説明

熱活性化装置、プリンタ、熱活性化方法、および粘着ラベル製造方法

【課題】 感熱性粘着シートを連続的に熱活性化しても、熱活性化用サーマルヘッドの発熱による過熱を抑えるようにする。
【解決手段】 熱活性化装置1が、熱活性化用サーマルヘッド2と、それに圧接する熱活性化用プラテンローラ4と、空冷機構を有している。空冷機構は、熱活性化装置1を外部から隔離する仕切り壁5と、下部の排気口6と、上部の第1および第2の吸引口7a,7bと、排気口6内の排気用ファン8を含む。感熱性粘着シート10が熱活性化用プラテンローラ4と熱活性化用サーマルヘッド2によって、感熱性粘着剤層が加熱されて熱活性化させられつつ搬送される間、排気用ファン8が作動して、第1および第2の吸引口7a,7bから、熱活性化用プラテンローラ4、熱活性化用サーマルヘッド2、放熱板3を順番に通過して、排気口6から外部に排出される空気流Aを発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常時には非粘着性を示し、加熱されて熱活性化されると粘着性を発現する感熱性粘着剤層がシート状基材の片面に形成された感熱性粘着シートの熱活性化装置および熱活性化方法と、この熱活性化装置を備えたプリンタと、感熱性粘着シートが所定の長さに切断されたものである貼着ラベルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、加熱されることによって粘着性を発現する感熱性粘着剤層を有する感熱性粘着シートが実用化されている。このような感熱性粘着シートは、加熱前のシートの取り扱いが容易であること、剥離紙を必要としないため産業廃棄物が生じないことなどの利点を有している。このような感熱性粘着シートの感熱性粘着剤層の粘着力を発現させるために、一般にサーマルプリンタの印字ヘッドとして用いられているサーマルヘッドを利用して加熱する場合がある。また、感熱性粘着シートの、感熱性粘着剤層の反対側の面が感熱性の印字可能層である場合には、同様なサーマルヘッドで印字と熱活性化を行えるという利点がある。
【0003】
このような感熱性粘着シートの印字可能層に所望の文字や数字や画像等を印字し、所定の長さに切断した上で、感熱性粘着剤層に粘着性を発現させて、例えば商品に貼り付けられて価格や商品名等を表示する粘着ラベルを製造するプリンタが開発されている(特許文献2〜4参照)。このようなプリンタは、印字可能層に所望の文字や数字や記号や画像を記録するための印字装置と、感熱性粘着剤層を熱活性化させて粘着性を発現させるための熱活性化装置とを含み、さらに、感熱性粘着シートを搬送する搬送機構や、感熱性粘着シートを所望の長さに切断してラベル状にするカッター機構を備えている。印字装置と熱活性化装置には、実質的に同じ構成のサーマルヘッドが備えられており、それぞれに対向して感熱性粘着シートを支持し搬送するプラテンローラが配置されている。
【特許文献1】特開平11−79152号公報
【特許文献2】特開2003−316265号公報
【特許文献3】特許第3329246号公報
【特許文献4】特開2004−10710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、熱活性化装置において、感熱性粘着シートに粘着性を発現させるために感熱性粘着剤層に加えられる熱エネルギーは、印字装置において印字可能層を発色させるために必要な熱エネルギーの1.5〜2倍程度である。その上、熱活性化装置においては、感熱性粘着シートの全面を加熱して万遍なく粘着性を発現させるため、サーマルヘッド全体(全ドット)が常に作動し続ける。その結果、熱活性化装置において感熱性粘着剤層に加えられる熱エネルギーの総和は、印字装置において印字可能層に加えられる熱エネルギーの総和の6〜8倍程度になり、熱活性化装置の内部の過熱が問題になる。特に、多数の粘着ラベルを続けて製造するために熱活性化装置が長時間に亘って連続的に作動する場合には、熱活性化用サーマルヘッド自体が高温になり過ぎて、熱により損傷する可能性がある。近年のサーマルヘッドには集積回路(IC)が搭載されている場合が多く、例えば90℃以上の高温になると、サーマルヘッドの発熱素子には異常がなくても、ICが熱によって破壊される可能性が高い。熱活性化装置が連続的に作動すると、熱活性化用サーマルヘッドは例えば100〜200℃にまで到達して、ICが破壊されて使用不能になることがある。
【0005】
近年ではプリンタの小型化が求められているために、サーマルヘッドに取り付けられる放熱板をあまり大きくすることはできず、さほど大きな自然冷却効果は期待できない。また、プリンタの小型化のために、熱活性化用サーマルヘッドの周囲に広い放熱用空間が確保できない。従って、熱活性化用サーマルヘッドからの熱がその周囲の狭い空間内の雰囲気温度を上昇させて、熱活性化用サーマルヘッドのみならずその近傍の他部材まで温度上昇させてしまう。例えば、熱活性化装置の内部で熱活性化用サーマルヘッドや熱活性化用プラテンローラのメンテナンス等を行うために手動で揺動させられる操作部材が熱活性化用サーマルヘッドに近接して設けられている場合には、この操作部材も高温になって、それを操作する使用者に熱さを感じさせ、場合によっては火傷させてしまうおそれもある。
【0006】
このプリンタの印字装置の印字用サーマルヘッドは感熱性粘着シートの印字可能層に接触してそれを加熱し、熱活性化装置の熱活性化用サーマルヘッドは印字可能層の反対側の面である感熱性粘着剤層に接触してそれを加熱する構成である。しかし、熱活性化装置において、熱活性化用プラテンローラが、ラベル状に切断された感熱性粘着シートの端部近傍では熱活性化用サーマルヘッドに部分的に直接接触することが避けられず、熱活性化用サーマルヘッドの熱が熱活性化用プラテンローラに直接伝わる時がある。また、熱活性化用サーマルヘッド周囲の空気を介して熱活性化用プラテンローラが加熱されることもあるため、熱活性化用プラテンローラが高温になり易い。その結果、熱活性化装置が連続的に作動する際には、熱活性化装置において加熱された感熱性粘着シートの感熱性粘着剤層から厚さ方向に伝達されて印字可能層に到達する熱に加えて、熱活性化用プラテンローラの蓄熱によって、その熱活性化用プラテンローラに接触する印字可能層が加熱されて意図しない発色を示してしまい、無意味な汚れとなったり、所望の文字や数字や画像等を不鮮明にしたり判読不能にしたりする可能性がある。
