説明

熱転写プリンタ

【課題】本発明は、外径を小さくしたリボン抜き取り状態のリボン巻き取りリールによってインクリボンが巻き取られることを防止することができる熱転写プリンタを提供することを課題とする。
【解決手段】リボン巻き取り軸91に取り付けられたリール本体94、95と、リボン巻き取り軸91に緩装された回転板92と、リール本体94、95の形状をリボン巻き取り状態とリボン抜き取り状態とに切り換えると共に、リボン巻き取り状態では、回転板92をリボン巻き取り軸91と回転方向において固定させ、リボン抜き取り状態では、固定を解除させる巻き取り軸解除レバー93とからなるリボン巻き取りリール9を用い、駆動モータ12によるリボン巻き取り軸の回転速度よりも、回転検出部によって回転板92を用いて検出されたリボン巻き取りリール9の回転速度が予め定められた回転速度以上遅い場合には、印字動作を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベル等の被印字媒体にインクリボンのインクを転写させて印字を行う熱転写プリンタに関し、特に印字後のインクリボンをリボン巻き取りリールに巻き取る熱転写プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
ラベル等の被印字媒体にインクリボンを用いて印字を行う熱転写プリンタにおいては、被印字媒体とインクリボンとをプラテンローラとサーマルヘッドとで挟持搬送し、サーマルヘッドの発熱体を選択的に発熱させることにより、インクリボンのインクをラベルに転写させて所望の文字、バーコード等の印字を施し、印字後のインクリボンは、リボン巻き取りリールに巻き取られるようになっている。
【0003】
紙管等の軸芯を用いることなくリボン巻き取りリールの周面にインクリボンを直接巻き取る場合には、巻き取ったインクリボンをリボン巻き取りリールの周面から抜き取るための機構が必要となり、当該機構としては、一方の端部間が弾力性を有する第1の接続部材で接続された複数のリール胴体部と、他方の端部間を接続する第2の接続部材とでリボン巻き取りリールを構成し、巻き取ったインクリボンを抜き取る際には、第2の接続部材を取り外し、第1の接続部材を屈曲又は湾曲させ、複数のリール胴体部における他方の端部を接触させることで、リール胴体部の外径を小さくし、巻き取られたインクリボンを抜き取るようにした機構が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、従来技術では、リール胴体部の外径を小さくしてリボン巻き取りリールからインクリボンを抜き取った後、リール胴体部の外径が小さい状態で、インクリボンの巻き取りを行ってしまうと、インクリボンの巻き取り速度が遅くなったり、幅方向で異なったりして印字不良が発生してしまうと共に、リボン巻き取りリールに巻き取ったインクリボンを抜き取ることができなくなってしまうという問題点があった。
【0005】
【特許文献1】特開平06−127064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は斯かる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、外径を小さくした状態のリボン巻き取りリールによってインクリボンが巻き取られることを防止することができ、印字不良の発生や、抜き取り不能な状態でインクリボンがリボン巻き取りリールに巻き取られることを防止することができる熱転写プリンタを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
