熱機関
【課題】液体ピストン中に蒸気が巻き込まれるのを抑制する。
【解決手段】液相状態の作動媒体からなる液体ピストン15が流動可能に封入された管状の容器11と、容器11の一端側部位に設けられ、作動媒体の蒸気を膨張させる膨張部121と、容器11の他端側部位に設けられ、蒸気の膨張によって生じる液体ピストン15の変位を機械的エネルギに変換して出力する出力部14と、出力部14側から膨張部121側へ向かって変位する液体ピストン15の液面に対して粘性力と表面張力とを作用させる粘性力・表面張力作用部21とを備える。
【解決手段】液相状態の作動媒体からなる液体ピストン15が流動可能に封入された管状の容器11と、容器11の一端側部位に設けられ、作動媒体の蒸気を膨張させる膨張部121と、容器11の他端側部位に設けられ、蒸気の膨張によって生じる液体ピストン15の変位を機械的エネルギに変換して出力する出力部14と、出力部14側から膨張部121側へ向かって変位する液体ピストン15の液面に対して粘性力と表面張力とを作用させる粘性力・表面張力作用部21とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気の膨張によって液体ピストンを変位させ、液体ピストンの変位を機械的エネルギに変換して出力する熱機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の熱機関が特許文献1に記載されている。この従来技術では、管状の容器内に作動媒体を液相状態で封入し、容器の一端部で作動媒体の蒸気を膨張させる膨張行程と、膨張した蒸気を容器の中間部に形成された冷却部で冷却して凝縮させる圧縮行程とを繰り返し行うことによって液相状態の作動媒体を液体ピストンとして変位させ、この液体ピストンの変位を機械的エネルギに変換して出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−255259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、液体ピストンの駆動周波数が高くなると、液体ピストンの慣性力によって液体ピストンの液面が乱れやすくなる。液体ピストンの液面が乱れると液体ピストン中に蒸気が巻き込まれ、液体ピストン中に巻き込まれた蒸気が液体ピストンの変位に寄与することなく液体ピストンで冷やされて凝縮してしまう。
【0005】
すなわち、蒸気が液体ピストン中に巻き込まれると、蒸気が液体ピストンの変位に寄与することなく凝縮してしまうので、出力の低下を招いてしまう。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、液体ピストン中に蒸気が巻き込まれるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、液相状態の作動媒体からなる液体ピストン(15)が流動可能に封入された管状の容器(11)と、
容器(11)の一端側部位に設けられ、作動媒体の蒸気を膨張させる膨張部(121)と、
容器(11)の他端側部位に設けられ、蒸気の膨張によって生じる液体ピストン(15)の変位を機械的エネルギに変換して出力する出力部(14)と、
出力部(14)側から膨張部(121)側へ向かって変位する液体ピストン(15)の液面に対して粘性力と表面張力とを作用させる粘性力・表面張力作用部(21、22、23、24、26)とを備えることを特徴とする。
【0008】
これによると、出力部(14)側から膨張部(121)側へ向かって変位する液体ピストン(15)の液面に対して、その慣性力を打ち消すように粘性力と表面張力とが作用することとなるので、液体ピストン(15)に働く慣性力を効果的に低減することができる。
【0009】
このため、液体ピストン(15)の液面の乱れを抑制できるので、液体ピストン(15)中に蒸気が巻き込まれるのを抑制できる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の熱機関において、粘性力・表面張力作用部は、液体ピストン(15)が分割されて流通する整流器(21)で構成されていることを特徴とする。
【0011】
これによると、液体ピストン(15)が整流器(21)を通過する際に液体ピストン(15)に対して粘性力と表面張力とが作用するので、粘性力・表面張力作用部を簡素な整流器(21)によって構成できる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の熱機関において、粘性力・表面張力作用部は、膨張部(121)のうち出力部(14)と反対側の端部から液体ピストン(15)の液面に向かって突出する突起部(22)で構成され、
液体ピストン(15)が最も膨張部(121)側にきたときの位置を上死点としたとき、上死点の近傍で液体ピストン(15)の液面が突起部(22)に衝突することを特徴とする。
【0013】
これによると、液体ピストン(15)の液面が突起部(22)に衝突することによって液体ピストン(15)の液面に対して粘性力と表面張力とが作用するので、粘性力・表面張力作用部を簡素な突起部(22)によって構成できる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の熱機関において、突起部(22)は、膨張部(121)を液体ピストン(15)の変位方向と直交する方向に切断したときの断面の中央部に配置されていることを特徴とする。
【0015】
これによると、液体ピストン(15)の変位速度が最も大きくなって慣性力も大きくなる膨張部(121)の断面中央部において、液体ピストン(15)の液面に粘性力と表面張力とを作用させるので、液体ピストン(15)に働く慣性力を一層効果的に低減することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、請求項1に記載の熱機関において、容器(11)は、液体ピストン(15)の液面の変位範囲が重力方向に延び、膨張部(121)での蒸気の膨張により液面が容器(11)の内部を重力方向上方側から重力方向下方側に向かって変位するように構成され、
粘性力・表面張力作用部は、液体ピストン(15)の液面に浮かべられた浮き部材(23)で構成されていることを特徴とする。
【0017】
これによると、液体ピストン(15)の液面が重力方向下方側から重力方向上方側に向かって変位すると浮き部材(23)が液体ピストン(15)の液面に粘性力と表面張力とを作用させるので、粘性力・表面張力作用部を簡素な浮き部材(23)によって構成できる。
【0018】
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の熱機関において、浮き部材(23)が液面の変位により重力方向上方側に向かって変位すると、浮き部材(23)に対して重力方向下方側への反発力を作用させる反発力作用部(24、26)を備えることを特徴とする。
【0019】
これによると、出力部(14)側から膨張部(121)側へ向かって変位する液体ピストン(15)の液面に対して、粘性力と表面張力とに加えて反発力をも作用させることができるので、液体ピストン(15)に働く慣性力を一層効果的に低減することができる。
【0020】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態における熱機関を模式的に示す全体構成図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】第1実施形態における作動を示すPV線図およびタイムチャートである。
【図4】第1実施形態および比較例における膨張部での液体ピストンの挙動を示す図である。
【図5】第1実施形態の変形例の要部断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態における熱機関の要部を示す断面図である。
【図7】第2実施形態の変形例の要部断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態における熱機関の要部を示す断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態における熱機関の要部を示す断面図である。
