説明

熱可塑性樹脂組成物

【課題】 ポリ乳酸樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度、耐熱性、加工性、外観の均一性のバランス改良。
【解決手段】 ポリ乳酸樹脂(L)5〜60重量部、ゴム含有グラフト共重合体(G)10〜70重量部、ポリカーボネート樹脂(C)5〜50重量部、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(A)10〜80重量部からなる熱可塑性樹脂組成物(ただし、(L)、(G)、(C)、(A)の合計は100重量部である)であって、ゴム含有グラフト共重合体(G)のグラフト重合に用いる単量体のうち、70重量%以上が(メタ)アクリル酸エステル系単量体である熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性樹脂組成物に関するものである。詳しくは、衝撃強度、耐熱性、加工性、外観の均一性のバランスに優れたポリ乳酸樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球的規模での環境問題として、石油化学製品の使用増加による石油資源の将来性が危ぶまれている。例えば、ポリ乳酸樹脂は植物であるとうもろこしや芋類を原料として得られる乳酸からなる樹脂であり、石油を原料としない環境対応型の樹脂として知られている。しかしながら、ポリ乳酸樹脂は、ノッチ付き衝撃強度および、耐熱性に劣るといった欠点がある。
一方、ABS樹脂は優れた物性バランスおよび成形加工性を有しており、広範な分野に利用されているが、原料は石油資源に依存している。これら両者の欠点を補うことを目的に下記の従来技術が提案されているが、衝撃強度、耐熱性、加工性、外観の均一性の諸物性を全て満足することはできず、改良が望まれている。
【特許文献1】特開2000−327847号公報
【特許文献2】特開2004−269720号公報
【特許文献3】特開2005−171204号公報
【特許文献4】特開2006−137908号公報
【特許文献5】特開2006−161024号公報
【特許文献6】特開2007−63368号公報
【特許文献7】特開2007−126535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記課題を解決するために成されたもので、衝撃強度、耐熱性、加工性、外観の均一性のバランスに優れたポリ乳酸樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち本発明は、ポリ乳酸樹脂(L)5〜60重量部、ゴム含有グラフト共重合体(G)10〜70重量部、ポリカーボネート樹脂(C)5〜50重量部、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(A)10〜80重量部からなる熱可塑性樹脂組成物(ただし、(L)、(G)、(C)、(A)の合計は100重量部である)であって、ゴム含有グラフト共重合体(G)のグラフト重合に用いる単量体のうち、70重量%以上が(メタ)アクリル酸エステル系単量体であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明における熱可塑性樹脂組成物は、衝撃強度、耐熱性、加工性、外観の均一性のバランスに優れ、特に石油資源消費の抑制にも貢献できる環境対応型材料として、車両分野、家電分野、建材分野、サニタリー分野等に広く用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物につき詳細に説明する。
本発明において、ポリ乳酸樹脂(L)は熱可塑性樹脂組成物の必須成分を構成する。市販されているポリ樹脂としては、例えば三井化学(株)製 商品名:レイシア、ユニチカ(株)製 商品名:テラマック等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0007】
本発明におけるゴム含有グラフト共重合体(G)とは、ゴム状重合体にビニル系単量体を重合して得られるものであり、該ゴム状重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエンースチレン共重合体、イソプレン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−イソプレン−スチレン共重合体、ポリクロロプレンなどのジエン系ゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1−非共役ジエン共重合体、ポリブチルアクリレート系ゴム、ポリオルガノシロキサン系ゴム、さらにはこれらの2種以上のゴムからなる複合ゴム等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。これらのうち、特に共役ジエン系ゴムが衝撃強度発現性の観点から、ポリブチルアクリレート系ゴムが衝撃強度と外観均一性のバランスの観点から好ましい。
