説明

熱膨張耐火性組成物

【課題】建築物、鉄鋼構造物、その他、難燃性、耐熱性を必要とする物品を被覆する、または、接合部に挿入することにより、高温において膨張して、該要保護部を被覆または保護する熱膨張耐火性組成物の開発。
【解決手段】セメンおよびセメント混和用樹脂組成物からなるポリマーセメントと、熱膨張性黒鉛とからなり、前記セメント混和用樹脂組成物として、天然ゴムラテックス、熱可塑性樹脂エマルジョン、熱硬化性樹脂エマルジョンおよび再乳化型粉末樹脂の群から選ばれたものを用いて、熱膨張耐火性組成物を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物、鉄鋼構造物、その他難燃性、耐熱性を必要とする物品を被覆する、または、接合部に挿入することにより、高温において膨張して、要保護部を被覆または保護するのに好適な熱膨張耐火性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電化製品、自動車部品、建築材料、日常用品等に、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等の重合体が広く使用されているが、これらの製品は、安全性の観点から、高度な難燃性が要求される場合がある。これらの重合体に難燃性を付与する一つ方法として、建築材料では、その外部表面を不燃性材料で被覆することが行われている。この被覆材が一体でなく、接続が必要な場合には、その接続部を不燃性とするために、耐熱性密封部材で接続部を保護する必要が生じてくる。かかる場合に、熱膨張性黒鉛を配合した耐熱性密封部材を用いて接続部を保護することが行われている。
【0003】
市場に流通している熱膨張性黒鉛は、熱膨張開始温度が200℃前後のものが多く、これを配合した合成ゴム、合成樹脂の加工温度が高温度を必要とする場合には、200℃前後から硫酸ガスの放出を開始し、混練機、成形機等の腐食を惹起する。このため、従来の熱膨張性黒鉛は、融点が200℃以下のポリエチレン、ポリプロピレン、常温で液状のポリウレタン等を配合対象とし、そのままでは、高融点のポリブチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂等には適用することができなかった。
【0004】
これに対して、高融点の重合体に配合する熱膨張性黒鉛として、熱膨張開始温度を高めるため、いくつかの処理方法の提案がなされてきた。
例えば、硫酸および酸化剤を使用して黒鉛と反応させ、燐酸を添加した後、洗浄、乾燥して熱膨張開始温度を250℃以上とする熱膨張性黒鉛が提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、反応溶液に燐酸を添加しなくても、黒鉛を硫酸および酸化剤の混合物中で処理した後、アルカリ水溶液または水で洗浄したものに、固体中和剤を混合することによって、熱膨張開始温度が270℃以上、1000℃の熱膨張度が70〜99cc/gの熱膨張性黒鉛とする提案がある(特許文献2)。
【0006】
さらに、熱膨張性黒鉛の製造方法として、黒鉛を硫酸および酸化剤の混合物中で処理した後、廃液の処理が必要となるアルカリ水溶液または水による洗浄を行うことなく、固体中和剤を混合することによって、熱膨張開始温度が300℃以上、1000℃の熱膨張度が50〜150cc/gの熱膨張性黒鉛を製造できるという提案がなされている(特許文献3)。
以上のように、熱膨張性黒鉛は、熱膨張開始温度を高めるためには、面倒な処理を必要とし、コストアップの原因となっていた。
【0007】
一方、熱膨張性黒鉛を配合した樹脂組成物は、通常の樹脂成形品に用いられている加工方法、例えば、射出成形や押し出し成形等により、容易に耐火膨張シート等の成形品に加工される。
しかしながら、上述した未焼成の熱膨張性黒鉛は、約200℃で膨張を開始するため、前記熱可塑性樹脂との混練中に膨張する可能性がある。
これらの難燃性樹脂組成物は、バインダーとして使用する場合には、コンクリート構造物等に対する接着性が低いのみならず、施工性にも劣り、十分な耐火性を発揮することができなかった。さらに、湿式または半乾式により施工した場合は、硬化するまで長時間必要であり、作業効率に劣るものであった。その上、最大の問題は、バインダー自体が、ほとんどの場合、可燃性の物質であるため、不燃性を付与するにはまだ不十分であるという点であった。
