熱安定性ポリメラーゼとともに二本鎖核酸複合体を用いてデオキシリボヌクレオチド鎖を合成するための組成物および方法
本発明は、分子生物学分野に、そしてより具体的には、増幅プロセスにおいて使用するための核酸構築物に関する。より正確には、本発明は、二本鎖核酸の伸長を防止する能力を有する分子で修飾されている二本鎖オリゴヌクレオチドによって、核酸増幅の特異性を増進させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、Stephen Piconeらによる、2009年11月6日に出願された米国仮出願第61/258,684号、表題“Composition and Method for Synthesizing a Deoxyribonucleotide Chain Using a Double Stranded Nucleic Acid Complex with a Thermostable Polymerase”の優先権を請求する。
【0002】
上記出願が教示する事項の全体は、本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
DNAポリメラーゼは、デオキシリボヌクレオチドの核酸鎖への重合を触媒する酵素である。ポリメラーゼは、PCR増幅、すなわちDNA鎖をコピーするかまたは増幅するプロセスを含む、多様なDNA技術において用いられる。特定のPCR法に伴う大きな問題は、非特異的増幅産物の生成(例えば望ましくないDNA鎖の生成)である。多くの場合、これは、実際の熱サイクリング法自体の前の、副反応の非特異的オリゴヌクレオチド・プライミングおよび非ターゲット・オリゴヌクレオチドの産生、例えば、バックグラウンドDNAのミスプライミングおよび/またはプライマー・オリゴマー化およびそれに続くプライマー伸張事象のためである。これはしばしば、熱安定性DNAポリメラーゼが周囲温度で中程度に活性であるために起こる。
【0004】
この問題を最小化するため、「ホットスタート」PCRとして知られる方法が実行可能である。ホットスタートPCRにおいて、増幅反応に必須の1つの構成要素が、反応混合物から分離されているか、または反応混合物の温度が最初に上昇するまで、不活性状態で維持される。ポリメラーゼはこれらの条件下で機能不能であるため、プライマーが非特異的に結合可能である期間の間、プライマー伸張はより少ない。この効果を達成するため、いくつかの方法が適用されてきている:DNAポリメラーゼの物理的分離(例えば固形ワックスのバリアを用いて、DNAポリメラーゼを反応混合物から分離する)、DNAポリメラーゼの化学修飾(例えばDNAポリメラーゼが可逆的に不活性化される)、以下:ポリメラーゼDNA抗体(例えば抗体は周囲温度で結合し、そして増幅中のより高い温度で解離する)、核酸添加物、アプタマー(例えばループ、シュードノット、および抗体のように働く複雑な三次構造を形成するヌクレオチドの一本鎖型)、ブロック化プライマー等、によるDNAポリメラーゼ阻害、が適用されてきている。これらの方法のいくつかは、不都合であるか、または働かず、それと同時に、非特異的増幅を最小化することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、増幅プロセス自体の前だけでなく、熱サイクリング・プロセス中もまた、非特異的プライミングおよびプライマー伸張の阻害を可能にする、増幅反応のためのユニークでそして代替となる組成物および方法が存在する必要がある。より具体的には、ホットスタートPCRのための代替となるそして改善された組成物および方法が存在する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、核酸増幅において使用するためのブロッキング二本鎖核酸複合体(DSC)に関する。1つの態様において、複合体には、単離二本鎖核酸分子であって、約9〜約40核酸塩基の間を含む第一の配列を有する第一の核酸鎖、および第一の配列に相補的な約9〜約40核酸塩基の間を含む第二の配列を有する核酸第二鎖を有する、ここで、第一の核酸鎖および第二の核酸鎖が各々3’端および5’端を有し、そして二本鎖核酸分子が約50%〜約70%の間の範囲のシトシン(C)およびグアニン(G)のパーセンテージを有する、前記二本鎖核酸分子が含まれる。二本鎖核酸複合体にはまた、第一の核酸鎖、第二の核酸鎖、または両方の3’端または5’端に共有結合したブロッキング分子もまた含まれる。1つの側面において、二本鎖核酸分子(例えばDNA、またはRNA)は、約25℃〜約90℃の間の範囲の融点を有する。1つの態様において、本発明のDSCには、ウラシル塩基の導入がさらに含まれる。1またはそれより多いウラシル塩基をDSCに付加すると、古細菌の種由来のDNAポリメラーゼを用いた際、室温でのポリメラーゼ活性がさらに減少する。特に、DSCの第一の配列または第二の配列は、1またはそれより多いウラシル塩基をさらに含む。
【0007】
ブロッキング分子の例には、デオキシチミジン、ジデオキシヌクレオチド、3’リン酸化、ヘキサンジオール、スペーサー分子、1’2’−ジデオキシリボース、2’−O−メチルRNA、および/またはロックド核酸(LNA)が含まれる。1つの態様において、ブロッキング分子は以下の構造を有する:
【0008】
【化1】
【0009】
本発明はまた、核酸増幅において使用するためのブロッキング二本鎖核酸複合体であって;複合体が、単離二本鎖核酸分子であって、約9〜約40核酸塩基の間を含む第一の配列を有する第一の核酸鎖、および第一の配列に相補的な約9〜約40核酸塩基の間を含む第二の配列を有する核酸第二鎖を有する、ここで、第一の核酸鎖および第二の核酸鎖が各々3’端および5’端を有する、前記単離二本鎖核酸分子を含み、そして二本鎖核酸分子が約25℃〜約90℃の間の範囲の融点を有する、前記複合体にも関する。この態様には、第一の核酸鎖、第二の核酸鎖、または両方の3’端または5’端に共有結合したブロッキング分子が含まれる。1つの側面において、第一の配列または第二の配列は、1またはそれより多いウラシル塩基をさらに含む。
【0010】
さらに別の態様において、本発明のブロッキング二本鎖核酸複合体は、以下の配列:配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、またはその組み合わせ;配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、またはその組み合わせの相補体;あるいは配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、またはその組み合わせにハイブリダイズする配列の1つと約70%より大きいかまたは約70%に等しい同一性の第一の核酸配列を有する第一の核酸鎖を有する単離二本鎖核酸分子を含む複合体を有する。該複合体にはさらに、第一の核酸配列に相補的な約9〜約40核酸塩基の間を含む第二の配列を有する第二の核酸鎖が含まれ、ここで、第一の核酸鎖および第二の核酸鎖は各々3’端および5’端を有し、二本鎖核酸分子は約25℃〜約90℃の間の範囲の融点を有する。該複合体はまた、第一の核酸鎖、第二の核酸鎖、または両方の3’端または5’端に共有結合したブロッキング分子も有する。1つの側面において、第一および第二の核酸鎖の3’端はブロッキング分子を含み、そしてブロッキング二本鎖核酸複合体が核酸ポリメラーゼと相互作用した際、それによって非特異的増幅産物が減少する。好ましい態様において、複合体は約48.9℃の融点を有する。
【0011】
本発明にはまた、核酸増幅のための組成物も含まれる。特定の態様において、組成物には、緩衝剤、本明細書記載のブロッキング二本鎖核酸複合体、および熱安定性ポリメラーゼが含まれる。ポリメラーゼは、Taq DNAポリメラーゼ;BST DNAポリメラーゼ;PFU DNAポリメラーゼ;Klenow DNAポリメラーゼ;T7 DNAポリメラーゼ;T4 DNAポリメラーゼ;Phi29 DNAポリメラーゼ;またはRB69 DNAポリメラーゼなどのDNAポリメラーゼであってもよい。濃度範囲は、例えば、ポリメラーゼ5,000U/mLごとに約2μM核酸複合体から、ポリメラーゼ5,000U/mLごとに2mM核酸複合体の間であってもよい。緩衝剤は、TRIS緩衝剤、MOPS、またはHEPES緩衝剤であってもよい。ターゲット核酸分子を増幅する方法が、本発明にさらに含まれる。該方法には、ターゲット核酸分子をDNAポリメラーゼおよび本明細書記載の二本鎖核酸複合体と接触させる、ここで、二本鎖核酸複合体は、約25℃〜約90℃の範囲の温度でDNAポリメラーゼに結合する工程が含まれる。1またはそれより多い非特異的増幅産物または二次産物は、二本鎖核酸複合体と接触させなかったものに比較した際、減少する。二本鎖核酸複合体と接触させなかったターゲット核酸分子に関するポリメラーゼ活性に比較した際、室温(例えば約20℃〜25℃の間)でのポリメラーゼ活性は、約50%〜約90%の間の範囲で減少する(例えば約50%、60%、70%、80%、または90%減少)。さらに、本発明の方法は、1つの側面において、より高い収量を提供する。特定の態様において、該二本鎖核酸複合体と接触させていないターゲット核酸分子に関して得られる量と比較した際、増幅されるターゲット核酸分子の量は、約2X〜約20Xの間の範囲で増加する(例えば2X、3X、4X、5X、6X、7X、8X、9X、10X、15Xまたは20Xの増加)。方法が、古細菌の種由来のDNAポリメラーゼおよび1またはそれより多いウラシル塩基を有するDSCを利用する、さらに別の態様において、本明細書に記載するように、室温でのポリメラーゼ活性もまた減少する。
【0012】
本発明によって具現化されるさらなる方法には、緩衝剤、ターゲット核酸分子、1またはそれより多いプライマー、DNAポリメラーゼ、アデニン、グアニン、シトシンおよびチミンの供給、ならびに本明細書記載の二本鎖核酸複合体を混合することによって、ターゲット核酸分子を増幅する工程が含まれる。工程にはさらに、1またはそれより多いサイクルで、温度を増加させることによって、ターゲット核酸分子の増幅を可能にする工程も含まれ、ここで、温度は、約25℃〜約90℃の範囲である。該方法は、1またはそれより多い非特異的増幅産物または二次産物の産生が、該二本鎖核酸複合体と接触させなかったものに比較した際、減少することを可能にする。1つの態様において、本明細書にさらに記載するように、室温でのポリメラーゼ活性が減少し、そして/または収量増加が得られる。
【0013】
本発明には、さらに、核酸増幅のためのキットが含まれる。こうしたキットまたは系には、本明細書記載のブロッキング二本鎖核酸複合体、およびポリメラーゼが含まれる。ポリメラーゼは、例えば、Taq DNAポリメラーゼ;BST DNAポリメラーゼ;PFU DNAポリメラーゼ;Klenow DNAポリメラーゼ;T7 DNAポリメラーゼ;T4 DNAポリメラーゼ;Phi29 DNAポリメラーゼ;またはRB69 DNAポリメラーゼであってもよいDNAポリメラーゼである。
【0014】
好適には、請求する本発明は、ホットスタートPCR増幅プロセスを改善するための組成物および方法を提供する。具体的には、本発明は、増幅プロセス前およびプロセス中の非特異的プライミングおよびプライマー伸張を阻害する組成物を提供する。さらに、本発明は、驚くべきことに、有意な量の非特異的増幅産物を伴わずにPCR反応が起こることを可能にし、そしてPCRを実行するための改善された組成物を提供する。
【0015】
図面の簡単な説明
特許または出願ファイルは、着色された図を少なくとも1つ含有する。着色図を含むこの特許または特許出願刊行物のコピーは、要望があり、そして必要な料金の支払いがあれば、特許局によって提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、pUC19プラスミドの1.1kb領域の増幅を示す。レーン1および2には、それぞれPCR緩衝液IおよびII中での3’端キャップ化プライマーを用いた反応が含まれ、オリゴヌクレオチドの3’端で取り込まれた阻害性分子が、DNAポリメラーゼによる伸長を効果的に防止することを示す。レーン3および4は、増幅産物を生じる、非修飾プライマーを用いた反応を示す。レーンMは、DNA標準マーカーを示す。
【図2】図2は、反応プライマーとして同じ配列を有する、ブロッキング剤を含む二本鎖核酸分子の存在下および非存在下での、pUC19プラスミドの1.1kb領域のPCR産物増幅を示す。レーン1および2には、PCR緩衝液I中で行った反応が含まれ、レーン3および4は、PCR緩衝液II中で行われた。レーンMは、DNA標準マーカーを示す。
【図3】図3は、DSC分子の存在下でのPCR増幅を例示する。すべての反応は、競合外来(foreign)DNAとして、1ngの大腸菌(E. coli)ゲノムDNAを含有する。奇数レーンは、ラムダ・テンプレートDNAを含み(レーン11を除く)、一方、偶数レーンはテンプレートDNAを含有しない。反応11は、緩衝液I、DNTPを有するが、DSC分子、テンプレート、および酵素を含まない陰性対照である。レーンMは、DNA標準マーカーを示す。
【図4】図4は、ラムダDNAからの1.9kb領域の増幅における比較を示す。レーン1〜4は、DSC分子の存在下での、Taq(Enzymatics, Inc.(マサチューセッツ州ビバリー))およびTaq−B DNAポリメラーゼ(貯蔵緩衝液中の−および+安定化剤)を含有する。レーン5〜7は、商業的に入手可能なホットスタートDNAポリメラーゼを含有する。すべてのPCR反応をラムダDNAおよび1ngの混入大腸菌ゲノムDNAの存在下で行った。レーンMは、DNA標準マーカーを示す。
【図5A】図5AおよびBは、DSC分子の存在下でのラムダDNAの1.9kb領域の増幅を強調する。Aにおいて、順方向5’CTGGCTGACATTTTCG−3’(配列番号17)および逆方向5’TATCGACATTTCTGCACC−3’(配列番号18)プライマーを用いて;Bにおいて、順方向5’GAAGTCAACAAAAAGGAGCTGGCTGACATTTTCG−3’(配列番号19)および逆方向5’CAGCAGATACGGGATATCGACATTTCTGCACC−3’(配列番号20)プライマーを用いて、PCR増幅を行った。0.523pgのラムダDNAおよび1ngの大腸菌ゲノムDNAを用いてPCR増幅を行った。2つ組で反応を行った(図5A中、レーン1および2、3および4;図5B中、レーン1および3、2および4)。
【図5B】図5AおよびBは、DSC分子の存在下でのラムダDNAの1.9kb領域の増幅を強調する。Aにおいて、順方向5’CTGGCTGACATTTTCG−3’(配列番号17)および逆方向5’TATCGACATTTCTGCACC−3’(配列番号18)プライマーを用いて;Bにおいて、順方向5’GAAGTCAACAAAAAGGAGCTGGCTGACATTTTCG−3’(配列番号19)および逆方向5’CAGCAGATACGGGATATCGACATTTCTGCACC−3’(配列番号20)プライマーを用いて、PCR増幅を行った。0.523pgのラムダDNAおよび1ngの大腸菌ゲノムDNAを用いてPCR増幅を行った。2つ組で反応を行った(図5A中、レーン1および2、3および4;図5B中、レーン1および3、2および4)。
【図6】図6は、多様な融点(レーン1〜10)および阻害性ブロッキング分子(レーン15〜17)を持つDSC分子の存在下での、ヒト胎盤DNAのβ−アクチン遺伝子の653bp断片の増幅を示す。
【図7A】図7AおよびBは、オリゴヌクレオチド混合物Bを用いたDNA Bからの100bp産物の増幅を示す。レーン1〜3は、異なるDSC分子の存在下でのPCR増幅を示す。レーン4は、本発明のDSC分子の非存在下での増幅結果を示す。レーン5における増幅は、商業的に入手可能な化学修飾ホットスタートTaqポリメラーゼを用いて行われる。レーンMはDNA標準マーカーを示す。すべてのレーンは1000コピーのDNA Bを含有する。各反応におけるDSC分子の最終濃度は0.4μMである。図7A中のPCR増幅は、ベンチトップでのプレインキュベーションを伴わず、セットアップ直後に行われた。
【図7B】図7AおよびBは、オリゴヌクレオチド混合物Bを用いたDNA Bからの100bp産物の増幅を示す。レーン1〜3は、異なるDSC分子の存在下でのPCR増幅を示す。レーン4は、本発明のDSC分子の非存在下での増幅結果を示す。レーン5における増幅は、商業的に入手可能な化学修飾ホットスタートTaqポリメラーゼを用いて行われる。レーンMはDNA標準マーカーを示す。すべてのレーンは1000コピーのDNA Bを含有する。各反応におけるDSC分子の最終濃度は0.4μMである。図7BにおけるPCR増幅は、23℃の周囲温度で24時間インキュベーションした後、行われた。
【図8】図8は、オリゴヌクレオチド混合物Bを用いたDNA Bからの100bp産物の増幅を示す。レーン1〜4は、異なるDSC分子の存在下でのPCR増幅を示す。レーン5は、本発明のDSC分子の非存在下での増幅結果を示す。レーン6における増幅は、商業的に入手可能な化学修飾ホットスタートTaqポリメラーゼを用いて行われる。レーンMはDNA標準マーカーを示す。すべてのレーンは5コピーのDNA Bを含有する。レーン1および3におけるDSC分子の最終濃度は0.4μMであり、一方、レーン2および4におけるDSC分子の最終濃度は0.4μMである。PCR増幅は、ベンチトップでのプレインキュベーションを伴わず、セットアップ直後に行われた。
【図9】図9は、オリゴヌクレオチド混合物Bを用いたDNA Bからの100bp産物の増幅を例示する。レーン1〜5は、異なるDSC分子の存在下でのPCR増幅を示す。レーン6は、本発明のDSC分子の非存在下での増幅結果を示す。レーン7における増幅は、商業的に入手可能な化学修飾ホットスタートTaqポリメラーゼを用いて行われる。レーンMはDNA標準マーカーを示す。すべてのレーンは5コピーのDNA Bを含有する。レーン1〜5におけるDSC分子の最終濃度は4μMである。PCR増幅は、23℃の周囲温度で24時間インキュベーションした後、行われた。
【図10A】図10A〜Cは、それぞれ、オリゴヌクレオチド混合物A、B、およびCを用いたDNA A、B、およびCからの100〜120bp産物の増幅を示す。レーン1〜5は、異なるDSC分子の存在下でのPCR増幅を示す。レーン6は、本発明のDSC分子の非存在下での増幅結果を示す。レーン7における増幅は、商業的に入手可能な化学修飾ホットスタートTaqポリメラーゼを用いて行われる。レーンMはDNA標準マーカーを示す。すべてのPCR増幅反応は5コピーのDNA Bを含有する。各反応におけるDSC分子の最終濃度は4μMである。PCR増幅は、ベンチトップでのプレインキュベーションを伴わず、セットアップ直後に行われた。
【図10B】図10A〜Cは、それぞれ、オリゴヌクレオチド混合物A、B、およびCを用いたDNA A、B、およびCからの100〜120bp産物の増幅を示す。レーン1〜5は、異なるDSC分子の存在下でのPCR増幅を示す。レーン6は、本発明のDSC分子の非存在下での増幅結果を示す。レーン7における増幅は、商業的に入手可能な化学修飾ホットスタートTaqポリメラーゼを用いて行われる。レーンMはDNA標準マーカーを示す。すべてのPCR増幅反応は5コピーのDNA Bを含有する。各反応におけるDSC分子の最終濃度は4μMである。PCR増幅は、ベンチトップでのプレインキュベーションを伴わず、セットアップ直後に行われた。
【図10C】図10A〜Cは、それぞれ、オリゴヌクレオチド混合物A、B、およびCを用いたDNA A、B、およびCからの100〜120bp産物の増幅を示す。レーン1〜5は、異なるDSC分子の存在下でのPCR増幅を示す。レーン6は、本発明のDSC分子の非存在下での増幅結果を示す。レーン7における増幅は、商業的に入手可能な化学修飾ホットスタートTaqポリメラーゼを用いて行われる。レーンMはDNA標準マーカーを示す。すべてのPCR増幅反応は5コピーのDNA Bを含有する。各反応におけるDSC分子の最終濃度は4μMである。PCR増幅は、ベンチトップでのプレインキュベーションを伴わず、セットアップ直後に行われた。
【図11A】図11A〜Cは、それぞれ、オリゴヌクレオチド混合物A、B、およびCを用いたDNA A、B、およびCからの100bp産物の増幅を示す。レーン1〜5は、異なるDSC分子の存在下でのPCR増幅を示す。レーン6は、本発明のDSC分子の非存在下での増幅結果を示す。レーン7における増幅は、商業的に入手可能な化学修飾ホットスタートTaqポリメラーゼを用いて行われる。レーンMはDNA標準マーカーを示す。すべてのレーンは5コピーのDNA Bを含有する。各反応におけるDSC分子の最終濃度は4μMである。図7BにおけるPCR増幅は、23℃の周囲温度で24時間インキュベーションした後、行われた。
【図11B】図11A〜Cは、それぞれ、オリゴヌクレオチド混合物A、B、およびCを用いたDNA A、B、およびCからの100bp産物の増幅を示す。レーン1〜5は、異なるDSC分子の存在下でのPCR増幅を示す。レーン6は、本発明のDSC分子の非存在下での増幅結果を示す。レーン7における増幅は、商業的に入手可能な化学修飾ホットスタートTaqポリメラーゼを用いて行われる。レーンMはDNA標準マーカーを示す。すべてのレーンは5コピーのDNA Bを含有する。各反応におけるDSC分子の最終濃度は4μMである。図7BにおけるPCR増幅は、23℃の周囲温度で24時間インキュベーションした後、行われた。
【図11C】図11A〜Cは、それぞれ、オリゴヌクレオチド混合物A、B、およびCを用いたDNA A、B、およびCからの100bp産物の増幅を示す。レーン1〜5は、異なるDSC分子の存在下でのPCR増幅を示す。レーン6は、本発明のDSC分子の非存在下での増幅結果を示す。レーン7における増幅は、商業的に入手可能な化学修飾ホットスタートTaqポリメラーゼを用いて行われる。レーンMはDNA標準マーカーを示す。すべてのレーンは5コピーのDNA Bを含有する。各反応におけるDSC分子の最終濃度は4μMである。図7BにおけるPCR増幅は、23℃の周囲温度で24時間インキュベーションした後、行われた。
【図12】図12は、CY5蛍光色素による検出を用いた、DNA Cからの100bp産物の形成のリアルタイムPCR分析を示す。1280〜5コピーのDNA Cを含有する反応を、4つ組で行った。各コピーレベルに関する平均Ct値±標準偏差を示す。0.6を越える標準偏差を太字で示す。等式線に関するR二乗値とともに、全体のPCR効率もまた示す。結果を斜線の印で示す。
【図13】図13は、HBB2オリゴ混合物を用いた、ヒト胎盤DNAからの100bp産物の形成のリアルタイムPCR分析を示す。1280〜5コピーのDNA Cを含有する反応を、4つ組で行った。各コピーレベルに関する平均Ct値±標準偏差を示す。0.6を越える標準偏差を太字で示す。等式線に関するR二乗値とともに、全体のPCR効率もまた示す。結果を斜線の印で示す。
