説明

熱流体シミュレーションプログラム,熱流体シミュレーション装置および熱流体シミュレーション方法

【課題】ユーザ等による解析条件の変更に即座に対応可能な熱流体シミュレーションを実現する。
【解決手段】解析条件が変更された場合、解析条件の変更時に実行中のある一の時間ステップでのシミュレーションを終了した後であって且つ次の時間ステップでのシミュレーションを開始する前に、変更された解析条件を参照し、変更後の解析条件に基づき次の時間ステップでのシミュレーションを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、流速場および温度場のシミュレーションを行なう熱流体シミュレーションプログラム,熱流体シミュレーション装置および熱流体シミュレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーバ等の製品を開発する際やデータセンタ等を構築する際には、例えば冷却機構や空調設備をどのように配置するかを決定すべく、熱設計が行なわれる。効率的な熱設計を行なうには、設計対象内の熱分布と空気の流れとを事前に把握可能な熱流体シミュレーションが必須である。つまり、設計対象を試作する前に、計算機上で解析条件を変更し、各種解析条件で熱流体シミュレーションを行なって、各種解析条件でのシミュレーション結果に基づき試行錯誤しながら熱設計の検討を行なうことが可能になっている。
【0003】
一方、車のハンドリング機能の組込ソフトウエアシミュレーションを行なうSILS(Software In the Loop Simulation)技術や、機構シミュレーション技術においては、インタラクティブシミュレーション技術が用いられている。インタラクティブシミュレーションでは、ユーザがシミュレーション対象に対する何らかの操作を行なった場合、その操作に応じたシミュレーション結果が、即刻、可視化される。
【0004】
しかし、熱流体シミュレーション技術では、上述のようなインタラクティブシミュレーション技術は、以下の理由により、適用されていない。
一般に、熱流体シミュレーションでは、境界条件等を含む解析条件が予め設定されるとともに、時系列的に連続する複数の時間ステップが設定され、前記解析条件に基づき熱流体方程式を解く解析処理を時間ステップ毎に繰り返す時系列シミュレーションが行なわれる。このような時系列シミュレーションの実行中、つまり、ある一の時間ステップでの解析処理の実行中に、解析条件が変更されると、熱流体方程式の解析処理によって正しいシミュレーション結果が得られなくなる。
【0005】
このため、熱流体シミュレーションでは、解析処理中に解析条件の変更を行なうには、事前に解析条件の時系列変化を設定しておく必要があり、解析条件の変更を反映したシミュレーション結果を知るには、最初の時間ステップから解析処理をやり直さなくてはならない。したがって、ユーザは、解析処理中に解析条件の変更を即座にシミュレーションに反映することはできず、解析条件の変更による影響を即座に知ることはできない。また、解析条件の変更を反映したシミュレーション結果を知るには、多大な処理時間を要している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2004/025522号パンフレット
【特許文献2】特表2001−519575号公報
【特許文献3】特開2009−134369号公報
【特許文献4】特開2000−348214号公報
【特許文献5】特開2007−179501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
1つの側面では、本件は、ユーザ等による解析条件の変更に即座に対応可能な熱流体シミュレーションを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本件の熱流体シミュレーションプログラムは、流速場および温度場のシミュレーションを行なうコンピュータに、解析条件に基づき時間ステップ毎に熱流体方程式を解くことにより前記シミュレーションを実行し、前記解析条件を変更する、処理を実行させ、前記解析条件が変更された場合、前記解析条件の変更時に実行中のある一の時間ステップでのシミュレーションを終了した後であって且つ次の時間ステップでのシミュレーションを開始する前に、変更された前記解析条件を参照し、変更後の解析条件に基づき前記次の時間ステップでのシミュレーションを実行する、処理を、前記コンピュータに実行させる。
【0009】
また、本件の熱流体シミュレーション装置は、流速場および温度場のシミュレーションを行なうもので、解析条件に基づき時間ステップ毎に熱流体方程式を解くことにより前記シミュレーションを実行するシミュレーション部と、前記解析条件を変更する変更部と、を有している。そして、前記変更部によって前記解析条件が変更された場合、前記シミュレーション部は、前記解析条件の変更時に実行中のある一の時間ステップでのシミュレーションを終了した後であって且つ次の時間ステップでのシミュレーションを開始する前に、前記変更部によって変更された前記解析条件を参照し、変更後の解析条件に基づき前記次の時間ステップでのシミュレーションを実行する。
【0010】
さらに、本件の熱流体シミュレーション方法は、流速場および温度場のシミュレーションをコンピュータにより行なうものであって、解析条件に基づき時間ステップ毎に熱流体方程式を解くことにより前記シミュレーションを実行し、前記解析条件が変更された場合、前記解析条件の変更時に実行中のある一の時間ステップでのシミュレーションを終了した後であって且つ次の時間ステップでのシミュレーションを開始する前に、変更された前記解析条件を参照し、変更後の解析条件に基づき前記次の時間ステップでのシミュレーションを実行する。
【発明の効果】
【0011】
ユーザ等による解析条件の変更に即座に対応可能な熱流体シミュレーションが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の熱流体シミュレーション装置のハードウエア構成および機能構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の熱流体シミュレーション装置の機能構成および動作を説明するための図である。
【図3】(A),(B)は熱流体シミュレーションで用いられる格子モデルを示す図である。
【図4】本実施形態の熱流体シミュレーション装置の動作概要を説明するための図である。
【図5】本実施形態の熱流体シミュレーション装置における処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図6】本実施形態の熱流体シミュレーション装置において、3次元モデルの属性値を変更した時の処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】本実施形態の熱流体シミュレーション装置において、3次元モデルの構造物を平行移動した時の処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】本実施形態の熱流体シミュレーション装置において、3次元モデルの構造物を回転移動した時の処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】(A)は3次元モデルにおける開状態のシャッター機構の表示例を示す図、(B)は3次元モデルにおける閉状態のシャッター機構の表示例を示す図である。
【図10】本実施形態の熱流体シミュレーション装置において、3次元モデルのシャッター機構をスライド移動した時の処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】本実施形態の熱流体シミュレーション装置において、3次元モデルの回転機構の回転速度を変更した時の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施の形態を説明する。
〔1〕本実施形態の熱流体シミュレーション装置の構成および機能
図1は、本実施形態の熱流体シミュレーション装置1のハードウエア構成および機能構成を示すブロック図、図2は、本実施形態の熱流体シミュレーション装置1の機能構成および動作を説明するための図である。
