説明

熱可塑性樹脂組成物及びその成形体

【課題】 ポリ乳酸系樹脂の分散性が良好であり、耐衝撃性や成形性に優れ、かつ光沢性を抑えた高級感のある外観を有する熱可塑性樹脂組成物及びそれを用いてなる成形体を提供する。
【解決手段】 プロピレン系重合体(A)を10〜88質量%、ポリ乳酸系樹脂(B)を10〜88質量%、エポキシ基を含有するエチレン系重合体(C)を1〜50質量%及びエラストマー類(D)1〜50質量%を含有するプロピレン系樹脂組成物と、
分子量が500〜100,000である酸変性ポリオレフィンワックスと、を
含有する熱可塑性樹脂組成物。
(但し、プロピレン系重合体(A)、ポリ乳酸系樹脂(B)、エポキシ基を含有するエチレン系重合体(C)及びエラストマー類(D)の合計量を100質量%とする。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物及びその成形体に関する。具体的には、ポリ乳酸系樹脂を含有するプロピレン系樹脂組成物と酸変性ポリオレフィンワックスとを含む光沢を抑えた熱可塑性樹脂組成物及びその成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境への影響を意識して、植物を原料として合成されるポリ乳酸系樹脂の利用が検討されている。
例えば、特許文献1には、衝撃強度等に優れた成形品を提供することが可能な樹脂組成物として、ポリ乳酸系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びエポキシ化ポリオレフィンを含有することを特徴とする樹脂組成物が記載されている。
また、特許文献2には、引張破断伸び、耐衝撃性および光沢に優れる樹脂組成物として、結晶性ポリプロピレン系重合体、ポリ乳酸樹脂、エポキシ基を有するエチレン系重合体および前記エポキシ基を有するエチレン系重合体とは異なるエラストマー類を含有する樹脂組成物が記載されている。
一方、特許文献3には、その外観として光沢性を押さえ深みのあるシルキー性とマット調とを有する樹脂組成物を目的として、ポリ乳酸と重量平均分子量が10万以上のポリプロピレンと無機充填剤とを含む樹脂組成物およびその製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−106843号公報
【特許文献2】特開2007−277444号公報
【特許文献3】特開2007−145912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような樹脂組成物から得られる成形体の耐衝撃性や成形性、さらにはその外観については更なる改良が求められている。
かかる状況下、本発明は、ポリ乳酸系樹脂の分散性が良好であり、耐衝撃性や成形性に優れ、かつ光沢性を抑えた高級感のある外観を有する成形体およびそのための樹脂組成物を提供することを目的とする。更に本発明は、かかるポリ乳酸系樹脂を含有する樹脂組成物に顔料により着色した場合にも光沢性を抑えた高級感のある成形体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、以下の構成を採用することにより、本発明の課題を解決することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、次の発明に係るものである。
<1> プロピレン系重合体(A)を10〜88質量%、ポリ乳酸系樹脂(B)を10〜88質量%、エポキシ基を含有するエチレン系重合体(C)を1〜50質量%及びエラストマー類(D)1〜50質量%を含有するプロピレン系樹脂組成物と、
分子量が500〜100,000である酸変性ポリオレフィンワックスと、を
含有する熱可塑性樹脂組成物。
(但し、プロピレン系重合体(A)、ポリ乳酸系樹脂(B)、エポキシ基を含有するエチレン系重合体(C)及びエラストマー類(D)の合計量を100質量%とする。)
<2> 前記プロピレン系樹脂組成物と酸変性ポリオレフィンワックスとの含有比が、プロピレン系樹脂組成物100質量部に対し、酸変性ポリオレフィンワックスが、0.5〜10質量部である前記<1>記載の熱可塑性樹脂組成物。
<3> 酸変性ポリオレフィンワックスを構成するオレフィンが、エチレンまたはプロピレンである前記<1>または<2>記載の熱可塑性樹脂組成物。
<4> 酸変性ポリオレフィンワックスを構成する酸成分が、カルボン酸である前記<1>から<3>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
<5> 顔料をさらに含有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
<6> 前記<1>から<5>ののいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を用いてなることを特徴とする成形体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ポリ乳酸系樹脂の分散性が良好であり、耐衝撃性と成形性に優れ、かつ光沢性を抑えた外観を有する(着色)熱可塑性樹脂組成物及びそれからなる成形体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例4の表面観察結果である。
【図2】比較例3の表面観察結果である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体、ポリ乳酸系樹脂、エポキシ基を含有するエチレン系重合体、及びエラストマー類を含有する。以下詳細に説明する。
【0010】
[プロピレン系重合体(A)]
本発明に用いられるプロピレン系重合体(以下、成分(A)ともいう)は、プロピレンに由来する単量体単位を有し、プロピレン単独重合体(以下、成分(A−1)ともいう)、及び、プロピレン−エチレン共重合体(以下、成分(A−2)ともいう)からなる群から選ばれる少なくとも1種のプロピレン系重合体が用いられる。
