説明

熱可塑性樹脂組成物およびその成形体

【課題】 十分な表面潤滑性を有し、長期屋外暴露後の外観不良発生が抑制された成形体を形成し得る熱可塑性樹脂組成物の提供。
【解決手段】 (A)ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性樹脂、(B)平均単位式:RSiO(4−a)/2{式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは1.95〜2.05の数である。}で表されるオルガノポリシロキサン、(C)金属害防止剤からなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物およびその成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性樹脂組成物およびその成形体に関し、詳しくは、長期の屋外暴露後でも外観不良の発生が抑制された成形体を形成し得るオルガノポリシロキサン配合熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂はリサイクル使用が可能という点から、自動車の内装部品および外装部品、家電製品の外装部品として使用されている。しかし、この種の熱可塑性樹脂、特に熱可塑性樹脂エラストマーは、表面潤滑性、耐摩耗性に劣り、その表面に傷が付き易いという欠点があった。かかる欠点を解消するために、熱可塑性樹脂エラストマーにオルガノポリシロキサンを配合した組成物が提案されている。例えば、特開2000−109702号公報では、オレフィン系熱可塑性エラストマーにシリコーンオイルおよび/またはシリコーンポリマーとシリコーンパウダーを配合した耐摩耗性熱可塑性樹脂組成物が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−109702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者らは、オルガノポリシロキサンを配合した熱可塑性樹脂組成物からなる成形体を長期間屋外暴露した際、成形体表面に移行したオルガノポリシロキサンに起因して成形体表面が白化するなどの外観不良が発生する場合があることを見出した。
【0005】
本発明の目的は、十分な表面潤滑性を有すると同時に、上記の外観不良発生が抑制された成形体を形成し得る熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(A)熱可塑性樹脂、(B)オルガノポリシロキサン、(C)金属害防止剤からなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物およびその成形体を提供するものである。
【0007】
上記(A)成分としては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0008】
上記(B)成分としては、平均単位式:RSiO(4−a)/2{式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは1.95〜2.05の数である。}で表される25℃における動粘度が10万mm/sec以上であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。また上記(B)成分は、上記(A)成分100質量部に対して0.1〜50質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0009】
上記(C)成分としては、ヒドラジド系化合物、アミノトリアゾール系化合物およびアミノ基含有トリアジン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属害防止剤であることが好ましい。また上記(C)成分は、上記(A)成分と(B)成分の合計量100質量部に対して0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂、(B)オルガノポリシロキサンおよび(C)金属害防止剤からなるので、その成形体の表面潤滑性が優れ、長期屋外暴露による外観不良発生が抑制されるという特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(A)成分の熱可塑性樹脂は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の主剤であり、常温で固体であるが温度上昇に伴って塑性変形する有機樹脂であればよく、その種類等については特に限定されない。なお、(A)成分は単独の熱可塑性樹脂から構成されてもよく、2種類以上の熱可塑性樹脂の混合物であってもよい。
【0012】
かかる(A)熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)樹脂,低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、超高分子量ポリエチレン(UHMPE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリメチルペンテン樹脂(MPX)、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリポロピレン−エチレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ポリメチルメタアクリレート(PMMA)樹脂などのアクリル系ビニル樹脂;ポリスチレン(PS)樹脂、高衝撃性ポリスチレン(HIPS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)共重合樹脂,アクリロニトリル−スチレン(AS)共重合樹脂、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン(AAS)共重合樹脂、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン(AES)共重合樹脂などのスチレン系ビニル樹脂;ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)などの他のビニル系樹脂;ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂などのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド樹脂;ポリアセタール(POM)等のポリオキシアルキレン樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)樹脂、ポリ酢酸ビニル(PVAC)樹脂、ポリサルフォン(PSU)樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、液晶ポリエステル(LCP)樹脂、およびこれらの共重合体が例示される。
【0013】
また、熱可塑性エラストマーと呼称されている熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、フッ素ポリマー系熱可塑性エラストマーが例示される。
【0014】
中でも、成形の容易さ、及び成形体の柔軟性の点から、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましく、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが特に好ましい。
【0015】
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、ポリエチレンあるいはポリプロピレンを硬質相とし、過酸化物や他の架橋剤を用いて動的架橋したEPT、EPMなどのEPRあるいはブチルゴムなどを軟質相とする動的架橋型と称されるポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが例示される。このようなポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、例えば、AESジャパン株式会社化からサントプレーンと言う商品名で市販されている。このような軟質層を動的架橋したポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、成形体の耐熱性や、耐候性、各種機械的特性に優れることから本発明の熱可塑性樹脂組成物の主剤として好適に用いることができる。
【0016】
また、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとして、ポリエチレンあるいはポリプロピレンを硬質相とし、EPT、EPMなどのEPRあるいはブチルゴムを軟質相とするポリマーブレンド型あるいはポリマーアロイ型と称されるポリオレフィン系熱可塑性エラストマーも例示される。かかるポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、例えば、三井石油化学株式会社からミラストマー、グドマーという商品名で市販されている。
【0017】
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、ポリスチレンを硬質相とし、ポリブタジエン、ポリイソブチレンあるいは水添加ポリブタジエンを軟質相とするブロック共重合体型のポリスチレン系熱可塑性エラストマーが例示される。かかるポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、旭化成工業株式会社からタフテック、タフプレン、ソルプレン、アサプレンという商品名で市販されている。また、上記のような軟質相を過酸化物若しくは他の架橋剤を用いて動的架橋したポリスチレン系熱可塑性エラストマーが、リケンテクノス株式会社からアクティマーの商品名で市販されている。
【0018】
本発明において(B)成分のオルガノポリシロキサンは、本発明組成物を成形してなる成形体表面に潤滑性や耐傷付き性を付与するための成分である。好ましい(B)オルガノポリシロキサンは、平均単位式: RSiO(4−a)/2 で表され、式中、Rは炭素原子数1〜10の置換または非置換の一価炭化水素基であり、aは1.95〜2.05の数である。Rの一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基などのアルケニル基;フェニル基などのアリール基が例示される。中でもアルキル基が好ましく、特にメチル基であることが好ましい。(B)成分は、分子鎖末端などに少量の水酸基を含有してもよい。なお、(B)成分は、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基;シラザン基などの加水分解性反応基を含まないことが好ましい。これは、(B)成分中に加水分解性反応基が存在すると、本発明組成物の保存安定性が損なわれたり、本発明組成物の成形体の表面潤滑性が安定しなかったりする場合があるからである。
【0019】
(B)オルガノポリシロキサンの分子構造としては、直鎖状、一部分岐構造を有する直鎖状、網目状のいずれでもよいが、直鎖状または一部分岐構造を有する直鎖状であることが好ましい。具体的には、トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン,トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体,トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体,シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン,シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体,シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体が例示される。
【0020】