【図14A】図14AおよびBは、HEX蛍光色素による検出を用いた、DNA Bからの100bp産物の形成のリアルタイムPCR分析を例示する。1000、100、および10コピーのDNA Bを含有する反応を、4つ組で行った。各コピーレベルに関する平均Ct値±標準偏差を示す。図14Aは、2.5UのTaq−Bおよび0.4μM最終濃度のDSC1を含む25μL反応における産物の増幅を示す。
【図14B】図14AおよびBは、HEX蛍光色素による検出を用いた、DNA Bからの100bp産物の形成のリアルタイムPCR分析を例示する。1000、100、および10コピーのDNA Bを含有する反応を、4つ組で行った。各コピーレベルに関する平均Ct値±標準偏差を示す。図14Bは、2.5UのTaq−Bおよび0.2μM最終濃度のDSC1を含む50μL反応における産物の増幅曲線を示す。
【図15A】図15A〜Cは、HEX蛍光色素による検出を用いた、DNA Bからの100bp産物の形成のリアルタイムPCR分析を例示する。1000、100、および10コピーのDNA Bを含有する反応を、4つ組で行った。反応中のDSC5分子の最終濃度を、1x〜20xで示し、ここで1xは0.2μMであり、そして20xは4μMである。1xのDSC1は、反応中の0.2μM最終濃度を示した。DSC分子を含まないTaq−BおよびFastStartもまた示した。図15Aは、各カテゴリーにおける各コピーレベルに関する平均Ct値を示す。全PCR効率を示す。
【図15B】図15A〜Cは、HEX蛍光色素による検出を用いた、DNA Bからの100bp産物の形成のリアルタイムPCR分析を例示する。1000、100、および10コピーのDNA Bを含有する反応を、4つ組で行った。反応中のDSC5分子の最終濃度を、1x〜20xで示し、ここで1xは0.2μMであり、そして20xは4μMである。1xのDSC1は、反応中の0.2μM最終濃度を示した。DSC分子を含まないTaq−BおよびFastStartもまた示した。図15Bは、Taq−BおよびFastStartのみとともに、各Taq−B DSC組み合わせに関する増幅曲線を例示する。
【図15C】図15A〜Cは、HEX蛍光色素による検出を用いた、DNA Bからの100bp産物の形成のリアルタイムPCR分析を例示する。1000、100、および10コピーのDNA Bを含有する反応を、4つ組で行った。反応中のDSC5分子の最終濃度を、1x〜20xで示し、ここで1xは0.2μMであり、そして20xは4μMである。1xのDSC1は、反応中の0.2μM最終濃度を示した。DSC分子を含まないTaq−BおよびFastStartもまた示した。図15Cは、各カテゴリーにおける各コピーレベルに関する最終振幅を示す。結果を斜線の印で示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい態様の説明は以下の通りである。
本発明は、増幅反応において使用するための核酸複合体、該核酸複合体を用いる方法、ポリメラーゼおよび核酸複合体を含有する緩衝液、ならびに核酸複合体およびポリメラーゼを含有するキットに関する。本明細書に記載するように、本発明には、増幅反応を改善する核酸複合体が含まれる。核酸複合体は、ブロッキング分子を含む二本鎖オリゴヌクレオチドである。本発明の核酸複合体はまた、二本鎖複合体(DSC)としても知られる。
【0018】
特に、本発明は、各鎖の末端でブロッキング分子に共有結合された短い二本鎖オリゴヌクレオチドで作製される核酸複合体を用いる。他の態様において、ブロッキング分子は、核酸複合体の任意の部分(例えば中央部分)に分散されるかまたは付着されていてもよい。核酸複合体は、ポリメラーゼに結合し、そして増幅反応の性能を増進させる。核酸リガンドは、増幅反応の性能を改善する一方、それ自体は、反応中、ターゲット配列または別の非特異的配列の増幅のためのプライマーとしては作用不能であるように注意深く設計される。
【0019】
以下のいくつかの組み合わせ:DSCおよびその誘導体、多数のDNAポリメラーゼ、多数のブロッキング分子、および多数の濃度の核酸複合体を用いて、実施例セクションに記載する、やはり詳述する実験を行った。本発明の方法および組成物は、他の核酸複合体および他のポリメラーゼと適合させて、核酸増幅反応の性能を改善させることも可能である。
【0020】
本発明にしたがって、核酸複合体は、最高約90℃の融点を有してもよい。核酸複合体に関する融点の範囲は、約25℃より高く、例えば約45℃〜約75℃、または例えば約45℃〜約55℃(例えば約25℃〜約90℃の間の範囲)であってもよい。最も好ましい態様において、核酸複合体は、約48.9℃の融点を有する。この融点範囲は、当業者に知られ、そして本明細書に示すような多様な増幅反応において有用である。
【0021】
本明細書に援用される、Owczarzy, R.ら, Biochemistry, 2004 Mar 30;43(12):3537−54、およびOwczarzy, R.ら, Biochemistry, 2008 May 13;47(19):5336−53に記載されるような計算を用いて、Integrated DNA Technologies, 1710 Commercial Park, Coralville, IA 52241 USAによって提供されるような最近接熱力学的パラメータを用いて、核酸複合体の融点(Tm)を計算する。
【0022】
核酸複合体は、多様な適用における使用のため、ある範囲の濃度を有してもよい。核酸複合体に関する濃度範囲は、ポリメラーゼ5,000U/mLに対して約2μM DSCより大きく、最大では、ポリメラーゼ5,000U/mLごとに2mM DSCであってもよい。より好ましくは、範囲は、ポリメラーゼ5,000U/mLに対して約20μM DSCから、最大では、ポリメラーゼ5,000U/mLごとに200μM DSCである。1つの態様において、ポリメラーゼに対するDSCの最も好ましい濃度は、200μM DSCに対するTaq約5,000U/mLである。
【0023】
2倍連続希釈法を用いて、Taq DNAポリメラーゼの比活性を測定した。減少グリセロール(5%)含有Taq−B DNAポリメラーゼ貯蔵溶液中で、酵素希釈を作製し([Taq−B]f=0.009〜0.0001μg/μL)、そして12.5μgウシ胸腺DNA、25mM TAPS(pH9.3)、50mM KCl、1mM DTT、4mCi/mL 3H−dTTPおよび200μM dNTPを含有する50μL反応に添加した。反応を75℃で10分間インキュベーションし、氷中に突っ込み、そしてSambrookおよびRussell(Molecular Cloning, v3, 2001, pp. A8.25−A8.26)の方法を用いて分析した。
【0024】
本発明は、例えばブロッキング分子を伴う二本鎖DNAオリゴヌクレオチドに由来する、新規単離核酸複合体、表1を提供する。核酸複合体は、バックグラウンドDNAのミスプライミングおよび/またはプライマー・オリゴマー化などの副反応による、非特異的増幅産物の産生または非ターゲット・オリゴヌクレオチドの増幅を阻害する能力を示す。核酸複合体を含有する増幅反応は、ターゲット・オリゴヌクレオチドの産生を増進させることが見出された。さらに、表1の核酸複合体は、互いに30%の配列同一性を有する。
【0025】
表1
【0026】
【表1】
【0027】
1つの態様において、本発明に含まれる好ましい核酸複合体の配列を表1に示す。表中で用いる略語は:「InvT」=反転(inverted)デオキシチミジン(dT);「ホスホ」=リン酸基である。核酸複合体は、多くの配列に類似性を示し、BLAST(Altschul, S.F.ら, J. Mol. Biol., 215:403−410(1990))を用いた類似性検索において同定されるような、1未満のE値を有する。
【0028】
用語「核酸複合体」および「二本鎖複合体」(DSC)は、本明細書において、同じ意味を有し、そして交換可能に用いられる。
本発明はさらに、核酸複合体であって、長さ約16ヌクレオチドの二本鎖オリゴヌクレオチドが、いずれかの端に付着したブロッキング分子を伴い、最適な融点のための配列で作製される一方で、二本鎖核酸のいずれかの端で高いGCヌクレオチド・パーセンテージを有する、前記核酸複合体に関する。本発明は、以下の方式の1またはそれより多くで修飾されている核酸複合体に関する:増幅反応における伸長を防止する方式、非特異的増幅産物の産生を防止する融点を有する方式、いずれかの端で、AT結合より高い融点を有し、そしてその結果、核酸複合体を二本鎖としてよりよく維持可能であるGCを高いパーセンテージで有する方式。本発明はさらに、ブロッキング分子を伴う二本鎖核酸、およびポリメラーゼを含有する貯蔵緩衝液に関し;そしてまた、核酸複合体を含む反応緩衝液に関する。
【0029】
二本鎖核酸複合体の増進された安定性によって、他のホットスタート法が使用不能(prohibitive)であろう条件下での使用が可能になるが、これは、該二本鎖核酸複合体が、上昇した温度で不可逆的に変性せず、それによって該核酸複合体を使用して、非特異的増幅産物を減少させることが可能な機会が増加するためである。例えば、多数の特異的プライマーを用いたマルチプレックスPCRにおける増幅では、非特異的増幅産物に有利な状況が反応収量に負の影響を有するが、化学修飾タイプおよび抗体タイプのホットスタート法が、最初の変性加熱工程後に、大部分、非活性化される一方、本発明の核酸複合体は、反応混合物が非特異的プライミングに対して最も脆弱な時点である最初の数周期の増幅中に相互作用し続けるであろう。さらに、該核酸複合体を、限定されるわけではないが、多様な数のタンデム反復(VNTR)PCR、非対称PCR、長鎖PCR、ネステッドPCR、定量的PCR、タッチダウンPCR、アセンブリPCR、コロニーPCR、逆転写PCR、ライゲーション仲介PCR、およびメチル化特異的PCRで用いてもよい。
【0030】
ホットスタートPCR反応において二本鎖核酸複合体を使用すると、驚くべきことに、所望のターゲット配列の増幅収量が改善される一方、また、望ましくない配列のオフ−ターゲット増幅が有意に減少する。これは、室温でのポリメラーゼ活性を減少させることによって達成され;以上はどちらも本明細書に開示するようなDSC技術を使用しない、典型的なホットスタートPCR反応に比較した場合である(実施例5および図14〜15を参照されたい)。1つの態様において、ホットスタートPCR反応におけるDSCの使用は、収量の少なくとも2倍(2X)の改善を提供する。別の態様において、こうした使用は、収量の少なくとも5倍(5X)の改善を提供し、一方、別の態様において、こうした使用は、収量の7倍(7X)または10倍(10X)あるいはそれより高い改善を提供する。1つの態様において、収量の増加する量は、本発明の方法または組成物に供されていない増幅ターゲット核酸分子の量に比較した際、約2Xの増加から約20Xの増加(例えば2X、3X、4X、5X、6X、7X、8X、9X、10X、15Xまたは20X増加)の範囲である。同様に、1つの態様において、ホットスタートPCR反応におけるDSCの使用は、室温(例えば約20℃〜約25℃の間)でのポリメラーゼ活性における少なくとも50%の減少を提供する。さらに別の態様において、こうした使用は、室温でのポリメラーゼ活性における少なくとも70%の減少を提供し、一方、さらに別の態様において、こうした使用は、室温でのポリメラーゼ活性における80%またはそれより高い減少を提供する。1つの側面において、本発明は、約20℃〜25℃の間の温度でポリメラーゼ活性の減少を提供し、ここで、減少は、ターゲット核酸分子が本発明のDSCに供されていないポリメラーゼ活性に比較した際、約50%〜約90%の間(例えば約50%、60%、70%、80%または90%の減少)の範囲である。ポリメラーゼ活性を評価するための方法は、当該技術分野に周知であり、そしてこれには、標識ヌクレオチド取り込みアッセイが含まれる。簡潔には、検出可能標識が核酸分子内に取り込まれることも可能であり、そしてアッセイを行って、例えばApplied Biosystems(Life Technologies Corporation、カリフォルニア州カールスバッド)の、例えば蛍光に基づく自動化配列決定装置上で、ポリメラーゼ活性を測定することも可能である。検出可能標識の例には、蛍光色素、ストレプトアビジン・コンジュゲート、磁気ビーズ、デンドリマー、放射標識、酵素、比色標識、ジゴキシゲニン、ビオチン、ナノ粒子、および/またはナノ結晶が含まれる。標識を取り込むための方法は、当該技術分野に知られる。ポリメラーゼアッセイを測定するためのいくつかのアッセイが存在する。一例には、上述のように、DNAポリメラーゼアッセイが、新鮮に合成されるDNA内に修飾ヌクレオチドを取り込むDNA依存性DNAポリメラーゼの能力を利用する、標識ヌクレオチド取り込みアッセイが含まれる。特定のアッセイは、放射性である一方、他のものは非放射性標識を用いる(例えばカタログ番号1 669 885 Roche Molecular Biochemicals、インディアナ州インディアナポリス)。最適化された比の標識ヌクレオチドは、DNAポリメラーゼ活性によって、同じDNA分子内に取り込まれる。DNAポリメラーゼ活性に関するパラメータとして、任意の数の検出法を用いて、合成されたDNAの検出および定量化を評価することも可能である。
【0031】
同様に、PCR反応収量を評価するための方法が当該技術分野に周知であり、そしてこれには、定量的PCR(qPCR)法が含まれる。例えば、収量を標識してもよく、そしてPCRの各サイクル後、リアルタイムPCR装置が、標識(例えば蛍光)のレベルを測定してもよい。既知の量の連続希釈(例えば未希釈、1:4、1:16、1:64)のリアルタイムPCRによって、産生される標準曲線に結果を比較することによって、収量を決定することも可能である。Nolan, Taniaら, Nature Protocols 1:1559−1582(2006)。
【0032】
用語「プライマー」は、核酸鎖に対して相補的であるプライマー伸張産物の合成が誘導される条件下で、DNA合成の開始ポイントとして作用することが可能なオリゴヌクレオチドを指す。
【0033】
本発明の核酸複合体は、二本鎖RNAまたはDNAを含む、DNAまたはRNAであってもよい。本発明の別の態様において、核酸複合体のオリゴヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドまたは合成核酸分子で構成されていてもよい。修飾には、限定されるわけではないが、さらなる電荷、極性、水素結合、静電相互作用、および流動性(fluxionality)を取り込む他の化学基を核酸または核酸複合体全体に提供するものが含まれる。修飾には、限定されるわけではないが、主鎖修飾、メチル化、3’および5’修飾が含まれる。1つの側面において、ブロッキング分子は、修飾塩基、修飾糖、およびまたは修飾リン酸基を持つ1またはそれより多いヌクレオチド類似体を含む。
【0034】
別の態様において、複合体の核酸は、例えば、限定されるわけではないが、無塩基性部分、反転無塩基性部分、反転ヌクレオチド部分、反転デオキシヌクレオチド3’・3’連結、二糖ヌクレオチド、ロックド核酸、2’−アミノピリミジン、2’−フルオロピリミジン、2’−O−メチルヌクレオチド、ボラノリン酸ヌクレオチド間連結、5修飾ピリミジン、4’−チオピリミジン、ホスホロチオエート・ヌクレオチド間連結、を伴う修飾核酸である。
【0035】
別の態様において、核酸複合体のヌクレオチドは合成オリゴヌクレオチドである。合成オリゴヌクレオチドは、多様な分野で広く使用されており、例えば遺伝子操作を含む分子生物学において;療法において、例えばアンチセンス・オリゴヌクレオチド用に;診断のために、そしてリボザイムとしての触媒を作製するために使用されてきている。例えば、PCR技術は、遺伝物質の増幅のためのプライマーとしてオリゴヌクレオチドをルーチンに使用し、そして合成遺伝子は、効率的な発現のためにコドン使用を最適化することを含めて、多様な目的のために作製される。有用な合成オリゴヌクレオチドには、天然リボヌクレオチドおよびデオキシヌクレオチドを含有するポリマー、ならびに塩基修飾、糖修飾およびリン酸基修飾ヌクレオチドなどの修飾ヌクレオチドを含有するポリマーが含まれる。
【0036】
好ましくは、核酸複合体は、長さ約9〜40ヌクレオチド、そしてよりさらに好ましくは長さ約14〜20ヌクレオチドの二本鎖オリゴヌクレオチドで構成される。最も好ましい態様において、本発明のオリゴヌクレオチドは、長さ16〜19ヌクレオチドである。
【0037】
古細菌の種から単離されるDNAポリメラーゼ(例えばPFU DNAポリメラーゼ)は、読み取るヌクレオチド配列中でウラシル(U)塩基と出会うと、しばしば、失速(活性が)する。例えば、Hogrefeら Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99:596−602(2002); Foggら, Nat. Struct. Biol., 9(12):922−927(2002)を参照されたい。したがって、本発明にしたがって、本明細書に開示する二本鎖核酸複合体内に1またはそれより多いウラシル(U)塩基を導入すると、古細菌の種由来のDNAポリメラーゼを使用する場合、(PCR反応開始前の)室温での望ましくないポリメラーゼ活性が有意に減少する。したがって、本発明の1つの態様において、本明細書に開示するような二本鎖核酸分子であるが、さらに少なくとも1つのウラシル(U)塩基をさらに含む、二本鎖核酸分子を提供する。別の態様において、本明細書に開示する方法は、こうしたウラシル塩基を含むDSC、および古細菌の種由来の少なくとも1つの熱安定性DNAポリメラーゼを使用する。1つの態様において、ホットスタートPCR反応におけるウラシル含有DSCのこうした使用は、室温でのポリメラーゼ活性において、少なくとも50%の減少を提供する。さらに別の態様において、こうした使用は、室温でのポリメラーゼ活性において、少なくとも70%の減少を提供し;一方、さらに別の態様において、こうした使用は、室温でのポリメラーゼ活性において、80%またはそれより高い減少を提供する。1つの側面において、ウラシル含有DSCの本発明の使用は、約20℃〜25℃の間の温度でのポリメラーゼ活性減少を提供し、ここで、その範囲は、ターゲット核酸分子が本発明のDSCに供されていない場合のポリメラーゼ活性と比較した際、約50%〜約90%の範囲である(例えば約50%、60%、70%、80%、または90%減少)。ポリメラーゼ活性を評価するための方法は当該技術分野に周知であり、そしてこれには、標識ヌクレオチド取り込みアッセイが含まれる。
【0038】
本発明のDSCは、少なくとも2つの阻害法を有すると考えられる。第一に、DSCは、反転dTを伴わずに、そのままで、DNAポリメラーゼの阻害剤として有効に作用する。DNAポリメラーゼを含む溶液において、DNAポリメラーゼは、本発明のDSCに自然に結合するが、いくつかの二本鎖DNA配列は、他のものより有効な阻害を提供するようである。Kainzら BioTechniques 28:278−282(February 2000)を参照されたい。第二に、PCR反応が第一の周期を開始する際、DSCは、各鎖が分離する際に、DNAポリメラーゼから除去されることも可能であり、これは、反応温度がDSCの融点を超えるためである。冷却されると、DSCの各鎖は、典型的には、再編成されて、その相補体とハイブリダイズし、この場合は、DNAポリメラーゼの重合活性を阻害する。しかし、DSCが偶然、ターゲット・テンプレートDNAとハイブリダイズした場合でも、反転dTの存在によって、DNAポリメラーゼが伸長してそして競合性二次産物を形成するのが有効に阻害されるであろうし、これは、DNAポリメラーゼがさらなるヌクレオチドを付加するために必要な3’ヒドロキシル基が、反転dTには欠けているためである。さらに、反転dTは、エキソヌクレアーゼから保護される。その異常な構造のため、エキソヌクレアーゼは、反転dTを除去することが不可能であり、そうでなければ、反転dTが分解されて、DSCが非特異的にアニーリングしてそしてDNA伸長のプライマーとして作用することが可能になるであろう。
【0039】
1つの態様において、本発明の核酸分子は「単離」されており;本明細書において、「単離」核酸分子またはヌクレオチド配列は、通常ならば(天然に)(ゲノム配列におけるように)該遺伝子またはヌクレオチド配列に隣接するヌクレオチド配列に隣接されておらず、そして/または他の転写される配列から完全にまたは部分的に精製されている、核酸分子またはヌクレオチド配列を意味するよう意図される。例えば、本発明の単離核酸は、天然に存在する複雑な細胞環境に関して、実質的に単離されていてもよい。いくつかの場合、単離物質は、組成物、緩衝系または試薬混合物の一部を形成するであろう。したがって、核酸複合体の単離核酸分子またはヌクレオチド配列には、化学的にまたは組換え手段によって合成された核酸分子またはヌクレオチド配列が含まれてもよい。また、単離ヌクレオチド配列には、溶液中の部分的にまたは実質的に精製された核酸分子が含まれる。
【0040】
本発明には、1つの態様において、共有結合したブロッキング分子を含む配列番号1〜16のいずれか1つの核酸配列;配列番号1〜16のいずれか1つの隣接ヌクレオチドの約80%〜約100%の間を有する核酸配列;配列番号1〜16のいずれか1つの約7〜約20の間の隣接ヌクレオチドを有する核酸配列;その相補体;およびその組み合わせを有する、単離核酸分子が含まれる。
【0041】
本明細書において、用語「DNA分子」または「核酸分子」には、センスおよびアンチセンス鎖両方、cDNA、相補DNA、組換えDNA、RNA、完全または部分的合成核酸分子、PNAおよび他の合成DNA相同体が含まれる。ヌクレオチド「変異体」または「誘導体」は、該分子がPCR中の非特異的増幅を遮断する限り、1またはそれより多いヌクレオチド欠失、置換または付加を有する点で、引用されるヌクレオチド配列とは異なる配列である。
【0042】
やはり本発明に含まれるのは、核酸配列、DNAまたはRNA、PNAまたは他のDNA類似体であって、実質的にDNA配列に相補的であるものである。本明細書に定義するように、実質的に相補的な類似体または誘導体は、核酸が本発明の配列の正確な配列を反映する必要はないが、高ストリンジェンシー条件下で、配列が、本発明の核酸配列とのハイブリダイゼーションを可能にするために十分に類似でなければならないことを意味する。配列がPCR中の非特異的増幅を減少させるために十分な数の塩基を有するならば、例えば、非相補的塩基がヌクレオチド配列中に分散していてもよいし、あるいは配列が本発明の核酸配列よりも長くてもまたは短くてもよい。
【0043】
別の態様において、本発明には、本明細書記載の任意の核酸分子の、そして好ましくは配列番号1〜16の長さ少なくとも約7〜約20(例えば7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)の隣接ヌクレオチドを含有する分子が含まれる。あるいは、本発明の分子には、本明細書記載の配列のいずれか1つの、そして好ましくは配列番号1〜16の長さの約60%〜約100%の隣接ヌクレオチドを有する核酸配列が含まれる。