プロピレン−エチレン共重合体(成分(A−2))としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体(以下、成分(A−2−1)ともいう)、プロピレン−エチレンブロック共重合体(以下、成分(A−2−2)ともいう)が挙げられる。このプロピレン−エチレンブロック共重合体(成分(A−2−2))とは、プロピレン単独重合体成分と、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分とからなる共重合体である。
プロピレン系重合体(成分(A))として、好ましくは、成形体の剛性、耐熱性又は硬度の観点から、プロピレン単独重合体(成分(A−1))、又は、プロピレン−エチレンブロック共重合体(成分(A−2−2))である。
【0011】
プロピレン単独重合体(成分(A−1))の13C−NMRによって測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率は0.95以上が好ましく、さらに好ましくは0.98以上である。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(成分(A−2−2))のプロピレン単独重合体成分の、13C−NMRによって測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率は0.95以上が好ましく、さらに好ましくは0.98以上である。
【0012】
アイソタクチック・ペンタッド分率とは、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に記載されている方法、すなわち13C−NMRによって測定されるプロピレン系重合体分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である(ただし、NMR吸収ピークの帰属は、その後発刊されたMacromolecules,8,687(1975)に基づいて決定される)。具体的には、13C−NMRスペクトルによって測定されるメチル炭素領域の吸収ピークの面積に対する、mmmmピークの面積の割合が、アイソタクチック・ペンタッド分率である。この方法によって測定された英国 NATIONAL PHYSICAL LABORATORYのNPL標準物質 CRM No.M19−14Polypropylene PP/MWD/2のアイソタクチック・ペンタッド分率は、0.944であった。
【0013】
上記プロピレン単独重合体(成分(A−1))の135℃のテトラリン溶媒中で測定される極限粘度([η]P)、ブロック共重合体(成分(A−2−2))のプロピレン単独重合体成分の135℃のテトラリン溶媒中で測定される極限粘度([η]P)、ランダム共重合体(成分(A−2−1))の135℃のテトラリン溶媒中で測定される極限粘度([η])は、好ましくはそれぞれ0.7〜5dl/gであり、より好ましくは0.8〜4dl/gである。
【0014】
また、プロピレン単独重合体(成分(A−1))、ブロック共重合体(成分(A−2−2))のプロピレン単独重合体成分、ランダム共重合体(成分(A−2−1))のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布(Q値、(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))、以下、「Mw/Mn」と略記することがある)として、好ましくはそれぞれ3以上7以下である。
【0015】
上記ブロック共重合体(成分(A−2−2))のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分に含有されるエチレン含有量は20〜65質量%、好ましくは25〜50質量%である(ただし、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分の全量を100質量%とする)。
【0016】
上記ブロック共重合体(成分(A−2−2))のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の135℃のテトラリン溶媒中で測定される極限粘度([η]EP)は、好ましくは、1.5〜12dl/gであり、より好ましくは2〜8dl/gである。
【0017】
上記ブロック共重合体(成分(A−2−2))を構成するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の含有量は、10〜60質量%であり、好ましくは10〜40質量%である。
【0018】
上記プロピレン系重合体(成分(A))のメルトフローレイト(MFR)は、0.1〜300g/10分であり、成形体の用途によって適切なメルトフローレイト(MFR)を採用する必要がある。例えば、耐衝撃性のある成形体とするには、メルトフローレイト(MFR)は、0.1〜17g/10分、好ましくは1〜10g/10分である。また、成形性、特に薄肉成形性が必要な成形体では、メルトフローレイト(MFR)は、80〜300g/10分、好ましくは90〜150g/10分である。但し、ここでいうメルトフローレイトとは、JIS K 7210(1995)に規定された方法によって、試験荷重21.18N、試験温度230℃の条件で測定される。
【0019】
なお、上記メルトフローレイト(MFR)の範囲のプロピレン系重合体(成分(A))としては、適当なメルトフローレイト(MFR)のプロピレン単独重合体(成分(A−1))を単独でまたは2種以上混合して使用することができる。また、適当なメルトフローレイト(MFR)のプロピレン−エチレン共重合体(成分(A−2))を単独でまたは2種以上混合して使用することができる
【0020】
プロピレン系重合体(成分(A))を製造する方法としては、チーグラー・ナッタ型触媒又はメタロセン触媒を用いて、プロピレンを単独重合する方法、又はプロピレン以外のオレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンとプロピレンとを共重合する方法等が挙げられる。チーグラー・ナッタ型触媒としては、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分を組み合わせて用いる触媒系が挙げられる。メタロセン触媒としては、シクロペンタジエニル骨格を少なくとも1個有する周期表第4族〜第6族の遷移金属化合物及び助触媒成分を組み合わせて用いる触媒系が挙げられる。