【0008】
ところで、セメントに多量の樹脂を配合したポリマーセメントがある。セメント混和用樹脂組成物の種類とセメント比を選択すれば、それ自体良好な難燃性を有している。これらは、極めて高強度、高靱性のものがあり、大きな引張ひずみ能力を実現し、飛躍的に靭性を向上させるものが多数提案されている。ポリマーセメントは、耐熱性、耐衝撃性、耐摩耗性がある上、柔軟であるという利点を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−330108号公報
【特許文献2】特開2006−69809号公報
【特許文献3】特開2007−45676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、建築物、鉄鋼構造物、その他難燃性、耐火性を必要とするものの表面を被覆する、または、接続箇所に挿入することにより、耐火性を必要とする箇所を保護する熱膨張耐火性組成物であって、取り扱いや施工が容易であり、火災等に際し、高温に曝されることにより、熱膨張性黒鉛が膨張し、前記接続部を覆い、保護する耐熱性密封部材として有効な熱膨張耐火性組成物を提供する。
これらは、コンクリート、鉄鋼、セメント、石材、鋼材、タイル等の各種材料によく接着する上、ポリマーセメントと高温時において膨張する熱膨張性黒鉛との混合は、常温で簡単であるのみならず、プレミックスは、水を加えるのみでスラリー状態として取り扱うことができる上、注入、金型等を用いた成形も可能であり、極めて加工性に優れた素材である。また、そのシート状硬化体は、打ち抜き加工等により、目地リング等に容易に加工することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
[1]セメントおよびセメント混和用樹脂組成物からなるポリマーセメントと、熱膨張性黒鉛とからなることを特徴とする熱膨張耐火性組成物、
[2]前記セメント混和用樹脂組成物が、天然ゴムラテックス、熱可塑性樹脂エマルジョンおよび熱硬化性樹脂エマルジョンの群から選ばれたものであることを特徴とする上記[1]に記載の熱膨張耐火性組成物、
[3]前記熱可塑性樹脂エマルジョンが、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル系樹脂、スチレン−アクリル酸エステル系樹脂およびポリアクリル酸エステル系樹脂の群から選ばれたものであることを特徴とする上記[2]に記載の熱膨張耐火性組成物、
【0012】
[4]前記セメント混和用樹脂組成物が、再乳化型粉末樹脂であることを特徴とする上記[1]記載の熱膨張耐火性組成物、
【0013】
[5]耐熱性密封部材として用いられることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の熱膨張耐火性組成物、
[6]前記耐熱性密封部材が、耐火二層管の外管の接合部の目地リングであることを特徴とする上記[4]に記載の熱膨張耐火性組成物、
【0014】
[7]防火区画の空隙部分の充填閉塞に用いられることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の熱膨張耐火性組成物、
を開発することにより、上記の課題を解決した。
【発明の効果】
【0015】
熱膨張性黒鉛を用いる熱膨張耐火性組成物は、通常耐火性組成物のバインダーとして使用する合成樹脂、合成ゴムの加工温度において熱膨張性黒鉛が膨張しないことが必要なため、その種類を選択することが必要とされていたが、本発明の熱膨張耐火性組成物は、バインダーとしてポリマーセメントを使用するため、常温成形が可能であり、熱膨張性黒鉛の品位(熱膨張開始温度が高いことを必要としない。)により制限されない。
さらに、ポリマーセメントは、それ自体、合成樹脂等に比して優れた耐熱性を有するが、熱膨張性黒鉛を配合することにより、さらに耐熱性が向上する。
したがって、熱膨張性黒鉛を配合したポリマーセメントは、耐熱性がある上、柔軟であり、施工性、加工性等の面において利点を備えている。
本発明の熱膨張耐火性組成物は、コンクリート、セメント、石材、鋼材、タイル等の各種材料によく接着するため、成形して、目地リングや、防火区画の空隙充填用モルタル等において、優れた耐火性組成物として利用することができる。特に、高温に曝されても人体に有害なハロゲン化合物を含まないため、有害ガスはほとんど発生することはない。
