説明

熱現像写真感光材料

【課題】湿度耐性、保存性が良好で現像処理ラチチュードに優れた熱現像写真感光材料を提供すること。
【解決手段】支持体上に、有機銀塩粒子、ハロゲン化銀粒子、還元剤を含有する感光層を有する熱現像写真感光材料において、感光層あるいは感光層に隣接して設けられた層に一般式(1)で表される化合物と融点が50℃以上200℃以下の熱溶剤を含有させ、かつ、感光層側の最外層にラテックスとワックスエマルジョンで構成された防湿層を有することを特徴とする熱現像写真感光材料。


11、R12、R13はH、置換基、X11は電子供与性のヘテロ環基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルキルチオ基、シクロアルキルアミノ基またはシクロアルケニル基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱現像写真感光材料に関し、更に詳しくは、湿度耐性、保存性が良好で現像処理ラチチュードに優れた熱現像写真感光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全が問題となってきており、溶液系処理化学薬品の使用をなくし、より簡単で環境を損なわない熱現像処理システムを顧客に対して供給することが求められてきている。さらに、写真製版技術の分野ではレーザー・スキャナーまたはレーザー・イメージセッターにより効率的に露光させることができ、かつ、高解像度及び鮮鋭さを有する鮮明な黒色画像を形成することが必要とされている。
熱現像により画像を形成する方法は、例えば、特許文献1、2、非特許文献1に記載されている。
カラー印刷をする場合には、通常、各色別に分解して露光するため印刷製版用感光材料を複数枚使用する。それらをそれぞれの刷版に焼き付け、各刷版を重ねて印刷する。複数の色別に分解して作成したフィルムを重ねたとき、全く同一に重ならないと、印刷物にした場合に、色がずれてしまうという現象が生ずる。熱現像写真感光材料では現像を加熱して行うため、熱現像写真感光材料を印刷製版に用いる場合、熱による寸法変化をいかに抑えるかが重要な問題となってくる。熱現像写真感光材料の耐熱寸法安定性を向上させる方法として、80〜200℃の高温および0.04〜6kg/cm2の低張力で搬送しながら熱処理し、支持体の熱収縮を小さくする技術が知られている。(例えば、特許文献3、4参照)
【0003】
熱現像写真感光材料は、還元可能な非感光性の銀源(例えば、有機銀塩)、触媒活性量の光触媒(例えば、ハロゲン化銀)、及び銀の還元剤を通常有機バインダーマトリックス中に分散した状態で含有している。熱現像写真感光材料は常温で安定であるが、露光後高温(例えば、80℃以上)に加熱した場合に、還元可能な銀源(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は、露光で発生した潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の還元可能な銀塩の反応によって生成した銀は黒色画像を提供し、これは非露光領域と対照をなし、画像の形成がなされる。
このような熱現像写真感光材料は、冬場の低湿期においては感材中の水分量が少なくなり現像反応が進みにくく濃度がでなくなったり、夏場の多湿期においては、反対に感材中の水分量が多くなり、現像反応が進みやすく感度が大きくなり、文字線巾が太るという問題があった。
従来の技術としては、保護層に塩化ビニリデンラテックスを使用し高湿下の文字線巾の影響を少なくする技術(例えば、特許文献5参照)が知られているが、湿度耐性も不十分であるとともに、現像時の膜強度が弱くなることにより、熱現像搬送後にローラー跡が付いたり、悪いときにはロールに接着し搬送できなくなることがわかった。
【特許文献1】米国特許第3,152,904号明細書
【特許文献2】米国特許第3,457,075号明細書
【特許文献3】特開平10−10676号公報
【特許文献4】特開平10−10677号公報
【特許文献5】特開2001−272742号公報
【非特許文献1】D.Morgan、B.Shely;Thermally Processed Silver Systems A;Imaging Processes and Materials:Neblette 第8版、Sturge、V.Walworth、A.Shepp編集、第2頁、1969年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、湿度耐性、保存性が良好で現像処理ラチチュードに優れた熱現像写真感光材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記のような問題点に対し鋭意検討した結果、上記の目的は、
(1)支持体上に、有機銀塩粒子、ハロゲン化銀粒子、還元剤を含有する感光層を有する熱現像写真感光材料において、感光層あるいは感光層に隣接して設けられた層に下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも2種と融点が50℃以上200℃以下の熱溶剤を含有させ、かつ感光層側の最外層にラテックスとワックスエマルジョンで構成された防湿層を有することを特徴とする熱現像写真感光材料。
【0006】
【化2】

〔式中、R11、R12、R13は各々水素原子または一価の置換基を表し、X11は電子供与性のヘテロ環基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルキルチオ基、シクロアルキルアミノ基またはシクロアルケニル基を表す。〕
(2)一般式(1)で表される化合物が、いずれも、R11で表される置換基がシアノ基、R12またはR13で表される置換基が水酸基である化合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱現像写真感光材料。
(3)一般式(1)で表される化合物の少なくとも1種が、X11で表される電子吸引性基がヘテロ環基である化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱現像写真感光材料。
(4)ワックスエマルジョンがパラフィン系のワックスエマルジョンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱現像写真感光材料。
(5)感光層と、感光層側の最外層以外の非感光性層が溶剤塗布により形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱現像写真感光材料。
(6)防湿層の透湿度が1〜40g/m2・24hrであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱現像写真感光材料。
(7)支持体が低熱収縮性支持体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱現像写真感光材料。
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の熱現像写真感光材料は、支持体上に、有機銀塩粒子、ハロゲン化銀粒子、還元剤を含有する感光層を有しており、感光層あるいは感光層に隣接して設けられた層に上記一般式(1)で表される化合物を少なくとも2種と融点が50℃以上200℃以下の熱溶剤が含有され、感光層側の最外層にラテックスとワックスエマルジョンで構成された防湿層を有している。
以下、順次説明する。
本発明の熱現像写真感光材料の感光層に含有される有機銀塩は還元可能な銀源であり、ここでいう有機銀塩には銀塩錯体も含まれる。有機銀塩としては、還元可能な銀イオンを有する有機酸やヘテロ有機酸の銀塩を用いることができ、特に、長鎖(炭素原子数10〜30、好ましくは炭素原子数5〜25)の脂肪族カルボン酸や含窒素複素環カルボン酸の銀塩が好ましい。また、銀イオンに対する総安定定数が4.0〜10.0である配位子を有する有機または無機の銀塩錯体も有用である。好適な銀塩の例は、Research Disclosure(以下、RDという。)第17029号及び第29963号に記載されており、有機酸(例えば、没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等)の銀塩;カルボキシアルキルチオ尿素(例えば、1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等)の銀塩;アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒドのようなアルデヒド類とサリチル酸、ベンジル酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、5,5−チオジサリチル酸のようなヒドロキシ置換酸類とのポリマー反応生成物)の銀錯体;チオン類(例えば、3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン、3−カルボキシメチル−4−メチル−4−チアゾリン−2−チオン)の銀塩または銀錯体;イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾール、1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾール,ベンゾトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体または塩;サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩;メルカプチド類の銀塩等が挙げられる。好ましい銀源はベヘン酸銀、アラキジン酸銀またはステアリン酸銀である。
【0008】
有機銀塩は、水溶性銀化合物と銀と塩または錯体を形成する化合物を混合することにより得られるが、混合には、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号公報に記載されているようなコントロールドダブルジェット法等が好ましく用いられる。 本発明において用いる有機銀塩粒子は、例えば、有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を加えて有機酸アルカリ金属塩ソープ(例えば、ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウム等)を作製した後に、コントロールドダブルジェット法を用い、該金属塩ソープと硝酸銀等を添加して有機銀塩の結晶として作製することができる。作製の際にハロゲン化銀粒子を混在させてもよい。
【0009】
本発明の熱現像写真感光材料の感光層に含有されるハロゲン化銀粒子は光センサーとして機能するものである。本発明において用いるハロゲン化銀粒子は、画像形成後の白濁を低く抑えるため、また、良好な画質を得るために平均粒子サイズが小さい方が好ましく、平均粒子サイズは0.03μm以下が好ましく、より好ましくは0.01〜0.03μmの範囲である。
本発明において、ハロゲン化銀粒子は前記の有機銀塩を調製するときに同時に作製するとか、あるいは、前記有機銀塩の調製時にハロゲン化銀粒子を混在させるとかして、有機銀塩に融着した状態でハロゲン化銀粒子を存在させ、ハロゲン化銀粒子を、微小粒子のいわゆるin situ銀とするのが好ましい。
ハロゲン化銀粒子の平均粒子径は、ハロゲン化銀粒子を50000倍の電子顕微鏡により撮影し、100個の粒子の粒子サイズを測定し、平均したものをいう。
