説明

熱硬化性樹脂組成物、その製造方法及び熱硬化性樹脂成形品

【課題】大気中に放散されるスチレンモノマー量を低減できると共に寸法精度に優れた成形品が得られる熱硬化性樹脂組成物、その製造方法、及び前記熱硬化性樹脂組成物から得られる熱硬化性樹脂組成形品を提供すること。
【解決手段】(A)不飽和ポリエステル樹脂及び/又はビニルエステル樹脂からなる熱硬化性樹脂、(B)スチレンモノマー、(C)ビニルトルエン,α−メチルスチレン,t−ブチルスチレン及びジビニルベンゼンから選ばれる1種以上の重合性モノマー、(D)低収縮剤、及び(E)硬化触媒を含有し、前記(A)熱硬化性樹脂 100質量部に対し、(B)スチレンモノマー及び(C)重合性モノマーの合計量が20〜150質量部、(D)低収縮剤が30〜80質量部であり、前記(B)スチレンモノマー及び(C)重合性モノマーの合計量中の(B)スチレンモノマーの含有割合が10〜80質量%である熱硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、その製造方法、及び前記熱硬化性樹脂組成物から得られる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂等の熱硬化性樹脂に、硬化剤、補強繊維、低収縮剤などを配合した熱硬化性樹脂組成物は、住設機器、自動車部材、電気部材等に成形されて工業的に広く利用されている。特に、BMC(バルクモールディングコンパウンド)は、通常、前記熱硬化性樹脂に硬化剤、補強繊維、低収縮剤、充填剤、増粘剤、離型剤、重合禁止剤、及び着色剤等を配合・混合した後に、バルク状に形成して得られる成形用材料であり、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形等の成形方法による成形性に優れており、寸法精度、機械的強度にも優れているので、厳しい寸法精度が要求される自動車部品や電気部品等に広く用いられている。
【0003】
しかし、上記熱硬化性樹脂組成物には、一般に熱硬化性樹脂の架橋剤としてスチレンモノマーが添加されている。このスチレンモノマーは、本来、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂との硬化反応によって得られる成形硬化体の一部を構成すべきものであるが、実際には成形品中に微量の未反応スチレンモノマーが残存し、これが大気中に放散される場合がある。
【0004】
一方、近年、住宅の建材や内装材から放散されるVOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)によって居住者が体調不良を起こす、いわゆるシックハウス症候群が問題となっており、住宅室内におけるこれらVOCの放散を減少させることが強く求められている。これに対応する国の動きとしては、厚生労働省が2000年にVOCの室内濃度指針値を発表しており、この中でスチレンモノマーに関しては220μg/m3以下と定められている。また、自動車業界では、車室内空間を居住空間の一部と考え、前記濃度指針を満たす新型乗用車を提供すべく検討が開始されている。
【0005】
このため成形品中の残存スチレンモノマーを低減して、スチレンモノマーの気中濃度を低減することが強く要求されている。
【0006】
例えば下記特許文献1には、スチレンモノマーと、(メタ)アクリレートなどのスチレン以外のモノマーとを含有する熱硬化性樹脂、及び重合開始剤からなる熱硬化性樹脂組成物が開示されており、揮発性有機物質の放散を大幅に低減できるとされている。
【特許文献1】特開2005−154747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の樹脂組成物は残存スチレンモノマーを低減できても、
BMC用の熱硬化性樹脂組成物では0.30%程度と成形収縮率が高く、そのため充分な寸法精度の成形品が得られないことが明らかとなった。特に、BMC用の熱硬化性樹脂組成物に関しては、残存スチレンモノマーの低減化と成形品の高い寸法精度との両立が望まれる。
【0008】
そこで、本発明は、大気中に放散されるスチレンモノマー量を低減できると共に寸法精度に優れた成形品が得られる熱硬化性樹脂組成物、その製造方法、及び前記熱硬化性樹脂組成物から得られる熱硬化性樹脂組成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、スチレンモノマーの放散を低減できると共に寸法精度に優れた成形品が得られる熱硬化性樹脂組成物を鋭意検討する過程で、前記スチレンモノマーの低減のためにはスチレンモノマーの量そのものをある程度減らして他の重合性モノマーを架橋剤として用いる必要があること、さらに寸法精度に優れた成形品を得るためには、従来より多量の低収縮剤を用いて樹脂硬化時の系全体の硬化収縮を補償させることが重要であるとの知見を得た。
【0010】
そして、スチレンモノマーの代替モノマーとして例えばメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル系モノマーを用いると、低収縮剤として用いられる熱可塑性樹脂の溶解が不充分となるため、低収縮効果を充分に発現できないこと、さらに、スチレンモノマー量を低減することによる架橋の低下を改善するためには低収縮剤に対する優れた溶解性を有するスチレンモノマーを少量配合すると共にスチレンモノマー以外の架橋性の良好な重合性モノマーも配合してこれらモノマーの熱硬化性樹脂等に対する配合割合を適切にすることが重要であることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。