また、本発明の熱膨張耐火性組成物を成形した耐熱性密封部材は、製造が容易である上、熱膨張性のある密封部材として使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、より詳細に説明する。
本発明の熱膨張耐火性組成物は、硬化成形体として使用するだけでなく、現場で調製してもよく、あるいはまた、プレミックスの形で使用することもできる。
本発明に用いるポリマーセメントは、水硬性セメントに、かなり多量のセメント混和用樹脂組成物が混和されたものであり、モルタルがフレッシュであるとき、また、硬化したときにも、各種の効果を有するセメントである。具体的には、長期の養生を行わなくても、強度発現に優れ、特に、通常のセメントと異なり、引張強度、曲げ強度が大きく、伸び能力も増大する。該セメントは、水和が進行するに従い、長期強度の増進が著しい。得られたポリマーセメントは、ワーカビリティが良好であり、スランプやフローを得るのに要する水セメント比が低い。また、配合したセメント混和用樹脂組成物は、硬化した後に、耐衝撃性、耐摩耗性に優れており、強度の発現と乾燥収縮の低減に寄与する。
【0017】
セメントは、硬化する際に、セメント混和用樹脂組成物中の水分と反応、吸収して硬化する。得られたポリマーセメントは、セメント混和用樹脂組成物を含有しているが、耐熱性がある上、柔軟であるという利点を有しており、コンクリート、セメント、石材、鋼材、タイル等の各種材料に良好に接着する。
ポリマーセメントは、セメント混和用樹脂組成物の種類とセメントへの配合比を選択すれば、それ自体、良好な難燃性、不燃性を保持することができるが、熱膨張性黒鉛を配合することにより、さらに耐熱性が向上する。
【0018】
本発明で使用する水硬性セメントは、水の存在下で水和反応によって硬化する無機系の粉体であり、具体的には、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等の各種のポルトランドセメント、フライアッシュ、シリカ質混合材、高炉スラグ等の混和材を配合したポルトランドセメント系の各種の混合セメント(例えば、フライアッシュセメント、シリカセメント、高炉セメント等)、アルミナセメント、各種の速硬性セメントを挙げることができる。施工後の硬化時間や本発明の効果の点を考慮すると、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント等の短期間での強度発現特性が優れているものが好ましい。
【0019】
本発明において使用するセメント混和用樹脂組成物は、各種の高分子を水系媒体中に分散させたものであり、本発明においては、特に限定はなく、公知のものを適宜使用することができる。
セメント混和用樹脂組成物は、得られる熱膨張耐火性組成物の柔軟性、成形性、保形性に大きく影響する。
【0020】
具体的には、本発明において使用するセメント混和用合成樹脂組成物としては、天然ゴムラテックス、熱可塑性樹脂エマルジョン、熱硬化性樹脂エマルジョンを用いることができる。
プレミックス用には、再乳化型粉末樹脂が好適であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ウレタン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等の熱可塑性合成樹脂;ウレタン樹脂、メラミン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型ポリエステル等の硬化性合成樹脂;ウレタン樹脂プレポリマー、エポキシ樹脂プレポリマー、メラミン樹脂プレポリマー、尿素樹脂プレポリマー、フェノール樹脂プレポリマー、ジアリルフタレートプレポリマー、アクリルオリゴマー、多価イソシアナート、メタクリルエステルモノマー、ジアリルフタレートモノマー等のプレポリマー;オリゴマー、モノマー等の合成樹脂前駆体等が挙げられる。
【0021】