重合法としては、スラリー重合法、気相重合法、バルク重合法、溶液重合法、及び、これらを組み合わせた重合法が挙げられる。また重合法は、バッチ式、連続式のいずれでもよく、一段重合でも、多段重合でもよい。また、プロピレン系重合体(成分(A))としては、市販のプロピレン系重合体を用いてもよい。
【0021】
[ポリ乳酸系樹脂(B)]
本発明のプロピレン系樹脂組成物が含有するポリ乳酸系樹脂(以下、成分(B)ともいう)とは、L−乳酸および/またはD−乳酸に由来する繰り返し単位のみからなる重合体からなる樹脂、L−乳酸および/またはD−乳酸に由来する繰り返し単位とL−乳酸およびD−乳酸以外のモノマーに由来する繰り返し単位とからなる共重合体からなる樹脂、またはL−乳酸および/またはD−乳酸に由来する繰り返し単位のみからなる重合体とL−乳酸および/またはD−乳酸に由来する繰り返し単位とL−乳酸およびD−乳酸以外のモノマーに由来する繰り返し単位とからなる共重合体の混合物からなる樹脂である。なお、L−乳酸に由来する繰り返し単位およびD−乳酸に由来する繰り返し単位を、それぞれ、L−乳酸由来繰り返し単位およびD−乳酸由来繰り返し単位と記すことがある。
【0022】
前記L−乳酸およびD−乳酸以外のモノマーとしては、グリコール酸等のヒドロキシカルボン酸、ブタンジオール等の脂肪族多価アルコールおよびコハク酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。ポリ乳酸系樹脂(成分(B))は、
乳酸(L−乳酸、D−乳酸、またはL−乳酸とD−乳酸との混合物)、および必要に応じて更に他のモノマーを脱水重縮合する方法、
乳酸の環状二量体(すなわちラクチド)を開環重合させる方法、
ラクチドおよび乳酸と乳酸以外のヒドロキシカルボン酸との環状2分子縮合体を開環重合させる方法、
ラクチドおよび/または乳酸と乳酸以外のヒドロキシカルボン酸との環状2分子縮合体、および必要に応じて更に乳酸以外のヒドロキシカルボン酸の環状二量体(例えば、グリコリド)やヒドロキシカルボン酸由来の環状エステル(例えば、ε−カプロラクトン)を開環重合させる方法等、
により製造することができる。
【0023】
ポリ乳酸系樹脂(成分(B))がL−乳酸由来繰り返し単位とD−乳酸由来繰り返し単位の両方を含む重合体を含有するとき、プロピレン系樹脂組成物の耐熱性の観点から、該重合体において、L−乳酸由来繰り返し単位の含有量および/またはD−乳酸由来繰り返し単位の含有量は、好ましくは80モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上であり、更に好ましくは95モル%以上である。
ポリ乳酸系樹脂(成分(B))の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1万以上100万以下であり、更に好ましくは5万以上50万以下である。また、ポリ乳酸系樹脂(B)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1以上4以下である。記号Mnは、数平均分子量を表す。なお、分子量Mw、Mnおよび分子量分布は、GPCにより、標準ポリスチレンを分子量標準物質として測定される。
【0024】
[エポキシ基を含有するエチレン系重合体(C)]
本発明に用いられるエポキシ基を含有するエチレン系重合体(以下、成分(C)ともいう)は、エチレンに由来する単量体単位を有する共重合体である。エポキシ基を有する単量体としては、例えば、グリシジルメタアクリレート、グリシジルアクリレート等のα,β−不飽和グリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル等のα,β−不飽和グリシジルエーテルを挙げることができ、好ましくはグリシジルメタアクリレートである。
【0025】
上記成分(C)は、他の単量体に由来する単量体単位を有していてもよく、該他の単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等の不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和ビニルエステル等が挙げられる。
【0026】
また、成分(C)において、エポキシ基を有する単量体に由来する単量体単位の含有量は、0.01〜30質量%であり、より好ましくは0.1〜20質量%である。ただし、エポキシ基を有するエチレン系重合体中の全単量体単位の含有量を100質量%とする。なお、エポキシ基を有する単量体に由来する単量体単位の含有量は、赤外法により測定される。
【0027】
成分(C)のメルトフローレイト(MFR)は、0.1g/10分〜300g/10分であり、好ましくは0.5g/10分〜80g/10分である。ここでいうメルトフローレイトとは、JIS K 7210(1995)に規定された方法によって、試験荷重21.18N、試験温度190℃の条件で測定される。
【0028】
成分(C)の製造方法としては、公知の方法が用いられ、例えば、高圧ラジカル重合法、溶液重合法、乳化重合法等により、エポキシ基を有する単量体とエチレンと、必要に応じて他の単量体とを共重合する方法、エチレン系樹脂にエポキシ基を有する単量体をグラフト重合させる方法等を挙げることができる。
【0029】
[エラストマー類(D)]
本発明に用いられるエラストマー類(以下、成分(D)ともいう)としては、例えば、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、非晶質または低結晶性のエチレン系エラストマー、プロピレン系エラストマー、ブタジエン−スチレンエラストマー、ブタジエン−アクリロニトリルエラストマー、水添または非水添のスチレン−共役ジエン系ブロックエラストマー、ポリエステルゴム、アクリルゴム、シリコンゴム等が挙げられる。これらは単独又は組み合わせて使用してもよい。このうち、エチレン系エラストマーを用いることが好ましい。
【0030】
