説明

熱膨張目地付耐火二層管継手の製造方法

【課題】耐火二層管継手の外層の端面に、環状の熱膨張性目地を脱落変形しないように取り付ける。
【解決手段】合成樹脂製管継手5の端部に、その外周の射出成型により形成されるモルタルの外層6の厚さとほぼ等しい幅の環状の熱膨張性目地3を嵌着し、これを加熱された射出成型金型3内にセットし、射出されるモルタルにより熱膨張性目地と当接した外層6を形成したのち金型から取り出してモルタルを硬化させることにより該外層の端面に熱膨張性目地が付着した耐火二層管継手を製造する方法において、該熱膨張性目地がモルタルの外層の端面と接触する裏面に、複数の凹穴や凹溝を形成し、或は表裏を貫通する透孔を形成し、或は目地の周縁に切り欠き透孔を形成し、或は目地の環状穴をテーパー穴としてモルタル進入空間16を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製管継手をモルタルの外層で被覆した構成を有する耐火二層管継手の接続端部に、環状の熱膨張性目地を取付けた状態で熱膨張性目地付耐火二層管継手を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂管をモルタル管で被覆した耐火二層管は従来より知られており、この耐火二層管を接続するための継手として、合成樹脂製管継手を射出成型によるモルタルの外層で被覆した構成を有する耐火二層管継手も知られている。こうした構成の耐火二層管や耐火二層管継手が使用される理由は、内管が合成樹脂管であるため排水を円滑に流せるという利点と、外面を覆うモルタル被覆が火災の熱による内管の延焼を防止できて安全性が高いという利点を兼備するからである。このような耐火二層管と耐火二層管継手の接続部には、特許文献1に見られるように、火災などの熱が作用したとき体積が数倍から十倍程度に膨張するグラファイト系の熱膨張性の目地を介在させ、接続部の隙間を塞ぐことで火災の熱が内部の合成樹脂製管や管継手に影響することを防止している。
【0003】
配管接続作業は、耐火二層管の管端を耐火二層管継手の配管接続端部内へ挿入して互いに接着剤で接合して行われるが、この接続作業の際に、耐火二層管の管端にセットした環状の熱膨張性目地が脱落しないように注意を払う必要があって比較的作業が煩わしく、またセット忘れがあった場合、接続部の隙間をペースト状の湿式目地等で塞ぐ工事を行っているが、これは美観を損ない作業が面倒であるという不便があった。
【0004】
このような不便を解消するため、特許文献2に見られるように、環状の熱膨張性目地を耐火二層管継手のモルタルの外層の端面に接着剤で貼り付けたり、特許文献3に見られるように、耐火二層管継手のモルタル外層の端面に凹部を形成してそこに環状の熱膨張性目地を嵌め込むことが考えられている。更に、耐火二層管継手の外層を形成する金型内に熱膨張性目地を配置し、外層の形成と同時にその端面に該目地を取り付けることも出願人等が提案している(特許文献1)。なお、熱膨張性目地を耐火二層管継手に取り付けしても、耐火二層管には取り付けされない理由は、耐火二層管は、配管施工に際して長さ調整のために切断されることが多く、耐火二層管の端部に熱膨張性目地を取り付けることは無駄が多くなるので実用的でないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−161392号公報
【特許文献2】特開2002−228054号公報
【特許文献3】特開2002−31280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2のように環状の熱膨張性目地を接着剤で耐火二層管継手に貼り付ける場合は、目地のセット忘れの不便は解消されるが、接着剤の塗布作業や目地の貼り付け作業が必要になり、一般に管継手はエルボ型や分岐型などと種類が多いために自動機による貼り付けは困難で人手に頼る作業となり、これは時間もかかりコスト高になって好ましくない。