説明

熱感知器

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱感知器に係り、さらに詳しくはサーミスタのような熱感知素子の熱による電気的特性の変化を利用して火災の発生を感知する熱感知器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図9は従来の熱感知器の分解斜視図、図10は同上の中カバーの斜視図で、特開平1−259494号公報記載の図面と数字符号が示されている。
図9と図10において、1はボデイ、2はプリント板、3は接続端子、5はサーミスタ、5aと5bはサーミスタ5のフォーミングされたリード足と感熱部である。また、7はカバー、8は中カバー、8aは穴、8bは足、9はねじ、11はベースである。中カバー8は略円盤状の成形品で中心部にサーミスタ5を通すために径を大きくした穴8aが形成され、下面にはねじ9が螺着されるねじ孔を形成した一対の足8bが垂設されている。
【0003】
上述の従来の熱感知器は、サーミスタ5の2本の足5aをフォーミングしてプリント板2に半田付けする。次に、中カバー8の穴8aにサーミスタ5の感熱部5bを挿通して、中カバー8の足8bをプリント板2の反対面からねじ9により螺着する。中カバー8を取り付けたプリント板2を、ボデイ1内に取着してカバー7とボデイ1とを嵌合させる。そして、ボデイ1の裏側に形成された一対のL型の引掛片により、嵌合されたカバー7とボデイ1を天井に取着されたベース11に取り付けるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図9,10に示された従来の熱感知器は、サーミスタ5の足5aを予めフォーミングしてから、サーミスタ5をプリント基板2に半田付けするようになっている。したがって、先ず第1に足5aをフォーミングするので、それだけ面倒な操作が伴うことになる。また、サーミスタ5を半田付けするときに、プリント板2に対して垂直状態に保持しなければならない。傾斜状態でサーミスタ5をプリント板2に半田付けすると、カバー7との相対位置が狂って正確な位置決めができないことになる。しかも、上記のように、中心に8aを形成して一対の足8bを垂設した成形品の中カバーを備えるので、それだけ部品が増えて組立や構造が複雑になる等の問題点がある。
【0005】
本発明は、上述のような従来の熱感知器の問題点を解消するためになされたもので、組立が容易で構成を簡単にすると共に、堅牢で故障が少なく長期の使用に耐える熱感知器を実現することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る熱感知器は、天井面に取り付けられる容器ベースに接合して結合され、中心部を貫通するネジ孔を有する容器カバーと、リード線を有する熱感知素子が保護管の先端部に封入されてなり、中空ボルトの貫通孔に保護管の基部を挿通してその先端部側が突出するように固定された感熱部と、感知器回路が実装され、かつ中心付近に貫設された挿通孔を有し、挿通孔に熱感知素子のリード線が挿通され、そのリード線の心線が背面側に設けられた接続点に接続されて感知器回路と接続されたプリント基板とを備え、中空ボルトの容器カバーのネジ孔への螺合によって、感熱部を容器カバーの外側から固定し、プリント基板を容器カバーの内側から取り付けたものである。
【0007】
回りを充填材で充填された熱感知素子を封入した保護管は中空ボルトの貫通孔に挿入されてから、先端部を突出させてろう付けまたは半田付けによって中空ボルトに固着される。熱感知素子等を組み付けた感熱部は、中空ボルトをネジ孔に螺入して容器カバーの中心部に立設される。次に、スペーサが容器カバーの内面に固定され、その上にプリント基板が取り付けられる。取り付けられたプリント基板の挿通孔から引き出された熱感知素子のリード線の心線は、プリント基板の背面の接続点に半田付けされる。心線の半田付け接続で、熱感知素子がプリント基板上に実装された感知器回路に接続される。
【0008】
引き続いて、内部配線が接続されて、仕切板が容器カバーの内面に固定されて回路収納室にプリント基板が収納される。一方、容器ベースは建造物内の天井に取り付けられて、外部配線が導入され接地線も接続される。仕切板を組み付けた容器カバーの外周に切欠部で形成された溝内に、Oリングをやや引き延ばしながら嵌め合わせる。そして、仕切板の外周を容器ベースの開口部に嵌入してから、六角レンチでボルトを締め付けて容器カバーを容器ベースに固定する。このようにして、感熱部を感知方向に向けて熱感知器が天井に設置されて、その後の火災の監視が開始される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。
実施形態1