上記エチレン系エラストマーは、エチレンに由来する単量体単位を主成分として含有するエラストマーであり、例えば、エチレン単独重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチレン系不飽和エステル共重合体等が挙げられる。また、共役ジエンや非共役ジエン等の多不飽和化合物とエチレンとα−オレフィンとの共重合体も挙げることができる。これらは単独又は組み合わせて使用してもよい。
このようなエチレン系重合体として好ましくは、エチレンと1種類以上のα−オレフィンとの共重合体であるエチレン−α−オレフィン共重合体である。このα−オレフィンとして好ましくは、炭素数3〜12のα−オレフィンである。具体的には、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、ノルボルネン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。
【0031】
上記エチレン系エラストマー、プロピレン系エラストマーは非晶性のものであっても低結晶性のものであってもよい。ここで、「非晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)により、−100℃から200℃に融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観察されないということを指す。また、「低結晶性」とは示差走査熱量測定(DSC)により、−100℃から200℃に融解熱量が1〜30J/gの結晶融解ピークが観察されるということを指す。
【0032】
水添及び非水添のスチレン−共役ジエン系ブロックエラストマーとしては、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブテン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体等が挙げられる。
【0033】
本発明において、成分(D)のメルトフローレイト(MFR)は、好ましくは3g/10分未満である。成分(D)のメルトフローレイトが3g/10分以上であると得られる成形体のグロス値が上がり、光沢のある成形体が得られてしまう場合がある。また得られる成形体の寸法安定性が低下することがある。
なお、ここでいうメルトフローレイト(MFR)とは、JIS K 7210(1995)に規定された方法によって、試験荷重21.18N、試験温度190℃の条件で測定される。
【0034】
エラストマー類(成分(D))の密度は、得られる成形体の機械的強度の観点から、850kg/m3〜910kg/m3であり、より好ましくは855kg/m3〜900kg/m3である。例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体の密度の場合、好ましくは850kg/m3以上であり、引張破断伸びを高める観点から、好ましくは910kg/m3以下である。より好ましくは855kg/m3〜900kg/m3である。
なお、ここでいう密度とは、JIS K 6760−1981に規定された方法により、アニール無しで測定される。
【0035】
エラストマー類(成分(D))の分子量分布(Mw/Mn)は、得られる成形体の機械的強度の観点から、好ましくは1.8〜3.5であり、より好ましくは1.8〜2.5であり、最も好ましくは1.8〜2.2である。例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布は、好ましくは1.8〜3.5であり、より好ましくは1.8〜2.5であり、最も好ましくは1.8〜2.2である。なお、エラストマー類(成分(D))は、JIS K6953に規定された方法に準拠して測定した生分解度が前記試験法に規定された期間(180日間)で60%未満である。
【0036】
エラストマー類(成分(D))の融解温度は、得られる成形体の機械的強度の観点から好ましくは110℃以下であり、より好ましくは100℃以下である。エチレン系エラストマーの融解熱量は、引張破断伸びを高める観点から、好ましくは110J/g以下であり、より好ましくは100J/g以下である。例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体の融解温度は、110℃以下であり、より好ましくは100℃以下である。エチレン−α−オレフィン共重合体の融解熱量は、好ましくは110J/g以下であり、より好ましくは100J/g以下である。
【0037】
エラストマー類(成分(D))の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。
例えばエチレン−α−オレフィン共重合体の場合、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン錯体や非メタロセン錯体等の錯体系触媒を用いた、溶液重合法、スラリー重合法、高圧イオン重合法、気相重合法、また、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法、溶液重合法等により製造することが好ましい。中でもチーグラー・ナッタ系触媒や錯体系触媒を用いて、重合する方法を用いることが好ましく、メタロセン触媒の存在下に製造する方法を用いることが好ましい。
【0038】
エラストマー類(成分(D))のメルトフローレイト(MFR)は、成分(D)を重合により製造する際に、重合度を調整することにより適宜調整することが可能である。また、成分(D)の密度は、重合に用いる原料モノマーの比率を適宜調整することで850kg/m3〜910kg/m3に調整することが可能である。また、成分(D)の分子量分布は、重合する際、触媒の種類や重合条件を適宜調整することで調整することが可能である。
【0039】
本発明のプロピレン系樹脂組成物に用いられるプロピレン系重合体(成分(A))、ポリ乳酸系樹脂(成分(B))、エポキシ基を含有するエチレン系重合体(成分(C))及びエラストマー類(成分(D))の含有量としては、これら四成分の合計量に対する量として、成分(A)の含有量が10〜88質量%であり、成分(B)の含有量が10〜88質量%であり、成分(C)の含有量が1〜50質量%であり、成分(D)の含有量が1〜50質量%である。そして剛性を高め、成形品外観を向上させるという観点から、好ましくは、成分(A)の含有量が30〜70質量%であり、成分(B)の含有量が10〜50質量%であり、成分(C)の含有量が2〜30質量%であり、成分(D)の含有量が2〜30質量%である。
