説明

熱変色性素子及び熱変色性表示装置

【課題】本発明は、熱変色性素子及び熱変色性表示装置に関する。
【解決手段】本発明の熱変色性素子は、密封筐体と、隔離層と、第一加熱構造体と、第二加熱構造体と、有色顕色層と、を備える。前記密封筐体の中に、密封空間が形成される。前記隔離層が、前記密封空間を第一空間及び第二空間に分けて、前記第一空間に囲まれた前記密封筐体の少なくとも一部が透明である。前記第一加熱構造体が、前記第一空間を加熱することに用いられる。前記第二加熱構造体が、前記第二空間を加熱することに用いられる。前記有色顕色層が、前記第一空間又は前記第二空間の中に設置され、加熱されるので、気体状態になる前記有色顕色層が前記隔離層を通って前記第一空間と前記第二空間との間で位置変換を行う。また、本発明は、熱変色性素子を利用した熱変色性表示装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱変色性素子(THERMOCHROMATIC DEVICE)及び熱変色性表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子ペーパーは、バックライトモジュールを備えない表示装置であり、近年広く応用されている。現在の電子ペーパーの表示方式の主流は、電気泳動方式である。該電気泳動方式は、マイクロカプセル型電気泳動式及びマイクロカップ型電気泳動式を含む。
【0003】
前記マイクロカプセル型電気泳動式では、白色と黒色の荷電粒子及び流体がマイクロカプセルに収められ、各々のマイクロカプセルが導電基板と透明導電層との間に隙間なく並べられ、前記導電基板及び透明導電層によって、前記マイクロカプセルに電圧を印加し、前記導電基板と前記透明導電層との間に電界が生じ、該電界によって白色と黒色の荷電粒子を移動させ、白と黒の表示を行なう。
【0004】
前記マイクロカップ型電気泳動式では、正に帯電した白い粒子及び液体顔料がマイクロカップに満たされ、該マイクロカップが導電基板と透明導電層との間に並べられ、前記導電基板及び透明導電層によって、前記マイクロカップに電圧を印加し、前記導電基板と前記透明導電層との間に電界が生じ、該電界によって白い粒子を移動させる。電位を変えることで、白い粒子は画面から遠ざかったり近づいたりする。白い粒子が画面に近づいたときにピクセルは白くなり、遠ざかった時には液体の色に変わるので、表示を実現できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、電気泳動方式が採用された前記電子ペーパーは、荷電粒子が必要であり、該荷電粒子が白色又は黒色であるので、カラー表示を実現することが難しくなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、前記課題を解決するために、本発明はコストが低く、カラー表示を実現できる熱変色性素子及び熱変色性表示装置を提供する。
【0008】
熱変色性素子は、密封筐体と、隔離層と、第一加熱構造体と、第二加熱構造体と、有色顕色層と、を備える。前記密封筐体の中に、密封空間が形成される。前記隔離層が、前記密封空間を第一空間及び第二空間に分けて、前記第一空間に囲まれた前記密封筐体の少なくとも一部が透明である。前記第一加熱構造体が、前記第一空間を加熱することに用いられる。前記第二加熱構造体が、前記第二空間を加熱することに用いられる。前記有色顕色層が、前記第一空間又は前記第二空間の中に設置され、前記第一加熱構造体又は前記第二加熱構造体の作用で、気体状態と非気体状態との間の転換を行って、気体状態の前記有色顕色層が前記隔離層を通って前記第一空間と前記第二空間との間で位置変換を行う。
【0009】
前記隔離層が、複数の微孔を有し、気体状態の前記有色顕色層が前記隔離層の微孔を通って前記第一空間と前記第二空間との間に位置変換を行う。
【0010】
熱変色性表示装置は、第一電極板と、該第一電極板と対向して設置された第二電極板と、前記第一電極板と前記第二電極板との間に位置された複数の熱変色性素子と、を備える。前記第一電極板が、複数の第一行電極及び複数の第一列電極を含み、該複数の第一行電極及び複数の第一列電極が交差して設置され、複数の第一格子が形成される。前記第二電極板が、複数の第二行電極及び複数の第二列電極を含み、該複数の第二行電極及び複数の第二列電極が交差して設置され、複数の第二格子が形成される。前記複数の熱変色性素子が、密封筐体と、隔離層と、第一加熱構造体と、第二加熱構造体と、有色顕色層と、を備える。前記密封筐体の中に、密封空間が形成される。前記隔離層が、前記密封空間を第一空間及び第二空間に分けて、前記第一空間に囲まれた前記密封筐体の少なくとも一部が透明である。前記第一加熱構造体が、前記第一空間を加熱することに用いられる。前記第二加熱構造体が、前記第二空間を加熱することに用いられる。前記有色顕色層が、前記第一空間又は前記第二空間の中に設置され、前記第一加熱構造体又は前記第二加熱構造体の作用で、気体状態と非気体状態との間の転換を行って、気体状態の前記有色顕色層が前記隔離層を通って前記第一空間と前記第二空間との間で位置変換を行う。各々の前記熱変色性素子の第一加熱構造体が、それぞれ、前記第一電極板の第一行電極及び第一列電極と電気的に接続される。各々の前記熱変色性素子の第二加熱構造体が、それぞれ、前記第二電極板の第二行電極及び第二列電極と電気的に接続される。
【発明の効果】
【0011】
従来の技術と比べて、熱変色性素子と熱変色性表示装置は以下の優れた点を有する。第一に、前記熱変色性素子は、加熱構造体を利用して有色顕色層を加熱して、該熱変色性素子に相変化を発生させ、固体状態又は液体状態から気体状態になる。該気体状態の有色顕色層は、前記第一空間と前記第二空間との間で位置変換を行うことができるので、カラー表示を実現である。前記有色顕色層の色が多いので、前記熱変色性素子の色が多い。第二に、前記熱変色性素子には、荷電粒子が必要ではないので、コストが低くなる。第三に、前記熱変色性素子は、電源を切断しても、前記有色顕色層の色が変わらず、カラー表示を保持できるので、前記熱変色性素子は、双安定表示を実現でき、エネルギーを節約することができる。
【0012】
前記熱変色性素子と熱変色性表示装置の第一加熱構造体又は第二加熱構造体は、カーボンナノチューブ構造体を採用する場合、その単位面積当たりの熱容量が低いので、前記加熱構造体が熱応答速度が速く、前記有色顕色層との熱の交換速度が速いので、該有色顕色層を速く加熱することができる。従って、前記熱変色性素子の色彩表示の応答速度が速く、エネルギー消費が小さくになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1の熱変色性素子の構造を示す上面図である。
【図2】本発明の実施形態1の熱変色性素子の構造を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態1の熱変色性素子の他の構造を示す断面図である。
【図4】ドローン構造カーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図5】ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブセグメントの構造を示す図である。
【図6】ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを引き出す見取り図である。
【図7】プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが等方的に配列されたカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図8】プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されたカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図9】綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図10】綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムの写真である。
【図11】ろ過された綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体の写真である。
【図12】超長構造カーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図13】非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図14】ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図15】本発明の実施形態2の熱変色性素子の構造を示す断面図である。
【図16】本発明の実施形態3の熱変色性素子の構造を示す断面図である。
【図17】本発明の熱変色性表示装置の構造を示す図である。
【図18】本発明の熱変色性表示装置の第一電極板を示す上面図である。
【図19】本発明の熱変色性表示装置の第二電極板を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
(実施形態1)
図1及び図2を参照すると、本実施形態は、熱変色性素子100を提供する。該熱変色性素子100は、密封筐体102、隔離層104、第一加熱構造体106、第二加熱構造体108、有色顕色層110、吸着層112、少なくとも二つの第一電極114及び少なくとも二つの第二電極116を含む。