ここで、粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体あるいは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。また、正常晶でない場合、例えば、球状、棒状、あるいは平板状の粒子の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な体積の球の直径をいう。
ハロゲン化銀粒子は単分散の粒子であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下であることをいう。更に、単分散度が30%以下の粒子であることが好ましく、特に好ましくは単分散度が0.1〜20%となる粒子である。
単分散度(%)=[(粒径分布の標準偏差)/(粒径の平均値)]×100
本発明において用いるハロゲン化銀粒子は、平均粒径0.01〜0.03μmの単分散粒子であることがより好ましく、この範囲にすることで画像の粒状性も向上する。
ハロゲン化銀粒子の形状は特に制限はないが、ミラー指数(100)面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、更には70%以上、特に80%以上であることが好ましい。ミラー指数(100)面の比率は、増感色素の吸着における(111)面と(100)面との吸着依存性を利用したT.Tani;J.Imaging Sci.,29,165(1985)記載の方法により求めることができる。
【0010】
また、ハロゲン化銀粒子は平板粒子であることも好ましい。ここでいう平板粒子とは、粒子の投影面積の平方根をもって表した粒径をrμmとし、垂直方向の厚みをhμmとしたときr/hで表されるアスペクト比が3以上のものをいう。その中でも好ましくは、アスペクト比が3以上、50以下である粒子である。また、粒径は0.03μm以下であることが好ましく、更に0.01〜0.03μmの範囲にあることが好ましい。これらハロゲン化銀粒子の製法は米国特許第5,264,337号明細書、同第5,314,798号明細書、同第5,320,958号明細書等に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることができる。本発明においてこれらの平板粒子を用いた場合、更に画像の鮮鋭性も向上する。
ハロゲン化銀粒子の組成は特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。
ハロゲン化銀写真乳剤は、P.Glafkides著 Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著 Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いて調製することができる。
本発明に用いるハロゲン化銀粒子には、照度不軌改良や改良調整のために、元素周期律表の6族から10族に属する金属のイオンまたは錯体イオンを含有することが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましい。
【0011】
ハロゲン化銀粒子は、ヌードル法、フロキュレーション法等当業界で知られている方法で水洗し脱塩して用いることもできるが、脱塩をしないでも用いることができる。
本発明で用いるハロゲン化銀粒子は、化学増感されていることが好ましい。化学増感法には、当業界でよく知られている硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法、金化合物や白金、パラジウム、イリジウム化合物等を用いる貴金属増感法や還元増感法を用いることができる。
本発明においては熱現像写真感光材料の失透を防ぐために、ハロゲン化銀粒子及び有機銀塩の総量は、銀量に換算して1m2当たり0.3〜2.2gとすることが好ましく、0.5〜1.5gとすることがより好ましい。また、この範囲にすることで硬調な画像が得られる。
また、銀総量に対するハロゲン化銀の量は、質量比で50%以下が好ましく、さらに好ましくは25%以下であり、特に好ましくは0.1〜15%の間である。
本発明におけるハロゲン化銀粒子は350〜450μmに光の極大吸収を有し、特に増感色素を用いなくてもよいが、必要に応じて用いてもよい。
【0012】
感光層に含有される還元剤は酸化還元反応によって還元可能な銀源から銀を生成する。
好適な還元剤の例は、米国特許第3,770,448号明細書、同第3,773,512号明細書、同第3,593,863号明細書等及びRD第17029号及び同第29963号に記載されており、次のものが挙げられる。
【0013】
アミノヒドロキシシクロアルケノン化合物(例えば、2−ヒドロキシ−3−ピペリジノ−2−シクロヘキセノン);還元剤の前駆体としてアミノレダクトン類(reductones)エステル(例えば、ピペリジノヘキソースレダクトンモノアセテート);N−ヒドロキシ尿素誘導体(例えば、N−p−メチルフェニル−N−ヒドロキシ尿素);アルデヒドまたはケトンのヒドラゾン類(例えば、アントラセンアルデヒドフェニルヒドラゾン);ホスファーアミドフェノール類;ホスファーアミドアニリン類;ポリヒドロキシベンゼン類(例えば、ヒドロキノン、t−ブチル−ヒドロキノン、イソプロピルヒドロキノン、(2,5−ジヒドロキシ−フェニル)メチルスルホン);スルフヒドロキサム酸類(例えば、ベンゼンスルフヒドロキサム酸);スルホンアミドアニリン類(例えば、4−(N−メタンスルホンアミド)アニリン);2−テトラゾリルチオヒドロキノン類(例えば、2−メチル−5−(1−フェニル−5−テトラゾリルチオ)ヒドロキノン);テトラヒドロキノキサリン類(例えば、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン);アミドオキシム類;アジン類;脂肪族カルボン酸アリールヒドラザイド類とアスコルビン酸の組み合わせ;ポリヒドロキシベンゼンとヒドロキシルアミンの組み合わせ;レダクトン及び/またはヒドラジン;ヒドロキサン酸類;アジン類とスルホンアミドフェノール類の組み合わせ;α−シアノフェニル酢酸誘導体;ビス−β−ナフトールと1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体の組み合わせ;5−ピラゾロン類;スルホンアミドフェノール還元剤;2−フェニルインダン−1,3−ジオン等;クロマン;1,4−ジヒドロピリジン類(例えば、2,6−ジメトキシ−3,5−ジカルボエトキシ−1,4−ジヒドロピリジン);ビスフェノール類(例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、ビス(6−ヒドロキシ−m−トリ)メシトール(mesitol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4−エチリデン−ビス(2−t−ブチル−6−メチルフェノール))、紫外線感応性アスコルビン酸誘導体;ヒンダードフェノール類;3−ピラゾリドン類。
中でも特に好ましい還元剤は、ヒンダードフェノール類である。
還元剤の使用量は、銀1モル当り1×10-2〜10モルが好ましく、特に、1×10-2〜1.5モルが好ましい。
【0014】
本発明の熱現像写真感光材料では、感光層あるいは感光層に隣接して設けられた層に前記一般式(1)で表される化合物を少なくとも2種含有する。2種以上の該化合物は同一の層に含有させても、別々の層に含有させてもよい。該化合物を2種以上含有せしめることにより、湿度耐性及び保存性が良好な熱現像写真感光材料を得ることができる。更に、上述の効果は、熱溶剤と組み合わせることによりさらに向上させることができる。
本発明において、前記一般式(1)で表される化合物は、写真感光材料で造核剤(硬調化剤)として用いられている化合物である。
【0015】
以下、一般式(1)について説明するが、それに先立ち、以下の説明で用いる電子供与性基及び電子吸引性基の用語について説明をする。
以下にいう電子供与性基とは、ハメットの置換基定数σpが負の値をとる置換基をいい、これら電子供与性基としては、例えば、ヒドロキシル基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、σpが負の値をとるヘテロ環基またはこれらの電子供与性基で置換されたフェニル基等が挙げられる。
また、以下にいう電子吸引性基とは、ハメットの置換基定数σpが正の値をとる置換基をいい、これら電子吸引性基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、カルボンアミド基、スルファモイル基、スルホンアミド基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ホスホリル基、カルボキシ基(またはその塩)、スルホ基(またはその塩)、イミノ基、σpが正の値をとるヘテロ環基またはこれらの電子吸引性基で置換されたフェニル基等が挙げられる。
ハメット則とは、ベンゼン誘導体の反応または平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論じるために1935年にL.P.Hammetにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則により求められた置換基定数にはσp値とσm値とがあり、これらの値は多くの一般的な成書に記載があり、「Lange's Handbook of Chemistry (J.A.Dean著)」第12版,1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域増刊」第122号,第96〜103頁,1979年(南光堂)、「Chemical Reviews」第91巻,第165〜195頁,1991年に詳しく述べられている。
電子吸引性基及び電子供与性基はσp値により規定されるものであり、上記の成書等に記載の文献既知の値がある置換基のみに限定されるものではない。
【0016】
一般式(1)において、X11は電子供与性のヘテロ環基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルキルチオ基、シクロアルキルアミノ基またはシクロアルケニル基を表すが、電子供与性のヘテロ環の代表例としては、「Substituent Constants for Correlation Analysis in Chemistry and Biology(Corwin Hansch and Albert Leo著)」の第66〜339頁に記載のσpが負のヘテロ環が挙げられ、具体的な例としては、ピペリジニル基、ピロリジニル基、モルフォリノ基、ピペラジニル基、3−チエニル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ピロロ基等が挙げられるが、好ましくは、3−チエニル基、2−フリル基または3−フリル基である。これらのヘテロ環は、σpが0または正にならない範囲で任意の置換基を有してもよい。
