説明

熱負荷冷却装置および熱負荷冷却装置用制御装置

【課題】様々な状態において冷却海水ポンプにおける余分な海水の取り込みを抑止して無駄な電力の消費を抑制しつつ、被冷却熱負荷の温度を一定に制御する熱負荷冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却海水ポンプ2と熱交換器9とを有し、熱負荷10の温度を一定に制御する熱負荷冷却装置1であって、さらにインバータ4と、温度調整弁12と、制御装置7と、温度センサー13とを有し、制御装置7は、温度センサー13によって計測された温度が目標温度となるように冷却海水ポンプ2の回転数を制御し、上限回転数まで上昇した場合は冷却海水ポンプ2の運転台数を1台増加し、最低回転数まで下降した場合は運転台数を1台減ずるよう制御し、運転台数が1台でありかつ回転数が最低回転数まで下降した場合は、最低回転数を維持するように制御するとともに温度センサー13によって計測された温度が目標温度となるように温度調整弁12の開度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱負荷を冷却するための冷却用清水を、冷却海水ポンプにて取り込んだ海水との間で熱交換させて循環させることによって熱負荷を冷却する技術に関し、特に、熱負荷に対する過冷却を防止して冷却海水ポンプの省電力化を可能とする熱負荷冷却装置および熱負荷冷却装置用制御装置に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶においては、エンジン等の熱負荷を冷却するために、熱交換器により海水と熱交換させて冷却した冷却用清水を熱負荷との間で循環させることで熱負荷の温度を一定に制御する冷却装置が利用される。このとき、一次側冷媒となる海水を取り込む冷却海水ポンプの諸要目は、海水の想定最高温度と、被冷却熱負荷の最大出力値により決定されている。
【0003】
このため、海水温度が想定最高温度よりも低い場合、もしくは被冷却熱負荷の出力が最大に満たない場合は、冷却海水ポンプを一定回転数で運転する限りにおいて、本来必要のない海水を取り込んで熱交換器に送り込む過冷却の状態となり、冷却海水ポンプを駆動する電動機の電力が無駄に消費されることになる。
【0004】
これに対して、熱負荷の状態に応じて冷却海水ポンプの運転を自動的に制御する技術として、例えば、特開2002−274493号公報(特許文献1)には、2速度運転可能な複数台の海水ポンプを備えた船舶の機関室内機器の冷却装置において、海水ポンプの運転台数および運転速度をパターン化して設定しておくと共に、清水側の温度調整弁の開度信号を使用して、清水クーラーを通して取り込む清水の量が上限値以上となったときは、1つ上の運転パターンに切り替え、下限値以下となったときは、1つ下の運転パターンに切り換えるようにして、運転パターンを自動的に制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−274493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来技術では、熱負荷の状態を、温度センサーによって開度が制御される清水側の温度調整弁の開度信号によって把握している。すなわち、熱負荷の状態によってまず清水側の温度調整弁の開度が制御され、清水クーラーを通して取り込む清水(冷水)と、清水クーラーを通す前の清水(温水)とをブレンドすることによって温度調整を行う。ここで、清水クーラーを通して取り込む冷水の量が上限・下限を超えた場合にはじめて海水ポンプの運転パターンを切り替えることになる。
【0007】
この場合、海水ポンプの運転パターンの範囲内では、清水クーラーを通して取り込んだ冷水の温度を、熱負荷を冷却した後の温水をブレンドすることによって目標温度に保つ制御となる。従って、海水ポンプでは余分な海水を取り込んでいることになり、無駄な電力が消費されることになる。また、海水ポンプの運転パターンが限定されるため、きめ細かい効率的な制御を行うことができないという課題がある。
【0008】