【0007】
また、熱活性化サーマルヘッドの熱が、熱活性化装置を含むプリンタの内部に放熱されると、熱活性化装置の外部に位置する、熱活性化装置へ送られる前の感熱性粘着シートが巻かれたロール体にまで熱が伝わり、ロール状に巻かれた状態で感熱性粘着剤層が熱活性化されて、感熱性粘着シートがロール状のまま互いに貼りついてしまうおそれがある。
【0008】
そこで本発明の目的は、連続的に作動させても、熱活性化用サーマルヘッドの発熱による過熱を抑えることができる熱活性化装置とそれを備えたプリンタと、その熱活性化装置を用いる熱活性化方法および粘着ラベル製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の熱活性化装置は、シート状基材の一方の面に印字可能層が、他方の面に感熱性粘着剤層がそれぞれ形成されてなる感熱性粘着シートの感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化させる熱活性化用サーマルヘッドと、熱活性化用サーマルヘッドと対向して配置され、熱活性化用サーマルヘッドとの間を感熱性粘着シートを通過させる熱活性化用プラテンと、熱活性化用プラテン側から熱活性化用サーマルヘッド側へ向かう空気流を発生させる空冷機構とを有することを特徴とする。この構成によると、空気流によって熱活性化用プラテンと熱活性化用サーマルヘッドの双方を効率よく冷却して、過熱を抑えることができる。
【0010】
空冷機構は、熱活性化用サーマルヘッドと熱活性化用プラテンとの間に感熱性粘着シートが進入している状態で感熱性粘着シートを挟んで熱活性化用サーマルヘッド側に位置する、空気流の入口となる第1の吸気口と、熱活性化用プラテン側に位置する、空気流の入口となる第2の吸気口と、空気流の出口となる排気口とを含んでいてもよい。その場合、感熱性粘着シートが空気の流れを遮断したとしても、第1の吸気口と第2の吸気口からそれぞれ取り入れられた空気が、熱活性化用プラテンと熱活性化用サーマルヘッドをそれぞれ効率よく冷却することができる。
【0011】
空冷機構は、空気流の発生する空間を、空気流の出口および入口を除いて、外部から実質的に遮断する仕切り壁を含むことが好ましい。これによって、熱活性化用サーマルヘッドの熱が外部の部材に伝わって悪影響を及ぼすことか防げる。また、熱活性化装置の外部に広がることなく、熱活性化用プラテン側から熱活性化用サーマルヘッド側へ向かう方向が明確に規定された空気流が形成され易いため、確実な冷却効果が得られる。
【0012】
空冷機構は、空気流の出口またはその近傍に設けられている排気用ファン、あるいは、空気流の入口またはその近傍に設けられている吸気用ファンを含んでいてもよい。
【0013】
本発明のプリンタは、前記したいずれかの構成の熱活性化装置と、印字可能層を加熱して印字する印字装置と、熱活性化装置と印字装置を通して感熱性粘着シートを搬送する搬送機構とを有する。
【0014】
印字装置は、感熱性粘着シートの印字可能層を加熱して印字する印字用サーマルヘッドと、印字用サーマルヘッドと対向して配置され、印字用サーマルヘッドとの間を感熱性粘着シートを通過させる印字用プラテンとを有し、熱活性化用プラテンと印字用プラテンは搬送機構の一部を構成する。熱活性化用サーマルヘッドと印字用サーマルヘッドを実質的に同じ構成にすると、製造コストを低く抑えられる。
【0015】
本発明の熱活性化方法は、シート状基材の一方の面に印字可能層が、他方の面に感熱性粘着剤層がそれぞれ形成されてなる感熱性粘着シートの感熱性粘着剤層を熱活性化用サーマルヘッドに接触させ、熱活性化用サーマルヘッドを駆動して感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化させる熱活性化工程と、熱活性化用サーマルヘッドと対向して配置された熱活性化用プラテンによって、感熱性粘着シートを、熱活性化工程と同期させて、熱活性化用サーマルヘッドと熱活性化用プラテンの間を通過させる搬送工程と、熱活性化用プラテン側から熱活性化用サーマルヘッド側へ向かう空気流を発生させて、熱活性化用プラテンおよび熱活性化用サーマルヘッドの過熱を抑制する空冷工程とを含む。
【0016】
また、本発明の粘着ラベル製造方法は、シート状基材の一方の面に印字可能層が、他方の面に感熱性粘着剤層がそれぞれ形成されてなる感熱性粘着シートの印字可能層を印字用サーマルヘッドに接触させ、印字用サーマルヘッドを駆動して印字可能層を加熱して印字する印字工程と、感熱性粘着シートの感熱性粘着剤層を熱活性化用サーマルヘッドに接触させ、熱活性化用サーマルヘッドを駆動して感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化させる熱活性化工程と、印字用サーマルヘッドおよび熱活性化用サーマルヘッドと対向する位置にそれぞれ配置された2つのプラテンによって、感熱性粘着シートを、印字工程および熱活性化工程と同期させて、印字用サーマルヘッドおよび熱活性化用サーマルヘッドと2つのプラテンの間を通過させる搬送工程と、感熱性粘着シートを所定の長さに切断する切断工程と、熱活性化用サーマルヘッドと対向するプラテン側から熱活性化用サーマルヘッド側へ向かう空気流を発生させて、プラテンおよび熱活性化用サーマルヘッドの過熱を抑制する空冷工程とを含む。
【0017】
これらの方法では、熱活性化用サーマルヘッドとプラテンが効率よく冷却できるため、これらの冷却に要する時間を長くとることなく、短い間隔で次々に熱活性化を行うことができるため、時間的な効率が非常によい。
【0018】
空冷工程は熱活性化工程および搬送工程と同時に行われる。
【0019】
