説明

熱媒体加熱装置

【課題】電線および端子の簡素化、小型化および軽量化を図ることができる熱媒体加熱装置を提供すること。
【解決手段】流出していく水の温度を測定する出口温度センサと、流入してくる水の温度を測定する入口温度センサとを備えた電気ヒータ21a,21b,21c,21dを複数個備えた熱媒体加熱装置21であって、前記出口温度センサのすべてに、測定された測定値を伝達する電線32a,32b,32c,32dが結線され、前記入口温度センサのうちの一つのみに、測定された測定値を伝達する電線33が結線されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを動力源とする電気自動車(例えば、電気バス)に搭載されて好適な熱媒体加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギーを動力源とする電気自動車では、エンジンの冷却水を利用して車内の暖房を行うことができないため、例えば、特許文献1に開示されたPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータを複数個用いた熱媒体加熱装置を用いて車内の暖房を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−56044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、PTCヒータを複数個用いた熱媒体加熱装置では、各PTCヒータの出口に、PTCヒータから流出していく(温)水の温度を測定する出口温度センサがそれぞれ設けられているとともに、各PTCヒータの入口に、PTCヒータに流入していく(温)水の温度を測定する入口温度センサがそれぞれ設けられている。そのため、これら出口温度センサおよび入口センサにより測定された測定値をヒータコントローラに伝達する電線の数、およびこれら電線が結線(接続)される端子(接続箇所)の数が非常に多くなり、熱媒体加熱装置が大型化してしまうといった問題点があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、電線および端子の簡素化、小型化および軽量化を図ることができる熱媒体加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係る熱媒体加熱装置は、流出していく水の温度を測定する出口温度センサと、流入してくる水の温度を測定する入口温度センサとを備えた電気ヒータを複数個備えた熱媒体加熱装置であって、前記出口温度センサのすべてに、測定された測定値を伝達する電線が結線され、前記入口温度センサのうちの一つのみに、測定された測定値を伝達する電線が結線されている。
【0007】
本発明に係る熱媒体加熱装置によれば、複数個の入口温度センサのうち、一つの入口温度センサだけに測定された測定値を伝達する電線が結線され、その他の入口温度センサには、測定された測定値を伝達する電線が結線されないことになる。
これにより、電線および端子の簡素化を図ることができ、小型化および軽量化を図ることができる。
【0008】
本発明に係る電気自動車用暖房装置は、上記熱媒体加熱装置を具備している。
【0009】
本発明に係る電気自動車用暖房装置によれば、電線および端子の簡素化、小型化、および軽量化が図られた熱媒体加熱装置を具備していることになる。
これにより、当該電気自動車用暖房装置の小型化および軽量化を図ることができる。
【0010】
本発明に係る電気自動車は、上記電気自動車用暖房装置を具備している。
【0011】
本発明に係る電気自動車によれば、小型化および軽量化が図られた電気自動車用暖房装置を具備していることになる。
これにより、当該電気自動車の小型化および軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る熱媒体加熱装置によれば、電線および端子の簡素化、小型化および軽量化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気自動車用暖房装置を搭載した電気自動車の概略全体斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る電気自動車用暖房装置の概略構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る電気自動車用暖房装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る電気自動車用暖房装置の一実施形態を、図1から図3を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る電気自動車用暖房装置を搭載した電気自動車の概略全体斜視図、図2は本実施形態に係る電気自動車用暖房装置の概略構成図、図3は本実施形態に係る電気自動車用暖房装置の回路図である。