【0044】
本発明はまた、本明細書記載の核酸複合体の配列と実質的な同一性を有する核酸複合体にも関し;特に好ましいのは、本明細書記載のヌクレオチド配列と、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約50%、さらにより好ましくは少なくとも約70%、さらにより好ましくは少なくとも約80%、そしてさらにより好ましくは少なくとも約90%の同一性、そしてさらにより好ましくは95%の同一性を有するヌクレオチド配列である。この例において特に好ましいのは、本明細書記載の核酸複合体の活性を有する核酸複合体である。
【0045】
2つの核酸複合体の同一性パーセントを決定するため、最適比較目的のために配列を整列させる(例えば第一のヌクレオチド配列の配列中にギャップを導入してもよい)。次いで、対応するヌクレオチド位でヌクレオチドを比較する。第一の配列中の位が第二の配列中の対応する位と同じヌクレオチドで占められる場合、分子はその位で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、該配列によって共有される同一の位の数の関数である(すなわち同一性%=同一の位の数/位の総数X100)。
【0046】
本明細書記載の核酸複合体(例えば表1に示すような核酸複合体)は、増幅反応、例えばPCR中の非特異的増幅を減少させる際に有用である。一般的には、PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification(H.A. Erlich監修, Freeman Press, ニューヨーク州ニューヨーク, 1992); PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Innisら監修, Academic Press, カリフォルニア州サンディエゴ, 1990); Mattilaら, Nucleic Acids Res. 19, 4967(1991); Eckertら, PCR Methods and Applications 1, 17(1991); PCR(McPhersonら監修, IRL Press, Oxford);および米国特許第4,683,202号を参照されたい。
【0047】
用語「増幅する」は、特定のまたはターゲット・ポリヌクレオチドのコピー数を増加させることを指す。例えば、PCRは、ポリメラーゼ、および一方は増幅しようとする配列の一方の端で2つのポリヌクレオチド鎖の一方に相補的であり、そしてもう一方は他方の端で2つのポリヌクレオチド鎖のもう一方に相補的である2つのオリゴヌクレオチド・プライマーを用いて、ポリヌクレオチド配列を増幅するための方法である。新規に合成されるDNA鎖は、続いて、同じプライマー配列のためのさらなるテンプレートとして働きうるため、プライマー・アニーリング、鎖伸長、および解離の連続周期によって、所望の配列の迅速でそして非常に特異的な増幅が生じる。また、PCRを用いて、DNA試料における定義された配列の存在を検出することも可能である。1つの態様において、PCRを用いて試料のDNAを増幅するかまたは複製する。PCR法は、当該技術分野に知られ、そして例えば、Mullis, K.B. Scientific American 256:56−65(1990)に記載される。
【0048】
簡潔には、DNAポリメラーゼ酵素を使用してPCRを行い、そして該酵素には例えば、遺伝子操作された細菌から単離されるものが含まれる。好ましいポリメラーゼ酵素は、熱安定性生物、例えばサーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)由来(Taq)である。さらなるポリメラーゼが本明細書に記載され、そしてこれは、熱安定性古細菌ポリメラーゼを含む。プライマー、本発明のDSC複合体、および4つのヌクレオチド塩基(アデニン、グアニン、シトシンおよびチミン)の供給とともに、ポリメラーゼを提供する。特定の条件下で(例えば95℃30秒間)、DNAを変性させて、鎖が分離するのを可能にする。DNA溶液が冷却されるにつれて、プライマーがDNA鎖に結合し、そして次いで、溶液を加熱して、Taqポリメラーゼが効力を生じるのを促進する。Mullis, K.B. Scientific American 256:56−65(1990)。
【0049】
他の適切な増幅法には、リガーゼ連鎖反応(LCR)(WuおよびWallace, Genomics, 4:560(1989)、Landegrenら, Science, 241:1077(1988)を参照されたい)、転写増幅(Kwohら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173(1989))、および自己維持配列複製(Guatelliら, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 87:1874(1990))、および核酸に基づく配列増幅(NASBA)が含まれる。後者の2つの増幅法は、等温転写に基づく等温反応を伴い、これは増幅産物として、それぞれ約30または100対1の比で、一本鎖RNA(ssRNA)および二本鎖DNA(dsDNA)の両方を生じる。
【0050】
増幅されたDNAを放射標識して、そしてライブラリーまたは他の適切なベクターをスクリーニングするためのプローブとして用いて、相同ヌクレオチド配列を同定してもよい。当該技術分野に認識される方法によって、対応するクローンを単離してもよく、in vivo切除後にDNAを得てもよく、そしてクローニングした挿入物をいずれかまたは両方の方向で配列決定して、適切な分子量のタンパク質をコードする正しいリーディングフレームを同定してもよい。例えば、本発明の相同核酸分子のヌクレオチド配列の直接分析は、ジデオキシ鎖終結法またはマクサム・ギルバート法のいずれかを用いて達成可能である(Sambrookら, Molecular Cloning, A Laboratory Manual(第2版, CSHP, ニューヨーク 1989); Zyskindら, Recombinant DNA Laboratory Manual, (Acad. Press, 1988)を参照されたい)。これらのまたは類似の方法を用いて、タンパク質(単数または複数)および該タンパク質をコードするDNAを単離し、配列決定し、そしてさらに性質決定してもよい。
【0051】
また、本発明の核酸複合体を、RNAの増幅、例えば対応するcDNAの合成を含むmRNAの増幅法に用いてもよい。
さらなる態様において、DNAポリメラーゼは、Taq DNAポリメラーゼ、BST DNAポリメラーゼ、PFU DNAポリメラーゼ、Klenow DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、Phi29 DNAポリメラーゼ、RB69 DNAポリメラーゼから選択される。古細菌の種由来の熱安定性DNAポリメラーゼは、商業的に入手可能であり(例えばNew England Biolabs, Inc.;Stratagene Inc.)、そしてこれには、9°N DNAポリメラーゼおよびVent DNAポリメラーゼが含まれる。
【0052】
1つの態様において、核酸複合体は、熱安定性DNAポリメラーゼに結合する。第二の態様において、核酸複合体は、DNAポリメラーゼには瞬間的にしか結合せず、DNAポリメラーゼは迅速に未結合となり、そして同じ核酸複合体または別の核酸複合体のいずれかに再結合する。別の態様において、核酸複合体は、核酸の融点未満の温度で、増幅反応における非特異的増幅産物の量を減少させる。別の態様において、核酸複合体は、増幅反応において、熱安定性DNAポリメラーゼの活性を阻害させるDNA構築物であり、ここで、該DNA構築物は、およそ51.5℃の融点を有するか、または該DNA構築物は、非特異的増幅産物の量を減少させる。
【0053】
さらに、核酸複合体の核酸は、ブロッキング分子を含む。好ましい態様において、ブロッキング分子は、ポリメラーゼによる核酸複合体の伸長を防止する。別の態様において、ブロッキング分子は、特定のポリメラーゼ、例えばDNAポリメラーゼによる伸長を防止する。ブロッキング分子を、核酸の5’または3’端のいずれに付着させてもよい。別の好ましい態様において、ブロッキング分子は、5’および/または3’エキソヌクレアーゼ消化に対する耐性を提供する。最も好ましい態様において、ブロッキング分子は、3’末端に共有結合した反転デオキシチミジンであり、そして熱安定性DNAポリメラーゼによる伸長を防止し、そして3’エキソヌクレアーゼ活性に対する耐性を提供する。
【0054】
1つの態様において、方法および試薬は、3’ヒドロキシル末端でブロッキングされた二本鎖オリゴヌクレオチドを用いる。好ましい態様において、Taq DNAポリメラーゼを、ブロッキング分子でキャップ化された二本鎖オリゴヌクレオチドと組み合わせる。ブロッキング分子をオリゴヌクレオチドに共有結合させる。ブロッキング分子は、上昇した温度での増幅反応におけるインキュベーションによっては除去不能である。二本鎖オリゴヌクレオチドおよびブロッキング分子の組み合わせは、本明細書において、二本鎖複合体(DSC)と称される。ブロッキング分子があるため、1つの態様において、DSCはいかなる混入3’エキソヌクレアーゼによっても分解されず、またはポリメラーゼによって核酸が伸長されることも不可能である。偶然、DSCの一本鎖が反応プライマーまたはテンプレートにハイブリダイズした場合でも、ブロッキング分子によって、DSCが意図されないプライマーとして作用してそして競合性混入産物を形成することが防止される。したがって、本発明は、核酸増幅反応の性能を改善するための手段を提供する。本発明は、限定されるわけではないが、DNAポリメラーゼに結合し、そして非特異的増幅産物の産生を防止する、二本鎖オリゴヌクレオチドで構成される核酸複合体に関する。二本鎖核酸複合体の各鎖はブロッキング分子を含み、該ブロッキング分子は、核酸複合体をエキソヌクレアーゼ分解から防御し、そしてまた、核酸複合体自体が非特異的オリゴヌクレオチド・プライミングの供給源となることも防止する。
【0055】
ブロッキング分子は、ポリメラーゼによる核酸複合体の伸長を防止する任意の分子を含むように定義される。ブロッキング分子はまた、エキソヌクレアーゼ分解にも耐性であってもよい。さらなる好ましい態様において、ブロッキング分子は、ポリメラーゼによる伸長を防止するとともに、エキソヌクレアーゼによる切除も防止する。ブロッキング分子は、核酸複合体の3’または5’末端のいずれにも配置可能である。最も好ましい態様において、ブロッキング分子は反転dTである。反転dTは、デオキシチミジンの合成ヌクレオチドであり、該ヌクレオチドのリボース構造およびチミジン塩基間の結合は、標準的なデオキシチミジンから反転した位置にある:
【0056】
【化2】
【0057】
ブロッキング分子の例には、限定されるわけではないが、デオキシチミジン、ジデオキシヌクレオチド、3’リン酸化、ヘキサンジオール、スペーサー分子、1’2’−ジデオキシリボース、2’−O−メチルRNA、ロックド核酸(LNA)、および核酸複合体の伸長を防止し、そして/またはエキソヌクレアーゼによる切除に対して耐性である、合成または天然分子が含まれる。
【0058】
本発明はまた、貯蔵緩衝剤を含む溶液中に、本発明の単離核酸分子を含む、DNA構築物にも関する。こうした貯蔵緩衝剤には、例えば、TRIS緩衝剤、MOPS、またはHEPES緩衝剤が含まれる。さらに、本発明は、本発明の核酸複合体およびDNAポリメラーゼを含む貯蔵緩衝液にも関する。
【0059】
したがって、本発明の核酸分子は、1つの態様において:
a)デオキシリボ核酸で構成される核酸;
b)核酸中央にブロッキング分子を含む核酸;
c)核酸のいずれかの端に付着したブロッキング分子を含む核酸;
d)核酸の3’端に付着したブロッキング分子を含む核酸;
e)非特異的増幅を減少させる核酸;
f)表1由来の任意の配列の核酸配列を含む核酸;
g)およそ48.9℃〜51.5℃の融点を有する核酸;
h)およそ64.3%のGC含量を有する核酸;
i)1またはそれより多い修飾ヌクレオチドを有する核酸;
j)1またはそれより多い人工的核酸が含有される核酸;
k)ブロッキング分子がスペーサー分子である核酸;
m)ブロッキング分子が反転ヌクレオチドである核酸;
n)a)、b)、c)、d)、e)、f)、g)、h)、i)、j)、k)、l)、m)の断片または誘導体
からなる群より選択される、付着したブロッキング分子を含む二本鎖核酸構築物である。
【0060】
別の態様において、本発明は、単離核酸自体、および多様な組成物中の単離核酸、例えば:
a)DSC1の配列を含む核酸;
b)DSC1の核酸を含有する貯蔵緩衝液;
c)DSC1の核酸を含有する反応緩衝液;または
d)DSC1の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するDNA構築物;および
e)a)、b)またはc)の断片または誘導体
に関する。
【0061】
実施例1(図1)は、本発明のDSCがDNAポリメラーゼによる伸長を有効に防止することを立証する、PCR増幅を記載する。オリゴヌクレオチドの3’端に取り込まれた阻害性分子は、未結合(free)ヒドロキシル端をキャップ化し、産物増幅を生じない。
【0062】
実施例1(図2)はまた、本発明のDSCが、pUC19プラスミドの1.1kb領域の増幅成功を阻害しないことを立証する、PCR増幅も記載する。順方向および逆方向反応プライマーと同じ配列を有する、キャップ化3’端を持つ二本鎖分子の存在は、反応結果を阻害しない。
【0063】
実施例2は、標準的PCR、商業的に入手可能なホットスタートPCR、およびマニュアルホットスタート条件を伴わない、本発明の二本鎖複合体の存在下のPCRを含む、いくつかのPCR増幅を記載する。実施例2は、競合外来DNAとして、大腸菌ゲノムDNAの存在下でのラムダファージDNAの1.9kb領域の検出を記載する。
【0064】
図3は、DSC1、DSC2、DSC3、DSC3−1分子の存在下でのPCR増幅の結果を例示する。奇数レーンにおいて、10,000コピーのラムダファージDNAを用いて、PCR増幅を行った。すべての反応は、競合外来DNAとして、1ngの大腸菌ゲノムDNAを含有する。DSC分子を添加しない反応では、産物の増幅は達成されなかった。レーン1、5、7においてDSC分子を添加した場合、産物増幅が達成され、そして収量には、非特異的増幅は含まれなかった。DSC分子の存在によって、収量を損なうことなく、ターゲットバンドの検出が促進される。
【0065】
図4は、ラムダDNAからの1.9kb領域の増幅における比較を示す。すべてのPCR反応をラムダDNAおよび1ngの混入大腸菌ゲノムDNAの存在下で行った。レーン1〜4は、DSC分子の存在下で、TaqおよびTaq−B DNAポリメラーゼを用いた産物増幅を例示する。Taq−Bは、貯蔵緩衝液中に安定化剤を有する。レーン5〜7において、商業的に入手可能な化学修飾ホットスタートDNAポリメラーゼを用いて、増幅を行った。DSC分子の存在下での増幅産物の収量は、化学修飾Taqで得られる収量に匹敵するか、またはこれより大きい。
【0066】
図5AおよびBは、DSC分子の存在下でのラムダDNAの1.9kb領域の増幅を強調する。図5Aにおいて、図3および4で用いるプライマーよりも低い融点を有する、順方向5’CTGGCTGACATTTTCG−3’(配列番号17)および逆方向5’TATCGACATTTCTGCACC−3’(配列番号18)プライマーを用いて、PCR増幅を行った。図5Bにおいて、図3および4で用いるプライマーよりも高い融点を有する、順方向5’GAAGTCAACAAAAAGGAGCTGGCTGACATTTTCG−3’(配列番号19)および逆方向5’CAGCAGATACGGGATATCGACATTTCTGCACC−3’(配列番号20)プライマーを用いて、増幅を行った。0.523pgのラムダDNAおよび1ngの大腸菌ゲノムDNAを用いてPCR増幅を行った。反応条件は、95℃5分間での最初の変性、その後、95℃40秒間、48℃または61℃いずれかの30秒間、72℃2分間を40周期、72℃7分間での最終伸長であった。結果は、産物の増幅が、DSC1分子の存在下で達成されたことを示す。反応プライマーの融点、およびより低い/高い温度でのアニーリングは、Taq−B DSCの性能に影響を及ぼさなかった。
【0067】
実施例3は、標準的PCR、マニュアルホットスタートPCR、ホットスタートPCR、およびDSC分子の存在下でのPCRにおける、ヒト胎盤DNAのβ−アクチン遺伝子の653bp断片の増幅を記載する(図6)。通常のPCR下では、望ましいバンドの収量は、非特異的バンドの増幅によって損なわれる(図6、レーン11)。
【0068】
マニュアルホットスタート条件下では、収量は増加したが、PCR特異性は増加しない(図6、レーン12および13)。化学修飾ポリメラーゼは特異的であり、そして頑強なバンドを増幅する(図6、レーン14)。レーン1〜10において、DSC分子の融点は、各連続レーンにおいて、約5℃ずつ増加する。低融点のDSC分子の存在下で行った増幅では、望ましいバンドが低収量であることがわかった(図6、レーン1〜4)。中程度の融点のDSC分子の存在下で行った増幅の結果は、マニュアルホットスタート下での増幅で得られたものと類似である(図6、レーン5〜7)。高融点のDSC分子を付加すると、反応の特異性が増加し、そして頑強な所望のバンドが生じた(図6、レーン8〜10)。ブロッキング分子の相違もまた、所望のバンドの増幅に影響を及ぼした。図6、レーン16および17で用いたDSC分子は、3’端で、異なるブロッキング分子でキャップ化されており、これがおそらく、反応の増幅成功に干渉した。
【0069】
実施例4は、1000コピー〜5コピーのDNA A、B、およびCの100〜120bp断片を増幅する、一連のPCR反応を記載する。標準PCR下、化学修飾酵素を用いたホットスタートPCR下、および本発明のDSC分子の存在下の非ホットスタート条件下で、PCR増幅を行った。セットアップ直後に行ったPCR増幅反応を、周囲温度で24時間のインキュベーション期間後に行ったものに比較した。
【0070】
図7Aは、オリゴヌクレオチド混合物Bを用いたDNA Bからの100bp産物の増幅を示す。すべてのPCR増幅は、1000コピーのDNA Bを含有する。図7A中のPCR増幅は、ベンチトップでのプレインキュベーションを伴わず、セットアップ直後に行われた。反応中に存在するDNAの量は、収量を損なうことなく、ポリメラーゼが特異的に増幅するために十分である(図7A、レーン1〜5)。すべてのレーンにおいて、所望の産物の増幅に対応する単一バンドが存在する。図7Aにおけるセットアップ下、ホットスタート条件下でPCR増幅を行う必要はない。
【0071】
図7Bにおいて、PCR増幅は、23℃の周囲温度で24時間インキュベーションした後、行われた。通常のPCR条件下では、所望のバンドの増幅は、図7A中のレーン4における同じ増幅に比較して、非常に減少する。本発明のDSC分子を反応に添加した際、結果は、明らかに異なる。反応中のDSC分子の存在は、増幅収量を改善する(図7B、レーン1〜3)。
【0072】
図8は、DNA Bからの100bp産物の増幅を例示する。すべてのPCR増幅は、5コピーのDNAを用いて行われた。PCR増幅は、ベンチトップでのプレインキュベーションを伴わず、セットアップ直後に行われた。レーン1および3において、DSC分子の最終濃度は4μMであり、一方、レーン2および4において、DSC分子の最終濃度は0.4μMである。より高濃度のDSCは、増幅結果を阻害しない。どちらの濃度のDSCを含有する反応も、優れた量の産物を増幅する。
【0073】
図9は、DNA Bからの100bp産物の増幅を例示する。すべてのPCR増幅は、5コピーのDNA Bを用いて行われた。PCR増幅は、周囲温度で24時間、ベンチトップでインキュベーションした後、行われた。標準的PCR条件下、インキュベーション期間によって、所望の産物の増幅成功が妨げられた(図9、レーン6)。レーン1〜5は、最終濃度4μMの異なるDSC分子の存在下でのPCR増幅の結果を示す。DSC1の存在下での増幅収量(図9、レーン1)は、化学修飾酵素で得られる収量(図9、レーン7)に匹敵する。DSC5およびDSC12で得られる収量(図9、レーン2および3)は、化学修飾酵素で得られる収量(図9、レーン7)より多い。DSC13およびDSC14の存在下で行った増幅の結果は、標準的条件下でPCRによって得られるものと類似である。
【0074】
図10A〜Cは、それぞれ、DNA A〜Cからの100〜120bp産物の増幅を例示する。すべてのPCR増幅は、5コピーのDNAを用いて行われた。PCR増幅は、ベンチトップでのプレインキュベーションを伴わず、セットアップ直後に行われた。DSC分子の最終濃度は4μMである(図10A〜C、レーン1〜5)。DSCの濃度がより高くても、増幅結果は阻害されない(図10A〜C、レーン1〜3)。これらの反応において、所望の産物の増幅に対応する単一バンドがある。DSC13およびDSC14の存在下で行われるPCRの結果は、産物増幅を生じず、これはおそらくこれらの長さのためである。標準的PCR条件下で、所望の産物の増幅に対応する単一バンドがある(図10A〜C、レーン6)。PCR増幅をセットアップ直後に行うため、ホットスタート条件下でPCRを行う必要はなかった(図10A〜C)。
【0075】
図11A〜Cは、それぞれ、DNA A〜Cからの100〜120bp産物の増幅を示す。すべてのPCR増幅は、5コピーのDNAを用いて行われた。PCR増幅は、23℃で24時間、ベンチトップでインキュベーションした後、行われた。DSC分子の最終濃度は4μMである(図11A〜C、レーン1〜5)。DSC分子の非存在下で行われたPCR増幅の結果では、産物の増幅がなかった(図11A〜C、レーン6)。DSC13およびDSC14の存在下で行われた増幅の結果は、非ホットスタート条件下のPCRによって得られるものと類似である(図11A〜C、レーン5および6)。
【0076】
図11Aにおいて、DSC1およびDSC12の存在下での増幅収量は、化学修飾ポリメラーゼで得られるものと類似である(図11A、レーン1、3および7)。DSC5の存在下で得られる収量は増加している(図11A、レーン2)。
【0077】
図11Bにおいて、DSC1の存在下での増幅は産物形成を生じない(図11B、レーン1)。しかし、DSC5およびDSC12の存在下での増幅は、ターゲット産物に対応する単一バンドの検出を生じる(図11B、レーン2および3)。
【0078】