【0011】
すなわち、本発明は、(A)不飽和ポリエステル樹脂及び/又はビニルエステル樹脂からなる熱硬化性樹脂、(B)スチレンモノマー、(C)ビニルトルエン,α−メチルスチレン,t−ブチルスチレン及びジビニルベンゼンから選ばれる1種以上の重合性モノマー、(D)低収縮剤、及び(E)硬化触媒、を含有し、前記(A)熱硬化性樹脂100質量部に対して、(B)スチレンモノマー及び(C)重合性モノマーの合計量が20〜150質量部、(D)低収縮剤が30〜80質量部であり、前記(B)スチレンモノマー及び(C)重合性モノマーの合計量中の(B)スチレンモノマーの含有割合が10〜80質量%であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。
【0012】
本発明は、更に(F)無機充填材、及び/又は(G)補強繊維を含有することが好ましい。
【0013】
また、前記(B)スチレンモノマーを熱硬化性樹脂組成物全量中に0.5〜10質量%含有することが好ましい。
【0014】
また、前記(C)重合性モノマーを熱硬化性樹脂組成物全量中に1.0〜20質量%含有することが好ましい。
【0015】
また、前記(E)硬化触媒が、66〜97℃の10時間半減期温度を有し、t−ヘキシル構造を有するパーオキシケタール又はt−ヘキシル構造を有するパーオキシエステルであることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、(A)不飽和ポリエステル樹脂及び/又はビニルエステル樹脂からなる熱硬化性樹脂、(B)スチレンモノマー、(C)ビニルトルエン,α−メチルスチレン,t−ブチルスチレン及びジビニルベンゼンから選ばれる1種以上の重合性モノマー、(D)低収縮剤、及び(E)硬化触媒、を含有し、前記(A)熱硬化性樹脂100質量部に対して、(B)スチレンモノマー及び(C)重合性モノマーの合計量が20〜150質量部、(D)低収縮剤が30〜80質量部であり、前記(B)スチレンモノマー及び(C)重合性モノマーの合計量中の(B)スチレンモノマーの含有割合が10〜80質量%である熱硬化性樹脂組成物の製造方法であって、前記(D)低収縮剤を前記(B)スチレンモノマーに溶解する低収縮剤溶解液調製工程と、前記低収縮剤溶解液調製工程により得られた低収縮剤溶解液と前記(A)熱硬化性樹脂、前記(C)重合性モノマー、及び前記(E)硬化触媒とを混合する工程とを備えることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物の製造方法である。
【0017】
また、前記熱硬化性樹脂組成物の製造方法は、さらに前記(A)熱硬化性樹脂を(C)重合性モノマーに溶解する熱硬化性樹脂溶解液調製工程を備える製造方法であることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、前記熱硬化性樹脂組成物を成形硬化して得られることを特徴とする熱硬化性樹脂成形品である。
【0019】
また、前記熱硬化性樹脂成形品の成形収縮率は0.20%以下であることが好ましい。
【0020】
また、前記熱硬化性樹脂成形品の線膨張係数は0.8〜2.0×10−5/℃であることが好ましい。
【0021】
また、前記熱硬化性樹脂成形品の荷重たわみ温度は200℃以上であることが好ましい。
【0022】
また、前記熱硬化性樹脂成形品をアドパック法で測定したスチレンモノマーの気中濃度が220μg/m3以下、且つテドラバッグ法で測定したスチレンモノマーの気中濃度が800μg/m3以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、大気中に放散されるスチレンモノマー量を低減できると共に寸法精度に優れた成形品を提供することができる。また、本発明の熱硬化性樹脂組成物の製造方法によれば、スチレンモノマー量が低減され寸法精度に優れた成形品を提供できる熱硬化性樹脂組成物を確実容易に得ることができる。
【0024】
また、この熱硬化性樹脂組成物を成形硬化して得られる熱硬化性樹脂組成形品は、スチレンモノマーの気中濃度が低く、且つ寸法精度に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)不飽和ポリエステル樹脂及び/又はビニルエステル樹脂からなる熱硬化性樹脂、(B)スチレンモノマー、(C)ビニルトルエン,α−メチルスチレン,t−ブチルスチレン及びジビニルベンゼンから選ばれる1種以上の重合性モノマー、(D)低収縮剤、及び(E)硬化触媒、を含有し、前記(A)熱硬化性樹脂100質量部に対して、(B)スチレンモノマー及び(C)重合性モノマーの合計量が20〜150質量部、(D)低収縮剤が30〜80質量部であり、前記(B)スチレンモノマー及び(C)重合性モノマーの合計量中の(B)スチレンモノマーの含有割合が10〜80質量%であることを特徴とするものである。
【0026】