また、シクロアルキルオキシ基、シクロアルキルチオ基またはシクロアルキルアミノ基の具体的な例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロプロピルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、シクロヘプチルチオ基、シクロプロピルメチルアミノ基、シクロペンチルメチルアミノ基、シクロヘキシルメチルアミノ基、シクロヘプチルメチルアミノ基等が挙げられる。好ましくは、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルチオ基及びシクロヘキシルチオ基である。シクロアルケニル基の具体的な例としては、シクロプロぺニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基及びシクロヘプテニル基等が挙げられる。好ましくは、シクロペンテニル基またはシクロヘキセニル基である。
一般式(1)において、R11、R12、R13は各々水素原子または一価の置換基を表すが、一価の置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えば、ピリジニウム基)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えば、エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む。)、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ウレタン基、カルボキシル基、イミド基、アミノ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、4級アンモニオ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、メルカプト基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルホ基、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、アルキルスルホニルウレイド基、アリールスルホニルウレイド基、アルキルスルホニルカルバモイル基、アリールスルホニルカルバモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、リン酸アミド基等が挙げられる。
11は好ましくは電子吸引性基であり、さらに好ましくはシアノ基である。また、R12が水素原子、R13が電子供与性基であることが好ましい。最も好ましいのは、R11がシアノ基、R12が水素原子、R13がヒドロキシル基である化合物である。
本発明での一般式(1)で表される化合物の好ましい使用量は1×10-4モル/銀1mol〜1×10-1g/銀1molの範囲で、より好ましくは5×10-3モル/銀1mol〜5×10-2g/銀1mol、さらに好ましくは1×10-3モル/銀1mol〜1×10-2g/銀1molの範囲である。
【0017】
以下、一般式(1)で表される化合物の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。なお、以下に列挙する化合物において、ケト−エノール型互変異性体またはシス−トランス型幾何異性体が存在する場合には、その両方を表すものとする。
【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
【化5】

【0021】
【化6】

【0022】
【化7】

【0023】
【化8】

【0024】
本発明の熱現像感光材料において、熱溶剤としては融点が50℃以上200℃以下である熱溶剤が用いられる。
本発明で用いる熱溶剤は極性基を置換基として有することが好ましい。これらの置換基としてはヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基、リン酸アミド基、シアノ基、イミド基、ウレイド基、スルホキシド基、スルホン基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、含窒素複素環基が好ましく、これら基から選ばれる基を少なくとも一つ有する化合物が好ましい。
本発明において、熱溶剤は現像温度付近で溶融することにより現像に関与する物質と相溶し、熱溶剤を添加しないときよりも低い温度での反応を可能とするために本発明の効果を発現するものと考えられる。熱現像は、比較的極性の高いカルボン酸や銀イオン輸送体が関与している還元反応であるため、極性基を有している熱溶剤で適度の極性を有する反応場を形成することが好ましい。本発明の熱溶剤の融点は50℃以上200℃以下であるが、好ましくは60℃以上150℃以下であり、特に好ましくは70℃以上130℃以下である。
【0025】
以下に、本発明で用いることができる熱溶剤の具体例を示すが、本発明で用いることができる熱溶剤はこれら記載により限定されるものではない。なお、括弧内は融点を示している。
N-メチル-N-ニトロソ-p-トルエンスルホンアミド(61℃)、1,8-オクタンジオール(62℃)、安息香酸フェニル(67〜71℃)、ヒドロキノンジエチルエーテル(67〜73℃)、ε-カプロラクタム(68〜70℃)、りん酸ジフェニル(68〜70℃)、(±)-2-ヒドロキシオクタン酸(68〜71℃)、(±)-3-ヒドロキシドデカン酸(68〜71℃)、5-クロロ-2-メチルベンゾチアゾール(68〜71℃)、酢酸β-ナフチル(68〜71℃)、バチルアルコール(68〜73℃)、(±)-2-ヒドロキシデカン酸(69〜72℃)、2,2,2-トリフルオロアセトアミド(69〜72℃)、ピラゾール(69℃)、(±)-2-ヒドロキシウンデカン酸(70〜73℃)、N,N-ジフェニルホルムアミド(71〜72℃)、ジベンジルジスルフィド(71〜72℃)、(±)-3-ヒドロキシウンデカン酸(71〜74℃)、2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(71℃)、2,4-ジニトロトルエン(71℃)、2,4-ジメトキシベンズアルデヒド(71℃)、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(71℃)、2,6-ジクロロベンズアルデヒド(71℃)、ジフェニルスルホキシド(71℃)、ステアリン酸(71℃)、2,5-ジメトキシニトロベンゼン(72〜73℃)、1,10-デカンジオール(72〜74℃)、(R)-(-)-3-ヒドロキシテトラデカン酸(72〜75℃)、2-テトラデシルヘキサデカン酸(72〜75℃)、2-メトキシナフタレン(72〜75℃)、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸メチル(72〜76℃)、トリステアリン(73.5℃)、ドトリアコンタン(74〜75℃)、フラバノン(74〜78℃)、2,5-ジフェニルオキサゾール(74℃)、8-キノリノール(74℃)、o-クロロベンジルアルコール(74℃)、オレイン酸アミド(75〜76℃)、(±)-2-ヒドロキシドデカン酸(75〜78℃)、n-ヘキサトリアコンタン(75〜79℃)、イミノジアセトニトリル(75〜79℃)、p-クロロベンジルアルコール(75℃)、フタル酸ジフェニル(75℃)、N-メチルベンズアミド(76〜78℃)、(±)-2-ヒドロキシトリデカン酸(76〜79℃)、1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオン(76〜79℃)、N-メチル-p-トルエンスルホンアミド(76〜79℃)、3'-ニトロアセトフェノン(76〜80℃)、4-フェニルシクロヘキサノン(76〜80℃)、エイコサン酸(76℃)、4-クロロベンゾフェノン(77〜78℃)、(±)-3-ヒドロキシテトラデカン酸(77〜80℃)、2-ヘキサデシルオクタデカン酸(77〜80℃)、酢酸p-ニトロフェニル(77〜80℃)、4'-ニトロアセトフェノン(77〜81℃)、12-ヒドロキシステアリン酸(77℃)、α,α'-ジブロモ-m-キシレン(77℃)、9-メチルアントラセン(78〜81℃)、1,4-シクロヘキサンジオン(78℃)、m-ジエチルアミノフェノール(78℃)、m-ニトロ安息香酸メチル(78℃)、(±)-2-ヒドロキシテトラデカン酸(79〜82℃)、1-(フェニルスルホニル)インドール(79℃)、ジ-p-トリルメタン(79℃)、プロピオンアミド(79℃)、(±)-3-ヒドロキシトリデカン酸(80〜83℃)、グアヤコールグリセリンエーテル(80〜85℃)、オクタノイル-N-メチルグルカミド(80〜90℃)、o-フルオロアセトアニリド(80℃)、アセトアセトアニリド(80℃)、ドコサン酸(81〜82℃)、p-ブロモベンゾフェノン(81℃)、トリフェニルホスフィン(81℃)、ジベンゾフラン(82.8℃)、(±)-2-ヒドロキシペンタデカン酸(82〜85℃)、2-オクタデシルエイコサン酸(82〜85℃)、1,12-ドデカンジオール(82℃)、3,4,5-トリメトキシ安息香酸メチル(83℃)、p-クロロニトロベンゼン(83℃)、(±)-3-ヒドロキシヘキサデカン酸(84〜85℃)、o-ヒドロキシベンジルアルコール(84〜86℃)、1-トリアコンタノール(84〜88℃)、o-アミノベンジルアルコール(84℃)、酢酸4-メトキシベンジル(84℃)、(±)-2-ヒドロキシヘキサデカン酸(85〜88℃)、m-ジメチルアミノフェノール(85℃)、p-ジブロモベンゼン(86〜87℃)、2,5-ジヒドロキシ安息香酸メチル(86〜88℃)、(±)-3-ヒドロキシペンタデカン酸(86〜89℃)、4-ベンジルビフェニル(86℃)、p-フルオロフェニル酢酸(86℃)、1,14-テトラデカンジオール(87〜89℃)、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール(87〜90℃)、p-ペンチル安息香酸(87〜91℃)、酢酸α-(トリクロロメチル)ベンジル(88〜89℃)、4,4'-ジメチルベンゾイン(88℃)、炭酸ジフェニル(88℃)、m-ジニトロベンゼン(89.57℃)、(3R,5R)-(+)-2,6-ジメチル-3,5-ヘプタンジオール(90〜93℃)、(3S,5S)-(-)-2,6-ジメチル-3,5-ヘプタンジオール(90〜93℃)、シクロヘキサノンオキシム(90℃)、p-ブロモヨードベンゼン(91〜92℃)、4,4'-ジメチルベンゾフェノン(92〜95℃)、トリフェニルメタン(92〜95℃)、ステアリン酸アニリド(92〜96℃)、p-ヒドロキシフェニルエタノール(92℃)、モノエチル尿素,(92℃)、アセナフチレン(93.5〜94.5℃)、m-ヒドロキシアセトフェノン(93〜97℃)、キシリトール(93〜97℃)、p-ヨードフェノール(93℃)、p-ニトロ安息香酸メチル(94〜98℃)、p-ニトロベンジルアルコール(94℃)、1,2,4-トリアセトキシベンゼン(95〜100℃)、3-アセチルベンゾニトリル(95〜103℃)、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸エチル(95〜97℃)、16-ヒドロキシヘキサデカン酸(95〜99℃)、D(-)-リボース(95℃)、o-ベンゾイル安息香酸(95℃)、α,α'-ジブロモ-o-キシレン(95℃)、ベンジル(95℃)、ヨードアセトアミド(95℃)、p-ヒドロキシ安息香酸n-プロピル(96〜97℃)、p-ヒドロキシ安息香酸n-プロピル(96〜97℃)、フラボン(96〜97℃)、2-デオキシ-D-リボース(96〜98℃)、没食子酸ラウリル(96〜99℃)、1-ナフトール(96℃)、2,7-ジメチルナフタレン(96℃)、2-クロロフェニル酢酸(96℃)、アセナフテン(96℃)、テレフタル酸ジベンジル(96℃)、フマロニトリル(96℃)、4'-アミノ-2',5'-ジエトキシベンズアニリド(97〜100℃)、フェノキシ酢酸(97〜100℃)、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール(97℃)、D-ソルビトール(97℃)、m-アミノベンジルアルコール(97℃)、アセトアミドマロン酸ジエチル(97℃)、1,10-フェナントロリン一水和物(98〜100℃)、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4'-メチルベンゾフェノン(98〜100℃)、2-ブロモ-4'-クロロアセトフェノン(98℃)、メチル尿素(98℃)、4-フェノキシフタロニトリル(99〜100℃)、o-メトキシ安息香酸(99〜100℃)、p-ブチル安息香酸(99〜100℃)、キサンテン(99〜100℃)、ペンタフルオロ安息香酸(99〜101℃)、フェナントレン(99℃)、p-t-ブチルフェノール(100.4℃)、9-フルオレニルメタノール(100〜101℃)、1,3-ジメチル尿素(100〜102℃)、4-アセトキシインドール(100〜102℃)、1,3-シクロヘキサンジオン(100℃)、ステアリン酸アミド(100℃)、トリ-m-トリルホスフィン(100℃)、4-ビフェニルメタノール(101〜102℃)、1,4-シクロヘキサンジオール (cis-, trans-混合物)(101℃)、α,α'-ジクロロ-p-キシレン(101℃)、2-t-ブチルアントラキノン(102℃)、フマル酸ジメチル(102℃)、3,3-ジメチルグルタル酸(103〜104℃)、2-ヒドロキシ-3-メチル-2-シクロペンテン-1-オン(103℃)、4-クロロ-3-ニトロアニリン(103℃)、N,N-ジフェニルアセトアミド(103℃)、3(2)-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソール(104〜105℃)、4,4'-ジメチルベンジル(104〜105℃)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2',2''-ニトリロトリエタノール(104℃)、m-トリフルオロメチル安息香酸(104℃)、3-ペンタノール(105〜108℃)、2-メチル-1,4-ナフトキノン(105℃)、α,α,α',α'-テトラブロモ-m-キシレン(105℃)、4-クロロフェニル酢酸(106℃)、4,4'-ジフルオロベンゾフェノン(107.5〜108.5℃)、2,4-ジクロロ-1-ナフトール(107〜108℃)、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル(107〜117℃)、2,4-ジメトキシ安息香酸(108〜109℃)、o-トリフルオロメチル安息香酸(108〜109℃)、p-ヒドロキシアセトフェノン(109℃)、ジメチルスルホン(109℃)、2,6-ジメチルナフタレン(110〜111℃)、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-ベンゾキノン(110℃)、トリデカン二酸(110℃)、トリフェニルクロロメタン(110℃)、フルオランテン(110℃)、ラウリンアミド(110℃)、1,4-ベンゾキノン(111℃)、3-ベンジルインドール(111℃)、レゾルシノール(111℃)、1ーブロモブタン(112.3℃)、2,2- ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジオール(112〜114℃)、p-エチル安息香酸(113.5℃)、1,4-ジアセトキシ-2-メチルナフタレン(113℃)、1-エチル-2,3-ピペラジンジオン(113℃)、4-メチル-2-ニトロアニリン(113℃)、L-アスコルビン酸二パルミチン酸エステル(113℃)、o-フェノキシ安息香酸(113℃)、p-ニトロフェノール(113℃)、メチル(ジフェニル)ホスフィン=オキシド(113℃)、酢酸コレステロール(114〜115℃)、2,6-ジメチル安息香酸(114〜116℃)、3-ニトロベンゾニトリル(114℃)、m-ニトロアニリン(114℃)、エチルα-D-グルコシド(114℃)、アセトアニリド(115〜116℃)、(±)-2-フェノキシプロピオン酸(115℃)、4-クロロ-1-ナフトール(116〜117℃)、p-ニトロフェニルアセトニトリル(116〜117℃)、p-ヒドロキシ安息香酸エチル(116℃)、p-イソプロピル安息香酸(117〜118℃)、D(+)-ガラクトース(118〜120℃)、o-ジニトロベンゼン(118℃)、p-ベンジルオキシ安息香酸ベンジル(118℃)、1,3,5-トリブロモベンゼン(119℃)、2,3-ジメトキシ安息香酸(120〜122℃)、4-クロロ-2-メチルフェノキシ酢酸(120℃)、meso-エリトリトール(121.5℃)、9,10-ジメチル-1,2-ベンズアントラセン(122〜123℃)、2-ナフトール(122℃)、N-フェニルグリシン(122℃)、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド(122℃)、p-ヒドロキシベンジルアルコール(124.5〜125.5℃)、2',4'-ジヒドロキシ-3'-プロピルアセトフェノン(124〜127℃)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(124℃)、m-フルオロ安息香酸(124℃)、ジフェニルスルホン(124℃)、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピオン酸(125℃)、3,4,5-トリメトキシけい皮酸(125℃)、o-フルオロ安息香酸(126.5℃)、イソニトロソアセトフェノン(126〜128℃)、5-メチル-1,3-シクロヘキサンジオン(126℃)、4-ベンゾイル酪酸(127℃)、p-ヒドロキシ安息香酸メチル(127℃)、p-ブロモニトロベンゼン(127℃)、3,4-ジヒドロキシフェニル酢酸(128〜130℃)、5α-コレスタン-3-オン(128〜130℃)、6-ブロモ-2-ナフトール(128℃)、イソブチルアミド(128℃)、1-ナフチル酢酸(129℃)、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(129℃)、p-ジヨードベンゼン(129℃)、ドデカン二酸(129℃)、4,4'-ジメトキシベンジル(131〜133℃)、ジメチロール尿素(132.5℃)、o-エトキシベンズアミド(132〜134℃)、セバシン酸(132℃)、p-トルエンスルホンアミド(134℃)、サリチルアニリド(135〜138℃)、β-シトステロール(136〜137℃)、1,2,4,5-テトラクロロベンゼン(136℃)、1,3-ビス(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ベンゼン(137℃)、フタロニトリル(138℃)、4-n-プロピル安息香酸(139℃)、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(140.5℃)、2-ナフチル酢酸(140℃)、テレフタル酸メチル(140℃)、2,2-ジメチルこはく酸(141℃)、2,6-ジクロロベンゾニトリル(142.5〜143.5℃)、o-クロロ安息香酸(142℃)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(143〜144℃)、α,α,α-トリブロモメチルフェニルスルホン(143℃)、D(+)-キシロース(144〜145℃)、フェニル尿素(146℃)、没食子酸n-プロピル(146℃)、4,4'-ジクロロベンゾフェノン(147〜148℃)、2',4'-ジヒドロキシアセトフェノン(147℃)、コレステロール(148.5℃)、2-メチル-1-ペンタノール(148℃)、4,4'-ジクロロジフェニルスルホン(148℃)、ジグリコール酸(148℃)、アジピン酸(149〜150℃)、2-デオキシ-D-グルコース(149℃)、ジフェニル酢酸(149℃)、o-ブロモ安息香酸(150℃)。
【0026】
さらに、本発明で用いる熱溶剤としては下記一般式(I)で表される化合物がさらに好ましい。
一般式(I)
(Y)nZ
一般式(I)において、Yはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、Zはヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基(置換アミノ基を含む)、アミド基(置換アミド基を含む)、スルホンアミド基(置換スルホンアミド基を含む)、リン酸アミド基(置換リン酸アミド基を含む)、シアノ基、イミド基(N-置換イミド基を含む)、ウレイド基(N-置換ウレイド基を含む)、スルホキシド基、スルホン基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、含窒素複素環基から選ばれる1価または多価の基を表す。
一般式(I)において、Yで表されるアルキル基としては、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは、炭素原子数が1〜40、より好ましくは1〜30、特に好ましくは1〜25のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、t-オクチル基、n-アミル基、t-アミル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基、テトラコシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。)が挙げられる。また、アルケニル基は、好ましくは、炭素原子数が2〜40、より好ましくは2〜30、特に好ましくは2〜25のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2-ブテニル基、3-ペンテニル基等が挙げられ、アリール基は、好ましくは炭素原子数が6〜40、より好ましくは6〜30、特に好ましくは6〜25のアリール基であり、例えば、フェニル基、p-メチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、複素環基は、好ましくは、炭素原子数が2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12の複素環基であり、例えば、ピリジル基、ピラジル基、イミダゾイル基、ピロリジル基等が挙げられる。これらの基はさらに他の置換基を有していてもよい。また、これらの基は互いに結合して、環を形成していてもよい。
【0027】