【0014】
図1および図2に示す熱流体シミュレーション装置1は、流速場および温度場のシミュレーションを、ユーザとの間でインタラクティブに行なう機能を果たす。この機能を実現するため、熱流体シミュレーション装置1は、入力操作部10,処理部20,記憶部30および表示部40を有している。なお、入力操作部10は、ユーザによって操作され各種情報を本装置1に入力するマンマシンインタフェース、例えばマウス,キーボード等である。処理部20は、CPU(Central Processing Unit)等である。記憶部30は、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory),HDD(Hard Disk Drive),SSD(Solid State Drive)等の内部記憶装置であってもよいし、外部記憶装置であってもよい。また、表示部40は、CRT(Cathode Ray Tube),LCD(Liquid Crystal Display)等のディスプレイである。
【0015】
処理部20は、熱流体シミュレーションプログラムを実行することにより、後述するモデル設定部21,モデル操作部22,表示制御部23,翻訳部24およびシミュレーション部25としての機能を果たす。
また、記憶部30は、後述する3次元モデルデータ,モデル変更情報,解析条件変更データ,解析条件データおよびシミュレーション結果をそれぞれ保持する記憶領域31〜35を有するほか、上記熱流体シミュレーションプログラムなどを格納する領域(図示略)も有する。
【0016】
表示部40は、表示制御部23によって表示状態を制御され、各種情報を表示するもので、記憶領域31に保存される3次元モデルデータに基づき、熱流体シミュレーション対象の流速場および温度場を含む空間を構成する3次元モデルを表示する(図2の矢印a1参照)。表示部40は、入力操作部10およびモデル操作部22による、3次元モデルに対する操作(後述)の状況も表示する。また、表示部40は、記憶領域35に保存されるシミュレーション結果に基づき、熱流体シミュレーションの結果を表示する(図2の矢印a14参照)。
【0017】
モデル設定部21は、シミュレーションに先立ち、ユーザがGUI(Graphical User Interface)機能を用い入力操作部10を操作して入力した、熱流体シミュレーションに必要な各種情報を受信し(図2の矢印a2参照)、受信した情報を記憶部30に記録・保存する。これにより、モデル設定部21は、熱流体シミュレーション対象の3次元モデルと熱流体モデルとの設定を行なう。
【0018】
ここで、モデル設定部21により設定される、熱流体シミュレーションに必要な各種情報は、シミュレーション対象の構造物についての3次元モデルデータや、同構造物における熱流体シミュレーションを行なう際の解析条件データを含む。3次元モデルデータおよび解析条件データは、それぞれ記憶領域31,34に保存される(それぞれ図2の矢印a3,a4参照)。
【0019】
記憶領域31に保存される3次元モデルデータは、例えば、上記構造物のCAD(Computer Aided Design)モデル,メッシュモデルなどの3次元形状データや、シャッター機構,スライドドア等のスライド機構の設定情報や、冷却ファン等の回転機構の設定情報などを含む。
記憶領域34に保存される解析条件データは、例えば、熱流体シミュレーションで用いられる形状モデル,物性値,各種境界条件,発熱条件,収束条件,抵抗条件,送流条件などの計算条件を含む。
【0020】
なお、モデル設定部21は、3次元モデルデータと解析条件データとを入力されると、3次元モデルと熱流体解析モデル(解析条件)との関連付けを行ない、これら2つのモデルの対応関係を示す関連付け情報を、記憶領域31に3次元モデルデータとして記録する機能も有している。3次元モデルが複数の要素/部品から構成される場合、上記関連付け情報によって、各要素/部品についての3次元モデルデータと、各要素/部品についての解析条件データとが関連付けられる。
【0021】
モデル操作部22は、ユーザが、GUI機能を用い入力操作部10により、表示部40に表示された3次元モデルの操作を行なうと、当該操作に関する操作情報を受信する(図2の矢印a5参照)。モデル操作部22は、当該操作の対象の3次元モデルデータを記憶領域31から参照し(図2の矢印a6参照)、参照したデータと受信した操作情報とに基づき、当該操作による3次元モデルの変更情報を取得しモデル変更情報として記憶領域32に記録・保存する(図2の矢印a7参照)。本実施形態では、モデル操作部22および入力操作部10により、表示部40に表示された3次元モデルを操作する操作部が構成される。
【0022】
ここで、表示部40の画面上で入力操作部10により3次元モデルに対して行なわれる操作は、例えば、以下のような操作(11)〜(13)を含む。
(11)3次元モデルを構成する一要素(一部品)の移動・回転,追加,削除,表示,非表示を指示する操作。これらの操作は、例えば、マウス(入力操作部10)によるクリック操作,ドラッグ操作などによって行なわれる。
【0023】
(12)3次元モデルとして設定されたスライド機構や回転機構の動作を変更する操作。スライド機構は、例えばシャッター機構(図9参照)を含み、回転機構は、例えば冷却ファンを含む。スライド機構の動作変更は、例えばマウス(入力操作部10)によるドラッグ操作によって行なわれる。回転機構の動作変更は、例えば、マウスのクリック操作により変更対象の回転機構を指定した上で、キーボード(入力操作部10)により変更後の回転速度を入力することによって行なわれる。
【0024】
(13)3次元モデルの属性値を変更する操作。3次元モデルの属性値としては、例えば、3次元モデルを構成する一要素が発熱体である場合にその発熱体の発熱量が挙げられる。属性値の動作変更は、例えば、マウスのクリック操作により変更対象の属性値を設定された要素を指定した上で、キーボードにより変更後の属性値を入力することによって行なわれる。
【0025】
ユーザ操作・解析条件間翻訳部(以下、単に「翻訳部」という)24は、操作部10,22での操作により3次元モデルが変更された場合、操作部10,22によって操作された3次元モデルの変更情報を、熱流体シミュレーションの解析条件の変更情報に翻訳し、解析条件を変更する。つまり、翻訳部24は、モデル変更情報を記憶領域32から読み出すとともに(図2の矢印a8参照)、モデル変更情報に対応付けられる解析条件データを記憶領域34から読み出す(図2の矢印a9参照)。翻訳部24は、読み出されたモデル変更情報と3次元モデルの幾何情報等と解析条件データとに基づき、モデル操作に相当する、解析条件データの変更を算出する。翻訳部24は、算出された解析条件の変更に関する情報を、解析条件変更データとして記憶領域33に記録・保存する(図2の矢印a10参照)。なお、記憶領域34には、最初に設定された解析条件データが保存され、記憶領域33には、モデル動作に伴って変更された解析条件データが保存される。
【0026】
翻訳部24は、モデル操作を、当該モデル操作に相当する解析条件データの変更に翻訳する翻訳処理として、例えば、以下のような処理(21)〜(25)を実行する。
(21)操作部10,22によるモデル操作として3次元モデルの属性値の変更操作が行なわれた場合、少なくとも変更後の属性値がモデル変更情報として記憶領域33に記録される。翻訳部24は、記憶領域33の変更後の属性値を参照し、変更後の属性値に基づき、当該属性値に対応する、熱流体シミュレーションの解析条件のパラメータを変更する。なお、属性値の変更操作に係る処理については、図6を参照しながら後述する。
【0027】
(22)操作部10,22によるモデル操作として、3次元モデルの構造物を平行移動させる操作が行なわれた場合、平行移動量(距離,方向)がモデル変更情報として記憶領域33に記録される。翻訳部24は、記憶領域33の平行移動量(距離,方向)を参照し、平行移動量(距離,方向)に応じ、当該構造物に対応する境界条件の位置を変更する。平行移動後の当該構造物が熱流体解析モデルのグリッド上に載らない場合、翻訳部24は、変更後の境界条件の位置を、直近のグリッド上に載るように移動変更する。変更後の境界条件の位置をグリッド上に揃えない場合、翻訳部24は、変更後の境界条件を削除し、平行移動後の位置における当該構造物の面に直交する方向の速度を逆向きにする反力を発生させる境界条件を、解析条件の変更情報として追加する。なお、構造物の平行移動操作に係る処理については、図7を参照しながら後述する。
