説明

熱可塑性樹脂製遮水シートの補修方法

【課題】熱可塑性樹脂製遮水シートの補修箇所を水中から引き上げることなく、水中において容易に補修することができる、作業性に優れた熱可塑性樹脂製遮水シートの補修方法を提供する。
【解決手段】無機充填剤を含有する熱可塑性樹脂製遮水シートの補修箇所に当該無機充填剤と反応する接合剤を水中で塗布し、次いで、当該接合剤の塗布面に無機充填剤を含有する補修用熱可塑性樹脂製遮水シートを水中で積層し、その後、水中で当該補修用熱可塑性樹脂製遮水シートを上記接合剤の塗布面に圧着して当該接合剤を硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溜池、景勝池、海岸護岸、海岸廃棄物処分場等の底面又は法面等に敷設された熱可塑性樹脂製遮水シートの接合部や施工中等に生じた熱可塑性樹脂製遮水シートの破損箇所を水中において補修する方法、すなわち、熱可塑性樹脂製遮水シートの補修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物処分場、溜池、貯水池、河川の堤防部等の土木工事においては、大地を掘って広大な凹地を設け、その底面又は法面に熱可塑性樹脂製遮水シートを敷設することが行われている。
【0003】
それらの中で、特に廃棄物処分場については、公害問題、環境汚染問題等の点から内陸部に設けることが難しくなり、そのため海岸線等を利用して海岸に大掛かりな廃棄物処分場を設けることが多くなっている。そして、その施工方法としては、工事船の上で広幅の熱可塑性樹脂製遮水シートを溶着しながら接合して、これを海底に敷設する方法が一般に採られる。その際の熱可塑性樹脂製遮水シート接合箇所の溶着強度が不十分な場合や、熱可塑性樹脂製遮水シートを敷設した海底の凹凸部分及び廃棄物の突起物等によって熱可塑性樹脂製遮水シートに破損箇所が生じた場合、廃棄物処分場内の廃棄物中の有害物質がそれらの箇所から漏洩して海洋汚染が発生するという問題を起こすことになる。
【0004】
従来、熱可塑性樹脂製遮水シートに損傷部等の補修箇所が発見された場合、当該シートを水中から引き上げて、工事船上で当該損傷部等の溶着補修を行わねばならず、多大な労力と時間を費やさなければならなかった。
【0005】
この問題点を解決する方法として、水中の基礎地盤上に敷設された熱可塑性樹脂製遮水シートの破損箇所を高密度ベントナイトマットで上下から挟み、その上からコンクリート板等の重石を設置して高密度ベントナイトを熱可塑性樹脂製遮水シートに圧着させる、水中又は海水中における遮水シートの補修方法が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−010810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来の補修方法では、特殊なマットを使用しなければならず、しかも大掛かりであり、作業性に劣るという問題があり、そのため、そうした問題を解決した水中での補修方法が求められていた。
従って、本発明は、熱可塑性樹脂製遮水シートの補修箇所を水中から引き上げることなく、水中において容易に補修することができる、作業性に優れた熱可塑性樹脂製遮水シートの補修方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を鋭意検討した結果、特定の接合剤を補修箇所に塗布し、そして、所定の熱可塑性樹脂製遮水シートをその塗布面に積層、圧着して接合剤を硬化させる方法を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、無機充填剤を含有する熱可塑性樹脂製遮水シートの補修箇所に当該無機充填剤と反応する接合剤を水中で塗布し、次いで、当該接合剤の塗布面に無機充填剤を含有する補修用熱可塑性樹脂製遮水シートを水中で積層し、その後、水中で当該補修用熱可塑性樹脂製遮水シートを上記接合剤の塗布面に圧着して当該接合剤を硬化させることを特徴とする熱可塑性樹脂製遮水シートの補修方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱可塑性樹脂製遮水シートの補修方法によれば、熱可塑性樹脂製遮水シートを水中から引き上げることなく、熱可塑性樹脂製遮水シートを潜水させた状態(水環境)で容易に補修作業をすることが可能となるため、補修作業の作業性を大幅に向上させることができ、しかも熱可塑性樹脂製遮水シートを船上等に引き上げて行う従来の補修作業の場合と同等の補修接合強度を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の熱可塑性樹脂製遮水シートの補修方法について、以下、詳細に説明する。本発明の補修方法は、まず、無機充填剤を含有する熱可塑性樹脂製遮水シートの補修箇所に当該無機充填剤と反応する接合剤を水中で塗布する。したがって、本発明の補修方法は、所定の無機充填剤を含有する熱可塑性樹脂製遮水シートが補修の対象となる。