ゴム含有グラフト共重合体の製造に好適に用いられるビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体、シアン化ビニル系単量体が挙げられるが、本発明においては、これらビニル系単量体の70重量%以上が(メタ)アクリル酸エステル系単量体であることが必要である。(メタ)アクリル酸エステル系単量体が70重量%未満では外観の均一性が低下する。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタアクリレート等が挙げられ、特にメチルメタクリレートが好ましい。更には、ビニル系単量体の内、80重量%以上がメチルメタクリレートおよび/またはメチルアクリレートであることが好ましい。
スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。特にアクリロニトリルが好ましい。
また、上記ビニル系単量体と共に無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等の不飽和酸系単量体、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系単量体などを用いることも可能である。
上記のゴム含有グラフト共重合体を構成するゴム状重合体とビニル系単量体の割合については特に制限はないが、好ましくはゴム状重合体15〜65重量%および(メタ)アクリル酸エステル系単量体を70重量%以上含むビニル系単量体35〜85重量%である。
また、ゴム含有グラフト共重合体の重合方法についても特に制限はなく、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合またはこれらの組み合わせにより製造することができるが、高温高湿環境下における経時安定性維持の観点から、ゴム含有グラフト共重合体に含有されるアルカリ金属の含有量が0.01重量%以下であることが好ましい。
【0008】
本発明におけるα−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(A)の組成割合としては、特にα−メチルスチレン60〜80重量%およびアクリロニトリル20〜40重量%であることが好ましい。
また、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(A)の重合方法についても特に制限はなく、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合またはこれらの組み合わせにより製造することができる。
【0009】
本発明において、ポリカーボネート樹脂(C)は熱可塑性樹脂組成物の必須成分を構成する。市販されているポリカーボネート樹脂としては、例えば住友ダウ(株)製 商品名:カリバー、帝人化成(株)製 商品名:パンライト、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製 ユーピロン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0010】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(L)5〜60重量部、ゴム含有グラフト共重合体(G)10〜70重量部、ポリカーボネート樹脂(C)5〜50重量部、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(A)10〜80重量部からなるものである(ただし、(L)、(G)、(C)、(A)の合計は100重量部である。)。
ポリ乳酸樹脂(L)の配合比率が5重量部未満では、原料の殆どを石油資源に依存しているという環境負荷は低減されず、60重量部を超えると耐熱性が低下する。好ましくは10〜50重量部、更に好ましくは15〜45重量部である。
ゴム含有グラフト共重合体(G)の配合比率が10重量部未満では衝撃強度が劣り、70重量部を超えると加工性や耐熱性が低下する。好ましくは15〜65重量部、更に好ましくは20〜60重量部である。
ポリカーボネート樹脂(C)の配合比率が5重量部未満では耐熱性が劣り、50重量部を超えると衝撃強度が低下する。好ましくは5〜45重量部、更に好ましくは10〜40重量部である。
α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(A)の配合比率が10重量部未満では耐熱性が劣り、80重量部を超えると衝撃強度が低下する。好ましくは15〜70重量部、更に好ましくは20〜60重量部である。
【0011】
また、本発明における熱可塑性樹脂組成物には、上記各成分の他に、その物性を損なわない限りにおいて、その目的に応じて樹脂の混合時、成形時等に安定剤、顔料、染料、補強剤(タルク、マイカ、クレー、ガラス繊維等)、着色剤(カーボンブラック、酸化チタン等)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、滑剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、無機および有機系抗菌剤等の公知の添加剤を配合することができる。
