説明

熱延コイルの製造条件決定装置および方法

【課題】熱延コイルの製造条件の適切な管理範囲を決定することができる、熱延コイルの製造条件決定装置および方法を提供することを課題とする。
【解決手段】熱延コイル毎の製造条件と材料試験結果が格納されている製造条件・材質データベースを用いて、指定する2つの製造条件の平面上における材質の予測曲面を計算し、併せて、前記2つの製造条件を説明変数として相互検証法により計算した予測曲面の誤差標準偏差を計算する材質予測手段と、該材質予測手段で計算した材質予測曲面および誤差標準偏差、材質の合否基準、および先見知識から得られる製造条件の制約に基づいて、対象とする熱延コイルの製造条件の管理範囲を決定する製造条件決定手段と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱延コイルの製造条件の管理範囲を決定する、熱延コイルの製造条件決定装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延(一般的に熱延と呼ばれる)プロセスとは、一般的に、連続鋳造または造塊、分塊によって製造されたスラブ状の金属材料を、加熱炉にて数百〜千数百度に加熱した後、熱間圧延ライン上に抽出し、一対または複数対のロールで狭圧し、そのロールを回転させることで、薄く延ばし、コイル状に巻き取るプロセスのことである。
【0003】
近年、熱延ラインにて圧延されるコイルに要求される品質は以前と比べて厳格化してきている。その代表的な例は、自動車軽量化に伴うハイテン、つまり高張力鋼である。特に自動車用ハイテンは、強度だけでなく、加工性が重視されるとともに、材質の均一性、すなわちコイルのどの部分を採取しても材質が同じことも求められるようになっている。
【0004】
従来から材質の管理は、成分や温度の調整で行っている。新しい規格のコイルの製造条件を決定する際には、材質テストを行い、製造条件と材質テスト結果との単相関を取り、製造条件の管理範囲を決めている。
【0005】
このように、単相関のみで製造条件の管理範囲を決定すると、材質が必ず規格を満足するような矩形領域の製造条件の範囲を決定してしまうことになる(後段の実施例にて、具体例を述べることとする)。しかしながら、場合によっては、材質が規格を満足しているのにも拘わらず、製造管理範囲に入っていない場合が発生してしまう。例えば、自動車用ハイテンにおいて、コイル巻き取り温度を製造の管理条件とし、所定の巻き取り温度以下のものについてはそこで切断し製品としないような操業をしている。このように、材質が規格を満足しているのに、操業上不合格とされてしまうことは、歩留まりの観点からは問題である。
【0006】
これまでの鋼材の材質推定技術としては、例えば、特許文献1に開示された技術がある。この技術は、ダイナミック制御やセットアップで目標の材質が得られる冷却パターンを決定して歩留まりを向上させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−236119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した特許文献1に開示された技術は、鋼材の材質推定精度を高めるための技術であり、材料試験を行う前に材質推定により品質異常を早期に発見でき、不良製品の大量発生を防止できるものの、本発明が対象とする製造条件の管理範囲については考慮されていないため、材質が規格を満足しているのにも拘わらず、製造管理範囲に入っておらず不合格とされてしまうという問題には対処できない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、熱延コイルの製造条件の適切な管理範囲を決定することができる、熱延コイルの製造条件決定装置および方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は次の発明により解決される。
【0011】
[1] 熱延コイルの製造条件の管理範囲を決定する、熱延コイルの製造条件決定装置であって、
熱延コイル毎の製造条件と材料試験結果が格納されている製造条件・材質データベースを用いて、指定する2つの製造条件の平面上における材質の予測曲面を計算し、併せて、前記2つの製造条件を説明変数として相互検証法により計算した予測曲面の誤差標準偏差を計算する材質予測手段と、
該材質予測手段で計算した材質予測曲面および誤差標準偏差、材質の合否基準、および先見知識から得られる製造条件の制約に基づいて、対象とする熱延コイルの製造条件の管理範囲を決定する製造条件決定手段と、
を具備することを特徴とする熱延コイルの製造条件決定装置。