図11Cにおいて、DSC1、DSC5、およびDSC12の存在下での増幅は、化学修飾ポリメラーゼで得られるものに匹敵する収量の産物形成を生じる(図11C、レーン1〜3)。しかし、DSC5およびDSC12の存在下での増幅は、ターゲット産物に対応する単一バンドの検出を生じる。
【0079】
図10および11に例示するアッセイにおける本発明のDSC5の存在下での増幅は、最適な全体結果を提供する。
実施例5は、1280コピー〜5コピーのDNA A、B、C、およびヒト胎盤DNAの100〜120bp断片を増幅させる、一連のqPCR反応を記載する。標準的PCR下、化学修飾酵素を伴うホットスタートPCR下、および本発明のDSC分子の存在下での非ホットスタート条件下で、PCR増幅を行った。
【0080】
図12は、CY5蛍光色素による検出を用いた、DNA Cからの120bp産物の形成のリアルタイムPCR分析を示す。並べた比較を行って、商業的に入手可能な化学修飾Taqに対してTaq−B DSC1を評価した。各反応におけるDSCの最終濃度は0.4μMである。1280〜5コピーのDNA Cを含有するqPCR増幅を、4つ組で行った。Taq DSC1に関する平均Ct値は、各コピーレベルで、化学修飾Taqで得られるものより低い。標準偏差は、Taq DSC1に関してわずかにより高く、10コピーレベルで最高である。全PCR効率およびR二乗値を伴ったものは、Taq DSC1および化学修飾Taqの両方に関して匹敵する。
【0081】
図13は、ヒト胎盤DNAからのHBB2の100bp産物の形成のリアルタイムPCR分析を示す。並べた比較を行って、商業的に入手可能な化学修飾Taqに対してTaq−B DSC1を評価した。各反応におけるDSC1の最終濃度は0.4μMである。1280〜5コピーのヒト胎盤DNAを含有するqPCR増幅を、4つ組で行った。Taq−B DSC1に関する平均Ct値は、各コピーレベルで、化学修飾Taqで得られるものより低い。標準偏差は、やはり、Taq−B DSC1に関してわずかに低い。10コピーで、化学修飾Taqは0.6の許容値より高い標準偏差を有し、一方、Taq−B DSC1に関しては、これは5コピーで生じる。全PCR効率およびR二乗値を伴ったものは、Taq−B DSC1および化学修飾Taqの両方に関して匹敵する。
【0082】
図14AおよびBは、HEX蛍光色素による検出を用いた、DNA Bからの100bp産物の形成のリアルタイムPCR分析を例示する。図14Aは、2.5UのTaq−Bおよび0.4μM最終濃度のDSC1を含む25μL反応における産物の増幅を示す。図14Bは、2.5UのTaq−Bおよび0.2μM最終濃度のDSC1を含む50μL反応における産物の増幅曲線を示す。1000、100、および10コピーのDNA Bを含有する増幅反応を、4つ組で行った。反応体積を増加させることによって、各コピーレベルでの最終振幅が、Taq−B DSC1および化学修飾Taq両方に関して増加し、より少ない単位/mL酵素を使用する必要があることが示唆された。増加は、10コピーレベルのTaq−B DSC1に関してより劇的である。これらの反応において(図14A)、図14Bにおいては値が測定可能であるのに比較して、検出可能なCt値はない(閾値未満の増幅)。
【0083】
図15A〜Cは、HEX蛍光色素による検出を用いた、DNA Bからの100bp産物の形成のリアルタイムPCR分析を例示する。1000、100、および10コピーのDNA Bを含有する反応を、4つ組で行った。このアッセイにおいては、Taq−B、Taq−B DSC1、Taq−B DSC5、および化学修飾Taqを用いて行ったqPCR増幅を比較する。反応中のDSC5分子の最終濃度を、1x〜20xで示し、ここで1xは0.2μMであり、そして20xは4μMである。DSC1の最終濃度は0.2μMである。
【0084】
図15Aは、各コピーレベルに関して各酵素の組み合わせを用いることによって得られる平均Ct値を示す。10コピーレベルで、DSC分子を含まないTaq−Bは検出可能なCt値を持たない。DSC分子の存在下で行われるqPCR増幅は、化学修飾Taqで得られるものと匹敵する、測定可能なCt値を有する。Ct値はまた、DSC濃度増加に伴っても減少する。DSC濃度を増加させると、より高いPCR効率が達成される。
【0085】
図15Bは、Taq−BおよびFastStartのみとともに、各Taq−B DSC組み合わせに関する増幅曲線を例示する。DSC濃度を増加させるとより高い振幅が達成される。10xでのTaq−B DSC5配合は、化学修飾Taqの性能を超える。
【0086】
図15Cは、各コピーレベルでの各組み合わせに関する最終振幅を示す。全体として、10x濃度でのDSC5分子の存在下で、最適な性能が達成される。
句「本質的にからなる」または「本質的にからなること」は、本明細書記載の任意の態様において、請求する発明が働くかまたは作動するのに本質的であるかまたは必要とされる、請求する発明の要素を指す。例えば、1つの態様において、本発明のブロッキング二本鎖核酸複合体は、どちらも本明細書に記載するような、二本鎖核酸複合体およびブロッキング分子から本質的になる。同様に、本発明の組成物、方法、キットまたは系は、本明細書記載のDSCとともに、やはり本明細書に記載するような、DNAポリメラーゼ、緩衝剤、アデニン、グアニン、シトシンおよびチミンの供給、ならびにプライマーから本質的になる。
【実施例】
【0087】
実施例1
pUC19プラスミドの1.1kb領域を増幅する系を用いて、Taq−Bポリメラーゼに触媒されるPCRを行った(図1および2)。3’OH修飾を伴うおよび伴わないプライマーを用いて、PCR増幅を行った。1つのプライマーセットには、未結合3’OH基を有する5’−AACAATTTCACACAGGAACAGCT−3’(配列番号21)および5’−GTTTTCCCAGTCACGACGT−3’(配列番号22)が含まれた。第二のプライマーセットにおいて、3’OH基の利用可能性は、反転dT修飾によってブロッキングされており、5’AACAATTTCACACAGCAACAGC/反転T/−3’(配列番号23)および5’−GTTTTCCCAGTCACGACG/反転T/−3’(配列番号24)であった。反応は、1xPCR緩衝液I(50mM KC1、1.5mM MgCl2、20mM Tris−HCl、25℃でpH8.6)または1xPCR緩衝液II(10mM (NH4)2SO4、10mM KC1、2mM MgSO4、0.01% Triton X−100、50%グリセロール、20mM Tris−HCl、25℃でpH8.8)のいずれかを含有した。各反応は、0.2mM dNTP、各0.2μMのプライマー、4ngのpUC19 DNA、および5UのTaq−Bポリメラーゼを含有した。すべてのPCR反応は、2720 PCRサーマルサイクラー(Applied Biosystems)上、100μL体積で行われた。反応条件は以下の通りであった:95℃3分間での最初の変性、その後、95℃20秒間、55℃20秒間、68℃1分15秒間を35周期、68℃7分間での最終伸長。PCR後、20μLの各試料を1%アガロースゲル上に装填し、そしてAlpha Innotech Corporation AlphaImager HP、2401 Merced St. San Leandro, CA 94577 USAを用いて、UV光下で可視化した。Taq−Bポリメラーゼ、パーツ番号P725Lは、Enzymatics, Inc. 100 Cummings Center, Suite 336H, Beverly, MA 01915 USAより入手可能である。DNA標準マーカーは、1kb DNAラダー、カタログ番号N3232Sであり、New England Biolabs, 240 County Road Ipswich, MA 01938 USAより入手可能であった。
実施例2
図3〜5に示す実験で用いるPCR増幅プロトコルには、100μL反応体積中、1xPCR緩衝液I(50mM KC1、1.5mM MgCl2、20mM Tris−HCl、25℃でpH8.6)、0.2mM dNTP、および5UのTaqポリメラーゼが含まれた。各0.2μMの順方向5’AAGGAGCTGGCTGACATTTTCG−3’(配列番号25)および逆方向5’CGGGATATCGACATTTCTGCACC−3’(配列番号26)プライマーを用いて、競合外来DNAとしての1ngの大腸菌ゲノムDNAの存在下、10,000コピーのラムダファージDNAから1.9kb領域を増幅するPCR増幅を行った。Applied Biosystems 2720サーマルサイクラー上でPCR実験を行った。反応条件は、95℃5分間での最初の変性、その後、95℃40秒間、56℃30秒間、72℃2分間を40周期、72℃7分間での最終伸長であった。PCR後、20μLの各試料を1%アガロースゲル上に装填し、そしてAlpha Innotech Corporation AlphaImager HPを用いてUV光下で可視化した。用いた商業的に入手可能なホットスタートDNAポリメラーゼには、Life Technologies Corp.の一部門であるApplied Biosystems, 5791 Van Allen Way PO Box 6482, Carlsbad, CA 92008 USAより入手可能なAmplitaq Gold、パーツ番号N8080246や、Roche Diagnostics Corporation, P.O. Box 50414, 9115 Hague Road, Indianapolis, IN 46250−0414 USAより入手可能なFastStart Taq DNAポリメラーゼ、カタログ番号12032902001が含まれた。ラムダPCRプロトコルは、KoukharevaおよびLebedev(2009) Anal. Chem. 81:12より適合され、そして該文献は、その全体が本明細書に援用される。
【0088】
実施例3
図6において、ヒト胎盤DNAからβ−アクチン遺伝子の653bp断片を増幅した。すべての100μL PCR反応は、1xPCR緩衝液I(50mM KC1、1.5mM MgCl2、20mM Tris−HCl、25℃でpH8.6)、0.2mM dNTP、各0.5μMの順方向5’AGAGATGGCCACGGCTGCTT−3’(配列番号26)および逆方向5’−ATTTGCGGTGGACGATGGAG−3’(配列番号26)プライマー、100ngのテンプレート、および5UのTaqポリメラーゼが含まれた。熱サイクリング条件は、94℃2分間での最初の変性、その後、94℃30秒間、60℃30秒間、72℃45秒間を35周期、72℃7分間での最後の伸長であった。PCR後、20μLの各試料を1%アガロースゲル上に装填し、そしてAlpha Innotech Corporation AlphaImager HPを用いてUV光下で可視化した。β−アクチンのためのPCRプロトコルは、Lebedevら(2008) Nucleic Acid Research 31:20から適合され、そして該文献は本明細書に援用される。
【0089】
実施例4
図7〜11に示す実験で用いるPCR増幅プロトコルには、25μL反応体積中、1xqPCR緩衝液、0.4mM dNTP、および2.5UのTaqポリメラーゼが含まれた。1000コピー〜5コピーで、それぞれDNA A、B、およびCの100〜120bp断片を増幅する、1x各オリゴ混合物、A−FAM、B−HEX、およびC−CY5を用いて、PCR増幅を行った。qPCR反応緩衝液中で、DNAターゲット連続希釈を調製した。dNTP、トレハロース、Taq酵素およびオリゴ混合物を含有するアッセイ混合物をまず5μL最終体積で調製し、そこに20μLのターゲット混合物を添加した。Applied Biosystems 2720サーマルサイクラー上でPCR実験を行った。反応条件は、95℃10分間の最初の変性、その後、95℃30秒間、56℃1分間を40周期であった。PCR後、20μLの各試料を3%アガロースゲル上に装填し、そしてAlpha Innotech Corporation AlphaImager HPを用いてUV光下で可視化した。DNA標準マーカーは、100bp DNAラダー、カタログ番号N3231Sであり、New England Biolabs, 240 County Road Ipswich, MA 01938 USAより入手可能であった。
【0090】
TaqMan(登録商標)プローブ検出を用いたリアルタイムPCR実験
実施例5
図12〜15に示す実験で用いるPCR増幅には、25μL反応体積中、1xqPCR緩衝液、0.4mM dNTP、および2.5UのTaqポリメラーゼが含まれた(図14Bでは25および50μL反応体積)。1280コピー〜5コピーで、それぞれDNA A、B、Cおよびヒト胎盤DNAの100〜120bp断片を増幅する、1x各オリゴ混合物、A−FAM、B−HEX、C−CY5、およびHBB2を用いて、PCR増幅を行った。qPCR反応緩衝液中で、DNAターゲット連続希釈を調製した。dNTP、トレハロース、Taq酵素およびオリゴ混合物を含有するアッセイ混合物をまず5μL最終体積で調製し、そこに20μLのターゲット混合物を添加した。反応条件は、95℃10分間での最初の変性、その後、95℃30秒間、56℃1分間を40周期であった。
【0091】
本明細書に引用するすべての参考文献、特許および/または特許出願の適切な解説は、その全体が本明細書に援用される。
本発明は、その特定の態様に関連して、具体的に示され、そして記載されてきているが、当業者には、付随する請求項に含まれる本発明の範囲から逸脱することなく、形式および詳細において多様な変化を作製可能であることが理解されるであろう。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、Stephen Piconeらによる、2009年11月6日に出願された米国仮出願第61/258,684号、表題“Composition and Method for Synthesizing a Deoxyribonucleotide Chain Using a Double Stranded Nucleic Acid Complex with a Thermostable Polymerase”の優先権を請求する。
【0002】
上記出願が教示する事項の全体は、本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
DNAポリメラーゼは、デオキシリボヌクレオチドの核酸鎖への重合を触媒する酵素である。ポリメラーゼは、PCR増幅、すなわちDNA鎖をコピーするかまたは増幅するプロセスを含む、多様なDNA技術において用いられる。特定のPCR法に伴う大きな問題は、非特異的増幅産物の生成(例えば望ましくないDNA鎖の生成)である。多くの場合、これは、実際の熱サイクリング法自体の前の、副反応の非特異的オリゴヌクレオチド・プライミングおよび非ターゲット・オリゴヌクレオチドの産生、例えば、バックグラウンドDNAのミスプライミングおよび/またはプライマー・オリゴマー化およびそれに続くプライマー伸張事象のためである。これはしばしば、熱安定性DNAポリメラーゼが周囲温度で中程度に活性であるために起こる。
【0004】
この問題を最小化するため、「ホットスタート」PCRとして知られる方法が実行可能である。ホットスタートPCRにおいて、増幅反応に必須の1つの構成要素が、反応混合物から分離されているか、または反応混合物の温度が最初に上昇するまで、不活性状態で維持される。ポリメラーゼはこれらの条件下で機能不能であるため、プライマーが非特異的に結合可能である期間の間、プライマー伸張はより少ない。この効果を達成するため、いくつかの方法が適用されてきている:DNAポリメラーゼの物理的分離(例えば固形ワックスのバリアを用いて、DNAポリメラーゼを反応混合物から分離する)、DNAポリメラーゼの化学修飾(例えばDNAポリメラーゼが可逆的に不活性化される)、以下:ポリメラーゼDNA抗体(例えば抗体は周囲温度で結合し、そして増幅中のより高い温度で解離する)、核酸添加物、アプタマー(例えばループ、シュードノット、および抗体のように働く複雑な三次構造を形成するヌクレオチドの一本鎖型)、ブロック化プライマー等、によるDNAポリメラーゼ阻害、が適用されてきている。これらの方法のいくつかは、不都合であるか、または働かず、それと同時に、非特異的増幅を最小化することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、増幅プロセス自体の前だけでなく、熱サイクリング・プロセス中もまた、非特異的プライミングおよびプライマー伸張の阻害を可能にする、増幅反応のためのユニークでそして代替となる組成物および方法が存在する必要がある。より具体的には、ホットスタートPCRのための代替となるそして改善された組成物および方法が存在する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、核酸増幅において使用するためのブロッキング二本鎖核酸複合体(DSC)に関する。1つの態様において、複合体には、単離二本鎖核酸分子であって、約9〜約40核酸塩基の間を含む第一の配列を有する第一の核酸鎖、および第一の配列に相補的な約9〜約40核酸塩基の間を含む第二の配列を有する核酸第二鎖を有する、ここで、第一の核酸鎖および第二の核酸鎖が各々3’端および5’端を有し、そして二本鎖核酸分子が約50%〜約70%の間の範囲のシトシン(C)およびグアニン(G)のパーセンテージを有する、前記二本鎖核酸分子が含まれる。二本鎖核酸複合体にはまた、第一の核酸鎖、第二の核酸鎖、または両方の3’端または5’端に共有結合したブロッキング分子もまた含まれる。1つの側面において、二本鎖核酸分子(例えばDNA、またはRNA)は、約25℃〜約90℃の間の範囲の融点を有する。1つの態様において、本発明のDSCには、ウラシル塩基の導入がさらに含まれる。1またはそれより多いウラシル塩基をDSCに付加すると、古細菌の種由来のDNAポリメラーゼを用いた際、室温でのポリメラーゼ活性がさらに減少する。特に、DSCの第一の配列または第二の配列は、1またはそれより多いウラシル塩基をさらに含む。
【0007】
ブロッキング分子の例には、デオキシチミジン、ジデオキシヌクレオチド、3’リン酸化、ヘキサンジオール、スペーサー分子、1’2’−ジデオキシリボース、2’−O−メチルRNA、および/またはロックド核酸(LNA)が含まれる。1つの態様において、ブロッキング分子は以下の構造を有する:
【0008】
【化1】
【0009】
本発明はまた、核酸増幅において使用するためのブロッキング二本鎖核酸複合体であって;複合体が、単離二本鎖核酸分子であって、約9〜約40核酸塩基の間を含む第一の配列を有する第一の核酸鎖、および第一の配列に相補的な約9〜約40核酸塩基の間を含む第二の配列を有する核酸第二鎖を有する、ここで、第一の核酸鎖および第二の核酸鎖が各々3’端および5’端を有する、前記単離二本鎖核酸分子を含み、そして二本鎖核酸分子が約25℃〜約90℃の間の範囲の融点を有する、前記複合体にも関する。この態様には、第一の核酸鎖、第二の核酸鎖、または両方の3’端または5’端に共有結合したブロッキング分子が含まれる。1つの側面において、第一の配列または第二の配列は、1またはそれより多いウラシル塩基をさらに含む。
【0010】
さらに別の態様において、本発明のブロッキング二本鎖核酸複合体は、以下の配列:配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、またはその組み合わせ;配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、またはその組み合わせの相補体;あるいは配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、またはその組み合わせにハイブリダイズする配列の1つと約70%より大きいかまたは約70%に等しい同一性の第一の核酸配列を有する第一の核酸鎖を有する単離二本鎖核酸分子を含む複合体を有する。該複合体にはさらに、第一の核酸配列に相補的な約9〜約40核酸塩基の間を含む第二の配列を有する第二の核酸鎖が含まれ、ここで、第一の核酸鎖および第二の核酸鎖は各々3’端および5’端を有し、二本鎖核酸分子は約25℃〜約90℃の間の範囲の融点を有する。該複合体はまた、第一の核酸鎖、第二の核酸鎖、または両方の3’端または5’端に共有結合したブロッキング分子も有する。1つの側面において、第一および第二の核酸鎖の3’端はブロッキング分子を含み、そしてブロッキング二本鎖核酸複合体が核酸ポリメラーゼと相互作用した際、それによって非特異的増幅産物が減少する。好ましい態様において、複合体は約48.9℃の融点を有する。
【0011】
本発明にはまた、核酸増幅のための組成物も含まれる。特定の態様において、組成物には、緩衝剤、本明細書記載のブロッキング二本鎖核酸複合体、および熱安定性ポリメラーゼが含まれる。ポリメラーゼは、Taq DNAポリメラーゼ;BST DNAポリメラーゼ;PFU DNAポリメラーゼ;Klenow DNAポリメラーゼ;T7 DNAポリメラーゼ;T4 DNAポリメラーゼ;Phi29 DNAポリメラーゼ;またはRB69 DNAポリメラーゼなどのDNAポリメラーゼであってもよい。濃度範囲は、例えば、ポリメラーゼ5,000U/mLごとに約2μM核酸複合体から、ポリメラーゼ5,000U/mLごとに2mM核酸複合体の間であってもよい。緩衝剤は、TRIS緩衝剤、MOPS、またはHEPES緩衝剤であってもよい。ターゲット核酸分子を増幅する方法が、本発明にさらに含まれる。該方法には、ターゲット核酸分子をDNAポリメラーゼおよび本明細書記載の二本鎖核酸複合体と接触させる、ここで、二本鎖核酸複合体は、約25℃〜約90℃の範囲の温度でDNAポリメラーゼに結合する工程が含まれる。1またはそれより多い非特異的増幅産物または二次産物は、二本鎖核酸複合体と接触させなかったものに比較した際、減少する。二本鎖核酸複合体と接触させなかったターゲット核酸分子に関するポリメラーゼ活性に比較した際、室温(例えば約20℃〜25℃の間)でのポリメラーゼ活性は、約50%〜約90%の間の範囲で減少する(例えば約50%、60%、70%、80%、または90%減少)。さらに、本発明の方法は、1つの側面において、より高い収量を提供する。特定の態様において、該二本鎖核酸複合体と接触させていないターゲット核酸分子に関して得られる量と比較した際、増幅されるターゲット核酸分子の量は、約2X〜約20Xの間の範囲で増加する(例えば2X、3X、4X、5X、6X、7X、8X、9X、10X、15Xまたは20Xの増加)。方法が、古細菌の種由来のDNAポリメラーゼおよび1またはそれより多いウラシル塩基を有するDSCを利用する、さらに別の態様において、本明細書に記載するように、室温でのポリメラーゼ活性もまた減少する。
【0012】