また、特許文献3のように耐火二層管継手の接続端部の凹部に熱膨張性目地を収容したものは、目地周囲のモルタルが脆いためモルタル硬化時や運搬時に凹部周囲のモルタルがひび割れしない程度にモルタル厚を厚くしなければならず、その結果、外層が重量増加して施工や運搬が不便になるという不都合が生じ、熱膨張性目地が凹部に潜むため、施工後に目地のセット状況を外部から目視によりチェックしにくい欠点がある。一方、特許文献1のようにモルタル外層の厚さとほぼ等しい幅を有する熱膨張性目地を射出成型金型内に設けて耐火二層管継手のモルタル外層の形成と同時にその端面に目地を接合させれば、目地の貼り付け作業が不要になり、外部から目地の厚みが縞状に見えるので目地のセット状況をチェックしやすくなるが、金型はその内面にモルタルが付着することを防止するため60〜90℃に加熱されており、そのため実際の製品は、該目地が金型の熱で捩じれ或は波を打ったように変形して外観が悪く、また、その変形のために外層の端面から目地が遊離し或ははみだし、製品の輸送時や施工時に目地が脱落するなどの不都合がみられた。該目地が金型と接触している時間は、標準的な製品では、わずか5秒程度であるが、それでも変形してしまうのが実状である。
【0007】
本発明は、配管接続端部に、モルタルの外層とほぼ同じ幅を有する環状の熱膨張性目地が脱落しにくい十分な接着力で固着され、軽量でしかも施工後の目地の有無のチェックが容易な耐火二層管継手を簡単に製造することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上記課題を解決するために、モルタルの外層が形成される合成樹脂製管継手の端部の外周に、該外層の厚さとほぼ等しい幅を有する環状の熱膨張性目地を嵌着し、これを加熱された射出成型金型内にセットし、射出されるモルタルにより該合成樹脂製管継手の周囲に該熱膨張性目地と当接した該外層を形成したのち金型から取り出してモルタルを硬化させることにより該外層の端面に熱膨張性目地が付着した耐火二層管継手を製造する方法において、該射出成型金型が該熱膨張性目地と接触する部分の少なくとも一部を非加熱状態とするようにした。
【0009】
射出されたモルタルは、加熱された射出成型金型の内壁と合成樹脂製管継手の外面との間を流れて継手の端部に位置した該熱膨張性目地と全面にわたって接触するまで注入されるが、該金型の該目地と接触する部分の一部を非加熱状態としてあるので、該目地を金型にセットしたときからその注入が終わって製品を金型から取り出すまでの間に、金型の熱で該目地が変形することがなく、そのため外層の端面と該目地の表面とが密着する。このあと金型を解体して取り出し、モルタルを養生硬化させると、該目地は配管施工時まで外層の端面から容易に脱落しない程度に接合した接合固定状態になる。また、外層の厚さは一様で、薄い部分がないから丈夫で軽量な熱膨張性目地付耐火二層管継手が得られる。
【0010】
また上記の課題は、外層の端面に熱膨張性目地が付着した耐火二層管継手を製造する方法において、該環状の熱膨張性目地がモルタルの外層の端面と接する裏面に、複数の凹穴を間隔を存して形成し、射出されるモルタルの一部が該凹穴内へ進入した状態でモルタルを硬化させて該目地を該外層の端面に固定することによっても適切に解決できる。この場合は、該凹穴内で硬化したモルタルが該目地を固定するので外層との接合状態はより一層強固になる。
【0011】
さらに、上記環状の熱膨張性目地の凹穴に代えて目地の表裏を貫通する透孔を形成し、射出されるモルタルの一部を該透孔を介して該目地の表面へ滲出させた状態で硬化することにより該目地を該外層の端面に固定することによっても上記の課題を解決でき、この場合は透孔内で硬化した柱状のモルタルが該目地を係止するので、外層と目地の接合固定状態はより一層向上する。
【0012】
該環状の熱膨張性目地の周縁に切り欠き透孔を形成し、射出されるモルタルの一部を該切り欠き透孔を介して該目地の表面へ滲出させた状態で硬化することにより該目地を該外層の端面に固定することでも目地と外層の接合固定状態は向上する。
【0013】
さらに、該環状の熱膨張性目地がモルタルの外層の端面と接する裏面に環状の凹溝を形成し、射出されるモルタルの一部が該凹溝内へ進入した状態でモルタルを硬化させることで該目地を該外層の端面に固定することでも目地と外層の接合状態を向上させ得る。