請求項1記載の発明の要旨は、被印字媒体にインクリボンのインクを転写させて印字を行い、印字後の前記インクリボンをリボン巻き取りリールに巻き取る熱転写プリンタであって、前記リボン巻き取りリールは、一方端が軸支され、他方端が解放端となっているリボン巻き取り軸と、該リボン巻き取り軸に回転方向において固定されて取り付けられたリール本体と、前記リボン巻き取り軸に緩装された回転板と、該リール本体の形状を、前記リール本体に前記インクリボンを巻き取るリボン巻き取り状態と当該リボン巻き取り状態よりも前記リール本体の外径が小さくなるリボン抜き取り状態とに切り換えると共に、前記リボン巻き取り状態では、前記回転板を前記リボン巻き取り軸と回転方向において固定させ、前記リボン抜き取り状態では、前記回転板と前記リボン巻き取り軸との回転方向における固定を解除させる切換手段とからなり、前記リボン巻き取り軸を回転駆動させる回転駆動手段と、前記回転板を用いて前記リボン巻き取りリールの回転を検出する回転検出手段と、前記回転駆動手段による前記リボン巻き取り軸の回転速度よりも前記回転検出手段によって検出された前記リボン巻き取りリールの回転速度が予め定められた所定速度以上遅い場合には、印字動作を停止させる印字制御手段とを具備することを特徴とする熱転写プリンタに存する。
また請求項2記載の発明の要旨は、前記回転駆動手段による前記リボン巻き取り軸の回転速度よりも前記回転検出手段によって検出された前記リボン巻き取りリールの回転速度が予め定められた所定速度以上遅い場合には、前記リボン巻き取りリールが前記リボン抜き取り状態であることをユーザに通知する通知手段を具備することを特徴とする請求項1記載の熱転写プリンタに存する。
また請求項3記載の発明の要旨は、前記リール本体は、前記リボン巻き取り軸に対して周面が平行になるように取り付けられた略半円筒状の第1リール本体と、該第1リール本体との間に前記リボン巻き取り軸を挟み、周面が前記リボン巻き取り軸に対して平行な状態を保った状態で前記リボン巻き取り軸の法線方向に移動可能に取り付けられた略半円筒状の第2リール本体とからなり、前記切換手段は、前記第2リール本体を前記リボン巻き取り軸の法線方向に移動させることにより、前記第1リール本体および前記第2リール本体の外周が略円形状になる前記リボン巻き取り状態と前記第1リール本体および前記第2リール本体の外径が前記リボン巻き取り状態よりも小さくなる前記リボン抜き取り状態とを切り換える移動手段であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱転写プリンタに存する。
また請求項4記載の発明の要旨は、前記移動手段は、前記リボン巻き取り軸にスライド可能に環装され、前記リボン巻き取り軸の解放端側から延出した操作部を有する筒状の巻き取り軸解除レバーであり、該巻き取り軸解除レバーをスライドさせることにより、前記リボン巻き取り状態と前記リボン抜き取り状態とが切り換えられることを特徴とする請求項3記載の熱転写プリンタに存する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱転写プリンタは、一方端が軸支され、他方端が解放端となっているリボン巻き取り軸と、リボン巻き取り軸に回転方向において固定されて取り付けられたリール本体と、リボン巻き取り軸に緩装された回転板と、リール本体の形状を、リール本体にインクリボンを巻き取るリボン巻き取り状態とリボン巻き取り状態よりもリール本体の外径が小さくなるリボン抜き取り状態とに切り換えると共に、リボン巻き取り状態では、回転板をリボン巻き取り軸と回転方向において固定させ、リボン抜き取り状態では、回転板とリボン巻き取り軸との回転方向における固定を解除させる切換手段とからなるリボン巻き取りリールを用い、回転駆動手段によるリボン巻き取り軸の回転速度よりも、回転検出手段によって回転板を用いて検出されたリボン巻き取りリールの回転速度が予め定められた回転速度以上遅い場合には、印字動作を停止させるように構成することにより、リボン巻き取り状態では、回転板がリボン巻き取り軸と回転方向において固定されているため、回転駆動手段によるリボン巻き取り軸の回転速度と、回転検出手段によって回転板を用いて検出されたリボン巻き取りリールの回転速度とが略一致するのに対し、リボン抜き取り状態では、回転板とリボン巻き取り軸との回転方向における固定が解除されるため、回転駆動手段によるリボン巻き取り軸の回転速度よりも、回転検出手段によって回転板を用いて検出されたリボン巻き取りリールの回転速度が予め定められた回転速度以上遅くなって、印字動作に際してリボン抜き取り状態を識別して、印字動作を停止させることができるため、外径を小さくしたリボン抜き取り状態のリボン巻き取りリールによってインクリボンが巻き取られることを防止することができ、印字不良の発生や、抜き取り不能な状態でインクリボンがリボン巻き取りリールに巻き取られることを防止することができるという効果を奏する。