【0028】
(23)操作部10,22によるモデル操作として、3次元モデルの構造物を回転移動させる操作が行なわれた場合、回転移動情報(回転軸,回転角度)がモデル変更情報として記憶領域33に記録される。翻訳部24は、記憶領域33の回転移動情報(回転軸,回転角度)を参照し、当該構造物に対応する境界条件の位置を、前記回転移動と同じ回転軸および回転角度を用いた回転変換により変更する。回転移動後の当該構造物が熱流体解析モデルのグリッド上に載らない場合、翻訳部24は、変更後の境界条件を削除し、回転移動後の位置における当該構造物の面に直交する方向の速度を逆向きにする反力を発生させる境界条件を、解析条件の変更情報として追加する。また、翻訳部24は、当該構造物に対応する送流条件としての送流方向を、前記回転移動と同じ回転軸および回転角度を用いた回転変換により変更する。さらに、翻訳部24は、当該構造物に対応する抵抗条件/発熱条件としての抵抗値/発熱値を、回転後の境界条件がまたがるセルに、セルの面積比または体積比に応じて分配することにより、新たな抵抗条件/発熱条件を解析条件の変更情報として設定する。なお、構造物の回転移動操作に係る処理については、図8を参照しながら後述する。
【0029】
(24)操作部10,22によるモデル操作として、スライド移動に応じて開口率が変化する、3次元モデルのスライド機構をスライド移動させる操作が行なわれた場合、スライド移動後の開口率が算出されモデル変更情報として記憶領域33に記録される。翻訳部24は、当該スライド機構に対応する抵抗条件としての抵抗値を、スライド移動により変化した開口率に応じて変更する。なお、スライド機構の操作に係る処理については、図9および図10を参照しながら後述する。
【0030】
(25)操作部10,22によるモデル操作として3次元モデルの回転機構の動作速度(回転速度)の変更操作が行なわれた場合、変更前後の回転速度がモデル変更情報として記憶領域33に記録される。翻訳部24は、記憶領域33の変更前後の回転速度を参照し、変更前後の回転速度に基づき、当該回転機構に対応する、熱流体シミュレーションの解析条件、より具体的には送流条件(風量,流量)を変更する。回転機構の動作速度の変更操作に係る処理については、図11を参照しながら後述する。
【0031】
上述した入力操作部10,モデル設定部21,モデル操作部22,表示制御部23および表示部40は、リアルタイムに3次元モデルを表示し、3次元モデルの移動や回転などの機構操作を可能にするモデル操作・表示部100として機能する。
また、モデル操作・表示部100および翻訳部24は、熱流体シミュレーションの解析条件を変更する変更部200として機能する。
【0032】
熱流体シミュレーション部25は、記憶領域34,33に保存される解析条件データや解析条件変更データに基づき(図2の矢印a12,a11参照)、時間ステップ毎に熱流体方程式を解くことにより熱流体シミュレーションを実行する。熱流体シミュレーション部25は、シミュレーション結果、例えば、流体の速度分布,温度の分布,時刻などを記憶領域35に記録・保存する(図2の矢印a13参照)。記憶領域35に記憶されたシミュレーション結果は、表示制御部23により表示部40において表示されるが(図2の矢印a14参照)、プリンタ(図示略)により紙などに記録されて出力されてもよい。
【0033】
熱流体シミュレーション部25において実行される熱流体シミュレーションとしては、格子法,粒子法,格子ボルツマン法などの方法が知られている。ここでは、格子法について説明する。一般に、熱流体シミュレーションでは、時系列的に連続する複数の時間ステップが設定され、時間ステップ毎に計算を進める解析処理を繰り返す時系列シミュレーションが行なわれる。各時間ステップの計算においては、下記(1)〜(3)式からなる連立方程式を解くことにより、流速場および温度場の時間発展が行なわれる。ここで、(1)式は、流体の運動を記述する2階非線型偏微分方程式であるナビエ・ストークス方程式(Navier-Stokes equation)である。(2)式は、非圧縮性流れについての質量保存則から導かれる連続の式である。(3)式は、流体中の熱伝導を記述した熱移流拡散方程式である。
【0034】
【数1】

【0035】
これらの(1)〜(3)式において、uは流体の速度ベクトル、pは圧力、ρは密度、fは単位質量当たりに作用する外力ベクトル、νは動粘性係数、Tは温度、κは熱伝導係数、Sは外部から受け取る熱量を表す。ナブラ∇は、空間微分作用素である。また、(1)式および(3)式の左辺における、上部にドットを付されたuおよびTは、それぞれ、速度ベクトルuおよび温度Tの、時間tによる偏微分を示す。
【0036】
コンピュータ上で非圧縮流体の熱流体シミュレーションを行なう場合、上記の連立偏微分方程式(1)〜(3)式を解くために、解析空間は離散化され、熱流体シミュレーション部25が微分値を離散的に計算できるようにする。離散化の方法としては、図3(A)および図3(B)に示すように、連続的な解析空間を格子に分割する方法を用いる。また、格子に区切られた長方形や直方体をセルと呼ぶ。なお、図3(A)および図3(B)は熱流体シミュレーションで用いられる格子モデルを示す図であり、図3(A)は2次元の格子モデルを示し、図3(B)は3次元の格子モデルを示している。
【0037】
そして、本実施形態では、上述した変更部200によって変更された解析条件を、最初の時間ステップから解析処理をやり直すことなく、次の時間ステップでの熱流体シミュレーションに即座に反映させるべく、熱流体シミュレーション部25は、以下のような機能を有している。つまり、変更部200によって解析条件が変更された場合、シミュレーション部25は、下記参照タイミングで、変更部200によって変更された解析条件を参照し、変更後の解析条件に基づき次の時間ステップでのシミュレーションを実行する機能を有している。
【0038】
参照タイミングは、解析条件の変更時に実行中の、ある一の時間ステップでのシミュレーション(解析処理)を終了した後であって、且つ、次の時間ステップでのシミュレーション(解析処理)を開始する前である。つまり、本実施形態の熱流体シミュレーション装置1では、処理が、解析処理によって時間が進む時間ステップと、時間が進まないステップとに切り分けられ、時間が進まないステップにおいて、解析条件の変更および参照が実行される。換言すると、ある時間ステップについて解析処理を行なっている最中に、解析条件が変更されたとしても、当該時間ステップについての解析処理が終わるまで待ってから、その解析条件の変更が熱流体シミュレーションに反映される。この機能については、図5を参照しながら後述する。
【0039】
〔2〕本実施形態の熱流体シミュレーション装置の動作
次に、上述のごとく構成された本実施形態の熱流体シミュレーション装置1の動作について、図4〜図11を参照しながら説明する。
〔2−1〕熱流体シミュレーション装置の動作概要
図4は、本実施形態の熱流体シミュレーション装置1の動作概要を説明するための図である。図4に示すように、本実施形態の熱流体シミュレーション装置1は、モデル表示・操作部100,熱流体シミュレーション部25およびユーザ操作・解析条件間翻訳部24から構成される。モデル表示・操作部100では、リアルタイムに3次元モデルが表示部40に表示され、ユーザは、表示部40を参照しながら、3次元モデルの移動や回転などの機構操作を行なうことができる。そして、翻訳部24は、ユーザが表示部40の画面上で入力操作部10を用いて行なった3次元モデルの操作から、熱流体シミュレーション部25での解析処理に用いられる解析条件の変更を生成する。
【0040】
モデル表示・操作部100で扱われる詳細な3次元モデルと、熱流体シミュレーションで用いる熱流体解析モデルとは異なるため、ユーザの操作をそのまま、熱流体シミュレータに反映させることはできない。