無機充填剤を含有する熱可塑性樹脂製遮水シートを構成する熱可塑性樹脂としては、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン、メタロセン触媒ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂;エチレン−プロピレン共重合体系樹脂;ポリウレタン系樹脂等が例示される。この例示された中では、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂が好ましい。
【0010】
上記熱可塑性樹脂製遮水シートには、後述する接合剤と反応する無機充填剤が含有される。この無機充填剤は補修箇所に塗布される接合剤と反応、接合し、その反応接合効果として十分な剥離強度、引張せん断強度を発揮する。したがって、接合剤と反応する無機充填剤を含有していない熱可塑性樹脂製遮水シートでは、十分な接合強度を得ることはできない。
【0011】
そのような反応接合効果が得られる好適な無機充填剤としては、シリカ、赤リン、ホウ酸亜鉛、タルク、マイカ、クレー、カオリン、ベントナイト、合成雲母、炭酸カルシウム、バライト、ケイ酸ジルコニウム等が例示される。これらは1種又は2種以上を含有させることができる。使用する接合剤の種類に応じて無機充填剤の種類、配合量等を適宜変更することにより、所望する接合強度とすることができる。
【0012】
熱可塑性樹脂製遮水シート中における無機充填剤の含有量は、当該熱可塑性樹脂製遮水シートの総重量に対して、5〜60質量%とすることが好ましく、特には10〜40質量%が好ましい。この含有量が5質量%未満であると、1).接合剤との反応接合効果が十分に得られなくなり、その結果、補修箇所における十分な剥離強度及び引張せん断強度を得ることが困難となる、2).熱可塑性樹脂製遮水シートの比重が低くなり、熱可塑性樹脂製遮水シートの水中での沈降安定性が損なわれる場合がある、という問題が生じる。逆に無機充填剤の含有量が60質量%を超えると熱可塑性樹脂製遮水シートの遮水効果が低減したり、熱可塑性樹脂製遮水シートの柔軟性が損なわれる場合がある、という問題が生じる。
【0013】
本発明の補修方法は、上記したように、熱可塑性樹脂製遮水シートの補修箇所に無機充填剤と反応する接合剤を水中で塗布することから、当該接合剤は水中において沈降性及び非拡散性を備えたものであることが必要である。そのためには、当該接合剤は1以上の比重(1.05〜1.5の比重を有するものが入手容易である)を有し、水中において硬化する前にゲル状又はペースト状で非拡散状態を保持できることが要求される。なお、本発明において、水中とは、熱可塑性樹脂製遮水シートが使用される全ての場所における水環境を総称する意味であり、また、海水中、淡水中の別は問わない。
【0014】
本発明において使用される上記接合剤は、水中で熱可塑性樹脂製遮水シートに含有される無機充填剤と反応して硬化するタイプのものであることも要求される。本発明では、以上述べた要件を満たす各種接着剤等を広く使用することができるが、水中での接合作業を簡便にするために一液型タイプの接着剤が特に好ましい。また、反応硬化後に接着剤等の硬化部層が弾性を有する接着剤等を用いることが好ましい。接着剤等の硬化部層が弾性を有することにより、接合部の引張せん断伸びが向上し、接合部の接合強度が向上する。
このような接合剤の具体例としては、反応性変性シリコーン系硬化型接着剤、反応性変性アクリル系硬化型接着剤、反応性変性ウレタン系硬化型接着剤等が挙げられる。これらの接着剤は水中で水分と反応して硬化し、無機充填剤を介して熱可塑性樹脂製遮水シートと接合する。
【0015】
上記反応性変性シリコーン系硬化型接着剤は、主成分として反応性シリコーン、アクリル変性シリコーン等を必須成分として含有する硬化性組成物等である。この反応性シリコーンとは、シロキサン結合を形成することによって架橋し得るシリル基を有するシリコーンである。
反応性変性シリコーン系硬化型接着剤の市販品としては、スーパーX[セメダイン社製商品名]、スーパーシール[セメダイン社製商品名]等が挙げられる。
【0016】
反応性変性アクリル系硬化型接着剤は、メタクリレートモノマーにジエン系合成ゴムを溶かした溶液と活性剤とからなる非混合系、あるいはメタクリルモノマーに同質のポリマーを溶かした溶液と有機過酸化物触媒とからなるラジカル重合系等の接着剤である。
反応性変性アクリル系硬化型接着剤の市販品としては、スーパーXG[セメダイン社製商品名]、Y620[セメダイン社製商品名]、Y6300[セメダイン社製商品名]等が挙げられる。
【0017】
反応性変性ウレタン系硬化型接着剤は、分子中に含まれるイソシアネート基及び反応性シリル基等の反応性を利用した接着剤である。反応性変性ウレタン系硬化型接着剤の市販品としては、ボンドウルトラ多用途SU[コニシ社製商品名]等が挙げられる。
【0018】
熱可塑性樹脂製遮水シートの補修箇所に塗布される接合剤の塗布量は、特に限定されるものではなく、接合剤や充填剤等の種類、補修箇所の破損程度等に応じて適宜決定すればよいが、通常、接合剤の塗布面積当たり、150〜1300g/m2程度である。この範囲にすると、接合剤硬化後の硬化部層の厚さが約0.2〜2mm程度となり、安定した接合性能を得ることができる。
【0019】