【0014】
該環状の凹溝を構成する外側の壁面を、凹溝の開口部を広げるように凹溝の外側へ傾斜した斜面に形成し、該凹溝を構成する内側の壁面を、凹溝の開口部を狭めるように凹溝の内側へ傾斜したオーバーハング状の斜面に形成することで、射出されたモルタルが凹溝の内部へ進入しやすく且つモルタルの硬化後はオーバーハングの斜面に係合して目地が脱落しにくくなる。
【0015】
上記した各種の構成の熱膨張性目地を使用して射出成型する場合、射出成型金型が該目地と接触する部分の少なくとも一部、可能ならば全部を非加熱状態とすることで、熱の影響で変形しやすい熱膨張性目地の変形を防止し、射出されたモルタルとの密着性の良い熱膨張性目地付の耐火二層管継手を製造できる。
【0016】
また、該熱膨張性目地の環状穴を、該合成樹脂製管継手の端部寄りの外側では該継手の外径にほぼ等しく形成するとともに該継手の中間部寄りの内側では径を拡大させたテーパー穴に形成し、合成樹脂製管継手の周面と該環状穴との間にモルタル進入空間を設けることで、モルタルと目地との接合面積が広がり、目地と外層の接合固定状態が一層向上して適切に上記課題を解決でき、テーパー穴とすることにより該目地を合成樹脂製管継手の端部に嵌着する作業が容易に行える。
【0017】
該熱膨張性目地としてエポキシ樹脂を含有したものを使用し、モルタルに普通ポルトランドセメントを含有したものを使用し、好ましくは該熱膨張性目地のエポキシ樹脂の組成分を35±5質量%、モルタルの普通ポルトランドセメントの組成分を45±10質量%とすることで目地と外層の接合状態が強固になる。該熱膨張性の目地の裏面に形成した凹穴や、該熱膨張性目地の表裏を貫通して形成した透孔、熱膨張性目地の周縁に形成した切り欠き透孔、或いは該裏面に形成した環状の凹溝には射出されたモルタルが進入して硬化する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、加熱された射出成型の金型内に、モルタルの外層の厚さとほぼ等しい幅の環状の熱膨張性目地を端部に嵌着した合成樹脂製管継手を予めセットし、モルタルの射出成型を行って外層の形成と同時に該目地を外層の端面に取付け、これを金型より取り出してモルタルを硬化させるが、該射出成型金型が該熱膨張性目地と接触する部分の少なくとも一部を非加熱状態とするので、該熱膨張性目地を変形させることなく外層の端面に固定でき、耐火二層管継手の配管接続端部に熱膨張性目地を貼り付ける作業が要らず、目地の変形がないからモルタルの外層の端面の全面に目地をきれいに接合させて取り付けできるので十分な接着力が得られ、モルタル厚さが増加することもないから軽量で丈夫な外観の良い耐火二層管継手が得られる。また、配管施工後には、熱膨張性目地の厚みが配管接続部に縞状に現れるから、外部から目地のセット状況をチェックしやすくなる。
【0019】
該環状の熱膨張性目地がモルタルの外層の端面と接する裏面に、複数の凹穴を間隔を存して形成し、射出されるモルタルの一部が該凹穴内へ進入した状態でモルタルを硬化させることで、該目地は凹穴に進入したモルタルで該外層と接合状態が向上し、上記の効果に加えて脱落しにくい強固な目地固定を行えるという効果をもたらす。
【0020】
また、該環状の熱膨張性目地に表裏を貫通する透孔を形成し、射出されるモルタルの一部を該透孔を介して該目地の表面へ滲出させた状態で硬化することで、透孔内の柱状のモルタルにより該目地は該外層の端面に強固に固定され、目地を貼り付ける作業が要らず、軽量で丈夫な耐火二層管継手が得られる。
【0021】
更に、環状の熱膨張性目地の周縁に切り欠き透孔を形成し、射出される常温程度のモルタルの一部を該切り欠き透孔を介して該目地の表面へ滲出させた状態で硬化することで、切り欠き透孔内の柱状のモルタルにより前記の場合と同様に該目地が該外層の端面に強固に固定され、前記の場合と同等の効果が得られる。
【0022】