【0040】
本発明のプロピレン系樹脂組成物の製造方法としては、成分(A)、(B)、(C)及び(D)を溶融混練する方法が挙げられる。溶融混練する際の各成分の配合順序や溶融混練順序は任意である。混練温度として好ましくは180〜240℃である。
【0041】
[酸変性ポリオレフィンワックス(E)]
次に、本発明で使用する酸変性ポリオレフィンワックスについて説明する。
本発明の酸変性ポリオレフィンワックス(以下、成分(E)ともいう)としては、ポリオレフィンワックスをマレイン酸等により変性したもの、あるいはオレフィンと不飽和カルボン酸や不飽和カルボン酸アルキルエステルとの共重合体が挙げられる。
ポリオレフィンワックスとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセンおよびこれらの混合物等の重合体であり、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体およびプロピレン/1−ヘキセン共重合体等が挙げられる。
なお、ポリオレフィンワックスには、上記ポリオレフィンの重合により得られるものに加え重量平均分子量(Mw)30万〜500万のポリオレフィン(例えばポリエチレンおよびポリプロピレン)を熱分解して得られる熱分解型ポリオレフィンワックスが含まれる。
【0042】
ポリオレフィンワックスのマレイン酸変性物としては、ポリオレフィンワックスをマレイン酸およびその誘導体(無水マレイン酸やマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチルおよびマレイン酸ジメチル等のマレイン酸モノまたはジアルキルエステル)で変性した変性物等が挙げられる。変性は、公知の方法、例えばポリオレフィンとマレイン酸モノマーを、過酸化物触媒を用いて、溶液法または溶融法のいずれかの方法で反応させることにより行うことができる。
【0043】
一方、オレフィンと不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸アルキルエステルとの共重合体としては、上記オレフィンとアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸および無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸および/またはアクリル酸メチル、メタクリル酸エチルおよびマレイン酸アルキルエステル等の不飽和カルボン酸アルキルエステルとの共重合体が挙げられる。共重合は、公知の触媒を用いて公知の方法で行うことができる。
【0044】
上記において、本発明の酸変性ポリオレフィンワックスを構成するオレフィンとしては、エチレンまたはプロピレンであることが好ましい。
また、酸変性ポリオレフィンワックスを構成する酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸および無水マレイン酸等のカルボン酸であることが好ましい。
本発明の酸変性ポリオレフィンワックスは、重量平均分子量(Mw)が500〜100,000であり、好ましくは1,000〜30,000のものが好適に用いられる。
また、本発明の酸変性ポリオレフィンワックスは、酸価が20以上、好ましくは30以上あるものが好適に使用される。ここに、酸価とは、JIS K0070(1992)で定義されており、ワックス中の酸成分の量を表す指標となる。酸価が20以上のものを使用すると、添加量が少なくても十分に光沢を抑えることができるため、本発明の熱可塑性樹脂組成物の機械的物性が損なわれない。
【0045】
本発明において、前記プロピレン系組成物と酸変性ポリオレフィンワックスとの含有比は、プロピレン系樹脂組成物100質量部に対し、酸変性ポリオレフィンワックスが、0.5〜10質量部、好ましくは1〜5質量部である。
酸変性ポリオレフィンワックスの量が、0.5〜10質量部であると、光沢を抑制し、かつ、耐衝撃性等の機械的物性を保持することができる。
【0046】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形する方法としては、射出成形機にて成形する方法が挙げられる。具体的には、上記成分(A)〜(D)を混練したプロピレン樹脂組成物のペレットと成分(E)のペレットとを混合したものを、射出成形機に投入し、成形する方法が挙げられる。射出温度として好ましくは180〜240℃である。
【0047】
[顔料(F)]
本発明では顔料(以下、成分(F)ともいう)を含有していてもよい。顔料としては、公知の有機顔料、無機顔料、体質顔料等がいずれも使用できる。
有機顔料としては、縮合アゾ等のアゾ系顔料;アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系、チオインジゴ系等のスレン系顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料;キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、ピロロピロール系、有機蛍光顔料等が挙げられる。無機顔料としては、クレー、バライト、雲母等の天然物、紺青等のフェロシアン化物、硫化亜鉛等の硫化物、硫酸バリウム等の硫酸塩、酸化クロム、亜鉛華、チタン白、弁柄、鉄黒等の酸化物、水酸化アルミニウム等の水酸化物、珪酸カルシウム、群青等のケイ酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、カーボンブラック、グラファイト等の炭素、アルミニウム粉、ブロンズ粉、亜鉛粉等の金属粉、その他焼成顔料等が挙げられる。体質顔料としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク等が挙げられる。これらの顔料は単独あるいは2種類以上混合して用いられる。
【0048】