Yがさらに有していてもよい他の置換基の例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(直鎖、分岐、環状のアルキル基で、ビシクロアルキル基、活性メチン基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、チオカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基またはその塩、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、カルボンイミドイル基(Carbonimidoyl基)、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキル)スルホニルウレイド基、N−(アリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えば、ピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、イソシアノ基、イミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、ヘテロ環ジチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルホニルスルファモイル基またはその塩、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等が挙げられる。なお、ここで活性メチン基とは2つの電子求引性基で置換されたメチン基を意味する。ここで電子求引性基とは、アシル基、アルコシキカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、カルボンイミドイル基等をいう。2つの電子求引性基は互いに結合して環状構造をとっていてもよい。また、塩とは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、重金属等の陽イオン塩や、アンモニウム塩、ホスホニウム塩等の有機の陽イオン塩をいう。
これらの置換基は、これらの置換基でさらに置換されていてもよい。また、Yは置換基としてZで表される基をさらに有していてもよい。
【0028】
nは、Zが1価の基である場合には1を表し、Zが2価以上の基である場合、すなわち、Zがイミド基、ウレイド基、スルホキシド基、スルホン基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、2価以上の含窒素複素環基の場合には、nはZの価数と同一の数を表す。nが2以上の場合、複数のYは同一であっても異なっていてもよい。
本発明において、熱溶剤の添加量は0.1〜5.0g/m2であることが好ましく、より好ましくは0.2〜2.5g/m2であり、さらに好ましくは0.3〜1.5g/m2である。画像形成層を有する面の銀1モルに対しては5〜200%モル含まれることが好ましく、より好ましくは10〜150モル%であり、20〜120モル%の範囲で含まれることがさらに好ましい。熱溶剤は画像形成層に含有させることが好ましい。
【0029】
本発明において、熱溶剤は溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態などで、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
よく知られている乳化分散法としては、よく知られているように、熱溶剤をジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイルに直接、あるいは、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解して添加し、機械的に乳化分散させる方法が挙げられる。
【0030】
また、固体微粒子分散法としては、熱溶剤の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散する方法が挙げられる。
なお、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えば、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。分散に用いるミル類では分散媒体としてジルコニア等のビーズが使われるのが普通であり、これらのビーズから溶出するZr等が分散物中に混入することがある。分散条件にもよるが溶出は、通常は1ppm〜1000ppmの範囲である。
これらの分散法で分散した熱溶剤を用いる場合、感材中にZrが含まれることになるが、感材中のZrの含有量が銀1g当たり0.5mg以下であれば実用上差し支えない。水分散物には防腐剤(例えば、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることが好ましい。また、本発明において熱溶剤は固体分散物として使用することが好ましい。
【0031】
次に、本発明の防湿層について説明する。
本発明の熱現像写真感光材料の感光層側の最外層にはラテックスとワックスエマルジョンで構成された防湿層が設けられるが、該防湿層におけるラテックスとワックスエマルジョンの比率は、固形分重量比率で100:2〜100:100が好ましい。更に好ましくは100:10〜100:50である。ワックスエマルジョンがラテックス100に対して2未満であると、防湿効果が発揮されず、写真性能の湿度耐性が劣化するするので好ましくなく、また、ワックスエマルジョンがラテックス100に対して100を超えると、防湿層としての膜が弱くなり、耐傷性が劣化するので好ましくない。
本発明の防湿層の透湿度は、1〜40g/m2・24hrであることが好ましい。更に好ましくは1〜20g/m2・24hrである。1g/m2・24hrより低いと、ワックス率を高くする必要があり、防湿層としての膜が弱くなり、耐傷性が劣化する。また、40g/m2・24hrを超えると、防湿の効果が発揮されず、写真性能の湿度耐性が劣化するので好ましくない。
透湿度は、JIS Z−208(カップ法)に準じて測定できる。
【0032】
本発明の熱現像写真感光材料の防湿層に用いられるラテックスの種類は特に限定されるものではないが、耐傷性、造膜性に起因する防湿性の点で、合成樹脂系または合成ゴム系のラテツクスが好ましい。
本発明においてラテックスとは、水不溶な疎水性ポリマーが微細な粒子として水または水溶性の分散媒中に分散したポリマー成分を指す。分散の状態としては、ポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合により分散したもの、ミセル分散したもの、ポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち分子鎖自身が分子状分散したものなどいずれでもよい。なお、ラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などに記載されており、本発明においては、該文献に記載の技術を用いることができる。
ラテックスを構成する重合体のTgは、−20〜60℃であることが好ましい。更に好ましくは0〜50℃である。−20℃より低いと、膜に流動性が発生し、耐熱性が劣化する。また60℃を超えると、造膜性が劣化し、防湿の効果が発揮されず、写真性能の湿度耐性が劣化する。なお、ラテックスのTg(ガラス転移温度)は、1956年発行のBull.Am.Phys.Soc.に記載のT.G.Foxの方法によって、計算で求められる。複数のラテックスを混合して使用する場合には、構成するラテックスの重量比及びTgの積を加算することで算出することができる。
ラテックスの分散粒子の平均粒径は1〜50,000nm、より好ましくは5〜1000nm程度の範囲である。分散粒子の粒径分布に関しては広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。
ラテックスは、通常の均一構造のラテックスであってもよいし、また、いわゆるコア/シェル型のラテックスでもよい。この場合、コアとシェルはガラス転移温度や組成を変えると好ましい場合がある。また、ラテックスは2種以上のものを併用する方が造膜性、防湿性、ブロッキング性を両立するためには好ましい。この場合、コアシェル型と同様、ガラス転移温度や組成を変えることが好ましい。
本発明で用いるラテックスは、下記のエチレン性不飽和単量体を初めとする単量体を乳化重合することによって得ることができる。この際使用する乳化剤としては、一般に市販されている陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤などを使用することができる。これらのうち、防湿性をより高めるためには反応性乳化剤を用いることが好ましい。この反応性乳化剤を用いることによりソープフリー型のエマルジョンが得られる。反応性乳化剤としては、例えば、スチレンスルホン酸ソーダ、ビニルスルホン酸ソーダ、ビニルスルホン酸ソーダ、各種エチレン性不飽和基を有する乳化剤などを挙げることができる。
【0033】
(合成樹脂ラテックス)
合成樹脂ラテックスは、以下に示すエチレン性不飽和単量体をそれぞれ単独で重合または複数組み合わせて共重合することにより製造することができる。
エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタルクル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタルリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、メタアクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、メタクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル等で例示されるアクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステル;1,2−ブタジェン、1,3−ブタジェン、イソプレン、クロロプレン等の脂肪族共役ジエン単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン、2,4―ジブロモスチレン等で示されるエチレン性不飽和芳香族単量体;アクリロニトリル、メタクロニトリル等の不飽和ニトリル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸およびその無水物、フマル酸、イタコン酸;マレイン酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノノルマルブチル等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の如きビニルエステル;塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等の如きビニリデンハライド;アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキルエチル等の如きエチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等の如きエチレン性不飽和カルボン酸のグリシジルエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、Nーメチロールアクリルアミド、N−メチロ−ルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の如きエチレン性不飽和カルボン酸のアミド等のラジカル重合可能な単量体が挙げられる。
ラテックスの造膜性は、ホモポリマーのTgが0℃以上のアクリル酸メチルやメタクリル酸メチル等のモノマーを用いてポリマーのTgを上昇させた方が優れており、耐水性を良好にするにはスチレン等を含有することが好ましい。
【0034】
(合成ゴムラテックス)