熱膨張性目地の裏面に環状の凹溝を形成し、射出されるモルタルを凹溝内に進入させて硬化させたものは、凹溝内を埋めた環状のモルタルにより目地が係着されるので、外層に強固に目地を固定でき、該凹溝の壁面を凹溝の外側に傾斜した斜面と、凹溝の内側へ傾斜したオーバーハング状の斜面で構成したものは、モルタルの進入が容易で凹溝内にムラなくモルタルが廻り、その硬化後にはオーバーハング部によりモルタルと目地が係合するので一層目地を強固に固定できる。
【0023】
熱膨張性目地に凹穴や透孔、切り欠き透孔、凹溝を形成したものを使用するときでも、射出成型金型が目地と接触する部分を非加熱状態にすることで、目地の変形を防止できるからより一層強固に目地を取り付けできる。
【0024】
該熱膨張性目地の環状穴を、該合成樹脂製管継手の端部寄りの外側では該継手の外径にほぼ等しく形成するとともに該継手の中間部寄りの内側では径を拡大させたテーパー穴に形成しておくことで、合成樹脂製管継手の端部に該目地を嵌着する作業が容易になり、嵌着したとき合成樹脂製管継手の周面と該環状穴との間にモルタル進入空間が形成され、モルタルが該空間に進入して硬化すると該目地と外層の接合が一層強固になる。勿論、目地を貼り付ける作業が要らず、軽量で丈夫な耐火二層管継手が得られる効果もある。
【0025】
該熱膨張性目地にエポキシ樹脂を含有したものを使用し、モルタルに普通ポルトランドセメントを含有したものを使用すると、該外層と該目地とのなじみがよくなって両者の接合が強固になり、熱膨張性目地のエポキシ樹脂の組成分を35±5質量%とし、モルタルの普通ポルトランドセメントの組成分を45±10質量%とすると、大きな接合状態が得られ、目地を貼り付ける作業が要らず、軽量で丈夫な耐火二層管継手が得られる。そして、該熱膨張性の目地の裏面に形成した凹穴や、該熱膨張性目地の表裏を貫通して形成した透孔、熱膨張性目地の周縁に形成した切り欠き透孔、或いは該裏面に形成した環状の凹溝には、射出されたモルタルが進入するので本発明の方法を適切に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態を示す截断側面図
【図2】図1に示した熱膨張性目地の正面図
【図3】図2の3−3線部分の拡大断面図
【図4】射出成型金型にセットする状態の合成樹脂製管継手の斜視図
【図5】本発明の耐火二層管継手の製作状態の截断側面図
【図6】熱膨張性目地の変形例の正面図
【図7】図6の7−7線部分の拡大断面図
【図8】熱膨張性目地の他の変形例の正面図
【図9】図8の9−9線部分の拡大断面図
【図10】熱膨張性目地の更に他の変形例の正面図
【図11】熱膨張性目地の環状穴をテーパー穴に形成した実施例の正面図
【図12】図11の12−12線部分の拡大断面図
【図13】図11に示した熱膨張性目地を金型にセットした製作状態の截断側面図
【図14】熱膨張性目地の裏面に凹溝を形成した実施例の裏面図
【図15】図14の15−15線部分の断面図
【図16】製造された耐火二層管継手の拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態を図面に基づき説明すると、図1はエルボ型の耐火二層管継手の製造に適用した場合の実施例で、符号1は直管状の耐火二層管2を配管接続した耐火二層管継手、符号3は耐火二層管継手1の端部に設けた環状の一様な厚さの熱膨張性目地を示す。この耐火二層管継手1は、耐火二層管2の端部を受け入れるように拡大した配管接続用の端部4、4を両端に有する90°湾曲形の硬質塩化ビニールからなる合成樹脂製管継手5と、その外周を被覆する射出成型により形成されたモルタルからなる外層6とで構成される。また、耐火二層管2は、硬質塩化ビニールからなる合成樹脂製の内管7とその外周を覆うモルタル製の外管8とで構成される。なお、モルタルを射出成型する場合、金型の温度を約60℃以上、好ましくは90℃程度にヒーター等により加熱しておかないと、金型の内面にモルタルが付着し、金型を分解して製品を取り出すときにモルタルの外層6が壊れ、きれいな所定形状の外層6を形成できない。
【0028】
該熱膨張性目地3は、約200℃で熱膨張を開始し、4〜10倍程度に膨張して耐火二層管継手1と耐火二層管2の接続部の隙間を塞ぐもので、火災などの際に隙間から波及する熱で内部の合成樹脂製管継手5や内管7が延焼することを防止し、その結果、階上の室や隣室への延焼が防止される。