そこで、本熱流体シミュレーション装置1では、モデル表示・操作部100と熱流体シミュレーション部25との間にユーザ操作・解析条件間翻訳部24がそなえられている。つまり、熱流体シミュレーション部25による解析実行前または実行中に、ユーザがモデル表示・操作部100上で行なった3次元モデルに対する操作は、翻訳部24において解析条件の変更に変換され、熱流体シミュレーション部25による次の時間ステップでの解析処理に即座に反映される。これにより、ユーザは、モデル表示・操作部100上で行なった3次元モデルに対する操作に応じた、熱流体シミュレーション部25によるシミュレーション結果を直ちに得ることができ、インタラクティブな熱流体シミュレーションが実現される。
【0041】
本熱流体シミュレーション装置1では、以下の流れ[1]〜[4]で、ユーザによる3次元モデルに対する操作に伴う解析条件の変更が、熱流体シミュレーションに反映される。
[1] ユーザが、モデル表示・操作部100上で3次元モデルを操作する(図4の矢印A1参照)。具体的に、ユーザは、上記項目(11)〜(13)で前述したように、3次元モデルを構成する一要素(一部品)の移動・回転,追加,削除,表示,非表示を指示する操作や、スライド機構や回転機構の動作を変更する操作や、3次元モデルの属性値を変更する操作を実行する。
【0042】
[2] ユーザ操作・解析条件間翻訳部24において、[1]の操作に伴う3次元モデルの変化が、操作された要素に対応する解析条件の変更に変換される(図4の矢印A2参照)。ここで、モデル表示・操作部100の3次元モデルと熱流体シミュレーション部25の熱流体解析モデルとは、事前に対応付けされている。
【0043】
[3] [2]の境界条件の変更が、熱流体シミュレーション部25での解析処理に反映され(図4の矢印A3参照)、時系列シミュレーションを進める。その際、熱流体シミュレーション部25は、解析条件の変更時に実行中の、ある一の時間ステップでの解析処理を終了した後であって且つ次の時間ステップでの解析処理を開始する前、つまりシミュレーションによって時間が進まない状態で、記憶領域33の解析条件変更データを参照する。これにより、熱流体シミュレーション部25は、変更後の解析条件を、最初の時間ステップから解析処理をやり直すことなく、次の時間ステップでの解析処理に反映することができる。
【0044】
[4] 記憶領域35のシミュレーション結果は、モデル表示・操作部100の表示部40上で表示される(図4の矢印A4参照)。ユーザは、表示部40に表示されたシミュレーション結果を参照することで、3次元モデルに対する操作に応じたシミュレーション結果を直ちに確認し評価する(図4の矢印A5参照)。これにより、ユーザは、本熱流体シミュレーション装置1により、インタラクティブな熱流体シミュレーションを行なうことが可能になる。
【0045】
〔2−2〕熱流体シミュレーション装置における処理の流れ
次に、図5に示すフローチャート(ステップS11〜S23)に従って、本実施形態の熱流体シミュレーション装置1における処理の流れ、つまり熱流体シミュレーション装置1で行なわれるインタラクティブ熱流体シミュレーションについて説明する。
シミュレーションに先立ち、ユーザが入力操作部10を操作して入力した、熱流体シミュレーションに必要な各種情報が、モデル設定部21において受信されると、受信された情報は、記憶部30の記憶領域31,34に記録保存される。つまり、シミュレーション対象の構造物についての3次元モデルデータが記憶領域31に設定されるとともに、同構造物における熱流体シミュレーションを行なう際の解析条件データが記憶領域34に設定される。これにより、熱流体シミュレーション対象の3次元モデルと熱流体モデルとの設定が行なわれる(ステップS11)。
【0046】
このとき、モデル設定部21により、3次元モデルと熱流体解析モデル(解析条件)との関連付けが行なわれ、これら2つのモデルの対応関係を示す関連付け情報が、記憶領域31に3次元モデルデータとして記録される(ステップS12)。
この後、モデル設定部21で、ユーザが入力操作部10を操作して入力した、熱流体シミュレーション実行命令が受信されると、熱流体シミュレーションが開始される(ステップS13)。
【0047】
シミュレーションの開始後、熱流体シミュレーション装置1において、ユーザが、モデル操作・表示部100(操作部10,22)での操作により3次元モデルの変更を行なうか否かが監視される(ステップS14)。
3次元モデルの変更操作を行なわない場合(ステップS14のNOルート)、熱流体シミュレーション部25において、記憶領域34の解析条件データが参照される(ステップS18)。そして、参照された解析条件データに基づき、一の時間ステップについて、例えば上記(1)〜(3)式のごとき熱流体方程式を解くことにより、熱流体シミュレーション対象の流速場および温度場の時間発展が行なわれる(ステップS19,S20)。
【0048】
3次元モデルの変更操作を行なう場合(ステップS14のYESルート)、以下のステップS15〜S20の処理が実行される。
まず、ユーザは、入力操作部10での操作、例えば前述した操作(11)〜(13)により3次元モデルの変更を行なう。当該操作に関する操作情報が、モデル操作部22により受信されると、当該操作による3次元モデルの変更情報が取得されモデル変更情報として記憶領域32に記録される(ステップS15)。
【0049】
モデル変更情報が記憶領域32に記録されると、翻訳部24により、記憶領域32のモデル変更情報と3次元モデルの幾何情報等と解析条件データとに基づき、モデル操作に相当する、解析条件データの変更が算出される。つまり、翻訳部24により、当該操作に関する操作情報が、熱流体シミュレーションの解析条件に変換される(ステップS16)。そして、翻訳部24による変換結果が、解析条件変更データとして記憶領域33に記録される。これにより、ユーザ操作に伴う解析条件の修正変更が、熱流体シミュレーション部25によって参照される記憶領域33に反映され、修正変更後の解析条件が、次の時間ステップについての解析処理に反映される(ステップS17)。
【0050】
この後、熱流体シミュレーション部25において、記憶領域34の解析条件データおよび記憶領域33解析条件変更データが参照される(ステップS18)。そして、参照された解析条件データおよび解析条件変更データに基づき、一の時間ステップについて、例えば上記(1)〜(3)式のごとき連立偏微分方程式を解くことにより、熱流体シミュレーション対象の流速場および温度場の時間発展が行なわれる(ステップS19,S20)。シミュレーション結果は、記憶領域35に記録される。
【0051】
一の時間ステップについての熱流体シミュレーションが実行されると、シミュレーション結果の表示を行なうタイミングであるか否かが判断される(ステップS21)。シミュレーション結果の表示タイミングは、記憶部30の所定領域に予め設定されており、表示タイミングになった場合(ステップS21のYESルート)、記憶領域35のシミュレーション結果が、表示制御部23によって表示部40に表示される(ステップS22)。
【0052】
一方、表示タイミングでない場合(ステップS21のNOルート)もしくはシミュレーション結果の表示後には、終了条件に基づきシミュレーションを終了するか否かが判断される(ステップS23)。終了条件は、例えば、シミュレーション開始後の経過時間が所定時間に達した場合や、熱流体シミュレーション部25による計算が定常状態に達した場合である。終了条件が満たされずシミュレーションを未だ終了しない場合(ステップS23のNOルート)、熱流体シミュレーション装置1の処理は、ステップS14の処理に戻る。終了条件が満たされシミュレーションを終了する場合(ステップS23のYESルート)、熱流体シミュレーション装置1は、処理を終了する。
【0053】
ここで、前述したように、ある一の時間ステップでの解析処理の実行中、即ち上記(1)〜(3)式のごとき連立偏微分方程式(熱流体方程式)を解いている途中で、解析条件の変更を許可すると、正しいシミュレーション結果が得られなくなる。