そこで本発明の目的は、海水温度が想定最高温度よりも低い場合や被冷却熱負荷の出力が最大に満たない場合など、様々な状態において冷却海水ポンプにおける余分な海水の取り込みを抑止して無駄な電力の消費を抑制しつつ、被冷却熱負荷の温度を一定に制御する熱負荷冷却装置および熱負荷冷却装置用制御装置を提供することにある。
【0009】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0011】
本発明の代表的な実施の形態による熱負荷冷却装置は、駆動電動機によって駆動される1台以上の冷却海水ポンプと、前記冷却海水ポンプにて取り込んだ海水と熱負荷を冷却するための冷却用清水とを熱交換する熱交換器とを有し、前記熱交換器にて冷却された前記冷却用清水を加圧ポンプによって前記熱負荷との間で循環させることによって前記熱負荷の温度を一定に制御する熱負荷冷却装置であって、以下の特徴を有するものである。
【0012】
すなわち、熱負荷冷却装置は、さらに、前記駆動電動機を介して前記冷却海水ポンプの回転数を制御するインバータと、前記冷却用清水が循環する清水系統において、前記熱交換器にて冷却された冷水系統の前記冷却用清水に、前記熱負荷を冷却した後の温水系統から分岐させた前記冷却用清水を開度に応じてブレンドして前記熱負荷への入口系統に通水することが可能な温度調整弁と、前記インバータを介した前記冷却海水ポンプの回転数の制御および前記温度調整弁の前記開度の制御を行う制御装置と、前記入口系統の前記冷却用清水の温度を計測して前記制御装置に送る温度センサーとを有する。
【0013】
また、前記制御装置は、前記温度センサーによって計測された温度が、前記入口系統の前記冷却用清水についての所定の目標温度となるように前記冷却海水ポンプの回転数を制御し、前記冷却海水ポンプの回転数が所定の上限回転数まで上昇した場合は、前記冷却海水ポンプの運転台数を1台増加し、前記冷却海水ポンプの回転数が所定の最低回転数まで下降した場合は、前記冷却海水ポンプの運転台数を1台減ずるよう制御し、運転中の前記冷却海水ポンプが1台であり、かつ前記冷却海水ポンプの回転数が前記最低回転数まで下降した場合は、前記冷却海水ポンプの回転数が前記最低回転数を維持するように制御するとともに、前記温度センサーによって計測された温度が前記目標温度となるように、前記温度調整弁の前記開度を制御することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の別の代表的な実施の形態による熱負荷冷却装置は、駆動電動機によって駆動される1台以上の冷却海水ポンプと、前記冷却海水ポンプにて取り込んだ海水と熱負荷を冷却するための冷却用清水とを熱交換する熱交換器とを有し、前記熱交換器にて冷却された前記冷却用清水を加圧ポンプによって前記熱負荷との間で循環させることによって前記熱負荷の温度を一定に制御する熱負荷冷却装置であって、以下の特徴を有するものである。
【0015】
すなわち、熱負荷冷却装置は、さらに、前記駆動電動機を介して前記冷却海水ポンプの回転数を制御するインバータと、前記冷却用清水が循環する清水系統において、前記熱交換器にて冷却された冷水系統の前記冷却用清水に、前記熱負荷を冷却した後の温水系統から分岐させた前記冷却用清水を開度に応じてブレンドして前記熱負荷への入口系統に通水することが可能な温度調整弁と、前記インバータを介した前記冷却海水ポンプの回転数の制御および前記温度調整弁の前記開度の制御を行う制御装置と、前記入口系統の前記冷却用清水の温度を計測して前記制御装置に送る第1の温度センサーと、前記冷水系統の前記冷却用清水の温度を計測して前記制御装置に送る第2の温度センサーとを有する。
【0016】
また、前記制御装置は、前記第2の温度センサーによって計測された温度が、前記入口系統の前記冷却用清水についての所定の第1の目標温度よりも所定の温度だけ低温である第2の目標温度となるように前記冷却海水ポンプの回転数を制御するとともに、前記第1の温度センサーによって計測された温度が前記第1の目標温度となるように、前記温度調整弁の前記開度を制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0018】