本発明においては、熱可塑性樹脂製遮水シートの補修箇所に接合剤を塗布する場合、接合剤にガラスクロスを加えて塗布することができる。例えば、熱可塑性樹脂製遮水シートの補修箇所に接合剤を水中で塗布した後、その塗布面上にガラスクロスを積層し、さらに、当該ガラスクロス上に接合剤を塗布する。これにより、接合剤硬化後の硬化部層中にガラスクロスを埋め込まれることになり、その結果、熱可塑性樹脂製遮水シートが海底面にあって局部的な凹凸傾斜のある環境にある場合、熱可塑性樹脂製遮水シートの補修箇所の損傷部が開いている場合、補修用熱可塑性樹脂製遮水シートの積層箇所が開いた場合等において、塗布された接合剤の流動タレ偏りを防止する効果が得られ、接合部の接合強度の向上、補修箇所に塗布された接合剤の層厚の均一化、及び圧着させる際にかかる荷重の均一化を図ることができる。
上記ガラスクロスとしては、特に限定されるものではなく、例えば、厚さ0.2mm、太さ0.1mm、目開き3〜5mm角大の平織り又はカラミ織りタイプ等のものが挙げられる。
【0020】
熱可塑性樹脂製遮水シートの補修箇所に接合剤を水中で塗布した後、当該接合剤の塗布面に無機充填剤を含有する補修用熱可塑性樹脂製遮水シートを水中で積層する。この補修用熱可塑性樹脂製遮水シートは、補修対象である熱可塑性樹脂製遮水シートと同様のものであり、したがって、上記熱可塑性樹脂に上記無機充填剤が配合された材料で構成された熱可塑性樹脂製遮水シートである。ただし、補修用熱可塑性樹脂製遮水シートは、補修箇所を有する熱可塑性樹脂製遮水シートと全く同じ成分組成のものである必要はなく、熱可塑性樹脂、無機充填剤の種類、配合割合等を適宜変更したものとすることができる。
【0021】
補修用熱可塑性樹脂製遮水シートを接合剤の塗布面に積層した後、水中で当該補修用熱可塑性樹脂製遮水シートを上記接合剤の塗布面に圧着して当該接合剤を硬化させる。接合剤の硬化完了まで圧着することにより、補修箇所部分の動きを止め、補修用熱可塑性樹脂製遮水シートとの接合密着性を保持することにより安定した接合を図り、これにより補修箇所が補修用熱可塑性樹脂製遮水シートで被覆されて完全に修復される。
【0022】
補修用熱可塑性樹脂製遮水シートを上記接合剤の塗布面に圧着して接合剤を硬化させる方法としては、一般には水中で補修用熱可塑性樹脂製遮水シートの積層面上から、薄い鋼板、サンドバック、コンクリートブロック等で荷重をかけて上記接合剤の塗布面に上記シートを圧着(圧締)して接合剤を硬化させる方法等が採られる。補修用熱可塑性樹脂製遮水シートの積層面上に加える荷重は、通常10〜150g/cm2であり、その荷重負荷時間(接合剤の硬化時間)は通常20〜250時間である。
【0023】
本発明の熱可塑性樹脂製遮水シートの補修方法によれば、熱可塑性樹脂製遮水シートと補修用熱可塑性樹脂製遮水シートを、接合剤を用いて水中で接着させることにより、補修部分を有する熱可塑性樹脂製遮水シートを水中から引き上げることなく、熱可塑性樹脂製遮水シートを水中に潜水させたままの状態(水環境)で熱可塑性樹脂製遮水シートを補修することが可能となる。また、上記補修方法を行うことにより、後述する実施例で示したように、補修後の熱可塑性樹脂製遮水シートの補修箇所における引張せん断強度を当該熱可塑性樹脂製遮水シートの引張せん断強度の30%以上とすることができ、船上等の陸環境での補修作業の場合と同等の補修接合強度を得ることができる。
【実施例】
【0024】
[実施例1〜2]
厚み1.5mm×縦200mm×横250mmのEPDMシートI(エチレン−プロピレン共重合体シート/シリカ15質量%及び、クレー15質量%含有)である試験シート6枚を用意した。
試験シート3枚について、試験シートの中央部にカッターナイフで縦30mm×横30mmの十文字の切り裂き込み傷を入れて、切り裂き込み傷試験シートを作製した。(残り3枚の試験シートは補修用シートとした。)
そして、高さ100mmの位置まで水が入れてある水槽(内寸で縦425mm×横730mm×高さ215mm)の底面に十文字の切り裂き込み傷試験シートを置いた。
【0025】
次に、切り裂き込み傷試験シートの十文字傷を中心に縦100mm×横100mmの広さで、以下に示した種類の接着剤を水中で塗布(塗布量500g/m2)した。
次に、接着剤の塗布面に上記EPDMシートである補修用シートを積層し、積層面上より押え用板として小鉄板(厚さ0.3mm×縦120mm×横250mm、重量0.7kg)を置いて、さらに小鉄板上にコンクリートブロック(300mmΦ×高さ80mm、10kg)を載せて、荷重をかけて放置した。
72時間放置後、補修用シートが接合した切り裂き込み傷試験シートを取り出し、剥離強度評価試験を行い、その結果を表1に示した。
【0026】
[接合剤]
1.変性シリコーン系接着剤 :スーパーX[セメダイン社製商品名]
比重1.3g/cm3
2.シリル化ウレタン系接着剤:ウルトラ多目的SU[コニシ社製商品
名]、比重1.10g/cm3
【0027】
[剥離強度評価試験]
JIS K−6850に準じて剥離強度(直角剥離)試験を行い、その測定結果を下記に示した基準で評価した。
[評価基準]
A:3N/cm以上
B:1.5N/cm以上3N/cm未満
C:0.2N/cm以上1.5N/cm未満
D:0.2N/cm未満
【0028】
【表1】