【0012】
[2] [1]に記載の熱延コイルの製造条件決定装置において、
前記材質予測手段は、
前記製造条件・材質データベースに含まれる材質と相関が高い2つの製造条件を材質の推定に用いる説明変数として選択する説明変数選択手段と、
距離関数を定義し、前記説明変数選択手段で選択した説明変数を軸とする平面上の点と、前記製造条件・材質データベースの各データとの距離を計算する距離計算手段と、
該距離計算手段で計算した距離に基づいて前記製造条件・材質データベース内の各データに重み付けを行う重み付け手段と、
該重み付け結果に基づき材質の推定値を計算し出力する重み付き平均・回帰手段と、
を具備することを特徴とする熱延コイルの製造条件決定装置。
【0013】
[3] [1]または[2]に記載の熱延コイルの製造条件決定装置において、
前記製造条件決定手段は、
計算した予測曲面上で、前記合否基準の下限+n×誤差標準偏差以上、および/または、前記合否基準の上限−n×誤差標準偏差以下(ただし,nは実数)である領域と、
先見知識から得られる製造条件の制約内の領域との共通する領域を、対象とする熱延コイルの製造条件の管理範囲として決定することを特徴とする熱延コイルの製造条件決定装置。
【0014】
[4] 熱延コイルの製造条件の管理範囲を決定する、熱延コイルの製造条件決定方法であって、
熱延コイル毎の製造条件と材料試験結果が格納されている製造条件・材質データベースを用いて、指定する2つの製造条件の平面上における材質の予測曲面を計算し、併せて、前記2つの製造条件を説明変数として相互検証法により計算した予測曲面の誤差標準偏差を計算する材質予測ステップと、
該材質予測ステップで計算した材質予測曲面および誤差標準偏差、材質の合否基準、および先見知識から得られる製造条件の制約に基づいて、対象とする熱延コイルの製造条件の管理範囲を決定する製造条件決定ステップと、
を有することを特徴とする熱延コイルの製造条件決定方法。
【0015】
[5] [4]に記載の熱延コイルの製造条件決定方法において、
前記材質予測ステップは、
前記製造条件・材質データベースに含まれる材質と相関が高い2つの製造条件を材質の推定に用いる説明変数として選択する説明変数選択ステップと、
距離関数を定義し、前記説明変数選択ステップで選択した説明変数を軸とする平面上の点と、前記製造条件・材質データベースの各データとの距離を計算する距離計算ステップと、
該距離計算ステップで計算した距離に基づいて前記製造条件・材質データベース内の各データに重み付けを行う重み付けステップと、
該重み付け結果に基づき材質の推定値を計算し出力する重み付き平均・回帰ステップと、
を有することを特徴とする熱延コイルの製造条件決定方法。
【0016】
[6] [4]または[5]に記載の熱延コイルの製造条件決定方法において、
前記製造条件決定ステップは、
計算した予測曲面上で、前記合否基準の下限+n×誤差標準偏差以上、および/または、前記合否基準の上限−n×誤差標準偏差以下(ただし,nは実数)である領域と、
先見知識から得られる製造条件の制約内の領域との共通する領域を、対象とする熱延コイルの製造条件の管理範囲として決定することを特徴とする熱延コイルの製造条件決定方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、熱延コイルの材質予測曲面および誤差標準偏差、材質の合否基準、および先見知識から得られる製造条件の制約に基づいて製造条件の管理範囲を決定するようにしているので、材質が基準を満足しているのにも拘わらず製造管理範囲に入っていない場合が発生してしまい不合格とすることがなくなり、歩留まりの向上が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る熱延コイルの製造条件決定装置における構成概要を示す図である。
【図2】材質予測手段における処理手順1(材質予測曲面出力)を示す図である。
【図3】材質予測手段における処理手順2(予測誤差の標準偏差出力)を示す図である。
【図4】製造条件・材質データベースの保存形式を示す図である。
【図5】材料試験結果と正規化後の入力データを示す図である。
【図6】製造条件決定手段における処理手順を示す図である。
【図7】製造条件の管理範囲の決定結果の保存形式を示す図である。
【図8】本発明の実施例を示す図である。
【図9】従来方法の実施例を示す図である。
【図10】本発明と従来方法による材質合格領域の比較例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明に係る熱延コイルの製造条件決定装置における構成概要を示す図である。図中の製造条件・材質データベースに保存されているデータに基づき、材質予測手段と製造条件決定手段とからなる製造条件決定装置にて熱延コイルの製造条件の管理範囲を決定する。