そこで、本実施形態では、熱流体シミュレーション1ステップが、ユーザ操作による解析条件の修正変更を記憶部30に反映するサブステップ(ステップS17)と、解析条件変更データを参照するサブステップ(ステップS18)と、熱流体方程式を解くサブステップ(ステップS19)との3つに分割される。したがって、解析条件の変更時に実行中の、ある一の時間ステップでの解析処理を終了した後であって、且つ、次の時間ステップでの解析処理を開始する前のタイミングで、変更後の解析条件を参照することが可能になる。これにより、解析条件の修正変更および参照が適切なタイミングで行なわれる。
【0054】
〔2−3〕ユーザ操作の解析条件への変換
上述したように、ステップS15において、モデル操作部22では、入力操作部10での操作、例えば前述した操作(11)〜(13)により3次元モデルの変更が行なわれる。これらの操作による3次元モデルの変更が、ステップS16において、ユーザ操作・解析条件間翻訳部24で熱流体シミュレーションの解析条件の変更に変換される。ここで、解析条件としては、壁についての境界条件のほか、送流条件,抵抗条件,発熱条件などがある。ユーザ操作の解析条件への変換としては、多数の組み合わせが考えられるが、ここでは、典型的な5つの例について説明する。
【0055】
〔2−3−1〕属性値の変更
まず、操作部10,22によるモデル操作として、3次元モデルの属性値の変更操作が行なわれ、当該属性値の変更が、解析条件のパラメータ変更として熱流体シミュレーションに反映される場合について、図6に示すフローチャート(ステップS31〜S34)に従って説明する。ここで、変更対象の属性値は、例えば発熱量に係るものとする。
【0056】
操作部10,22でのモデル操作(上記操作(13)参照)により、3次元モデルの発熱量に係る属性値が変更されると(ステップS31)、変更後の属性値(数値)がモデル変更情報として記憶領域33に記録される(ステップS32)。ステップS31,S32の処理は、図5のステップS15の処理に対応する。
【0057】
記憶領域33に記録された変更後の数値は、翻訳部24により参照され、翻訳部24において、参照された数値に基づき、対応する熱流体解析モデルの発熱量(解析条件)が変更される(ステップS33)。ステップS33の処理は、図5のステップS16の処理に対応する。
【0058】
翻訳部24による発熱量の変更結果は、解析条件変更データとして記憶領域33に記録される(ステップS34)。これにより、ユーザ操作に伴う熱流体解析モデルの発熱量の修正変更が、ステップS18で熱流体シミュレーション部25により参照される記憶領域33に反映され、修正変更後の発熱量が、次の時間ステップについての解析処理に反映される。ステップS34の処理は、図5のステップS17の処理に対応する。
【0059】
〔2−3−2〕構造物の平行移動
次に、操作部10,22によるモデル操作として、3次元モデルを平行移動させる操作が行なわれ、当該平行移動が、解析条件の変更として熱流体シミュレーションに反映される場合について、図7に示すフローチャート(ステップS41〜S48)に従って説明する。ここでは、例えば壁などの構造物が平行移動されるものとする。
【0060】
操作部10,22でのモデル操作(上記操作(11)参照)により、3次元モデルの構造物が解析領域内で平行移動されると(ステップS41)、モデル操作に伴う平行移動量(距離,方向)がモデル変更情報として記憶領域33に記録される(ステップS42)。ステップS41,S42の処理は、図5のステップS15の処理に対応する。
【0061】
記憶領域33に記録された平行移動量(距離,方向)は、翻訳部24により参照され、翻訳部24において、当該構造物に対応する境界条件(解析条件)の位置が、参照された距離と同じ距離だけ、参照された方向と同じ方向へ平行移動される(ステップS43)。そして、翻訳部24において、平行移動後の当該構造物が熱流体解析モデルのグリッド上に載っているか否かが判断される(ステップS44)。
【0062】
当該構造物がグリッド上に載っていない場合(ステップS44のNOルート)、翻訳部24において、変更後の境界条件をグリッドに揃えるか否かが判断される(ステップS45)。境界条件をグリッドに揃えるか否かについては、シミュレーション開始前に、ユーザによって予め設定しておいもよいし、ステップS45において、表示部40の画面を通じてユーザに対し、境界条件をグリッドに揃えるか否かの判断を要求してもよい。
【0063】
境界条件をグリッドに揃える場合(ステップS45のYESルート)、翻訳部24において、ステップS43で変更された境界条件の位置が、直近のグリッド上に載るように修正(移動変更)される(ステップS46)。一方、境界条件をグリッドに揃えない場合(ステップS45のNOルート)、翻訳部24において、ステップS43で変更された境界条件が削除され、平行移動後の位置における当該構造物の面に直交する方向の速度を逆向きにする反力を発生させる境界条件が、解析条件の変更情報として追加される(ステップS47)。
【0064】
ステップS46で位置を修正された境界条件、または、ステップS47で追加された境界条件は、解析条件変更データとして記憶領域33に記録される(ステップS48)。
また、当該構造物がグリッド上に載っている場合(ステップS44のYESルート)、ステップS45〜S47の処理はスキップされ、ステップS43で平行移動された境界条件が、解析条件変更データとして記憶領域33に記録される(ステップS48)。
【0065】
ステップS48で解析条件変更データを記録することにより、ユーザによる平行移動操作に伴う境界条件の修正変更が、ステップS18で熱流体シミュレーション部25により参照される記憶領域33に反映され、修正変更後の境界条件が、次の時間ステップについての解析処理に反映される。
【0066】
なお、ステップS43〜S47の処理は、図5のステップS16の処理に対応し、ステップS48の処理は、図5のステップS17の処理に対応する。
また、ユーザ操作による平行移動対象が、複数の構造物をグループ化したものである場合には、複数の構造物が一体の構造物と見なされ、上述と同様の処理が実行される。
【0067】
〔2−3−3〕構造物の回転移動
次に、操作部10,22によるモデル操作として、3次元モデルの構造物を回転移動させる操作が行なわれ、当該回転移動が、解析条件の変更として熱流体シミュレーションに反映される場合について、図8に示すフローチャート(ステップS51〜S63)に従って説明する。
【0068】
操作部10,22でのモデル操作(上記操作(11)参照)により、3次元モデルの構造物が解析領域内で回転移動されると(ステップS51)、モデル操作に伴う回転移動情報(回転軸,回転角度)がモデル変更情報として記憶領域33に記録される(ステップS52)。ステップS51,S52の処理は、図5のステップS15の処理に対応する。
【0069】
記憶領域33に記録された回転移動情報(回転軸,回転角度)は、翻訳部24により参照され、翻訳部24において、当該構造物に対応する解析条件の位置が、参照された回転軸と同じ回転軸、および、参照された回転角度と同じ回転角度を用いた回転変換により回転移動(変更)される(ステップS53)。そして、翻訳部24において、回転移動後の当該構造物が熱流体解析モデルのグリッド上に載っているか否かが判断される(ステップS54)。
【0070】
当該構造物がグリッド上に載っていない場合(ステップS54のNOルート)、翻訳部24において、解析条件に壁の境界条件が含まれているか否かが判断される(ステップS55)。壁の境界条件が含まれている場合(ステップS55のYESルート)、翻訳部24において、ステップS53で変更された解析条件に含まれる境界条件が削除され、回転移動後の位置における当該構造物の面に直交する方向の速度を逆向きにする反力を発生させる境界条件が、解析条件の変更情報として追加される(ステップS56)。ユーザ操作による回転移動対象が、複数の構造物をグループ化したものである場合には、複数の構造物が一体の構造物と見なされ、ステップS56と同様の処理が実行される。
【0071】