【図10】第4実施形態の第1、第2変形例の要部断面図である。
【図11】本発明の第5実施形態における熱機関の要部を示す断面図である。
【図12】本発明の第6実施形態における熱機関の要部を示す断面図である。
【図13】本発明の第7実施形態における熱機関の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図4に基づいて説明する。図1は本実施形態における熱機関10の概略構成を表す構成図である。図2は図1の要部拡大図である。図1、図2中の上矢印は鉛直方向(重力方向)の上方、下矢印は鉛直方向の下方を示している。
【0023】
熱機関10は、液体ピストン式蒸気エンジンとも呼ばれるものであり、駆動対象機器1を駆動する駆動源として用いられる。
【0024】
熱機関10は、作動媒体(具体的には水)が液相状態で流動可能に封入された容器11と、作動媒体の蒸気(具体的には水蒸気)を容器11内に供給する外部蒸発器20とを備えている。
【0025】
外部蒸発器20は、作動媒体である水を加熱して蒸気を発生させる。本例では、外部蒸発器20の熱源として排気ガス等の高温ガスを用いている。具体的には、外部蒸発器20が高温ガスの流れ中に配置され、外部蒸発器20が高温ガスで加熱されることによって外部蒸発器20内部の水が加熱されて蒸発する。
【0026】
容器11は、水が往復変位する管状(本実施形態では円管状)の液体ピストン変位部12と、液体ピストン変位部12の一端側に設けられる蒸気バルブ13と、液体ピストン変位部12の他端側に設けられる出力部14とに大別される。以下では、液体ピストン変位部12で変位する水を液体ピストン15という。
【0027】
蒸気バルブ13は、外部蒸発器20からの蒸気を液体ピストン変位部12内に吸気するための吸気ポート131と、液体ピストン変位部12から蒸気を排気するための排気ポート132とを有し、吸気ポート131および排気ポート132を所定タイミングで開閉する。吸気ポート131は、外部蒸発器20で発生した蒸気を容器11に吸気させる吸気手段をなす。排気ポート132は、容器11から蒸気を排気させる排気手段をなす。
【0028】
液体ピストン変位部12の一端部は、外部蒸発器20から供給された蒸気が膨張する膨張部121を構成している。図2(a)に示すように、膨張部121には、吸気ポート131と連通する吸気通路121a、および排気ポート132と連通する排気ポート121bが形成されている。
【0029】
吸気ポート131および排気ポート132は、膨張部121と所定のタイミングで連通する。このような蒸気バルブ13は、例えばロータリー弁やポペット弁等で構成することができる。
【0030】
膨張部121は重力方向(鉛直方向)に延びており、吸気通路121aおよび排気通路121bは水平方向に延びている。したがって、吸気ポート131および排気ポート132は、膨張部121の水平方向側に配置されている。
【0031】
なお、膨張部121も外部蒸発器20と同様に高温ガスで加熱するようにすれば、膨張部121での蒸気の凝縮を抑制することができる。
【0032】
膨張部121には整流器21が配置されている。整流器21は、多孔板や網目板等で構成され、液体ピストン15を分割して流通させるようになっている。例えば整流器21は、図2(b)、(c)の平面図に示すようなハニカムプレートで構成することができる。整流器21の材質としては、セラミックやステンレス等を採用できる。
【0033】
本実施形態では、整流器21が複数枚(例えば2枚)、液体ピストン15の変位方向に互いに離間して配置されている。整流器21同士の間隔は、液体ピストン15が1つの整流器21を通過してから液滴が生成されるまでの距離(具体的には、膨張部121の管径:55mm、駆動周波数:30Hz、往復流振幅20mmの場合において10mm程度)以下となっている。また、本実施形態では、整流器21の表面に撥水処理が施されている。
【0034】
図1に示すように、液体ピストン変位部12の中間部は、膨張部121で膨張した蒸気を冷却して凝縮させる冷却部122を構成している。冷却部122は冷却器16内に挿入されている。冷却器16には、冷却水(冷却用流体)の入口161および出口162が形成されており、冷却水が循環するようになっている。
【0035】
膨張部121で膨張した蒸気は冷却部122にて冷却水と熱交換することによって冷却されて凝縮する。冷却水の循環回路中には、冷却水が蒸気から奪った熱を放熱する放熱器(図示せず)が配置されている。
【0036】
冷却部122は、膨張部121の延長方向、すなわち重力方向(鉛直方向)に延びている。これにより、容器11は、液体ピストン15のうち膨張部121側の液面の変位範囲が重力方向に延びるように形成されている。
【0037】
出力部14は、液体ピストン変位部12内の液体ピストン15の変位を機械的エネルギに変換して出力する。具体的には、出力部14は、液体ピストン15の変位を出力軸141の回転運動に変換して出力する。出力軸141は駆動対象機器である発電機1に連結されており、出力軸141の回転により発電機1が駆動される。出力軸144には、フライホイール等の慣性力発生部材(図示せず)が連結されている。
【0038】
同期手段17は、出力軸141の回転位相と同期して蒸気バルブ13を駆動する。本実施形態では、同期手段17は、蒸気バルブ13を出力軸141と機械的に連結して同期させている。図1の例では、同期手段17は、プーリ171、172とベルト173とで構成されている。
【0039】
液体ピストン排出手段18は、容器11から液体ピストン15の一部を排出することによって、容器11内の液体ピストン15の量を所定量に維持する。具体的には、液体ピストン排出手段18は、容器11のうち冷却部122と出力部14との間の部位に接続された排出管181と、液体ピストン排出管181を開閉するリリーフ弁182とで構成されている。リリーフ弁182は、容器11の内部圧力が所定圧力以上になると開弁する。
【0040】
なお、本例では、作動媒体として水を用いていることから、容器11を基本的にステンレス製としているが、容器11のうち膨張部121および冷却部122を熱伝導率に優れた銅またはアルミニウムで形成してもよい。
【0041】
次に、上記構成における作動を図3に示すPV線図およびタイムチャートに基づいて説明する。図3に示す容積Vは容器11の容積のことであり、液体ピストン15の変位に伴って変動する。図3に示す圧力Pは容器11の内部圧力のことである。図3(b)に示す上死点とは、液体ピストン15が最も膨張部121側にきた状態のことを意味している。図3(b)に示す下死点とは、液体ピストン15が最も出力部14側にきた状態のことを意味している。
【0042】
液体ピストン15が上死点に到達した直後の状態において、蒸気バルブ13の作動によって吸気ポート131が開くと膨張部121に外部蒸発器20からの蒸気が吸気される。図3(b)に示す蒸気圧力は、膨張部121に吸気された蒸気の圧力のことである。
【0043】
吸気ポート131が所定時間開いた後に閉じられると、膨張部121に供給された高温・高圧の蒸気が膨張して液体ピストン15が出力部14側に押し出される。このときの液体ピストン15の変位方向を以下、膨張方向という。また、液体ピストン15が膨張方向に変位する行程を以下、膨張行程という。
【0044】
膨張行程では、液体ピストン15が膨張方向に変位することによって出力部14の出力軸141が回転して機械的エネルギが出力される。
【0045】
膨張部121で膨張した蒸気が冷却部122に進入して液体ピストン15の液面が冷却部122まで下がると冷却部122にて蒸気が冷却されて凝縮する。これにより、液体ピストン15を出力部14側へ押し出す力が消滅するので、液体ピストン15は出力部14の慣性力発生部材(図示せず)の慣性力によって上死点側へ戻る。このときの液体ピストン15の変位方向を以下、圧縮方向という。また、液体ピストン15が圧縮方向に変位する行程を以下、圧縮行程という。
【0046】
圧縮行程では、蒸気バルブ13の作動によって排気ポート132が所定タイミングで開き、冷却部122で凝縮し切れなかった蒸気が排気ポート132から排気される。排気ポート132は、液体ピストン15が上死点に到達する少し前に閉じられる。