【0016】
前記密封筐体102には密封空間(図示せず)が形成される。前記隔離層104は、前記密封筐体102の中に設置され、前記密封空間を第一空間120及び第二空間122に分ける。前記第一空間120に囲まれた前記密封筐体102の少なくとも一部が透明である。即ち、前記第一空間120に囲まれた前記密封筐体102に、透明窓(図示せず)を有する。前記第一加熱構造体106は、前記第一空間120を加熱することに用いられ、前記第二加熱構造体108は、前記第二空間122を加熱することに用いられる。前記有色顕色層110は、前記第一空間120の中に設置される。該有色顕色層110は、有色材料であり、所定の温度で相変化を発生して気体状態になり、該気体状態の有色材料が前記隔離層104を通って、前記第一空間120と前記第二空間122との間で交換することができる。前記少なくとも二つの第一電極114は、それぞれ前記第一加熱構造体106と電気的に接続される。前記少なくとも二つの第二電極116は、それぞれ前記第二加熱構造体108と電気的に接続される。
【0017】
前記密封筐体102は、上基板1022と、該上基板1022と対向する下基板1024と、前記上基板1022と前記下基板1024との間に設置された四つの側基板1026と、からなり、密封された空間が形成される。前記上基板1022は、透明絶縁基板であり、その材料がガラス又は透明の高分子材料である。即ち、前記上基板1022が透明窓である。前記透明の高分子材料は、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート又はポリ塩化ビニルである。前記下基板1024及び前記四つの側基板1026の材料は、例えば、セラミックス、プラスチック、ゴムなどの絶縁材料である。前記上基板1022及び前記下基板1024は、高温に耐える材料であることが好ましい。前記上基板1022及び前記下基板1024が透明基板である場合、前記熱変色性素子100が両面表示を実現することができる。
【0018】
前記隔離層104の材料は、不透明材料であり、明るい色又は白色の不透明材料であることが好ましい。解像度を高めるために、前記隔離層104の色は、前記有色顕色層110の色との差が大きいことが好ましい。
【0019】
図2を参照すると、前記隔離層104は、不透明の薄膜構造体であり、前記密封筐体102の密封空間の中に懸架して設置される。前記隔離層104の縁部は、接着剤で又は機械的に前記四つの側基板1026に固定され、或いは、前記四つの側基板1026に挿入される。本実施形態において、前記隔離層104は、その形状が前記上基板1022及び下基板1024の形状と同じであり、該上基板1022及び下基板1024に平行する。前記隔離層104の縁部は接着剤で前記四つの側基板1026に固定される。前記第一空間120及び前記第二空間122の中の気体を交換させるために、前記隔離層104が複数の微孔を有する。前記隔離層104は、高分子材料で製造され、例えば細胞壁、膀胱膜、羊皮紙などの半透膜である。前記隔離層104は、多孔基板の孔に他の材料を堆積して形成された半透壁でもよく、例えば、無釉セラミックスの孔に銅ヘキサシアノ鉄酸塩(CuHCF)を堆積して形成された隔離層である。前記隔離層104は、前記密封筐体102を前記第一空間120及び前記第二空間122に分けて、該第一空間120及び前記第二空間122の気体だけを交換させることができるが、液体又は固体を交換できない。前記隔離層104の厚さが1マイクロメートル〜1ミリメートルであることが好ましい。本実施形態において、前記隔離層104の厚さが100マイクロメートルである羊皮紙である。
【0020】
また、前記隔離層104は、下記の構造を有してもよい。図3を参照すると、前記隔離層104は、複数のスペーサ1042からなる隔離構造体である。前記スペーサ1042は、セラミックス又はブラスチックからなり、その形状が例えば、紡錘状、カンラン球状などの両端が小さく、中間部が大きいビーズ構造体である。前記スペーサ1042の材料が耐熱材料であることが好ましい。本実施形態において、前記複数のスペーサ1042は、ブラスチックからなるカンラン球状のビーズ構造体であり、前記密封筐体102の中に設置される。各々の前記スペーサ1042は、その両端が先端であり、それぞれ前記密封筐体102の上基板1022及び下基板1024と接触する。隣接する前記スペーサ1042の中間部が接触しなければ、大きな微孔が形成される。該大きな微孔で前記スペーサ1042の不透明性を損なうことを防止するために、隣接するスペーサ1042の中間部が接触することが好ましい。前記複数のスペーサ1042の両端が、それぞれ前記密封筐体102の上基板1022及び下基板1024と接触し、隣接するスペーサ1042の中間部が互いに接触するので、前記スペーサ1042と前記密封筐体102とが、第一空間120及び第二空間122が形成される。前記スペーサ1042が前記熱変色性素子100の表示効果に影響を与えることを防止するために、前記スペーサ1042が前記密封筐体102の上基板1022と接触した面積ができるだけ小さく設けることが好ましい。前記スペーサ1042の表面に複数の微孔があり、単一の微孔の直径が1マイクロメートル〜100マイクロメートルである。前記スペーサ1042の中間部が互いに接触するので、前記スペーサ1042の微孔から気体だけを通し、液体又は固体を通すことができない。前記微孔の直径が小さいので、前記隔離層104の不透明性に影響を与えない。
【0021】
前記第一空間120は、前記上基板1022、前記隔離層104及び四つの側基板1026に囲まれる。前記第二空間122は、前記下基板1024、前記隔離層104及び四つの側基板1026に囲まれる。前記第一空間120及び前記第二空間122は、それぞれ前記隔離層104の両側に設置される。前記第一空間120の形状及び大きさは、前記上基板1022と前記隔離層104との間の距離及び、前記隣接する側基板1026の間の距離によって決められる。前記第二空間122の形状及び大きさは、前記下基板1024と前記隔離層104との間の距離及び、前記隣接する側基板1026の間の距離によって決められる。前記第一空間120及び前記第二空間122の形状及び大きさが同じでも、異なってもいい。本実施形態において、前記第一空間120及び前記第二空間122の形状及び大きさが同じである。
【0022】
前記有色顕色層110は、固体状態又は液体状態の有色材料からなる。前記有色材料は、所定の温度で相変化を発生し、気体状態になる。前記有色材料は、例えば、昇華しやすいヨウ素、ナフタレンなどの固体でもよく、例えば、臭素などの有色の液体でもよい。前記有色顕色層110は、前記第一空間120又は第二空間122に設置される。本実施形態において、前記有色顕色層110は、ヨウ素であり、前記第二空間122の中に設置される。前記隔離層104が不透明の薄膜構造体であるので、前記有色顕色層110の色は、上基板1022を透過して、表示されない。
【0023】
前記第二加熱構造体108によって前記第二空間122を加熱する場合、前記有色顕色層110が加熱される。該有色顕色層110は、所定の温度まで加熱されると、相変化を発生し、固体状態から気体状態になる。該気体状態の有色顕色層110は、前記隔離層104の微孔を通って、前記第一空間120に入る。該第一空間の温度が低いので、該気体状態の有色顕色層110が固体状態に戻る。前記上基板1022が透明基板であるので、前記有色顕色層110の色は、上基板1022を透過して、表示されることができる。従って、前記熱変色性素子100は、色の表示を実現できる。
【0024】
前記第一加熱構造体106によって前記第一空間120を加熱する場合、前記有色顕色層110が加熱される。該有色顕色層110は、所定の温度まで加熱されると、相変化を発生し、固体状態から気体状態になる。該気体状態の有色顕色層110は、前記隔離層104の微孔を通って、前記第二空間122に入る。該第二空間の温度が低いので、該気体状態の有色顕色層110が固体状態に戻る。前記第一空間120には前記有色顕色層110が残留せず、前記隔離層104が不透明の薄膜構造体であるので、前記有色顕色層110の色は、前記上基板1022を透過して、表示されることができない。従って、前記熱変色性素子100は、色の消去を実現できる。
【0025】
前記第一加熱構造体106は、前記上基板1022の内表面又は外表面に設置できる。該第一加熱構造体106は、例えば、酸化インジウムスズ薄膜又はカーボンナノチューブ構造体のような透明層状構造体である。本実施形態において、前記第一加熱構造体106は、前記上基板1022の外表面に設置されたカーボンナノチューブ構造体であり、前記上基板1022を通して前記第一空間120を加熱する。前記第二加熱構造体108は、前記下基板1024の内表面又は外表面に設置できる。前記第二加熱構造体108は、透明の層状構造体又は不透明の層状構造体であり、具体的には、金属層、酸化インジウムスズ薄膜又はカーボンナノチューブ構造体である。本実施形態において、前記第一加熱構造体106は、前記下基板1024の外表面に設置されたカーボンナノチューブ構造体であり、前記下基板1024を通して前記第二空間122を加熱する。
【0026】