本発明の顔料の含有量は、前記熱可塑性樹脂組成物を100質量部としたとき、顔料が0.05〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部であることが好ましい。顔料は、上記プロピレン系樹脂組成物と(E)と溶融混練する方法が挙げられる。溶融混練する際の各成分の配合順序や溶融混練順序は任意である。混練温度として好ましくは180〜240℃である。また、顔料を含有するマスターバッチとして前記熱可塑性樹脂組成物と混合することもできる。マスターバッチとしては、ポリオレフィン樹脂を100質量部に対し顔料を3〜40質量部含有するものが使用される。
【0049】
本発明では上記の成分(A)〜(F)のほかに、本発明の目的を損なわない範囲において、必要に応じて他の付加的成分を添加してもよい。例えば、染料、酸化防止剤、耐候性改良剤、造核剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、有機充填剤、無機充填剤及びその他の樹脂等が挙げられる。
【0050】
無機充填剤としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、ガラスビーズ、マイカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸カリウムウィスカー、タルク、カオリナイト、ベントナイト、スメクタイト、セピオライト、ワラストナイト、モンモリロナイト、クレー、アロフェン、イモゴライト、繊維状マグネシウムオキシサルフェート、硫酸バリウム、ガラスフレーク、カーボンブラック等が挙げられる。
【0051】
繊維状以外の無機充填剤の平均粒子径としては、0.01〜500μmであり、好ましくは0.1〜100μmであり、より好ましくは0.1〜20μmである。ここで無機充填剤の平均粒子径とは、遠心沈降式粒度分布測定装置を用いて水、アルコール等の分散媒中に懸濁させて測定した篩下法の積分分布曲線から求めた50%相当粒子径D50のことを意味する。
【0052】
繊維状の無機充填剤の平均繊維径は、0.001〜50μmであり、好ましくは0.01〜30μmである。組成物中での平均繊維長は、0.01〜10000μmであり、好ましくは0.1〜1000μmである。
【0053】
本発明の熱可塑性組成物または着色熱可塑性組成物からなる成形体の製造方法としては、例えば、射出成形法、押出成形法、回転成形法、真空成形法、発泡成形法、ブロー成形法等の成形法が挙げられる。得られた成形体は、耐衝撃性が高く、成形性に優れ、さらには光沢が抑えられた高級感のある外観を有するため、自動車や家電等の産業分野で好適に使用される。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。なお、物性の評価は、以下の方法により行った。
【0055】
(1)光沢度
変角光度計(株式会社村上色彩技術研究所製 GM−3D)を使用して、JIS K7105(1981)に従い、60°鏡面光沢を測定した。
なお、試験片の成型は、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製 FN−1000 12A)を使用し、次の条件で作成した。また、試験片の表面は#3000磨きの鏡面、また、裏面は梨地シボ仕上げとした。
成型温度:200℃
スクリュー回転:120rpm
背圧:28MPa
射出速度:30mm/sec
保圧:20MPa
金型温調:50℃
【0056】
(2)アイゾット衝撃強度 アイゾット衝撃試験機(株式会社上島製作所製 RUF−IMPACTTESTER)を使用して、JIS K7110(1999)に規定された方法に従い、ひょう量30kg重・cmで、成形の後にノッチ加工されたノッチ付きのアイゾット衝撃強度を評価した。なお、試験片は、64mm×13mm、厚さ3mmである。
【0057】
(3)曲げ強度
曲げ強度試験機(株式会社オリエンテック製 RTC−1310A)を使用して、JIS K7171(1994)に従い、速度2mm/minで測定した。なお、試験片は、125mm×12mm、厚さ6mmである。
【0058】
(4)引張強度
引張強度試験機(株式会社東洋精機製作所製 STROGRAPH−W2)を使用して、JIS K7113(1995)に従い、速度20mm/minで測定した。なお、試験片は、1号形試験片、厚さ3mmである。
【0059】
(5)ロックウェル硬度
ロックウェル硬度計(松沢精機株式会社製 DRH−M)を使用して、JIS K7202(1995)に従い、スケールRで測定した。なお、試験片は、6mm×5mm、厚さ3mmである。
【0060】
(6)荷重たわみ温度
熱変形温度測定機(株式会社東洋精機製作所製 S3−FH)を使用して、JIS K7191−2(1996)に従い、荷重0.45MPaで測定した。なお、試験片エッジワイズで125mm×6mm、厚さ12mmである。
なお、(2)から(6)の測定に用いた試験片の成型は、射出成形機(東芝機械株式会社製 IS80−EPN)を使用し、次の条件で作成した。
成型温度:200℃
スクリュー回転:230rpm
背圧:10MPa
射出速度:84mm/sec
保圧:6〜8MPa
金型温調:55℃
【0061】
実施例および比較例に使用した材料は、以下のとおりである。
成分(A)プロピレン系重合体
(A1)住友化学株式会社製「ノーブレン WPX5343」(ポリプロピレンブロック共重合体、MFR(230℃)=50g/10分)
(A2)住友化学株式会社製「ノーブレン R101」(プロピレン単独重合体、MFR(230℃)=20g/10分)
(A3)住友化学株式会社製「ノーブレン U501E1」(プロピレン単独重合体、MFR(230℃)=100g/10分)

成分(B)ポリ乳酸系樹脂
(B1)ユニチカ株式会社製「テラマック TE−2000」(ポリ乳酸樹脂、MFR(230℃)=40g/10分、Mw=120,000、Mw/Mn=1.8)

成分(C)エポキシ基を含有するエチレン系重合体
(C1)住友化学株式会社製「ボンドファースト E」(エチレン−グリシジルメタアクリレート共重合体、MFR(190℃)=3g/10分、グリシジルメタアクリレートに由来する単量体単位含有量=12質量%)

成分(D)エラストマー類
(D1)ダウケミカル株式会社製「エンゲージ8842」(エチレン−オクテン共重合体、MFR(190℃)=1.2g/10分、密度=0.858g/cm3