【0012】
本発明における熱可塑性樹脂組成物の混合方法としては、バンバリーミキサー、押出機等公知の混練機を用いる方法が挙げられる。また、混合順序にも何ら制限はなく、4成分の一括混練はもちろんのこと、予め任意の2〜3成分を混合した後に残る成分を混合することも可能である。
【0013】
〔実施例〕
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
また、特段の断りが無い限り、%や部は重量を基準とする。
【0014】
ポリ乳酸樹脂(L)
ポリ乳酸樹脂(L)として、三井化学株式会社製LACEA H−400を用いた。
【0015】
ゴム状重合体1〜3の作製
ゴム状重合体1:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水130部、ロジン酸カリウム2.0部、オレイン酸カリウム0.5部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物1.0部、水酸化ナトリウム0.05部、ブタジエン95部、スチレン3部、アクリロニトリル2.部、t−ドデシルメルカプタン0.20部を加えて十分攪拌しながら67℃に昇温した後、過硫酸カリウム0.8部を仕込み67℃で重合を開始した。重合転化率が66%を越えた時点で過硫酸カリウム0.2部を仕込み、反応温度を72℃に上げて反応を継続し、重合転化率が98%を超えたことを確認して槽内温度を35℃以下に冷却した。燐酸アグロメ法によって重合体粒子を肥大化させ、ラテックス状のゴム状重合体1を得た。その固形分濃度は38.7重量%、pH10.4、平均粒子径は390nmであった。
【0016】
ゴム状重合体2:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水140部、オレイン酸カリウム3.0部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物0.9部、水酸化カリウム0.06部、ブタジエン95部、スチレン5部、t−ドデシルメルカプタン0.17部、ブドウ糖0.08部、硫酸第一鉄0.005部を仕込んで撹拌しながら50℃に昇温した後、加硫酸カリウム0.3部を仕込み50℃で重合を開始した。重合転化率が63%を越えた時点でt−ブチルハイドロパーオキサイド0.05部を仕込み、反応温度を70℃に上げて反応を継続し、重合転化率が97%を超えたことを確認して槽内温度を40℃以下に冷却した。燐酸アグロメ法によって重合体粒子を肥大化させ、ラテックス状のゴム状重合体2を得た。その固形分濃度は36.8重量%、pH10.6、平均粒子径は280nmであった。
【0017】
ゴム状重合体3:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水130部、アルケニルコハク酸カリウム0.8部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物0.5部、水酸化カリウム0.02部、ブチルアクリレート90部、メチルメタクリレート7部、アリルメタクリレート3部、t−ドデシルメルカプタン0.08部、ブドウ糖0.10部、硫酸第一鉄0.005部を仕込んで撹拌しながら53℃に昇温した後、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.09部を仕込み53℃で重合を開始した。重合開始から210分かけて反応温度を63℃に上げて反応を継続し、重合転化率66%を越えた時点で、ブドウ糖0.02部とクメンハイドロパーオキサイド0.02部を添加し、70℃に昇温して反応を継続した。重合転化率が98%を超えたことを確認して槽内温度を35℃以下に冷却した。燐酸アグロメ法によって重合体粒子を肥大化させ、ラテックス状のゴム状重合体3を得た。その固形分濃度は38.0重量%、pH8.5、平均粒子径は350mであった。
【0018】
ゴム含有グラフト共重合体G1〜G6の作製
ゴム含有グラフト共重合体G1:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水76.1部、ロジン酸カリウム0.3部、オレイン酸カリウム1.0部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物0.7部、水酸化ナトリウム0.15部、ゴム状重合体1を固形分で40部、ブドウ糖0.08部、硫酸第一鉄0.004部を仕込んで十分攪拌しながら67℃に昇温した後、過硫酸カリウム0.30部を仕込み67℃で重合を開始した。開始直後からメチルメタクリレート55部とメチルアクリレート5部、t−ドデシルメルカプタン0.25部の混合物を3時間にわたって連続添加し、重合転化率が66%を越えた時点でt−ブチルハイドロパーオキサイド0.04部を仕込み、反応温度を72℃に上げて反応を2時間以上継続し、重合転化率が97%を超えたことを確認して槽内温度を40℃以下に冷却した。得られたラテックス状のゴム含有グラフト共重合体を多量のメタノール中に投入して沈殿させ、150メッシュのステンレス製金網に流した後、先ず適量のメタノール、次に多量の純水で洗浄した。その後、減圧下で含水率が1重量%以下になるまで乾燥させ、パウダー状のゴム含有グラフト共重合体G1を得た。