本発明の代表的な実施の形態によれば、被冷却熱負荷の状態に応じて冷却海水ポンプの運転台数および回転数をインバータにより制御し、また、冷却海水ポンプの運転台数および回転数が下限に達した場合に、冷却海水ポンプの最低回転数を維持しつつ、温度調整弁により清水系統において冷水に温水をブレンドして冷却用清水を目標温度に制御することで、海水温度が想定最高温度よりも低い場合や被冷却熱負荷の出力が最大に満たない場合など、様々な状態において冷却海水ポンプにおける余分な海水の取り込みを抑止して駆動する電動機の消費電力を効率よく低減しつつ、被冷却熱負荷の温度を一定に制御することが可能となる。
【0019】
また、本発明の別の代表的な実施の形態によれば、熱交換器の出口の清水の温度を目標温度よりも一定温度だけ過冷却となるように制御し、目標温度との差分は温度調整弁により少量の温水をブレンドして調整する制御を常時行っておくことで、被冷却熱負荷の状態の変動に対する冷却用清水による温度制御の追従性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1である熱負荷冷却装置の構成例の概要について示した図である。
【図2】本発明の実施の形態1における制御装置による運転モードの制御の例について示した状態遷移図である。
【図3】本発明の実施の形態2である熱負荷冷却装置の構成例の概要について示した図である。
【図4】本発明の実施の形態2における制御装置による運転モードの制御の例について示した状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0022】
本発明の一実施の形態である熱負荷冷却装置は、船舶を例として、エンジン等の被冷却熱負荷を冷却するための冷却用清水を、冷却海水ポンプにて取り込んだ海水との間で熱交換器によって熱交換させて、被冷却熱負荷との間で循環させることによって被冷却熱負荷の温度を一定に制御する装置であり、被冷却熱負荷の状態として冷却用清水の被冷却熱負荷への入口系統の温度を計測し、この温度が一定の目標温度となるように、制御装置によって、インバータを介して冷却海水ポンプの運転台数および回転数を制御するものである。
【0023】
また、冷却海水ポンプが1台のみ運転中で、かつ当該冷却海水ポンプの回転数が所定の最低回転数に達した場合は、最低回転数を維持するとともに、温度調整弁によって清水系統において冷水に温水をブレンドして冷却用清水を目標温度となるように制御することで、被冷却熱負荷への入口系統の過冷却を防止する。
【0024】
これにより、海水温度が想定最高温度よりも低い場合や被冷却熱負荷の出力が最大に満たない場合など、様々な状態において冷却海水ポンプにおける余分な海水の取り込みを抑止して無駄な電力の消費を最大効率で抑制しつつ、被冷却熱負荷の温度を一定に制御することが可能となる。
【0025】
<実施の形態1>
以下では、本発明の実施の形態1である熱負荷冷却装置について説明する。図1は、本実施の形態の熱負荷冷却装置の構成例の概要について示した図である。熱負荷冷却装置1は、船舶内の熱負荷10を冷却する冷却用清水が循環する清水系統と、冷却用清水を熱交換器9を介して冷却するための海水が通る海水系統とを有する。
【0026】
海水系統では、船体に設けられた海水取入口8から取り込んだ海水は、1台以上の冷却海水ポンプ2による加圧後、熱交換器9に送られ、熱交換器9において被冷却側の冷却用清水(熱負荷10を冷却した後の温水)と熱交換した後、船体に設けられた海水排出口17より船外に排出される。なお、冷却海水ポンプ2はインバータ4を介した駆動電動機3により駆動され、このとき、駆動電動機3は、制御用のソフトウェアや回路等の種々の手段によって実装される制御装置7により、インバータ4を介して回転数が制御される。インバータ4への電力は、始動器5を介して主電源系統6より給電される。
【0027】
清水系統では、熱交換器9によって冷却された冷却用清水が、冷水系統14および三方弁である温度調整弁12を通り、熱負荷入口系統16を通って熱負荷10に送られ、熱負荷10を冷却する。熱負荷10を冷却して暖められた温水は、1台以上の加圧ポンプ11で加圧され、温水系統15を通って熱交換器9に送られて循環する。なお、温水系統15では、熱負荷入口系統16の過冷却を防止するため、温度調整弁12に温水を供給する分岐を有する。これにより、冷水系統14の冷水に温水系統15の温水を温度調整弁12の開度に応じてブレンドして温度調整した後、熱負荷入口系統16に通水することができる。