空冷工程は、仕切り壁によって、空気流をその出口および入口を除いて外部から実質的に遮断した状態で行われることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、空気流によって熱活性化用サーマルヘッドとプラテンの双方を効率よく冷却して、これらの過熱を抑えることができる。それによって、感熱性粘着シートの印字可能層の意図しない発色が防げ、使用者が筐体や操作部材に触れたときに熱さを感じるのを抑えることができ、火傷の危険を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1,2は、本発明の熱活性化装置1の内部構成を示す概略断面図である。図1,2に示されているように、本実施形態の熱活性化装置1は、幅方向に列をなすように配置された複数の発熱素子(図示せず)を有する熱活性化用サーマルヘッド2と、熱活性化用サーマルヘッド2を保持している、熱伝導率の高いアルミニウム等からなる放熱板3と、熱活性化用サーマルヘッド2に圧接する熱活性化用プラテンローラ4と、空冷機構とを有している。空冷機構は、この熱活性化装置1を外部から実質的に隔離する、熱伝導率の低い金属等からなる整流部材である仕切り壁5と、仕切り壁5の下部に設けられている、外部に開口された排気口6と、仕切り壁5の上部に上下に並んで配置されている空気取り入れ用の第1の吸引口7aおよび第2の吸引口7bを含む。従って、この熱活性化装置1は、仕切り壁5を外郭として、第1および第2の吸引口7a,7bと排気口6を除いて、外部から実質的に遮断されている。さらに、本実施形態の空冷機構は、排気口6内に配置されている排気用ファン8(模式的に図示)を備えている。なお、図2に示すように、第2の吸引口7bは感熱性粘着シート10の通路を構成しており、本実施形態ではガイド9が設けられている。なお、第1の吸引口7aおよび第2の吸引口7bは、図示されているように上下に並んで配置されている構成に限定されない。例えば、図3に示すように、操作部の上面に1つまたは複数の小孔(使用者の指が入らない程度の小径であることが好ましい)を開口し、それを第1の吸引口7aとして用いることも考えられる。
【0023】
熱活性化装置1の上部には揺動可能な操作部材11が設けられている。この操作部材11は、使用者に手動で操作され、熱活性化用プラテンローラ4または熱活性化用サーマルヘッド2を熱活性化装置1の外部に引き出すように開いた状態と、熱活性化用プラテンローラ4や熱活性化用サーマルヘッド2を熱活性化装置1の内部に閉じ込めて外部から隔絶させるように閉じた状態をとることができる。操作部材11は通常は閉じられており、例えば、使用者が熱活性化用プラテンローラ4や熱活性化用サーマルヘッド2の交換およびメンテナンスや、感熱性粘着シート10のジャミングの解消等を行う際に、手動で開かれるものである。
【0024】
熱活性化用サーマルヘッド2は、セラミック基板上に形成された複数の発熱抵抗体の表面に結晶化ガラスの保護膜が設けられている構成など、公知のサーマルプリンタの印字ヘッドと同様の構成である。この構成は、多数の小型の発熱素子(発熱抵抗体)を用いて加熱する構成であるため、単一の(またはごく少数の)大型の発熱素子を用いて加熱する構成に比べて、温度分布を広い範囲にわたって均一にし易いという利点がある。熱活性化用サーマルヘッド2は、感熱性粘着シート10の感熱性粘着剤層10aに接するように位置し、この熱活性化用サーマルヘッド2には熱活性化用プラテンローラ4が圧接している。
【0025】
本実施形態で用いられる感熱性粘着シート10は、例えば、図4に示すように、シート状基材10bの表面側に断熱層10cおよび感熱発色層(印字可能層)10dが形成され、裏面側に感熱性粘着剤層10aが形成された構成である。なお、感熱性粘着剤層10aは、熱可塑性樹脂や固体可塑性樹脂等を主成分とする感熱性粘着剤が塗布され乾燥されて固化されたものである。ただし、感熱性粘着シート10は、この構成に限定されるものではなく、感熱性粘着剤層10aを有していれば様々な変更が可能である。例えば、断熱層10cを有しない構成や、図示しないが、印字可能層10dの表面に保護層または有色印字層(予め印字されている層)が設けられている構成や、サーマルコート層が設けられている構成の感熱性粘着シート10も使用可能である。
【0026】
前記した構成の本実施形態の熱活性化装置によると、感熱性粘着シート10が第2の吸引口7b内のガイド9に案内されて進入してくると、熱活性化用サーマルヘッド2と熱活性化用プラテンローラ4の間に挟まれる。そして、感熱性粘着シート10は、熱活性化用プラテンローラ4によって熱活性化用サーマルヘッド2に押し付けられつつ、熱活性化用サーマルヘッド2が作動して発熱することによって、それに接する感熱性粘着剤層10aが加熱されて熱活性化する。それと同時に熱活性化用プラテンローラ4が回転して感熱性粘着シート10が搬送されて、感熱性粘着剤層10aの全面が熱活性化用サーマルヘッド2に当接しながら通過することによって、感熱性粘着シート10の片面の感熱性粘着剤層10aに全面的に粘着性が発現する。
【0027】
本実施形態においては、前記した感熱性粘着シート10の搬送および熱活性化の際に、空冷機構が冷却用の空気流Aを発生させる。具体的には、排気用ファン8が作動して、熱活性化装置1内の空気を、熱活性化用プラテンローラ4側から熱活性化用サーマルヘッド2側へ(図面上方から下方へ)向かう空気流Aを発生させる。この空気流Aの入口、すなわち空気の取り入れ口は第1および第2の吸引口7a,7bであり、この空気流Aの出口、すなわち空気の排出口は排気口6である。そして、この空気流Aが熱活性化装置1の周囲に広がることは、仕切り壁5によって阻止される。このように、排気用ファン8の作動によって、第1および第2の吸引口7a,7bから引き込まれ、熱活性化用プラテンローラ4の周囲、熱活性化用サーマルヘッド2の周囲、および放熱板3の周囲を順番に通過して、排気口6から熱活性化装置1の外部に排出される空気流Aが発生する。この空気流Aが、熱活性化用サーマルヘッド2の過熱を抑え、熱活性化用サーマルヘッド2自体と、その周囲の部材および雰囲気の温度上昇を抑える、いわゆる空冷作用をする。それによって、熱活性化用サーマルヘッド2および熱活性化用プラテンローラ4の過熱による前記した従来の不具合を解消するとともに、操作部材11の過熱も抑制でき、操作部材11を手動で操作する使用者に熱さを感じさせることが防げる。
【0028】
仮に、図1,2に示す空気流Aと反対方向の空気流、すなわち、熱活性化用サーマルヘッド2側から熱活性化用プラテンローラ4側へ(図面下方から上方へ)向かう空気流を発生した場合には、熱活性化用サーマルヘッド2の熱を奪って冷却することによって温度が上昇した空気が、熱活性化用プラテンローラ4に接することになる。すなわち、熱活性化用サーマルヘッド2によって加熱された空気が熱活性化用プラテンローラ4に接し、熱活性化用プラテンローラ4は冷却されるどころか、むしろ加熱されることになりかねない。すなわち、熱活性化用サーマルヘッド2を冷却した後の空気が熱活性化用プラテンローラ4に接する構成であると、発熱体である熱活性化用サーマルヘッド2を冷却した後の空気は、かなりの高温(例えば60℃程度)になることが考えられる。その場合には、その空気が熱活性化用プラテンローラ4に接すると、冷却を妨げる結果になる。さらに、場合によっては、熱活性化用サーマルヘッド2を冷却した後の空気および/または熱活性化用サーマルヘッド2の近傍で温度が上昇した空気が熱活性化用プラテンローラ4よりも高温になって、熱活性化用プラテンローラ4を加熱してしまう結果になることさえあり得る。そうすると、熱活性化用サーマルヘッド2は冷却されるものの、熱活性化用プラテンローラ4の過熱による様々な不具合(印字可能層10dの意図しない発色など)を引き起こしてしまう。