(B)オルガノポリシロキサンの動粘度は特に限定されないが、25℃における動粘度が10万mm/sec以上であれば、取り扱い作業性に優れ、また、本発明組成物の成形体表面に好ましい潤滑性と耐傷付き性を付与できるので好ましい。(B)オルガノポリシロキサンの25℃における動粘度は、50万mm/sec以上であることがより好ましく、25℃における動粘度が100万mm/sec以上の半固体(ガム状)であることがさらに好ましい。
【0021】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜50質量部の範囲であることが好ましく、0.5〜20質量部の範囲であることがより好ましい。これは、(B)成分の配合量が上記範囲下限未満であると本発明組成物の成形体表面に十分な潤滑性を付与することができず、(B)成分の配合量が上記範囲上限を越えると本発明組成物の粘着性が高くなってペレット化が困難となったりして取り扱い作業性が損なわれる場合があるためである。
【0022】
(C)成分の金属害防止剤は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形体を長期間屋外暴露した際、成形体表面に発生する白化などの外観不良を防止する成分である。このような外観不良が発生する機構は明らかではないが、(B)成分を配合していない熱可塑性樹脂組成物ではこのような外観不良が認められないことから、該成形体表面に移行した(B)成分の劣化が、(A)成分中に重合触媒や架橋剤などとして微量配合される錫やチタン等の重金属によって、促進されて発生すると予想される。
【0023】
(C)成分としては、ヒドラジド系化合物、シュウ酸系化合物、アミノトリアゾール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、サリチリデンアミン系化合物など公知の金属害防止剤を使用することができ、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社、株式会社ADEKA、SOCTECH S.Aなどから購入することができる。中でも、ヒドラジド系化合物、アミノトリアゾール系化合物、アミノ基含有トリアジン系化合物が好ましい。
【0024】
ヒドラジド系化合物としては、一般式(1)で表されるジアシルヒドラジド系化合物であることが好ましい。
【化1】


式中R、Rは同一もしくは異なった水素原子、水酸基、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、フェノール基などの置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基を表す。R、Rとしては、アリール基、またはフェノール基などの置換アリール基を含む一価の単価水素基であることが好ましい。具体的には、N,N’−ジホルミルヒドラジン、N,N’−ジアセチルヒドラジン、N,N’−ジプロピオニルヒドラジン、N,N’−ブチリルヒドラジン、N−ホルミル−N’−アセチルヒドラジン、N,N’−ジベンゾイルヒドラジン、N,N’−ジトルオイルヒドラジン、N,N’−ジサリチロイルヒドラジン、N−ホルミル−N’−サリチロイルヒドラジン、N−ホルミル−N’−ブチル置換サリチロイルヒドラジン、N−アセチル−N’−サリチロイルヒドラジン、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、シュウ酸−ジ−(N’−サリチロイル)ヒドラジン、アジピン酸−ジ−(N’−サリチロイル)ヒドラジン、ドデカンジオイル−ジ−(N’−サリチロイル)ヒドラジンが例示される。市販品としては、イルガノックスMD1024(商品名;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製:N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン)、アデカスタブCDA−6(商品名:(株)ADEKA製;ドデカンジオイル−ジ−(N’−サリチロイル)ヒドラジン)が例示される。
【0025】
アミノトリアゾール系化合物は、一般式(2)で表される。
【化2】

式中R、Rは同一もしくは異なった水素原子、アルキル基、置換アルキル基、置換アリール基、カルボキシル基、アシル基、アルキルエステル基、アリルエステル基、ハロゲン、アルカリ金属を表し、Rは、水素原子またはアシル基を示す。Rとしては、アシル基であることが好ましく、特にサリチロイル基、ベンゾイル基などの芳香族環を有するアシル基であることが好ましい。
【0026】
具体的には、3−アミノ−1,2,4トリアゾール、3−アミノ−1,2,4トリアゾール−カルボキシリックアシッド、3−アミノ−5メチル−1,2,4トリアゾール、3−アミノ−5ヘプチル−1,2,4トリアゾール等;トリアゾール基結合アミノ基の水素原子がアシル基で置換されたアミノトリアゾール系化合物の酸アミド誘導体、たとえば、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4トリアゾール、3−(N−サリチロイル)アミノ−5メチル−1,2,4トリアゾール、3−(N−アセチル)アミノ−1,2,4トリアゾール−5カルボキシリックアシッドが例示される。中でも、アミノトリアゾール系化合物の酸アミド誘導体が好ましい。市販品としては、アデカスタブCDA−1(商品名:(株)ADEKA製;3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール)が例示される。
【0027】
トリアジン系化合物としては、1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリヒドロキシ−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジンが例示される。市販品としては、アデカスタブZS−27(商品名:(株)ADEKA製;主成分:2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン)が例示される。
【0028】