本発明のセメント混和用樹脂組成物は、ゴム系の場合、水性ポリマーディスパージョンとして、天然(天然ゴム)、再生ゴムまたは合成ゴム(アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、メタクリル酸メチルブタジエンゴム)系ラテックス等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
セメント混和用樹脂組成物の混合方法は、特に限定されるものではないが、例えば、予め、セメントや水に分散しておいてから用いることが好ましい。
したがって、セメントと熱膨張性黒鉛から熱膨張耐火性組成物用のモルタルを調製する場合には、再乳化型粉末樹脂に代えて、水性ポリマーディスパージョンを用いることが可能である。この場合には、水性ポリマーディスパージョンは、建材用プレミックスモルタルに予め配合しておかずに、水を配合する際に、これと一緒に加えることが必要である。
【0023】
本発明において使用するポリマーセメントは、用途によって最適な配合が異なるが、通常、水硬性セメント等の粉体100重量部に対して、セメント混和用樹脂組成物は固形分換算で10〜70重量部が好ましく、10〜50重量部がより好ましい。10重量部未満では、本モルタルの跳ね返り防止や付着強度の改善が期待できない場合があり、一方、60重量部を超えて配合しても、さらなる効果の向上が期待できない場合がある。
本発明の熱膨張耐火性組成物に配合する水量は、使用する用途や目的によって変更することが必要である。
【0024】
熱膨張性黒鉛は、天然グラファイト、熱分解グラファイト等の粉末を、硫酸、硝酸等の無機酸と、濃硝酸、過マンガン酸塩等の強酸化剤とで処理したものであり、グラファイト層状構造を維持した結晶化合物である。これらは、200℃程度以上の温度に曝されると、100倍以上に熱膨張するものである。
なお、これらの天然グラファイト、熱分解グラファイト等の粉末は、脱酸処理に加えて、さらに、中和処理したタイプの他、各種の品種があるが、いずれも使用することができる。
前記熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜400メッシュ程度が好ましい。400メッシュより粒度が小さくなると、熱膨張耐火性組成物の柔軟性は大きくなるが、熱膨張性黒鉛の膨張度が小さくなり、得られる熱膨張性耐火性組成物が火災時に十分熱膨張しない場合があり、一方、20メッシュより粒度が大きくなると、膨張度は大きくなる反面、分散性が悪くなり、得られる熱膨張性耐火性組成物の弾性が低下する場合がある。
【0025】
熱膨張性黒鉛の含有量は、ポリマーセメントの構成、所望の膨張倍率等によって適宜設定することができるが、通常は、ポリマーセメント60重量部に対して5〜30重量部、好ましくは10〜25重量部の使用が良好である。熱膨張性黒鉛の含有量が10重量部より少ないと、得られた熱膨張耐火性組成物が火災時に十分熱膨張しない場合があり、一方、30重量部を超えると、熱膨張倍率は大きくなるものの、得られる熱膨張耐火性組成物の強度等の物性も低下する傾向がある。
【0026】
なお、本発明においては、必要に応じて、合成ゴム、合成樹脂等に添加する難燃化剤を併用することもできる。かかる難燃化剤としては、ハロゲン系、リン系、無機系等があるが、火災時等においても有害ガス(発ガン性物質等)発生のない、無機系の難燃化剤が好ましい。無機系難燃化剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、ホウ酸系化合物等があり、耐火性能から求められる温度と、熱膨張性黒鉛の膨張開始温度等から適宜選択すればよい。
【0027】
上記の熱膨張耐火性組成物は、使用に適した形状に成形することにより、耐熱性密封部材を製造することができる。例えば、熱膨張耐火性組成物をスラリーとして板状にのばし、硬化させることにより、耐熱性のある板状弾性体を製造することができる。これを目地リング等の必要な形状に打ち抜き、耐熱性密封部材として用いることもできる。また、バウムクーヘン状に成形した後に、輪切りにスライスしてもよい。さらに、スラリーを成形金型に圧入し、成形して、耐熱性密封部材としてもよい。
【0028】
用途としては、合成樹脂製の内管の外表面を耐火性および断熱性を有する外管で被覆して、それぞれ耐火二層管として構成した直管と継手からなり、前記直管の接合側端部の内管が前記継手の内管内に挿入された耐火二層管の接合部構造において、耐火二層管を接合した際に、前記耐火二層管継手の外管端部に設ける目地リング、建築物の防火区画(耐火構造の床、壁等)を貫通する空隙充填材等として利用できる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例により制限されるものではない。