ステップS56の処理後もしくは壁の境界条件が含まれていない場合(ステップS55のNOルート)、翻訳部24において、解析条件に送流条件(例えば冷却ファンによる送流方向)が含まれているか否かが判断される(ステップS57)。送流条件が含まれている場合(ステップS57のYESルート)、翻訳部24において、解析条件に含まれる送流条件(送流方向)が、記憶領域33に記録された回転移動情報(回転軸,回転角度)を用いた回転変換により変更される(ステップS58)。
【0072】
ステップS58の処理後もしくは送流条件が含まれていない場合(ステップS57のNOルート)、翻訳部24において、解析条件に抵抗条件まれているか否かが判断される(ステップS59)。抵抗条件が含まれている場合(ステップS59のYESルート)、翻訳部24において、解析条件に含まれる抵抗条件としての抵抗値(回転前に定義されていた抵抗値)を、回転後の境界条件がまたがるセルに、セルの面積比または体積比に応じて分配することにより、新たな抵抗条件(抵抗値)が、解析条件の変更情報として設定される(ステップS60)。
【0073】
ステップS60の処理後もしくは抵抗条件が含まれていない場合(ステップS59のNOルート)、翻訳部24において、解析条件に発熱条件まれているか否かが判断される(ステップS61)。発熱条件が含まれている場合(ステップS61のYESルート)、翻訳部24において、解析条件に含まれる発熱条件としての発熱値(回転前に定義されていた発熱量)を、回転後の発熱条件がまたがるセルに、セルの面積比または体積比に応じて分配することにより、新たな発熱条件(発熱量)が、解析条件の変更情報として設定される(ステップS62)。
【0074】
ステップS56で追加された境界条件や、ステップS58で変更された送流条件や、ステップS60で設定された抵抗条件や、ステップS62で設定された発熱条件は、解析条件変更データとして記憶領域33に記録される(ステップS63)。
また、当該構造物がグリッド上に載っている場合(ステップS54のYESルート)、ステップS55〜S62の処理はスキップされ、ステップS53で回転移動された解析条件が、解析条件変更データとして記憶領域33に記録される(ステップS63)。
【0075】
ステップS63で解析条件変更データを記録することにより、ユーザによる回転移動操作に伴う解析条件の修正変更が、ステップS18で熱流体シミュレーション部25により参照される記憶領域33に反映され、修正変更後の解析条件が、次の時間ステップについての解析処理に反映される。
なお、ステップS53〜S62の処理は、図5のステップS16の処理に対応し、ステップS63の処理は、図5のステップS17の処理に対応する。
【0076】
〔2−3−4〕スライド機構の移動
次に、操作部10,22によるモデル操作として、3次元モデルのスライド機構をスライド移動させる操作が行なわれ、当該スライド機構の移動が、解析条件の変更として熱流体シミュレーションに反映される場合について、図10に示すフローチャート(ステップS71〜S74)に従って説明する。
【0077】
スライド機構は、可動部品が固定部品に対して決められた一方向に移動可能な機構を指す。このようなスライド機構は可動部品と固定部品との両方に開口部を設けることで、可動部品のスライド移動に応じ開口率が変化するシャッター機構として機能する。なお、開口率とは、ある面の総面積のうち穴の占める面積の比を指す。
【0078】
ここで、スライド機構は、例えば図9(A)および図9(B)に示すようなシャッター機構であり、熱流体解析モデルの抵抗条件に対応付けられているものとする。なお、図9(A)および図9(B)は表示部40でのシャッター機構の表示例を示すもので、図9(A)は3次元モデルにおける開状態のシャッター機構の表示例を示す図、図9(B)は3次元モデルにおける閉状態のシャッター機構の表示例を示す図である。なお、スライド機構としては、シャッター機構のほかに、スライド式のドアなども挙げられる。
【0079】
操作部10,22でのモデル操作(上記操作(12)参照)により、3次元モデルのシャッター機構が、例えば図9(A)に示す状態から図9(B)に示す状態へスライド移動されると(ステップS71)、スライド移動後の開口率が算出されモデル変更情報として記憶領域33に記録される(ステップS72)。ステップS71,S72の処理は、図5のステップS15の処理に対応する。
【0080】
記憶領域33に記録された開口率は翻訳部24により参照され、翻訳部24において、当該シャッター機構に対応する抵抗条件としての抵抗値が、下式(4)を用い、参照された開口率に応じて変更される(ステップS73)。抵抗条件としての抵抗値は、下式(4)により圧力損失Δpとして表現される。翻訳部24は、参照された開口率に基づき、抵抗条件としての抵抗値を変更する。ステップS73の処理は、図5のステップS16の処理に対応する。
【0081】
【数2】

【0082】
ここで、vは流体の速度、Aは開口率、fは抵抗のない場合の圧力損失である。
変更された抵抗条件(抵抗値)は、解析条件変更データとして記憶領域33に記録される(ステップS74)。これにより、ユーザによるスライド機構の移動操作に伴う抵抗条件としての抵抗値の修正変更が、ステップS18で熱流体シミュレーション部25により参照される記憶領域33に反映され、修正変更後の抵抗値が、次の時間ステップについての解析処理に反映される。ステップS74の処理は、図5のステップS17の処理に対応する。
【0083】
〔2−3−5〕回転機構の動作速度の変更
次に、操作部10,22によるモデル操作として、3次元モデルの回転機構の動作速度(回転速度)の変更操作が行なわれ、当該動作速度の変更が、解析条件の変更として熱流体シミュレーションに反映される場合について、図11に示すフローチャート(ステップS81〜S84)に従って説明する。回転機構は、可動部品が一つの回転軸周りに回転する機構を指す。ここで、回転機構は、例えば冷却ファンであり、熱流体解析モデルの送流条件に対応付けられているものとする。
【0084】
操作部10,22でのモデル操作(上記操作(12)参照)により、3次元モデルの冷却ファンの回転速度が変更されると(ステップS81)、変更前後の回転速度wおよびwがモデル変更情報として記憶領域33に記録される(ステップS82)。なお、wは変更前の回転速度、wは変更後の回転速度である。ステップS81,S82の処理は、図5のステップS15の処理に対応する。ここで、ある回転速度wで回転していた冷却ファンをモデル操作により回転速度wで回転させる場合を考える。このとき、操作前の風量をVとすると、操作後の風量Vは下式(5)で表現される。
【0085】
【数3】

【0086】
記憶領域33に記録された変更前後の回転速度wおよびwは翻訳部24により参照され、翻訳部24において、参照された変更前後の回転速度wおよびwに基づき、上記(5)式を用いて、当該冷却ファンに対応する送流条件としての風量(流量)が変更される(ステップS83)。ステップS83の処理は、図5のステップS16の処理に対応する。なお、翻訳部24は、冷却ファンの回転速度や風量,冷却ファン前後での圧力損失などの特性が分かっている場合には、その特性を表す曲線を利用して、回転速度変更後の風量を求めてもよい。
【0087】
変更された送流条件(風量)は、解析条件変更データとして記憶領域33に記録される(ステップS84)。これにより、ユーザによる回転速度の変更操作に伴う送流条件としての風量の修正変更が、ステップS18で熱流体シミュレーション部25により参照される記憶領域33に反映され、修正変更後の風量が、次の時間ステップについての解析処理に反映される。ステップS84の処理は、図5のステップS17の処理に対応する。
【0088】
〔3〕本実施形態の熱流体シミュレーション装置の効果
本実施形態の熱流体シミュレーション装置1によれば、変更部200によって解析条件が変更された場合、解析条件の変更時に実行中の時間ステップでの解析処理終了後で次の時間ステップでの解析処理開始前のタイミング(時間が進まないステップ)で解析条件変更データが参照され、熱流体シミュレーションが実行される。これにより、ユーザ等による解析条件の変更に即座に対応可能な熱流体シミュレーションが実現される。つまり、モデル操作・表示部100および翻訳部24によって変更された解析条件が、最初の時間ステップから解析処理をやり直すことなく、次の時間ステップでの熱流体シミュレーションに即座に反映される。