【0047】
このような動作が繰り返し行われることで液体ピストン変位部12内の液体ピストン15が周期的に変位(いわゆる自励振動)して、出力部14の出力軸141を連続的に回転させることになる。
【0048】
次に、整流器21による作用効果について説明する。図4(a)は、本実施形態における膨張部121での液体ピストン15の挙動を示す図である。図4(b)は、比較例として、膨張部121に整流器21が配置されていない場合における液体ピストン15の挙動を示す図である。
【0049】
図4(b)の比較例では、膨張部121に整流器21が配置されていないので、液体ピストン15がある加速度以上で変位すると液体ピストン15の慣性力によって液体ピストン15の液面が変形して(乱れて)液滴が発生する。このため、液体ピストン15中に蒸気が巻き込まれ、液体ピストン15中に巻き込まれた蒸気が液体ピストン15の変位に寄与することなく液体ピストンで冷やされて凝縮してしまうので出力の低下を招く。
【0050】
これに対し、本実施形態では、膨張部121に整流器21が配置されているので、液体ピストン15がある加速度以上で変位しても整流器21通過後の液体ピストン15は液面の変形が抑制される。
【0051】
具体的には、液体ピストン15が整流器21を通過する際に液体ピストン15の液面に対して粘性力と表面張力とが作用するので、出力部14側から膨張部121側へ向かって変位する液体ピストン15に対して、その慣性力を打ち消すように粘性力と表面張力とが作用することとなる。換言すれば、整流器21は、出力部14側から膨張部121側へ向かって変位する液体ピストン15の液面に対して粘性力と表面張力とを作用させる粘性力・表面張力作用部を構成している。
【0052】
このため、液体ピストン15に働く慣性力を効果的に低減できるので、液体ピストン15の液面の変形を抑制して液滴の発生を抑制できる。その結果、液体ピストン15中に蒸気が巻き込まれるのを抑制できるので、上記比較例に比べて出力を向上できる。
【0053】
因みに、本実施形態では作動媒体として水を用いているので、作動中の液体ピストン15の温度は100℃未満(80℃程度)になる。液体ピストン15が100℃の場合の液体ピストン15の粘度は0.284N・S/m2 になる。
【0054】
また、本実施形態によると、整流器21が粘性力のみならず表面張力をも液体ピストン15の液面に作用させて慣性力を低減するので、整流器21が粘性力のみを液体ピストン15の液面に作用させて慣性力を低減する場合と比較して、整流器21による圧力損失や凝縮熱損失を低減して整流器21による出力の低下を抑制することができる。
【0055】
ここで、整流器21による圧力損失とは、蒸気が整流器21を通過する際の圧力損失のことであり、整流器21による凝縮熱損失とは、蒸気が整流器21を通過する際に蒸気と整流器21との熱交換により凝縮することによる熱損失のことである。
【0056】
なお、整流器21の材質として、熱容量の小さいセラミック等を採用すれば、整流器21による凝縮熱損失を更に低減できる。
【0057】
また、本実施形態によると、整流器21の表面に撥水処理を施すことで整流器21の表面に液膜が付着しにくくしているので、整流器21の表面に残った液膜が遅れて沸騰することを防止できる。
【0058】
因みに、本実施形態によると、上死点の近傍で慣性力が減少するように出力部14を制御して液体ピストン15の液面の乱れを抑制する場合と比較しても出力を向上できる。すなわち、出力部14の出力軸141の回転速度が上死点の近傍で減少するように出力軸141の回転を制御することによって、上死点の近傍で慣性力を減少させて液体ピストン15の液面の乱れを抑制することもできるが、この手段を採用した場合には、出力軸141の回転を制御するための仕事が損失となるので出力の低下を招く。
【0059】
これに対して、本実施形態では、このような制御を行わないので、このような制御をするための損失による出力の低下を招くことがない。
【0060】
図5は、本実施形態の変形例を示すものである。この変形例のように、整流器21を1枚のみにしてもよい。
【0061】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、粘性力・表面張力作用部が整流器21で構成されているが、本第2実施形態では図6に示すように、粘性力・表面張力作用部が、膨張部121のうち出力部14と反対側の端部から液体ピストン15の液面に向かって突出する突起部22で構成されている。
【0062】
突起部22は、膨張部121を液体ピストン15の変位方向と直交する方向(図6では水平方向)に切断したときの断面の全体にわたって配置されている。突起部22は濡れぶち長さが長い形状に形成されているのが好ましく、本実施形態では、液体ピストン15の変位方向に延びる細管の集合体で構成されており、例えば、図2(b)、(c)と同様のハニカムプレートを用いることができる。
【0063】
本実施形態によると、液体ピストン15が膨張部121側に向かって変位すると上死点の近傍で液体ピストン15の液面が突起部22に衝突するので、液体ピストン15の液面に対して粘性力と表面張力とを作用させることができる。
【0064】
さらに、本実施形態では、液体ピストン15に最も大きな慣性力が働く上死点の近傍で液体ピストン15の液面に対して粘性力と表面張力とを作用させるので、液体ピストン15に働く慣性力を効果的に低減することができる。このため、液体ピストン15中に蒸気が巻き込まれるのを抑制できる。
【0065】
図7は、本実施形態の変形例を示すものである。この変形例では、突起部22を、膨張部121の断面中央部に配置している。これによると、液体ピストン15の変位速度が最も大きくなって慣性力も大きくなる膨張部121の断面中央部において、液体ピストン15の液面に粘性力と表面張力とを作用させるので、液体ピストン15に働く慣性力を一層効果的に低減することができる。
【0066】
因みに膨張部121の断面中央部で液体ピストン15の変位速度が最も大きくなる理由は、断面外周部では容器11の管壁から粘性力を受けて変位速度が低下するのに対し、断面中央部では容器11の管壁から粘性力を受けにくいからである。
【0067】
(第3実施形態)
上記第2実施形態では、突起部22が細管の集合体で構成されているが、本第3実施形態では図8に示すように、突起部22が半球状に形成されている。
【0068】
これによると、液体ピストン15の液面が突起部22に衝突すると突起部22が液体ピストン15に対して粘性力τと表面張力σとを作用させる。このため、上記第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0069】
(第4実施形態)
本第4実施形態では、図9に示すように、粘性力・表面張力作用部が、液体ピストン15の液面に浮かべられた浮き部材23で構成されている
浮き部材23は球状に形成されている。浮き部材23の外径は容器11の内径よりも小さくなっており、浮き部材23と容器11の管壁との間には隙間が設けられている。浮き部材23の材質としては、液体ピストン15よりも比重が小さく且つ高温の蒸気に対する耐熱性を有する材質(例えば、シリコンゴムやポリエチレン樹脂)が選定される。
【0070】
本実施形態によると、液体ピストン15の液面が重力方向下方側から重力方向上方側に向かって変位すると浮き部材23が液体ピストン15の液面に粘性力τと表面張力σとを作用させる。
【0071】
特に本実施形態によると、液体ピストン15が上死点と下死点との間を変位する間、浮き部材23が液体ピストン15の液面に接触し続けるので、液体ピストン15の液面に粘性力τと表面張力σとを確実に作用させることができる。このため、液体ピストン15に働く慣性力を効果的に低減できるので、液体ピストン15の液面の変形を抑制して液滴の発生を抑制できる。
【0072】
図10(a)、(b)は、本実施形態の変形例を示すものである。図10(a)の第1変形例では、浮き部材23を平板状に形成している。浮き部材23と容器11の管壁との間には隙間が設けられている。浮き部材23の材料としては、濡れぶち長さの長い多孔質材や発泡材等が用いられるのが好ましい。