前記カーボンナノチューブ構造体は、自立構造を有するものである。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブ構造体を独立して利用することができるという形態のことである。すなわち、前記カーボンナノチューブ構造体を対向する両側から支持して、前記カーボンナノチューブ構造体の構造を変化させずに、前記カーボンナノチューブ構造体を懸架させることができることを意味する。前記カーボンナノチューブ構造体は、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブからなるので、特定の形状を有する。前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブの少なくとも一種を含む。前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、直径は0.5ナノメートル〜50ナノメートルに設定され、前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、直径は1ナノメートル〜50ナノメートルに設定され、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、直径は1.5ナノメートル〜50ナノメートルに設定される。前記カーボンナノチューブ構造体における隣接するカーボンナノチューブの間に多くの隙間を有するので、該カーボンナノチューブ構造体が多くの微孔を有する。
【0027】
前記カーボンナノチューブ構造体の厚さが0.5ナノメートル〜1ミリメートルであるが、好ましくは、100ナノメートル〜0.1ミリメートルである。前記カーボンナノチューブ構造体の透明度は、前記カーボンナノチューブ構造体の厚さと関係がある。前記カーボンナノチューブ構造体は、その厚さが小さくなるほど、その透明度がよくなる。前記カーボンナノチューブ構造体の単位体積当たりの熱容量は、0(0は含まず)〜2×10−4J/cm・Kであるが、好ましくは、0(0は含まず)〜1.7×10−6J/cm・Kである。前記カーボンナノチューブ構造体の熱容量が小さいので、前記カーボンナノチューブ構造体からなる加熱構造体が速い熱応答速度を持って、加熱対象を速く加熱することができる。前記カーボンナノチューブ構造体の熱応答速度は、その厚さと関係がある。前記カーボンナノチューブ構造体の面積が同じである場合、該カーボンナノチューブ構造体の厚さが厚くなるほど、熱応答速度が遅くなり、該カーボンナノチューブ構造体の厚さが薄くなるほど、熱応答速度が速くなる。
【0028】
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚の、カーボンナノチューブフィルム、カーボンナノチューブ線状構造体、又はカーボンナノチューブフィルム及びカーボンナノチューブ線状構造体の組み合わせである。前記カーボンナノチューブ構造体が複数のカーボンナノチューブフィルムを含む場合、前記複数のカーボンナノチューブフィルムが積層して設置される。前記カーボンナノチューブ構造体が複数のカーボンナノチューブ線状構造体を含む場合、該複数のカーボンナノチューブ線状構造体が平行して設置され、交差して設置され、又は編んで、二次元のカーボンナノチューブ構造体を形成することができる。また、前記カーボンナノチューブ構造体は、前記カーボンナノチューブ線状構造体を巻き付くことにより、二次元のカーボンナノチューブ構造体を形成することができる。
【0029】
前記カーボンナノチューブフィルムは、均一的に配置された複数のカーボンナノチューブを含む。前記複数のカーボンナノチューブが配向し又は配向せずに配置されている。前記複数のカーボンナノチューブの配列方式により、前記カーボンナノチューブフィルムは非配向型のカーボンナノチューブフィルム及び配向型のカーボンナノチューブフィルムの二種に分類される。本実施形態における非配向型のカーボンナノチューブフィルムでは、カーボンナノチューブが異なる方向に沿って配置され、又は絡み合っている。配向型のカーボンナノチューブフィルムでは、前記複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列している。又は、配向型のカーボンナノチューブフィルムにおいて、配向型のカーボンナノチューブフィルムが二つ以上の領域に分割される場合、各々の領域における複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されている。この場合、異なる領域におけるカーボンナノチューブの配列方向は異なる。具体的には、前記カーボンナノチューブフィルムは、ドローン構造カーボンナノチューブフィルム、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム、綿毛構造カーボンナノチューブフィルム又は超長構造カーボンナノチューブフィルムを含む。
【0030】
前記カーボンナノチューブ線状構造体は、少なくとも一つの非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ、少なくとも一つのねじれ状カーボンナノチューブワイヤ又は非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ及びねじれ状カーボンナノチューブワイヤの組み合わせである。
【0031】
本発明のカーボンナノチューブフィルムとしては、以下の(一)〜(四)のものが挙げられる。
【0032】
(一)ドローン構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含む。図4を参照すると、単一の前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルム143aは、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1を参照)から引き出して得られ、自立構造を有したものである。単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aにおいて、前記複数のカーボンナノチューブの大部分は、前記カーボンナノチューブフィルムの表面に平行に、カーボンナノチューブフィルムを引き出す方向に沿って、且つ、同じ方向に沿って配列されている。前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で端と端が接続されている。
【0033】
微視的には、前記カーボンナノチューブフィルム143aにおいて、前記同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブ以外に、該同じ方向に沿っておらずランダムな方向を向いたカーボンナノチューブも存在している。ここで、該ランダムな方向を向いたカーボンナノチューブは、前記同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブと比べて、割合は小さい。
【0034】
図5を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、複数のカーボンナノチューブセグメント143bを含む。前記複数のカーボンナノチューブセグメント143bは、長さ方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメント143bは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145を含む。単一の前記カーボンナノチューブセグメント143bにおいて、前記複数のカーボンナノチューブ145の長さは実質的に同じである。前記カーボンナノチューブフィルム143aを有機溶剤に浸漬させることにより、前記カーボンナノチューブフィルム143aの強靭性及び機械強度を高めることができる。前記カーボンナノチューブフィルム143aの厚さが10マイクロメートル以下である場合、該カーボンナノチューブフィルム143aの透光率が96%以上程度に達することができる。
【0035】
前記カーボンナノチューブ構造体が積層された複数の前記カーボンナノチューブフィルム143aを含む場合、隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aは、分子間力で結合されている。隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブ145は、それぞれ0°〜90°の角度で交差している。隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブ145が0°以上の角度で交差する場合、前記カーボンナノチューブ構造体に複数の微孔が形成され、該微孔の直径が10マイクロメートル以下である。又は、前記複数のカーボンナノチューブフィルム143aは、同一平面上に隙間なく並列されることもできる。
【0036】
前記カーボンナノチューブフィルムの製造方法は次のステップを含む。
【0037】