【0028】
本実施の形態では、熱負荷10の状態を把握するため、熱負荷入口系統16の冷却用清水の温度をダブルエレメントの温度センサー13により計測し、計測した温度を制御装置7に送る。制御装置7では、この温度が一定の目標温度(本実施の形態では例えば36℃)となるように、インバータ4を介して冷却海水ポンプ2の回転数(もしくは駆動電動機3に対する電源周波数)をPID制御等により制御する。このとき、冷却海水ポンプ2を駆動する駆動電動機3の冷却を考慮して、冷却海水ポンプ2には最低回転数を設定しておく。
【0029】
冷却海水ポンプ2が複数台装備されている場合は、さらに、冷却海水ポンプ2の回転数もしくは駆動電動機3に対する電源周波数の値に応じて冷却海水ポンプ2の運転台数の制御も行う。このとき、例えば、1台目の冷却海水ポンプ2が最大の回転数に達した場合に2台目の冷却海水ポンプ2の運転を開始するよりも、早い段階(1台目の冷却海水ポンプ2が最大の回転数に達する前の段階)で2台目の冷却海水ポンプ2の運転を開始し、低い回転数で並列運転したほうが、一般的に、海水の吐出圧が下がる分、全体として省電力となる場合があるため、本実施の形態ではこのような制御を行うものとする。
【0030】
ここで、冷却海水ポンプ2が1台のみ運転中で、かつ当該冷却海水ポンプ2の回転数が上記の最低回転数に達した場合は、最低回転数を維持するとともに、制御装置7が、PID制御等により温度調整弁12の開度を圧縮空気等により調整することによって冷水系統14の冷水に温水系統15の温水をブレンドして、熱負荷入口系統16の温度が目標温度を維持するように制御して過冷却を防止する。なお、インバータ4の故障時など、冷却海水ポンプ2の回転数の制御ができない場合も同様に、温度調整弁12によって冷水に温水をブレンドして熱負荷入口系統16の温度が目標温度を維持するように制御する。
【0031】
図2は、本実施の形態における制御装置7による運転モードの制御の例について示した状態遷移図である。まず、熱負荷10および熱負荷冷却装置1が始動すると、単独運転モードとなる。単独運転モードでは、1台目の冷却海水ポンプ2(リードポンプ)の運転を開始し、2台目の冷却海水ポンプ2(第2ポンプ)をスタンバイ状態として始動する。
【0032】
このとき、制御装置7は、熱負荷入口系統16の温度が目標温度(本実施の形態では36℃)となるよう、PID制御等により駆動電動機3に対する電源周波数を自動調整することによってリードポンプの回転数を制御する。なお、このとき温度調整弁12は閉じている。すなわち、冷水系統14の冷水に対する温水系統15の温水のブレンドは行わず、冷水系統14の冷却用清水はそのまま熱負荷入口系統16に送られる。
【0033】
単独運転モードの状態で、駆動電動機3に対する電源周波数が所定の周波数(本実施の形態では38Hz)まで上昇した場合は、2台運転モードに移行する。ここでは、リードポンプに加えて第2ポンプについても運転を開始し、駆動電動機3に対する電源周波数を自動調整することによって回転数を制御する。
【0034】
2台運転モードに移行した直後は、リードポンプおよび第2ポンプともに最低回転数(本実施の形態では駆動電動機3に対する電源周波数が30Hz)から運転を開始するため、単独運転モードから2台運転モードに移行する基準となる上記の所定の周波数(本実施の形態では38Hz)は、2台の冷却海水ポンプ2を30Hzで運転する場合の消費電力よりも、リードポンプ1台を駆動する場合の消費電力のほうが大きくなるような所定の電源周波数を設定する。これにより、冷却海水ポンプ2の運転台数および回転数を全体としてより低消費電力となるように制御することができる。
【0035】
なお、本実施の形態では、駆動電動機3に対する電源周波数(もしくは冷却海水ポンプ2の回転数でもよい)を基準として単独運転モードから2台運転モードへの移行を判断しているが、温度センサー13で取得した熱負荷入口系統16の温度が例えば目標温度(36℃)を超えた場合に移行するなど、熱負荷入口系統16の温度を基準として判断してもよい。
【0036】