本発明によって具現化されるさらなる方法には、緩衝剤、ターゲット核酸分子、1またはそれより多いプライマー、DNAポリメラーゼ、アデニン、グアニン、シトシンおよびチミンの供給、ならびに本明細書記載の二本鎖核酸複合体を混合することによって、ターゲット核酸分子を増幅する工程が含まれる。工程にはさらに、1またはそれより多いサイクルで、温度を増加させることによって、ターゲット核酸分子の増幅を可能にする工程も含まれ、ここで、温度は、約25℃〜約90℃の範囲である。該方法は、1またはそれより多い非特異的増幅産物または二次産物の産生が、該二本鎖核酸複合体と接触させなかったものに比較した際、減少することを可能にする。1つの態様において、本明細書にさらに記載するように、室温でのポリメラーゼ活性が減少し、そして/または収量増加が得られる。
【0013】
本発明には、さらに、核酸増幅のためのキットが含まれる。こうしたキットまたは系には、本明細書記載のブロッキング二本鎖核酸複合体、およびポリメラーゼが含まれる。ポリメラーゼは、例えば、Taq DNAポリメラーゼ;BST DNAポリメラーゼ;PFU DNAポリメラーゼ;Klenow DNAポリメラーゼ;T7 DNAポリメラーゼ;T4 DNAポリメラーゼ;Phi29 DNAポリメラーゼ;またはRB69 DNAポリメラーゼであってもよいDNAポリメラーゼである。
【0014】
好適には、請求する本発明は、ホットスタートPCR増幅プロセスを改善するための組成物および方法を提供する。具体的には、本発明は、増幅プロセス前およびプロセス中の非特異的プライミングおよびプライマー伸張を阻害する組成物を提供する。さらに、本発明は、驚くべきことに、有意な量の非特異的増幅産物を伴わずにPCR反応が起こることを可能にし、そしてPCRを実行するための改善された組成物を提供する。
【0015】
図面の簡単な説明
特許または出願ファイルは、着色された図を少なくとも1つ含有する。着色図を含むこの特許または特許出願刊行物のコピーは、要望があり、そして必要な料金の支払いがあれば、特許局によって提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、pUC19プラスミドの1.1kb領域の増幅を示す。レーン1および2には、それぞれPCR緩衝液IおよびII中での3’端キャップ化プライマーを用いた反応が含まれ、オリゴヌクレオチドの3’端で取り込まれた阻害性分子が、DNAポリメラーゼによる伸長を効果的に防止することを示す。レーン3および4は、増幅産物を生じる、非修飾プライマーを用いた反応を示す。レーンMは、DNA標準マーカーを示す。
【図2】図2は、反応プライマーとして同じ配列を有する、ブロッキング剤を含む二本鎖核酸分子の存在下および非存在下での、pUC19プラスミドの1.1kb領域のPCR産物増幅を示す。レーン1および2には、PCR緩衝液I中で行った反応が含まれ、レーン3および4は、PCR緩衝液II中で行われた。レーンMは、DNA標準マーカーを示す。
【図3】図3は、DSC分子の存在下でのPCR増幅を例示する。すべての反応は、競合外来(foreign)DNAとして、1ngの大腸菌(E. coli)ゲノムDNAを含有する。奇数レーンは、ラムダ・テンプレートDNAを含み(レーン11を除く)、一方、偶数レーンはテンプレートDNAを含有しない。反応11は、緩衝液I、DNTPを有するが、DSC分子、テンプレート、および酵素を含まない陰性対照である。レーンMは、DNA標準マーカーを示す。
【図4】図4は、ラムダDNAからの1.9kb領域の増幅における比較を示す。レーン1〜4は、DSC分子の存在下での、Taq(Enzymatics, Inc.(マサチューセッツ州ビバリー))およびTaq−B DNAポリメラーゼ(貯蔵緩衝液中の−および+安定化剤)を含有する。レーン5〜7は、商業的に入手可能なホットスタートDNAポリメラーゼを含有する。すべてのPCR反応をラムダDNAおよび1ngの混入大腸菌ゲノムDNAの存在下で行った。レーンMは、DNA標準マーカーを示す。
【図5A】図5AおよびBは、DSC分子の存在下でのラムダDNAの1.9kb領域の増幅を強調する。Aにおいて、順方向5’CTGGCTGACATTTTCG−3’(配列番号17)および逆方向5’TATCGACATTTCTGCACC−3’(配列番号18)プライマーを用いて;Bにおいて、順方向5’GAAGTCAACAAAAAGGAGCTGGCTGACATTTTCG−3’(配列番号19)および逆方向5’CAGCAGATACGGGATATCGACATTTCTGCACC−3’(配列番号20)プライマーを用いて、PCR増幅を行った。0.523pgのラムダDNAおよび1ngの大腸菌ゲノムDNAを用いてPCR増幅を行った。2つ組で反応を行った(図5A中、レーン1および2、3および4;図5B中、レーン1および3、2および4)。
【図5B】図5AおよびBは、DSC分子の存在下でのラムダDNAの1.9kb領域の増幅を強調する。Aにおいて、順方向5’CTGGCTGACATTTTCG−3’(配列番号17)および逆方向5’TATCGACATTTCTGCACC−3’(配列番号18)プライマーを用いて;Bにおいて、順方向5’GAAGTCAACAAAAAGGAGCTGGCTGACATTTTCG−3’(配列番号19)および逆方向5’CAGCAGATACGGGATATCGACATTTCTGCACC−3’(配列番号20)プライマーを用いて、PCR増幅を行った。0.523pgのラムダDNAおよび1ngの大腸菌ゲノムDNAを用いてPCR増幅を行った。2つ組で反応を行った(図5A中、レーン1および2、3および4;図5B中、レーン1および3、2および4)。
【図6】図6は、多様な融点(レーン1〜10)および阻害性ブロッキング分子(レーン15〜17)を持つDSC分子の存在下での、ヒト胎盤DNAのβ−アクチン遺伝子の653bp断片の増幅を示す。
【図7A】図7AおよびBは、オリゴヌクレオチド混合物Bを用いたDNA Bからの100bp産物の増幅を示す。レーン1〜3は、異なるDSC分子の存在下でのPCR増幅を示す。レーン4は、本発明のDSC分子の非存在下での増幅結果を示す。レーン5における増幅は、商業的に入手可能な化学修飾ホットスタートTaqポリメラーゼを用いて行われる。レーンMはDNA標準マーカーを示す。すべてのレーンは1000コピーのDNA Bを含有する。各反応におけるDSC分子の最終濃度は0.4μMである。図7A中のPCR増幅は、ベンチトップでのプレインキュベーションを伴わず、セットアップ直後に行われた。
【図7B】図7AおよびBは、オリゴヌクレオチド混合物Bを用いたDNA Bからの100bp産物の増幅を示す。レーン1〜3は、異なるDSC分子の存在下でのPCR増幅を示す。レーン4は、本発明のDSC分子の非存在下での増幅結果を示す。レーン5における増幅は、商業的に入手可能な化学修飾ホットスタートTaqポリメラーゼを用いて行われる。レーンMはDNA標準マーカーを示す。すべてのレーンは1000コピーのDNA Bを含有する。各反応におけるDSC分子の最終濃度は0.4μMである。図7BにおけるPCR増幅は、23℃の周囲温度で24時間インキュベーションした後、行われた。
【図8】図8は、オリゴヌクレオチド混合物Bを用いたDNA Bからの100bp産物の増幅を示す。レーン1〜4は、異なるDSC分子の存在下でのPCR増幅を示す。レーン5は、本発明のDSC分子の非存在下での増幅結果を示す。レーン6における増幅は、商業的に入手可能な化学修飾ホットスタートTaqポリメラーゼを用いて行われる。レーンMはDNA標準マーカーを示す。すべてのレーンは5コピーのDNA Bを含有する。レーン1および3におけるDSC分子の最終濃度は0.4μMであり、一方、レーン2および4におけるDSC分子の最終濃度は0.4μMである。PCR増幅は、ベンチトップでのプレインキュベーションを伴わず、セットアップ直後に行われた。
【図9】図9は、オリゴヌクレオチド混合物Bを用いたDNA Bからの100bp産物の増幅を例示する。レーン1〜5は、異なるDSC分子の存在下でのPCR増幅を示す。レーン6は、本発明のDSC分子の非存在下での増幅結果を示す。レーン7における増幅は、商業的に入手可能な化学修飾ホットスタートTaqポリメラーゼを用いて行われる。レーンMはDNA標準マーカーを示す。すべてのレーンは5コピーのDNA Bを含有する。レーン1〜5におけるDSC分子の最終濃度は4μMである。PCR増幅は、23℃の周囲温度で24時間インキュベーションした後、行われた。
【図10A】図10A〜Cは、それぞれ、オリゴヌクレオチド混合物A、B、およびCを用いたDNA A、B、およびCからの100〜120bp産物の増幅を示す。レーン1〜5は、異なるDSC分子の存在下でのPCR増幅を示す。レーン6は、本発明のDSC分子の非存在下での増幅結果を示す。レーン7における増幅は、商業的に入手可能な化学修飾ホットスタートTaqポリメラーゼを用いて行われる。レーンMはDNA標準マーカーを示す。すべてのPCR増幅反応は5コピーのDNA Bを含有する。各反応におけるDSC分子の最終濃度は4μMである。PCR増幅は、ベンチトップでのプレインキュベーションを伴わず、セットアップ直後に行われた。
【図10B】図10A〜Cは、それぞれ、オリゴヌクレオチド混合物A、B、およびCを用いたDNA A、B、およびCからの100〜120bp産物の増幅を示す。レーン1〜5は、異なるDSC分子の存在下でのPCR増幅を示す。レーン6は、本発明のDSC分子の非存在下での増幅結果を示す。レーン7における増幅は、商業的に入手可能な化学修飾ホットスタートTaqポリメラーゼを用いて行われる。レーンMはDNA標準マーカーを示す。すべてのPCR増幅反応は5コピーのDNA Bを含有する。各反応におけるDSC分子の最終濃度は4μMである。PCR増幅は、ベンチトップでのプレインキュベーションを伴わず、セットアップ直後に行われた。
【図10C】図10A〜Cは、それぞれ、オリゴヌクレオチド混合物A、B、およびCを用いたDNA A、B、およびCからの100〜120bp産物の増幅を示す。レーン1〜5は、異なるDSC分子の存在下でのPCR増幅を示す。レーン6は、本発明のDSC分子の非存在下での増幅結果を示す。レーン7における増幅は、商業的に入手可能な化学修飾ホットスタートTaqポリメラーゼを用いて行われる。レーンMはDNA標準マーカーを示す。すべてのPCR増幅反応は5コピーのDNA Bを含有する。各反応におけるDSC分子の最終濃度は4μMである。PCR増幅は、ベンチトップでのプレインキュベーションを伴わず、セットアップ直後に行われた。
【図11A】図11A〜Cは、それぞれ、オリゴヌクレオチド混合物A、B、およびCを用いたDNA A、B、およびCからの100bp産物の増幅を示す。レーン1〜5は、異なるDSC分子の存在下でのPCR増幅を示す。レーン6は、本発明のDSC分子の非存在下での増幅結果を示す。レーン7における増幅は、商業的に入手可能な化学修飾ホットスタートTaqポリメラーゼを用いて行われる。レーンMはDNA標準マーカーを示す。すべてのレーンは5コピーのDNA Bを含有する。各反応におけるDSC分子の最終濃度は4μMである。図7BにおけるPCR増幅は、23℃の周囲温度で24時間インキュベーションした後、行われた。
【図11B】図11A〜Cは、それぞれ、オリゴヌクレオチド混合物A、B、およびCを用いたDNA A、B、およびCからの100bp産物の増幅を示す。レーン1〜5は、異なるDSC分子の存在下でのPCR増幅を示す。レーン6は、本発明のDSC分子の非存在下での増幅結果を示す。レーン7における増幅は、商業的に入手可能な化学修飾ホットスタートTaqポリメラーゼを用いて行われる。レーンMはDNA標準マーカーを示す。すべてのレーンは5コピーのDNA Bを含有する。各反応におけるDSC分子の最終濃度は4μMである。図7BにおけるPCR増幅は、23℃の周囲温度で24時間インキュベーションした後、行われた。
【図11C】図11A〜Cは、それぞれ、オリゴヌクレオチド混合物A、B、およびCを用いたDNA A、B、およびCからの100bp産物の増幅を示す。レーン1〜5は、異なるDSC分子の存在下でのPCR増幅を示す。レーン6は、本発明のDSC分子の非存在下での増幅結果を示す。レーン7における増幅は、商業的に入手可能な化学修飾ホットスタートTaqポリメラーゼを用いて行われる。レーンMはDNA標準マーカーを示す。すべてのレーンは5コピーのDNA Bを含有する。各反応におけるDSC分子の最終濃度は4μMである。図7BにおけるPCR増幅は、23℃の周囲温度で24時間インキュベーションした後、行われた。
【図12】図12は、CY5蛍光色素による検出を用いた、DNA Cからの100bp産物の形成のリアルタイムPCR分析を示す。1280〜5コピーのDNA Cを含有する反応を、4つ組で行った。各コピーレベルに関する平均Ct値±標準偏差を示す。0.6を越える標準偏差を太字で示す。等式線に関するR二乗値とともに、全体のPCR効率もまた示す。結果を斜線の印で示す。
【図13】図13は、HBB2オリゴ混合物を用いた、ヒト胎盤DNAからの100bp産物の形成のリアルタイムPCR分析を示す。1280〜5コピーのDNA Cを含有する反応を、4つ組で行った。各コピーレベルに関する平均Ct値±標準偏差を示す。0.6を越える標準偏差を太字で示す。等式線に関するR二乗値とともに、全体のPCR効率もまた示す。結果を斜線の印で示す。
【図14A】図14AおよびBは、HEX蛍光色素による検出を用いた、DNA Bからの100bp産物の形成のリアルタイムPCR分析を例示する。1000、100、および10コピーのDNA Bを含有する反応を、4つ組で行った。各コピーレベルに関する平均Ct値±標準偏差を示す。図14Aは、2.5UのTaq−Bおよび0.4μM最終濃度のDSC1を含む25μL反応における産物の増幅を示す。
【図14B】図14AおよびBは、HEX蛍光色素による検出を用いた、DNA Bからの100bp産物の形成のリアルタイムPCR分析を例示する。1000、100、および10コピーのDNA Bを含有する反応を、4つ組で行った。各コピーレベルに関する平均Ct値±標準偏差を示す。図14Bは、2.5UのTaq−Bおよび0.2μM最終濃度のDSC1を含む50μL反応における産物の増幅曲線を示す。
【図15A】図15A〜Cは、HEX蛍光色素による検出を用いた、DNA Bからの100bp産物の形成のリアルタイムPCR分析を例示する。1000、100、および10コピーのDNA Bを含有する反応を、4つ組で行った。反応中のDSC5分子の最終濃度を、1x〜20xで示し、ここで1xは0.2μMであり、そして20xは4μMである。1xのDSC1は、反応中の0.2μM最終濃度を示した。DSC分子を含まないTaq−BおよびFastStartもまた示した。図15Aは、各カテゴリーにおける各コピーレベルに関する平均Ct値を示す。全PCR効率を示す。
【図15B】図15A〜Cは、HEX蛍光色素による検出を用いた、DNA Bからの100bp産物の形成のリアルタイムPCR分析を例示する。1000、100、および10コピーのDNA Bを含有する反応を、4つ組で行った。反応中のDSC5分子の最終濃度を、1x〜20xで示し、ここで1xは0.2μMであり、そして20xは4μMである。1xのDSC1は、反応中の0.2μM最終濃度を示した。DSC分子を含まないTaq−BおよびFastStartもまた示した。図15Bは、Taq−BおよびFastStartのみとともに、各Taq−B DSC組み合わせに関する増幅曲線を例示する。
【図15C】図15A〜Cは、HEX蛍光色素による検出を用いた、DNA Bからの100bp産物の形成のリアルタイムPCR分析を例示する。1000、100、および10コピーのDNA Bを含有する反応を、4つ組で行った。反応中のDSC5分子の最終濃度を、1x〜20xで示し、ここで1xは0.2μMであり、そして20xは4μMである。1xのDSC1は、反応中の0.2μM最終濃度を示した。DSC分子を含まないTaq−BおよびFastStartもまた示した。図15Cは、各カテゴリーにおける各コピーレベルに関する最終振幅を示す。結果を斜線の印で示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい態様の説明は以下の通りである。
本発明は、増幅反応において使用するための核酸複合体、該核酸複合体を用いる方法、ポリメラーゼおよび核酸複合体を含有する緩衝液、ならびに核酸複合体およびポリメラーゼを含有するキットに関する。本明細書に記載するように、本発明には、増幅反応を改善する核酸複合体が含まれる。核酸複合体は、ブロッキング分子を含む二本鎖オリゴヌクレオチドである。本発明の核酸複合体はまた、二本鎖複合体(DSC)としても知られる。
【0018】
特に、本発明は、各鎖の末端でブロッキング分子に共有結合された短い二本鎖オリゴヌクレオチドで作製される核酸複合体を用いる。他の態様において、ブロッキング分子は、核酸複合体の任意の部分(例えば中央部分)に分散されるかまたは付着されていてもよい。核酸複合体は、ポリメラーゼに結合し、そして増幅反応の性能を増進させる。核酸リガンドは、増幅反応の性能を改善する一方、それ自体は、反応中、ターゲット配列または別の非特異的配列の増幅のためのプライマーとしては作用不能であるように注意深く設計される。
【0019】
以下のいくつかの組み合わせ:DSCおよびその誘導体、多数のDNAポリメラーゼ、多数のブロッキング分子、および多数の濃度の核酸複合体を用いて、実施例セクションに記載する、やはり詳述する実験を行った。本発明の方法および組成物は、他の核酸複合体および他のポリメラーゼと適合させて、核酸増幅反応の性能を改善させることも可能である。
【0020】
本発明にしたがって、核酸複合体は、最高約90℃の融点を有してもよい。核酸複合体に関する融点の範囲は、約25℃より高く、例えば約45℃〜約75℃、または例えば約45℃〜約55℃(例えば約25℃〜約90℃の間の範囲)であってもよい。最も好ましい態様において、核酸複合体は、約48.9℃の融点を有する。この融点範囲は、当業者に知られ、そして本明細書に示すような多様な増幅反応において有用である。
【0021】
本明細書に援用される、Owczarzy, R.ら, Biochemistry, 2004 Mar 30;43(12):3537−54、およびOwczarzy, R.ら, Biochemistry, 2008 May 13;47(19):5336−53に記載されるような計算を用いて、Integrated DNA Technologies, 1710 Commercial Park, Coralville, IA 52241 USAによって提供されるような最近接熱力学的パラメータを用いて、核酸複合体の融点(Tm)を計算する。
【0022】
核酸複合体は、多様な適用における使用のため、ある範囲の濃度を有してもよい。核酸複合体に関する濃度範囲は、ポリメラーゼ5,000U/mLに対して約2μM DSCより大きく、最大では、ポリメラーゼ5,000U/mLごとに2mM DSCであってもよい。より好ましくは、範囲は、ポリメラーゼ5,000U/mLに対して約20μM DSCから、最大では、ポリメラーゼ5,000U/mLごとに200μM DSCである。1つの態様において、ポリメラーゼに対するDSCの最も好ましい濃度は、200μM DSCに対するTaq約5,000U/mLである。
【0023】
2倍連続希釈法を用いて、Taq DNAポリメラーゼの比活性を測定した。減少グリセロール(5%)含有Taq−B DNAポリメラーゼ貯蔵溶液中で、酵素希釈を作製し([Taq−B]f=0.009〜0.0001μg/μL)、そして12.5μgウシ胸腺DNA、25mM TAPS(pH9.3)、50mM KCl、1mM DTT、4mCi/mL 3H−dTTPおよび200μM dNTPを含有する50μL反応に添加した。反応を75℃で10分間インキュベーションし、氷中に突っ込み、そしてSambrookおよびRussell(Molecular Cloning, v3, 2001, pp. A8.25−A8.26)の方法を用いて分析した。
【0024】
本発明は、例えばブロッキング分子を伴う二本鎖DNAオリゴヌクレオチドに由来する、新規単離核酸複合体、表1を提供する。核酸複合体は、バックグラウンドDNAのミスプライミングおよび/またはプライマー・オリゴマー化などの副反応による、非特異的増幅産物の産生または非ターゲット・オリゴヌクレオチドの増幅を阻害する能力を示す。核酸複合体を含有する増幅反応は、ターゲット・オリゴヌクレオチドの産生を増進させることが見出された。さらに、表1の核酸複合体は、互いに30%の配列同一性を有する。
【0025】
表1
【0026】
【表1】
【0027】
1つの態様において、本発明に含まれる好ましい核酸複合体の配列を表1に示す。表中で用いる略語は:「InvT」=反転(inverted)デオキシチミジン(dT);「ホスホ」=リン酸基である。核酸複合体は、多くの配列に類似性を示し、BLAST(Altschul, S.F.ら, J. Mol. Biol., 215:403−410(1990))を用いた類似性検索において同定されるような、1未満のE値を有する。
【0028】
用語「核酸複合体」および「二本鎖複合体」(DSC)は、本明細書において、同じ意味を有し、そして交換可能に用いられる。
本発明はさらに、核酸複合体であって、長さ約16ヌクレオチドの二本鎖オリゴヌクレオチドが、いずれかの端に付着したブロッキング分子を伴い、最適な融点のための配列で作製される一方で、二本鎖核酸のいずれかの端で高いGCヌクレオチド・パーセンテージを有する、前記核酸複合体に関する。本発明は、以下の方式の1またはそれより多くで修飾されている核酸複合体に関する:増幅反応における伸長を防止する方式、非特異的増幅産物の産生を防止する融点を有する方式、いずれかの端で、AT結合より高い融点を有し、そしてその結果、核酸複合体を二本鎖としてよりよく維持可能であるGCを高いパーセンテージで有する方式。本発明はさらに、ブロッキング分子を伴う二本鎖核酸、およびポリメラーゼを含有する貯蔵緩衝液に関し;そしてまた、核酸複合体を含む反応緩衝液に関する。
【0029】
二本鎖核酸複合体の増進された安定性によって、他のホットスタート法が使用不能(prohibitive)であろう条件下での使用が可能になるが、これは、該二本鎖核酸複合体が、上昇した温度で不可逆的に変性せず、それによって該核酸複合体を使用して、非特異的増幅産物を減少させることが可能な機会が増加するためである。例えば、多数の特異的プライマーを用いたマルチプレックスPCRにおける増幅では、非特異的増幅産物に有利な状況が反応収量に負の影響を有するが、化学修飾タイプおよび抗体タイプのホットスタート法が、最初の変性加熱工程後に、大部分、非活性化される一方、本発明の核酸複合体は、反応混合物が非特異的プライミングに対して最も脆弱な時点である最初の数周期の増幅中に相互作用し続けるであろう。さらに、該核酸複合体を、限定されるわけではないが、多様な数のタンデム反復(VNTR)PCR、非対称PCR、長鎖PCR、ネステッドPCR、定量的PCR、タッチダウンPCR、アセンブリPCR、コロニーPCR、逆転写PCR、ライゲーション仲介PCR、およびメチル化特異的PCRで用いてもよい。