【0020】
図4は、製造条件・材質データベースの保存形式を示す図である。材料試験結果(N1変数)と製造条件実績(N2変数)からなる1組のデータが、図に示すようにmセット保存されている。材料試験結果には引張強度(以降TSと称す)を含み、製造条件にはTSを予測するのに使用するランナウトテーブルの中間温度とコイラ巻き取り温度(図1参照)を含むものとする。
【0021】
図2は、材質予測手段における処理手順1(材質予測曲面出力)を示す図である。まず説明変数選択手段により、製造条件・材質データベースの中から、成分、および粗圧延機出側、仕上圧延機入側、仕上圧延機中間、仕上圧延機出側、ランナウトテーブルの中間、コイラー入側の各板温度の中から材質と相関が高い2つの変数を説明変数に指定する。これにより、材質予測する平面が決まる。
【0022】
図中の001は、材質の予測計算をする部分であり、局所モデルと呼ぶことにする。局所モデル001における具体的な処理内容を、それを構成する図中の100、101、および102の順に説明を行う。
【0023】
先ず、図中の100は、製造条件・材質データベースに含まれる各データと選択した2つの説明変数平面上の格子点(要求点と呼ぶ)との類似度を測るための距離関数を定義し、定義に従い距離を計算する距離計算手段である。
【0024】
距離を計算する例として、正規化ユークリッド距離で計算する場合で説明を行う。まず、製造条件・材質データベースに含まれる指定した2変数の全てのデータを、平均が0、標準偏差が1となるように正規化する。例えば、Xj(j=1,2)が説明変数の場合は、Xjの平均値(μとおく)と標準偏差(σとおく)を求め、xjk =(Xjk−μ)/σ(k=1・・・,m)として正規化する。正規化したデータは、図5のような形で得られる。
【0025】
次にμとσを使用して要求点を製造条件・材質データベースに含まれるデータと同様に正規化する。ここで、X1 とX2に対応する正規化後の要求点をL1、L2 と置く。
【0026】
距離関数は、図5の正規化後のデータと、正規化後の要求点との類似度の指標である距離を計算するものである。距離関数をユークリッドノルムとする場合は、i番目のデータと要求点との距離di(i=1,2,…m)は、次の式(1)となる。
di=SQRT{(xq1i−L1)2+(xq2i−L2)2} ・・・・・・(1)
なお、この他の距離の関数としては、正規化しないユークリッド距離やマハラノビス距離、一次ノルム、無限大ノルム(最大値成分を取る距離)などを用いても良い。
【0027】
次に、図中の101は、距離計算手段100で計算した距離に基づき、各データに重み付けをする重み付け手段である。距離計算手段100での処理の結果として、i番目のデータと要求点の距離di(i=1,2,…m)が入力されており、これから重みを求める。
【0028】
重みとは、説明変数平面での点と製造条件・材質データベース中の各データの近さを表す指標であり、近いほど重みは大きい値を取り、遠いほど重みは小さい値を取る。ガウス関数による重み付けの場合では、i番目のデータに対する重みWiは、式(2)となる。
Wi=exp(-a×di2) ・・・・・・・・・(2)
ここで、aは調整パラメータであり、正の値を予め指定しておく。ここでは、ガウス関数を用いているが、トリキューブ関数等のように、様々な距離に対して単調減少する連続関数を用いても良い。
【0029】
そして、図中の102は、重み付き平均または重み付き回帰により要求点での材質の予測値を計算し出力し保存する、重み付き平均・回帰手段である。例えば、重み付け手段101で計算した重みを用いて重み付き平均を計算し、これを材質の予測値yk (式(3))とする。
yk=Σ(Wi×yki)/ ΣWi (k=1,2,…N1) ・・・・・・・(3)
ただし、ΣWi <1の場合は、予測値の信頼性が低いので、この時の予測値は0とする。ここでは、重みつき平均による場合を示したが、重み付き最小2乗法で材質を予測しても良い。
【0030】
続いて、図中の全格子点計算完了判断103の条件文により、平面上の全格子点の予測値を計算するまで予測値を計算する。図中の材質予測曲面出力104は、保存した全格子点の予測値を、その予測値の大小に応じて色づけした予測曲面を出力する処理である。
【0031】
図3は、材質予測手段における処理手順2(予測誤差の標準偏差出力)を示す図である。ここでの処理は、相互検証法(クロスバリデーション)にて、製造条件・材質データベース中の指定の条件を用いて材質の予測を行い、予測誤差の標準偏差を計算して出力する。