得られたゴム含有グラフト共重合体G1を灰化後、酸溶解してICP発光分光法および原子吸光法により、アルカリ金属含有量を測定した。結果は0.003重量%であった。
【0019】
ゴム含有グラフト共重合体G2:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水45.5部、ロジン酸カリウム1.0部、オレイン酸カリウム0.5部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物0.8部、水酸化カリウム0.03部、ゴム状重合体2を固形分で55部、t−ドデシルメルカプタン0.20部、ブドウ糖0.11部、硫酸第一鉄0.03部を仕込んで十分攪拌しながら65℃に昇温した後、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を仕込み65℃で重合を開始した。開始直後からメチルメタクリレート20部、スチレン15部、アクリロニトリル10部の単量体混合物を3時間にわたって連続添加し、重合転化率が63%を越えた時点でt−ブチルハイドロパーオキサイド0.05部を仕込み、反応温度を72℃に上げて反応を2時間以上継続し、重合転化率が98%を超えたことを確認して槽内温度を35℃以下に冷却した。得られたラテックス状のゴム含有グラフト共重合体を多量のメタノール中に投入して沈殿させ、150メッシュのステンレス製金網に流した後、先ず適量のメタノール、次に多量の純水で洗浄した。その後、減圧下で含水率が1重量%以下になるまで乾燥させ、パウダー状のゴム含有グラフト共重合体G2を得た。
得られたゴム含有グラフト共重合体G2を灰化後、酸溶解してICP発光分光法および原子吸光法により、アルカリ金属含有量を測定した。結果は0.004重量%であった。
【0020】
ゴム含有グラフト共重合体G3:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水74.7部、オレイン酸カリウム1.2部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物1.0部、水酸化カリウム0.04部、ゴム状重合体3を固形分で40部、ブドウ糖0.09部、硫酸第一鉄0.004部を仕込んで十分攪拌しながら68℃に昇温した後、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.07部を仕込み68℃で重合を開始した。開始直後からメチルメタクリレート56部、メチルアクリレート3部、スチレン1部、t−ドデシルメルカプタン0.20部の混合物を4時間にわたって連続添加し、重合転化率が65%を越えた時点でクメンハイドロパーオキサイド0.04部を仕込み、反応温度を73℃に上げて反応を2時間以上継続し、重合転化率が98%を超えたことを確認して槽内温度を40℃以下に冷却した。得られたラテックス状のゴム含有グラフト共重合体を多量のメタノール中に投入して沈殿させ、150メッシュのステンレス製金網に流した後、先ず適量のメタノール、次に多量の純水で洗浄した。その後、減圧下で含水率が1重量%以下になるまで乾燥させ、パウダー状のゴム含有グラフト共重合体G3を得た。
得られたゴム含有グラフト共重合体G3を灰化後、酸溶解してICP発光分光法および原子吸光法により、アルカリ金属含有量を測定した。結果は0.004重量%であった。
【0021】
ゴム含有グラフト共重合体G4:容積が15リットルのプラグフロー塔型反応槽に10リットルの完全混合槽2基を直列に接続した連続的塊状重合装置を用いた。プラグフロー塔型反応槽が粒子形成工程を、第2反応器である1基目の完全混合槽が粒子径調整工程を、第3反応器が後重合工程を構成する。
プラグフロー塔型反応槽にエチルベンゼン27重量部、メチルメタクリレート57.0重量部、メチルアクリレート3.0重量部、ジエン系ゴム状重合体として、日本ゼオン社製Nipol NS320Sを13.0重量部、t−ドデシルメルカプタン0.22重量部、1、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3、3、5−トリメチルシクロヘキサン0.050重量部からなる原料を調整し、この原料を3段の攪拌式重合槽列反応器に毎時12kgで連続的に供給して単量体の重合を行った。3段目の槽より重合液を予熱器と減圧室より成る分離回収工程に導いた。
回収工程から出た樹脂は押出工程を経て粒状のペレットとしてゴム含有グラフト共重合体G4を得た。このペレットの組成分析を熱分解クロマトグラフィーで実施したところ、ジエン系ゴム成分26.0重量%、メチルメタクリレート単量体成分70.3重量%、メチルアクリレート単量体成分3.7重量%であった。