【0030】
ホットスタートPCR反応において二本鎖核酸複合体を使用すると、驚くべきことに、所望のターゲット配列の増幅収量が改善される一方、また、望ましくない配列のオフ−ターゲット増幅が有意に減少する。これは、室温でのポリメラーゼ活性を減少させることによって達成され;以上はどちらも本明細書に開示するようなDSC技術を使用しない、典型的なホットスタートPCR反応に比較した場合である(実施例5および図14〜15を参照されたい)。1つの態様において、ホットスタートPCR反応におけるDSCの使用は、収量の少なくとも2倍(2X)の改善を提供する。別の態様において、こうした使用は、収量の少なくとも5倍(5X)の改善を提供し、一方、別の態様において、こうした使用は、収量の7倍(7X)または10倍(10X)あるいはそれより高い改善を提供する。1つの態様において、収量の増加する量は、本発明の方法または組成物に供されていない増幅ターゲット核酸分子の量に比較した際、約2Xの増加から約20Xの増加(例えば2X、3X、4X、5X、6X、7X、8X、9X、10X、15Xまたは20X増加)の範囲である。同様に、1つの態様において、ホットスタートPCR反応におけるDSCの使用は、室温(例えば約20℃〜約25℃の間)でのポリメラーゼ活性における少なくとも50%の減少を提供する。さらに別の態様において、こうした使用は、室温でのポリメラーゼ活性における少なくとも70%の減少を提供し、一方、さらに別の態様において、こうした使用は、室温でのポリメラーゼ活性における80%またはそれより高い減少を提供する。1つの側面において、本発明は、約20℃〜25℃の間の温度でポリメラーゼ活性の減少を提供し、ここで、減少は、ターゲット核酸分子が本発明のDSCに供されていないポリメラーゼ活性に比較した際、約50%〜約90%の間(例えば約50%、60%、70%、80%または90%の減少)の範囲である。ポリメラーゼ活性を評価するための方法は、当該技術分野に周知であり、そしてこれには、標識ヌクレオチド取り込みアッセイが含まれる。簡潔には、検出可能標識が核酸分子内に取り込まれることも可能であり、そしてアッセイを行って、例えばApplied Biosystems(Life Technologies Corporation、カリフォルニア州カールスバッド)の、例えば蛍光に基づく自動化配列決定装置上で、ポリメラーゼ活性を測定することも可能である。検出可能標識の例には、蛍光色素、ストレプトアビジン・コンジュゲート、磁気ビーズ、デンドリマー、放射標識、酵素、比色標識、ジゴキシゲニン、ビオチン、ナノ粒子、および/またはナノ結晶が含まれる。標識を取り込むための方法は、当該技術分野に知られる。ポリメラーゼアッセイを測定するためのいくつかのアッセイが存在する。一例には、上述のように、DNAポリメラーゼアッセイが、新鮮に合成されるDNA内に修飾ヌクレオチドを取り込むDNA依存性DNAポリメラーゼの能力を利用する、標識ヌクレオチド取り込みアッセイが含まれる。特定のアッセイは、放射性である一方、他のものは非放射性標識を用いる(例えばカタログ番号1 669 885 Roche Molecular Biochemicals、インディアナ州インディアナポリス)。最適化された比の標識ヌクレオチドは、DNAポリメラーゼ活性によって、同じDNA分子内に取り込まれる。DNAポリメラーゼ活性に関するパラメータとして、任意の数の検出法を用いて、合成されたDNAの検出および定量化を評価することも可能である。
【0031】
同様に、PCR反応収量を評価するための方法が当該技術分野に周知であり、そしてこれには、定量的PCR(qPCR)法が含まれる。例えば、収量を標識してもよく、そしてPCRの各サイクル後、リアルタイムPCR装置が、標識(例えば蛍光)のレベルを測定してもよい。既知の量の連続希釈(例えば未希釈、1:4、1:16、1:64)のリアルタイムPCRによって、産生される標準曲線に結果を比較することによって、収量を決定することも可能である。Nolan, Taniaら, Nature Protocols 1:1559−1582(2006)。
【0032】
用語「プライマー」は、核酸鎖に対して相補的であるプライマー伸張産物の合成が誘導される条件下で、DNA合成の開始ポイントとして作用することが可能なオリゴヌクレオチドを指す。
【0033】
本発明の核酸複合体は、二本鎖RNAまたはDNAを含む、DNAまたはRNAであってもよい。本発明の別の態様において、核酸複合体のオリゴヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドまたは合成核酸分子で構成されていてもよい。修飾には、限定されるわけではないが、さらなる電荷、極性、水素結合、静電相互作用、および流動性(fluxionality)を取り込む他の化学基を核酸または核酸複合体全体に提供するものが含まれる。修飾には、限定されるわけではないが、主鎖修飾、メチル化、3’および5’修飾が含まれる。1つの側面において、ブロッキング分子は、修飾塩基、修飾糖、およびまたは修飾リン酸基を持つ1またはそれより多いヌクレオチド類似体を含む。
【0034】
別の態様において、複合体の核酸は、例えば、限定されるわけではないが、無塩基性部分、反転無塩基性部分、反転ヌクレオチド部分、反転デオキシヌクレオチド3’・3’連結、二糖ヌクレオチド、ロックド核酸、2’−アミノピリミジン、2’−フルオロピリミジン、2’−O−メチルヌクレオチド、ボラノリン酸ヌクレオチド間連結、5修飾ピリミジン、4’−チオピリミジン、ホスホロチオエート・ヌクレオチド間連結、を伴う修飾核酸である。
【0035】
別の態様において、核酸複合体のヌクレオチドは合成オリゴヌクレオチドである。合成オリゴヌクレオチドは、多様な分野で広く使用されており、例えば遺伝子操作を含む分子生物学において;療法において、例えばアンチセンス・オリゴヌクレオチド用に;診断のために、そしてリボザイムとしての触媒を作製するために使用されてきている。例えば、PCR技術は、遺伝物質の増幅のためのプライマーとしてオリゴヌクレオチドをルーチンに使用し、そして合成遺伝子は、効率的な発現のためにコドン使用を最適化することを含めて、多様な目的のために作製される。有用な合成オリゴヌクレオチドには、天然リボヌクレオチドおよびデオキシヌクレオチドを含有するポリマー、ならびに塩基修飾、糖修飾およびリン酸基修飾ヌクレオチドなどの修飾ヌクレオチドを含有するポリマーが含まれる。
【0036】
好ましくは、核酸複合体は、長さ約9〜40ヌクレオチド、そしてよりさらに好ましくは長さ約14〜20ヌクレオチドの二本鎖オリゴヌクレオチドで構成される。最も好ましい態様において、本発明のオリゴヌクレオチドは、長さ16〜19ヌクレオチドである。
【0037】
古細菌の種から単離されるDNAポリメラーゼ(例えばPFU DNAポリメラーゼ)は、読み取るヌクレオチド配列中でウラシル(U)塩基と出会うと、しばしば、失速(活性が)する。例えば、Hogrefeら Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99:596−602(2002); Foggら, Nat. Struct. Biol., 9(12):922−927(2002)を参照されたい。したがって、本発明にしたがって、本明細書に開示する二本鎖核酸複合体内に1またはそれより多いウラシル(U)塩基を導入すると、古細菌の種由来のDNAポリメラーゼを使用する場合、(PCR反応開始前の)室温での望ましくないポリメラーゼ活性が有意に減少する。したがって、本発明の1つの態様において、本明細書に開示するような二本鎖核酸分子であるが、さらに少なくとも1つのウラシル(U)塩基をさらに含む、二本鎖核酸分子を提供する。別の態様において、本明細書に開示する方法は、こうしたウラシル塩基を含むDSC、および古細菌の種由来の少なくとも1つの熱安定性DNAポリメラーゼを使用する。1つの態様において、ホットスタートPCR反応におけるウラシル含有DSCのこうした使用は、室温でのポリメラーゼ活性において、少なくとも50%の減少を提供する。さらに別の態様において、こうした使用は、室温でのポリメラーゼ活性において、少なくとも70%の減少を提供し;一方、さらに別の態様において、こうした使用は、室温でのポリメラーゼ活性において、80%またはそれより高い減少を提供する。1つの側面において、ウラシル含有DSCの本発明の使用は、約20℃〜25℃の間の温度でのポリメラーゼ活性減少を提供し、ここで、その範囲は、ターゲット核酸分子が本発明のDSCに供されていない場合のポリメラーゼ活性と比較した際、約50%〜約90%の範囲である(例えば約50%、60%、70%、80%、または90%減少)。ポリメラーゼ活性を評価するための方法は当該技術分野に周知であり、そしてこれには、標識ヌクレオチド取り込みアッセイが含まれる。
【0038】
本発明のDSCは、少なくとも2つの阻害法を有すると考えられる。第一に、DSCは、反転dTを伴わずに、そのままで、DNAポリメラーゼの阻害剤として有効に作用する。DNAポリメラーゼを含む溶液において、DNAポリメラーゼは、本発明のDSCに自然に結合するが、いくつかの二本鎖DNA配列は、他のものより有効な阻害を提供するようである。Kainzら BioTechniques 28:278−282(February 2000)を参照されたい。第二に、PCR反応が第一の周期を開始する際、DSCは、各鎖が分離する際に、DNAポリメラーゼから除去されることも可能であり、これは、反応温度がDSCの融点を超えるためである。冷却されると、DSCの各鎖は、典型的には、再編成されて、その相補体とハイブリダイズし、この場合は、DNAポリメラーゼの重合活性を阻害する。しかし、DSCが偶然、ターゲット・テンプレートDNAとハイブリダイズした場合でも、反転dTの存在によって、DNAポリメラーゼが伸長してそして競合性二次産物を形成するのが有効に阻害されるであろうし、これは、DNAポリメラーゼがさらなるヌクレオチドを付加するために必要な3’ヒドロキシル基が、反転dTには欠けているためである。さらに、反転dTは、エキソヌクレアーゼから保護される。その異常な構造のため、エキソヌクレアーゼは、反転dTを除去することが不可能であり、そうでなければ、反転dTが分解されて、DSCが非特異的にアニーリングしてそしてDNA伸長のプライマーとして作用することが可能になるであろう。
【0039】
1つの態様において、本発明の核酸分子は「単離」されており;本明細書において、「単離」核酸分子またはヌクレオチド配列は、通常ならば(天然に)(ゲノム配列におけるように)該遺伝子またはヌクレオチド配列に隣接するヌクレオチド配列に隣接されておらず、そして/または他の転写される配列から完全にまたは部分的に精製されている、核酸分子またはヌクレオチド配列を意味するよう意図される。例えば、本発明の単離核酸は、天然に存在する複雑な細胞環境に関して、実質的に単離されていてもよい。いくつかの場合、単離物質は、組成物、緩衝系または試薬混合物の一部を形成するであろう。したがって、核酸複合体の単離核酸分子またはヌクレオチド配列には、化学的にまたは組換え手段によって合成された核酸分子またはヌクレオチド配列が含まれてもよい。また、単離ヌクレオチド配列には、溶液中の部分的にまたは実質的に精製された核酸分子が含まれる。
【0040】
本発明には、1つの態様において、共有結合したブロッキング分子を含む配列番号1〜16のいずれか1つの核酸配列;配列番号1〜16のいずれか1つの隣接ヌクレオチドの約80%〜約100%の間を有する核酸配列;配列番号1〜16のいずれか1つの約7〜約20の間の隣接ヌクレオチドを有する核酸配列;その相補体;およびその組み合わせを有する、単離核酸分子が含まれる。
【0041】
本明細書において、用語「DNA分子」または「核酸分子」には、センスおよびアンチセンス鎖両方、cDNA、相補DNA、組換えDNA、RNA、完全または部分的合成核酸分子、PNAおよび他の合成DNA相同体が含まれる。ヌクレオチド「変異体」または「誘導体」は、該分子がPCR中の非特異的増幅を遮断する限り、1またはそれより多いヌクレオチド欠失、置換または付加を有する点で、引用されるヌクレオチド配列とは異なる配列である。
【0042】
やはり本発明に含まれるのは、核酸配列、DNAまたはRNA、PNAまたは他のDNA類似体であって、実質的にDNA配列に相補的であるものである。本明細書に定義するように、実質的に相補的な類似体または誘導体は、核酸が本発明の配列の正確な配列を反映する必要はないが、高ストリンジェンシー条件下で、配列が、本発明の核酸配列とのハイブリダイゼーションを可能にするために十分に類似でなければならないことを意味する。配列がPCR中の非特異的増幅を減少させるために十分な数の塩基を有するならば、例えば、非相補的塩基がヌクレオチド配列中に分散していてもよいし、あるいは配列が本発明の核酸配列よりも長くてもまたは短くてもよい。
【0043】
別の態様において、本発明には、本明細書記載の任意の核酸分子の、そして好ましくは配列番号1〜16の長さ少なくとも約7〜約20(例えば7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)の隣接ヌクレオチドを含有する分子が含まれる。あるいは、本発明の分子には、本明細書記載の配列のいずれか1つの、そして好ましくは配列番号1〜16の長さの約60%〜約100%の隣接ヌクレオチドを有する核酸配列が含まれる。
【0044】
本発明はまた、本明細書記載の核酸複合体の配列と実質的な同一性を有する核酸複合体にも関し;特に好ましいのは、本明細書記載のヌクレオチド配列と、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約50%、さらにより好ましくは少なくとも約70%、さらにより好ましくは少なくとも約80%、そしてさらにより好ましくは少なくとも約90%の同一性、そしてさらにより好ましくは95%の同一性を有するヌクレオチド配列である。この例において特に好ましいのは、本明細書記載の核酸複合体の活性を有する核酸複合体である。
【0045】
2つの核酸複合体の同一性パーセントを決定するため、最適比較目的のために配列を整列させる(例えば第一のヌクレオチド配列の配列中にギャップを導入してもよい)。次いで、対応するヌクレオチド位でヌクレオチドを比較する。第一の配列中の位が第二の配列中の対応する位と同じヌクレオチドで占められる場合、分子はその位で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、該配列によって共有される同一の位の数の関数である(すなわち同一性%=同一の位の数/位の総数X100)。
【0046】
本明細書記載の核酸複合体(例えば表1に示すような核酸複合体)は、増幅反応、例えばPCR中の非特異的増幅を減少させる際に有用である。一般的には、PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification(H.A. Erlich監修, Freeman Press, ニューヨーク州ニューヨーク, 1992); PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Innisら監修, Academic Press, カリフォルニア州サンディエゴ, 1990); Mattilaら, Nucleic Acids Res. 19, 4967(1991); Eckertら, PCR Methods and Applications 1, 17(1991); PCR(McPhersonら監修, IRL Press, Oxford);および米国特許第4,683,202号を参照されたい。
【0047】
用語「増幅する」は、特定のまたはターゲット・ポリヌクレオチドのコピー数を増加させることを指す。例えば、PCRは、ポリメラーゼ、および一方は増幅しようとする配列の一方の端で2つのポリヌクレオチド鎖の一方に相補的であり、そしてもう一方は他方の端で2つのポリヌクレオチド鎖のもう一方に相補的である2つのオリゴヌクレオチド・プライマーを用いて、ポリヌクレオチド配列を増幅するための方法である。新規に合成されるDNA鎖は、続いて、同じプライマー配列のためのさらなるテンプレートとして働きうるため、プライマー・アニーリング、鎖伸長、および解離の連続周期によって、所望の配列の迅速でそして非常に特異的な増幅が生じる。また、PCRを用いて、DNA試料における定義された配列の存在を検出することも可能である。1つの態様において、PCRを用いて試料のDNAを増幅するかまたは複製する。PCR法は、当該技術分野に知られ、そして例えば、Mullis, K.B. Scientific American 256:56−65(1990)に記載される。
【0048】
簡潔には、DNAポリメラーゼ酵素を使用してPCRを行い、そして該酵素には例えば、遺伝子操作された細菌から単離されるものが含まれる。好ましいポリメラーゼ酵素は、熱安定性生物、例えばサーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)由来(Taq)である。さらなるポリメラーゼが本明細書に記載され、そしてこれは、熱安定性古細菌ポリメラーゼを含む。プライマー、本発明のDSC複合体、および4つのヌクレオチド塩基(アデニン、グアニン、シトシンおよびチミン)の供給とともに、ポリメラーゼを提供する。特定の条件下で(例えば95℃30秒間)、DNAを変性させて、鎖が分離するのを可能にする。DNA溶液が冷却されるにつれて、プライマーがDNA鎖に結合し、そして次いで、溶液を加熱して、Taqポリメラーゼが効力を生じるのを促進する。Mullis, K.B. Scientific American 256:56−65(1990)。
【0049】
他の適切な増幅法には、リガーゼ連鎖反応(LCR)(WuおよびWallace, Genomics, 4:560(1989)、Landegrenら, Science, 241:1077(1988)を参照されたい)、転写増幅(Kwohら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173(1989))、および自己維持配列複製(Guatelliら, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 87:1874(1990))、および核酸に基づく配列増幅(NASBA)が含まれる。後者の2つの増幅法は、等温転写に基づく等温反応を伴い、これは増幅産物として、それぞれ約30または100対1の比で、一本鎖RNA(ssRNA)および二本鎖DNA(dsDNA)の両方を生じる。
【0050】
増幅されたDNAを放射標識して、そしてライブラリーまたは他の適切なベクターをスクリーニングするためのプローブとして用いて、相同ヌクレオチド配列を同定してもよい。当該技術分野に認識される方法によって、対応するクローンを単離してもよく、in vivo切除後にDNAを得てもよく、そしてクローニングした挿入物をいずれかまたは両方の方向で配列決定して、適切な分子量のタンパク質をコードする正しいリーディングフレームを同定してもよい。例えば、本発明の相同核酸分子のヌクレオチド配列の直接分析は、ジデオキシ鎖終結法またはマクサム・ギルバート法のいずれかを用いて達成可能である(Sambrookら, Molecular Cloning, A Laboratory Manual(第2版, CSHP, ニューヨーク 1989); Zyskindら, Recombinant DNA Laboratory Manual, (Acad. Press, 1988)を参照されたい)。これらのまたは類似の方法を用いて、タンパク質(単数または複数)および該タンパク質をコードするDNAを単離し、配列決定し、そしてさらに性質決定してもよい。
【0051】
また、本発明の核酸複合体を、RNAの増幅、例えば対応するcDNAの合成を含むmRNAの増幅法に用いてもよい。
さらなる態様において、DNAポリメラーゼは、Taq DNAポリメラーゼ、BST DNAポリメラーゼ、PFU DNAポリメラーゼ、Klenow DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、Phi29 DNAポリメラーゼ、RB69 DNAポリメラーゼから選択される。古細菌の種由来の熱安定性DNAポリメラーゼは、商業的に入手可能であり(例えばNew England Biolabs, Inc.;Stratagene Inc.)、そしてこれには、9°N DNAポリメラーゼおよびVent DNAポリメラーゼが含まれる。
【0052】
1つの態様において、核酸複合体は、熱安定性DNAポリメラーゼに結合する。第二の態様において、核酸複合体は、DNAポリメラーゼには瞬間的にしか結合せず、DNAポリメラーゼは迅速に未結合となり、そして同じ核酸複合体または別の核酸複合体のいずれかに再結合する。別の態様において、核酸複合体は、核酸の融点未満の温度で、増幅反応における非特異的増幅産物の量を減少させる。別の態様において、核酸複合体は、増幅反応において、熱安定性DNAポリメラーゼの活性を阻害させるDNA構築物であり、ここで、該DNA構築物は、およそ51.5℃の融点を有するか、または該DNA構築物は、非特異的増幅産物の量を減少させる。
【0053】
さらに、核酸複合体の核酸は、ブロッキング分子を含む。好ましい態様において、ブロッキング分子は、ポリメラーゼによる核酸複合体の伸長を防止する。別の態様において、ブロッキング分子は、特定のポリメラーゼ、例えばDNAポリメラーゼによる伸長を防止する。ブロッキング分子を、核酸の5’または3’端のいずれに付着させてもよい。別の好ましい態様において、ブロッキング分子は、5’および/または3’エキソヌクレアーゼ消化に対する耐性を提供する。最も好ましい態様において、ブロッキング分子は、3’末端に共有結合した反転デオキシチミジンであり、そして熱安定性DNAポリメラーゼによる伸長を防止し、そして3’エキソヌクレアーゼ活性に対する耐性を提供する。
【0054】
1つの態様において、方法および試薬は、3’ヒドロキシル末端でブロッキングされた二本鎖オリゴヌクレオチドを用いる。好ましい態様において、Taq DNAポリメラーゼを、ブロッキング分子でキャップ化された二本鎖オリゴヌクレオチドと組み合わせる。ブロッキング分子をオリゴヌクレオチドに共有結合させる。ブロッキング分子は、上昇した温度での増幅反応におけるインキュベーションによっては除去不能である。二本鎖オリゴヌクレオチドおよびブロッキング分子の組み合わせは、本明細書において、二本鎖複合体(DSC)と称される。ブロッキング分子があるため、1つの態様において、DSCはいかなる混入3’エキソヌクレアーゼによっても分解されず、またはポリメラーゼによって核酸が伸長されることも不可能である。偶然、DSCの一本鎖が反応プライマーまたはテンプレートにハイブリダイズした場合でも、ブロッキング分子によって、DSCが意図されないプライマーとして作用してそして競合性混入産物を形成することが防止される。したがって、本発明は、核酸増幅反応の性能を改善するための手段を提供する。本発明は、限定されるわけではないが、DNAポリメラーゼに結合し、そして非特異的増幅産物の産生を防止する、二本鎖オリゴヌクレオチドで構成される核酸複合体に関する。二本鎖核酸複合体の各鎖はブロッキング分子を含み、該ブロッキング分子は、核酸複合体をエキソヌクレアーゼ分解から防御し、そしてまた、核酸複合体自体が非特異的オリゴヌクレオチド・プライミングの供給源となることも防止する。