【0029】
この熱膨張性目地3は、モルタルの外層6を合成樹脂製管継手5の外周に射出成型するときに同時に外観がきれいで十分な接着力を持って取り付けされることが望ましく、本発明では、図2および図3に示したような合成樹脂製管継手5の端部4の外径に相当する環状穴9を有する熱膨張性目地3を、図4に見られるように合成樹脂製管継手5の端部4、4に嵌着し、まず、これを例えば90℃に加熱された射出成型金型13の内部にセットする(図5)。そして合成樹脂製管継手5と金型13の間に存する外層6の厚さ分の空間へモルタル注入口15から常温程度のモルタル17を射出し、空間の隅々までモルタルを充填するが、熱膨張性目地3は熱により変形しやすく前記した不都合をもたらすから、該金型13が該熱膨張性目地3と接触する閉塞蓋の部分13aを非加熱状態としてその変形を防止するようにした。そしてモルタル17が充填されたところで金型13を分解すると、合成樹脂製管継手5の外周にモルタルの外層6が形成され、且つ外層6の端面に熱膨張性目地3が取り付いた状態で取り出され、この外層6を養生硬化させると、その端面に該目地3が固定された状態になり、前記の困難や面倒を伴わずに熱膨張性目地付きの耐火二層管継手1が得られる。この非加熱状態を得るための手段として、実施例では金型13を構成する閉塞蓋の部分13aをモルタル充填時以前には常温に放置して非加熱状態としておくようにしたが、強制的に常温程度に冷却するようにしてもよい。金型をこうした非加熱状態とすることで、熱膨張性目地3の変形が阻止され、その結果、外層6の端面全体に該目地3の表面が接合し、モルタルが硬化したとき該目地3が強く端面と接合するようになる。該目地3と接触する金型13の部分全部を非加熱状態とするようにしてもよい。なお、図示の金型13は、紙面と水平方向の合わせ面を有する2分割型のもので構成され、分解時あるいは組立時は、金型の一方が紙面に対して垂直方向に移動し、閉塞蓋の部分13aは紙面に対して水平方向に移動するようにした。モルタルの注入時間は標準的な製品では2〜3秒程度で、その前後の金型の組み立て分解時間を含めても、熱膨張性目地3が金型13、13aと接触する時間は5秒程度である。
【0030】
該熱膨張性目地3には、熱膨張性黒鉛(グラファイト系)6±3質量%、無機充填材59±5質量%、エポキシ樹脂35±5質量%からなる目地(目地A)や、熱膨張性黒鉛(グラファイト系)13±5質量%、水酸化アルミニウム33±5質量%、エチレンプロピレンゴム33±5質量%、プロセスオイル等21±5質量%からなる目地(目地B)が使用される。これらの目地の色は、黒鉛が混入されているため暗灰色である。また、モルタル17には、普通ポルトランドセメント45±10質量%、無機質細骨材・無機質混和材50±10質量%、有機質繊維5±1質量%からなる一般的なモルタルが使用される。モルタルの射出圧は90kg/cmとした。
【0031】
外層6と目地Aの付着固定状態を調べるため、端部4の外径が83mmのエルボ型の合成樹脂製管継手5の両端部4に、上記の目地Aを嵌着し、これを非加熱部分13aと90℃に加熱した射出成型金型13の内部にセットして常温のモルタルをモルタル注入口15から射出し、厚さ10mmの上記組成のモルタルからなる外層6を合成樹脂製管継手5の外周に形成した。上記目地Aの厚さは4mm、外径は103mm、環状穴9の径は82.8mmである。金型13を解体してモルタルが未硬化で外層6の端面に該目地Aが付着取付いた半製品の耐火二層管継手5を取り出し、24時間養生してモルタルを硬化させ、耐火二層管継手1を得た。目地Aにはねじれや波を打つような歪みはなく外層の端面にずれることなく接合していた。そしてこの目地Aの剥がれ試験を行ったところ、4kg/cmの荷重まで剥離しなかった。この剥離荷重は、耐火二層管継手5が製造されてから配管施工に使用されるまで、通常の状態では目地に加わることのない荷重であり、配管施工までの間に目地は脱落することがないと判断される。
【0032】