本発明において(A)熱硬化性樹脂として用いられる不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和多塩基酸と多価アルコールと必要に応じて飽和多塩基酸とを公知の方法により重縮合させて得られるものであり、熱硬化性樹脂として知られている不飽和ポリエステル樹脂であればその種類は特に限定されるものではない。なお、不飽和多塩基酸及び飽和多塩基酸には酸無水物が含まれる。
【0027】
不飽和多塩基酸としては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和二塩基酸が挙げられる。また飽和多塩基酸としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸等の飽和二塩基酸、安息香酸、トリメリット酸等の二塩基酸以外の酸等が挙げられる。
【0028】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、水素添加ビスフェノール、1,6−ヘキサンジオール等のグリコールが挙げられる。
【0029】
本発明においては、(A)熱硬化性樹脂としての不飽和ポリエステル樹脂の一部または全量をビニルエステル樹脂で置き換えることも可能である。
【0030】
本発明において(A)熱硬化性樹脂として用いられるビニルエステル樹脂は、不飽和エポキシ樹脂またはエポキシアクリレート樹脂とも言われるもので、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ基にアクリル酸やメタアクリル酸等の不飽和一塩基酸 またはマレイン酸やフマル酸等の不飽和二塩基酸のモノエステルを開環付加させた反応生成物(以下エポキシアクリレートともいう)を単量体に溶解させた液状樹脂であり、公知のものがいずれも使用できる。
【0031】
ここでエポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂がいずれも使用できるが、具体的にはビスフェノールA、ビスフェノールFまたはビスフェノールSとエピクロルヒドリンから合成されるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂またはビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールとホルムアルデヒドを酸性触媒下で反応させて得られるいわゆるフェノールノボラック樹脂とエピクロルヒドリンから合成させるフェノールノボラック型エポキシ樹脂、及びクレゾールとホルムアルデヒドを酸性触媒存在下で反応させて得られるいわゆるクレゾールノボラック樹脂とエピクロルヒドリンから合成されるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラックエポキシ樹脂が挙げられる。
【0032】
本発明において、(B)スチレンモノマーは不飽和ポリエステル樹脂及び/又はビニルエステル樹脂の架橋反応のために含有されており、後述する低収縮剤に対する優れた溶解性を有する。
【0033】
また、(C)重合性モノマーはビニルトルエン,α−メチルスチレン,t−ブチルスチレン及びジビニルベンゼンから選ばれる1種以上のモノマーであり、スチレンモノマー同様、不飽和ポリエステル樹脂及び/又はビニルエステル樹脂の架橋反応のために含有される。これら(C)重合性モノマーは、低収縮剤に対する比較的良好な溶解性や(A)熱硬化性樹脂への溶解性を有するものが選択されている。これらのモノマーは単独で用いても、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
中でも、粘度が適当で、不飽和ポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂の溶解性やそれらとの架橋反応性の点から、ビニルトルエンが好ましく用いられる。
【0035】
このような重合性モノマーを1種以上とスチレンモノマーと併用することにより、(A)熱硬化性樹脂の架橋反応に用いられるスチレンモノマー量を低減しても前記重合性モノマーが組成物中での低収縮剤の均一な分散に寄与するため、低収縮剤を高い割合で含有する組成物とすることができ、また架橋剤としての役割を果たすため、得られる成形品の残存スチレンモノマー低減と低収縮率の両立が達成される。
【0036】
前記(B)スチレンモノマー及び(C)重合性モノマーの合計量は、前記(A)熱硬化性樹脂100質量部に対し、20〜150質量部、好ましくは50〜100質量部とされる。この合計量が少なすぎる場合は、得られる成形品の成形収縮率や線膨張係数が大きくなり、多すぎる場合は得られる成形品中の残存スチレンモノマー量が多くなり成形品から放散されるスチレンモノマー量が多くなるので、スチレンモノマーの気中濃度が高くなる。
【0037】
前記(B)スチレンモノマーの含有割合は、(B)スチレンモノマー及び(C)重合性モノマーの合計量中に10〜80質量%、好ましくは15〜65質量%、さらに好ましくは20〜40質量%以下とされる。(B)スチレンモノマー及び(C)重合性モノマーの合計量中のスチレンモノマーの含有割合が低すぎる場合は、低収縮剤の溶解性が低下するので、得られる成形品の成形収縮率や線膨張係数が大きくなり、また、光沢が低下する傾向がある。逆にスチレンモノマーの含有割合が高すぎる場合は、得られる成形品中の残存スチレンモノマー量が多くなり成形品から放散されるスチレンモノマー量が多くなるので、スチレンモノマーの気中濃度が高くなる。