第一ステップでは、カーボンナノチューブアレイを提供する。該カーボンナノチューブアレイは、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1を参照)であり、該超配列カーボンナノチューブアレイの製造方法は、化学気相堆積法を採用する。該製造方法は、次のステップを含む。ステップ(a)では、平らな基材を提供し、該基材はP型のシリコン基材、N型のシリコン基材及び酸化層が形成されたシリコン基材のいずれか一種である。本実施形態において、4インチのシリコン基材を選択することが好ましい。ステップ(b)では、前記基材の表面に、均一的に触媒層を形成する。該触媒層の材料は鉄、コバルト、ニッケル及びその2種以上の合金のいずれか一種である。ステップ(c)では、前記触媒層が形成された基材を700℃〜900℃の空気で30分〜90分間アニーリングする。ステップ(d)では、アニーリングされた基材を反応炉に置き、保護ガスで500℃〜740℃の温度で加熱した後で、カーボンを含むガスを導入して、5分〜30分間反応を行って、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1)を成長させることができる。該カーボンナノチューブアレイの高さは100マイクロメートル以上である。該カーボンナノチューブアレイは、互いに平行し、基材に垂直に生長する複数のカーボンナノチューブからなる。該カーボンナノチューブは、長さが長いため、部分的にカーボンナノチューブが互いに絡み合っている。生長の条件を制御することによって、前記カーボンナノチューブアレイは、例えば、アモルファスカーボン及び残存する触媒である金属粒子などの不純物を含まなくなる。
【0038】
本実施形態において、前記カーボンを含むガスとしては、例えば、アセチレン、エチレン、メタンなどの活性な炭化水素が選択され、エチレンを選択することが好ましい。保護ガスは窒素ガスまたは不活性ガスであり、アルゴンガスが好ましい。
【0039】
本実施形態により提供されたカーボンナノチューブアレイは、前記の製造方法により製造されることに制限されず、アーク放電法またはレーザー蒸発法で製造してもよい。
【0040】
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブアレイから、少なくとも、一枚のカーボンナノチューブフィルムを引き伸ばす。まず、ピンセットなどの工具を利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。例えば、一定の幅を有するテープを利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。次に、所定の速度で前記複数のカーボンナノチューブを引き出し、複数のカーボンナノチューブ束からなる連続のカーボンナノチューブフィルムを形成する。
【0041】
前記複数のカーボンナノチューブを引き出す工程において、前記複数のカーボンナノチューブがそれぞれ前記基材から脱離すると、分子間力で前記カーボンナノチューブ束が端と端で接合され、連続的なカーボンナノチューブフィルムが形成される(図6を参照)。
【0042】
(二)プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のプレシッド構造カーボンナノチューブフィルム(pressed carbon nanotube film)を含む。図7又は図8を参照すると、前記カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは、等方的に配列されているか、所定の方向に沿って配列されているか、または、異なる複数の方向に沿って配列されている。前記カーボンナノチューブフィルムは、押し器具を利用することにより、所定の圧力をかけて前記カーボンナノチューブアレイを押し、該カーボンナノチューブアレイを圧力で倒すことにより形成された、シート状の自立構造を有するものである。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向は、前記押し器具の形状及び前記カーボンナノチューブアレイを押す方向により決められている。
【0043】
図7を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向せずに配置される。該カーボンナノチューブフィルムは、等方的に配列されている複数のカーボンナノチューブを含む。隣接するカーボンナノチューブが分子間力で相互に引き合い、接続する。該カーボンナノチューブ構造体が平面等方性を有する。該カーボンナノチューブフィルムは、平面を有する押し器具を利用して、カーボンナノチューブアレイが成長された基板に垂直な方向に沿って前記カーボンナノチューブアレイを押すことにより形成される。
【0044】
図8を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向して配列される。該カーボンナノチューブフィルムは、同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含む。ローラー形状を有する押し器具を利用して、同じ方向に沿って前記カーボンナノチューブアレイを同時に押す場合、基本的に同じ方向に配列されたカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。また、ローラー形状を有する押し器具を利用して、異なる方向に沿って、前記カーボンナノチューブアレイを同時に押す場合、前記異なる方向に沿って、選択的な方向に配列されたカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0045】
前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの傾斜の程度は、前記カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブと該カーボンナノチューブフィルムの表面とは、角度αを成し、該角度αは0°以上15°以下である。好ましくは、前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが該カーボンナノチューブフィルムの表面に平行する。前記圧力が大きくなるほど、前記傾斜の程度が大きくなる。前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは、前記カーボンナノチューブアレイの高さ及び該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。即ち、前記カーボンナノチューブアレイの高さが大きくなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が小さくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さが大きくなる。これとは逆に、カーボンナノチューブアレイの高さが小さくなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が大きくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さが小さくなる。前記カーボンナノチューブフィルムにおける隣接するカーボンナノチューブの間に隙間があるので、該カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数の微孔が形成され、該微孔の直径が10マイクロメートル以下である。
【0046】
(三)綿毛構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚の綿毛構造カーボンナノチューブフィルム(flocculated carbon nanotube film)を含む。図9及び図10を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブは、相互に絡み合い、等方的に配列されている。前記カーボンナノチューブ構造体においては、前記複数のカーボンナノチューブが均一に分布されている。複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されている。単一の前記カーボンナノチューブの長さは、10マイクロメートル以上であり、200マイクロメートル〜900マイクロメートルであると好ましい。前記カーボンナノチューブ構造体は、自立構造の薄膜の形状に形成されている。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブ構造体を独立して利用することができるという形態である。前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で接近して、相互に絡み合って、カーボンナノチューブネット状に形成されている。前記複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されて、複数の微小な穴が形成されている。ここで、単一の前記微小な穴の直径が10マイクロメートル以下になる。前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブは、相互に絡み合って配置されるので、該カーボンナノチューブ構造体は柔軟性に優れ、任意の形状に湾曲して形成させることができる。用途に応じて、前記カーボンナノチューブ構造体の長さ及び幅を調整することができる。前記カーボンナノチューブ構造体の厚さは、1.0マイクロメートル〜1.0ミリメートルであり、100マイクロメートルであることが好ましい。
【0047】
前記カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、下記のステップを含む。
【0048】
第一ステップでは、前記カーボンナノチューブフィルムのもとになるカーボンナノチューブを提供する。
【0049】
ナイフのような工具で前記カーボンナノチューブを前記基材から剥離し、カーボンナノチューブの原料が形成される。前記カーボンナノチューブは、ある程度互いに絡み合っている。前記カーボンナノチューブの原料においては、該カーボンナノチューブの長さは、10マイクロメートル以上であり、200マイクロメートル〜900マイクロメートルであることが好ましい。