【0029】
[実施例3〜4]
実施例1〜2において、EPDMシートIの代わりにTPOシートI(高密度ポリエチレン樹脂とエチレン−プロピレン共重合体との混合シート/シリカ16質量%及び、タルク20質量%含有)を用いた以外は、それぞれ実施例1〜2と同様にして処理を行い、剥離強度評価試験を行った。その結果を表2に示した。
【0030】
【表2】

【0031】
[実施例5〜6]
実施例1〜2において、EPDMシートIの代わりにMePEシートI(メタロセン触媒ポリエチレン樹脂シート/タルク15質量%及び、バライト10質量%含有)を用いた以外は、それぞれ実施例1〜2と同様にして処理を行い、剥離強度評価試験を行った。その結果を表3に示した。
【0032】
【表3】

【0033】
[実施例7〜8]
実施例1〜2において、EPDMシートIの代わりにTPUシートI(ポリウレタン樹脂シート/シリカ15質量%及び、炭酸カルシウム15質量%含有)を用いた以外は、それぞれ実施例1〜2と同様にして処理を行い、剥離強度評価試験を行った。その結果を表4に示した。
【0034】
【表4】

【0035】
[実施例9〜10]
実施例1〜2において、EPDMシートIの代わりに軟質塩ビシートI(軟質ポリ塩化ビニル樹脂シート/炭酸カルシウム10質量%及び、クレー10質量%含有)を用いた以外は、それぞれ実施例1〜2と同様にして処理を行い、剥離強度評価試験を行った。その結果を表5に示した。
【0036】
【表5】