【0038】
また、熱硬化性樹脂組成物の全量に対するスチレンモノマーの含有割合は、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜8質量%、さらに好ましくは1.5〜5質量%とされる。この含有割合が低すぎる場合は、低収縮剤の溶解性が低下するので、得られる成形品の成形収縮率や線膨張係数が大きくなり、また、光沢が低下する傾向がある。逆に含有割合が高すぎる場合は、得られる成形品中の残存スチレンモノマー量が多くなり成形品から放散されるスチレンモノマー量が多くなるので、スチレンモノマーの気中濃度が高くなる傾向がある。
【0039】
また、前記(C)重合性モノマーの熱硬化性樹脂組成物全量に対する含有割合は、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは3〜15質量%、さらに好ましくは5〜10質量%とされる。この含有割合が低すぎる場合は、結果としてスチレンモノマーの熱硬化性樹脂組成物中の含有割合が高くなるので、得られる成形品中の残存スチレンモノマー量が多くなり成形品から放散されるスチレンモノマー量が多くなる傾向がある。逆に、この含有割合が高すぎる場合は、得られる成形品の成形収縮率や線膨張係数が大きくなり易い。また、成形時の流動性が低下する。
【0040】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は(D)低収縮剤を含有する。熱硬化性樹脂組成物は、加熱硬化時に系全体が硬化収縮を生じるため、低収縮剤によって収縮を補償させるためである。
【0041】
低収縮剤としては飽和ポリエステル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリレート、スチレン-ブタジエンゴム、ポリ酢酸ビニル-ポリスチレンブロックコポリマー、アクリル-スチレンなどの多層構造ポリマー等の熱可塑性樹脂が挙げられ、これらは1種類または2種類以上で用いることができる。これらの内、低収縮効果が高い点から飽和ポリエステルが好ましく用いられる。
【0042】
低収縮剤の含有割合は、(A)熱硬化性樹脂100質量部に対して30〜80質量部であり、好ましくは35〜75質量部、さらに好ましくは40〜70質量部とされる。低収縮剤の含有割合が低すぎる場合は、充分な低収縮効果を得ることができない。また高すぎる場合は、低収縮剤が(B)スチレンモノマーに溶解せずに分離する可能性があり、低収縮効果が得られず線膨張係数が大きくなり、熱時剛性が低下する。
【0043】
本発明においては、低収縮剤の含有割合が公知の熱硬化性樹脂組成物における含有割合よりも高い範囲にある。一方、上述の通り、(C)重合性モノマーとして、スチレンモノマーとの相溶性が良好な1種以上のモノマーを選択しているので、スチレンモノマーと共に(C)重合性モノマーが組成物中での低収縮剤の均一な分散に寄与しており、高い割合で低収縮剤を含有することを可能としているのである。
【0044】
本発明において、(E)硬化触媒は、熱硬化性樹脂の硬化触媒として公知のものを使用し得るが、好ましくは10時間半減期温度が66〜97℃の範囲のものが用いられる。10時間半減期温度が66℃未満の場合は十分なライフタイムを有する組成物が得られないことがあり、97℃を超える場合は得られる成形品中の残存スチレンモノマー量が多くなり成形品から放散されるスチレンモノマー量が多くなる傾向がある。
【0045】
なお、10時間半減期温度とは、熱により重合開始剤が分解して、重合開始剤の濃度が10時間経過後に初期の半分に減ずるのに必要な温度を意味している。具体的には、濃度0.2モル/リットルの重合開始剤のベンゼン溶液を調製し、このベンゼン溶液中で重合開始剤を熱分解したとき、重合開始剤の半減期が10時間になる温度をいう。
【0046】
10時間半減期温度が66〜97℃の硬化触媒としては、例えば、ケトンパーオキサイド系硬化触媒、ハイドロパーオキサイド系硬化触媒、ジアシルパーオキサイド系硬化触媒、ジアルキルパーオキサイド系硬化触媒、パーオキシケタール系硬化触媒、アルキルパーエステル系硬化触媒、パーカーボネート系硬化触媒が挙げられる。
【0047】
これらのうちでも、t−ヘキシル構造を有する硬化触媒が好ましく、t−ヘキシル構造を有するパーオキシケタール系硬化触媒やt−ヘキシル構造を有するパーオキシエステル系硬化触媒が特に好ましく用いられる。t−ヘキシル構造を有するパーオキシケタール系硬化触媒としては(括弧内は10時間半減期温度を示す。以下同じ。)、1,1-ビス(t−ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(86.7℃)、1,1-ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(87.1℃)が挙げられる。t−ヘキシル構造を有するパーオキシエステル系硬化触媒としては、t−ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(69.9℃)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(95.0℃)が挙げられる。t−ヘキシル構造を有することにより成形品の残存スチレンモノマー量を少なくし、成形品から放散されるスチレンモノマー量を低減することができる。