2台運転モードにおいては、単独運転モードと同様に、3台目の冷却海水ポンプ2(第3ポンプ)をスタンバイ状態として始動する。このとき温度調整弁12は閉じている。この2台運転モードの状態で、さらに駆動電動機3に対する電源周波数が所定の周波数(単独運転モードから2台運転モードに移行する際の周波数とは異なる場合がある)まで上昇した場合は3台運転モードに移行し、その後、電源周波数の上昇に応じて4台運転モード、5台運転モード…と、冷却海水ポンプ2の台数の上限まで運転台数を増やしていく。
【0037】
一方、2台運転モード等の複数台の運転モードにおいて、冷却海水ポンプ2の回転数が最低回転数(駆動電動機3に対する電源周波数が30Hz)まで下降した場合は、運転台数が1台少ないモードに移行する。すなわち、スタンバイ状態であった冷却海水ポンプ2を停止し、運転中の冷却海水ポンプ2のうちの1台をスタンバイ状態とする。
【0038】
単独運転モードにおいてリードポンプの回転数が最低回転数まで下降した場合は、過冷却防止モードに移行する。過冷却防止モードにおいては、リードポンプの回転数を最低回転数に維持する(駆動電動機3に対する電源周波数を30Hzに維持する)とともに、温度調整弁12の開度を制御して冷水系統14の冷水に温水系統15の温水をブレンドすることにより、熱負荷入口系統16の温度を目標温度(36℃)になるよう調整し、熱負荷入口系統16の過冷却を防止する。
【0039】
過冷却防止モードにおいて、例えば熱負荷入口系統16の温度が目標温度(36℃)を超えた場合は、温度調整弁12を閉じて、駆動電動機3に対する電源周波数の自動調整を再開し、単独運転モードに移行する。
【0040】
以上に説明したように、本実施の形態の熱負荷冷却装置1によれば、熱負荷10の状態に応じて冷却海水ポンプ2の運転台数および回転数をインバータ4を介して制御装置7により制御し、また、冷却海水ポンプ2の運転台数および回転数が下限に達した場合に、冷却海水ポンプ2の最低回転数を維持しつつ、温度調整弁12により清水系統において冷水系統14の冷水に温水系統15の温水をブレンドして熱負荷入口系統16の冷却用清水を目標温度に制御することで過冷却を防止する。
【0041】
これにより、海水温度が想定最高温度よりも低い場合や熱負荷10の出力が最大に満たない場合など、様々な状態において冷却海水ポンプ2における余分な海水の取り込みを抑止して駆動電動機3の消費電力を最大効率で低減しつつ、熱負荷10の温度を一定に制御することが可能となる。
【0042】
<実施の形態2>
以下では、本発明の実施の形態2である熱負荷冷却装置について説明する。上述した実施の形態1においては、通常時(過冷却防止モード以外の、単独運転モード、2台運転モード、…の各運転モード)は、冷却海水ポンプ2の運転台数と回転数の制御により無駄な海水の取り込みを抑止し、過冷却防止モードにおいてはじめて温度調整弁12により冷水への温水のブレンドを行うよう制御している。ここでは最大限の省電力化を図ることが可能である一方、制御の対象が冷却用清水の温度という時定数が長い対象であるため、熱負荷10の状態の変動に対して制御の追従性が低下する場合も想定される。
【0043】
そこで、本実施の形態の熱負荷冷却装置では、運転モードに関わりなく、温度調整弁12を一定程度開けておき、冷水系統14の冷水へ温水系統15の温水を少量ブレンドする制御を常時行っておくことにより、熱負荷10の状態の変動に対する冷却用清水の温度調整の追従性を向上させる。
【0044】
図3は、本実施の形態の熱負荷冷却装置の構成例の概要について示した図である。実施の形態1と本実施の形態とにおける熱負荷冷却装置1の構成上の相違点は、本実施の形態の熱負荷冷却装置1では、清水系統において熱交換器9から出た冷水系統14の冷却用清水の温度を計測して制御装置7に送るシングルエレメントの温度センサー18を有している点にある。また、温度センサー13もシングルエレメントとなっている。他の構成については、図1に示した実施の形態1の熱負荷冷却装置1と同様であるため再度の説明は省略する。
【0045】
本実施の形態では、制御装置7は、温度センサー18によって計測された冷水系統14の温度が、熱負荷入口系統16の目標温度(本実施の形態では36℃)よりも微少な一定温度(例えば1℃)だけ低温(すなわち、本実施の形態では35℃)に維持されるよう、インバータ4を介して駆動電動機3に対する電源周波数を制御し、冷却海水ポンプ2の回転数を制御する。