【0029】
これに対して、本実施形態によると、熱活性化用プラテンローラ4側から熱活性化用サーマルヘッド2側へ(図面上方から下方へ)向かう空気流Aを発生するため、第1および第2の吸気口7a,7bから取り入れられた冷たい空気が直接、熱活性化用プラテンローラ4に接し、大きな冷却効果が得られる。従って、熱活性化用プラテンローラが過熱することによる前記した従来の不具合が解消できる。続いて、熱活性化用プラテンローラ4を冷却した空気は、熱活性化用サーマルヘッド2および放熱板3に接して、これらを冷却する。熱活性化用プラテンローラ4はそれ自体が発熱するものではないため、その熱活性化用プラテンローラ4を冷却した後の空気が、発熱体である熱活性化用サーマルヘッド2以上の高温(例えば60℃以上)になるとは考えられず、熱活性化用サーマルヘッド2および放熱板3に対する冷却効果を依然として有している。従って、本実施形態の構成によると、熱活性化用プラテンローラ4と熱活性化用サーマルヘッド2の双方を効率的に冷却することができる。このように、本発明で規定した方向の空気流Aによって熱活性化用プラテンローラ4と熱活性化用サーマルヘッド2の優れた冷却効果が得られることができる。
【0030】
また、図2に示すように熱活性化用プラテンローラ4と熱活性化用サーマルヘッド2の間に感熱性粘着シート10が介在している場合には、第1の吸気口7aから取り入れられて熱活性化用プラテンローラ4を冷却した空気は、図示しないが感熱性粘着シート10の端部の外側を通って感熱性粘着シート10の下方、すなわち熱活性化用サーマルヘッド2側に流れてそれを冷却する。熱活性化用プラテンローラ4を冷却した空気の一部は、感熱性粘着シート10に遮られて下方(熱活性化用サーマルヘッド2側)へ流れていかないことも考えられるが、本実施形態の構成では、第2の吸気口7bからも空気が取り入れられて、この空気が熱活性化用サーマルヘッド2に直接接して冷却することができる。このように、感熱性粘着シート10を挟んで熱活性化用プラテンローラ4側と熱活性化用サーマルヘッド2側にそれぞれ位置する第1の吸気口7aと第2の吸気口7bが設けられていることによって、熱活性化用プラテンローラ4と熱活性化用サーマルヘッド2の間に感熱性粘着シート10が介在している場合にも、熱活性化用プラテンローラ4と熱活性化用サーマルヘッド2の双方を十分に冷却できる。
【0031】
空冷機構の詳細な構成については、特に限定されるものではない。図1,2に示す例では、空冷機構の排気口6および排気用ファン8が、熱活性化装置1の底部に配置されているが、例えば、図5(a),(b)に示すように、熱活性化装置1の下部側方に配置してもよい。このように排気口6および排気用ファン8のレイアウトは、装置筐体の設計や排気用ファン8の性能等を考慮した上で任意に設定可能である。排気口6から外部に排出される空気は、熱活性化用プラテンローラ4、熱活性化用サーマルヘッド2、および放熱板3の熱を奪って高温になっている可能性があるので、排気口6は、少なくとも熱活性化用プラテンローラ4および操作部材11から離れた位置に配置することが好ましい。
【0032】
図1,2,5に示す例では、空冷機構が、排気口6に設けられた排気用ファン8を含む構成であるが、図6に示すように、排気用ファン8の代わりに、熱活性化用プラテンローラ4の上流側に位置する吸気用ファンを含み、この吸気用ファンによって空気流を発生させる構成としてもよい。
【0033】
図6(a)に示す構成では、熱活性化用プラテンローラ4および熱活性化用サーマルヘッド2の上方に位置する第1の吸気口7aに、第1の吸気用ファン12aが配置されている。そして、熱活性化用プラテンローラ4と熱活性化用サーマルヘッド2の間に感熱性粘着シート10が介在している場合にその感熱性粘着シート10の下方になる位置にある第2の吸気口7bに、第2の吸気用ファン12bが配置されている。図6(a)に示す例では、第2の吸気口7bは感熱性粘着シート10の経路の熱活性化装置1への出入口とは別に設けられており、冷却用の空気が感熱性粘着シート10の出入口から外部に漏れるのを抑制するため、仕切り壁5が出入口の一部を塞ぐように屈曲している。この第1の吸気用ファン12aは第2の吸気用ファンの風力と等しいか、それよりも大きい風力を有しており、空気の逆流が防止されている。この構成の場合、熱活性化用プラテンローラ4と熱活性化用サーマルヘッド2の間に感熱性粘着シート10が介在している場合には、第1の吸気用ファンによって第1の吸気口7aから取り入れられて熱活性化用プラテンローラ4を冷却した空気が、感熱性粘着シート10に遮られて下方(熱活性化用サーマルヘッド2側)へ流れていかないとしても、第2の吸気用ファン12bによって第2の吸気口7bから取り入れられた空気が、熱活性化用サーマルヘッド2を冷却する。
【0034】
図6(b)に示す構成では、仕切り壁5が屈曲して、熱活性化用プラテンローラ4および熱活性化用サーマルヘッド2の側方に隙間が開けられており、熱活性化用プラテンローラ4および熱活性化用サーマルヘッド2の上方であって、少なくとも一部がこの隙間の上方に位置するように吸気用ファン12が配置されている。この構成の場合、熱活性化用プラテンローラ4と熱活性化用サーマルヘッド2の間に感熱性粘着シート10が介在していても、吸気用ファンによって取り入れられた空気の一部が、熱活性化用プラテンローラ4および熱活性化用サーマルヘッド2の側方の隙間を通って下方へ流れる。この空気が、熱伝導率が高く熱活性化用サーマルヘッド2と一体化している放熱板3を冷却することによって、熱活性化用サーマルヘッド2を十分冷却できる。
【0035】
また、図示しないがファン以外の手段(例えばポンプ等)を用いて空気流を発生させる構成としてもよい。ファンやその他の手段によって強い空気流を発生できる場合には、仕切り壁5を設けない構成とすることも可能である。