【0037】
[比較例1〜2]
実施例1〜2において、EPDMシートIの代わりにEPDMシートII(エチレン−プロピレン共重合体シート/無機充填剤含有量0質量%)を用いた以外は、それぞれ実施例1〜2と同様にして処理を行い、剥離強度評価試験を行った。その結果を表6に示した。
【0038】
【表6】

【0039】
[比較例3〜4]
実施例1〜2において、EPDMシートIの代わりにTPOシートII(高密度ポリエチレン樹脂とエチレン−プロピレン共重合体との混合シート/無機充填剤含有量0質量%)を用いた以外は、それぞれ実施例1〜2と同様にして処理を行い、剥離強度評価試験を行った。その結果を表7に示した。
【0040】
【表7】

【0041】
[比較例5〜6]
実施例1〜2において、EPDMシートIの代わりにMePEシートII(メタロセン触媒ポリエチレン樹脂シート/無機充填剤含有量0質量%)を用いた以外は、それぞれ実施例1〜2と同様にして処理を行い、剥離強度評価試験を行った。その結果を表8に示した。
【0042】
【表8】

【0043】
[比較例7〜8]
実施例1〜2において、EPDMシートIの代わりにTPUシートII(ポリウレタン樹脂シート/無機充填剤含有量0質量%)を用いた以外は、それぞれ実施例1〜2と同様にして処理を行い、剥離強度評価試験を行った。その結果を表9に示した。
【0044】
【表9】

【0045】
[比較例9〜10]
実施例1〜2において、EPDMシートIの代わりに軟質塩ビシートII(軟質ポリ塩化ビニル樹脂シート/無機充填剤含有量0質量%)を用いた以外は、それぞれ実施例1〜2と同様にして処理を行い、剥離強度評価試験を行った。その結果を表10に示した。
【0046】
【表10】

【0047】
[実施例11]
厚み1.5mm×縦200mm×横250mmの軟質塩ビシートIII(軟質ポリ塩化ビニル樹脂シート/炭酸カルシウム8質量%及びシリカ5質量%含有、試験シート母材:引張せん断強度が697N/2.5cmである)の試験シート2枚を用意した。
そして、高さ100mmの位置まで水が入れてある水槽(内寸で縦425mm×横730mm×高さ215mm)の底面に試験シートを置いた。
【0048】
次に、試験シートの縦方向中央部に縦90mm×横250mmの接合部幅で変性シリコーン系接着剤・スーパーX[セメダイン社製商品名]を水中で第1塗布(塗布量400g/m2)した。
【0049】
次に、接着剤の第1塗布面にガラスクロス(縦90mm×横250mm)を積層し、当該積層面上に再度、変性シリコーン系接着剤・スーパーX[同前]を水中で第2塗布(塗布量400g/m2)した。
【0050】
次に、接着剤の第2塗布面上に試験シートを積層し、当該積層面上に押え用板として小鉄板(厚さ0.3mm×縦120mm×横250mm、0.7kg)を置いて、さらに小鉄板上にコンクリートブロック(300mmΦ×高さ80mm、10kg)を載せて、荷重をかけて放置した。
120時間放置後、接合した試験シートを取り出し、接合部の引張せん断強度試験を行い、接合部の引張せん断強度、引張せん断伸び、及び強度保持率を測定し、その結果を表11に示した。
【0051】
[引張せん断強度試験測定]
JIS K−6850に準じて下記の引張試験条件で引張せん断強度試験を行った。
引張試験条件: 試験片 2.5cm×20cm
試験温度 23℃
試験片つかみ間(チャック間)100mm
引張試験速度 50mm/min
【0052】
[強度保持率]
強度保持率=接合部の引張せん断強度÷試験シート母材の引張せん断強度×100%
【0053】
[実施例12]
接着剤の第1塗布面にガラスクロスを積層せず、接着剤を第2塗布しないで、接着剤の第1塗布面上に試験シートを積層した以外は、実施例11と同様にして処理を行い、接合部の引張せん断強度試験を行って接合部の引張せん断強度、引張せん断伸び、及び強度保持率を測定した。その結果を表11に示した。
【0054】
[実施例13]
試験シートの縦方向中央部接合幅を縦65mm×横250mmの接合部幅に代えた以外は、実施例11と同様にして処理を行い、接合部の引張せん断強度試験を行って接合部の引張せん断強度、引張せん断伸び、及び強度保持率を測定した。その結果を表11に示した。
【0055】
[実施例14]
接着剤の第1塗布面にガラスクロスを積層せず、接着剤を第2塗布しないで、接着剤の第1塗布面上に試験シート積層した以外は、実施例13と同様にして処理を行い、接合部の引張せん断強度試験を行って接合部の引張せん断強度、引張せん断伸び、及び強度保持率を測定した。その結果を表11に示した。
【0056】
[実施例15]
塗布する接着剤として、反応性変性アクリル系硬化型接着剤・スーパーXG[セメダイン社製商品名]を用いた以外は、実施例11と同様にして処理を行い、接合部の引張せん断強度試験を行って接合部の引張せん断強度、引張せん断伸び、及び強度保持率を測定した。その結果を表11に示した。
【0057】
【表11】