【0073】
なお、図10(a)の例では、浮き部材23を2枚重ねて配置している。これは、液体ピストン15の駆動周波数が非常に高い場合に浮き部材23が液体ピストン15の液面から浮き上がるのを抑制するためである。
【0074】
また、図10(b)の第2変形例のように、浮き部材23を膜状に形成してもよい。
【0075】
(第5実施形態)
本第5実施形態では、図11に示すように、重力方向上方側に向かって変位する浮き部材23に対して重力方向下方側への反発力を作用させる反発力作用部24を備えている。
【0076】
反発力作用部24は、浮き部材23に一体化された磁石24aと、膨張部121の端部に配置された磁石24bとによって構成されている。両磁石24a、24bは、同じ極同士が向かい合うように配置されている。
【0077】
浮き部材23に配置された磁石24aと容器11の管壁との間には隙間が設けられている。容器11の管壁には、浮き部材23および磁石24aが液体ピストン15内に沈むことを防止するストッパ25が設けられている。
【0078】
液体ピストン15が重力方向下方側から重力方向上方側に向かって変位すると、浮き部材23が液体ピストン15の勢いで持ち上げられて液体ピストン15の液面に浮かぶ。これにより、浮き部材23が液体ピストン15の液面に粘性力τと表面張力σとを作用させる。
【0079】
浮き部材23が膨張部121の端部に近づくと、磁石24a、24bの同じ極同士が反発する磁力が発生し、この磁力が浮き部材23に対して重力方向下方側への反発力として作用する。
【0080】
このように、本実施形態によると、液体ピストン15の液面に対して、粘性力と表面張力とに加えて反発力をも作用させることができるので、液体ピストン15に働く慣性力を一層効果的に低減することができる。
【0081】
また、本実施形態によると、反発力作用部24の反発力によって、浮き部材23が膨張部121の端部壁面に衝突することを抑制できる。
【0082】
(第6実施形態)
上記第5実施形態では、反発力作用部24が磁石24a、24bによって構成されているが、本第6実施形態では、図12に示すように、反発力作用部が、浮き部材23と膨張部121の端部壁面との間に配置された弾性部材26によって構成されている。
【0083】
弾性部材26としては、例えばバネを用いることができる。弾性部材26の弾性特性(バネを用いた場合にはバネ定数)は、液体ピストン15に働く慣性力の大きさ(換言すれば液体ピストン15の駆動周波数)と、浮き部材23が液体ピストン15の液面に作用させる粘性力および表面張力とを考慮して設定される。
【0084】
本実施形態によると、浮き部材23が膨張部121の端部側に変位すると、弾性部材26の弾性復元力が発生し、この弾性復元力が浮き部材23に対して重力方向下方側への反発力として作用する。このため、上記第5実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0085】
(第7実施形態)
本第7実施形態では、図13に示すように、容器11のうち膨張部121およびその近傍部位が出力部14と反対側に向かうにつれて断面積が大きくなる広がり管状に形成されていることによって、上死点近傍において液体ピストン15の液面に対してより大きな粘性力と表面張力とを作用させる。本実施形態は、上記第1〜第6実施形態に組み合わせて適用することができる。
【0086】
本実施形態によると、膨張部121およびその近傍部位を広がり管状にすることで、膨張部121およびその近傍部位の濡れぶち長さが長くなる。このため、上死点に向かって変位する液体ピストン15に対してより大きな粘性力と表面張力とを作用させることができる。
【0087】
また、本実施形態によると、膨張部121およびその近傍部位を広がり管状にすることで、膨張部121およびその近傍部位の断面積が上死点側に向かうにつれて大きくなる。このため、上死点側に向かうにつれて液体ピストン15の流速が低下して液体ピストン15の慣性力も低下するので、液体ピストン15の液面の変形を一層抑制して液滴の発生を一層抑制することができる。
【0088】
なお、本実施形態では、膨張部121の上端部に、吸気通路121aおよび排気通路121bを構成する開口部が形成されている。したがって、吸気ポート131および排気ポート132は、膨張部121の膨張部121の延長方向側(重力方向上方側)に配置されている。
【0089】
(他の実施形態)
(1)上記第1実施形態では、整流器21が膨張部121に配置されているが、整流器21の配置位置はこれに限定されるものではない。例えば、整流器21は、容器11内において、上死点と下死点との中間部と、上死点との間の任意の部位に配置されていてもよい。
【0090】
(2)上記各実施形態では、作動媒体として水を用いたが、これに限定されるものではなく、例えば作動媒体として冷媒を用いてもよい。
【0091】
(3)上記各実施形態では、冷却部122で蒸気を冷却・凝縮させるとともに慣性力発生部材(図示せず)の慣性力によって液体ピストン15を膨張部121側へ押し戻すようになっているが、冷却部122で蒸気を冷却・凝縮させることなく、慣性力発生部材(図示せず)の慣性力のみによって液体ピストン15を膨張部121側へ押し戻すようにしてもよい。
【0092】
因みに、この場合においても液体ピストン排出手段18は必要である。すなわち、上記各実施形態の熱機関では、膨張行程において蒸気が膨張すると蒸気の一部が凝縮するからである。
【0093】
(4)上記各実施形態では、外部蒸発器20で発生した蒸気を膨張部121に供給するが、外部蒸発器20を用いることなく、膨張部121の上部を加熱して液体ピストン15の一部を蒸発させることによって膨張部121に蒸気を発生させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0094】
11 容器
14 出力部
15 液体ピストン
20 外部蒸発器
21 整流器(粘性力・表面張力作用部)
121 膨張部
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気の膨張によって液体ピストンを変位させ、液体ピストンの変位を機械的エネルギに変換して出力する熱機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の熱機関が特許文献1に記載されている。この従来技術では、管状の容器内に作動媒体を液相状態で封入し、容器の一端部で作動媒体の蒸気を膨張させる膨張行程と、膨張した蒸気を容器の中間部に形成された冷却部で冷却して凝縮させる圧縮行程とを繰り返し行うことによって液相状態の作動媒体を液体ピストンとして変位させ、この液体ピストンの変位を機械的エネルギに変換して出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−255259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、液体ピストンの駆動周波数が高くなると、液体ピストンの慣性力によって液体ピストンの液面が乱れやすくなる。液体ピストンの液面が乱れると液体ピストン中に蒸気が巻き込まれ、液体ピストン中に巻き込まれた蒸気が液体ピストンの変位に寄与することなく液体ピストンで冷やされて凝縮してしまう。
【0005】
すなわち、蒸気が液体ピストン中に巻き込まれると、蒸気が液体ピストンの変位に寄与することなく凝縮してしまうので、出力の低下を招いてしまう。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、液体ピストン中に蒸気が巻き込まれるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、液相状態の作動媒体からなる液体ピストン(15)が流動可能に封入された管状の容器(11)と、
容器(11)の一端側部位に設けられ、作動媒体の蒸気を膨張させる膨張部(121)と、
容器(11)の他端側部位に設けられ、蒸気の膨張によって生じる液体ピストン(15)の変位を機械的エネルギに変換して出力する出力部(14)と、