【0015】
図1に示すように、電気自動車(以下、「電気バス」という。)1に搭載され得る車両用空気調和装置2は、電気自動車用冷房装置(以下、「冷房装置」という。)3と、電気自動車用暖房装置(以下、「暖房装置」という。)4と、を備えている。
冷房装置3は、コンプレッサ(圧縮機)11と、室内機ユニット12と、室外機ユニット13と、を備えている。
なお、図1中の符号1aはフロントガラス、符号14は運転席の右横に配置されたコントロールパネル、符号21は電気バス1の中央部床下に配置され、暖房装置4を構成する熱媒体加熱装置、符号15,16はそれぞれ最後部座席の背面に形成された空間内に配置された冷房用(クーラ用)のインバータ、リレーボックス(コントローラ)である。
【0016】
コンプレッサ11は、低温・低圧のガス状冷媒を圧縮して高温・高圧のガス状冷媒とするものであり、図示しない電動モータにより駆動されるようになっている。
【0017】
室内機ユニット12は、電気バス1の前方左側に位置する屋根Rの上に設置されたエバポレータ(室内熱交換器:第1の熱交換器)17と、図示しないエバポレータファン(室内ファン)と、図示しない膨張弁と、電気バス1の前方右側に位置する屋根Rの上に設置されたエバポレータ(室内熱交換器:第1の熱交換器)18と、図示しないエバポレータファン(室内ファン)と、図示しない膨張弁とを備えている。
【0018】
エバポレータ17,18は、冷房運転時、膨張弁を通過した低温低圧の液状冷媒を蒸発気化させて、車内の空気(内気)から熱を奪う機能を備えた平箱状(直方体状)の構造物である。
エバポレータファンは、エバポレータ17,18への吸い込み風量を増加させるためのものであり、このエバポレータファンの作動により、エバポレータ17,18内におけるガス状冷媒の蒸発気化がより促進されることとなる。
膨張弁は、その内部を通過する冷媒を減圧・膨張させて低温・低圧の冷媒にするバルブである。
【0019】
室外機ユニット13は、電気バス1のリアオーバーハングに設けられた図示しない搭載スペース(収容スペース)内に収められており、図示しないコンデンサ(室外熱交換器:第2の熱交換器)と、図示しないコンデンサファンとを備えている。
コンデンサは、冷房運転時、コンプレッサ11から吐出された高温高圧のガス状冷媒を凝縮液化させて車外の空気(外気)に放熱する機能を備えた平箱状(直方体状)の構造物である。
コンデンサファンは、コンデンサへの吸い込み風量を増加させるためのものであり、このコンデンサファンの作動により、コンデンサ内におけるガス状冷媒の液化がより促進されることとなる。
【0020】
コンプレッサ11とコンデンサとは、(第1の)冷媒配管(図示せず)を介して接続され、コンデンサとエバポレータ17,18とは、その途中に図示しないレシーバ、図示しないドライヤ、前述の膨張弁がコンデンサの側から順に接続された(第2の)冷媒配管(図示せず)を介して接続されており、エバポレータ17,18とコンプレッサ11とは、(第3の)冷媒配管(図示せず)を介して接続されている。
【0021】
一方、図2に示すように、暖房装置4は、複数個(本実施形態では四個)のPTCヒータ(電気ヒータ)21a,21b,21c,21dを備えた熱媒体加熱装置21と、プレヒータ22と、フロントヒータ23と、(第1の)リアヒータ(中ヒータ)24と、第2のリアヒータ(後ヒータ)25と、ウォータバルブ26と、ウォータポンプ27と、これら熱媒体加熱装置21、プレヒータ22、フロントヒータ23、リアヒータ24、リアヒータ25、ウォータバルブ26、ウォータポンプ27を順に接続して(温)水の循環経路(流路)を形成する(温)水配管28と、を備えている。
【0022】
また、PTCヒータ21a,21b,21c,21dの出口にはそれぞれ、PTCヒータ21a,21b,21c,21dから流出していく(温)水の温度を測定する出口温度センサ29a,29b,29c,29dが設けられており、PTCヒータ21a,21b,21c,21dの入口にはそれぞれ、PTCヒータ21a,21b,21c,21dに流入していく(温)水の温度を測定する入口温度センサ30a,30b,30c,30dが設けられている。
【0023】
なお、PTCヒータ21aと、出口温度センサ29aと、入口温度センサ30aとは一体物として製作され、PTCヒータ21bと、出口温度センサ29bと、入口温度センサ30bとは一体物として製作されており、PTCヒータ21cと、出口温度センサ29cと、入口温度センサ30cとは一体物として製作され、PTCヒータ21dと、出口温度センサ29dと、入口温度センサ30dとは一体物として製作されている。