【0048】
なお、本発明において用いられる硬化触媒は10時間半減期温度が66〜97℃であるものに限られたり、t−ヘキシル構造を有するものに限られるものではない。場合によっては、10時間半減期温度が104.3℃のt−ブチルパーオキシベンゾエートや、t−ヘキシル構造を有さないt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(92.1℃)などを使用することも可能である。
【0049】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、更に(F)無機充填材、及び/又は(G)補強繊維を含有することが好ましい。成形品の機械的強度、寸法安定性などを高めるためである。
【0050】
(F)無機充填材としては、成形材料として一般的に用いられる無機充填材が使用可能である。例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、硅砂、ケイソウ土が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、(A)熱硬化性樹脂と、(B)スチレンモノマー及び(C)重合性モノマーとの合計量100質量部に対して好ましくは0〜380質量部、より好ましくは200〜380質量部添加することが好ましい。
【0051】
(G)補強繊維としては、ガラス繊維や炭素繊維が挙げることができ、繊維長が1.5〜5mmのガラス繊維が好ましく用いられる。繊維長が短かすぎる場合は充分な補強効果を得ることができず、長すぎる場合は成形性が低下する傾向がある。(G)補強繊維の含有量は、好ましくは、(A)熱硬化性樹脂と、(B)スチレンモノマー及び(C)重合性モノマーとの合計量100質量部に対して30〜150質量部とされる。
【0052】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記(A)熱硬化性樹脂〜(G)補強繊維に加えて、離型剤、増粘剤、顔料等を必要に応じて含有してもよい。
【0053】
前記離型剤は、成形材料に一般的に用いられている離型剤を使用することができ、例えばステアリン酸、ミスチリン酸等の脂肪酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪族酸金属塩、リン酸エステル等の界面活性剤、カルバナワックス等が用いられる。
【0054】
前記増粘剤は、BMCやシートモールディングコンパウンド(SMC)等のFRP材料に一般的に用いられているものを使用することができ、例えばマグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウムなどの2価金属の酸化物や水酸化物、アクリルポリマーなどが用いられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、金属酸化物や金属水酸化物の場合には、(A)不飽和ポリエステル樹脂及び/又はビニルエステル樹脂と(B)スチレンモノマー及び(C)重合性モノマーとの合計量100質量部に対して好ましくは0.5〜50質量部、さらに好ましくは、0.5〜5質量部の範囲で用いられる。
【0055】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(D)低収縮剤を(B)スチレンモノマーに溶解する低収縮剤溶解液調製工程を経て得られた低収縮剤溶解液と、前記(A)熱硬化性樹脂、前記(C)重合性モノマー、及び前記(E)硬化触媒とを混合して製造することが好ましい。
【0056】
低収縮剤を予め(B)スチレンモノマーに溶解したものを配合することにより、低収縮剤の熱硬化性樹脂組成物中における分散性、従って熱硬化性樹脂成形品中における分散性が向上するので好ましい。さらに、(A)熱硬化性樹脂を予め(C)重合性モノマーに溶解し、得られた熱硬化性樹脂溶解液と、前記低収縮剤溶解液とを混合し、その後、さらに、(E)硬化触媒を添加混合することが好ましい。前記製造方法によれば、(D)低収縮剤と(A)熱硬化性樹脂とが均一に分散された熱硬化性樹脂組成物が得られる。
【0057】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、圧縮成形、射出成形、トランスファー成形等の成形方法等の各種プレス成形法により成形硬化されて熱硬化性樹脂成形品とされる。
【0058】
本発明の熱硬化性樹脂組成物をBMCやSMC等のFRP材料として用いる場合は、通常、補強繊維を添加し、更に必要により増粘剤を添加した熱硬化性樹脂組成物をバルク状あるいはシート状に一体化し、例えば25〜50℃の温度条件下で熟成して増粘させて、BMCやSMC等とする。その後は、BMCやSMCを前述の通り、圧縮成形、射出成形等の公知の成形法により成形硬化してFRP成形品をして得ることができる。