【0009】
さらに、本発明の熱転写プリンタは、リボン巻き取り軸に対して周面が平行になるように取り付けられた略半円筒状の第1リール本体と、第1リール本体との間にリボン巻き取り軸を挟み、周面がリボン巻き取り軸に対して平行な状態を保った状態でリボン巻き取り軸の法線方向に移動可能に取り付けられた略半円筒状の第2リール本体とからなるリール本体を用い、第2リール本体をリボン巻き取り軸の法線方向に移動させることにより、第1リール本体および第2リール本体の外周が略円形状になるリボン巻き取り状態と第1リール本体および第2リール本体の外径がリボン巻き取り状態よりも小さくなるリボン抜き取り状態とを切り換えるように構成することにより、部材を取り外すことなく、リボン巻き取り状態とリボン抜き取り状態とを切り換えることができると共に、リボン抜き取り状態では、第2リール本体を周面がリボン巻き取り軸に対して平行な状態を保った状態でリボン巻き取り軸の法線方向に移動させて、幅方向全体の外径を均一に小さくすることができ、巻き取られたリボンの抜き取り作業を簡便に行うことができるという効果を奏する。
【0010】
さらに、本発明の熱転写プリンタは、移動手段としてリボン巻き取り軸にスライド可能に環装され、リボン巻き取り軸の解放端側から延出した操作部を有する筒状の巻き取り軸解除レバーを備え、巻き取り軸解除レバーをスライドさせることにより、リボン巻き取り状態とリボン抜き取り状態とを切り換え可能に構成することにより、巻き取り軸解除レバーの操作方向と、巻き取られたリボンの抜き取り方向とを一致させることができ、巻き取られたリボンの抜き取り作業を簡便に行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明に係る熱転写プリンタの実施の形態の構成を示す構成図であり、
図2は、図1に示す制御部の構成を示すブロック図であり、
図3は、本発明に係る熱転写プリンタの実施の形態における要部の構成を示す斜視図であり、
図4は、図1に示すリボン巻き取りリールのリボン巻き取り状態を示す斜視図であり、
図5は、図1に示すリボン巻き取りリールの回転を検出する回転検出センサの配置を説明する説明図である。
図6は、図1に示すリボン巻き取りリールのリボン巻き取り状態を示す図であり、(a)は、側面図であり、(b)は、(a)に示すX−X’断面図である。
図7は、図1に示すリボン巻き取りリールのリボン抜き取り状態を示す斜視図である。
図8は、図1に示すリボン巻き取りリールのリボン巻き取り状態を示す図であり、(a)は、側面図であり、(b)は、(a)に示すX−X’断面図である。
【0013】
本実施の形態の熱転写プリンタは、図1を参照すると、プラテンローラ1と、発熱体がプラテンローラ1に対向する面に形成されているサーマルヘッド2とを有し、複数枚のラベル3が帯状台紙4に仮着されているラベル連続体5とインクリボン6とをプラテンローラ1とサーマルヘッド2とで挟持搬送し、サーマルヘッド2の発熱体を選択的に発熱させることにより、インクリボン6のインクをラベル3に転写させて所望の文字、バーコード等の印字を施すように構成され、ロール状に巻き回されたラベル連続体5が装填され、プラテンローラ1とサーマルヘッド2との間にラベル連続体5を供給する用紙供給部7と、ロール状に巻き回されたインクリボン6が装填され、プラテンローラ1とサーマルヘッド2との間にインクリボン6を供給するインクリボン供給部8と、印字後のインクリボン6を巻き取るリボン巻き取りリール9と、印字タイミングを決定するためのラベル検出センサ10と、リボン巻き取りリール9の回転を検出する回転検出センサ11とを備えている。
【0014】
プラテンローラ1とサーマルヘッド2との間に搬送されるラベル連続体5の裏面側には、ラベル連続体5の裏面に印刷等によって形成されたアイマーク(黒の矩形のマーク)を検出し、アイマークの検出信号を出力するラベル検出センサ10が設けられている。アイマークの検出信号は、ラベル検出センサ10から制御部20に入力され、制御部20は、アイマークの検出信号に基づく印字タイミングで、サーマルヘッド2と、プラテンローラ1およびリボン巻き取りリール9を回転駆動する駆動モータ12とを制御してラベル3に印字を行う。