その他の成分(耐候性改良剤)
花王社製「エレクトロストリッパー TS−5」
住友化学製「スミライザー GA80」
チバスペシャリティケミカルズ社製「イルガフォス 168」
【0062】
成分(E)酸変性ポリオレフィンワックス
(E1)三井化学株式会社製「ハイワックス 1105A」(ベース樹脂:マレイン酸変性ポリエチレン、平均分子量1500、酸価(JIS K0070)60mgKOH/g、融点107℃)

(E2)三井化学株式会社製「ハイワックス 2203A」(ベース樹脂:マレイン酸変性ポリエチレン、平均分子量2700、酸価(JIS K0070)30mgKOH/g、融点107℃)

(E3)三洋化成株式会社製「ユーメックス 1010」(ベース樹脂:マレイン酸変性ポリプロピレン、平均分子量30000、酸価(JIS K0070)52mgKOH/g、融点145℃)

(E4)三井化学株式会社製「ハイワックス NL800」(ベース樹脂:低密度ポリエチレン、平均分子量6400、融点105℃)

(E5)住友化学株式会社製「ノーブレン MPE331」(ベース樹脂:マレイン酸変性ポリプロピレン、平均分子量200000以上)

(E6)住友化学株式会社製「ノーブレン MPE101」(ベース樹脂:マレイン酸変性ポリプロピレン、平均分子量200000以上)
【0063】
成分(F)顔料 (顔料含有マスターバッチ)
(F1)住化カラー株式会社製「ブラック SPPM−865」(ベース樹脂:ポリプロピレン、顔料としてカーボンブラック濃度14%)
【0064】
(樹脂組成物)
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」という。)を次の方法で製造した。
ポリプロピレンブロック共重合体(A1)32重量%と、プロピレン単独重合体(A2)10質量%と、プロピレン単独重合体(A3)10質量%と、
ポリ乳酸樹脂(B1)30質量%と、エポキシ基を含有するエチレン系重合体(C1)5質量%と、エラストマー(D1)13質量%と、
(A1)、(A2)、(A3)、(B1)、(C1)、(D1)の合計量100重量部に対して、耐候性改良剤としてTS−5を0.1質量部、GA80を0.1重量部、イルガフォス 168を0.05重量部を
50mmΦ二軸混練押出機(東芝機械株式会社製TEM50)を用い、シリンダー温度は190℃に設定し、押出量50kg/hr、スクリュー回転数200rpmの条件で、樹脂組成物(1)を製造した。
樹脂組成物(1)のMFR(230℃)は、25g/10分であった。
また、参考例用の樹脂組成物(2)として、「住友化学株式会社製「ノーブレン AZ864」を使用した。
【0065】
[実施例1]
上記樹脂組成物(1)100質量部に対し、酸変性ポリオレフィンワックス(E1)1質量部を混合し、40mmΦ単軸混練押出機(ナカタニ機械株式会社製VSK40)を用い、シリンダー温度 200℃、スクリュー回転数 150rpmの条件で、実施例1の熱可塑性樹脂組成物を製造した。
該樹脂組成物の光沢度を表1に示す。
【0066】
[実施例2]
樹脂組成物(1)100質量部に対し、酸変性ポリオレフィンワックス(E1)1質量部と顔料(F1)4質量部を混合し、実施例1と同様の手順で実施例2の熱可塑性樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物の光沢度を表1に併せて示す。また、アイゾット衝撃強度、曲げ強度、引張強度、ロックウェル硬度及び荷重たわみ温度を測定した結果を表2に示す。
【0067】
[実施例3]
樹脂組成物(1)100質量部に対し、酸変性ポリオレフィンワックス(E1)3質量部と顔料(F1)4質量部を混合し、実施例1と同様の手順で実施例3の熱可塑性樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物の光沢度を表1に併せて示す。また、アイゾット衝撃強度、曲げ強度、引張強度、ロックウェル硬度及び荷重たわみ温度を測定した結果を表2に示す。
【0068】
[実施例4]
樹脂組成物(1)100質量部に対し、酸変性ポリオレフィンワックス(E1)5質量部と顔料(F1)4質量部を混合し、実施例1と同様の手順で実施例4の熱可塑性樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物の光沢度を表1に併せて示す。また、アイゾット衝撃強度、曲げ強度、引張強度、ロックウェル硬度及び荷重たわみ温度を測定した結果を表2に示す。また、(株)キーエンス製 マイクロスコープ VHX-900を使用して樹脂の表面観察を行った結果を図1に示す。
【0069】
[実施例5]
樹脂組成物(1)100質量部に対し、酸変性ポリオレフィンワックス(E1)10質量部と顔料(F1)4質量部を混合し、実施例1と同様の手順で実施例5の熱可塑性樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物の光沢度を表1に併せて示す。また、アイゾット衝撃強度、曲げ強度、引張強度、ロックウェル硬度及び荷重たわみ温度を測定した結果を表2に示す。
【0070】
[実施例6]
樹脂組成物(1)100質量部に対し、酸変性ポリオレフィンワックス(E2)1質量部と顔料(F1)4質量部を混合し、実施例1と同様の手順で実施例6の熱可塑性樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物の光沢度を表1に併せて示す。
【0071】
[実施例7]
樹脂組成物(1)100質量部に対し、酸変性ポリオレフィンワックス(E3)1質量部と顔料(F1)4質量部を混合し、実施例1と同様の手順で実施例7の熱可塑性樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物の光沢度を表1に併せて示す。また、アイゾット衝撃強度、曲げ強度、引張強度、ロックウェル硬度及び荷重たわみ温度を測定した結果を表2に示す。
【0072】
[比較例1]