【0059】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を成形硬化して得られる熱硬化性樹脂成形品は、成形収縮率が0.20%以下又は線膨張係数が0.8〜2.0×10−5/℃の優れた寸法精度を有しているので、厳しい寸法精度が要求される自動車部品や電気部品等に供給することができる。ここで、成形収縮率は、JIS K6911「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定した値であり、線膨張係数は後の実施例で説明する熱機械分析法によって測定した値である。
【0060】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物を成形硬化して得られる、荷重たわみ温度が200℃以上である熱硬化性樹脂成形品は、熱的剛性が高いので熱的環境が厳しい分野に供給することができる。ここで、荷重たわみ温度は、JIS K6911に準拠して測定した値である。
【0061】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物を成形硬化して得られる成形品は、アドパック法で測定したスチレンモノマーの気中濃度が220μg/m3以下、且つテドラバッグ法で測定したスチレンモノマーの気中濃度が800μg/m3以下であるものも得られるため、厚生労働省のスチレンモノマーの室内濃度指針値(220μg/m3以下)のみならず、高温保存でのスチレンモノマーの放散凌駕少なく、環境衛生上好ましいものである。ここで、アドパック法で測定したスチレンモノマーの気中濃度は、JIS A1901「建築材料の揮発性有機化合物、ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物放散測定方法−小形チャンバ法」に準拠して測定した値である。
【実施例】
【0062】
以下に、本実施例、比較例で用いた原材料をまとめて示す。
(A)(熱硬化性樹脂)
・不飽和ポリエステル樹脂 :日本ユピカ(株)製 ユピカ8552
・ビニルエステル樹脂 :日本ユピカ(株)製 ネオポール8250H
(B)スチレンモノマー
(C)(重合性モノマー)
・ビニルトルエン、α-メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン
・メチルメタクリレート
(D)(低収縮剤)
・飽和ポリエステル樹脂:ジャパンコンポジット(株)製、AT600H
・ポリスチレン :松下電工株式会社製、CJ3947
・SBRゴム :日本ユピカ株式会社製、A−35
【0063】
(E)(硬化触媒)
・1,1-ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(10時間半減期温度 87.1℃、THPOCと略記する)
・t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(10時間半減期温度 95.0℃、THPOICと略記する)
・t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(10時間半減期温度 92.1℃、TBPOEHと略記する)
・t−ブチルパーオキシベンゾエート(10時間半減期温度 104.3℃、TBPOBと略記する)
(F)(無機充填材)
・炭酸カルシウム
(G)(補強繊維)
・日本硝子繊維(株)製、RESO3BM5(ガラス繊維長3mm)
(離型剤) :ステアリン酸亜鉛
【0064】
〈実施例1〜12〉
予め、表1に示す割合の低収縮剤と表1に示す割合の(B)スチレンモノマーを混合し、低収縮剤溶解液と、表1に示す割合の(A)熱硬化性樹脂と(C)重合性モノマーを混合し、熱硬化性樹脂溶解液とをそれぞれ調製した。得られた低収縮剤溶解液、熱硬化性樹脂溶解液、硬化触媒、無機充填材、補強繊維及び離型剤を、表1の割合となるように、ニーダーに投入し、25〜30℃で20〜40分間混合してバルク状の熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0065】
実施例1〜12で得られた熱硬化性樹脂組成物を以下の方法により成形し、1)成形収縮率、2)線膨張係数、3)荷重たわみ温度、4)スチレンモノマー濃度(アドパック法及びテドラバッグ法)、5)光沢・平滑性、6)成形流動性、7)曲げ強さ、及び8)シャルピー衝撃強さを評価した。
【0066】
(試験片の作成方法及び測定方法)
1)成形収縮率
JIS K6911に準拠し5.7「成形収縮率」に基づいて測定した。
・試験片形状:Φ90×5mmの円板
・金型 :試験片形状のキャビティを備えた試験片金型(直圧成形)を用いた。
・成形条件 :金型温度;145℃、圧力;10MPa、硬化時間;180秒
2)線膨張係数
熱機械分析法(TMA:Thermomechanical Analysis Me
thod 法)によって測定した。
・試験片形状:Φ5×30mm
・金型 :試験片形状のキャビティを備えた試験片金型(直圧成形)を用いた。
・成形条件 :金型温度;145℃、圧力;10MPa、硬化時間;180秒
・測定方法 :示差膨張方式
3)荷重たわみ温度
JIS K6911に準拠し5.35「荷重たわみ温度」に基づいて測定した。
・試験片形状:6.4×12.7×127mm
・金型 :試験片形状のキャビティを備えた試験片金型(直圧成形)を用いた。
・成形条件 :金型温度;145℃、圧力;10MPa、硬化時間;180秒