出力部(14)側から膨張部(121)側へ向かって変位する液体ピストン(15)の液面に対して粘性力と表面張力とを作用させる粘性力・表面張力作用部(21、22、23、24、26)とを備えることを特徴とする。
【0008】
これによると、出力部(14)側から膨張部(121)側へ向かって変位する液体ピストン(15)の液面に対して、その慣性力を打ち消すように粘性力と表面張力とが作用することとなるので、液体ピストン(15)に働く慣性力を効果的に低減することができる。
【0009】
このため、液体ピストン(15)の液面の乱れを抑制できるので、液体ピストン(15)中に蒸気が巻き込まれるのを抑制できる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の熱機関において、粘性力・表面張力作用部は、液体ピストン(15)が分割されて流通する整流器(21)で構成されていることを特徴とする。
【0011】
これによると、液体ピストン(15)が整流器(21)を通過する際に液体ピストン(15)に対して粘性力と表面張力とが作用するので、粘性力・表面張力作用部を簡素な整流器(21)によって構成できる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の熱機関において、粘性力・表面張力作用部は、膨張部(121)のうち出力部(14)と反対側の端部から液体ピストン(15)の液面に向かって突出する突起部(22)で構成され、
液体ピストン(15)が最も膨張部(121)側にきたときの位置を上死点としたとき、上死点の近傍で液体ピストン(15)の液面が突起部(22)に衝突することを特徴とする。
【0013】
これによると、液体ピストン(15)の液面が突起部(22)に衝突することによって液体ピストン(15)の液面に対して粘性力と表面張力とが作用するので、粘性力・表面張力作用部を簡素な突起部(22)によって構成できる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の熱機関において、突起部(22)は、膨張部(121)を液体ピストン(15)の変位方向と直交する方向に切断したときの断面の中央部に配置されていることを特徴とする。
【0015】
これによると、液体ピストン(15)の変位速度が最も大きくなって慣性力も大きくなる膨張部(121)の断面中央部において、液体ピストン(15)の液面に粘性力と表面張力とを作用させるので、液体ピストン(15)に働く慣性力を一層効果的に低減することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、請求項1に記載の熱機関において、容器(11)は、液体ピストン(15)の液面の変位範囲が重力方向に延び、膨張部(121)での蒸気の膨張により液面が容器(11)の内部を重力方向上方側から重力方向下方側に向かって変位するように構成され、
粘性力・表面張力作用部は、液体ピストン(15)の液面に浮かべられた浮き部材(23)で構成されていることを特徴とする。
【0017】
これによると、液体ピストン(15)の液面が重力方向下方側から重力方向上方側に向かって変位すると浮き部材(23)が液体ピストン(15)の液面に粘性力と表面張力とを作用させるので、粘性力・表面張力作用部を簡素な浮き部材(23)によって構成できる。
【0018】
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の熱機関において、浮き部材(23)が液面の変位により重力方向上方側に向かって変位すると、浮き部材(23)に対して重力方向下方側への反発力を作用させる反発力作用部(24、26)を備えることを特徴とする。
【0019】
これによると、出力部(14)側から膨張部(121)側へ向かって変位する液体ピストン(15)の液面に対して、粘性力と表面張力とに加えて反発力をも作用させることができるので、液体ピストン(15)に働く慣性力を一層効果的に低減することができる。
【0020】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態における熱機関を模式的に示す全体構成図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】第1実施形態における作動を示すPV線図およびタイムチャートである。
【図4】第1実施形態および比較例における膨張部での液体ピストンの挙動を示す図である。
【図5】第1実施形態の変形例の要部断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態における熱機関の要部を示す断面図である。
【図7】第2実施形態の変形例の要部断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態における熱機関の要部を示す断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態における熱機関の要部を示す断面図である。
【図10】第4実施形態の第1、第2変形例の要部断面図である。
【図11】本発明の第5実施形態における熱機関の要部を示す断面図である。
【図12】本発明の第6実施形態における熱機関の要部を示す断面図である。
【図13】本発明の第7実施形態における熱機関の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図4に基づいて説明する。図1は本実施形態における熱機関10の概略構成を表す構成図である。図2は図1の要部拡大図である。図1、図2中の上矢印は鉛直方向(重力方向)の上方、下矢印は鉛直方向の下方を示している。
【0023】
熱機関10は、液体ピストン式蒸気エンジンとも呼ばれるものであり、駆動対象機器1を駆動する駆動源として用いられる。
【0024】
熱機関10は、作動媒体(具体的には水)が液相状態で流動可能に封入された容器11と、作動媒体の蒸気(具体的には水蒸気)を容器11内に供給する外部蒸発器20とを備えている。
【0025】
外部蒸発器20は、作動媒体である水を加熱して蒸気を発生させる。本例では、外部蒸発器20の熱源として排気ガス等の高温ガスを用いている。具体的には、外部蒸発器20が高温ガスの流れ中に配置され、外部蒸発器20が高温ガスで加熱されることによって外部蒸発器20内部の水が加熱されて蒸発する。
【0026】
容器11は、水が往復変位する管状(本実施形態では円管状)の液体ピストン変位部12と、液体ピストン変位部12の一端側に設けられる蒸気バルブ13と、液体ピストン変位部12の他端側に設けられる出力部14とに大別される。以下では、液体ピストン変位部12で変位する水を液体ピストン15という。
【0027】
蒸気バルブ13は、外部蒸発器20からの蒸気を液体ピストン変位部12内に吸気するための吸気ポート131と、液体ピストン変位部12から蒸気を排気するための排気ポート132とを有し、吸気ポート131および排気ポート132を所定タイミングで開閉する。吸気ポート131は、外部蒸発器20で発生した蒸気を容器11に吸気させる吸気手段をなす。排気ポート132は、容器11から蒸気を排気させる排気手段をなす。
【0028】
液体ピストン変位部12の一端部は、外部蒸発器20から供給された蒸気が膨張する膨張部121を構成している。図2(a)に示すように、膨張部121には、吸気ポート131と連通する吸気通路121a、および排気ポート132と連通する排気ポート121bが形成されている。
【0029】
吸気ポート131および排気ポート132は、膨張部121と所定のタイミングで連通する。このような蒸気バルブ13は、例えばロータリー弁やポペット弁等で構成することができる。
【0030】
膨張部121は重力方向(鉛直方向)に延びており、吸気通路121aおよび排気通路121bは水平方向に延びている。したがって、吸気ポート131および排気ポート132は、膨張部121の水平方向側に配置されている。
【0031】
なお、膨張部121も外部蒸発器20と同様に高温ガスで加熱するようにすれば、膨張部121での蒸気の凝縮を抑制することができる。
【0032】