【0015】
リボン巻き取りリール9に巻き取られるインクリボン6の走行速度は、インクリボン6に弛みを出さないために、プラテンローラ1によって搬送されるラベル連続体5の走行速度を上回るように設定されており、インクリボン6とラベル連続体5との走行速度の差は、リボン巻き取りリール9にスリップ機構であるトルクリミッタを設けることで吸収するように構成されている。
【0016】
制御部20には、パーソナルコンピュータ等のホスト40が外部インタフェース(外部I/F)30を介して接続され、外部I/F30を介して、外部に接続されたホスト40との間で各種データやコマンドの送受信を行うことができるようになっている。また、制御部20には、各種データやコマンドを入力するための入力部50と、入力部50から入力された入力データや各種情報を表示するための表示部60とがインタフェース(I/F)31を介して接続され、入力部50から入力された入力データは、I/F31を介して制御部20に供給され、表示部60に表示される各種情報に対応する表示データは、I/F31を介して制御部20より供給されるようになっている。
【0017】
制御部20は、図2を参照すると、所定の制御プログラムとフォントデータとを記憶するROM(read only memory)21と、ROM21に記憶されている制御プログラムに従って動作し、各部を制御するCPU(central processing unit)22と、CPU22が動作する上で必要となる各種データを記憶するRAM(random access memory)23と、駆動モータ12にパルス信号等の駆動信号を供給し、駆動モータ12を回転させる搬送制御部24と、CPU22からの指示に基づいてサーマルヘッド2に印字動作を行わせる印字制御部25と、CPU22の制御下、ラベル検出センサ10からアイマークの検出信号を受け取り、デジタルのデータに変換することでピッチ信号としてCPU22に供給するラベル検出部26と、回転検出センサ11からの検出信号に基づいてリボン巻き取りリール9の回転速度を検出し、検出したリボン巻き取りリール9の回転速度をCPU22に出力する回転検出部27とを備えている。
【0018】
CPU22は、外部I/F30を介してホスト40から送信されてきた印字データを受信すると、受信した印字データに含まれる文字コードに対応するフォントデータをROM21から読み出し、ホスト40より送信されてきた印字データに対応するビットマップイメージデータをRAM23の描画領域に展開する。
【0019】
CPU22は、搬送制御部24に対してラベル連続体5の搬送と、インクリボン6の巻き取りとを指示すると共に、RAM23の描画領域に展開したビットマップイメージデータの印字を印字制御部25に指示する。
【0020】
搬送制御部24は、CPU22からの指示に基づいて、駆動モータ12に対して所定の駆動信号を供給して駆動モータ12を回転させることで、プラテンローラ1を回転駆動してラベル連続体5を搬送させると共に、リボン巻き取りリール9を回転駆動して印字後のインクリボン6の巻き取りを開始させる。また、印字制御部25は、ラベル連続体5の搬送速度に同期させて、RAM23の描画領域に展開されているビットマップイメージデータに対応した制御信号をサーマルヘッド2に供給し、印字処理を行う。これにより、帯状台紙4に仮着されているラベル3に印字データが印字される。
【0021】
リボン巻き取りリール9は、図3を参照すると、一方端が軸支され、他方端が解放端となっており、図示しないモータによって回転駆動されるリボン巻き取り軸91と、リボン巻き取り軸91の回転を検出するための回転板92と、リボン巻き取り軸91に環装される筒状の巻き取り軸解除レバー93と、略半円筒状の第1リール本体94と、略半円筒状の第2リール本体95とからなる。
【0022】
回転板92は、リボン巻き取り軸91に解放端側から緩装され、リボン巻き取り軸91に取り付けられた留め具911によって位置決めされている。また、回転板92には、回転を検出するための複数のスリット921が周期的に形成されていると共に、リボン巻き取り軸91に緩装される内周円の周囲にリボン巻き取り軸91と回転方向において固定するための被係合部922が形成されている。