[実施例1,2]
ポリマーセメントとして「セレタック(登録商標)G:セメントモルタル粉末とアクリル−EVA系エマルジョン(固形分濃度56%)」と、ノンハロゲン難燃材向け膨張性黒鉛(グレード:SYZR 801;三洋貿易株式会社)とからなる熱膨張耐火性組成物を十分均一になるように混合し、型枠にシート状に打設し、常温で4日間養生して、硬化したことを確認した。
該シートを10mm×10mmに切り出して、サンプルとした。該サンプルを150℃のオーブン中で加熱処理した後、目視と指触で評価した。結果を表1に示す。
【0030】
[比較例]
ポルトランドセメント、砂および水を表1に示す割合で混合し、実施例と同様にして、シート状硬化体とした後、10mm×10mmに切り出して、サンプルとした。該サンプルを実施例と同様に加熱処理した。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の熱膨張耐火性組成物は、コンクリート、鉄鋼、セメント、石材、鋼材、タイル等の各種材料によく接着する上、ポリマーセメントと、高温時において膨張する熱膨張性黒鉛との混合が、常温で簡単であるのみならず、そのプレミックスは、水を加えるのみでスラリー状態として取り扱える上、注入、金型等を用いての成形も可能である極めて加工性に優れた素材である。また、そのシート状硬化体は、打ち抜きなどにより目地リング等に容易に加工することができる。また、人体に有害なハロゲン化合物を含まないため、高温に曝されても有害ガスをほとんど発生することがない。
また、本発明の熱膨張耐火性組成物を成形した耐熱性密封部材は、製造が容易である上、熱膨張性のある密封部材として使用することができる。
したがって、本発明の熱膨張耐火性組成物は、建築物、鉄鋼構造物、その他、難燃性、耐熱性を必要とする物品を被覆あるいは接合部に挿入することにより、高温において膨張して、該要保護部を被覆または保護するための耐火性組成物、耐熱性密封部材として広く使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントおよびセメント混和用樹脂組成物からなるポリマーセメントと、熱膨張性黒鉛とからなることを特徴とする熱膨張耐火性組成物。
【請求項2】
前記セメント混和用樹脂組成物が、天然ゴムラテックス、熱可塑性樹脂エマルジョンおよび熱硬化性樹脂エマルジョンの群から選ばれたものであることを特徴とする請求項1記載の熱膨張耐火性組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂エマルジョンが、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル系樹脂、スチレン−アクリル酸エステル系樹脂およびポリアクリル酸エステル系樹脂の群から選ばれたものであることを特徴とする請求項2記載の熱膨張耐火性組成物。
【請求項4】
前記セメント混和用樹脂組成物が、再乳化型粉末樹脂であることを特徴とする請求項1記載の熱膨張耐火性組成物。
【請求項5】
耐熱性密封部材として用いられることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱膨張耐火性組成物。
【請求項6】
前記耐熱性密封部材が、耐火二層管の外管の接合部の目地リングであることを特徴とする請求項4記載の熱膨張耐火性組成物。
【請求項7】
防火区画の空隙部分の充填閉塞に用いられることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱膨張耐火性組成物。

【公開番号】特開2010−168440(P2010−168440A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10964(P2009−10964)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000187194)昭和電工建材株式会社 (36)
【Fターム(参考)】