4)スチレンモノマー濃度(スチレンモノマー放散量)
「試験片の作成方法」
・試験片形状:70×40×3mm
・金型:試験片形状のキャビティを備えた試験片金型(トランスファー成形)を用いた。
・成形条件 :金型温度;150℃、注入圧力;5MPa、注入時間;30秒
型締め圧力;5MPa、型締め時間;120秒
【0067】
「測定方法」
1.アドパック法
JIS A1901(小形チャンバ法)に準拠して測定した。
すなわち、空気入口及び排気出口を有しかつ、一定温度に保持された密閉状の試験チャンバ内に試験片を入れて、そのチャンバ内にチャンバと同じ温度及び一定の相対湿度の清浄な空気を空気入口より供給して均一に拡散させ、その供給空気により換気されたチャンバ内の気体を排気出口から取り出して捕集し、その捕集気体をガスクロマトグラム質量分析装置にかけて試験片の表面のみから放散したスチレンモノマーの量を分析した。
・チャンバ体積 : 20L
・試験条件(測定温湿度):25±1℃、50RH%
・チャンバ内の換気回数 : 0.5回/時間
・換気流量 : 167mL/分
・補集管 : TenaxTA(スペルコ製)
【0068】
2.テドラバッグ法
TSM0505G(自動車内装材評価方法)に準拠して測定した。
すなわち、試験片を封入したテドラバッグ内に一定量の清浄な空気を注入し、その後テドラバッグを加熱処理し、テドラバッグ内の空気を固相捕集し、その捕集気体から放散したスチレンモノマーの量を分析した。
・テドラバッグ体積 : 10L
・加熱条件 : 65℃×2時間
・補集流量 : 167mL/分
・補集量 : 1000mL/分
・補集管 : TenaxTA(スペルコ製)
5)光沢・平滑性
上記4)スチレンモノマー濃度、の評価において作成した試験片の外観を、目視により、
光沢の良否(有無)、平滑性の良否(有無)によって評価した。表1,2には、光沢及び平滑性が良好な場合は「良好」と記載し、光沢又は平滑性が無い場合は各々について「なし」と記載し、光沢及び平滑性が無い場合は「光沢・平滑性なし」と記載した。
【0069】
6)成形流動性(スパイラルフロー)
ASTM D3123に準じたスパイラルフロー測定金型を用いて金型温度150℃、注入圧力:4.9MPa、成形時間60秒間、の条件で成形し、流動距離(cm)を測定した。
7)曲げ強さ
JIS K6911に準拠し5.17「曲げ強さ及び曲げ弾性率」に基づいて測定した。
・試験片形状:4×10×80mm
・金型 :試験片形状のキャビティを備えた試験片金型(直圧成形)を用いた。
・成形条件 :金型温度;145℃、圧力;10MPa、硬化時間;180秒
8)シャルピー衝撃強さ
・試験片形状:5×15×90mm
・金型 :試験片形状のキャビティを備えた試験片金型(直圧成形)を用いた。
・成形条件 :金型温度;145℃、圧力;10MPa、硬化時間;180秒
評価結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
表1の結果より、本発明の熱硬化性樹脂組成物である実施例1〜10は全て、アドパック法におけるスチレンモノマー濃度が低く、厚生労働省の室内濃度指針値を下回っており、且つ、成形収縮率が低く線膨張係数が所定範囲にあり、寸法精度の高い熱硬化性樹脂成形品を提供できることが示された。さらに、熱時剛性の指標である荷重たわみ温度や成形流動性の指標であるスパイラルフロー値も良好で、曲げ強さやシャルピー衝撃強さ等の物性にも優れており、成形品の外観についても、光沢と平滑性が共に良好であった。
【0072】
なお、実施例8では、アドパック法によるスチレンモノマー濃度測定値は厚生労働省の室内濃度指針値を下回ったが、硬化触媒として、10時間半減期温度が97℃を超えるTBPOBやt−ヘキシル構造を有さないTBPOEHを使用しているため、テドラバッグ法による測定値は4000μg/m3と他の実施例に比べて高かった。
これに対し、実施例1〜7,9〜12は、アドパック法、テドラバッグ法いずれにおいても、残存スチレンモノマーが低減されている。
【0073】
〈比較例1〜9〉
実施例1と同様にして、表2の割合となるように、各原材料を混合して熱硬化性樹脂組成物を得た。
〈比較例10〉
予め低収縮剤をスチレンモノマーに溶解することなく固体のまま、表2に示す原材料をその割合で一括混合した混合物をニーダーに投入し、25〜30℃で20〜40分間混合して熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0074】
比較例1〜10で得られた熱硬化性樹脂組成物を、上記実施例と同様に、成形し、1)成形収縮率〜8)シャルピー衝撃強さの各項目について評価した。
その結果を表2に示す。
【0075】
【表2】

【0076】
モノマーとしてスチレンモノマーのみを用いた比較例1及び2ではスチレンモノマー濃度が高く荷重たわみ温度も低かった。特に、硬化触媒として、t−ヘキシル構造を有さないTBPOEHや10時間半減期温度が104.3℃のTBPOBを使用した比較例1ではスチレンモノマー濃度が極めて高い値を示した。
【0077】
また、スチレンモノマーを用いずモノマーとしてビニルトルエンのみを用いた比較例3では、成形収縮率および線膨張係数が大きく成形品には平滑性がなかった。
【0078】