【0050】
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブの原料を溶剤に浸漬し、該カーボンナノチューブの原料を処理して、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を形成する。
【0051】
前記カーボンナノチューブ原料を前記溶剤に浸漬した後、超音波式分散、又は高強度攪拌又は振動などの方法により、前記カーボンナノチューブを綿毛構造に形成させる。前記溶剤は水または揮発性有機溶剤である。超音波式分散方法により、カーボンナノチューブを含む溶剤に対して10〜30分間処理する。カーボンナノチューブは大きな比表面積を有し、カーボンナノチューブの間に大きな分子間力が生じるので、前記カーボンナノチューブはそれぞれもつれて、綿毛構造に形成されている。
【0052】
第三ステップでは、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶液をろ過して、最終的な綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を取り出す。
【0053】
まず、濾紙が置かれたファネルを提供する。前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶剤を濾紙が置かれたファネルにつぎ、しばらく放置して、乾燥させると、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体が分離される。図11を参照すると、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが互いに絡み合って、不規則的な綿毛構造となる。
【0054】
分離された前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を容器に置き、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を所定の形状に展開し、展開された前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体に所定の圧力を加え、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体に残留した溶剤を焙り、或いは、該溶剤が自然に蒸発すると、図9と図10に示す綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0055】
前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体が展開される面積によって、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムの厚さと面密度を制御できる。即ち、一定の体積を有する前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体は、展開される面積が大きくなるほど、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムの厚さと面密度が小さくなる。
【0056】
また、微多孔膜とエアーポンプファネル(Air−pumping Funnel)を利用して綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。具体的には、微多孔膜とエアーポンプファネルを提供し、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶剤を、前記微多孔膜を通して前記エアーポンプファネルにつぎ、該エアーポンプファネルに抽気し、乾燥させると、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。前記微多孔膜は、平滑な表面を有する。該微多孔膜において、単一の微小孔の直径は、0.22マイクロメートルにされている。前記微多孔膜が平滑な表面を有するので、前記カーボンナノチューブフィルムは容易に前記微多孔膜から剥落することができる。さらに、前記エアーポンプを利用することにより、前記綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムに空気圧をかけるので、均一な綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムを形成させることができる。
【0057】
(四)超長構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚の超長構造カーボンナノチューブフィルム(ultra−long carbon nanotube film)を含む。図12を参照すると、前記カーボンナノチューブフィルムは、ほぼ同じ長さを有する複数のカーボンナノチューブを含む。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、前記複数のカーボンナノチューブは、同じ方向に沿って、均一に並列されている。単一の前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは、10ナノメートル〜100マイクロメートルである。前記複数のカーボンナノチューブは、それぞれ前記複数のカーボンナノチューブフィルムの表面に平行に配列され、相互に平行に配列されている。隣接する前記カーボンナノチューブは所定の距離で分離して設置される。前記距離は0マイクロメートル〜5マイクロメートルである。前記距離が0マイクロメートルである場合、隣接する前記カーボンナノチューブは分子間力で接続されている。前記カーボンナノチューブフィルムにおける各々の前記カーボンナノチューブの長さは、前記カーボンナノチューブフィルムの長さと基本的に同じである。単一の前記カーボンナノチューブの長さは、1センチメートル以上であり、1センチメートル〜30センチメートルであることが好ましい。さらに、各々の前記カーボンナノチューブには結節がない。本実施形態において、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは10マイクロメートルである。単一の前記カーボンナノチューブの長さは10センチメートルである。
【0058】
前記カーボンナノチューブ構造体は少なくとも一本のカーボンナノチューブ線状構造体を含むことができる。前記カーボンナノチューブ線状構造体は、少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤを含む。一本の前記カーボンナノチューブワイヤの熱容量は、2×10−4J/cm・K以下であり、0(0は含まず)〜5×10−5J/cm・Kであることが好ましい。一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は4.5ナノメートル〜1センチメートルであり、1.0マイクロメートル〜100マイクロメートルであることが好ましい。
【0059】
図13を参照すると、前記カーボンナノチューブワイヤ(非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ)は、端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。前記カーボンナノチューブセグメントは、同じ長さ及び幅を有する。さらに、各々の前記カーボンナノチューブセグメントに、同じ長さの複数のカーボンナノチューブが平行に配列されている。前記複数のカーボンナノチューブはカーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列されている。この場合、一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は、1マイクロメートル〜1センチメートルである。
【0060】
図14を参照すると、前記カーボンナノチューブワイヤをねじり、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを形成することができる。ここで、前記複数のカーボンナノチューブは前記カーボンナノチューブワイヤの中心軸を軸に、螺旋状に配列されている。この場合、一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は、1マイクロメートル〜1センチメートルである。前記カーボンナノチューブ線状構造体は、前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ又はそれらの組み合わせのいずれか一種からなる。
【0061】
前記カーボンナノチューブワイヤを形成する方法は、カーボンナノチューブアレイから引き出してなるカーボンナノチューブフィルムを利用する。前記カーボンナノチューブワイヤを形成する方法は、次の三種がある。第一種では、前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの長手方向に沿って、前記カーボンナノチューブフィルムを所定の幅で切断し、カーボンナノチューブワイヤを形成する。第二種では、前記カーボンナノチューブフィルムを有機溶剤に浸漬させて、前記カーボンナノチューブフィルムを収縮させてカーボンナノチューブワイヤを形成することができる。第三種では、前記カーボンナノチューブフィルムを機械加工(例えば、紡糸工程)してねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成する。詳しく説明すれば、まず、前記カーボンナノチューブフィルムを紡糸装置に固定させる。次に、前記紡糸装置を動作させて前記カーボンナノチューブフィルムを回転させ、ねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成する。