膨張部121には整流器21が配置されている。整流器21は、多孔板や網目板等で構成され、液体ピストン15を分割して流通させるようになっている。例えば整流器21は、図2(b)、(c)の平面図に示すようなハニカムプレートで構成することができる。整流器21の材質としては、セラミックやステンレス等を採用できる。
【0033】
本実施形態では、整流器21が複数枚(例えば2枚)、液体ピストン15の変位方向に互いに離間して配置されている。整流器21同士の間隔は、液体ピストン15が1つの整流器21を通過してから液滴が生成されるまでの距離(具体的には、膨張部121の管径:55mm、駆動周波数:30Hz、往復流振幅20mmの場合において10mm程度)以下となっている。また、本実施形態では、整流器21の表面に撥水処理が施されている。
【0034】
図1に示すように、液体ピストン変位部12の中間部は、膨張部121で膨張した蒸気を冷却して凝縮させる冷却部122を構成している。冷却部122は冷却器16内に挿入されている。冷却器16には、冷却水(冷却用流体)の入口161および出口162が形成されており、冷却水が循環するようになっている。
【0035】
膨張部121で膨張した蒸気は冷却部122にて冷却水と熱交換することによって冷却されて凝縮する。冷却水の循環回路中には、冷却水が蒸気から奪った熱を放熱する放熱器(図示せず)が配置されている。
【0036】
冷却部122は、膨張部121の延長方向、すなわち重力方向(鉛直方向)に延びている。これにより、容器11は、液体ピストン15のうち膨張部121側の液面の変位範囲が重力方向に延びるように形成されている。
【0037】
出力部14は、液体ピストン変位部12内の液体ピストン15の変位を機械的エネルギに変換して出力する。具体的には、出力部14は、液体ピストン15の変位を出力軸141の回転運動に変換して出力する。出力軸141は駆動対象機器である発電機1に連結されており、出力軸141の回転により発電機1が駆動される。出力軸144には、フライホイール等の慣性力発生部材(図示せず)が連結されている。
【0038】
同期手段17は、出力軸141の回転位相と同期して蒸気バルブ13を駆動する。本実施形態では、同期手段17は、蒸気バルブ13を出力軸141と機械的に連結して同期させている。図1の例では、同期手段17は、プーリ171、172とベルト173とで構成されている。
【0039】
液体ピストン排出手段18は、容器11から液体ピストン15の一部を排出することによって、容器11内の液体ピストン15の量を所定量に維持する。具体的には、液体ピストン排出手段18は、容器11のうち冷却部122と出力部14との間の部位に接続された排出管181と、液体ピストン排出管181を開閉するリリーフ弁182とで構成されている。リリーフ弁182は、容器11の内部圧力が所定圧力以上になると開弁する。
【0040】
なお、本例では、作動媒体として水を用いていることから、容器11を基本的にステンレス製としているが、容器11のうち膨張部121および冷却部122を熱伝導率に優れた銅またはアルミニウムで形成してもよい。
【0041】
次に、上記構成における作動を図3に示すPV線図およびタイムチャートに基づいて説明する。図3に示す容積Vは容器11の容積のことであり、液体ピストン15の変位に伴って変動する。図3に示す圧力Pは容器11の内部圧力のことである。図3(b)に示す上死点とは、液体ピストン15が最も膨張部121側にきた状態のことを意味している。図3(b)に示す下死点とは、液体ピストン15が最も出力部14側にきた状態のことを意味している。
【0042】
液体ピストン15が上死点に到達した直後の状態において、蒸気バルブ13の作動によって吸気ポート131が開くと膨張部121に外部蒸発器20からの蒸気が吸気される。図3(b)に示す蒸気圧力は、膨張部121に吸気された蒸気の圧力のことである。
【0043】
吸気ポート131が所定時間開いた後に閉じられると、膨張部121に供給された高温・高圧の蒸気が膨張して液体ピストン15が出力部14側に押し出される。このときの液体ピストン15の変位方向を以下、膨張方向という。また、液体ピストン15が膨張方向に変位する行程を以下、膨張行程という。
【0044】
膨張行程では、液体ピストン15が膨張方向に変位することによって出力部14の出力軸141が回転して機械的エネルギが出力される。
【0045】
膨張部121で膨張した蒸気が冷却部122に進入して液体ピストン15の液面が冷却部122まで下がると冷却部122にて蒸気が冷却されて凝縮する。これにより、液体ピストン15を出力部14側へ押し出す力が消滅するので、液体ピストン15は出力部14の慣性力発生部材(図示せず)の慣性力によって上死点側へ戻る。このときの液体ピストン15の変位方向を以下、圧縮方向という。また、液体ピストン15が圧縮方向に変位する行程を以下、圧縮行程という。
【0046】
圧縮行程では、蒸気バルブ13の作動によって排気ポート132が所定タイミングで開き、冷却部122で凝縮し切れなかった蒸気が排気ポート132から排気される。排気ポート132は、液体ピストン15が上死点に到達する少し前に閉じられる。
【0047】
このような動作が繰り返し行われることで液体ピストン変位部12内の液体ピストン15が周期的に変位(いわゆる自励振動)して、出力部14の出力軸141を連続的に回転させることになる。
【0048】
次に、整流器21による作用効果について説明する。図4(a)は、本実施形態における膨張部121での液体ピストン15の挙動を示す図である。図4(b)は、比較例として、膨張部121に整流器21が配置されていない場合における液体ピストン15の挙動を示す図である。
【0049】
図4(b)の比較例では、膨張部121に整流器21が配置されていないので、液体ピストン15がある加速度以上で変位すると液体ピストン15の慣性力によって液体ピストン15の液面が変形して(乱れて)液滴が発生する。このため、液体ピストン15中に蒸気が巻き込まれ、液体ピストン15中に巻き込まれた蒸気が液体ピストン15の変位に寄与することなく液体ピストンで冷やされて凝縮してしまうので出力の低下を招く。
【0050】
これに対し、本実施形態では、膨張部121に整流器21が配置されているので、液体ピストン15がある加速度以上で変位しても整流器21通過後の液体ピストン15は液面の変形が抑制される。
【0051】
具体的には、液体ピストン15が整流器21を通過する際に液体ピストン15の液面に対して粘性力と表面張力とが作用するので、出力部14側から膨張部121側へ向かって変位する液体ピストン15に対して、その慣性力を打ち消すように粘性力と表面張力とが作用することとなる。換言すれば、整流器21は、出力部14側から膨張部121側へ向かって変位する液体ピストン15の液面に対して粘性力と表面張力とを作用させる粘性力・表面張力作用部を構成している。
【0052】
このため、液体ピストン15に働く慣性力を効果的に低減できるので、液体ピストン15の液面の変形を抑制して液滴の発生を抑制できる。その結果、液体ピストン15中に蒸気が巻き込まれるのを抑制できるので、上記比較例に比べて出力を向上できる。
【0053】
因みに、本実施形態では作動媒体として水を用いているので、作動中の液体ピストン15の温度は100℃未満(80℃程度)になる。液体ピストン15が100℃の場合の液体ピストン15の粘度は0.284N・S/m2 になる。
【0054】
また、本実施形態によると、整流器21が粘性力のみならず表面張力をも液体ピストン15の液面に作用させて慣性力を低減するので、整流器21が粘性力のみを液体ピストン15の液面に作用させて慣性力を低減する場合と比較して、整流器21による圧力損失や凝縮熱損失を低減して整流器21による出力の低下を抑制することができる。
【0055】
ここで、整流器21による圧力損失とは、蒸気が整流器21を通過する際の圧力損失のことであり、整流器21による凝縮熱損失とは、蒸気が整流器21を通過する際に蒸気と整流器21との熱交換により凝縮することによる熱損失のことである。
【0056】
なお、整流器21の材質として、熱容量の小さいセラミック等を採用すれば、整流器21による凝縮熱損失を更に低減できる。
【0057】