【0046】
このとき、温度調整弁12については、実施の形態1と異なり、運転モードに関わりなく、温度センサー13によって計測された熱負荷入口系統16の温度が目標温度(本実施の形態では36℃)に維持されるよう、すなわち、温度センサー18によって計測された冷水系統14の温度との微少差分(本実施の形態では1℃程度)を埋め合わせるよう、常時、冷水系統14の冷水に対して、温水系統15の温水を少量だけブレンドするよう開度を制御する閉ループ制御を行う。
【0047】
これにより、熱負荷10の状態の変動に対する冷却用清水の温度調整の追従性を向上させることができる。なお、温度調整弁12による温水のブレンドは省電力には寄与しないが、ブレンドする量が少量であるため余分に消費する電力は最小限に抑えることができる。
【0048】
図4は、本実施の形態における制御装置7による運転モードの制御の例について示した状態遷移図である。上述した実施の形態1の図2に示したものとの相違点としては、各運転モードの固有の制御内容に温度調整弁12の制御が含まれない点がある。上述したように、温度調整弁12の開度の制御は、運転モードに関わりなく行われる閉ループ制御として行う。
【0049】
また、過冷却モード以外の運転モードで、駆動電動機3に対する電源周波数を自動調整して冷却海水ポンプ2の回転数を制御することにより維持する対象の温度は、温度センサー18によって計測された冷水系統14の冷却用清水の温度であり、これを熱負荷入口系統16の目標温度(36℃)よりも1℃低温(35℃)に維持されるように制御する点も異なる。また、過冷却モードから単独運転モードに移行する際も、温度センサー18によって計測された冷水系統14の冷却用清水の温度が35℃を超過した場合に移行することになる。
【0050】
以上に説明したように、本実施の形態の熱負荷冷却装置1によれば、熱交換器9の出口の冷水系統14の冷却用清水の温度を、熱負荷入口系統16における目標温度よりも一定温度だけ過冷却となるように制御し、目標温度との差分は温度調整弁12により温水系統15の温水を少量ブレンドして調整する制御を常時行っておくことで、熱負荷10の状態の変動に対する冷却用清水による温度制御の追従性を向上させることが可能となる。
【0051】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0052】
例えば、上述した各実施の形態では、船舶を例として、船舶内のエンジン等の熱負荷を冷却する熱負荷冷却装置について説明したが、例えば、沿岸部の工場や発電所等、熱負荷の冷却に際して海水を用いる施設・設備における熱負荷冷却装置に適用することも当然可能である。また、海水の代わりに湖沼や河川等の淡水を用いる熱負荷冷却装置に適用することも当然可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、熱負荷を冷却するための冷却用清水を、冷却海水ポンプにて取り込んだ海水との間で熱交換させて循環させることによって熱負荷を冷却する熱負荷冷却装置および熱負荷冷却装置用制御装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…熱負荷冷却装置、2…冷却海水ポンプ、3…駆動電動機、4…インバータ、5…始動器、6…主電源系統、7…制御装置、8…海水取入口、9…熱交換器、10…熱負荷、11…加圧ポンプ、12…温度調整弁、13…温度センサー、14…冷水系統、15…温水系統、16…熱負荷入口系統、17…海水排出口、18…温度センサー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動電動機によって駆動される1台以上の冷却海水ポンプと、
前記冷却海水ポンプにて取り込んだ海水と熱負荷を冷却するための冷却用清水とを熱交換する熱交換器とを有し、
前記熱交換器にて冷却された前記冷却用清水を加圧ポンプによって前記熱負荷との間で循環させることによって前記熱負荷の温度を一定に制御する熱負荷冷却装置であって、