【0023】
巻き取り軸解除レバー93は、リボン巻き取り軸91に解放端側から環装されている。リボン巻き取り軸91には、Dカット加工が施されており、リボン巻き取り軸91のDカット加工部が巻き取り軸解除レバー93の内周面と回転方向において係合するように構成され、巻き取り軸解除レバー93とリボン巻き取り軸91と回転方向において固定される。また、巻き取り軸解除レバー93は、リボン巻き取り軸91の軸方向にスライド可能に環装されるようになっており、巻き取り軸解除レバー93に形成された係合部931を回転板92の被係合部922に係合させることにより、リボン巻き取り軸91に回転板92が回転方向において固定され、巻き取り軸解除レバー93に形成された係合部931と回転板92の被係合部922との係合を解除させることにより、リボン巻き取り軸91に対する回転板92の回転方向における固定が解除されるようになっている。
【0024】
第1リール本体94と第2リール本体95とは、図4および図7に示すように、リボン巻き取り軸91に環装された巻き取り軸解除レバー93を挟んでリボン巻き取り軸91に、第1リール本体94と第2リール本体95とのそれぞれの周面がリボン巻き取り軸91との平行になるように取り付けられている。第1リール本体94と第2リール本体95とのリボン巻き取り軸91への取り付けは、巻き取り軸解除レバー93に形成された開口932と、リボン巻き取り軸91に形成された取り付け穴912とを介して、ネジ96とバネ保持用ナット97とを固定することによって行われる。また、第2リール本体95とバネ保持用ナット97との間には、バネ98が介装され、第2リール本体95がリボン巻き取り軸91の法線方向に移動可能に取り付けられている。なお、巻き取り軸解除レバー93に形成された開口932は、巻き取り軸解除レバー93のスライドがネジ96によって妨げられない形状になっている。
【0025】
図4および図7に示すように組み付けられたリボン巻き取りリール9は、図5に示すように、駆動モータ12が収納されている熱転写プリンタの本体ケース13に装着され、駆動モータ12による回転駆動系と連結される。本体ケース13におけるリボン巻き取りリール9の装着箇所には、回転板92に形成されたスリット921を検出するフォトインタラプタ等の回転検出センサ11が配置されている。
【0026】
図4には、巻き取り軸解除レバー93を回転板92の方向にスライドさせたリボン巻き取り状態が示されている。リボン巻き取り状態では、巻き取り軸解除レバー93に形成された係合部931が回転板92の被係合部922に係合され、リボン巻き取り軸91に回転板92が回転方向において固定されると共に、図6(b)に示すように、巻き取り軸解除レバー93に形成された当接部935と、第2リール本体95の内周に形成された凸部951とが当接した状態となり、第2リール本体95が第1リール本体94から遠ざかる方向に、バネ98による付勢力に抗して移動され、図6(a)に示すように、第1リール本体94および第2リール本体95の外周が略円形状、すなわち第1リール本体94および第2リール本体95が略円筒状になり、リボン巻き取りの周速度が安定し、印字精度が安定する。なお、リボン巻き取り軸91の解放端側から延出している巻き取り軸解除レバー93の操作部934には、ロック爪が形成されており、リボン巻き取り状態では、操作部934のロック爪が第1リール本体94の端部に係合されて巻き取り軸解除レバー93のスライドがロックされる。
【0027】
図5に示すリボン巻き取り状態で、第1リール本体94の外周に設けられたリボン保持用シート941にリボンの先端部を貼り付け、リボン巻き取り軸91を回転させると、リボン巻き取り軸91と共に、回転板92と、巻き取り軸解除レバー93と、略円筒状の第1リール本体94および第2リール本体95とが一体となって回転し、略円筒状の第1リール本体94および第2リール本体95の外周面にリボンを巻き取ることができる。
【0028】
リボン巻き取り状態で巻き取ったリボンを解放端側から抜き取る際には、操作部934のロック爪を解除して巻き取り軸解除レバー93を回転板92から遠ざかる方向にスライドさせ、図7に示すようなリボン抜き取り状態に移行させる。