【0036】
ローラ状でなく平板状の熱活性化用プラテンを有する構成においても、本発明は有効である。
【0037】
次に、以上説明した本実施形態の熱活性化装置1を組み込んだプリンタについて、図7を参照して説明する。
【0038】
図7に示す感熱性粘着シート用プリンタの基本構成について簡単に説明すると、ロール状に巻回された感熱性粘着シート10を保持するロール収納機構13と、感熱性粘着シート10の印字可能層10d(図4参照)に印字する印字装置14と、感熱性粘着シート10を所定の長さに切断するカッター機構15と、感熱性粘着シート10の感熱性粘着剤層10a(図4参照)を熱活性化させる、前記した熱活性化装置1と、カッター機構15から熱活性化装置1まで感熱性粘着シート10を誘導するガイド機構16が設けられている。なお、実際には、感熱性粘着性シート10はカッター機構15において切断されて、カッター機構15よりも下流側には切断されて短くなったラベル状の感熱性粘着シート1が搬送されるが、図7には、感熱性粘着シート10の搬送経路が判りやすくなるように、長尺の感熱性粘着シート10がそのまま搬送されているように図示している。
【0039】
ロール収納機構13の近傍には、ロール体から引き出された感熱性粘着シート10のガイド13a,13bが設けられている。
【0040】
印字装置14は、ドット印字が可能なように幅方向(図7に垂直な方向)に並べて配設された、比較的小さな抵抗体からなる複数の発熱素子を有する印字用サーマルヘッド17と、印字用サーマルヘッド17に圧接される印字用プラテンローラ18などから構成されている。印字用サーマルヘッド17は、ロール収納機構13から送られる感熱性粘着シート10の印字可能層10dに接するように位置し、この印字用サーマルヘッド17に印字用プラテンローラ18が圧接している。印字用サーマルヘッド17は、前記した熱活性化装置1の熱活性化用サーマルヘッド2と同様の構成のもの、すなわち、セラミック基板上に形成された複数の発熱抵抗体の表面に結晶化ガラスの保護膜が設けられている構成など、公知のサーマルプリンタの印字ヘッドと同様の構成である。このように、印字用サーマルヘッド17と熱活性用サーマルヘッド2を同じ構成のものにすることにより、部品を共通化してコストの低減を図ることができる。
【0041】
カッター機構15は、印字装置14によって印字が行われた感熱性粘着シート10を所定の長さで切断してラベル状にするためのものであり、電動モータ等の駆動源(図示せず)によって作動される可動刃15bと、それに対向する固定刃15a等から構成されている。
【0042】
ガイド機構16は、カッター機構15から熱活性化装置1への搬送路に設けられた板状のガイド16aと、カッター機構の送出部および熱活性化ユニット5の挿入部にそれぞれ設けられている、ローラ対16b,16cから構成されている。このガイド機構16は、感熱性粘着シート10を熱活性化装置1へ円滑に導入するとともに、感熱性粘着シート10を所望の長さに切断するために、カッター機構15の下流側で感熱性粘着シート10を一時的に弛ませて保持できるものである。
【0043】
熱活性化装置1は、前記した構成であり、熱活性化用サーマルヘッド2と、放熱板3と、熱活性化用プラテンローラ4と、仕切り壁5と、排気口6と、第1および第2の吸気口7a,7bと、ガイド9と、排気用ファン8と、操作部材11を有している。さらに、熱活性化用サーマルヘッド2と熱活性化用プラテンローラ4の間を通過した感熱性粘着シート10を、開口部20を介してプリンタ外部へ排出するための排出ローラ19が設けられている。
【0044】
そして、印字用プラテンローラ18と、ローラ対16b,16cと、熱活性化用プラテンローラ4と、排出ローラ19によって、プリンタ全体にわたって感熱性粘着シート10を搬送する搬送機構が構成されている。
【0045】
また、このプリンタは、図示しないが、前記した搬送機構、可動刃15b、印字用サーマルヘッド17、熱活性化用サーマルヘッド2等を駆動し、それらの動作を制御する制御装置を有している。
【0046】
このような構成のプリンタを用いて、感熱性粘着シート10からなる所望の粘着ラベルを製造する方法について説明する。
【0047】
まず、ロール収納機構13から引き出した感熱性粘着シート10を、ガイド13a,13bにより案内して、印字装置14の印字用サーマルヘッド17と印字用プラテンローラ18の間に挿入する。制御装置から印字用サーマルヘッド17に印字信号が供給されて、印字用サーマルヘッド17の複数の発熱素子が適宜のタイミングで選択的に駆動されて発熱して、感熱性粘着シート10の印字可能層10dに印字を行う。この印字用サーマルヘッド17の駆動と同期して印字用プラテンローラ18が駆動されて回転し、感熱性粘着シート10を、印字用サーマルヘッド17の発熱素子が並んでいる方向に交差する方向、例えば発熱素子の列に対して垂直な方向に搬送する。具体的には、印字用サーマルヘッド17による1ライン分の印字と、印字用プラテンローラ18による感熱性粘着シート10の所定量(1ライン分)の搬送とが交互に繰り返されることにより、感熱性粘着シート10に所望の文字、数字、記号、画像等の印字が行われる。
【0048】
このようにして印字された感熱性粘着シート10は、カッター機構15の可動刃15bと固定刃15aの間を通過して、ガイド機構16に至る。このガイド機構16において、感熱性粘着シート10は必要に応じて撓ませられて、感熱性粘着シート10の先端部からカッター機構15の可動刃15bおよび固定刃15aの間に位置する部分までの長さが設定される。例えば、製造すべき粘着ラベルの所定の長さが、ローラ対16bからカッター機構15の可動刃15bおよび固定刃15aまでの直線距離よりも長い場合には、ローラ対16bを一旦停止させて感熱性粘着シート10の先端部を狭持した状態で印字用プラテンローラ18およびローラ対16cを回転させることによって、ガイド機構16内で感熱性粘着シート10を撓ませ、感熱性粘着シート10の先端部からカッター機構15の可動刃15bおよび固定刃15aの間に位置する部分までの長さが所定の長さになるようにする。そこで、可動刃15bを駆動して感熱性粘着シート10を切断する。
【0049】