図1は本発明の実施形態1の要部の分解斜視図、図2は実施形態1の熱感知器の断面図、図3は実施形態1の熱感知器の側面図、図4は実施形態1の熱感知器の底面図、図5は実施形態1の端子台の上面図、図6は実施形態1の熱感知器の組立底面図である。
図1〜6において、1は天井面、2は天井面1に取り付けられた熱感知器である。3は熱感知器2の容器カバー、4は中空円板状の仕切板、5は薄い有蓋円筒形の容器ベースである。容器カバー3と容器ベース5により、熱感知器2の容器10が構成されている。
【0010】
容器カバー3と仕切板4および容器ベース5には金属材が用いられ、例えばアルミニウムをダイカスト成型して製作される。成型後、工作機械等の加工工程を経て、接合面の粗さ等が仕上げられて複数本のネジで結合されている。容器カバー3において、31は容器カバー3の底面側に突出した保護枠、32は保護枠31の裏面に形成された円形の凹欠部、33は容器カバー3の中心部を貫通するネジ孔である。保護枠31は図示のように、突出端を環状部34で連結した6本の傾斜柱35で擂り鉢型に形成されている。36は確認灯の表示窓、37は外周の耳部に設けられた連結孔である。
仕切板4において、41は仕切板4の中心部を貫通する取付孔、42は上面の取付台、43は底面側に突出して円周方向の接合面を有する環状壁、44は外周面、45は外周面44の周縁部に一巡して形成されたL形の切欠部、46は切欠部45に介装されたOリングである。
【0011】
容器ベース5において、51は容器ベース5の底面側に形成された円形の開口部、52は外部配線が左右から挿通されるネジ孔、53と54は内部と外部に設けられた接地ネジ、55は4箇所の耳部に設けられたボルト孔、57は小さい耳部の連結孔である。また、58はネジ孔52に設けられるケーブルグランド、59は外部配線である。4箇所のボルト孔55には図示されていないボルトが挿入されて、容器ベース5が天井面1等に固定される。左右のネジ孔52には電線管ねじ結合式等のケーブルグランド58によりシーリングが施されて、渡り配線や電源線59が容器ベース5に導入される。また、連結孔57はボルト孔55より小さい径で形成され、前記容器カバー3の連結孔37に対応する位置に設けられている。
【0012】
6は感熱部である。感熱部6の構造が、図7と図8に拡大して示されている。60はサーミスタからなる熱感知素子、61は2本のリード線、62はステンレスのような強度を有する金属の保護管、63は充填材である。また、64は軸心に貫通孔65を設けた感熱部6の取付用の中空ボルト、66はパッキン、67はろう付け部である。熱感知素子60は保護管62の内部の先端部に接触して封入され、封入空間に充填材63が充填されている。また、68は感熱部6の留め金具、69は留め金具68を錠締めする止めネジである。熱感知素子60を封入した保護管62は貫通孔65に基部が挿入されて、先端部を突出させてろう付け部67でろう付けや半田付けにより中空ボルト64に気密的に固着される。
【0013】
このようにして組み付けられた感熱部6は、中空ボルト64をネジ孔33に螺入して図8のように容器カバー3の中心部に立設される。そして、中空ボルト64を容器カバー3の中心のネジ孔33に螺合して立設された感熱部6は、保護枠31に包囲されて機械的に保護されるようになっている。8はプリント基板で、81は中心付近に貫設された挿通孔、82はリード線61の接続点、83はプリント基板8に接続された内部配線、84は樹脂で作られた六角スペーサ、85は樹脂ネジである。六角スペーサ84は脚部にネジを設け、頭部に樹脂ネジ85が螺入されるネジ孔が設けられている。
【0014】
9は仕切板4に複数のネジ21によって取り付けられた端子台である。90は断面T字型の絶縁台、91は4本の導電柱、92は端子ネジ、93は端子ネジ92等を仕切る絶縁壁である。絶縁台90には導電柱91がインサートされて、ジアリル樹脂等で成型されている。端子台9を取り付けた仕切板4は外周面44と環状壁43を容器ベース5の開口部51と容器カバー3の凹欠部32の内周面にそれぞれ接合させて、ネジ22により容器カバー3の内側に固定される。そして、仕切板4は容器カバー3と容器ベース5とを仕切る裏蓋を構成し、プリント基板8を収納する回路収納室R1と外部導線端子を収納する端子収納室R2とを上下2室に分離する。また、室R1側から内部配線83が導電柱91に対してネジ91によって固定されている。
【0015】