得られたゴム含有グラフト共重合体G4を灰化後、酸溶解してICP発光分光法および原子吸光法により、アルカリ金属含有量を測定した。結果は0.0004重量%であった。
【0022】
ゴム含有グラフト共重合体G5:前述と同様のプラグフロー塔型反応槽にエチルベンゼン27重量部、メチルメタクリレート57.0重量部、アクリロニトリル3.0重量部、ジエン系ゴム状重合体として、日本ゼオン社製Nipol NS320Sを13.0重量部、t−ドデシルメルカプタン0.30重量部、1、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3、3、5−トリメチルシクロヘキサン0.040重量部からなる原料を調整し、この原料を3段の攪拌式重合槽列反応器に毎時12kgで連続的に供給して単量体の重合を行った。3段目の槽より重合液を予熱器と減圧室より成る分離回収工程に導いた。
回収工程から出た樹脂は押出工程を経て粒状のペレットとしてゴム含有グラフト共重合体G5を得た。このペレットの組成分析を熱分解クロマトグラフィーで実施したところ、ジエン系ゴム成分26.0重量%、メチルメタクリレート単量体成分70.5重量%、アクリロニトリル単量体成分3.5重量%であった。
得られたゴム含有グラフト共重合体G5を灰化後、酸溶解してICP発光分光法および原子吸光法により、アルカリ金属含有量を測定した。結果は0.0006重量%であった。
【0023】
ゴム含有グラフト共重合体G6:前述と同様のプラグフロー塔型反応槽にエチルベンゼン25重量部、メチルメタクリレート37.8重量部、アクリロニトリル12.6重量部、スチレン12.6部、ジエン系ゴム状重合体として、日本ゼオン社製Nipol NS320Sを12.0重量部、t−ドデシルメルカプタン0.35重量部、1、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3、3、5−トリメチルシクロヘキサン0.035重量部からなる原料を調整し、この原料を3段の攪拌式重合槽列反応器に毎時11kgで連続的に供給して単量体の重合を行った。3段目の槽より重合液を予熱器と減圧室より成る分離回収工程に導いた。
回収工程から出た樹脂は押出工程を経て粒状のペレットとしてゴム含有グラフト共重合体G6を得た。このペレットの組成分析を熱分解クロマトグラフィーで実施したところ、ジエン系ゴム成分24.0重量%、メチルメタクリレート単量体成分45.6重量%、アクリロニトリル単量体成分15.0重量%、スチレン単量体成分15.4重量%であった。
得られたゴム含有グラフト共重合体G6を灰化後、酸溶解してICP発光分光法および原子吸光法により、アルカリ金属含有量を測定した。結果は0.0004重量%であった。
【0024】
ポリカーボネート樹脂(C)
ポリカーボネート樹脂(C)として、住友ダウ株式会社製 カリバー200−30を用いた。
【0025】
α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体A1〜A2の製造
α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体A1:容積が15リットルのプラグフロー塔型反応槽に10リットルの完全混合槽2基を直列に接続した連続的塊状重合装置を用いた。
プラグフロー塔型反応槽にエチルベンゼン30重量部、α−メチルスチレン49.7重量部、アクリロニトリル20.3重量部、t−ドデシルメルカプタン0.20重量部、1、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3、3、5−トリメチルシクロヘキサン0.090重量部からなる原料を調整し、この原料を3段の攪拌式重合槽列反応器に毎時9kgで連続的に供給して単量体の重合を行った。3段目の槽より重合液を予熱器と減圧室より成る分離回収工程に導いた。
回収工程から出た樹脂は押出工程を経て粒状のペレットとしてα−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体
A1を得た。このペレットの組成分析を熱分解クロマトグラフィーで実施したところ、α−メチルスチレン単量体成分71重量%、アクリロニトリル単量体成分29重量%であった。
【0026】
