合がある。そこで、バルブ10aを開き、配管9aを使用することにより、第1竪型反応器6aと第2竪型反応器6bの内圧を等しくする。
この状態で第1竪型反応器6aから第2竪型反応器6bへの洗浄液の移送を行うと、反応器の高低差により円滑に洗浄液の移送が完了する。また、このとき移送管11aの洗浄も行うことができる。
そして、第2竪型反応器6bの撹拌機7bを回転させることにより第2竪型反応器6bの洗浄を行うことができる。
【0048】
第3竪型反応器6c,第4竪型反応器6dの洗浄の手順も同様であり、それぞれ配管9bとバルブ10b、配管9cとバルブ10cを上述の通り使用することで、上流側の反応器と隣接する下流側の反応器の内圧とを等しくし、洗浄液の移送を円滑に行うことができる。移送後はそれぞれの反応器の撹拌機7c,7dを使用することにより洗浄を行なえばよく、そして洗浄液の移送時には移送管11b,11cの洗浄も行うことができる。
上述の方法を採ることにより、洗浄液を円滑に移送でき、簡便に反応器や移送管の洗浄が可能となる。
【0049】
以上、ポリカーボネート樹脂の製造装置を例に挙げて、本実施の形態が適用される熱可塑性樹脂の製造装置について説明した。
なお、本実施の形態において詳述した熱可塑性樹脂の製造装置は、重付加反応、重縮合反応、エステル交換反応を用いて溶融重合することにより得られる熱可塑性樹脂の製造装置であれば適用が可能である。熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】熱可塑性樹脂の製造装置の一例を示す図である。
【図2】図1に示した熱可塑性樹脂の製造装置の必要な部分のみを簡略化して図示したものである。
【図3】第1竪型反応器、隣接する下流側の反応器である第2竪型反応器、および移送管で例示し、各々の位置関係を説明した図である。
【符号の説明】
【0051】
2…原料調製槽、3…アンカー型撹拌翼、4a…原料供給ポンプ、5a…触媒供給口、6a…第1竪型反応器、6b…第2竪型反応器、6c…第3竪型反応器、6d…第4竪型反応器、7a,7b,7c,7d…撹拌翼、8a,8b,8c,8d…ベント配管、9a,9b,9c…配管、10a,10b,10c…バルブ、11a,11b,11c…移送管、12…出口配管、13a,13b,13c,13d…槽底、14a,14b,14c,14d…供給口の設置位置、81a,81b,81c,81d…凝縮器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベント配管を設け、移送管により接続された複数の反応器と、
前記ベント配管を相互に接続する配管と、を有し、
前記複数の前記反応器は、上流側の前記反応器の槽底が隣接する下流側の前記反応器の供給口の設置位置より少なくとも高い位置に配置され、かつ、前記移送管は、当該供給口の設置位置と同じ高さ位置または当該供給口の設置位置より高い位置に配置することを特徴とする熱可塑性樹脂の製造装置。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂は、重付加反応、重縮合反応およびエステル交換反応の何れか1つを用いて溶融重合することにより得ることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂の製造装置。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリアリレート樹脂の何れか1つであることを特徴とする請求項2に記載の熱可塑性樹脂の製造装置。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物および炭酸ジエステルを原料とするエステル交換反応により得られるポリカーボネート樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の熱可塑性樹脂の製造装置。
【請求項5】
段差を有して配置され、移送管により接続された複数の反応器に設けられたベント配管を相互に接続し、
前記反応器内の洗浄液を当該反応器間の高低差により移送することを特徴とする熱可塑性樹脂の製造装置の洗浄方法。
【請求項6】
前記段差は、上流側の前記反応器の槽底が隣接する下流側の前記反応器の供給口の設置位置より少なくとも高い位置に配置することにより作られることを特徴とする請求項5に記載の熱可塑性樹脂の製造装置の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−285565(P2008−285565A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130942(P2007−130942)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】