また、低収縮剤の含有割合が不飽和ポリエステル樹脂に対して少なすぎる比較例4でも、成形収縮率及び線膨張係数が大きく成形品には平滑性がなかった。低収縮剤の含有割合が多すぎる比較例5では、線膨張係数が大きく荷重たわみ温度が低く、成形品には光沢がなかった。
【0079】
また、全モノマー中のスチレンモノマーの含有割合が低すぎる比較例6では、成形収縮率及び線膨張係数が大きく成形品には平滑性がなかった。モノマーがスチレンモノマーとメチルメタクリレートからなる比較例7では、成形収縮率及び線膨張係数が大きく成形品には光沢と平滑性がなかった。
【0080】
スチレンモノマーとビニルトルエンの合計量が不飽和ポリエステル樹脂に対して少なすぎる比較例8では、成形収縮率及び線膨張係数が大きく成形品には光沢と平滑性がなかった。スチレンモノマーとビニルトルエンの合計量が不飽和ポリエステル樹脂に対して多すぎる比較例9では、スチレンモノマー濃度が比較例1に次いで高かった。
【0081】
低収縮剤をスチレンモノマーに溶解することなく固体のまま配合した比較例10では、成形収縮率及び線膨張係数が大きく成形品には光沢と平滑性がなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)不飽和ポリエステル樹脂及び/又はビニルエステル樹脂からなる熱硬化性樹脂、
(B)スチレンモノマー、
(C)ビニルトルエン,α−メチルスチレン,t−ブチルスチレン及びジビニルベンゼンから選ばれる1種以上の重合性モノマー、
(D)低収縮剤、及び
(E)硬化触媒、
を含有し、
前記(A)熱硬化性樹脂100質量部に対して、(B)スチレンモノマー及び(C)重合性モノマーの合計量が20〜150質量部、(D)低収縮剤が30〜80質量部であり、前記(B)スチレンモノマー及び(C)重合性モノマーの合計量中の(B)スチレンモノマーの含有割合が10〜80質量%であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
更に(F)無機充填材、及び/又は(G)補強繊維を含有する請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)スチレンモノマーを前記熱硬化性樹脂組成物全量中に0.5〜10質量%含有する請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)重合性モノマーを前記熱硬化性樹脂組成物全量中に1.0〜20質量%含有する請求項1〜3いずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(E)硬化触媒が、66〜97℃の10時間半減期温度を有し、t−ヘキシル構造を有するパーオキシケタール又はt−ヘキシル構造を有するパーオキシエステルである請求項1〜4いずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
(A)不飽和ポリエステル樹脂及び/又はビニルエステル樹脂からなる熱硬化性樹脂、
(B)スチレンモノマー、
(C)ビニルトルエン,α−メチルスチレン,t−ブチルスチレン及びジビニルベンゼンから選ばれる1種以上の重合性モノマー、
(D)低収縮剤、及び
(E)硬化触媒、
を含有し、
前記(A)熱硬化性樹脂100質量部に対して、(B)スチレンモノマー及び(C)重合性モノマーの合計量が20〜150質量部、(D)低収縮剤が30〜80質量部であり、前記(B)スチレンモノマー及び(C)重合性モノマーの合計量中の(B)スチレンモノマーの含有割合が10〜80質量%である熱硬化性樹脂組成物の製造方法であって、
前記(D)低収縮剤を前記(B)スチレンモノマーに溶解する低収縮剤溶解液調製工程と、前記低収縮剤溶解液調製工程により得られた低収縮剤溶解液と前記(A)熱硬化性樹脂、前記(C)重合性モノマー、及び前記(E)硬化触媒とを混合する工程とを備えることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記(A)熱硬化性樹脂を(C)重合性モノマーに溶解する熱硬化性樹脂溶解液調製工程を備える請求項6記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜5いずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を成形硬化して得られることを特徴とする熱硬化性樹脂成形品。
【請求項9】
成形収縮率が0.20%以下である請求項8に記載の熱硬化性樹脂成形品。
【請求項10】
線膨張係数が0.8〜2.0×10−5/℃である請求項8又は9に記載の熱硬化性樹脂成形品。
【請求項11】
荷重たわみ温度が200℃以上である請求項8〜10いずれか1項に記載の熱硬化性樹脂成形品。
【請求項12】
アドパック法で測定したスチレンモノマーの気中濃度が220μg/m3以下、且つテドラバッグ法で測定したスチレンモノマーの気中濃度が800μg/m3以下である請求項8〜11いずれか1項に記載の熱硬化性樹脂成形品。

【公開番号】特開2007−262247(P2007−262247A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89609(P2006−89609)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】