説明

熱延鋼帯の製造方法

【課題】熱間圧延における鋼帯上下面の周期性欠陥について、早期に発見して防止を図るための方法を提供する。
【解決手段】熱間仕上圧延機出側のランアウトテーブルに配設した、鋼帯上下面の欠陥を光学的手段により自動的に検出する表面検査装置を用いて、巻取前の鋼帯を検査して周期性欠陥を検出し、該検出結果に基づいて、前記熱間仕上圧延機の圧延スタンドの中から前記周期的欠陥を発生させている圧延スタンドを特定し、該特定した圧延スタンドにオンラインロール研削を施すことにより、次材以降の圧延時の鋼帯の周期的欠陥発生を防止することを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱延鋼帯の製造方法に関し、特に、熱延鋼帯の製造中に、鋼帯上面あるいは下面の周期性欠陥(欠陥には疵および異常が含まれる)を検出し、次材以降の圧延時の鋼帯の周期性欠陥を防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家電製品用、自動車用および冷延用の素材である熱延鋼帯はコイル状に巻かれて出荷されることが一般的である。コイル状の鋼帯は出荷前に巻きほぐして帯状とし、その鋼帯表面を例えば照明とカメラとからなる表面検査装置によって検査し、欠陥の有無を識別する。
従来、これら欠陥を検出する手段として、特許文献1などに記載されるような鋼板表面検査装置が提案されており、また、特許文献2などには、表面検査装置によりスケール性欠陥を検出した際、仕上圧延出側温度を低下させ、または圧下率を調整することでスケール疵の連続発生を防止する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−277146号公報
【特許文献1】特開平11−010204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献に記載される技術は、欠陥を検出する手段、あるいは、スケール性欠陥など、圧延温度に影響される欠陥を検出して、その原因を排除する方法に限定されており、スケール性欠陥以外の欠陥を検出すると同時にその検出結果が欠陥を防ぐ手段にフィードバックされることはなかった。
すなわち、熱間圧延工程で混入する、特にロール疵等の周期性欠陥はできるだけ早く、できれば熱間圧延直後に見つけて、次材以降の圧延が実施される前に、適切な熱延条件にして防ぐ必要がある。早いほど、その間に製造される欠陥を伴った圧延材の本数を少なくできて、歩留り向上、品質向上に大きく寄与できる。しかし、従来は、数十コイルごとに行う熱間圧延後のコイルの巻戻し点検での疵の有無の情報や、あるいは後工程である酸洗ラインや熱延鋼帯スキンパスラインで疵を発見または同定してからその情報を、熱間圧延にフィードバックしており、時間的な遅れを生じて、欠陥を伴った大量の不具合材を製造する場合があり、大きな問題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、熱間圧延における鋼帯上下面の周期性欠陥について、早期に発見して防止を図るための方法を提供するものであり、その要旨構成は次のとおりである。
(1)熱間仕上圧延機出側のランアウトテーブルに配設した、鋼帯上下面の欠陥を光学的手段により自動的に検出する表面検査装置を用いて、巻取前の鋼帯を検査して周期性欠陥を検出し、該検出結果に基づいて、前記熱間仕上圧延機の圧延スタンドの中から前記周期的欠陥を発生させている圧延スタンドを特定し、該特定した圧延スタンドにオンラインロール研削を施すことにより、次材以降の圧延時の鋼帯の周期的欠陥発生を防止することを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、熱延鋼帯の上下面の欠陥を生じさせている圧延スタンド(略してスタンド)を、前記熱延鋼帯の製造直後または製造後早期に特定できて、次材以降の圧延が実施される前に、前記特定されたスタンドに、オンラインロールグラインダによるロール研削を実施し、欠陥発生を早期に防止できるだけでなく、その間に製造される欠陥を伴った圧延材の本数を少なくできて、歩留り向上、品質向上に大きく寄与できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