【0089】
従って、本実施形態の熱流体シミュレーション装置1によれば、ユーザが、モデル操作・表示部100を介し3次元モデルに対する何らかの操作を行なうと、その操作に応じたシミュレーション結果が、即刻、表示部40で可視化される。つまり、本実施形態の熱流体シミュレーション装置1によれば、ンタラクティブな熱流体シミュレーションを実現することが可能になる。
【0090】
また、上述したように、通常、モデル表示・操作部100で扱われる詳細な3次元モデルと、熱流体シミュレーションで用いる熱流体解析モデルとは異なるため、ユーザの操作をそのまま、熱流体シミュレータに反映させることはできない。そこで、本実施形態の熱流体シミュレーション装置1では、モデル表示・操作部100と熱流体シミュレーション部25との間に翻訳部24がそなえられている。熱流体シミュレーション部25による解析実行前または実行中に、ユーザがモデル表示・操作部100上で行なった3次元モデルに対する操作は、翻訳部24において解析条件の変更に変換され、熱流体シミュレーション部25による次の時間ステップでの解析処理に即座に反映される。これにより、ユーザは、モデル表示・操作部100上で行なった3次元モデルに対する操作に応じた、熱流体シミュレーション部25によるシミュレーション結果を直ちに得ることができ、インタラクティブな熱流体シミュレーションが実現される。従って、サーバや等の製品を開発する際やデータセンタ等を構築する際の熱設計が、極めて効率的に行なうことが可能になる。
【0091】
〔4〕その他
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変形、変更して実施することができる。
なお、上述したモデル設定部21,モデル操作部22,表示制御部23,翻訳部24およびシミュレーション部25としての機能の全部もしくは一部は、コンピュータ(CPU,情報処理装置,各種端末を含む)が所定のアプリケーションプログラム(熱流体シミュレーションプログラム)を実行することによって実現される。
【0092】
そのプログラムは、例えばフレキシブルディスク,CD(CD−ROM,CD−R,CD−RWなど),DVD(DVD−ROM,DVD−RAM,DVD−R,DVD−RW,DVD+R,DVD+RWなど),ブルーレイディスク等のコンピュータ読取可能な記録媒体に記録された形態で提供される。この場合、コンピュータはその記録媒体からプログラムを読み取って内部記憶装置または外部記憶装置に転送し格納して用いる。
【0093】
ここで、コンピュータとは、ハードウエアとOS(オペレーティングシステム)とを含む概念であり、OSの制御の下で動作するハードウエアを意味している。また、OSが不要でアプリケーションプログラム単独でハードウェアを動作させるような場合には、そのハードウェア自体がコンピュータに相当する。ハードウエアは、少なくとも、CPU等のマイクロプロセッサと、記録媒体に記録されたコンピュータプログラムを読み取る手段とをそなえている。上記熱流体シミュレーションプログラムは、上述のようなコンピュータに、モデル設定部21,モデル操作部22,表示制御部23,翻訳部24およびシミュレーション部25の機能を実現させるプログラムコードを含んでいる。また、その機能の一部は、アプリケーションプログラムではなくOSによって実現されてもよい。
【0094】
〔5〕付記
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
流速場および温度場のシミュレーションを行なうコンピュータに、
解析条件に基づき時間ステップ毎に熱流体方程式を解くことにより前記シミュレーションを実行し、
前記解析条件を変更する、
処理を実行させ、
前記解析条件が変更された場合、前記解析条件の変更時に実行中のある一の時間ステップでのシミュレーションを終了した後であって且つ次の時間ステップでのシミュレーションを開始する前に、変更された前記解析条件を参照し、変更後の解析条件に基づき前記次の時間ステップでのシミュレーションを実行する、
処理を、前記コンピュータに実行させる、熱流体シミュレーションプログラム。
【0095】
(付記2)
前記の流速場および温度場を含む空間を構成する3次元モデルを表示部に表示し、
前記表示部に表示された3次元モデルを操作部によって操作された場合、前記操作部によって操作された3次元モデルの変更情報を、前記解析条件の変更情報に翻訳し、前記解析条件を変更する、
処理を、前記コンピュータに実行させる、付記1記載の熱流体シミュレーションプログラム。
【0096】
(付記3)
前記操作部によって前記表示部上で前記3次元モデルの構造物を平行移動させる操作が行なわれた場合、前記解析条件に含まれる、当該構造物に対応する境界条件の位置を、前記平行移動の移動距離および移動方向に応じて変更する、
処理を、前記コンピュータに実行させる、付記2記載の熱流体シミュレーションプログラム。
【0097】
(付記4)
前記平行移動後の当該構造物が熱流体解析モデルのグリッド上に載らない場合、変更後の前記境界条件の位置を、直近のグリッド上に載るように移動変更する、
処理を、前記コンピュータに実行させる、付記3記載の熱流体シミュレーションプログラム。
【0098】
(付記5)
前記平行移動後の当該構造物が熱流体解析モデルのグリッド上に載らない場合、変更後の前記境界条件を削除し、前記平行移動後の位置における当該構造物の面に直交する方向の速度を逆向きにする反力を発生させる境界条件を、前記解析条件の変更情報として追加する、
処理を、前記コンピュータに実行させる、付記3記載の熱流体シミュレーションプログラム。
【0099】
(付記6)
前記操作部によって前記表示部上で前記3次元モデルの構造物を回転移動させる操作が行なわれた場合、前記解析条件に含まれる、当該構造物に対応する境界条件の位置を、前記回転移動と同じ回転軸および回転角度を用いた回転変換により変更する、
処理を、前記コンピュータに実行させる、付記2記載の熱流体シミュレーションプログラム。
【0100】
(付記7)
前記回転移動後の当該構造物が熱流体解析モデルのグリッド上に載らない場合、変更後の前記境界条件を削除し、前記回転移動後の位置における当該構造物の面に直交する方向の速度を逆向きにする反力を発生させる境界条件を、前記解析条件の変更情報として追加する、
処理を、前記コンピュータに実行させる、付記6記載の熱流体シミュレーションプログラム。
【0101】
(付記8)
前記操作部によって前記表示部上で、スライド移動に応じて開口率が変化する、前記3次元モデルのスライド機構をスライド移動させる操作が行なわれた場合、前記解析条件に含まれる、当該スライド機構に対応する抵抗条件としての抵抗値を、前記スライド移動により変化した開口率に応じて変更する、
処理を、前記コンピュータに実行させる、付記2記載の熱流体シミュレーションプログラム。
【0102】
(付記9)
流速場および温度場のシミュレーションを行なう熱流体シミュレーション装置であって、
解析条件に基づき時間ステップ毎に熱流体方程式を解くことにより前記シミュレーションを実行するシミュレーション部と、
前記解析条件を変更する変更部と、を有し、
前記変更部によって前記解析条件が変更された場合、前記シミュレーション部は、前記解析条件の変更時に実行中のある一の時間ステップでのシミュレーションを終了した後であって且つ次の時間ステップでのシミュレーションを開始する前に、前記変更部によって変更された前記解析条件を参照し、変更後の解析条件に基づき前記次の時間ステップでのシミュレーションを実行する、熱流体シミュレーション装置。
【0103】
(付記10)
前記変更部は、
前記の流速場および温度場を含む空間を構成する3次元モデルを表示する表示部と、
前記表示部に表示された3次元モデルを操作する操作部と、
前記操作部によって操作された3次元モデルの変更情報を、前記解析条件の変更情報に翻訳し、前記解析条件を変更する翻訳部と、を有する、付記9記載の熱流体シミュレーション装置。
【0104】
(付記11)
前記操作部によって前記表示部上で前記3次元モデルの構造物を平行移動させる操作が行なわれた場合、前記翻訳部は、前記解析条件に含まれる、当該構造物に対応する境界条件の位置を、前記平行移動の移動距離および移動方向に応じて変更する、付記10記載の熱流体シミュレーション装置。