また、本実施形態によると、整流器21の表面に撥水処理を施すことで整流器21の表面に液膜が付着しにくくしているので、整流器21の表面に残った液膜が遅れて沸騰することを防止できる。
【0058】
因みに、本実施形態によると、上死点の近傍で慣性力が減少するように出力部14を制御して液体ピストン15の液面の乱れを抑制する場合と比較しても出力を向上できる。すなわち、出力部14の出力軸141の回転速度が上死点の近傍で減少するように出力軸141の回転を制御することによって、上死点の近傍で慣性力を減少させて液体ピストン15の液面の乱れを抑制することもできるが、この手段を採用した場合には、出力軸141の回転を制御するための仕事が損失となるので出力の低下を招く。
【0059】
これに対して、本実施形態では、このような制御を行わないので、このような制御をするための損失による出力の低下を招くことがない。
【0060】
図5は、本実施形態の変形例を示すものである。この変形例のように、整流器21を1枚のみにしてもよい。
【0061】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、粘性力・表面張力作用部が整流器21で構成されているが、本第2実施形態では図6に示すように、粘性力・表面張力作用部が、膨張部121のうち出力部14と反対側の端部から液体ピストン15の液面に向かって突出する突起部22で構成されている。
【0062】
突起部22は、膨張部121を液体ピストン15の変位方向と直交する方向(図6では水平方向)に切断したときの断面の全体にわたって配置されている。突起部22は濡れぶち長さが長い形状に形成されているのが好ましく、本実施形態では、液体ピストン15の変位方向に延びる細管の集合体で構成されており、例えば、図2(b)、(c)と同様のハニカムプレートを用いることができる。
【0063】
本実施形態によると、液体ピストン15が膨張部121側に向かって変位すると上死点の近傍で液体ピストン15の液面が突起部22に衝突するので、液体ピストン15の液面に対して粘性力と表面張力とを作用させることができる。
【0064】
さらに、本実施形態では、液体ピストン15に最も大きな慣性力が働く上死点の近傍で液体ピストン15の液面に対して粘性力と表面張力とを作用させるので、液体ピストン15に働く慣性力を効果的に低減することができる。このため、液体ピストン15中に蒸気が巻き込まれるのを抑制できる。
【0065】
図7は、本実施形態の変形例を示すものである。この変形例では、突起部22を、膨張部121の断面中央部に配置している。これによると、液体ピストン15の変位速度が最も大きくなって慣性力も大きくなる膨張部121の断面中央部において、液体ピストン15の液面に粘性力と表面張力とを作用させるので、液体ピストン15に働く慣性力を一層効果的に低減することができる。
【0066】
因みに膨張部121の断面中央部で液体ピストン15の変位速度が最も大きくなる理由は、断面外周部では容器11の管壁から粘性力を受けて変位速度が低下するのに対し、断面中央部では容器11の管壁から粘性力を受けにくいからである。
【0067】
(第3実施形態)
上記第2実施形態では、突起部22が細管の集合体で構成されているが、本第3実施形態では図8に示すように、突起部22が半球状に形成されている。
【0068】
これによると、液体ピストン15の液面が突起部22に衝突すると突起部22が液体ピストン15に対して粘性力τと表面張力σとを作用させる。このため、上記第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0069】
(第4実施形態)
本第4実施形態では、図9に示すように、粘性力・表面張力作用部が、液体ピストン15の液面に浮かべられた浮き部材23で構成されている
浮き部材23は球状に形成されている。浮き部材23の外径は容器11の内径よりも小さくなっており、浮き部材23と容器11の管壁との間には隙間が設けられている。浮き部材23の材質としては、液体ピストン15よりも比重が小さく且つ高温の蒸気に対する耐熱性を有する材質(例えば、シリコンゴムやポリエチレン樹脂)が選定される。
【0070】
本実施形態によると、液体ピストン15の液面が重力方向下方側から重力方向上方側に向かって変位すると浮き部材23が液体ピストン15の液面に粘性力τと表面張力σとを作用させる。
【0071】
特に本実施形態によると、液体ピストン15が上死点と下死点との間を変位する間、浮き部材23が液体ピストン15の液面に接触し続けるので、液体ピストン15の液面に粘性力τと表面張力σとを確実に作用させることができる。このため、液体ピストン15に働く慣性力を効果的に低減できるので、液体ピストン15の液面の変形を抑制して液滴の発生を抑制できる。
【0072】
図10(a)、(b)は、本実施形態の変形例を示すものである。図10(a)の第1変形例では、浮き部材23を平板状に形成している。浮き部材23と容器11の管壁との間には隙間が設けられている。浮き部材23の材料としては、濡れぶち長さの長い多孔質材や発泡材等が用いられるのが好ましい。
【0073】
なお、図10(a)の例では、浮き部材23を2枚重ねて配置している。これは、液体ピストン15の駆動周波数が非常に高い場合に浮き部材23が液体ピストン15の液面から浮き上がるのを抑制するためである。
【0074】
また、図10(b)の第2変形例のように、浮き部材23を膜状に形成してもよい。
【0075】
(第5実施形態)
本第5実施形態では、図11に示すように、重力方向上方側に向かって変位する浮き部材23に対して重力方向下方側への反発力を作用させる反発力作用部24を備えている。
【0076】
反発力作用部24は、浮き部材23に一体化された磁石24aと、膨張部121の端部に配置された磁石24bとによって構成されている。両磁石24a、24bは、同じ極同士が向かい合うように配置されている。
【0077】
浮き部材23に配置された磁石24aと容器11の管壁との間には隙間が設けられている。容器11の管壁には、浮き部材23および磁石24aが液体ピストン15内に沈むことを防止するストッパ25が設けられている。
【0078】
液体ピストン15が重力方向下方側から重力方向上方側に向かって変位すると、浮き部材23が液体ピストン15の勢いで持ち上げられて液体ピストン15の液面に浮かぶ。これにより、浮き部材23が液体ピストン15の液面に粘性力τと表面張力σとを作用させる。
【0079】
浮き部材23が膨張部121の端部に近づくと、磁石24a、24bの同じ極同士が反発する磁力が発生し、この磁力が浮き部材23に対して重力方向下方側への反発力として作用する。
【0080】
このように、本実施形態によると、液体ピストン15の液面に対して、粘性力と表面張力とに加えて反発力をも作用させることができるので、液体ピストン15に働く慣性力を一層効果的に低減することができる。
【0081】
また、本実施形態によると、反発力作用部24の反発力によって、浮き部材23が膨張部121の端部壁面に衝突することを抑制できる。
【0082】
(第6実施形態)
上記第5実施形態では、反発力作用部24が磁石24a、24bによって構成されているが、本第6実施形態では、図12に示すように、反発力作用部が、浮き部材23と膨張部121の端部壁面との間に配置された弾性部材26によって構成されている。
【0083】
弾性部材26としては、例えばバネを用いることができる。弾性部材26の弾性特性(バネを用いた場合にはバネ定数)は、液体ピストン15に働く慣性力の大きさ(換言すれば液体ピストン15の駆動周波数)と、浮き部材23が液体ピストン15の液面に作用させる粘性力および表面張力とを考慮して設定される。
【0084】
本実施形態によると、浮き部材23が膨張部121の端部側に変位すると、弾性部材26の弾性復元力が発生し、この弾性復元力が浮き部材23に対して重力方向下方側への反発力として作用する。このため、上記第5実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0085】
(第7実施形態)