【0062】
前記カーボンナノチューブ線状構造体が二本以上のカーボンナノチューブワイヤを含む場合、各々のカーボンナノチューブワイヤが平行に配列され、非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体を形成する。或いは、各々のカーボンナノチューブワイヤが、螺旋状に配列され、ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体を形成する。即ち、前記非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブワイヤは、前記カーボンナノチューブ線状構造体の長手方向に沿って、配列される。前記ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブワイヤは、前記線状構造体の軸向に沿って、螺旋状に配列される。
【0063】
前記非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブワイヤは、非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤ又はねじれ状のカーボンナノチューブワイヤである。前記ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブワイヤは、非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤ又はねじれ状のカーボンナノチューブワイヤである。
【0064】
前記カーボンナノチューブ線状構造体の直径は、0.5ナノメートル〜2ミリメートルである。単一の前記カーボンナノチューブワイヤの直径が大きく、前記カーボンナノチューブワイヤの数量が多いほど、前記カーボンナノチューブ線状構造体の直径が大きくなる。この逆に、単一の前記カーボンナノチューブワイヤの直径が小さく、前記カーボンナノチューブワイヤの数量が少ないほど、前記カーボンナノチューブ線状構造体の直径が小さくなる。
【0065】
前記カーボンナノチューブワイヤにおけるカーボンナノチューブが配向して配列されるので、該カーボンナノチューブワイヤからなるカーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブが配向して配列される。
【0066】
また、前記ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤを揮発性有機溶剤で処理してもよい。前記揮発性有機溶剤の表面力の作用で前記ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤにおける隣接するカーボンナノチューブが分子間力で緊密に接続されるので、該ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤは、直径及び比表面積が小さくなり、大きな密度、優れた機械強度及び優れた強靭性を有する。
【0067】
前記カーボンナノチューブ構造体が、一つの前記カーボンナノチューブ線状構造体を含む場合、該カーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブの両端は、それぞれ、前記電極に電気的に接続される。前記カーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブ線状構造体を含む場合、該複数のカーボンナノチューブ線状構造体が平行に配列され、又は交叉して配列される。前記交叉して配列されたカーボンナノチューブ線状構造体の交叉する角度は、特に制限されない。前記各々のカーボンナノチューブ線状構造体を設置する方式は制限されず、均一な加熱構造体を形成することができることを確保してもよい。
【0068】
前記カーボンナノチューブ線状構造体が、揮発性有機溶剤又は機械外力で前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを処理し、形成されたものであり、且つ前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムが、自立構造体を有するので、該カーボンナノチューブ線状構造体は、自立構造体も有する。前記カーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブの間に、隙間があるので、該カーボンナノチューブ線状構造体には、複数の微孔があり、該微孔の直径が10マイクロメートル以下である。
【0069】
前記カーボンナノチューブ構造体が大きな比表面積を有し、その自体が大きな接着性を有するので、該カーボンナノチューブ構造体からなる加熱構造体が前記上基板1022又は前記下基板1024の表面に直接設置することができる。また、前記加熱構造体が接着剤により前記上基板1022又は前記下基板1024の表面に固定することもできる。
【0070】
前記カーボンナノチューブフィルムを加熱構造体として利用した場合、該カーボンナノチューブフィルムを前記上基板1022又は下基板1024の表面に直接設置することができる。一つのカーボンナノチューブ線状構造体を加熱構造体として利用した場合、該カーボンナノチューブ線状構造体を湾曲させて層状構造体に形成し、あるいは、該カーボンナノチューブ線状構造体を層状構造体に巻き付いた後、該層状構造体を前記上基板1022又は下基板1024の表面に設置することができる。複数の前記カーボンナノチューブ線状構造体を加熱構造体として利用した場合、該複数のカーボンナノチューブ線状構造体を平行に又は交叉して配列させ、又は編まれ、層状構造体に形成され、該層状構造体を前記上基板1022又前記下基板1024の表面に設置することができる。
【0071】
本実施形態において、前記第一加熱構造体106は、複数のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを積層して、形成されたカーボンナノチューブ構造体であり、導電銀ペーストを利用して、前記第一加熱構造体106を前記上基板1022の外表面に固定させる。前記第二加熱構造体108は、複数のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを積層して、形成されたカーボンナノチューブ構造体であり、導電銀ペーストを利用して、前記第二加熱構造体108を前記下基板1024の外表面に固定させる。
【0072】
本実施形態における加熱構造体とするカーボンナノチューブ構造体が複数のカーボンナノチューブを含み、該カーボンナノチューブが優れた電気熱変換効率及び熱輻射効率を有するので、該加熱構造体は、優れた電気熱変換効率及び熱輻射効率を有する。前記カーボンナノチューブ構造体の単位面積当たりの熱容量がより低いので、前記加熱構造体の熱応答速度が速く、前記カーボンナノチューブ構造体が前記有色顕色層との熱の伝送速度が速く、該有色顕色層を速く加熱することができる。従って、前記熱変色性素子100が速く表示及び消去でき、反応速度が速い。前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが酸化されやすくはないので、該加熱構造体の寿命が長くなる。前記カーボンナノチューブ構造体の密度が小さいので、前記熱変色性素子100の重量が軽い。
【0073】
前記少なくとも二つの前記第一電極114は、前記第一加熱構造体106と電気的に接続される。前記少なくとも二つの第一電極114によって、前記第一加熱構造体106に電流を流すと、該第一加熱構造体106に熱を生じ、加熱対象を加熱する。前記少なくとも二つの第一電極114は、導電接着剤によって前記第一加熱構造体106の表面に設置される。該導電接着剤は、前記第一電極114を前記第一加熱構造体106の表面によく固定できるのと同時に、前記第一電極114と前記第一加熱構造体106との間の優れた電気接続を保持できる。該導電接着剤が導電銀ペーストである。
【0074】
前記少なくとも二つの第二電極116は、前記第二加熱構造体108と電気的に接続される。前記少なくとも二つの第二電極116によって、前記第二加熱構造体108に電流を流すと、該第二加熱構造体108に熱を生じ、加熱対象を加熱する。前記少なくとも二つの第二電極116は、導電接着剤によって前記第二加熱構造体108の表面に設置される。該導電接着剤は、前記第二電極116を前記第二加熱構造体108の表面によく固定できるのと同時に、前記第二電極116と前記第二加熱構造体108との間の優れた電気接続を保持できる。該導電接着剤が導電銀ペーストである。
【0075】