合成ゴムラテックスとしては、例えば、スチレン−ブタジエンラテックス(SBR)、メチルメタクリレート−ブタジエンラテックス(MBR)、アクリロニトリル−ブタジエンラテックス(NBR)、ビニルピリジン−ブタジエンラテックス、イソプレンラテックス(IR)等が挙げられるが、耐水性が良好で、伸びがよく、折り割れによる塗工層の亀裂が生じにくいスチレン−ジエン系ラテックスが好ましい。
合成ゴムラテックスに用いる共役ジエン系単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン等従来、合成ゴムラテックスの製造に通常用いられているものを挙げることができる。これらの共役ジエン系単量体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。本発明においては、特に1,3−ブタジエンが好ましく用いられる。
このような共役ジエン系単量体は、得られる共重合体に適当な弾性及び膜の硬さを付与するために用いられる。
スチレン−ジエン系ラテックスである場合、共役ジエン系単量体の使用量は、10〜80重量%が好ましく、さらに好ましくは30〜60重量%の範囲である。10%より低いと造膜性が劣化し、防湿の効果が発揮されず、写真性能の湿度耐性が劣化する。また、80%を超えると膜に流動性が発生し、耐傷性が劣化する。
また、スチレン−ジエン系ラテックスには、上記合成樹脂系の単量体を適度に含有し、造膜性等を調整することが好ましい。
【0035】
本発明の熱現像写真感光材料のバリヤー層に用いられるワックスエマルジョンはワックスを乳化したものである。本発明においてワックスエマルジョンとは、ワックスが微細な粒子として水または水溶性の分散媒中に分散したワックス成分を指す。
ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、モンタンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム、フィッシャー・トリブッシュワックス、ポリエチレンワックス、モンタンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体、硬化ひまし油、流動パラフィン、ステアリン酸アミド等が挙げられ、特に、パラフィンワックスが好ましく用いられる。また、これらワックスエマルジョンを調製する方法は公知の方法でよく、例えば、ワックス、樹脂及び流動化剤などを混合し、加熱するなどして溶融し、これに乳化剤を加えて乳化する方法が用いられる。
ここで樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル化合物、石油樹脂等が用いられ、流動化剤としては、例えば、多価アルコール、多価アルコールのエステル化物などを用いることができる。
これらワックス、樹脂及び流動化剤の混合物を溶融した後、例えば、アニオン、カチオン、ノニオンなどの界面活性剤、或いは、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基性化合物、有機アミン、スチレン−マレイン酸共重合体などを添加して乳化することによりワックスエマルジョンとすることができる。
ワックスエマルジョンは単独で使用しても、2種類以上を組合せて使用してもよい。
ワックスの示差走査熱量計(DSC)による融点は、好ましくは40〜100℃であり、より好ましくは50〜80℃である。融点が40℃未満であるとブロッキング性が劣化し好ましくない。また、100℃より高いとバリヤー層を設ける際、塗膜の乾燥時にワックスが十分に軟化、流動しないため、防湿性を損ない結果として湿度耐性が劣化する。
本発明の防湿層には架橋剤を用いてもよい。架橋剤を上記ラテックスとワックスエマルジョンと併用することで、防湿性が向上し湿度耐性が良化する。本発明で用いられる架橋剤は、従来写真感光材料用として使用されている種々の架橋剤、例えば、特開昭50−96216号公報に記載されているアルデヒド系、エポキシ系、エチレンイミン系、ビニルスルホン系、スルホン酸エステル系、アクリロイル系、カルボジイミド系架橋剤を用いうるが、本発明において好ましいのは、エポキシ化合物、またはシラン化合物である。
【0036】
本発明の熱現像写真感光材料の防湿層にはマット剤を用いてもよい。
マット剤を上記ラテックスとワックスエマルジョンと併用することで、耐ブロッキング性が向上する。
マット剤としては写真工業において通常用いられている微粒子マット剤を用いることができ、水に不溶性の有機または無機化合物の微粒子を用いることができる。これら微粒子としては任意のものを使用でき、例えば、米国特許第1,939,213号明細書、同第2,701,245号明細書、同第2,322,037号明細書、同第3,262,6782号明細書、同第3,539,344号明細書、同第3,767,448号明細書等に記載の有機マット剤、米国特許第1,260,772号明細書、同第2,192,241号明細書、同第3、257、206号明細書、同第3、370、951号明細書、同第3,523,022号明細書、同第3,769,020号明細書等に記載の無機マット剤など当業界でよく知られたものを用いることができる。具体的には、有機の微粒子の例としては、水分散性ビニル重合体、例えば、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−α−メチルスチレン共重合体、ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリビニルアセテート、ポリエチレンカーボネート、ポリテトラフルオロエチレンなどの水分散性重合体、セルロース誘導体の微粒子、例えば、メチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどの微粒子、澱粉誘導体の微粒子、例えば、カルボキシ澱粉、カルボキシニトロフェニル澱粉、尿素−ホルムアルデヒド−澱粉反応物などの微粒子が挙げられる。また、公知の硬化剤で硬化したゼラチンの微粒子及びコアセルベート硬化して微小カプセル中空粒体とした硬化ゼラチンなどを好ましく用いることができる。無機の微粒子の例としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、二酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、公知の方法で減感した塩化銀、同じく臭化銀、ガラス、珪藻土などを好ましく用いることができる。
マット剤は必要に応じて異なる種類のマット剤を混合して用いることができる。マット剤の大きさ、形状には特に限定はなく、任意の粒径のものを用いることができる。本発明の実施に際しては0.1μm〜30μmの粒径のものを用いるのが好ましい。また、マット剤の粒径分布は狭くても広くてもよい。一方、マット剤は感光材料のヘイズ、表面光沢に大きく影響することから、マット剤作製時にあるいは複数のマット剤の混合により、粒径、形状および粒径分布を必要に応じた状態にすることが好ましい。
【0037】
本発明の熱現像写真感光材料には感光層、防湿層以外に、バッキング層、バリヤー層など、熱現像写真感光材料において通常設けられる非感光性層を設けてもよい。
本発明の感光層と、感光層側の最外層(防湿層)以外の非感光性層は水系以外の塗布液を用いて塗布形成することが好ましい。水系塗布液を用いて塗布形成すると防湿性が劣化し好ましくない。
塗布液の形成及び塗布の方法としては一般的なものを使用することができる。
本発明の熱現像写真感光材料の感光層、非感光性層等の形成に用いられるバインダーは親水性バインダー(水に溶解するバインダー若しくはラテックス類)または疎水性バインダー(有機溶剤に溶解するバインダー)の何れでもよいが、各層のバインダーが互いに同一の溶剤系に溶解するバインダーであるのが好ましい。例えば、感光性層、中間層、保護層等各層のバインダーが何れも疎水性バインダーであるか、親水性バインダーであるのが好ましい。
【0038】
各層に用いられるバインダーは透明または半透明のものが用いられ、また、一般には無色のものが用いられ、天然ポリマーや合成モノポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体となるものが用いられる。用いられるバインダーの具体例としては、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、デンプン等の水溶性バインダー、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)、ポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)等の疎水性バインダーが挙げられる。この中で好ましいものは、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等の疎水性バインダーであり、特に、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル等の疎水性バインダー、それらのバインダー樹脂のモノマーを乳化重合法または懸濁重合法等を用いて水中で重合して得られるラテックス等が挙げられる。
【0039】
疎水性バインダーを溶解するための主溶媒としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブ等が好ましく用いられる。
感光層を形成するために用いるバインダーのTgは40℃以上であるこが好ましい。更に好ましくは40〜120℃であり、更に40〜100℃が好ましい。特に好ましくは40〜80℃である。40℃未満であると、現像性が高くなり、高湿下での感度上昇(文字線巾の増大)が大きく好ましくない。また、120℃より高いと、熱現像温度とほぼ同じくらいの温度になることから、熱伝達が遅れ、現像性が低くなり、好ましくない。
感光層に到達する光の量や波長分布を制御するために感光層と同じ側にフィルター染料層を、また、感光層の反対側にアンチハレーション染料層等の補助層を形成してもよい。また、感光層に染料または顔料を含ませてもよい。これらの補助層はバインダーの他にマット剤やポリシロキサン化合物、ワックス、流動パラフィンのような滑り剤を含有してもよい。
本発明の熱現像写真感光材料の各層の形成には、塗布助剤として各種の界面活性剤を用いることができ、中でもフッ素系界面活性剤が、帯電特性を改良したり、斑点状の塗布故障を防ぐために好ましく用いられる。
本発明の熱現像写真感光材料において、感光層は複数層であってもよく、階調の調節のために、高感度層/低感度層または低感度層/高感度層というように複数層にすることができる。
また、本発明の熱現像写真感光材料に用いられる好適な染料や顔料の例は、RD第17029号に開示されている。
本発明の熱現像写真感光材料にはカブリ防止剤を用いることができ、カブリ防止剤は
感光性層、中間層、保護層またはその他の形成層の何れに添加してもよい。
本発明の熱現像写真感光材料には、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、被覆助剤等を用いてもよい。これらの添加剤及び上述したその他の添加剤はRD第17029号(1978年6月p.9〜15)に記載されている化合物を好ましく用いることができる。
【0040】
本発明の熱現像写真感光材料の支持体としては寸法安定性の点から低熱収縮性支持体を用いることが好ましい。