そして、容器カバー3と容器ベース5により容器10の外筐が構成され、仕切板4を中蓋として容器10内の上下に2つの室R1とR2が形成されている。そして、熱感知器2の容器10で構成する金属容器は全閉構造で内部の爆発圧力に耐える得る強度を持ち、中空ボルト64の三角ねじの螺合や仕切板4の嵌め合い等の相互的な接合面のスキWやスキの奥行きLが両収容室R1,R2の内容積に対して全て爆発等級に応じた防爆規定に適合するような構造に構成されている。21は端子台9を仕切板4に固定するネジ、22は仕切板4を容器カバー3に固定するネジ、23は容器カバー3を容器ベース5に固定するボルトで、ボルト23には六角レンチが嵌合される六角穴付ボルトが用いられている。
【0016】
上述のような構成の本発明の熱感知器の組立要領の一例を示せば、次の通りである。
予め、端子台9を仕切板4にネジ21で固定し、幾分余裕を持たせた内部配線83でプリント基板8と端子台9を接続しておく。また、保護管62の内部に熱感知素子60を封入して充填材53が充填されて、図7に示されたようなリード線61を導出した感熱部6が組み付けられているものとする。
【0017】
先ず最初に図1に詳しく図示されているように、2つの六角スペーサ84の脚部のネジを、容器カバー3の凹欠部32に設けられたネジ孔に螺合して取り付ける。次に、上述した組付け済みの感熱部6のリード線61を容器カバー3のネジ孔33に通してから、パッキン66を嵌めた中空ボルト64をネジ孔33に螺合する。螺合により背面側の凹欠部32に先端を露出した中空ボルト64のネジ部に、留め金具68を螺合してから止めネジ69で回り止めをする。こうして取付面に突出した細い感熱部6が容器カバー3の中心部に立設されて、周辺部を保護枠31に囲まれて外力等から保護される。
【0018】
引き続いて、容器カバー3の凹欠部32に引き出された熱感知素子60のリード線61をプリント基板8の挿通孔81に挿通してから、プリント基板8を六角スペーサ84上に載置して2本の樹脂ネジ85を用いてプリント基板8を固定する。固定されたプリント基板8の接続点82に、リード線61の先端を貫通させる小孔を通してリード線61の心線を個別に半田付けする。リード線61の心線の半田付け接続で、熱感知素子60がプリント基板8上に実装された感知器回路に接続される。リード線61の接続後、プリント基板8から引き出されたやや長めの内部配線63(図2では先端に圧着端子を設けている)を端子台9のネジ95に接続する。そして、環状壁43を凹欠部32に嵌め合わせて、ネジ22で仕切板4を容器カバー3に結合してプリント基板8が室R1に収容される。
【0019】
その後、組み付け前の1組の容器カバー3と容器ベース5が、設置場所に運ばれて最初に容器ベース5側がボルトを利用して建造物の天井面1に取り付けられる。ここで、図示されていない接地用の導線を、容器ベース5の内部と外部の接地ネジ53,54に接続する。続いて、容器ベース5の両側のケーブルグランド58から引き込まれた外部配線59を端子台9の4個の端子ネジ92に接続する。さらに、容器カバー3に取り付けられた仕切板4の外周に切欠部45で形成された溝内に、Oリング46をやや引き延ばしながら嵌め合わせる。そして、仕切板4の外周44を容器ベース5の開口部51に嵌入して六角レンチをボルト23の頭の六角孔に合わせて締め付ける。六角レンチの締め付けで容器カバー3が容器ベース5に一体に固定されて、回路収納室R1と端子収納室R2内にそれぞれプリント基板8と端子台9が収納されて熱感知器2が組み立てられる。
【0020】
而して、前述のように容器カバー3と容器ベース5で構成する熱感知器2の容器10は、全ての接合面のスキWとスキの奥行きLが防爆規定に適合して作られている。したがって、たとえこの熱感知器2が化学工場にような爆発性の雰囲気内に設置されていても、侵入したガスの爆発で熱感知器2を構成する容器10が破壊したり、内部の爆発で発生した火炎が接合面のスキを通過できずに消失されることになる。
【0021】
上記のようにして天井面1等に設置された熱感知器2は、監視領域内の火災の発生を常時監視する。万一、監視領域内で火災が発生すると、感熱部6の熱感知素子60が金属の保護管62を通して火災の熱を速やかに感知する。熱感知素子60の感知信号は、リード線61を介してプリント基板8上に実装された感知器回路に出力される。そして、感熱部6からの入力信号は感知器回路で処理されて、火災信号が端子台9と容器ベース5から導出された渡り配線を通して火災受信機等に送られて必要な防火・防災処理が成される。同時に、確認灯が点灯して表示窓36を照射し、監視領域における発報場所が確認される。
【0022】
なお、上述の本発明の実施形態ではサーミスタの熱感知素子を利用した熱感知器の場合を例示して説明したが、その他の熱感知素子の場合にも本発明を適用することができる。また、実施形態では防爆構造の場合で説明したが、普通の熱感知器にも本発明は適用できる。また、変形八角形のプリント基板を六角スペーサを利用して間隔を空けて容器カバーの内面に取り付けた場合で説明したが、プリント基板は円板状や正多角形等でもよく、スペーサや端子台の構造や材質等についても必ずしも実施形態に限定するものではない。