また、図2中の実線矢印は、(温)水の流れる方向を示している。
【0024】
そして、図3に示すように、PTCヒータ21a,21b,21c,21dの「8」番の端子と、ヒータコントローラ31の端子(図3の下段、右から3番目の端子)とは、出口温度センサ29a,29b,29c,29dにより測定された測定値をヒータコントローラ31に伝達する電線32a,32b,32c,32dを介してそれぞれ結線(接続)されている。
また、PTCヒータ21aの「7」番の端子と、ヒータコントローラ31の端子(図3の下段、右から2番目の端子)とは、入口温度センサ30aにより測定された測定値をヒータコントローラ31に伝達する電線33を介して結線(接続)されている。すなわち、PTCヒータ21b,21c,21dの「7」番の端子と、ヒータコントローラ31の端子(図3の下段、右から2番目の端子)とは、結線されていないことになる。
【0025】
なお、PTCヒータ21a,21b,21c,21dの「1」番の端子にはそれぞれ、各PTCヒータ21a,21b,21c,21dに電源を供給する電線34が結線され、PTCヒータ21a,21b,21c,21dの「6」番の端子には、PTCヒータ21aの出口温度センサ29aおよび入口温度センサ30に電源を供給し、PTCヒータ21b,21c,21dの出口温度センサ29b,29c,29dに電源を供給する電線35が結線されている。
また、PTCヒータ21a,21b,21c,21dの「2」番の端子、「3」番の端子、「4」番の端子、「5」番の端子にはそれぞれ、各PTCヒータ21a,21b,21c,21dの能力段数(本実施形態では4段)を切り換える(制御する)電線36,37,38,39が結線されている。
【0026】
本実施形態に係る熱媒体加熱装置21によれば、複数個の入口温度センサ30a,30b,30c,30dのうち、一つの入口温度センサ30aだけに測定された測定値を伝達する電線33が結線され、その他の入口温度センサ,30b,30c,30dには、測定された測定値を伝達する電線が結線されないことになる。
これにより、電線および端子の簡素化を図ることができ、小型化および軽量化を図ることができる。
【0027】
本実施形態に係る熱媒体加熱装置21を具備した暖房装置4によれば、電線および端子の簡素化、小型化、および軽量化が図られた熱媒体加熱装置21を具備していることになるので、当該暖房装置4の小型化および軽量化を図ることができる。
【0028】
本実施形態に係る暖房装置4を具備した電気バス1によれば、小型化および軽量化が図られた暖房装置4を具備していることになるので、当該電気バス1の小型化および軽量化を図ることができる。
【0029】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜必要に応じて変形・変更実施可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 電気バス(電気自動車)
4 暖房装置(電気自動車用暖房装置)
21 熱媒体加熱装置
21a PTCヒータ(電気ヒータ)
21b PTCヒータ(電気ヒータ)
21c PTCヒータ(電気ヒータ)
21d PTCヒータ(電気ヒータ)
29a 出口温度センサ
29b 出口温度センサ
29c 出口温度センサ
29d 出口温度センサ
30a 入口温度センサ
30b 入口温度センサ
30c 入口温度センサ
30d 入口温度センサ
32a 電線
32b 電線
32c 電線
32d 電線
33 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流出していく水の温度を測定する出口温度センサと、流入してくる水の温度を測定する入口温度センサとを備えた電気ヒータを複数個備えた熱媒体加熱装置であって、
前記出口温度センサのすべてに、測定された測定値を伝達する電線が結線され、前記入口温度センサのうちの一つのみに、測定された測定値を伝達する電線が結線されていることを特徴とする熱媒体加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱媒体加熱装置を備えていることを特徴とする電気自動車用暖房装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電気自動車用暖房装置を備えていることを特徴とする電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−106665(P2012−106665A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257882(P2010−257882)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】