さらに、前記駆動電動機を介して前記冷却海水ポンプの回転数を制御するインバータと、
前記冷却用清水が循環する清水系統において、前記熱交換器にて冷却された冷水系統の前記冷却用清水に、前記熱負荷を冷却した後の温水系統から分岐させた前記冷却用清水を開度に応じてブレンドして前記熱負荷への入口系統に通水することが可能な温度調整弁と、
前記インバータを介した前記冷却海水ポンプの回転数の制御および前記温度調整弁の前記開度の制御を行う制御装置と、
前記入口系統の前記冷却用清水の温度を計測して前記制御装置に送る温度センサーとを有し、
前記制御装置は、前記温度センサーによって計測された温度が、前記入口系統の前記冷却用清水についての所定の目標温度となるように前記冷却海水ポンプの回転数を制御し、
前記冷却海水ポンプの回転数が所定の上限回転数まで上昇した場合は、前記冷却海水ポンプの運転台数を1台増加し、前記冷却海水ポンプの回転数が所定の最低回転数まで下降した場合は、前記冷却海水ポンプの運転台数を1台減ずるように制御し、
運転中の前記冷却海水ポンプが1台であり、かつ前記冷却海水ポンプの回転数が前記最低回転数まで下降した場合は、前記冷却海水ポンプの回転数が前記最低回転数を維持するように制御するとともに、前記温度センサーによって計測された温度が前記目標温度となるように、前記温度調整弁の前記開度を制御することを特徴とする熱負荷冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱負荷冷却装置において、
前記制御装置は、前記インバータを介した前記冷却海水ポンプの回転数の制御が不能の場合は、前記温度センサーによって計測された温度が前記目標温度となるように、前記温度調整弁の前記開度を制御することを特徴とする熱負荷冷却装置。
【請求項3】
駆動電動機によって駆動される1台以上の冷却海水ポンプと、
前記冷却海水ポンプにて取り込んだ海水と熱負荷を冷却するための冷却用清水とを熱交換する熱交換器とを有し、
前記熱交換器にて冷却された前記冷却用清水を加圧ポンプによって前記熱負荷との間で循環させることによって前記熱負荷の温度を一定に制御する熱負荷冷却装置であって、
さらに、前記駆動電動機を介して前記冷却海水ポンプの回転数を制御するインバータと、
前記冷却用清水が循環する清水系統において、前記熱交換器にて冷却された冷水系統の前記冷却用清水に、前記熱負荷を冷却した後の温水系統から分岐させた前記冷却用清水を開度に応じてブレンドして前記熱負荷への入口系統に通水することが可能な温度調整弁と、
前記インバータを介した前記冷却海水ポンプの回転数の制御および前記温度調整弁の前記開度の制御を行う制御装置と、
前記入口系統の前記冷却用清水の温度を計測して前記制御装置に送る第1の温度センサーと、
前記冷水系統の前記冷却用清水の温度を計測して前記制御装置に送る第2の温度センサーとを有し、
前記制御装置は、前記第2の温度センサーによって計測された温度が、前記入口系統の前記冷却用清水についての所定の第1の目標温度よりも所定の温度だけ低温である第2の目標温度となるように前記冷却海水ポンプの回転数を制御するとともに、前記第1の温度センサーによって計測された温度が前記第1の目標温度となるように、前記温度調整弁の前記開度を制御することを特徴とする熱負荷冷却装置。
【請求項4】
請求項3に記載の熱負荷冷却装置において、
前記制御装置は、前記冷却海水ポンプの回転数が所定の上限回転数まで上昇した場合は、前記冷却海水ポンプの運転台数を1台増加し、前記冷却海水ポンプの回転数が所定の最低回転数まで下降した場合は、前記冷却海水ポンプの運転台数を1台減ずるように制御し、
運転中の前記冷却海水ポンプが1台であり、かつ前記冷却海水ポンプの回転数が前記最低回転数まで下降した場合は、前記冷却海水ポンプの回転数が前記最低回転数を維持するように制御することを特徴とする熱負荷冷却装置。
【請求項5】
駆動電動機によって駆動される1台以上の冷却海水ポンプと、
前記冷却海水ポンプにて取り込んだ海水と熱負荷を冷却するための冷却用清水とを熱交換する熱交換器とを有し、
前記熱交換器にて冷却された前記冷却用清水を加圧ポンプによって前記熱負荷との間で循環させることによって前記熱負荷の温度を一定に制御し、
さらに、前記駆動電動機を介して前記冷却海水ポンプの回転数を制御するインバータと、