次に、ローラ対16bを回転させて、前記のようにして必要な印字が施され所定の長さに切断されたラベル状の感熱性粘着シート10を熱活性化装置1に送る。そして、熱活性化装置1において、熱活性化用サーマルヘッド2と熱活性化用プラテンローラ4の間にラベル状の感熱性粘着シート10を挟んだ状態で、制御装置が熱活性化用サーマルヘッド2を駆動して、それに接する感熱性粘着剤層10aを加熱して熱活性化させる。同時に、熱活性化用プラテンローラ4を回転させてラベル状の感熱性粘着シート10を送り、感熱性粘着剤層10aの全面を熱活性化用サーマルヘッド2に当接させながらそれを通過させる。
【0050】
このようにして、片面に所望の印字が施され反対面に粘着性が発現した、感熱性粘着シート10からなる所定の長さの粘着ラベルが完成する。
【0051】
このプリンタによって粘着ラベルを製造する間、空冷機構の排気用ファン8は作動し続け、仕切り壁5によって区切られた熱活性化装置1の内部に、第1および第2の吸引口7a,7bから、熱活性化用プラテンローラ4の周囲、熱活性化用サーマルヘッド2の周囲、および放熱板3の周囲を順番に通過して、排気口6からプリンタの外部に排出される空気流A(図1,2参照)を発生させる。この空気流Aによって、前記した通り、熱活性化用プラテンローラ4および熱活性化用サーマルヘッド2を効率よく冷却し、過熱を防ぐことができる。
【0052】
この構成によると、熱活性化装置1の内部は、第1および第2の吸気口7a,7bと排気口6を除いて、仕切り壁5によって実質的に外部から遮断されているので、空気流Aは熱活性化装置1内のみを流れ、その外部に熱を伝えることはない。すなわち、熱活性化用サーマルヘッド2の熱は熱活性化装置1内で処理され、仕切り壁5で隔絶されているため、熱活性化装置1の外部には影響を与えない。従って、プリンタ内部全体において、熱活性化用サーマルヘッド2が発した高い熱を排熱できるように考慮して設計する必要はなく、プリンタ内部の設計が簡単になる。そして、熱活性化装置1から離れているロール収納機構13内の、ロール状に巻かれている感熱性粘着シート10同士が互いに貼り付くことはない。
【0053】
表1に示すように、従来の構成の熱活性化用プラテンローラは、通常、60℃ぐらいまで上昇し、本発明の空気流と反対向きの空気流、すなわち、熱活性化用サーマルヘッド側から熱活性化用プラテンローラ側へ向かう方向の空気流を発生させた場合には、熱活性化用プラテンローラは55℃ぐらいまで冷却される。
【0054】
なお、表1は、後述する実施例において図7に示すプリンタを用いて、環境温度25℃のもとで、長さ150mm×幅102mmの粘着ラベルを1秒間隔で多数製造した時の、熱活性化用プラテンローラと、操作部材と、ロックアームの温度を、従来例および反対方向の空気流を発生させた場合と対比させて示すものである。なお、ロックアームについては後述する。
【0055】
【表1】

【0056】
一般的な印字可能層は70℃〜80℃程度で発色するので、従来の構成であっても、熱活性化用プラテンローラは、印字可能層の発色温度まで直ちに温度上昇するわけではない。しかし、熱活性化用プラテンローラが60℃程度の高温になって、さらに続けて熱活性化工程が行われる際に、熱活性化開始時に感熱性粘着シートが進入する前の僅かな時間に、作動中の熱活性化用サーマルヘッドと熱活性化用プラテンローラが直接接触すると、その接触部分の熱活性化用プラテンローラは、熱活性化サーマルヘッドからの直接熱伝導によって部分的に80℃以上の高温になり、感熱性粘着シートの印字可能層を発色させてしまうことがある。
【0057】
表1に示すように、本発明の空気流と反対向きの空気流を発生させる場合であっても、温度を5℃程度しか下げることができず、熱活性化用プラテンローラは約55℃まで温度上昇するため、前記したように、熱活性化用サーマルヘッドと直接接触すると、部分的に80℃以上の高温になり、印字可能層が発色してしまうおそれがある。また、熱活性化用プラテンローラの温度上昇および空気による加熱に加えて、熱活性化時に感熱性粘着シートの内部を伝わって印字可能層まで到達する熱も存在するため、これらの熱が総合的に作用する結果、印字可能層の発色を招く場合がある。なお、図4に示すように感熱性粘着シート10に断熱層10cが設けられている場合には、感熱性粘着シート10の内部を伝わって印字可能層10dまで到達する熱は低減されるが、熱の伝達を完全に遮断することは困難である。
【0058】
これに対し、本発明のように、熱活性化用プラテン側から熱活性化用サーマルヘッド側へ向かう方向の空気流を発生させた場合には、熱活性化用プラテンローラは45℃ぐらいまで冷却される。すなわち、従来の構成よりも15℃程度も冷却できるので、熱活性化用サーマルヘッドと短時間直接接触することによる熱や、熱活性化時に感熱性粘着シートの内部を伝わる熱では、80℃以上の高温にまではならない可能性が高く、印字可能層が発色してしまう可能性を大きく低減することができる。
【実施例】
【0059】
次に、図7に示す構成のプリンタを用いて多数の粘着ラベルを製造した、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0060】
本実施例では、感熱性粘着シート10から製造される粘着ラベルは、幅102mm×長さ150mmであり、各粘着ラベルが1秒ずつ間隔をおいて間歇的に熱活性化装置1に搬送されるように、搬送機構を制御した。排気用ファン8として、最大風量0.5m3/分で最大静圧49Paのファンを用いた。そして、室温25℃の環境下で多数の粘着ラベルを製造した。
【0061】
排気用ファン8を常に駆動した場合の熱活性化用サーマルヘッド2の温度変化を、図8に実線で示している。比較のために、排気用ファン8を駆動しなかった場合の熱活性化用サーマルヘッド2の温度変化を、図8に破線で示している。
【0062】
図8に破線で示すように、排気用ファン8を駆動しなかった場合、すなわち、本発明の空気流を発生させなかった場合には、粘着ラベルを129枚製造した時点(作動開始から約8分経過した時点)で、熱活性化用サーマルヘッド2の許容温度である90℃を越えたため、動作が停止させられた。
【0063】