本第7実施形態では、図13に示すように、容器11のうち膨張部121およびその近傍部位が出力部14と反対側に向かうにつれて断面積が大きくなる広がり管状に形成されていることによって、上死点近傍において液体ピストン15の液面に対してより大きな粘性力と表面張力とを作用させる。本実施形態は、上記第1〜第6実施形態に組み合わせて適用することができる。
【0086】
本実施形態によると、膨張部121およびその近傍部位を広がり管状にすることで、膨張部121およびその近傍部位の濡れぶち長さが長くなる。このため、上死点に向かって変位する液体ピストン15に対してより大きな粘性力と表面張力とを作用させることができる。
【0087】
また、本実施形態によると、膨張部121およびその近傍部位を広がり管状にすることで、膨張部121およびその近傍部位の断面積が上死点側に向かうにつれて大きくなる。このため、上死点側に向かうにつれて液体ピストン15の流速が低下して液体ピストン15の慣性力も低下するので、液体ピストン15の液面の変形を一層抑制して液滴の発生を一層抑制することができる。
【0088】
なお、本実施形態では、膨張部121の上端部に、吸気通路121aおよび排気通路121bを構成する開口部が形成されている。したがって、吸気ポート131および排気ポート132は、膨張部121の膨張部121の延長方向側(重力方向上方側)に配置されている。
【0089】
(他の実施形態)
(1)上記第1実施形態では、整流器21が膨張部121に配置されているが、整流器21の配置位置はこれに限定されるものではない。例えば、整流器21は、容器11内において、上死点と下死点との中間部と、上死点との間の任意の部位に配置されていてもよい。
【0090】
(2)上記各実施形態では、作動媒体として水を用いたが、これに限定されるものではなく、例えば作動媒体として冷媒を用いてもよい。
【0091】
(3)上記各実施形態では、冷却部122で蒸気を冷却・凝縮させるとともに慣性力発生部材(図示せず)の慣性力によって液体ピストン15を膨張部121側へ押し戻すようになっているが、冷却部122で蒸気を冷却・凝縮させることなく、慣性力発生部材(図示せず)の慣性力のみによって液体ピストン15を膨張部121側へ押し戻すようにしてもよい。
【0092】
因みに、この場合においても液体ピストン排出手段18は必要である。すなわち、上記各実施形態の熱機関では、膨張行程において蒸気が膨張すると蒸気の一部が凝縮するからである。
【0093】
(4)上記各実施形態では、外部蒸発器20で発生した蒸気を膨張部121に供給するが、外部蒸発器20を用いることなく、膨張部121の上部を加熱して液体ピストン15の一部を蒸発させることによって膨張部121に蒸気を発生させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0094】
11 容器
14 出力部
15 液体ピストン
20 外部蒸発器
21 整流器(粘性力・表面張力作用部)
121 膨張部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相状態の作動媒体からなる液体ピストン(15)が流動可能に封入された管状の容器(11)と、
前記容器(11)の一端側部位に設けられ、前記作動媒体の蒸気を膨張させる膨張部(121)と、
前記容器(11)の他端側部位に設けられ、前記蒸気の膨張によって生じる前記液体ピストン(15)の変位を機械的エネルギに変換して出力する出力部(14)と、
前記出力部(14)側から前記膨張部(121)側へ向かって変位する前記液体ピストン(15)の液面に対して粘性力と表面張力とを作用させる粘性力・表面張力作用部(21、22、23、24、26)とを備えることを特徴とする熱機関。
【請求項2】
前記粘性力・表面張力作用部は、前記液体ピストン(15)が分割されて流通する整流器(21)で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱機関。
【請求項3】
前記粘性力・表面張力作用部は、前記膨張部(121)のうち前記出力部(14)と反対側の端部から前記液面に向かって突出する突起部(22)で構成され、
前記液体ピストン(15)が最も前記膨張部(121)側にきたときの位置を上死点としたとき、前記上死点の近傍で前記液面が突起部(22)に衝突することを特徴とする請求項1に記載の熱機関。
【請求項4】
前記突起部(22)は、前記膨張部(121)を前記液体ピストン(15)の変位方向と直交する方向に切断したときの断面の中央部に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の熱機関。
【請求項5】
前記容器(11)は、前記液面の変位範囲が重力方向に延びていて、前記膨張部(121)での前記蒸気の膨張により前記液面が前記容器(11)の内部を重力方向上方側から重力方向下方側に向かって変位するように構成され、
前記粘性力・表面張力作用部は、前記液面に浮かべられた浮き部材(23)で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱機関。
【請求項6】
前記浮き部材(23)が前記液面の変位により前記重力方向上方側に向かって変位すると、前記浮き部材(23)に対して前記重力方向下方側への反発力を作用させる反発力作用部(24、26)を備えることを特徴とする請求項5に記載の熱機関。
【請求項1】
液相状態の作動媒体からなる液体ピストン(15)が流動可能に封入された管状の容器(11)と、
前記容器(11)の一端側部位に設けられ、前記作動媒体の蒸気を膨張させる膨張部(121)と、
前記容器(11)の他端側部位に設けられ、前記蒸気の膨張によって生じる前記液体ピストン(15)の変位を機械的エネルギに変換して出力する出力部(14)と、
前記出力部(14)側から前記膨張部(121)側へ向かって変位する前記液体ピストン(15)の液面に対して粘性力と表面張力とを作用させる粘性力・表面張力作用部(21、22、23、24、26)とを備えることを特徴とする熱機関。
【請求項2】
前記粘性力・表面張力作用部は、前記液体ピストン(15)が分割されて流通する整流器(21)で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱機関。
【請求項3】
前記粘性力・表面張力作用部は、前記膨張部(121)のうち前記出力部(14)と反対側の端部から前記液面に向かって突出する突起部(22)で構成され、
前記液体ピストン(15)が最も前記膨張部(121)側にきたときの位置を上死点としたとき、前記上死点の近傍で前記液面が突起部(22)に衝突することを特徴とする請求項1に記載の熱機関。
【請求項4】
前記突起部(22)は、前記膨張部(121)を前記液体ピストン(15)の変位方向と直交する方向に切断したときの断面の中央部に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の熱機関。
【請求項5】
前記容器(11)は、前記液面の変位範囲が重力方向に延びていて、前記膨張部(121)での前記蒸気の膨張により前記液面が前記容器(11)の内部を重力方向上方側から重力方向下方側に向かって変位するように構成され、
前記粘性力・表面張力作用部は、前記液面に浮かべられた浮き部材(23)で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱機関。
【請求項6】
前記浮き部材(23)が前記液面の変位により前記重力方向上方側に向かって変位すると、前記浮き部材(23)に対して前記重力方向下方側への反発力を作用させる反発力作用部(24、26)を備えることを特徴とする請求項5に記載の熱機関。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−196246(P2011−196246A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63891(P2010−63891)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
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