前記冷却用清水が循環する清水系統において、前記熱交換器にて冷却された冷水系統の前記冷却用清水に、前記熱負荷を冷却した後の温水系統から分岐させた前記冷却用清水を開度に応じてブレンドして前記熱負荷への入口系統に通水することが可能な温度調整弁と、
前記入口系統の前記冷却用清水の温度を計測する温度センサーとを有する前記熱負荷冷却装置における熱負荷冷却装置用制御装置であって、
前記温度センサーによって計測された温度を入力として、前記温度が前記入口系統の前記冷却用清水についての所定の目標温度となるように前記冷却海水ポンプの回転数を制御し、
前記冷却海水ポンプの回転数が所定の上限回転数まで上昇した場合は、前記冷却海水ポンプの運転台数を1台増加し、前記冷却海水ポンプの回転数が所定の最低回転数まで下降した場合は、前記冷却海水ポンプの運転台数を1台減ずるように制御し、
運転中の前記冷却海水ポンプが1台であり、かつ前記冷却海水ポンプの回転数が前記最低回転数まで下降した場合は、前記冷却海水ポンプの回転数が前記最低回転数を維持するように制御するとともに、前記温度が前記目標温度となるように、前記温度調整弁の前記開度を制御することを特徴とする熱負荷冷却装置用制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の熱負荷冷却装置用制御装置において、
前記インバータを介した前記冷却海水ポンプの回転数の制御が不能の場合は、前記温度センサーによって計測された温度が前記目標温度となるように、前記温度調整弁の前記開度を制御することを特徴とする熱負荷冷却装置用制御装置。
【請求項7】
駆動電動機によって駆動される1台以上の冷却海水ポンプと、
前記冷却海水ポンプにて取り込んだ海水と熱負荷を冷却するための冷却用清水とを熱交換する熱交換器とを有し、
前記熱交換器にて冷却された前記冷却用清水を加圧ポンプによって前記熱負荷との間で循環させることによって前記熱負荷の温度を一定に制御し、
さらに、前記駆動電動機を介して前記冷却海水ポンプの回転数を制御するインバータと、
前記冷却用清水が循環する清水系統において、前記熱交換器にて冷却された冷水系統の前記冷却用清水に、前記熱負荷を冷却した後の温水系統から分岐させた前記冷却用清水を開度に応じてブレンドして前記熱負荷への入口系統に通水することが可能な温度調整弁と、
前記入口系統の前記冷却用清水の温度を計測する第1の温度センサーと、
前記冷水系統の前記冷却用清水の温度を計測する第2の温度センサーとを有する前記熱負荷冷却装置における熱負荷冷却装置用制御装置であって、
前記第1の温度センサーによって計測された第1の温度および前記第2の温度センサーによって計測された第2の温度を入力として、前記第2の温度が前記入口系統の前記冷却用清水についての所定の第1の目標温度よりも所定の温度だけ低温である第2の目標温度となるように前記冷却海水ポンプの回転数を制御するとともに、前記第1の温度が前記第1の目標温度となるように、前記温度調整弁の前記開度を制御することを特徴とする熱負荷冷却装置用制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の熱負荷冷却装置用制御装置において、
前記冷却海水ポンプの回転数が所定の上限回転数まで上昇した場合は、前記冷却海水ポンプの運転台数を1台増加し、前記冷却海水ポンプの回転数が所定の最低回転数まで下降した場合は、前記冷却海水ポンプの運転台数を1台減ずるように制御し、
運転中の前記冷却海水ポンプが1台であり、かつ前記冷却海水ポンプの回転数が前記最低回転数まで下降した場合は、前記冷却海水ポンプの回転数が前記最低回転数を維持するように制御することを特徴とする熱負荷冷却装置用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−122771(P2011−122771A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281108(P2009−281108)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(599030688)郵船商事株式会社 (8)