【0032】
相互検証法(クロスバリデーション)とは、全部でm個のデータがあるときに、データを1個とm−1個に分け、1個のデータをm−1個のデータを用いて予測して、その予測誤差を評価し、それを全てのデータの組み合わせについて行う方法である。
【0033】
本発明では、図に示すように材質予測方法として前述した局所モデル001を採用して、予測誤差の標準偏差を計算し、全データの組み合わせ評価完了判断105の条件文により、全データの組み合わせについてを評価が終われば、予測誤差の標準偏差出力を行う。
【0034】
図6は、製造条件決定手段における処理手順を示す図である。先ず、3種類ある入力から説明を行う。
【0035】
先ず、入力のひとつである材質の合否基準には、対象とするコイルの規格の値を入力する。例えば、熱延コイルのTS規格が590Mpaの場合は、590と入力する。また上限を定めたい場合には、上限も併せて指定する。
【0036】
次の入力には、予め物理的な制約や冶金的な解釈といった先見知識から決定される製造条件を入力する。例えば、成分や温度管理範囲の上下限(制約条件)を指定するものである。そして最後の入力には、前述した材質予測手段の計算結果である、材質予測曲面と、予測誤差の標準偏差を入力する。
【0037】
図中の201の製造条件ライン生成部では、材質予測曲面の2つの製造条件軸に、先見知識から決定される製造条件を引き、さらに予測誤差の標準偏差を考慮して、材質合否ラインが厳しくなる分だけシフトさせて、その等高線を材質予測曲面に引く。例えば、TSの規格下限が590Mpaとすると、合否ラインは590+n×σ(nは実数として、2とする)として材質予測曲面に等高線を引く。YS(降伏応力)の規格上限が590Mpaとすると590−n×σとして、等高線を引く。
【0038】
そして、図中の202の製造条件決定部では、製造条件ライン生成部201にて生成したライン全てを考慮した、材質の規格を満足するような製造条件の管理範囲を決定し、保存する。図7は、製造条件の管理範囲の決定結果の保存形式を示す図である。2つの製造条件をメッシュで区切ったテーブル形式とし、その中にそれぞれの材質推定値と材質合否の情報(例えば、合は1、否、は0など)を蓄える。
【実施例】
【0039】
同じ熱延コイルに対して、従来方法(単相関でそれぞれの製造条件の上下限を決定する方法)と本発明を適用した実施例を示す。
【0040】
図8は、本発明の実施例を示す図である。本実施例で材質といっているのは、引張強度TSである。今回、製造条件として、TSと相関の高い2変数として、巻き取り温度とランナウトテーブルの中間温度を選択している。
【0041】
材質予測手段にて、材質予測曲面と予測曲面の誤差標準偏差を出力した。このとき、誤差標準偏差は5.1Mpaであった。この材料はベイナイトの分率が材質制御上厳格に規定されており、製造条件決定手段の先見知識として、巻き取り温度が440度〜550度、中間温度が560度〜620度の範囲であることが求められているので、この温度を先見知識の製造条件とした。また、本実施例はTSの合否基準は570Mpa以上と、合否基準の下限だけが指定された一例である。
【0042】
材質の予測曲面の誤差を2σ分とり、材質予測曲面上で570+2σ=580.2MPaを材質曲面上の合格ラインとしこれ以上の材質曲面上の領域を製造条件の管理範囲とした。これらの結果、図8に材質合格領域として示す範囲が本発明による温度管理範囲(製造条件の管理範囲)と決定した。
【0043】
これに対して、図9は、従来方法の実施例を示す図である。この場合、製造条件(巻取り温度と中間温度)とTSの散布図(図9の上段の2つの図)を描いて、実績データがTSの基準である570Mpaを下回らないような製造条件(巻取り温度と中間温度)の範囲を決定する。この結果、巻き取り温度は440度から530度が温度管理範囲となり、中間温度は560度から580度が温度管理範囲となる。これらを併せて、最終的な温度管理範囲は、図9の下段の図に示す網掛けをした矩形部分となった。
【0044】
図10は、本発明と従来方法による材質合格領域の比較例を示す図である。本発明では、材質と温度の非線形な関係を考慮して温度管理範囲を設定できるために、従来の単相関で決定する温度管理範囲よりも広い温度レンジで材質を保証することが可能となり、従来法と比較し歩留まり向上が見込めることが確認できた。
【符号の説明】
【0045】
001 局所モデル
100 距離計算手段
101 重み付け手段
102 重み付き平均・回帰手段
103 全格子点計算完了判断
104 材質予測曲面出力
105 全データの組み合わせ評価完了判断
106 予測誤差の標準偏差出力