本発明に用いる好ましい低熱収縮性支持体は、熱現像時の加熱による熱現像写真感光材料の寸法変化を抑えるためには、熱現像の温度に相当する120℃、60秒での寸法変化率の絶対値がMD(長手)、TD(巾手)方向ともに0.001〜0.06%の範囲、好ましくは0.001〜0.04%の範囲、特に好ましくは0.001〜0.02%の範囲のものが選択される。
寸法変化率は、支持体を、23℃、55%RH条件下に置き、支持体のMD、TD方向にある一定の長さの印を付けてから、120℃に60秒間加熱した後、再び23℃、55%RHの条件下で3時間調湿し、各方向の長さを測定して、その長さの変化で寸法変化率を評価する。
寸法変化率は加熱前の寸法から加熱後の寸法を引いた値を加熱前の寸法で除した値を百分率で表したものであり、寸法変化率を正の値または負の値として表す。
支持体の基材となるフィルムは熱可塑性樹脂製が好ましく、力学強度、熱寸法安定性、透明性から特に好ましい熱可塑性樹脂はポリエステル樹脂である。さらに好ましいのが芳香族ポリエステル樹脂であり、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等を挙げることができる。これらのフィルムの厚みは50μm以上500μm以下が好ましく、75μm以上300μm以下がさらに好ましく、90μm以上200μm以下がさらに好ましい。
熱処理の条件を適当に選択することにより、支持体の寸法変化率を前述の寸法変化率にすることができる。
支持体の寸法変化率を前述の寸法変化率にするためには、熱処理は、熱収縮の進行を妨げずに、その後の熱処理(熱現像)時の寸法変化を小さくする上で、出来るだけ搬送張力を低くし、熱処理時間を長くすることが望ましい。支持体がポリエステルフィルムである場合、処理温度はポリエステルの(Tg+50)℃〜(Tg+150)℃の温度範囲が好ましく、搬送張力は9.8kPa〜2MPa、より好ましくは9.8kPa〜980kPa、更に好ましくは9.8kPa〜490kPaであり、処理時間は30〜10分が好ましく、より好ましくは30〜5分である。上記の温度範囲、搬送張力範囲及び処理時間にすることにより、熱処理時に支持体の熱収縮の部分的な差により、支持体の平面性が劣化することもなく、搬送ロールとの摩擦等により細かいキズ等の発生も押さえることができる。
また、熱処理の前の熱固定後に縦弛緩処理及び/または横弛緩処理を行っておくのも好ましい態様である。熱処理は所望の寸法変化率を得るために、少なくとも1回は必要であり、必要に応じて2回以上実施することも可能である。さらに熱処理したポリエステルフィルムをTg付近の温度から常温まで冷却してから巻き取り、この時の冷却による平面性の劣化を防ぐために、Tgを跨いで常温まで下げるまでに、少なくとも−5℃/秒以上の速度で冷却するのが好ましい。
【0041】
熱処理時間は、フィルムの搬送速度を変えたり、熱処理ゾーンの長さを変えたりすることでコントロールできる。熱処理時間が短すぎると熱寸法安定性が低下してしまう。また60分以上であると支持体の平面性や透明性の劣化がみられ、熱現像写真感光材料用の支持体としては不適となるので好ましくない。熱処理においての張力の調整は、巻き取りロール及び/または送り出しロールのトルクを調整することによりできる。
支持体に、下引層を設ける場合、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロースエステル樹脂、スチレン樹脂、ゼラチン等を用いることが好ましい。また、必要に応じて、トリアジン系、エポキシ系、メラミン系、ブロックイソシアネートを含むイソシアネート系、アジリジン系、オキサザリン系等の架橋剤、コロイダルシリカ等の無機粒子、界面活性剤、増粘剤、染料、防腐剤などを添加してもよい。
また、酸化珪素薄膜を設けた側と反対の側には帯電防止層を設けることが好ましい。帯電防止層は、帯電防止剤とバインダーから構成されている。
帯電防止剤としては、金属酸化物を用いることが好ましい。金属酸化物としては、例えば、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V25等、あるいはこれらの複合酸化物が好ましく、特に、バインダーとの混和性、導電性、透明性等の点から、SnO2(酸化スズ)が好ましい。金属酸化物には異元素添加することができ、SnO2に対してはSb、Nb、ハロゲン元素等を添加することができる。これらの異元素の添加量は0.01〜25mol%の範囲が好ましいが、0.1〜15mol%の範囲が特に好ましい。酸化スズは、非晶性ゾルまたは結晶性粒子の形態が好ましい。水系塗布を行う場合には非晶性ゾルを用いることが好ましく、溶剤系塗布を行う場合には、結晶性粒子の形態のものを用いることが好ましい。特に、環境上、作業の取り扱い性の点からすると非晶性ゾルを用いた水系塗布の形態が好ましい。
【0042】
非晶性SnO2ゾルの製造方法は、SnO2微粒子を適当な溶媒に分散して製造する方法、溶媒に可溶なSn化合物を溶媒中で分解して製造する方法等いずれの方法でもよい。結晶性粒子については、特開昭56−143430号公報、同60−258541号公報に詳細に記載されている。
また、導電性金属酸化物微粒子の作製法としては、第一、金属酸化物微粒子を焼成により作製し、導電性を向上させるために異種原子の存在下で熱処理する方法、第二、焼成により金属酸化物微粒子を作製する時に異種原子を共存させる方法、第三、焼成時に酸素濃度を下げて酸素欠陥を導入する方法等を単独でまたは組み合わせた作製法が用いられる。
導電性金属酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径は、0.001〜0.5μm、特に0.001〜0.2μmが好ましい。導電性金属酸化物微粒子の固型分付量は1m2当たり0.05〜2g、特に0.1〜1gが好ましい。また本発明における帯電防止層における金属酸化物の体積分率は、8〜40vol%、好ましくは10〜35vol%がよい。上記範囲は金属酸化物微粒子の色、形態、組成等により変化するが、透明性及び導電性の点から、上記範囲が最も好ましい。
帯電防止層を形成するのにバインダーを用いることができるが、バインダーとしては、上記下引層と同じ樹脂を用いることが好ましい、特に、金属酸化物の分散性や導電性の点から、ポリエステル、アクリル変性ポリエステル、アクリル樹脂、セルロースエステルが好ましい。
帯電防止層の膜厚は、透明性や塗布ムラ(干渉ムラ)の点から、0.30〜0.70μmが好ましい。より好ましくは0.35〜0.55μmである。0.30μm未満であると所望の高温の導電性の確保及びバッキング層を設けたとき接着性が劣化することでスリキズ性が劣化し好ましくない。また0.70μmを超えると干渉ムラが強く、商品価値が劣化するとともに、透明性が劣化し実用に耐えない。
下引層、帯電防止層の塗布形成方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えば、キスコート法、リバースコート法、ダイコート法、リバースキスコート法、オフセットグラビアコート法、マイヤーバーコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法などを単独でまたは組み合わせて適用するとよい。
【発明の効果】
【0043】
本発明の熱現像写真感光材料は、種々の環境条件下での写真性能の変動が少なく、長期保存安定性も良好で、印刷用熱現像感材として優れている。
また、本発明の熱現像写真感光材料は、湿度耐性、保存性が良好で現像処理ラチチュードに優れている。
【実施例】
【0044】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、以下の実施例に記載されている評価方法は以下の通りである。
[透湿度]
透湿度の測定方法は、防湿層を塗布したPETフィルムを塗工面外側にして、JIS Z−208(カップ法)に準じて測定した。
[写真性能の耐湿性]
(露光)
熱現像写真感光材料試料に対して、ビーム径(ビーム強度の1/2のFWHM)12.56μm、レーザー出力50mW、出力波長783nmの半導体レーザーを搭載した単チャンネル円筒内面方式のレーザー露光装置を使用して、ミラー回転数60000rpm、露光時間1.2×10-8秒の条件下で露光した。このときのオーバーラップ係数を0.449にし、熱現像写真感光材料試料面上のレーザーエネルギー密度を75μJ/cm2とした。なお、露光は23℃、50%RHに調湿した部屋で行った。
【0045】
(熱現像処理)
Imation社製フィルムプロセッサーmodel 2771を用い、120℃、48秒の設定で熱現像処理した。
(写真性能の評価)
23℃、80%RHの環境下で12時間調湿した熱現像写真感光材料試料(試料A)と23℃、10%RHの環境下で12時間調湿した熱現像写真感光材料試料(試料B)に、上記露光条件で50μmの線幅露光を行ない、上記の調湿環境下、上記の条件で熱現像処理を行なった。
熱現像処理後の試料Aの線幅(線幅A)と試料Bの線幅(線幅B)を測定し、線幅Bに対する線幅Aの増加率を求めた。線幅の増加率で感度上昇を評価することができる。低湿度下での保存と高湿度下での保存とで感度の変動がないことが好ましい。
また、熱現像処理後の試料BのDmax(最高濃度)を測定した。濃度測定はマクベスTD904濃度計で行なった。
【0046】
(保存安定性の評価)
試料を入れた、25℃で相対湿度55%の環境に保たれた密閉容器を2つ用意し、一方の密閉容器を50℃の条件下で7日間保存し、他方の密閉容器を25℃の条件下で7日間保存した。50℃の条件下で7日間保存した試料を強制劣化処理試料とし、25℃の条件下で7日間保存した試料を比較用試料とした。次いで、各々の試料を前述の条件で露光及び熱現像処理を行い、最低濃度(Dmin)を測定した。比較用試料に対する強制劣化処理試料のDminの上昇値をもって保存安定性の尺度とした。
【0047】
[熱現像写真感光材料用支持体の作製]
(PET樹脂の作成)
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール65質量部にエステル交換触媒として酢酸マグネシウム水和物0.05質量部を添加し、常法に従ってエステル交換を行った。得られた生成物に、三酸化アンチモン0.05質量部、リン酸トリメチルエステル0.03質量部を添加した。次いで、徐々に昇温、減圧にし、280℃、0.5mmHgで重合を行い、固有粘度0.70(dl/g)のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を得た。
【0048】
(下塗り層付二軸延伸PETフィルムの作成)
PET樹脂をペレット化したものを150℃で8時間真空乾燥した後、285℃でTダイから層状に溶融押し出しし、30℃の冷却ドラム上で静電印加しながら密着させ、冷却固化させ、未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムをロール式縦延伸機を用いて、80℃で縦方向に3.3倍延伸した。得られた一軸延伸フィルムに下記下引き塗布液A(固形分4質量%)をキスコート法にて片面にWET膜厚2g/m2になるように塗布した。引き続き、テンター式横延伸機を用いて、第一延伸ゾーン(90℃)で総横延伸倍率(3.3倍)の50%を延伸し、さらに第二延伸ゾーン(100℃)で総横延伸倍率(3.3倍)になるように延伸した。次いで、70℃で2秒間前熱処理し、さらに第一固定ゾーン(150℃)で5秒間熱固定し、第二固定ゾーン(220℃)で15秒間熱固定した。次いで160℃で横(幅手)方向に5%弛緩処理し、テンターを出た後に、駆動ロールの周速差を利用して、140℃で縦(長手)方向に弛緩処理を行い、室温まで60秒かけて冷却し、フィルムをクリップから解放、スリットし、それぞれ巻き取り、厚さ125μmの二軸延伸PETフィルムを得た。この二軸延伸PETフィルムのTgは79℃であった。