【0105】
(付記12)
前記平行移動後の当該構造物が熱流体解析モデルのグリッド上に載らない場合、前記翻訳部は、変更後の前記境界条件の位置を、直近のグリッド上に載るように移動変更する、付記11記載の熱流体シミュレーション装置。
【0106】
(付記13)
前記平行移動後の当該構造物が熱流体解析モデルのグリッド上に載らない場合、前記翻訳部は、変更後の前記境界条件を削除し、前記平行移動後の位置における当該構造物の面に直交する方向の速度を逆向きにする反力を発生させる境界条件を、前記解析条件の変更情報として追加する、付記11記載の熱流体シミュレーション装置。
【0107】
(付記14)
前記操作部によって前記表示部上で前記3次元モデルの構造物を回転移動させる操作が行なわれた場合、前記翻訳部は、前記解析条件に含まれる、当該構造物に対応する境界条件の位置を、前記回転移動と同じ回転軸および回転角度を用いた回転変換により変更する、付記10記載の熱流体シミュレーション装置。
【0108】
(付記15)
前記回転移動後の当該構造物が熱流体解析モデルのグリッド上に載らない場合、前記翻訳部は、変更後の前記境界条件を削除し、前記回転移動後の位置における当該構造物の面に直交する方向の速度を逆向きにする反力を発生させる境界条件を、前記解析条件の変更情報として追加する、付記14記載の熱流体シミュレーション装置。
【0109】
(付記16)
前記翻訳部は、前記解析条件に含まれる、当該構造物に対応する送流条件としての送流方向を、前記回転移動と同じ回転軸および回転角度を用いた回転変換により変更する、付記14または付記15に記載の熱流体シミュレーション装置。
【0110】
(付記17)
前記翻訳部は、前記解析条件に含まれる、当該構造物に対応する抵抗条件/発熱条件としての抵抗値/発熱値を、回転後の前記境界条件がまたがるセルに、セルの面積比または体積比に応じて分配することにより、新たな抵抗条件/発熱条件を前記解析条件の変更情報として設定する、付記14〜付記16のいずれか一項に記載の熱流体シミュレーション装置。
【0111】
(付記18)
前記操作部によって前記表示部上で、スライド移動に応じて開口率が変化する、前記3次元モデルのスライド機構をスライド移動させる操作が行なわれた場合、前記翻訳部は、前記解析条件に含まれる、当該スライド機構に対応する抵抗条件としての抵抗値を、前記スライド移動により変化した開口率に応じて変更する、付記10記載の熱流体シミュレーション装置。
【0112】
(付記19)
流速場および温度場のシミュレーションをコンピュータにより行なう熱流体シミュレーション方法であって、
解析条件に基づき時間ステップ毎に熱流体方程式を解くことにより前記シミュレーションを実行し、
前記解析条件が変更された場合、前記解析条件の変更時に実行中のある一の時間ステップでのシミュレーションを終了した後であって且つ次の時間ステップでのシミュレーションを開始する前に、変更された前記解析条件を参照し、変更後の解析条件に基づき前記次の時間ステップでのシミュレーションを実行する、熱流体シミュレーション方法。
【0113】
(付記20)
前記の流速場および温度場を含む空間を構成する3次元モデルを表示部に表示し、
前記表示部に表示された3次元モデルを操作部によって操作された場合、前記操作部によって操作された3次元モデルの変更情報を、前記解析条件の変更情報に翻訳し、前記解析条件を変更する、付記19記載の熱流体シミュレーション方法。
【符号の説明】
【0114】
1 熱流体シミュレーション装置
10 入力操作部(操作部)
20 処理部(CPU,コンピュータ)
21 モデル設定部
22 モデル操作部(操作部)
23 表示制御部
24 ユーザ操作・解析条件間翻訳部(翻訳部)
25 熱流体シミュレーション部(シミュレーション部)
30 記憶部
31 3次元モデルデータ記憶領域
32 モデル変更情報記憶領域
33 解析条件変更データ記憶領域
34 解析条件データ記憶領域
35 シミュレーション結果記憶領域
40 表示部
100 モデル操作・表示部
200 変更部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流速場および温度場のシミュレーションを行なうコンピュータに、
解析条件に基づき時間ステップ毎に熱流体方程式を解くことにより前記シミュレーションを実行し、
前記解析条件を変更する、
処理を実行させ、
前記解析条件が変更された場合、前記解析条件の変更時に実行中のある一の時間ステップでのシミュレーションを終了した後であって且つ次の時間ステップでのシミュレーションを開始する前に、変更された前記解析条件を参照し、変更後の解析条件に基づき前記次の時間ステップでのシミュレーションを実行する、
処理を、前記コンピュータに実行させる、熱流体シミュレーションプログラム。
【請求項2】
前記の流速場および温度場を含む空間を構成する3次元モデルを表示部に表示し、
前記表示部に表示された3次元モデルを操作部によって操作された場合、前記操作部によって操作された3次元モデルの変更情報を、前記解析条件の変更情報に翻訳し、前記解析条件を変更する、
処理を、前記コンピュータに実行させる、請求項1記載の熱流体シミュレーションプログラム。
【請求項3】
前記操作部によって前記表示部上で前記3次元モデルの構造物を平行移動させる操作が行なわれた場合、前記解析条件に含まれる、当該構造物に対応する境界条件の位置を、前記平行移動の移動距離および移動方向に応じて変更する、
処理を、前記コンピュータに実行させる、請求項2記載の熱流体シミュレーションプログラム。
【請求項4】
前記操作部によって前記表示部上で前記3次元モデルの構造物を回転移動させる操作が行なわれた場合、前記解析条件に含まれる、当該構造物に対応する境界条件の位置を、前記回転移動と同じ回転軸および回転角度を用いた回転変換により変更する、
処理を、前記コンピュータに実行させる、請求項2記載の熱流体シミュレーションプログラム。
【請求項5】
前記操作部によって前記表示部上で、スライド移動に応じて開口率が変化する、前記3次元モデルのスライド機構をスライド移動させる操作が行なわれた場合、前記解析条件に含まれる、当該スライド機構に対応する抵抗条件としての抵抗値を、前記スライド移動により変化した開口率に応じて変更する、
処理を、前記コンピュータに実行させる、請求項2記載の熱流体シミュレーションプログラム。
【請求項6】
流速場および温度場のシミュレーションを行なう熱流体シミュレーション装置であって、
解析条件に基づき時間ステップ毎に熱流体方程式を解くことにより前記シミュレーションを実行するシミュレーション部と、
前記解析条件を変更する変更部と、を有し、
前記変更部によって前記解析条件が変更された場合、前記シミュレーション部は、前記解析条件の変更時に実行中のある一の時間ステップでのシミュレーションを終了した後であって且つ次の時間ステップでのシミュレーションを開始する前に、前記変更部によって変更された前記解析条件を参照し、変更後の解析条件に基づき前記次の時間ステップでのシミュレーションを実行する、熱流体シミュレーション装置。
【請求項7】
流速場および温度場のシミュレーションをコンピュータにより行なう熱流体シミュレーション方法であって、
解析条件に基づき時間ステップ毎に熱流体方程式を解くことにより前記シミュレーションを実行し、
前記解析条件が変更された場合、前記解析条件の変更時に実行中のある一の時間ステップでのシミュレーションを終了した後であって且つ次の時間ステップでのシミュレーションを開始する前に、変更された前記解析条件を参照し、変更後の解析条件に基づき前記次の時間ステップでのシミュレーションを実行する、熱流体シミュレーション方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−198610(P2012−198610A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60707(P2011−60707)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】