【0023】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、天井面に取り付けられる容器ベースに接合して結合され、中心部を貫通するネジ孔を有する容器カバーと、リード線を有する熱感知素子が保護管の先端部に封入されてなり、中空ボルトの貫通孔に保護管の基部を挿通してその先端部側が突出するように固定された感熱部と、感知器回路が実装され、かつ中心付近に貫設された挿通孔を有し、挿通孔に熱感知素子のリード線が挿通され、そのリード線の心線が背面側に設けられた接続点に接続されて感知器回路と接続されたプリント基板とを備えたので、従来の熱感知器のように熱感知素子のリード線をフォーミングすることなく、熱感知素子をプリント基板上の感知器回路に接続することができる。また、中空ボルトの容器カバーのネジ孔への螺合によって、感熱部を容器カバーの外側から固定し、プリント基板を容器カバーの内側から取り付けるようにしたので、中空ボルトの螺合により感熱部の接合面が防爆規定に適合する構造に構成され、また、熱感知素子のリード線が垂直状態に保持されるようになって特別な保持手段が不要になり、このため、組立が容易で構成が簡単な、しかも、堅牢で故障が少なく長期の使用に耐える熱感知器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1の要部の分解斜視図である。
【図2】実施形態1の熱感知器の断面図である。
【図3】実施形態1の熱感知器の側面図である。
【図4】実施形態1の熱感知器の底面図である。
【図5】実施形態1の端子台の上面図である。
【図6】実施形態1の熱感知器の組立底面図である。
【図7】実施形態1の感熱部の構成を示す断面図である。
【図8】実施形態1の感熱部付近の構成を示す分解斜視図である。
【図9】従来の熱感知器の分解斜視図である。
【図10】同上の中カバーの斜視図である。
【符号の説明】
2 熱感知器
3 容器カバー
4 仕切板
5 容器ベース
6 感熱部
8 プリント基板
9 端子台
10 容器
32 凹欠部
34 環状部
51 開口部
52 ネジ孔
53 接地ネジ
54 接地ネジ
55 ボルト孔
60 熱感知素子
61 リード線
62 保護管
64 中空ボルト
67 ろう付け部
68 留め金具
69 止めネジ
83 内部配線
90 絶縁台
91 導電柱
92 端子ネジ
93 絶縁壁
R1 回路収納室
R2 端子収納室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井面に取り付けられる容器ベースに接合して結合され、中心部を貫通するネジ孔を有する容器カバーと、
リード線を有する熱感知素子が保護管の先端部に封入されてなり、中空ボルトの貫通孔に前記保護管の基部を挿通してその先端部側が突出するように固定された感熱部と、
感知器回路が実装され、かつ中心付近に貫設された挿通孔を有し、前記挿通孔に前記熱感知素子のリード線が挿通され、そのリード線の心線が背面側に設けられた接続点に接続されて前記感知器回路と接続されたプリント基板とを備え、
前記中空ボルトの前記容器カバーのネジ孔への螺合によって、前記感熱部を前記容器カバーの外側から固定し、前記プリント基板を前記容器カバーの内側から取り付けたことを特徴とする熱感知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【特許番号】特許第3589276号(P3589276)
【登録日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【発行日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−333976
【出願日】平成9年12月4日(1997.12.4)
【公開番号】特開平11−167685
【公開日】平成11年6月22日(1999.6.22)
【審査請求日】平成14年9月26日(2002.9.26)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【参考文献】
【文献】特開平06−131573(JP,A)
【文献】特開平07−043221(JP,A)
【文献】実用新案登録第3038053(JP,Y2)
【文献】特開昭52−096583(JP,A)
【文献】特開平05−210791(JP,A)
【文献】特開平03−141498(JP,A)
【文献】実開昭61−107092(JP,U)
【文献】実開昭59−006288(JP,U)
【文献】特開昭62−247499(JP,A)
【文献】実開平03−127981(JP,U)
【文献】実開平05−083892(JP,U)