該熱膨張性目地3に、図6および図7に示したように、外層6の端面と接する裏面10に凹穴18を適当な間隔を存して複数個形成してもよく、この形状の目地の場合、合成樹脂製管継手5の端部に嵌着して金型13内にセットし、外層6の形成のためモルタル17を射出すると、モルタルの一部が該凹穴18の内部へ進入した状態の耐火二層管継手1が得られる。これを金型13から取り出しても目地3には変形がなく、凹穴18内で硬化したモルタルにより端面と目地3との接合固定性が向上する。
【0033】
深さ2.5mmの凹穴18を厚さ4mmの上記目地Bに形成して前記目地Aの場合と同様に射出成型により耐火二層管継手1を製作し、その剥離荷重を測定したところ、4kg/cmまで剥離しなかった。該目地Bの寸法は前記目地Aと同一で、合成樹脂製管継手5の寸法も前記目地Aの場合と同一とした。この剥離荷重は、前記したように耐火二層管継手5が製造されてから配管施工に使用されるまで、通常の状態では目地に加わることのない荷重であり、配管施工までの間に目地は脱落することがないと判断できる。
【0034】
更に、上記目地Bからなる環状の熱膨張性目地3を、図8および図9に示すように、目地の表裏を貫通した透孔12を形成したものに変更し、この目地3を合成樹脂製管継手5の端部4に嵌着した状態で射出成型金型13にセットしたのちモルタルの外層6を射出成形した。合成樹脂製管継手5および目地3の寸法、モルタルの組成および射出条件は、図5の実施例と同様である。射出されたモルタルは、目地の裏面10から表面11へ該透孔12を介して滲出し、目地3の変形もなく、金型13から取り出してモルタルを硬化させると、透孔12内で硬化したモルタル柱により外層6の端面にしっかりと固定された。この目地3の剥離荷重は、6kg/cmで、外層6から目地の脱落を十分に防止できる強度であった。
【0035】
また、上記目地Bからなる環状の熱膨張性目地3を、図10に示したような目地の周縁に切り欠き透孔19を形成したものに変更し、この目地3を前記の場合と同様に合成樹脂製管継手5の端部4に嵌着した状態で射出成形金型13にセットし、モルタルの外層6を射出成型した。合成樹脂製管継手5および目地3の寸法、モルタルの組成および射出条件は、図5の実施例と同様である。射出されたモルタルは、切り欠き透孔19を介して目地の裏面10から表面11へ滲出し、目地3の変形もなく、これを金型13から取り出してモルタルを硬化させると、切り欠き透孔19内で硬化したモルタル柱により外層6の端面にしっかりと固定された。この目地3の剥離荷重は、6kg/cmであった。
【0036】
外層6に対する熱膨張性目地3の固定をより強固にするため、図11および図12に示すように、目地3の環状穴9の内径を、該合成樹脂製管継手5の端部4に対応する外側9aでは該端部4の外径Dにほぼ等しく形成するとともに該継手5の内方に対応する内側9bではD+αに拡大させてテーパー穴に形成した。この環状穴9を合成樹脂製管継手5の端部4に嵌めた状態で図13に示すように射出成形機の分割式の金型13内にセットすると、合成樹脂製管継手5の周面と環状穴9との間に楔形のモルタル進入空間16が形成される。そして、金型13のモルタル注入口15からモルタル17を圧入したとき、その一部はこのモルタル進入空間16へも進入し、金型13から脱型してモルタル17を乾燥硬化させると、熱膨張性目地3は外層6の端面のモルタルのみならずモルタル進入空間16に進入したモルタルとも密に当接した状態で硬化するため、目地3は一層強固に固定される。この実施例に上記の目地Bを使用して図5の場合と同条件でモルタルを注入した場合、目地3の変形もなく、目地3の外層6からの剥離荷重は、6.5kg/cmであった。
【0037】