酸変性ポリオレフィンワックスや顔料を添加せずに、樹脂組成物(1)のみを使用し、実施例1と同様の手順で比較例1の熱可塑性樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物の光沢度を表1に併せて示す。また、アイゾット衝撃強度、曲げ強度、引張強度、ロックウェル硬度及び荷重たわみ温度を測定した結果を表2に示す。
【0073】
[比較例2]
樹脂組成物(1)100質量部に対し、酸変性ポリオレフィンワックス(E4)1質量部を混合し、実施例1と同様の手順で比較例2の熱可塑性樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物の光沢度を表1に併せて示す。
【0074】
[比較例3]
樹脂組成物(1)100質量部に対し、顔料(F1)4質量部を混合し、実施例1と同様の手順で比較例3の熱可塑性樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物の光沢度を表1に併せて示す。また、アイゾット衝撃強度、曲げ強度、引張強度、ロックウェル硬度及び荷重たわみ温度を測定した結果を表2に示す。また、(株)キーエンス製 マイクロスコープ VHX-900を使用して樹脂の表面観察を行った結果を図2に示す。
【0075】
[比較例4]
樹脂組成物(1)100質量部に対し、酸変性ポリオレフィンワックス(E4)1質量部と顔料(F1)4質量部を混合し、実施例1と同様の手順で比較例4の熱可塑性樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物の光沢度を表1に併せて示す。
【0076】
[比較例5]
樹脂組成物(1)100質量部に対し、酸変性ポリオレフィンワックス(E5)1質量部と顔料(F1)4質量部を混合し、実施例1と同様の手順で比較例5の熱可塑性樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物の光沢度を表1に併せて示す。
【0077】
[比較例6]
樹脂組成物(1)100質量部に対し、酸変性ポリオレフィンワックス(E6)1質量部と顔料(F1)4質量部を混合し、実施例1と同様の手順で比較例6の熱可塑性樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物の光沢度を表1に併せて示す。
【0078】
[参考例1]
実施例における樹脂組成物(1)に代わり、樹脂組成物(2)として、ノーブレン AZ864を使用し、樹脂組成物(2)100質量部に対し、顔料(F1)4質量部を混合し、実施例1と同様の手順で参考例1の熱可塑性樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物の光沢度を表1に併せて示す。
【0079】
[参考例2]
樹脂組成物(2)100質量部に対し、酸変性ポリオレフィンワックス(E6)1質量部と顔料(F1)4質量部を混合し、実施例1と同様の手順で参考例2の熱可塑性樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物の光沢度を表1に併せて示す。
【0080】
[参考例3]
樹脂組成物(2)100質量部に対し、酸変性ポリオレフィンワックス(E1)1質量部と顔料(F1)4質量部を混合し、実施例1と同様の手順で参考例3の熱可塑性樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物の光沢度を表1に併せて示す。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】


【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明のポリ乳酸系樹脂を含有するポリプロピレン系樹脂組成物と酸変性ポリオレフィンワックスとからなる(着色)熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性や成形性に優れ、かつ光沢性を抑えた成形品を得ることができる為、自動車内外装部品等の分野に使用することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系重合体(A)を10〜88質量%、ポリ乳酸系樹脂(B)を10〜88質量%、エポキシ基を含有するエチレン系重合体(C)を1〜50質量%及びエラストマー類(D)を1〜50質量%含有するプロピレン系樹脂組成物と、
分子量が500〜100,000である酸変性ポリオレフィンワックスと、を
含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
(但し、プロピレン系重合体(A)、ポリ乳酸系樹脂(B)、エポキシ基を含有するエチレン系重合体(C)及びエラストマー類(D)の合計量を100質量%とする。)
【請求項2】
前記プロピレン系樹脂組成物と酸変性ポリオレフィンワックスとの含有比が、プロピレン系樹脂組成物100質量部に対し、酸変性ポリオレフィンワックスが、0.5〜10質量部である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
酸変性ポリオレフィンワックスを構成するオレフィンが、エチレンまたはプロピレンである請求項1または2記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
酸変性ポリオレフィンワックスを構成する酸成分が、カルボン酸である請求項1から3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
顔料をさらに含有する請求項1から4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を用いてなることを特徴とする成形体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−254799(P2010−254799A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106313(P2009−106313)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(591229440)住化カラー株式会社 (22)
【Fターム(参考)】