(C)成分としては、中でも、特にヒドラジド系化合物であることが好ましく、N,N’−ビス[ 3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジンが最も好ましい。これは、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社よりイルガノックスMD−1024として販売されている。
【0029】
(C)成分である金属害防止剤の配合量は(A)熱可塑性樹脂と(B)オルガノポリシロキサンの合計100質量部に対して0.05〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜4質量部、さらに好ましくは0.2〜2質量部である。(C)成分の配合量が上記範囲の下限未満では、長期屋外暴露後の外観不良抑制効果が十分でない場合があるからであり、(C)成分の配合量が上記範囲上限を超えると本発明組成物の機械的性質が低下したり(C)成分が表面にブルームアウトしたりする場合があるからである。(C)金属害防止剤は1種類を単独で使用してもよく、2種類以上のものを混合して使用してもよい。
【0030】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記のような(A)成分〜(C)成分からなるものであるが、本発明組成物100質量部に対して0.1〜5質量部、好ましくは、0.1〜2質量部のヒンダードフェノール系あるいはヒンダードアミン系等の酸化防止剤を配合してもよい。また、本発明組成物には、本発明組成物100質量部に対して0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜3質量部のビスフェノールA型等のエポキシ樹脂を配合してもよい。かかるエポキシ樹脂は、酸化防止剤等の添加剤が、無機充填剤に吸着され、その効果が減じるのを防止する必要性がある場合に使用される。
【0031】
さらに、本発明組成物には、流動性や機械的強度を損なわない範囲で、充填剤、例えば炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、シリカ、ケイソウ土、雲母粉、アスベスト、アルミナ、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、二硫化モリブデン、グラファイト、カーボンブラック、カーボン繊維、シリコーンゴム粉末、シリコーンレジン粉末などを配合することができる。また、本発明組成物には、熱可塑性エラストマー組成物に配合することが公知とされる各種添加剤を添加配合することは、本発明の目的を損なわない限り差し支えない。かかる添加剤としては、紫外線吸収剤,耐光安定剤,耐熱安定剤,可塑剤,発泡剤,結晶核剤,滑剤,帯電防止剤,導電性付与剤,顔料や染料などの着色剤,相溶化剤,架橋剤,難燃剤,防カビ剤,低収縮剤,増粘剤,離型剤,防曇剤,ブルーミング防止剤,シランカップリング剤が挙げられる。
本発明組成物は、上記のような(A)成分〜(C)成分を所定の比率で加熱溶融下均一に混合することによって容易に製造することができる。また、(A)成分100質量部に対して、10〜150質量部の(B)成分、0.1〜50質量部の(C)成分を加熱溶融下混合してあらかじめ、マスターバッチを調製し、しかる後に、(A)成分に、(B)成分および(C)成分の最終組成物中の含有量が所望の比率となるような量の該マスターバッチを加熱溶融下混合してもよい。また、(A)成分100質量部に対して、10〜150質量部の(B)成分を加熱溶融下混合して、あらかじめマスターバッチを調製し、しかる後に、(A)成分と(C)成分の混合物に、(B)成分の最終組成物中の含有量が所望の比率となるような量の該マスターバッチを加熱溶融下混合してもよい。本発明組成物の調製に用いる製造装置としては、特に制限は無く、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、2本ロール、連続混練押出機が例示される。
【0032】
(A)成分がポリオレフィン系熱可塑性エラストマーである場合、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリプロピレン−エチレン共重合体、EPRなどのポリオレフィン系樹脂100質量部に10〜150質量部の(B)成分および/または0.1〜50質量部の(C)成分を加熱溶融下混練してマスターバッチ化してもよい。
【0033】
本発明組成物を成形して成形体を得る方法としては、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、射出成形、押出成形、圧縮成形が例示される。
【実施例】
【0034】
以下に実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例中粘度は25℃における値である。
<色測定方法>
ミノルタ株式会社製の分光測定器(MINOLTA CM2002)を用いて、L*、a*、b*表色系により色を測定した。L*軸は明度を規定し、a*軸は赤/緑方向を規定し、b*軸は黄/青方向を規定する。L*軸は0(黒)〜100(白)であり、a*軸は+方向が赤、−方向が緑、b*軸は+方向が黄、−方向が青で表される。色差(ΔE)は以下の式により求めた。


ΔL= L*(2) − L*(1)
Δa= a*(2) − a*(1)
Δb = b*(2) − b*(1)
式中a*(1)、b*(1)、L*(1)は、促進耐候性試験投入前の試験片の色の測定結果である。式中a*(2)、b*(2)、L*(2)は、促進耐候性試験後の試験片の色の測定結果である。
【0035】
[実施例1〜5]
熱可塑性樹脂とオルガノポリシロキサン、金属害防止剤を表1に示す配合割合で、ラボプラストミルを用いて、200℃、100rpmで加熱下混合した。混合後、冷却して固体状の熱可塑性樹脂組成物を得た。この熱可塑性樹脂組成物を再度200℃の熱プレスで溶融し、100mmx200mmx2mmの平板を成形した。これをキセノン耐候試験機(ブラックパネル温度:63℃、雨有り)で光照射し2000時間の促進耐候性試験を実施した。試験前後のL*,a*,b*を測定し色差ΔEを算出した。その結果を表1に示した。