【0029】
リボン抜き取り状態では、巻き取り軸解除レバー93に形成された係合部931と回転板92の被係合部922との係合が解除されて、リボン巻き取り軸91に対する回転板92の回転方向における固定が解除されると共に、図8(b)に示すように、巻き取り軸解除レバー93に形成された当接部935と、第2リール本体95の内周に形成された凸部951との当接が解除された状態となり、バネ98による付勢力によって、第2リール本体95がリボン巻き取り軸91との平行を保った状態で第1リール本体94に近づく方向に移動され、図8(a)に示すように、第1リール本体94および第2リール本体95の外径がリボン巻き取り状態よりも小さく、すなわち第1リール本体94および第2リール本体95は、リボン巻き取り状態で略円筒状となる際の断面積よりも小さい断面積を有する略楕円筒状になり、巻き取られたリボンを解放端側から抜き取ることが可能になる。
【0030】
次に、リボン巻き取りリール9の状態、すなわちリボン巻き取りリール9がリボン巻き取り状態であるか、リボン抜き取り状態であるかを識別する状態識別動作について図9を参照して詳細に説明する。
図9は、図1に示すリボン巻き取りリール9の状態を識別する状態識別動作を説明するためのフローチャートである。
【0031】
リボン巻き取りリール9の状態を識別する状態識別動作は、印字動作の開始に伴って行われ、印字動作が開始されると、搬送制御部24は、CPU22からの指示に基づいて、駆動モータ12に対して所定の駆動信号を供給して駆動モータ12を回転させることで、プラテンローラ1を回転駆動してラベル連続体5を搬送させると共に、リボン巻き取りリール9を回転駆動して印字後のインクリボン6の巻き取りを開始させる(ステップA1)。
【0032】
次に、CPU22は、駆動モータ12によって回転駆動されるリボン巻き取り軸91の回転速度(以下、軸回転速度と称す)と、回転検出部27から入力されるリボン巻き取りリール9の回転速度(以下、回転板回転速度と称す)とを比較する(ステップA2)。すなわち軸回転速度は、CPU22よって把握されている既知の値であり、既知の値である軸回転速度と、回転板回転速度とが比較されることになる。
【0033】
次に、CPU22は、軸回転速度に対して回転板回転速度が予め定められた所定速度以上遅いか否かを判断し(ステップA3)、軸回転速度に対して回転板回転速度が所定速度以上遅い場合には、リボン巻き取りリール9がリボン抜き取り状態であると認識し、印字動作を中止させると共に(ステップA4)、リボン巻き取りリール9がリボン抜き取り状態であることをユーザに通知するエラー表示を表示部60に表示させ(ステップA5)、状態識別動作を終了する。リボン抜き取り状態では、上述のように、リボン巻き取り軸91に対する回転板92の回転方向における固定が解除されているため、印字開始に伴い、軸回転速度と回転板回転速度とが一致することなく、軸回転速度よりも回転板回転速度が遅くなる。
【0034】
ステップA3で軸回転速度に対して回転板回転速度が所定速度以上遅くない場合、すなわち軸回転速度と回転板回転速度とが略一致した場合には、CPU22は、リボン巻き取りリール9がリボン巻き取り状態であると認識し、状態識別動作を終了して、印字動作を継続して実行させる。リボン巻き取り状態では、上述のように、リボン巻き取り軸91に回転板92が回転方向において固定されているため、印字開始に伴い、軸回転速度と回転板回転速度とが略一致する。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態によれば、一方端が軸支され、他方端が解放端となっているリボン巻き取り軸91と、リボン巻き取り軸91に回転方向において固定されて取り付けられたリール本体94、95と、リボン巻き取り軸91に緩装された回転板92と、リール本体94、95の形状を、リール本体94、95にインクリボン6を巻き取るリボン巻き取り状態と当該リボン巻き取り状態よりもリール本体94、95の外径が小さくなるリボン抜き取り状態とに切り換えると共に、リボン巻き取り状態では、回転板92をリボン巻き取り軸91と回転方向において固定させ、リボン抜き取り状態では