α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体A2:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水160部、ロジン酸カリウム2.5部、オレイン酸カリウム0.5部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物0.7部、水酸化ナトリウム0.08部、α−メチルスチレン73部、アクリロニトリル27部、t−ドデシルメルカプタン0.15部を加えて十分攪拌しながら70℃に昇温した後、過硫酸カリウム0.7部を仕込み70℃で重合を開始した。重合転化率が68%を越えた時点で反応温度を76℃に上げて反応を継続し、重合転化率が96%を超えたことを確認して槽内温度を40℃以下に冷却した。得られたα−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体を多量のメタノール中に投入して沈殿させ、200メッシュのステンレス製金網に流した後、先ず適量のメタノール、次に多量の純水で洗浄した。その後、減圧下で含水率が1重量%以下になるまで乾燥させ、パウダー状のα−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体A2を得た。
【0027】
〔実施例1〜6、比較例1〜8〕
上記、ポリ乳酸樹脂(L)、ゴム含有グラフト共重合体(G1〜G6)、ポリカーボネート樹脂(C)、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(A1〜A2)を表1に示す配合割合で混合し、30mmニ軸押出機を用いて240℃から260℃で溶融混合し、ペレット化した後、射出成形機にて各種試験片を作成して物性を評価した。それぞれの評価方法を以下に示し、評価結果を表1にまとめた。
【0028】
各物性の評価方法
加工性:ISO 1133に基づき220℃、10Kgの条件でメルトインデックスを測定した。単位はg/10分。得られた測定結果に基づいて下記の様に相対区分した。
◎(優秀):40以上
○(良好):20以上〜40未満
△(微劣):5以上〜20未満
×(不良):5未満
【0029】
衝撃強度:ISO 179に準拠し、ノッチ付きのシャルピー衝撃値を測定した。単位はkJ/m
得られた測定結果に基づいて下記の様に相対区分した。
◎(優秀):15以上
○(良好):10以上〜15未満
△(微劣):5以上10未満
×(不良):5未満
【0030】
耐熱性:ISO 75に準拠し、荷重1.8MPaの荷重たわみ温度を測定した。単位は℃。
得られた測定結果に基づいて下記の様に相対区分した。
◎(優秀):80℃以上
○(良好):75℃以上〜80℃未満
△(微劣):65℃以上〜75℃未満
×(不良):65℃未満
【0031】
外観の均一性:2箇所にゲートをもつデュポンインパクト測定用テストピースを肉眼で判定し、
下記の様に相対区分した。
◎(優秀):まったくウェルドラインが観察されず、表面光沢も良好。
○(良好):明確なウェルドラインは認められないが、テストピース中央の光沢がやや不均一。
△(微劣):ウェルドラインが認められ、光沢も不均一。
×(不良):明確なウェルドラインが認められる。
【0032】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明は、衝撃強度、耐熱性、加工性、外観の均一性のバランスに優れた熱可塑性樹脂組成物が得られるものであり、車両分野、家電分野、建材分野、サニタリー分野等に広く用いることができる。
また、石油資源消費の抑制にも貢献できる環境対応型材料である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂(L)5〜60重量部、ゴム含有グラフト共重合体(G)10〜70重量部、ポリカーボネート樹脂(C)5〜50重量部、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(A)10〜80重量部からなる熱可塑性樹脂組成物(ただし、(L)、(G)、(C)、(A)の合計は100重量部である)であって、ゴム含有グラフト共重合体(G)のグラフト重合に用いる単量体のうち、70重量%以上が(メタ)アクリル酸エステル系単量体であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(A)が、α−メチルスチレン60〜80重量%およびアクリロニトリル20〜40重量%からなる共重合体である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
ゴム含有グラフト共重合体(G)のグラフト重合に用いる単量体のうち、80重量%以上がメチルメタクリレートおよび/またはメチルアクリレートであることを特徴とする請求項1〜2何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
ゴム含有グラフト共重合体(G)のアルカリ金属含有量が0.01重量%以下である請求項1〜3何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−132778(P2009−132778A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308776(P2007−308776)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(399034220)日本エイアンドエル株式会社 (186)
【Fターム(参考)】