【0036】
[比較例1]
熱可塑性樹脂とオルガノポリシロキサンを表1に示す組成割合で、ラボプラストミルを用いて、200℃、100rpmで加熱下混合した。混合後、冷却して固体状の熱可塑性樹脂組成物を得た。この熱可塑性樹脂組成物を再度200℃の熱プレスで溶融し、100mmx200mmx2mmの平板を成形した。これをキセノン耐候試験機(ブラックパネル温度:63℃、雨有り)で光照射し2000時間の促進耐候性試験を実施した。試験前後のL*,a*,b*を測定し色差ΔEを算出した。その結果を表1に示した。
【0037】
[実施例6]
ADFLEX(登録商標) KS359P(BASELL社製) 50質量部、BY16−140(東レ・ダウコーニング(株)製) 50質量部、イルガノックス MD−1024(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 5質量部をラボプラストミルを用いて、200℃、100rpmで加熱下混合した。混合後、冷却して固体状のマスターバッチを得た。
【0038】
サントプレーン 121−62M 100(AESジャパン(株)製)95質量部と上記マスターバッチ 10.5質量部をラボプラストミルを用いて、200℃、100rpmで加熱下混合した。混合後、冷却して固体状の熱可塑性樹脂組成物を得た。この熱可塑性樹脂組成物を再度200℃の熱プレスで溶融し、100mmx200mmx2mmの平板を成形した。これをキセノン耐候試験機(ブラックパネル温度:63℃、雨有り)で光照射し2000時間の促進耐候性試験を実施した。試験前後のL*,a*,b*を測定し色差ΔEを算出した。その結果を表1に示した。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】


※ 1:オレフィン系熱可塑性エラストマー
商品名:サントプレーン 121−62M 100 (AESジャパン(株)製)
※ 2:商品名:BY16−140
分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシリル基封鎖ポリジメチルシロキサン;動粘度1600万mm/sec以上、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量35万(東レ・ダウコーニング(株)製)
※ 3:商品名:イルガノックス MD−1024
N,N’−ビス[ 3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
※ 4:商品名:アデカスタブ CDA−1
3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール((株)ADEKA製)
※ 5:商品名:アデカスタブ CDA−6
ドデカンジオイル−ジ−(N’−サリチロイル)ヒドラジン((株)ADEKA製)
※ 6:商品名:アデカスタブ ZS−27
2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジンを主成分とする混合物((株)ADEKA製)
※ 7:ADFLEX(登録商標) KS359P(BASELL社製) 50質量部、BY16−140(東レ・ダウコーニング(株)製) 50質量部、イルガノックス MD−1024(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 5質量部からなる混合物
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のような本発明組成物は、成形性に優れ、成形後は、表面潤滑性、耐傷付き性、耐候性に優れた成形品になるので、かかる特性の要求される分野、例えば、ドアトリム材、コンソールパネル、インスツルメンタルパネル、ウェザーストリップ等の自動車の内装部品あるいは外装部品、窓枠などガラスサッシの外装材や、ガスケット、パッキンなどの建築用部材、家電製品の外装部品として好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂、(B)オルガノポリシロキサン、(C)金属害防止剤からなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分が、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
(B)成分が、平均単位式:RSiO(4−a)/2{式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは1.95〜2.05の数である。}で表される25℃における動粘度が10万mm/sec以上であるオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
(C)成分がヒドラジド系化合物、アミノトリアゾール系化合物およびアミノ基含有トリアジン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属害防止剤であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
(B)成分の配合量が、(A)成分100質量部に対して、0.1〜50質量部であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
(C)成分の配合量が、(A)成分と(B)成分の合計量100質量部に対して、0.05〜10質量部であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形体。

【公開番号】特開2007−197720(P2007−197720A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352471(P2006−352471)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】