【0049】
〈下引き塗布液A〉
アクリル共重合体 40質量部
化合物(G) 50質量部
ポリグリセリン 10質量部
塗布液中の全固形分が4%となるように純水にて仕上げた。
【0050】
アクリル共重合体:メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル/アクリル酸/メタクリル酸ヒドロキシエチル/アクリルアミド=30/47.5/10/2.5/10、質量平均分子量50万
【0051】
【化9】

(支持体の熱処理)
懸垂式熱弛緩装置を用いて、温度:180℃、搬送張力:230kPa、時間:15secの条件で弛緩熱処理し、さらに室温まで10℃/minで冷却してから巻き取った。
【0052】
(帯電防止層)
熱処理した支持体のバック層を設ける側に、下記下引き塗布液Bを乾燥膜厚0.35μmになるようにワイヤーバーで塗布し、80℃2分で乾燥し、帯電防止層付き支持体を作製した。
【0053】
〈下引き塗布液B〉
酸化スズゾル(特公昭35−6616号公報の実施例1に記載の方法で合成したSnO2ゾルを固形分濃度が8.3質量%になるように加熱濃縮した後、アンモニア水でpH=10に調整したもの) 500g
アクリル変性ポリエステル樹脂(特開2002−156730号記載のB−1:固形分:17.8質量%) 200g
水 300g
【0054】
[熱現像写真感光材料の作成]
《バック層面側の形成》
前記作製した帯電防止付き支持体上に、以下の組成のバック層塗布液とバック保護層塗布液のそれぞれを絶対濾過精度20μmのフィルターを用いて濾過した後、押し出しコーターを用いて合計ウェット膜厚が60μmになるよう、毎分50mの速度で同時重層塗布し、70℃で4分間乾燥を行いバック層とバック保護層を形成した。
【0055】
〈バック層塗布液〉
メチルエチルケトン 16.4g/m2
染料B 17mg/m2
安定化剤B−1(住友化学社スミライザーBPA) 20mg/m2
安定化剤B−2(吉富製薬トミソーブ77) 50mg/m2
セルロースアセテートプロピレート(Eastman Chemical社 CAP504−0.2) 0.5g/m2
セルロースアセテートプロピレート(Eastman Chemical社 CAP482−20) 1.5g/m2
フッ素系界面活性剤:C917O(CH2CH2O)22917 20mg/m2
フッ素系界面活性剤:C817SO3Li 100mg/m2
〈バック保護層塗布液〉
メチルエチルケトン 22g/m2
フッ素系界面活性剤:C917O(CH2CH2O)22917 22mg/m2
フッ素系界面活性剤:C817SO3Li 10mg/m2
セルロースアセテートプロピネート(Eastman Chemical社 CAP482) 2.0g/m2
シリカ(富士デビソン社サイロイド74;平均粒径7μm) 12mg/m2
【0056】
【化10】

【0057】
《感光層の形成》
(ハロゲン化銀粒子の調製)
純水900ml中にゼラチン7.5g及び臭化カリウム10mgを溶解して温度35℃、pHを3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370mlと(96/4)のモル比の臭化カリウムと沃化カリウムと(NH42RhCl5(H2O)を5×10-6モル/リットルを含む水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で10分間かけて添加した。その後、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン0.3gを添加し、1M/LのNaOH水溶液でpHを5に調整して平均粒子サイズ0.06μm、投影直径面積の変動係数8%、(100)面比率86%の立方体沃臭化銀からなるハロゲン化銀粒子を得た。この乳剤にゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させ脱塩処理後フェノキシエタノール0.1gを加え、pH5.9、pAg7.5に調整した。
【0058】
(有機脂肪酸銀乳剤の調製)
水300ml中にベヘン酸10.6gを入れ90℃に加熱して溶解し、十分攪拌した状態で1M/Lの水酸化ナトリウム31.1mlを添加し、そのままの状態で1時間放置した。その後30℃に冷却し、1M/Lのリン酸7.0mlを添加して十分攪拌した状態でN−ブロモこはく酸イミド0.01gを添加した。その後、上記によりあらかじめ調製したハロゲン化銀粒子をベヘン酸に対して銀量として10モル%となるように40℃に加温した状態で攪拌しながら添加した。さらに1M/L硝酸銀水溶液25mlを2分間かけて連続添加し、そのまま攪拌した状態で1時間放置した。
【0059】
この乳剤に酢酸エチルに溶解したポリビニルブチラールを添加して十分攪拌した後に静置し、ベヘン酸銀粒子とハロゲン化銀粒子を含有する酢酸エチル相と水相に分離した。水相を除去した後、遠心分離にてベヘン酸銀粒子とハロゲン化銀粒子を採取した。その後、東ソー(株)社製合成ゼオライトA−3(球状)20gとイソプロピルアルコール22mlを添加し1時間放置した後濾過した。更に、表1に示すバインダー3.4gとイソプロピルアルコール23mlを添加し35℃にて高速で十分攪拌して分散し有機脂肪酸銀乳剤を調製した。
【0060】
次いで、支持体のバック層面の反対側に下記Em組成の感光層塗布液を塗設して感光層を形成した。
(感光層Em組成)
有機脂肪酸銀乳剤 1.4g(銀で)/m2
ピリジニウムヒドロブロミドペルブロミド 1.5×10-4mol/m2
臭化カルシウム 1.8×10-4mol/m2
2−(4−クロロベンゾイル)安息香酸 1.5×10-3mol/m2
赤外増感色素A 4.2×10-6mol/m2
2−メルカプトベンズイミダゾール 3.2×10-3mol/m2
2−トリブロモメチルスルホニルキノリン 6.0×10-4mol/m2
4−メチルフタル酸 1.6×10-3mol/m2
テトラクロロフタル酸 7.9×10-4mol/m2
1、1−ビス(2−ヒドロキシ−3、5−ジメチルフェニル)−3、5、5−トリメチルヘキサン 4.8×10-3mol/m2
染料A 3×10-5mol/m2
一般式(1)で表される化合物(造核剤)(表1に記載の種類) 表1に記載の量
熱溶剤(表1に記載の種類) 1.5mmol/m2
溶媒には、メチルエチルケトン、アセトン、メタノールを適宜用いた。
【0061】
【化11】

【0062】
《表面保護層の形成》
次いで、下記組成の表面保護層塗布液を塗設して表面保護層を形成した。
【0063】
(表面保護層組成)
セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社 CAP381−20)/セルロースアセテートプロピネート(EastmanChemical社 CAP504−05)=2/8 4g/m2
フタラジン 3.2×10-3mol/m2
シリカ(富士デビソン社サイロイド74;平均粒径7μm) 100mg/m2
溶媒には、メチルエチルケトン、アセトン、メタノールを適宜用いた。
【0064】
《防湿層の形成》
下記組成の防湿層塗布液を作製し、絶対濾過精度20μmのフィルターを用いて濾過した後、ワイヤーバー塗布で前記作製した熱現像感光層の表面保護層側に、ウェット膜厚が15μm、ドライ膜厚3μmになるよう、毎分30mの速度で塗布し、70℃で4分間乾燥を行った。
(防湿層組成)
ラテックスA(30%) 29g
ラテックスB(30%) 29g
ワックスA(45%) 2.4g
F素活性剤(1%水/メタノール:1/1) 18g
シリカ1分散液(1%) 7g
シリカ2分散液(1%) 13g
純水で100gに仕上げる。
ラテックスA:スチレン/ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート(20:40:40)(Tg=20℃)
ラテックスB:スチレン/ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート(40:20:40)(Tg=45℃)
ワックスA:日本精蝋(株)EMUSTAR−0185(融点:80℃)パラフィン
F素活性剤:ネオス(株)フタージェント100
シリカ1:シリカ(富士デビソン社サイロイド266;平均粒径3μm)
シリカ2:シリカ(富士デビソン社サイロイド74;平均粒径7μm)
得られた熱現像写真感光材料試料について評価した。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
表1から、本発明の熱現像写真感光材料は、写真性能(濃度、感度)の湿度耐性、生保存性が良好なことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、有機銀塩粒子、ハロゲン化銀粒子、還元剤を含有する感光層を有する熱現像写真感光材料において、感光層あるいは感光層に隣接して設けられた層に下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも2種と融点が50℃以上200℃以下の熱溶剤を含有させ、かつ感光層側の最外層にラテックスとワックスエマルジョンで構成された防湿層を有することを特徴とする熱現像写真感光材料。
【化1】

〔式中、R11、R12、R13は各々水素原子または一価の置換基を表し、X11は電子供与性のヘテロ環基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルキルチオ基、シクロアルキルアミノ基またはシクロアルケニル基を表す。〕
【請求項2】
一般式(1)で表される化合物が、いずれも、R11で表される置換基がシアノ基、R12またはR13で表される置換基が水酸基である化合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱現像写真感光材料。
【請求項3】
一般式(1)で表される化合物の少なくとも1種が、X11で表される電子吸引性基がヘテロ環基である化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱現像写真感光材料。
【請求項4】
ワックスエマルジョンがパラフィン系のワックスエマルジョンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱現像写真感光材料。
【請求項5】
感光層と、感光層側の最外層以外の非感光性層が溶剤塗布により形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱現像写真感光材料。
【請求項6】
防湿層の透湿度が1〜40g/m2・24hrであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱現像写真感光材料。
【請求項7】
支持体が低熱収縮性支持体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱現像写真感光材料。

【公開番号】特開2006−106370(P2006−106370A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−293122(P2004−293122)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】