【0055】
ブロッキング分子は、ポリメラーゼによる核酸複合体の伸長を防止する任意の分子を含むように定義される。ブロッキング分子はまた、エキソヌクレアーゼ分解にも耐性であってもよい。さらなる好ましい態様において、ブロッキング分子は、ポリメラーゼによる伸長を防止するとともに、エキソヌクレアーゼによる切除も防止する。ブロッキング分子は、核酸複合体の3’または5’末端のいずれにも配置可能である。最も好ましい態様において、ブロッキング分子は反転dTである。反転dTは、デオキシチミジンの合成ヌクレオチドであり、該ヌクレオチドのリボース構造およびチミジン塩基間の結合は、標準的なデオキシチミジンから反転した位置にある:
【0056】
【化2】
【0057】
ブロッキング分子の例には、限定されるわけではないが、デオキシチミジン、ジデオキシヌクレオチド、3’リン酸化、ヘキサンジオール、スペーサー分子、1’2’−ジデオキシリボース、2’−O−メチルRNA、ロックド核酸(LNA)、および核酸複合体の伸長を防止し、そして/またはエキソヌクレアーゼによる切除に対して耐性である、合成または天然分子が含まれる。
【0058】
本発明はまた、貯蔵緩衝剤を含む溶液中に、本発明の単離核酸分子を含む、DNA構築物にも関する。こうした貯蔵緩衝剤には、例えば、TRIS緩衝剤、MOPS、またはHEPES緩衝剤が含まれる。さらに、本発明は、本発明の核酸複合体およびDNAポリメラーゼを含む貯蔵緩衝液にも関する。
【0059】
したがって、本発明の核酸分子は、1つの態様において:
a)デオキシリボ核酸で構成される核酸;
b)核酸中央にブロッキング分子を含む核酸;
c)核酸のいずれかの端に付着したブロッキング分子を含む核酸;
d)核酸の3’端に付着したブロッキング分子を含む核酸;
e)非特異的増幅を減少させる核酸;
f)表1由来の任意の配列の核酸配列を含む核酸;
g)およそ48.9℃〜51.5℃の融点を有する核酸;
h)およそ64.3%のGC含量を有する核酸;
i)1またはそれより多い修飾ヌクレオチドを有する核酸;
j)1またはそれより多い人工的核酸が含有される核酸;
k)ブロッキング分子がスペーサー分子である核酸;
m)ブロッキング分子が反転ヌクレオチドである核酸;
n)a)、b)、c)、d)、e)、f)、g)、h)、i)、j)、k)、l)、m)の断片または誘導体
からなる群より選択される、付着したブロッキング分子を含む二本鎖核酸構築物である。
【0060】
別の態様において、本発明は、単離核酸自体、および多様な組成物中の単離核酸、例えば:
a)DSC1の配列を含む核酸;
b)DSC1の核酸を含有する貯蔵緩衝液;
c)DSC1の核酸を含有する反応緩衝液;または
d)DSC1の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するDNA構築物;および
e)a)、b)またはc)の断片または誘導体
に関する。
【0061】
実施例1(図1)は、本発明のDSCがDNAポリメラーゼによる伸長を有効に防止することを立証する、PCR増幅を記載する。オリゴヌクレオチドの3’端に取り込まれた阻害性分子は、未結合(free)ヒドロキシル端をキャップ化し、産物増幅を生じない。
【0062】
実施例1(図2)はまた、本発明のDSCが、pUC19プラスミドの1.1kb領域の増幅成功を阻害しないことを立証する、PCR増幅も記載する。順方向および逆方向反応プライマーと同じ配列を有する、キャップ化3’端を持つ二本鎖分子の存在は、反応結果を阻害しない。
【0063】
実施例2は、標準的PCR、商業的に入手可能なホットスタートPCR、およびマニュアルホットスタート条件を伴わない、本発明の二本鎖複合体の存在下のPCRを含む、いくつかのPCR増幅を記載する。実施例2は、競合外来DNAとして、大腸菌ゲノムDNAの存在下でのラムダファージDNAの1.9kb領域の検出を記載する。
【0064】
図3は、DSC1、DSC2、DSC3、DSC3−1分子の存在下でのPCR増幅の結果を例示する。奇数レーンにおいて、10,000コピーのラムダファージDNAを用いて、PCR増幅を行った。すべての反応は、競合外来DNAとして、1ngの大腸菌ゲノムDNAを含有する。DSC分子を添加しない反応では、産物の増幅は達成されなかった。レーン1、5、7においてDSC分子を添加した場合、産物増幅が達成され、そして収量には、非特異的増幅は含まれなかった。DSC分子の存在によって、収量を損なうことなく、ターゲットバンドの検出が促進される。
【0065】
図4は、ラムダDNAからの1.9kb領域の増幅における比較を示す。すべてのPCR反応をラムダDNAおよび1ngの混入大腸菌ゲノムDNAの存在下で行った。レーン1〜4は、DSC分子の存在下で、TaqおよびTaq−B DNAポリメラーゼを用いた産物増幅を例示する。Taq−Bは、貯蔵緩衝液中に安定化剤を有する。レーン5〜7において、商業的に入手可能な化学修飾ホットスタートDNAポリメラーゼを用いて、増幅を行った。DSC分子の存在下での増幅産物の収量は、化学修飾Taqで得られる収量に匹敵するか、またはこれより大きい。
【0066】
図5AおよびBは、DSC分子の存在下でのラムダDNAの1.9kb領域の増幅を強調する。図5Aにおいて、図3および4で用いるプライマーよりも低い融点を有する、順方向5’CTGGCTGACATTTTCG−3’(配列番号17)および逆方向5’TATCGACATTTCTGCACC−3’(配列番号18)プライマーを用いて、PCR増幅を行った。図5Bにおいて、図3および4で用いるプライマーよりも高い融点を有する、順方向5’GAAGTCAACAAAAAGGAGCTGGCTGACATTTTCG−3’(配列番号19)および逆方向5’CAGCAGATACGGGATATCGACATTTCTGCACC−3’(配列番号20)プライマーを用いて、増幅を行った。0.523pgのラムダDNAおよび1ngの大腸菌ゲノムDNAを用いてPCR増幅を行った。反応条件は、95℃5分間での最初の変性、その後、95℃40秒間、48℃または61℃いずれかの30秒間、72℃2分間を40周期、72℃7分間での最終伸長であった。結果は、産物の増幅が、DSC1分子の存在下で達成されたことを示す。反応プライマーの融点、およびより低い/高い温度でのアニーリングは、Taq−B DSCの性能に影響を及ぼさなかった。
【0067】
実施例3は、標準的PCR、マニュアルホットスタートPCR、ホットスタートPCR、およびDSC分子の存在下でのPCRにおける、ヒト胎盤DNAのβ−アクチン遺伝子の653bp断片の増幅を記載する(図6)。通常のPCR下では、望ましいバンドの収量は、非特異的バンドの増幅によって損なわれる(図6、レーン11)。
【0068】
マニュアルホットスタート条件下では、収量は増加したが、PCR特異性は増加しない(図6、レーン12および13)。化学修飾ポリメラーゼは特異的であり、そして頑強なバンドを増幅する(図6、レーン14)。レーン1〜10において、DSC分子の融点は、各連続レーンにおいて、約5℃ずつ増加する。低融点のDSC分子の存在下で行った増幅では、望ましいバンドが低収量であることがわかった(図6、レーン1〜4)。中程度の融点のDSC分子の存在下で行った増幅の結果は、マニュアルホットスタート下での増幅で得られたものと類似である(図6、レーン5〜7)。高融点のDSC分子を付加すると、反応の特異性が増加し、そして頑強な所望のバンドが生じた(図6、レーン8〜10)。ブロッキング分子の相違もまた、所望のバンドの増幅に影響を及ぼした。図6、レーン16および17で用いたDSC分子は、3’端で、異なるブロッキング分子でキャップ化されており、これがおそらく、反応の増幅成功に干渉した。
【0069】
実施例4は、1000コピー〜5コピーのDNA A、B、およびCの100〜120bp断片を増幅する、一連のPCR反応を記載する。標準PCR下、化学修飾酵素を用いたホットスタートPCR下、および本発明のDSC分子の存在下の非ホットスタート条件下で、PCR増幅を行った。セットアップ直後に行ったPCR増幅反応を、周囲温度で24時間のインキュベーション期間後に行ったものに比較した。
【0070】
図7Aは、オリゴヌクレオチド混合物Bを用いたDNA Bからの100bp産物の増幅を示す。すべてのPCR増幅は、1000コピーのDNA Bを含有する。図7A中のPCR増幅は、ベンチトップでのプレインキュベーションを伴わず、セットアップ直後に行われた。反応中に存在するDNAの量は、収量を損なうことなく、ポリメラーゼが特異的に増幅するために十分である(図7A、レーン1〜5)。すべてのレーンにおいて、所望の産物の増幅に対応する単一バンドが存在する。図7Aにおけるセットアップ下、ホットスタート条件下でPCR増幅を行う必要はない。
【0071】
図7Bにおいて、PCR増幅は、23℃の周囲温度で24時間インキュベーションした後、行われた。通常のPCR条件下では、所望のバンドの増幅は、図7A中のレーン4における同じ増幅に比較して、非常に減少する。本発明のDSC分子を反応に添加した際、結果は、明らかに異なる。反応中のDSC分子の存在は、増幅収量を改善する(図7B、レーン1〜3)。
【0072】
図8は、DNA Bからの100bp産物の増幅を例示する。すべてのPCR増幅は、5コピーのDNAを用いて行われた。PCR増幅は、ベンチトップでのプレインキュベーションを伴わず、セットアップ直後に行われた。レーン1および3において、DSC分子の最終濃度は4μMであり、一方、レーン2および4において、DSC分子の最終濃度は0.4μMである。より高濃度のDSCは、増幅結果を阻害しない。どちらの濃度のDSCを含有する反応も、優れた量の産物を増幅する。
【0073】
図9は、DNA Bからの100bp産物の増幅を例示する。すべてのPCR増幅は、5コピーのDNA Bを用いて行われた。PCR増幅は、周囲温度で24時間、ベンチトップでインキュベーションした後、行われた。標準的PCR条件下、インキュベーション期間によって、所望の産物の増幅成功が妨げられた(図9、レーン6)。レーン1〜5は、最終濃度4μMの異なるDSC分子の存在下でのPCR増幅の結果を示す。DSC1の存在下での増幅収量(図9、レーン1)は、化学修飾酵素で得られる収量(図9、レーン7)に匹敵する。DSC5およびDSC12で得られる収量(図9、レーン2および3)は、化学修飾酵素で得られる収量(図9、レーン7)より多い。DSC13およびDSC14の存在下で行った増幅の結果は、標準的条件下でPCRによって得られるものと類似である。
【0074】
図10A〜Cは、それぞれ、DNA A〜Cからの100〜120bp産物の増幅を例示する。すべてのPCR増幅は、5コピーのDNAを用いて行われた。PCR増幅は、ベンチトップでのプレインキュベーションを伴わず、セットアップ直後に行われた。DSC分子の最終濃度は4μMである(図10A〜C、レーン1〜5)。DSCの濃度がより高くても、増幅結果は阻害されない(図10A〜C、レーン1〜3)。これらの反応において、所望の産物の増幅に対応する単一バンドがある。DSC13およびDSC14の存在下で行われるPCRの結果は、産物増幅を生じず、これはおそらくこれらの長さのためである。標準的PCR条件下で、所望の産物の増幅に対応する単一バンドがある(図10A〜C、レーン6)。PCR増幅をセットアップ直後に行うため、ホットスタート条件下でPCRを行う必要はなかった(図10A〜C)。
【0075】
図11A〜Cは、それぞれ、DNA A〜Cからの100〜120bp産物の増幅を示す。すべてのPCR増幅は、5コピーのDNAを用いて行われた。PCR増幅は、23℃で24時間、ベンチトップでインキュベーションした後、行われた。DSC分子の最終濃度は4μMである(図11A〜C、レーン1〜5)。DSC分子の非存在下で行われたPCR増幅の結果では、産物の増幅がなかった(図11A〜C、レーン6)。DSC13およびDSC14の存在下で行われた増幅の結果は、非ホットスタート条件下のPCRによって得られるものと類似である(図11A〜C、レーン5および6)。
【0076】
図11Aにおいて、DSC1およびDSC12の存在下での増幅収量は、化学修飾ポリメラーゼで得られるものと類似である(図11A、レーン1、3および7)。DSC5の存在下で得られる収量は増加している(図11A、レーン2)。
【0077】
図11Bにおいて、DSC1の存在下での増幅は産物形成を生じない(図11B、レーン1)。しかし、DSC5およびDSC12の存在下での増幅は、ターゲット産物に対応する単一バンドの検出を生じる(図11B、レーン2および3)。
【0078】
図11Cにおいて、DSC1、DSC5、およびDSC12の存在下での増幅は、化学修飾ポリメラーゼで得られるものに匹敵する収量の産物形成を生じる(図11C、レーン1〜3)。しかし、DSC5およびDSC12の存在下での増幅は、ターゲット産物に対応する単一バンドの検出を生じる。
【0079】
図10および11に例示するアッセイにおける本発明のDSC5の存在下での増幅は、最適な全体結果を提供する。
実施例5は、1280コピー〜5コピーのDNA A、B、C、およびヒト胎盤DNAの100〜120bp断片を増幅させる、一連のqPCR反応を記載する。標準的PCR下、化学修飾酵素を伴うホットスタートPCR下、および本発明のDSC分子の存在下での非ホットスタート条件下で、PCR増幅を行った。
【0080】
図12は、CY5蛍光色素による検出を用いた、DNA Cからの120bp産物の形成のリアルタイムPCR分析を示す。並べた比較を行って、商業的に入手可能な化学修飾Taqに対してTaq−B DSC1を評価した。各反応におけるDSCの最終濃度は0.4μMである。1280〜5コピーのDNA Cを含有するqPCR増幅を、4つ組で行った。Taq DSC1に関する平均Ct値は、各コピーレベルで、化学修飾Taqで得られるものより低い。標準偏差は、Taq DSC1に関してわずかにより高く、10コピーレベルで最高である。全PCR効率およびR二乗値を伴ったものは、Taq DSC1および化学修飾Taqの両方に関して匹敵する。
【0081】
図13は、ヒト胎盤DNAからのHBB2の100bp産物の形成のリアルタイムPCR分析を示す。並べた比較を行って、商業的に入手可能な化学修飾Taqに対してTaq−B DSC1を評価した。各反応におけるDSC1の最終濃度は0.4μMである。1280〜5コピーのヒト胎盤DNAを含有するqPCR増幅を、4つ組で行った。Taq−B DSC1に関する平均Ct値は、各コピーレベルで、化学修飾Taqで得られるものより低い。標準偏差は、やはり、Taq−B DSC1に関してわずかに低い。10コピーで、化学修飾Taqは0.6の許容値より高い標準偏差を有し、一方、Taq−B DSC1に関しては、これは5コピーで生じる。全PCR効率およびR二乗値を伴ったものは、Taq−B DSC1および化学修飾Taqの両方に関して匹敵する。
【0082】
図14AおよびBは、HEX蛍光色素による検出を用いた、DNA Bからの100bp産物の形成のリアルタイムPCR分析を例示する。図14Aは、2.5UのTaq−Bおよび0.4μM最終濃度のDSC1を含む25μL反応における産物の増幅を示す。図14Bは、2.5UのTaq−Bおよび0.2μM最終濃度のDSC1を含む50μL反応における産物の増幅曲線を示す。1000、100、および10コピーのDNA Bを含有する増幅反応を、4つ組で行った。反応体積を増加させることによって、各コピーレベルでの最終振幅が、Taq−B DSC1および化学修飾Taq両方に関して増加し、より少ない単位/mL酵素を使用する必要があることが示唆された。増加は、10コピーレベルのTaq−B DSC1に関してより劇的である。これらの反応において(図14A)、図14Bにおいては値が測定可能であるのに比較して、検出可能なCt値はない(閾値未満の増幅)。
【0083】
図15A〜Cは、HEX蛍光色素による検出を用いた、DNA Bからの100bp産物の形成のリアルタイムPCR分析を例示する。1000、100、および10コピーのDNA Bを含有する反応を、4つ組で行った。このアッセイにおいては、Taq−B、Taq−B DSC1、Taq−B DSC5、および化学修飾Taqを用いて行ったqPCR増幅を比較する。反応中のDSC5分子の最終濃度を、1x〜20xで示し、ここで1xは0.2μMであり、そして20xは4μMである。DSC1の最終濃度は0.2μMである。
【0084】
図15Aは、各コピーレベルに関して各酵素の組み合わせを用いることによって得られる平均Ct値を示す。10コピーレベルで、DSC分子を含まないTaq−Bは検出可能なCt値を持たない。DSC分子の存在下で行われるqPCR増幅は、化学修飾Taqで得られるものと匹敵する、測定可能なCt値を有する。Ct値はまた、DSC濃度増加に伴っても減少する。DSC濃度を増加させると、より高いPCR効率が達成される。
【0085】
図15Bは、Taq−BおよびFastStartのみとともに、各Taq−B DSC組み合わせに関する増幅曲線を例示する。DSC濃度を増加させるとより高い振幅が達成される。10xでのTaq−B DSC5配合は、化学修飾Taqの性能を超える。
【0086】
図15Cは、各コピーレベルでの各組み合わせに関する最終振幅を示す。全体として、10x濃度でのDSC5分子の存在下で、最適な性能が達成される。
句「本質的にからなる」または「本質的にからなること」は、本明細書記載の任意の態様において、請求する発明が働くかまたは作動するのに本質的であるかまたは必要とされる、請求する発明の要素を指す。例えば、1つの態様において、本発明のブロッキング二本鎖核酸複合体は、どちらも本明細書に記載するような、二本鎖核酸複合体およびブロッキング分子から本質的になる。同様に、本発明の組成物、方法、キットまたは系は、本明細書記載のDSCとともに、やはり本明細書に記載するような、DNAポリメラーゼ、緩衝剤、アデニン、グアニン、シトシンおよびチミンの供給、ならびにプライマーから本質的になる。
【実施例】
【0087】
実施例1
pUC19プラスミドの1.1kb領域を増幅する系を用いて、Taq−Bポリメラーゼに触媒されるPCRを行った(図1および2)。3’OH修飾を伴うおよび伴わないプライマーを用いて、PCR増幅を行った。1つのプライマーセットには、未結合3’OH基を有する5’−AACAATTTCACACAGGAACAGCT−3’(配列番号21)および5’−GTTTTCCCAGTCACGACGT−3’(配列番号22)が含まれた。第二のプライマーセットにおいて、3’OH基の利用可能性は、反転dT修飾によってブロッキングされており、5’AACAATTTCACACAGCAACAGC/反転T/−3’(配列番号23)および5’−GTTTTCCCAGTCACGACG/反転T/−3’(配列番号24)であった。反応は、1xPCR緩衝液I(50mM KC1、1.5mM MgCl2、20mM Tris−HCl、25℃でpH8.6)または1xPCR緩衝液II(10mM (NH4)2SO4、10mM KC1、2mM MgSO4、0.01% Triton X−100、50%グリセロール、20mM Tris−HCl、25℃でpH8.8)のいずれかを含有した。各反応は、0.2mM dNTP、各0.2μMのプライマー、4ngのpUC19 DNA、および5UのTaq−Bポリメラーゼを含有した。すべてのPCR反応は、2720 PCRサーマルサイクラー(Applied Biosystems)上、100μL体積で行われた。反応条件は以下の通りであった:95℃3分間での最初の変性、その後、95℃20秒間、55℃20秒間、68℃1分15秒間を35周期、68℃7分間での最終伸長。PCR後、20μLの各試料を1%アガロースゲル上に装填し、そしてAlpha Innotech Corporation AlphaImager HP、2401 Merced St. San Leandro, CA 94577 USAを用いて、UV光下で可視化した。Taq−Bポリメラーゼ、パーツ番号P725Lは、Enzymatics, Inc. 100 Cummings Center, Suite 336H, Beverly, MA 01915 USAより入手可能である。DNA標準マーカーは、1kb DNAラダー、カタログ番号N3232Sであり、New England Biolabs, 240 County Road Ipswich, MA 01938 USAより入手可能であった。
実施例2
図3〜5に示す実験で用いるPCR増幅プロトコルには、100μL反応体積中、1xPCR緩衝液I(50mM KC1、1.5mM MgCl2、20mM Tris−HCl、25℃でpH8.6)、0.2mM dNTP、および5UのTaqポリメラーゼが含まれた。各0.2μMの順方向5’AAGGAGCTGGCTGACATTTTCG−3’(配列番号25)および逆方向5’CGGGATATCGACATTTCTGCACC−3’(配列番号26)プライマーを用いて、競合外来DNAとしての1ngの大腸菌ゲノムDNAの存在下、10,000コピーのラムダファージDNAから1.9kb領域を増幅するPCR増幅を行った。Applied Biosystems 2720サーマルサイクラー上でPCR実験を行った。反応条件は、95℃5分間での最初の変性、その後、95℃40秒間、56℃30秒間、72℃2分間を40周期、72℃7分間での最終伸長であった。PCR後、20μLの各試料を1%アガロースゲル上に装填し、そしてAlpha Innotech Corporation AlphaImager HPを用いてUV光下で可視化した。用いた商業的に入手可能なホットスタートDNAポリメラーゼには、Life Technologies Corp.の一部門であるApplied Biosystems, 5791 Van Allen Way PO Box 6482, Carlsbad, CA 92008 USAより入手可能なAmplitaq Gold、パーツ番号N8080246や、Roche Diagnostics Corporation, P.O. Box 50414, 9115 Hague Road, Indianapolis, IN 46250−0414 USAより入手可能なFastStart Taq DNAポリメラーゼ、カタログ番号12032902001が含まれた。ラムダPCRプロトコルは、KoukharevaおよびLebedev(2009) Anal. Chem. 81:12より適合され、そして該文献は、その全体が本明細書に援用される。