前記第一電極114及び第二電極116は、導電材料からなり、例えば導電性フィルム、金属チップ又は金属ワイヤーである。好ましくは、前記第一電極114及び第二電極116がそれぞれ導電性フィルムであり、その厚さが0.5ナノメートル〜100マイクロメートルである。前記導電フィルムの材料は、金属、合金、インジウム酸化スズ(ITO)、アンチモン酸化スズ(ATO)、亜鉛酸化アルミニウム(ZAO)、導電銀ペースト、導電ポリマー又は導電性のカーボンナノチューブである。前記金属又は合金は、アルミニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、チタン、銀、ネオジム、パラジウム及びセシウムなどの一種又は数種の合金である。前記第一電極114及び第二電極116は、それぞれ前記第一加熱構造体106及び前記第二加熱構造体108の表面に設置される。前記第一電極114が前記第一加熱構造体106の透光性に影響を与えることを防止するために、該第一電極114が優れた透光性を有する材料からなり、その数量が二つであることが好ましい。
【0076】
本実施形態において、前記第一電極114及び第二電極116は、それぞれ二つであり、その厚さが5マイクロメートルであるストライプの金属のパラジウム薄膜である。二つの前記第一電極114は、それぞれ前記第一加熱構造体106の両端に設置され、該第一加熱構造体106と電気的に接続される。二つの前記第二電極116は、それぞれ前記第二加熱構造体108の両端に設置され、該第二加熱構造体108と電気的に接続される。前記第一加熱構造体106及び前記第二加熱構造体108は、カーボンナノチューブ構造体を採用して、該カーボンナノチューブ構造体が配向に配列された複数のカーボンナノチューブを含む場合、該複数のカーボンナノチューブが一つの電極からほかの電極へ伸び、該二つの電極に対して垂直である。
【0077】
前記熱変色性素子100が応用される場合、前記有色顕色層110が前記第一空間120に位置する際、該有色顕色層110が有色材料からなって、前記上基板1022が透明基板であるので、前記有色顕色層110の色は、前記上基板1022を透過して、表示されることができる。従って、前記熱変色性素子100は、色の表示を実現できる。前記有色顕色層110が前記第二空間122に位置する際、前記隔離層104が不透明の薄膜構造体であるので、前記有色顕色層110の色は、上基板1022を透過して、表示されることができない。従って、前記熱変色性素子100は、色の消去を実現できる。前記第一加熱構造体106及び前記第二加熱構造体108によって、前記有色顕色層110を前記第一空間120と前記第二空間122との間で位置変換を行わせることができるので、前記熱変色性素子100の表示又は消去を実現できる。
【0078】
前記熱変色性素子100に何も表示させないようにする場合、前記第一加熱構造体106によって前記第一空間120を加熱すると、前記有色顕色層110が加熱される。該有色顕色層110は、所定の温度まで加熱されると、相変化を起こし、固体状態から気体状態になる。該気体状態の有色顕色層110は、前記隔離層104の微孔を通って、前記第二空間122に入る。該第二空間の温度が低いので、該気体状態の有色顕色層110が固体状態に戻る。前記第一加熱構造体106が第一空間120を加熱することを停止しても、前記有色顕色層110が前記第一空間120に戻ることができない。前記第一空間120に前記有色顕色層110が残留せず、前記隔離層104が不透明の薄膜構造体であるので、前記有色顕色層110の色は、前記基板1022を透過して、表示されない。従って、前記熱変色性素子100には、色の消去を実現できる。
【0079】
前記熱変色性素子100に表示を実現させる場合、前記第二加熱構造体108によって前記第二空間122を加熱すると、前記有色顕色層110が加熱される。該有色顕色層110は、所定の温度まで加熱されると、相変化を起こし、固体状態から気体状態になる。該気体状態の有色顕色層110は、前記隔離層104の微孔を通って、前記第一空間120に入る。該第一空間の温度が低いので、該気体状態の有色顕色層110が固体状態に戻る。前記第二加熱構造体108が前記第二空間122を加熱することを停止しても、前記有色顕色層110も前記第二空間122に戻ることができない。
【0080】
本実施形態における熱変色性素子100は、次の優れた点を有する。第一に、前記熱変色性素子100では、加熱構造体を利用して有色顕色層110を加熱して、該熱変色性素子100に相変化を発生させ、固体状態又は液体状態から気体状態になる。該気体状態の有色顕色層110は、前記第一空間120と前記第二空間122との間で位置変換を行うことができるので、カラー表示を実現である。前記有色顕色層110の色が多いので、前記熱変色性素子100の色が多い。第二に、前記熱変色性素子100には、荷電粒子が必要ではないので、コストが低くなる。第三に、前記熱変色性素子100は、電源を切断しても、前記有色顕色層110の色が変わらず、カラー表示を保持できるので、前記熱変色性素子100は、双安定表示を実現でき、エネルギーを節約することができる。
【0081】
(実施形態2)
図15を参照すると、本実施形態は、熱変色性素子200を提供する。該熱変色性素子200は、密封筐体202、隔離層204、第一加熱構造体206、第二加熱構造体208、有色顕色層210、少なくとも二つの第一電極214及び少なくとも二つの第二電極216を含む。
【0082】
前記隔離層204は、前記密封筐体202の中に設置され、該密封筐体202に囲まれた密封空間を第一空間220及び第二空間222に分ける。前記第一加熱構造体206は、前記第一空間220を加熱することに用いられ、前記第二加熱構造体208は、前記第二空間222を加熱することに用いられる。前記有色顕色層210は、所定の温度まで加熱されると、固体状態又は液体状態から気体状態になるものからなって、前記第二空間222に設置される。前記少なくとも二つの第一電極214は、それぞれ前記第一加熱構造体206と電気的に接続される。前記少なくとも二つの第二電極216は、それぞれ前記第二加熱構造体208と電気的に接続される。前記密封筐体202は、上基板2022、下基板2024及び四つの側基板2026からなる。
【0083】
本実施形態の熱変色性素子200は、実施形態1の熱変色性素子100の構造と比べて、本実施形態の第一加熱構造体206、第二加熱構造体208の位置及び、前記第一電極214、前記第二電極216の設置方式が異なる。
【0084】
前記第一加熱構造体206は、上基板2022の内表面に設置され、前記第一空間220の内部に位置される。前記第二加熱構造体208は、下基板2024の内表面に設置され、前記第二空間222の内部に位置され、前記有色顕色層210と直接接触する。
【0085】
前記少なくとも、二つの第一電極214は、前記第一加熱構造体206と電気的に接続される。本実施形態において、前記第一電極214は、その数量が二つであり、それぞれ前記第一加熱構造体206の両端に設置され、該第一加熱構造体206と直接接触する。前記第一電極214は、さらに延長部2142を含み、該延長部2142が前記密封筐体202の外部まで延びる。前記第一電極214は、前記延長部2142を介して、外部回路と電気的に接続される。
【0086】
前記少なくとも、二つの第二電極216は、前記第二加熱構造体208と電気的に接続される。本実施形態において、前記第二電極216は、その数量が二つであり、それぞれ前記第二加熱構造体208の両端に設置され、該第二加熱構造体208と直接接触する。前記第二電極216は、さらに延長部2162を含み、該延長部2162が前記密封筐体202の外部まで延びる。前記第二電極216は、前記延長部2162を介して、外部回路と電気的に接続される。
【0087】
本実施形態の熱変色性素子200において、前記第一加熱構造体206及び前記第二加熱構造体208がそれぞれ前記第一空間220及び前記第二空間222の内部に設置され、それぞれ前記有色顕色層210を直接加熱できるので、熱損失が減少し、加熱速度が速くなる。従って、前記熱変色性素子200の応答速度が速くなる。
【0088】
(実施形態3)
図16を参照すると、本実施形態は、熱変色性素子300を提供する。該熱変色性素子300は、密封筐体302、隔離層304、第一加熱構造体306、第二加熱構造体308、有色顕色層310を含む。
【0089】
前記隔離層304は、前記密封筐体302の中に設置され、該密封筐体302に囲まれた密封空間を第一空間320及び第二空間322に分ける。前記第一加熱構造体306は前記第一空間320を加熱することに用いられ、前記第二加熱構造体308は前記第二空間322を加熱することに用いられる。前記有色顕色層310は、所定の温度に加熱されると、固体状態又は液体状態から気体状態になるものからなって、前記第二空間322に設置される。前記密封筐体302は、上基板3022、下基板3024及び四つの側基板3026を含む。
【0090】
本実施形態の熱変色性素子300は、前記実施形態2の熱変色性素子200と比べて、本実施形態の熱変色性素子300の側基板3026の構造が異なる。
【0091】
前記密封筐体302の四つの側基板3026において、対向して設置された二つの側基板3026は、絶縁材料からなって、対向して設置された他の二つの側基板3026は、それぞれ三つの部材を含む。具体的には、前記三つの部材を含む側基板3026は、それぞれ第一導電部3026a、第二導電部3026b及び絶縁層3026cを含み、該第一導電部3026a及び第二導電部3026bが絶縁層3026cによって絶縁する。前記第一導電部3026aは、前記第一加熱構造体306の表面に設置され、該第一加熱構造体306と電気的に接続され、前記第二導電部3026bは、前記第二加熱構造体308の表面に設置され、該第二加熱構造体308と電気的に接続される。前記第一加熱構造体306は前記第一導電部3026aを介して外部回路と電気的に接続され、前記第二加熱構造体308は前記第二導電部3026bを介して外部回路と電気的に接続される。