これに対し、図8に実線で示すように、排気用ファン8を駆動した場合、すなわち、本発明の空気流Aを発生させた場合には、粘着ラベルを500枚製造した時点(作動開始から約30分経過した時点)でも、熱活性化用サーマルヘッド2の許容温度である90℃未満に保たれ、異常なく粘着ラベルを製造し続けることができた。特に、粘着ラベルを120枚程度製造した時点(作動開始から約7.5分経過した時点)で、熱活性化用サーマルヘッド2の温度がほとんど上昇しなくなり、粘着ラベルを246枚製造した時点(作動開始から約15分経過した時点)で熱活性化用サーマルヘッド2の温度が78℃に到達すると、それ以降は温度がほぼ一定であった。すなわち、この時点で熱活性化用サーマルヘッド2の飽和温度に達し、理論上は、それ以降は何枚の粘着ラベルを製造しても(何時間駆動し続けても)、熱活性化用サーマルヘッド2の許容温度には至らずに正常な動作が続けられると考えられる。なお、実用上は、感熱性粘着シート10を使い切ってしまってロール体の交換が必要になるなど、作動停止して熱活性化用サーマルヘッド2が冷却される時間が存在する。従って、仮に粘着ラベルを数時間〜数十時間に亘って製造し続けても熱活性化用サーマルヘッド2の温度が飽和温度(78℃)以上に上昇しないということが立証され得ないとしても、実用上、本発明は十分な冷却効果を発揮するといえる。
【0064】
また、このような粘着ラベルの製造工程を停止した後の熱活性化用サーマルヘッド2の温度変化を図9に示している。図9に破線で示すように、排気用ファン8を駆動せず本発明の空気流を発生させなかった場合には、90℃以上まで上昇した熱活性化用サーマルヘッド2の温度は、約166分かかってようやく30℃まで低下した。これに対して、図9に実線で示すように、排気用ファン8を駆動して本発明の空気流Aを発生させた場合には、78℃まで上昇した熱活性化用サーマルヘッド2の温度は、僅か約9分で30℃まで低下した。このように、本発明の空冷機構は、粘着ラベル製造後の熱活性化用サーマルヘッド2の温度低下に関しても非常に大きな効果がある。
【0065】
次に、本実施例における熱活性化用サーマルヘッド2の周囲の温度変化に関して、図10を参照して説明する。図10の実線は、図8の実線と図9の実線を組み合わせた内容であり、前記した通り、約30分間で粘着ラベルを500枚製造し、その後約9分間で熱活性化用サーマルヘッド2の温度が30℃まで低下し、それ以降、徐々に室温(25℃)付近まで温度低下したことを示している。この時の操作部材11の温度変化を一点鎖線で示している。これによると、表1にも示されている通り、約30分間で粘着ラベルを500枚製造した間に、操作部材11は32℃程度までしか上昇しないため、使用者が操作部材11に触れたとしても熱さを感じることはない。また、この時のロックアームの温度を破線で示している。ロックアームは、図示しないが、粘着ラベルをプリンタ外へ排出する開口部20(図7参照)の直下(第2の吸気口7bの近傍)に位置し、部分的に外部に露出しており使用者が触れる可能性がある部材である。この破線および表1を見ると、約30分間で粘着ラベルを500枚製造した間に、ロックアームは34℃程度までしか上昇しなかったため、やはり使用者が触れたとしても熱さを感じることはない。さらに、本実施例によると、ロックアームや操作部材11と同様に、熱活性化用プラテンローラ4の温度上昇も45℃にまで抑えられ(表1参照)、印字可能層10dの発色等の不具合を生じることはなかった。
【0066】
比較のために、排気用ファン8を駆動せず本発明の空気流Aを発生させなかった場合の各部の温度変化を図11に示している。図8,9に破線で示した通り、約8分間で粘着ラベルを129枚製造した時点で、熱活性化用サーマルヘッド2の温度が許容範囲を越2えて動作が停止させられた。その後、図11には途中までしか示されていないが、約166分間かかって熱活性化用サーマルヘッド2の温度が30℃まで低下した。この時のロックアーム(図示せず)の温度を破線で、操作部材11の温度を一点鎖線で示している。この実験では、ロックアームが約48℃まで上昇した時点で熱活性化用サーマルヘッド2の温度が許容範囲を越えて動作が停止させられているが、このグラフから類推すると、仮に粘着ラベルの製造が続行されると、ロックアームの温度はさらに上昇し続けると考えられる。従って、使用者がロックアームやその周囲の筐体に触れると熱さを感じ、場合によっては火傷を起こす危険性も生じる。また、操作部材11は43℃程度まで上昇するため、使用者が操作部材11に触れると熱く感じるようになる。
【0067】
さらに、排気用ファン8を駆動せず本発明の空気流Aを発生させず、各粘着ラベルを間歇的に熱活性化装置1に搬送する際の間隔を5秒に延ばすことによって、自然冷却作用を高めた例について図12に示している。この例では、約80分間かかって粘着ラベルを620枚製造した時点で、熱活性化用サーマルヘッド2の温度が許容範囲を越えて動作が停止させられた。この時のロックアーム(図示せず)の温度を破線で、操作部材11の温度を一点鎖線で示している。この実験では、ロックアームが約55℃まで上昇するため、使用者がロックアームやその周囲の筐体に触れるとかなり熱く感じる。また、操作部材11は43℃程度まで上昇するため、使用者が操作部材11に触れると熱く感じるようになる。この例では、続けて製造可能な粘着ラベルの枚数は増えるが、時間的な効率が大きく低下するとともに、操作部材11等の温度上昇が抑制できないため、使用者の危険を回避できない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の熱活性化装置の概略断面図である。
【図2】本発明の熱活性化装置の、感熱性粘着シートが供給された状態の概略断面図である。
【図3】本発明の熱活性化装置の変形例の概略断面図である。
【図4】熱活性化装置に用いられる感熱性粘着シートの拡大図である。
【図5】(a)は本発明の熱活性化装置の他の変形例の概略側面図、(b)はその概略断面図である。
【図6】(a)は本発明の熱活性化装置の他の変形例の概略断面図、(b)はさらに他の変形例の概略側面図である。
【図7】本発明のプリンタの概略断面図である。
【図8】本発明の実施例と比較例の、粘着ラベル製造中の熱活性化用サーマルヘッドの温度変化を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例と比較例の、粘着ラベル製造後の熱活性化用サーマルヘッドの温度変化を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例の熱活性化用サーマルヘッドとその周囲の部材の温度変化を示すグラフである。
【図11】第1の比較例の熱活性化用サーマルヘッドとその周囲の部材の温度変化を示すグラフである。