上記目地Bからなる環状の熱膨張性目地3を、図14および図15に示したような目地の裏面10に環状の凹溝20を形成したものに変更した。この凹溝20は、その外側の壁面を凹溝の開口部を広げるように凹溝の外側へ傾斜した斜面21に形成し、該凹溝の内側の壁面を凹溝の開口部を狭めるように凹溝の内側へ傾斜したオーバーハング状の斜面22に形成した。環状穴9は図11の場合と同様のテーパー穴である。この目地3を前記の場合と同様に合成樹脂製管継手5の端部4に嵌着した状態で射出成形金型13にセットし、モルタルの外層6を射出成型した。合成樹脂製管継手5および目地3の寸法、モルタルの組成および射出条件は、図5の実施例と同様である。得られた継手1は、短時間の射出時間でも図16に見られるようにモルタルが凹溝20の内部へ充分に進入しており、剥離加重は7kg/cmもあり、簡単には目地3が外れることがなかった。
【0038】
なお、上記熱膨張性目地3に凹穴18や貫通透孔12、切り欠き透孔19、凹溝20を形成したものを使用して耐火二層管継手1を製造する場合、目地の肉厚が大きければ目地と接触する金型部分を非加熱状態としないで射出成型することも可能であるが、目地3と外層6の接合性は非加熱状態とした場合よりも劣るようになる。
【符号の説明】
【0039】
1 耐火二層管継手、2 耐火二層管、3 熱膨張性目地、4 端部、5 合成樹脂製管継手、6 外層、9 環状穴、9a 外側、9b 内側、10 裏面、11 表面、12 透孔、13 射出成型金型、13a 部分、16 モルタル進入空間、17 モルタル、18 凹穴、19 切り欠き透孔、20 凹溝、21 斜面、22 オーバーハング斜面、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モルタルの外層が形成される合成樹脂製管継手の端部の外周に、該外層の厚さとほぼ等しい幅を有する環状の熱膨張性目地を嵌着し、これを加熱された射出成型金型内にセットし、射出されるモルタルにより該合成樹脂製管継手の周囲に該熱膨張性目地と当接した該外層を形成したのち金型から取り出してモルタルを硬化させることにより該外層の端面に熱膨張性目地が付着した耐火二層管継手を製造する方法において、該環状の熱膨張性目地がモルタルの外層の端面と接する裏面に、複数の凹穴を間隔を存して形成し、射出されるモルタルの一部が該凹穴内へ進入した状態でモルタルを硬化させることで該目地を該外層の端面に固定したことを特徴とする熱膨張性目地付耐火二層管継手の製造方法。
【請求項2】
モルタルの外層が形成される合成樹脂製管継手の端部の外周に、該外層の厚さとほぼ等しい幅を有する環状の熱膨張性目地を嵌着し、これを加熱された射出成型金型内にセットし、射出されるモルタルにより該合成樹脂製管継手の周囲に該熱膨張性目地と当接した該外層を形成したのち金型から取り出してモルタルを硬化させることにより該外層の端面に熱膨張性目地が付着した耐火二層管継手を製造する方法において、該環状の熱膨張性目地に表裏を貫通する透孔を形成し、射出されるモルタルの一部を該透孔を介して該目地の表面へ滲出させた状態で硬化することにより該目地を該外層の端面に固定したことを特徴とする熱膨張性目地付耐火二層管継手の製造方法。
【請求項3】
モルタルの外層が形成される合成樹脂製管継手の端部の外周に、該外層の厚さとほぼ等しい幅を有する環状の熱膨張性目地を嵌着し、これを加熱された射出成型金型内にセットし、射出されるモルタルにより該合成樹脂製管継手の周囲に該熱膨張性目地と当接した該外層を形成したのち金型から取り出してモルタルを硬化させることにより該外層の端面に熱膨張性目地が付着した耐火二層管継手を製造する方法において、該環状の熱膨張性目地の周縁に切り欠き透孔を形成し、射出されるモルタルの一部を該切り欠き透孔を介して該目地の表面へ滲出させた状態で硬化することにより該目地を該外層の端面に固定したことを特徴とする熱膨張性目地付耐火二層管継手の製造方法。
【請求項4】
モルタルの外層が形成される合成樹脂製管継手の端部の外周に、該外層の厚さとほぼ等しい幅を有する環状の熱膨張性目地を嵌着し、これを加熱された射出成型金型内にセットし、射出されるモルタルにより該合成樹脂製管継手の周囲に該熱膨張性目地と当接した該外層を形成したのち金型から取り出してモルタルを硬化させることにより該外層の端面に熱膨張性目地が付着した耐火二層管継手を製造する方法において、該環状の熱膨張性目地がモルタルの外層の端面と接する裏面に環状の凹溝を形成し、射出されるモルタルの一部が該凹溝内へ進入した状態でモルタルを硬化させることで該目地を該外層の端面に固定したことを特徴とする熱膨張性目地付耐火二層管継手の製造方法。