【0092】
本発明は、前記実施形態1〜実施形態3のいずれかの熱変色性素子を利用した熱変色性表示装置を提供する。該熱変色性表示装置は、複数の熱変色性素子が行列形式で配列して形成された画素アレイと、駆動回路と、複数の行電極と、複数の列電極とを含む。前記駆動回路が前記複数の行電極及び複数の列電極によって、それぞれ各々の熱変色性素子の有色顕色層を制御する。具体的には、本実施形態において、複数の熱変色性素子の第一加熱構造体が第一電極板を共用し、複数の熱変色性素子の第二加熱構造体が第二電極板を共用する。アドレス回路(addressing circuit)によって、それぞれ各々の熱変色性素子の作動を制御して、表示を実現することができる。本発明の実施形態1における熱変色性素子100を応用した熱変色性表示装置を例として、熱変色性表示装置について詳しく説明する。
【0093】
図17を参照すると、本実施形態は、熱変色性素子100を応用した熱変色性表示装置40を提供する。該熱変色性表示装置40は、第一電極板42、第二電極板44及び前記第一電極板40と前記第二電極板44との間に設置された複数の熱変色性素子100を含む。該第一電極板42および第二電極板44が対向して設置される。
【0094】
図18を参照すると、前記第一電極板42は、透明基板であり、第一表面420を備える。前記第一電極板42は、複数の第一行電極422及び複数の第一列電極424を含む。前記複数の第一行電極422は、平行し、等間隔に前記第一電極板42の第一表面420に設置され、前記複数の第一列電極424は、平行し、等間隔に前記第一電極板42の第一表面420表面に設置される。該複数の第一行電極422と該複数の第一列電極424は、絶縁して、交差される。隣接する二つの第一行電極422と、隣接する二つの第一列電極424とは、複数の第一格子426を形成している。
【0095】
図19を参照すると、前記第二電極板44は、前記第一電極板42の構造と同じであり、第二表面440を備える。該第二電極板44は、その第二表面440に設置された複数の第二行電極442、複数の第二列電極444及び複数の第二格子446を含む。
【0096】
前記第一電極板42の第一表面420と前記第二電極板44の第二表面440は、対向して設置される。前記第一表面420に設置された複数の第一行電極422、複数の第一列電極424及び複数の第一格子426は、それぞれ前記第二表面440に設置された複数の第二行電極442、複数の第二列電極444及び複数の第二格子446と対応して設置される。複数の熱変色性素子100は、前記第一電極板42と前記第二電極板44との間に設置され、複数の行及び複数の列に配列される。各々の熱変色性素子100は、前記熱変色性表示装置40の一つの画素に対応する。
【0097】
図2を共に参照すると、各々の熱変色性素子100は、その上基板1022が前記第一電極板42の第一格子426に隣接して設置され、その下基板1024が前記第二電極板44の第二格子446に隣接して設置される。各々の前記熱変色性素子100の一つの第一電極114は、前記第一格子426が形成された一つの第一行電極422と電気的に接続され、他の一つの第一電極114は、前記第一格子426が形成された一つの第一列電極424と電気的に接続される。前記二つの第一電極114は、それぞれ電極リード線によって前記第一行電極422及び前記第一列電極424と電気的に接続されることができる。
【0098】
各々の前記熱変色性素子100の一つの第二電極116は、前記第二格子446が形成された一つの第二行電極442と電気的に接続され、他の一つの第二電極116は、前記第二格子446が形成された一つの第二列電極444と電気的に接続される。
【0099】
前記第一電極板42と前記第二電極板44との間にさらに少なくとも一つの支持体(図示せず)を含むことができる。該支持体は、前記第一電極板42及び前記第二電極板44を支持し、該第一電極板42及び第二電極板44を、間隔を置いて設置させることができるので、前記熱変色性素子100を前記第一電極板42と前記第二電極板44との間に位置させる。前記支持体は、前記熱変色性素子100が前記第一電極板42及び前記第二電極板44からの圧力を受けることを防止でき、前記熱変色性素子100を保護できる。具体的には、前記支持体は、前記第一電極板42と前記第二電極板44との間に設置されたフレームである。該支持体と、前記第一電極板42及び前記第二電極板44とは、密封構造体が形成され、前記複数の熱変色性素子100は、密封構造体の中に設置される。
【0100】
前記熱変色性表示装置40において、前記第一電極板42及び前記第二電極板44に設置された行電極及び列電極に電圧を印加することによって、前記第一加熱構造体106又は前記第二加熱構造体108に前記有色顕色層110を加熱させることができる。従って、前記熱変色性表示装置40の表示及び消去を実現できる。そして、異なる行電極及び列電極に電圧を印加することによって、前記熱変色性表示装置40に異なる画素を表示させることができ、前記熱変色性表示装置40に異なる画像又は文字を表示させることができる。異なる熱変色性素子100に異なる色の有色顕色層110を設置することによって、前記熱変色性表示装置40に多くの色を表示させることができる。
【符号の説明】
【0101】
100、200、300 熱変色性素子
104、204、304 隔離層
106、206、306 第一加熱構造体
108、208、308 第二加熱構造体
114、214 第一電極
116、216 第二電極
110、210、310 有色顕色層
112、212、312 吸着層
120、220、320 第一空間
122、222、322 第二空間
1022、2022、3022 上基板
1024、2024、3024 下基板
1026、2026、3026 側基板
102、202、302 密封筐体
2142、2162 延長部
3026a 第一導電部
3026b 第二導電部
3026c 絶縁層
143a ドローン構造カーボンナノチューブフィルム
143b カーボンナノチューブセグメント
145 カーボンナノチューブ
40 熱変色性表示装置
42 第一電極板
44 第二電極板
422 第一行電極リード線
424 第一列電極リード線
442 第二行電極
444 第二列電極
426 第一格子
446 第二格子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封筐体と、隔離層と、第一加熱構造体と、第二加熱構造体と、有色顕色層と、を備えた熱変色性素子であって、
前記密封筐体の中に、密封空間が形成され、
前記隔離層が、前記密封空間を第一空間及び第二空間に分けて、前記第一空間に囲まれた前記密封筐体の少なくとも一部が透明であり、
前記第一加熱構造体が、前記第一空間を加熱することに用いられ、
前記第二加熱構造体が、前記第二空間を加熱することに用いられ、
前記有色顕色層が、前記第一空間又は前記第二空間の中に設置され、前記第一加熱構造体又は前記第二加熱構造体の作用で、気体状態と非気体状態との間の転換を行って、気体状態の前記有色顕色層が前記隔離層を通って前記第一空間と前記第二空間との間で位置変換を行うことを特徴とする熱変色性素子。
【請求項2】
前記隔離層が、複数の微孔を有し、
気体状態の前記有色顕色層が前記隔離層の微孔を通って前記第一空間と前記第二空間との間で位置変換を行うことを特徴とする請求項1に記載の熱変色性素子。
【請求項3】
第一電極板と、該第一電極板と対向して設置された第二電極板と、前記第一電極板と前記第二電極板との間に位置された複数の熱変色性素子と、を備える熱変色性表示装置において、
前記第一電極板が、複数の第一行電極及び複数の第一列電極を含み、該複数の第一行電極及び複数の第一列電極が交差して設置され、複数の第一格子が形成され、
前記第二電極板が、複数の第二行電極及び複数の第二列電極を含み、該複数の第二行電極及び複数の第二列電極が交差して設置され、複数の第二格子が形成され、
前記複数の熱変色性素子が、密封筐体と、隔離層と、第一加熱構造体と、第二加熱構造体と、有色顕色層と、を備え、
前記密封筐体の中に、密封空間が形成され、
前記隔離層が、前記密封空間を第一空間及び第二空間に分けて、前記第一空間に囲まれた前記密封筐体の少なくとも一部が透明であり、
前記第一加熱構造体が、前記第一空間を加熱することに用いられ、
前記第二加熱構造体が、前記第二空間を加熱することに用いられ、
前記有色顕色層が、前記第一空間又は前記第二空間の中に設置され、前記第一加熱構造体又は前記第二加熱構造体の作用で、気体状態と非気体状態との間の転換を行って、そして、気体状態の前記有色顕色層が前記隔離層を通って前記第一空間と前記第二空間との間で位置変換を行い、
各々の前記熱変色性素子の第一加熱構造体が、それぞれ、前記第一電極板の第一行電極及び第一列電極と電気的に接続され、
各々の前記熱変色性素子の第二加熱構造体が、それぞれ、前記第二電極板の第二行電極及び第二列電極と電気的に接続されていることを特徴とする熱変色性表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−138126(P2011−138126A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286050(P2010−286050)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】