熱延鋼帯の上下面に生じる主な周期性欠陥としてロール疵がある。ロール疵とは、何らかの原因で圧延ロールに疵が生じ、それが圧延中の鋼帯に転写されることで、鋼帯の上面もしくは下面に凹凸が生じたものである。熱延鋼帯にロール疵があると、ロール疵の凹凸により、最終製品において欠陥となるため、そのまま出荷することができなくなり問題である。
【0008】
そこで熱延鋼帯をコイル状に巻き取った後、巻戻し点検にて尾端数十メートルの点検を行い、目視でコイル状鋼帯の上下面を観察し、ロール疵があった場合、そのロール疵確認後の熱間圧延から、ロール交換、もしくはオンラインロールグラインダによるロール研削を実施しており、その間の遅れによって、欠陥を生じた鋼帯は歩留り低下、品質低下をきたしていた。
【0009】
そこで、本発明者らは、熱間圧延機と巻取機の間のランアウトテーブルに配設した、鋼帯上下面の欠陥を光学的手段により自動的に検出する表面検査装置を用いて、検出した欠陥のうち、周期性を有する欠陥を認めた場合にはアラームを出力することで、圧延を監視し操作するオペレータに情報を開示した。アラームを出力して、オンラインロールグラインダによるロール研削をすることで、次材の熱延条件にすぐにフィードバックできて、時間遅れがなく次材からは周期性欠陥を発生させずに圧延できるわけである。
【実施例】
【0010】
従来例で用いた熱延ラインは、加熱炉から鋼片を順次抽出して、全3スタンドの粗圧延機で粗圧延し、次いで全7スタンドの仕上圧延機で仕上圧延して熱延鋼帯となし、ランアウトテーブル上を走行させてコイラ(巻取機)でコイル状に巻き取ることが可能な一般的構成を有する。また、仕上圧延機の各スタンドにはオンラインロールグラインダが配備されている。一方、本発明例で用いた熱延ラインは、従来例で用いた熱延ラインに加えて、前記ランアウトテーブルのコイラ寄りの箇所に、鋼帯上下面の欠陥を光学的手段により自動的に検出する表面検査装置を配設したものである。
(本発明例)
鋼片を50本続けて圧延して、板厚1.8〜6mm、板幅700〜1650mmの範囲の鋼帯を製造する操業において、前記表面検査装置により、15本目の圧延材にロール疵が検出された。該ロール疵のピッチから仕上第7スタンドでのロール疵と特定し、即座に抽出(加熱炉からの鋼片抽出の意、以下同じ)を中断し、すでに熱延ライン上にあった16本目の圧延を終了させた後、仕上第7スタンドを対象にオンラインロールグラインダによるロール研削を行った。その結果、17本目以降ではロール疵の発生はなかった。すなわち、製造した全50本の熱延鋼帯の中、ロール疵で不良となったものは15本目および16本目の計2本であった。
(従来例)
鋼片を50本続けて圧延して、板厚1.8〜6mm、板幅700〜1650mmの範囲の鋼帯を製造する操業において、10本目のコイルを巻戻し点検ラインにて巻戻して鋼帯の尾端30mを目視観察したところロール疵はなかったが、25本目を観察したところロール疵が認められた。即座に抽出を中断したが、すでに35本目の圧延が完了していた。ロール疵のピッチから仕上第7スタンドでのロール疵と特定し、仕上第7スタンドを対象にオンラインロールグラインダによるロール研削を行った。その結果、36本目以降ではロール疵の発生はなかった。また、可能性として11本目以降24本目までのコイルにもロール疵混入の疑いがあるため、それらのコイルをスキンパスラインにて点検したところ、19本目以降のコイルでロール疵が発生していることが分った。すなわち、製造した全50本の熱延鋼帯の中、ロール疵で不良となったものは19本目以降35本目までの計17本であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間仕上圧延機出側のランアウトテーブルに配設した、鋼帯上下面の欠陥を光学的手段により自動的に検出する表面検査装置を用いて、巻取前の鋼帯を検査して周期性欠陥を検出し、該検出結果に基づいて、前記熱間仕上圧延機の圧延スタンドの中から前記周期的欠陥を発生させている圧延スタンドを特定し、該特定した圧延スタンドにオンラインロール研削を施すことにより、次材以降の圧延時の鋼帯の周期的欠陥発生を防止することを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。

【公開番号】特開2010−264472(P2010−264472A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117203(P2009−117203)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)