【0088】
実施例3
図6において、ヒト胎盤DNAからβ−アクチン遺伝子の653bp断片を増幅した。すべての100μL PCR反応は、1xPCR緩衝液I(50mM KC1、1.5mM MgCl2、20mM Tris−HCl、25℃でpH8.6)、0.2mM dNTP、各0.5μMの順方向5’AGAGATGGCCACGGCTGCTT−3’(配列番号26)および逆方向5’−ATTTGCGGTGGACGATGGAG−3’(配列番号26)プライマー、100ngのテンプレート、および5UのTaqポリメラーゼが含まれた。熱サイクリング条件は、94℃2分間での最初の変性、その後、94℃30秒間、60℃30秒間、72℃45秒間を35周期、72℃7分間での最後の伸長であった。PCR後、20μLの各試料を1%アガロースゲル上に装填し、そしてAlpha Innotech Corporation AlphaImager HPを用いてUV光下で可視化した。β−アクチンのためのPCRプロトコルは、Lebedevら(2008) Nucleic Acid Research 31:20から適合され、そして該文献は本明細書に援用される。
【0089】
実施例4
図7〜11に示す実験で用いるPCR増幅プロトコルには、25μL反応体積中、1xqPCR緩衝液、0.4mM dNTP、および2.5UのTaqポリメラーゼが含まれた。1000コピー〜5コピーで、それぞれDNA A、B、およびCの100〜120bp断片を増幅する、1x各オリゴ混合物、A−FAM、B−HEX、およびC−CY5を用いて、PCR増幅を行った。qPCR反応緩衝液中で、DNAターゲット連続希釈を調製した。dNTP、トレハロース、Taq酵素およびオリゴ混合物を含有するアッセイ混合物をまず5μL最終体積で調製し、そこに20μLのターゲット混合物を添加した。Applied Biosystems 2720サーマルサイクラー上でPCR実験を行った。反応条件は、95℃10分間の最初の変性、その後、95℃30秒間、56℃1分間を40周期であった。PCR後、20μLの各試料を3%アガロースゲル上に装填し、そしてAlpha Innotech Corporation AlphaImager HPを用いてUV光下で可視化した。DNA標準マーカーは、100bp DNAラダー、カタログ番号N3231Sであり、New England Biolabs, 240 County Road Ipswich, MA 01938 USAより入手可能であった。
【0090】
TaqMan(登録商標)プローブ検出を用いたリアルタイムPCR実験
実施例5
図12〜15に示す実験で用いるPCR増幅には、25μL反応体積中、1xqPCR緩衝液、0.4mM dNTP、および2.5UのTaqポリメラーゼが含まれた(図14Bでは25および50μL反応体積)。1280コピー〜5コピーで、それぞれDNA A、B、Cおよびヒト胎盤DNAの100〜120bp断片を増幅する、1x各オリゴ混合物、A−FAM、B−HEX、C−CY5、およびHBB2を用いて、PCR増幅を行った。qPCR反応緩衝液中で、DNAターゲット連続希釈を調製した。dNTP、トレハロース、Taq酵素およびオリゴ混合物を含有するアッセイ混合物をまず5μL最終体積で調製し、そこに20μLのターゲット混合物を添加した。反応条件は、95℃10分間での最初の変性、その後、95℃30秒間、56℃1分間を40周期であった。
【0091】
本明細書に引用するすべての参考文献、特許および/または特許出願の適切な解説は、その全体が本明細書に援用される。
本発明は、その特定の態様に関連して、具体的に示され、そして記載されてきているが、当業者には、付随する請求項に含まれる本発明の範囲から逸脱することなく、形式および詳細において多様な変化を作製可能であることが理解されるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸増幅において使用するためのブロッキング二本鎖核酸複合体であって;
ここで当該複合体が:
a.以下を含む単離二本鎖核酸分子:
i.約9〜約40核酸塩基の間を含む第一の配列を有する第一の核酸鎖、および
ii.第一の配列に相補的な約9〜約40核酸塩基の間を含む第二の配列を有する核酸第二鎖、ここで、第一の核酸鎖および第二の核酸鎖が各々3’端および5’端を有し、
二本鎖核酸分子が約50%〜約70%の間の範囲のシトシン(C)およびグアニン(G)のパーセンテージを有する;ならびに
b.第一の核酸鎖、第二の核酸鎖、または両方の3’端または5’端に共有結合したブロッキング分子;
を含む、前記ブロッキング二本鎖核酸複合体。
【請求項2】
二本鎖核酸分子が、約25℃〜約90℃の間の範囲の融点を有する、請求項1のブロッキング二本鎖核酸複合体。
【請求項3】
複合体がDNAまたはRNAを含む、請求項1のブロッキング二本鎖核酸複合体。
【請求項4】
ブロッキング分子が:デオキシチミジン、ジデオキシヌクレオチド、3’リン酸化、ヘキサンジオール、スペーサー分子、1’2’−ジデオキシリボース、2’−O−メチルRNA、およびロックド核酸(LNA)からなる群より構成される、請求項1のブロッキング二本鎖核酸複合体。
【請求項5】
ブロッキング分子が:
【化1】
を含む、請求項1のブロッキング二本鎖核酸分子複合体。
【請求項6】
第一の配列または第二の配列が、1またはそれより多いウラシル塩基をさらに含む、請求項1のブロッキング二本鎖核酸分子複合体。
【請求項7】
核酸増幅において使用するためのブロッキング二本鎖核酸複合体であって;
ここで当該複合体が:
a.以下を含む単離二本鎖核酸分子:
i.約9〜約40核酸塩基の間を含む第一の配列を有する第一の核酸鎖、および
ii.第一の配列に相補的な約9〜約40核酸塩基の間を含む第二の配列を有する核酸第二鎖、ここで、第一の核酸鎖および第二の核酸鎖が各々3’端および5’端を有し、
二本鎖核酸分子が約25℃〜約90℃の間の範囲の融点を有する;ならびに
b.第一の核酸鎖、第二の核酸鎖、または両方の3’端または5’端に共有結合したブロッキング分子;
を含む、前記ブロッキング二本鎖核酸複合体。
【請求項8】
ブロッキング分子が:デオキシチミジン、ジデオキシヌクレオチド、3’リン酸化、ヘキサンジオール、スペーサー分子、1’2’−ジデオキシリボース、2’−O−メチルRNA、およびLNAからなる群より構成される、請求項7のブロッキング二本鎖核酸複合体。
【請求項9】
核酸増幅において使用するためのブロッキング二本鎖核酸複合体であって;
ここで当該複合体が:
a.以下を含む単離二本鎖核酸分子:
i.第一の核酸鎖であって:
a.配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、またはその組み合わせ;
b.配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、またはその組み合わせの相補体;あるいは
c.配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、またはその組み合わせにハイブリダイズする配列;
を含む配列と約70%より大きいかまたは約70%に等しい同一性の第一の核酸配列を有する前記の第一の核酸鎖;および
ii.第一の核酸配列に相補的な約9〜約40核酸塩基の間を含む第二の配列を有する第二の核酸鎖、ここで、第一の核酸鎖および第二の核酸鎖が各々3’端および5’端を有し、
二本鎖核酸分子が約25℃〜約90℃の間の範囲の融点を有する;
b.第一の核酸鎖、第二の核酸鎖、または両方の3’端または5’端に共有結合したブロッキング分子;
を含む、前記ブロッキング二本鎖核酸複合体。
【請求項10】
第一および第二の核酸鎖の3’端がブロッキング分子を含み、ブロッキング二本鎖核酸複合体が核酸ポリメラーゼと相互作用した際、それによって非特異的増幅産物が減少する、請求項9のブロッキング二本鎖核酸複合体。
【請求項11】
複合体が約48.9℃の融点を有する、請求項9のブロッキング二本鎖核酸複合体。
【請求項12】
第一の配列または第二の配列が、1またはそれより多いウラシル塩基をさらに含む、請求項9のブロッキング二本鎖核酸複合体。
【請求項13】
核酸増幅のための組成物であって;組成物が:
a.緩衝剤;
b.請求項1のブロッキング二本鎖核酸複合体、および
c.熱安定性ポリメラーゼ
を含む、前記組成物。
【請求項14】
ポリメラーゼが、群:Taq DNAポリメラーゼ;BST DNAポリメラーゼ;PFU DNAポリメラーゼ;Klenow DNAポリメラーゼ;T7 DNAポリメラーゼ;T4 DNAポリメラーゼ;Phi29 DNAポリメラーゼ;およびRB69 DNAポリメラーゼ;からなるDNAポリメラーゼである、請求項13の核酸増幅のための組成物。
【請求項15】
濃度範囲が、ポリメラーゼ5,000U/mLごとに約2μM核酸複合体から、ポリメラーゼ5,000U/mLごとに2mM核酸複合体の間である、請求項13の核酸増幅のための組成物。
【請求項16】
緩衝剤が、TRIS緩衝剤、MOPS、またはHEPES緩衝剤を含む、請求項13の核酸増幅のための組成物。
【請求項17】
ターゲット核酸分子を増幅する方法であって:
ターゲット核酸分子をDNAポリメラーゼおよび請求項1の二本鎖核酸複合体と接触させる工程を含む、ここで、二本鎖核酸複合体は、約25℃〜約90℃の範囲の温度でDNAポリメラーゼに結合し;
増幅されたターゲット核酸分子を得て、そして1またはそれより多い非特異的増幅産物または二次産物が、二本鎖核酸複合体と接触させなかったものに比較した際、減少する
前記方法。
【請求項18】
二本鎖核酸複合体と接触させなかったターゲット核酸分子に関するポリメラーゼ活性に比較した際、約20℃〜25℃の間の温度でのポリメラーゼ活性が減少する、請求項17の方法。
【請求項19】
約50%〜約90%の間の範囲で、約20℃〜25℃の間の温度でのポリメラーゼ活性が減少する、請求項18の方法。
【請求項20】
増幅されるターゲット核酸分子の量が、二本鎖核酸複合体と接触させなかった場合に得られるターゲット核酸分子の量と比較した際、増加する、請求項17の方法。
【請求項21】
得られる増幅されたターゲット核酸の量が、約2X〜約20Xの間の範囲で増加する、請求項20の方法。
【請求項22】
ターゲット核酸分子を増幅させる方法であって:
ターゲット核酸分子を、古細菌の種由来のDNAポリメラーゼおよび請求項6の二本鎖核酸複合体と接触させる工程を含む、ここで、二本鎖核酸複合体は、約25℃〜約90℃の範囲の温度でDNAポリメラーゼに結合し;
増幅されたターゲット核酸分子を得て、そして1またはそれより多い非特異的増幅産物または二次産物が、二本鎖核酸複合体と接触させなかったものに比較した際、減少する
前記方法。
【請求項23】
二本鎖核酸複合体と接触させなかったターゲット核酸分子に関するポリメラーゼ活性に比較した際、約20℃〜25℃の間の温度でのポリメラーゼ活性が減少する、請求項22の方法。
【請求項24】
約50%〜約90%の間の範囲で、約20℃〜25℃の間の温度でのポリメラーゼ活性が減少する、請求項23の方法。
【請求項25】
ターゲット核酸分子を増幅させる方法であって:
a.緩衝剤、ターゲット核酸分子、1またはそれより多いプライマー、DNAポリメラーゼ、アデニン、グアニン、シトシンおよびチミンの供給、ならびに請求項1の二本鎖核酸複合体を混合し;
b.1またはそれより多いサイクルで、温度を増加させることによって、ターゲット核酸分子の増幅を可能にする工程を含む、ここで、温度は、約25℃〜約90℃の範囲であり、
増幅されたターゲット核酸分子を得て、そして1またはそれより多い非特異的増幅産物または二次産物が、二本鎖核酸複合体と接触させなかったものに比較した際、減少する
前記方法。
【請求項26】
二本鎖核酸複合体と接触させなかったターゲット核酸分子に関するポリメラーゼ活性に比較した際、約20℃〜25℃の間の温度でのポリメラーゼ活性が減少する、請求項25の方法。
【請求項27】
増幅されるターゲット核酸分子の量が、二本鎖核酸複合体と接触させなかったターゲット核酸分子と比較して、増加する、請求項25の方法。
【請求項28】
核酸増幅のためのキットであって;キットが:
a.請求項1のブロッキング二本鎖核酸複合体、および
b.ポリメラーゼ
を含む、前記キット。
【請求項29】
ポリメラーゼが、群:Taq DNAポリメラーゼ;BST DNAポリメラーゼ;PFU DNAポリメラーゼ;Klenow DNAポリメラーゼ;T7 DNAポリメラーゼ;T4 DNAポリメラーゼ;Phi29 DNAポリメラーゼ;およびRB69 DNAポリメラーゼ;からなるDNAポリメラーゼである、請求項28のキット。
【請求項1】
核酸増幅において使用するためのブロッキング二本鎖核酸複合体であって;
ここで当該複合体が:
a.以下を含む単離二本鎖核酸分子:
i.約9〜約40核酸塩基の間を含む第一の配列を有する第一の核酸鎖、および
ii.第一の配列に相補的な約9〜約40核酸塩基の間を含む第二の配列を有する核酸第二鎖、ここで、第一の核酸鎖および第二の核酸鎖が各々3’端および5’端を有し、
二本鎖核酸分子が約50%〜約70%の間の範囲のシトシン(C)およびグアニン(G)のパーセンテージを有する;ならびに
b.第一の核酸鎖、第二の核酸鎖、または両方の3’端または5’端に共有結合したブロッキング分子;
を含む、前記ブロッキング二本鎖核酸複合体。
【請求項2】
二本鎖核酸分子が、約25℃〜約90℃の間の範囲の融点を有する、請求項1のブロッキング二本鎖核酸複合体。
【請求項3】
複合体がDNAまたはRNAを含む、請求項1のブロッキング二本鎖核酸複合体。
【請求項4】
ブロッキング分子が:デオキシチミジン、ジデオキシヌクレオチド、3’リン酸化、ヘキサンジオール、スペーサー分子、1’2’−ジデオキシリボース、2’−O−メチルRNA、およびロックド核酸(LNA)からなる群より構成される、請求項1のブロッキング二本鎖核酸複合体。
【請求項5】
ブロッキング分子が:
【化1】
を含む、請求項1のブロッキング二本鎖核酸分子複合体。
【請求項6】
第一の配列または第二の配列が、1またはそれより多いウラシル塩基をさらに含む、請求項1のブロッキング二本鎖核酸分子複合体。
【請求項7】
核酸増幅において使用するためのブロッキング二本鎖核酸複合体であって;
ここで当該複合体が:
a.以下を含む単離二本鎖核酸分子:
i.約9〜約40核酸塩基の間を含む第一の配列を有する第一の核酸鎖、および
ii.第一の配列に相補的な約9〜約40核酸塩基の間を含む第二の配列を有する核酸第二鎖、ここで、第一の核酸鎖および第二の核酸鎖が各々3’端および5’端を有し、
二本鎖核酸分子が約25℃〜約90℃の間の範囲の融点を有する;ならびに
b.第一の核酸鎖、第二の核酸鎖、または両方の3’端または5’端に共有結合したブロッキング分子;
を含む、前記ブロッキング二本鎖核酸複合体。
【請求項8】
ブロッキング分子が:デオキシチミジン、ジデオキシヌクレオチド、3’リン酸化、ヘキサンジオール、スペーサー分子、1’2’−ジデオキシリボース、2’−O−メチルRNA、およびLNAからなる群より構成される、請求項7のブロッキング二本鎖核酸複合体。
【請求項9】
核酸増幅において使用するためのブロッキング二本鎖核酸複合体であって;
ここで当該複合体が:
a.以下を含む単離二本鎖核酸分子:
i.第一の核酸鎖であって:
a.配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、またはその組み合わせ;
b.配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、またはその組み合わせの相補体;あるいは
c.配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、またはその組み合わせにハイブリダイズする配列;
を含む配列と約70%より大きいかまたは約70%に等しい同一性の第一の核酸配列を有する前記の第一の核酸鎖;および
ii.第一の核酸配列に相補的な約9〜約40核酸塩基の間を含む第二の配列を有する第二の核酸鎖、ここで、第一の核酸鎖および第二の核酸鎖が各々3’端および5’端を有し、
二本鎖核酸分子が約25℃〜約90℃の間の範囲の融点を有する;
b.第一の核酸鎖、第二の核酸鎖、または両方の3’端または5’端に共有結合したブロッキング分子;
を含む、前記ブロッキング二本鎖核酸複合体。
【請求項10】
第一および第二の核酸鎖の3’端がブロッキング分子を含み、ブロッキング二本鎖核酸複合体が核酸ポリメラーゼと相互作用した際、それによって非特異的増幅産物が減少する、請求項9のブロッキング二本鎖核酸複合体。
【請求項11】
複合体が約48.9℃の融点を有する、請求項9のブロッキング二本鎖核酸複合体。
【請求項12】
第一の配列または第二の配列が、1またはそれより多いウラシル塩基をさらに含む、請求項9のブロッキング二本鎖核酸複合体。
【請求項13】
核酸増幅のための組成物であって;組成物が:
a.緩衝剤;
b.請求項1のブロッキング二本鎖核酸複合体、および
c.熱安定性ポリメラーゼ
を含む、前記組成物。
【請求項14】
ポリメラーゼが、群:Taq DNAポリメラーゼ;BST DNAポリメラーゼ;PFU DNAポリメラーゼ;Klenow DNAポリメラーゼ;T7 DNAポリメラーゼ;T4 DNAポリメラーゼ;Phi29 DNAポリメラーゼ;およびRB69 DNAポリメラーゼ;からなるDNAポリメラーゼである、請求項13の核酸増幅のための組成物。
【請求項15】
濃度範囲が、ポリメラーゼ5,000U/mLごとに約2μM核酸複合体から、ポリメラーゼ5,000U/mLごとに2mM核酸複合体の間である、請求項13の核酸増幅のための組成物。
【請求項16】
緩衝剤が、TRIS緩衝剤、MOPS、またはHEPES緩衝剤を含む、請求項13の核酸増幅のための組成物。
【請求項17】
ターゲット核酸分子を増幅する方法であって:
ターゲット核酸分子をDNAポリメラーゼおよび請求項1の二本鎖核酸複合体と接触させる工程を含む、ここで、二本鎖核酸複合体は、約25℃〜約90℃の範囲の温度でDNAポリメラーゼに結合し;
増幅されたターゲット核酸分子を得て、そして1またはそれより多い非特異的増幅産物または二次産物が、二本鎖核酸複合体と接触させなかったものに比較した際、減少する
前記方法。
【請求項18】
二本鎖核酸複合体と接触させなかったターゲット核酸分子に関するポリメラーゼ活性に比較した際、約20℃〜25℃の間の温度でのポリメラーゼ活性が減少する、請求項17の方法。
【請求項19】
約50%〜約90%の間の範囲で、約20℃〜25℃の間の温度でのポリメラーゼ活性が減少する、請求項18の方法。
【請求項20】
増幅されるターゲット核酸分子の量が、二本鎖核酸複合体と接触させなかった場合に得られるターゲット核酸分子の量と比較した際、増加する、請求項17の方法。
【請求項21】
得られる増幅されたターゲット核酸の量が、約2X〜約20Xの間の範囲で増加する、請求項20の方法。
【請求項22】
ターゲット核酸分子を増幅させる方法であって:
ターゲット核酸分子を、古細菌の種由来のDNAポリメラーゼおよび請求項6の二本鎖核酸複合体と接触させる工程を含む、ここで、二本鎖核酸複合体は、約25℃〜約90℃の範囲の温度でDNAポリメラーゼに結合し;
増幅されたターゲット核酸分子を得て、そして1またはそれより多い非特異的増幅産物または二次産物が、二本鎖核酸複合体と接触させなかったものに比較した際、減少する
前記方法。
【請求項23】
二本鎖核酸複合体と接触させなかったターゲット核酸分子に関するポリメラーゼ活性に比較した際、約20℃〜25℃の間の温度でのポリメラーゼ活性が減少する、請求項22の方法。
【請求項24】
約50%〜約90%の間の範囲で、約20℃〜25℃の間の温度でのポリメラーゼ活性が減少する、請求項23の方法。
【請求項25】
ターゲット核酸分子を増幅させる方法であって:
a.緩衝剤、ターゲット核酸分子、1またはそれより多いプライマー、DNAポリメラーゼ、アデニン、グアニン、シトシンおよびチミンの供給、ならびに請求項1の二本鎖核酸複合体を混合し;
b.1またはそれより多いサイクルで、温度を増加させることによって、ターゲット核酸分子の増幅を可能にする工程を含む、ここで、温度は、約25℃〜約90℃の範囲であり、
増幅されたターゲット核酸分子を得て、そして1またはそれより多い非特異的増幅産物または二次産物が、二本鎖核酸複合体と接触させなかったものに比較した際、減少する
前記方法。
【請求項26】
二本鎖核酸複合体と接触させなかったターゲット核酸分子に関するポリメラーゼ活性に比較した際、約20℃〜25℃の間の温度でのポリメラーゼ活性が減少する、請求項25の方法。
【請求項27】
増幅されるターゲット核酸分子の量が、二本鎖核酸複合体と接触させなかったターゲット核酸分子と比較して、増加する、請求項25の方法。
【請求項28】
核酸増幅のためのキットであって;キットが:
a.請求項1のブロッキング二本鎖核酸複合体、および
b.ポリメラーゼ
を含む、前記キット。
【請求項29】
ポリメラーゼが、群:Taq DNAポリメラーゼ;BST DNAポリメラーゼ;PFU DNAポリメラーゼ;Klenow DNAポリメラーゼ;T7 DNAポリメラーゼ;T4 DNAポリメラーゼ;Phi29 DNAポリメラーゼ;およびRB69 DNAポリメラーゼ;からなるDNAポリメラーゼである、請求項28のキット。
【図2】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図1】
【図3】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図1】
【図3】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【公表番号】特表2013−509885(P2013−509885A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538043(P2012−538043)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/055701
【国際公開番号】WO2011/057119
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(512116985)エンザイマティックス,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/055701
【国際公開番号】WO2011/057119
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(512116985)エンザイマティックス,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
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