【図12】第2の比較例の熱活性化用サーマルヘッドとその周囲の部材の温度変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0069】
1 熱活性化装置
2 熱活性化用サーマルヘッド
3 放熱板
4 熱活性化用プラテンローラ
5 仕切り壁
6 排気口
7a 第1の吸引口
7b 第2の吸引口
8 排気用ファン
9 ガイド
10 感熱性粘着シート
10a 感熱性粘着剤層
10b シート状基材
10c 断熱層
10d 印字可能層
11 操作部材
12 吸気用ファン
12a 第1の吸気用ファン
12b 第2の吸気用ファン
13 ロール収納機構
13a,13b ガイド
14 印字装置
15 カッター機構
15a 固定刃
15b 可動刃
16 ガイド機構
16a ガイド
16b,16c ローラ対
17 印字用サーマルヘッド
18 印字用プラテンローラ
19 排出ローラ
20 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基材の一方の面に印字可能層が、他方の面に感熱性粘着剤層がそれぞれ形成されてなる感熱性粘着シートの前記感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化させる熱活性化用サーマルヘッドと、
前記熱活性化用サーマルヘッドと対向して配置され、前記熱活性化用サーマルヘッドとの間を前記感熱性粘着シートを通過させる熱活性化用プラテンと、
前記熱活性化用プラテン側から前記熱活性化用サーマルヘッド側へ向かう空気流を発生させる空冷機構とを有する熱活性化装置。
【請求項2】
前記空冷機構は、前記熱活性化用サーマルヘッドと前記熱活性化用プラテンとの間に感熱性粘着シートが進入している状態で前記感熱性粘着シートを挟んで前記熱活性化用サーマルヘッド側に位置する、前記空気流の入口となる第1の吸気口と、前記熱活性化用プラテン側に位置する、前記空気流の入口となる第2の吸気口と、前記空気流の出口となる排気口とを含む、請求項1に記載の熱活性化装置。
【請求項3】
前記空冷機構は、前記空気流の発生する空間を、前記空気流の出口および入口を除いて、外部から実質的に遮断する仕切り壁を含む、請求項1または2に記載の熱活性化装置。
【請求項4】
前記空冷機構は、前記空気流の出口またはその近傍に設けられている排気用ファン、あるいは、前記空気流の入口またはその近傍に設けられている吸気用ファンを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱活性化装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱活性化装置と、前記印字可能層を加熱して印字する印字装置と、前記熱活性化装置と前記印字装置を通して前記感熱性粘着シートを搬送する搬送機構とを有するプリンタ。
【請求項6】
前記印字装置は、前記感熱性粘着シートの前記印字可能層を加熱して印字する印字用サーマルヘッドと、前記印字用サーマルヘッドと対向して配置され、前記印字用サーマルヘッドとの間を前記感熱性粘着シートを通過させる印字用プラテンとを有し、
前記熱活性化用プラテンと前記印字用プラテンは前記搬送機構の一部を構成する、請求項5に記載のプリンタ。
【請求項7】
シート状基材の一方の面に印字可能層が、他方の面に感熱性粘着剤層がそれぞれ形成されてなる感熱性粘着シートの前記感熱性粘着剤層を熱活性化用サーマルヘッドに接触させ、該熱活性化用サーマルヘッドを駆動して前記感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化させる熱活性化工程と、
前記熱活性化用サーマルヘッドと対向して配置された熱活性化用プラテンによって、前記感熱性粘着シートを、前記熱活性化工程と同期させて、前記熱活性化用サーマルヘッドと前記熱活性化用プラテンの間を通過させる搬送工程と、
前記熱活性化用プラテン側から前記熱活性化用サーマルヘッド側へ向かう空気流を発生させて、前記熱活性化用プラテンおよび前記熱活性化用サーマルヘッドの過熱を抑制する空冷工程とを含む熱活性化方法。
【請求項8】
前記空冷工程は前記熱活性化工程および前記搬送工程と同時に行われる、請求項7に記載の熱活性化方法。
【請求項9】
前記空冷工程は、仕切り壁によって、前記空気流をその出口および入口を除いて外部から実質的に遮断した状態で行われる、請求項7または8に記載の熱活性化方法。
【請求項10】
シート状基材の一方の面に印字可能層が、他方の面に感熱性粘着剤層がそれぞれ形成されてなる感熱性粘着シートの前記印字可能層を印字用サーマルヘッドに接触させ、該印字用サーマルヘッドを駆動して前記印字可能層を加熱して印字する印字工程と、
前記感熱性粘着シートの前記感熱性粘着剤層を熱活性化用サーマルヘッドに接触させ、該熱活性化用サーマルヘッドを駆動して前記感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化させる熱活性化工程と、
前記印字用サーマルヘッドおよび前記熱活性化用サーマルヘッドと対向する位置にそれぞれ配置された2つのプラテンによって、前記感熱性粘着シートを、前記印字工程および前記熱活性化工程と同期させて、前記印字用サーマルヘッドおよび前記熱活性化用サーマルヘッドと前記2つのプラテンの間を通過させる搬送工程と、
前記感熱性粘着シートを所定の長さに切断する切断工程と、
前記熱活性化用サーマルヘッドと対向する前記プラテン側から前記熱活性化用サーマルヘッド側へ向かう空気流を発生させて、前記プラテンおよび前記熱活性化用サーマルヘッドの過熱を抑制する空冷工程とを含む粘着ラベル製造方法。
【請求項11】
前記空冷工程は前記熱活性化工程および前記搬送工程と同時に行われる、請求項10に記載の粘着ラベル製造方法。
【請求項12】
前記空冷工程は、仕切り壁によって、前記空気流をその出口および入口を除いて外部から実質的に遮断した状態で行われる、請求項10または11に記載の粘着ラベル製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−187914(P2006−187914A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−608(P2005−608)
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】