201 製造条件ライン生成部
202 製造条件決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱延コイルの製造条件の管理範囲を決定する、熱延コイルの製造条件決定装置であって、
熱延コイル毎の製造条件と材料試験結果が格納されている製造条件・材質データベースを用いて、指定する2つの製造条件の平面上における材質の予測曲面を計算し、併せて、前記2つの製造条件を説明変数として相互検証法により計算した予測曲面の誤差標準偏差を計算する材質予測手段と、
該材質予測手段で計算した材質予測曲面および誤差標準偏差、材質の合否基準、および先見知識から得られる製造条件の制約に基づいて、対象とする熱延コイルの製造条件の管理範囲を決定する製造条件決定手段と、
を具備することを特徴とする熱延コイルの製造条件決定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱延コイルの製造条件決定装置において、
前記材質予測手段は、
前記製造条件・材質データベースに含まれる材質と相関が高い2つの製造条件を材質の推定に用いる説明変数として選択する説明変数選択手段と、
距離関数を定義し、前記説明変数選択手段で選択した説明変数を軸とする平面上の点と、前記製造条件・材質データベースの各データとの距離を計算する距離計算手段と、
該距離計算手段で計算した距離に基づいて前記製造条件・材質データベース内の各データに重み付けを行う重み付け手段と、
該重み付け結果に基づき材質の推定値を計算し出力する重み付き平均・回帰手段と、
を具備することを特徴とする熱延コイルの製造条件決定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱延コイルの製造条件決定装置において、
前記製造条件決定手段は、
計算した予測曲面上で、前記合否基準の下限+n×誤差標準偏差以上、および/または、前記合否基準の上限−n×誤差標準偏差以下(ただし,nは実数)である領域と、
先見知識から得られる製造条件の制約内の領域との共通する領域を、対象とする熱延コイルの製造条件の管理範囲として決定することを特徴とする熱延コイルの製造条件決定装置。
【請求項4】
熱延コイルの製造条件の管理範囲を決定する、熱延コイルの製造条件決定方法であって、
熱延コイル毎の製造条件と材料試験結果が格納されている製造条件・材質データベースを用いて、指定する2つの製造条件の平面上における材質の予測曲面を計算し、併せて、前記2つの製造条件を説明変数として相互検証法により計算した予測曲面の誤差標準偏差を計算する材質予測ステップと、
該材質予測ステップで計算した材質予測曲面および誤差標準偏差、材質の合否基準、および先見知識から得られる製造条件の制約に基づいて、対象とする熱延コイルの製造条件の管理範囲を決定する製造条件決定ステップと、
を有することを特徴とする熱延コイルの製造条件決定方法。
【請求項5】
請求項4に記載の熱延コイルの製造条件決定方法において、
前記材質予測ステップは、
前記製造条件・材質データベースに含まれる材質と相関が高い2つの製造条件を材質の推定に用いる説明変数として選択する説明変数選択ステップと、
距離関数を定義し、前記説明変数選択ステップで選択した説明変数を軸とする平面上の点と、前記製造条件・材質データベースの各データとの距離を計算する距離計算ステップと、
該距離計算ステップで計算した距離に基づいて前記製造条件・材質データベース内の各データに重み付けを行う重み付けステップと、
該重み付け結果に基づき材質の推定値を計算し出力する重み付き平均・回帰ステップと、
を有することを特徴とする熱延コイルの製造条件決定方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の熱延コイルの製造条件決定方法において、
前記製造条件決定ステップは、
計算した予測曲面上で、前記合否基準の下限+n×誤差標準偏差以上、および/または、前記合否基準の上限−n×誤差標準偏差以下(ただし,nは実数)である領域と、
先見知識から得られる製造条件の制約内の領域との共通する領域を、対象とする熱延コイルの製造条件の管理範囲として決定することを特徴とする熱延コイルの製造条件決定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−203177(P2011−203177A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72266(P2010−72266)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】