【請求項5】
上記環状の凹溝の外側の壁面を凹溝の開口部を広げるように凹溝の外側へ傾斜した斜面に形成し、該凹溝の内側の壁面を凹溝の開口部を狭めるように凹溝の内側へ傾斜したオーバーハング状の斜面に形成したことを特徴とする請求項4に記載の熱膨張性目地付耐火二層管継手の製造方法。
【請求項6】
上記熱膨張性目地の環状穴を、該合成樹脂製管継手の端部寄りの外側では該継手の外径にほぼ等しく形成するとともに該継手の中間部寄りの内側では径を拡大させたテーパー穴に形成し、合成樹脂製管継手の周面と該環状穴との間にモルタル進入空間を設けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱膨張性目地付耐火二層管継手の製造方法。
【請求項7】
射出成型により合成樹脂製管継手の周囲に形成されたモルタルの外層の端面に取り付けされる耐火二層管継手用の環状の熱膨張性目地において、該モルタルの外層の端面と接する該熱膨張性目地の裏面に、射出されたモルタルが進入して硬化することにより該熱膨張性目地を該外層の端面に固定するための凹穴を間隔を存して複数形成したことを特徴とする耐火二層管継手用熱膨張性目地。
【請求項8】
射出成型により合成樹脂製管継手の周囲に形成されたモルタルの外層の端面に取り付けされる耐火二層管継手用の環状の熱膨張性目地において、該環状の熱膨張性目地の表裏を貫通して形成した透孔であって、射出されたモルタルの一部が該透孔を介して該目地の表面へ滲出した状態で硬化することにより該目地を該外層の端面に固定するための透孔を有することを特徴とする耐火二層管継手用熱膨張性目地。
【請求項9】
射出成型により合成樹脂製管継手の周囲に形成されたモルタルの外層の端面に取り付けされる耐火二層管継手用の環状の熱膨張性目地において、該環状の熱膨張性目地の周縁に形成した切り欠き透孔であって、射出されたモルタルの一部が該切り欠き透孔を介して該目地の表面へ滲出した状態で硬化することにより該目地を該外層の端面に固定するための切り欠き透孔を有することを特徴とする耐火二層管継手用熱膨張性目地。
【請求項10】
射出成型により合成樹脂製管継手の周囲に形成されたモルタルの外層の端面に取り付けされる耐火二層管継手用の環状の熱膨張性目地において、該モルタルの外層の端面と接する該熱膨張性目地の裏面に、射出されたモルタルの一部が進入した状態でモルタルが硬化することにより該目地を該外層の端面に固定するための環状の凹溝を形成したことを特徴とする耐火二層管継手用熱膨張性目地。
【請求項11】
上記環状の凹溝の外側の壁面を凹溝の開口部を広げるように凹溝の外側へ傾斜した斜面に形成し、該凹溝の内側の壁面を凹溝の開口部を狭めるように凹溝の内側へ傾斜したオーバーハング状の斜面に形成したことを特徴とする請求項10に記載の耐火二層管継手用熱膨張性目地。
【請求項12】
上記熱膨張性目地の環状穴を、該合成樹脂製管継手の端部寄りの外側では該継手の外径にほぼ等しく形成するとともに該継手の中間部寄りの内側では径を拡大させたテーパー穴に形成し、合成樹脂製管継手の周面と該環状穴との間にモルタル進入空間を設けたことを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項に記載の耐火二層管継手用熱膨張性目地。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−174621(P2011−174621A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131478(P2011−131478)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【分割の表示】特願2007−183700(P2007−183700)の分割
【原出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(595025224)フネンアクロス株式会社 (23)
【Fターム(参考)】