【0058】
[実施例16]
厚み3.0mm×縦200mm×横250mmの軟質塩ビシートIV(軟質ポリ塩化ビニル樹脂シート/炭酸カルシウム5質量%及びシリカ7質量%含有、試験シート母材:引張せん断強度が1286N/2.5cmである)の試験シート2枚を用意した。
高さ100mmの位置まで水が入れてある水槽(内寸で縦425mm×横730mm×高さ215mm)の底面に試験シートを置いた。
【0059】
次に、試験シートの縦方向中央部に縦85mm×横250mmの接合部幅で変性シリコーン系接着剤・スーパーX[セメダイン社製商品名]を水中で塗布(塗布量900g/m2)した。
【0060】
次に、接着剤の塗布面上に試験シートを積層し、当該積層面上に押え用板として小鉄板(厚さ0.3mm×縦120mm×横250mm、0.7kg)を置いて、さらに小鉄板上にコンクリートブロック(300mmΦ×高さ80mm、10kg)を載せて、荷重をかけて放置した。
240時間放置後、接合した試験シートを取り出し、接合部の引張せん断強度試験を行い、接合部の引張せん断強度、引張せん断伸び、及び強度保持率を測定した。その結果を表12に示した。
【0061】
【表12】

【0062】
上記の結果から、本発明方法が水中での熱可塑性樹脂製遮水シートの補修に対して、きわめて有効な方法であることが明らかとなった。また、接着剤に加えてガラスクロスを積層させることにより、接合部の強度及び伸びが向上することが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機充填剤を含有する熱可塑性樹脂製遮水シートの補修箇所に当該無機充填剤と反応する接合剤を水中で塗布し、次いで、当該接合剤の塗布面に無機充填剤を含有する補修用熱可塑性樹脂製遮水シートを水中で積層し、その後、水中で当該補修用熱可塑性樹脂製遮水シートを上記接合剤の塗布面に圧着して当該接合剤を硬化させることを特徴とする熱可塑性樹脂製遮水シートの補修方法。
【請求項2】
無機充填剤を含有する熱可塑性樹脂製遮水シートを構成する熱可塑性樹脂が、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−プロピレン共重合体系樹脂又はポリウレタン系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂製遮水シートの補修方法。
【請求項3】
無機充填剤を含有する熱可塑性樹脂製遮水シートが、無機充填剤を当該熱可塑性樹脂製遮水シートの総重量に対して、5〜60質量%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂製遮水シートの補修方法。
【請求項4】
無機充填剤が、シリカ、赤リン、ホウ酸亜鉛、タルク、マイカ、クレー、カオリン、ベントナイト、合成雲母、炭酸カルシウム、バライト又はケイ酸ジルコニウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂製遮水シートの補修方法。
【請求項5】
接合剤が、反応性変性シリコーン系硬化型接着剤、反応性変性アクリル系硬化型接着剤又は反応性変性ウレタン系硬化型接着剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂製遮水シートの補修方法。
【請求項6】
熱可塑性樹脂製遮水シートの補修箇所に接合剤を水中で塗布する場合において、接合剤にガラスクロスを加えて塗布することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂製遮水シートの補修方法。
【請求項7】
水中で当該補修用熱可塑性樹脂製遮水シートを上記接合剤の塗布面に圧着して当該接合剤を硬化させて、補修後の熱可塑性樹脂製遮水シートの補修箇所における引張せん断強度を当該熱可塑性樹脂製遮水シートの引張せん断強度の30%以上とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂製遮水シートの補修方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の補修方法によって補修された熱可塑性樹脂製遮水シート。

【公開番号】特開2008−231735(P2008−231735A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70987(P2007−70987)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(593157091)株式会社タツノ化学 (4)
【Fターム(参考)】