、回転板92とリボン巻き取り軸91との回転方向における固定を解除させる巻き取り軸解除レバー93とからなるリボン巻き取りリール9を用い、駆動モータ12によるリボン巻き取り軸の回転速度よりも、回転検出部27によって回転板92を用いて検出されたリボン巻き取りリール9の回転速度が予め定められた回転速度以上遅い場合には、印字動作を停止させるように構成することにより、リボン巻き取り状態では、回転板92がリボン巻き取り軸91と回転方向において固定されているため、駆動モータ12によるリボン巻き取り軸9の回転速度と、回転検出部27によって回転板92を用いて検出されたリボン巻き取りリール9の回転速度とが略一致するのに対し、リボン抜き取り状態では、回転板92とリボン巻き取り軸91との回転方向における固定が解除されるため、駆動モータ12によるリボン巻き取り軸91の回転速度よりも、回転検出部27によって回転板92を用いて検出されたリボン巻き取りリール9の回転速度が予め定められた回転速度以上遅くなって、印字動作に際してリボン抜き取り状態を識別して、印字動作を停止させることができるため、外径を小さくしたリボン抜き取り状態のリボン巻き取りリール9によってインクリボンが巻き取られることを防止することができ、印字不良の発生や、抜き取り不能な状態でインクリボン6がリボン巻き取りリールに巻き取られることを防止することができるという効果を奏する。
【0036】
さらに、本実施の形態によれば、リボン巻き取り軸91に対して周面が平行になるように取り付けられた略半円筒状の第1リール本体94と、第1リール本体94との間にリボン巻き取り軸91を挟み、周面がリボン巻き取り軸91に対して平行な状態を保った状態でリボン巻き取り軸91の法線方向に移動可能に取り付けられた略半円筒状の第2リール本体95とからなるリール本体を用い、第2リール本体95をリボン巻き取り軸91の法線方向に移動させることにより、第1リール本体94および第2リール本体95の外周が略円形状になるリボン巻き取り状態と第1リール本体94および第2リール本体95の外径がリボン巻き取り状態よりも小さくなるリボン抜き取り状態とを切り換えるように構成することにより、部材を取り外すことなく、リボン巻き取り状態とリボン抜き取り状態とを切り換えることができると共に、リボン抜き取り状態では、第2リール本体95を周面がリボン巻き取り軸に対して平行な状態を保った状態でリボン巻き取り軸91の法線方向に移動させて、幅方向全体の外径を均一に小さくすることができ、巻き取られたリボンの抜き取り作業を簡便に行うことができるという効果を奏する。
【0037】
さらに、本実施の形態によれば、移動手段としてリボン巻き取り軸1にスライド可能に環装され、リボン巻き取り軸の解放端側から延出した操作部を有する筒状の巻き取り軸解除レバー3を備え、巻き取り軸解除レバー3をスライドさせることにより、リボン巻き取り状態とリボン抜き取り状態とを切り換え可能に構成することにより、巻き取り軸解除レバー3の操作方向と、巻き取られたリボンの抜き取り方向とを一致させることができ、巻き取られたリボンの抜き取り作業を簡便に行うことができるという効果を奏する。
【0038】
なお、本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付している。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る熱転写プリンタの実施の形態の構成を示す構成図である。
【図2】図1に示す制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る熱転写プリンタの実施の形態における要部の構成を示す斜視図である。
【図4】図1に示すリボン巻き取りリールのリボン巻き取り状態を示す斜視図である。
【図5】図1に示すリボン巻き取りリールの回転を検出する回転検出センサの配置を説明する説明図である。
【図6】図1に示すリボン巻き取りリールのリボン巻き取り状態を示す図であり、(a)は、側面図であり、(b)は、(a)に示すX−X’断面図である。
【図7】図1に示すリボン巻き取りリールのリボン抜き取り状態を示す斜視図である。
【図8】図1に示すリボン巻き取りリールのリボン巻き取り状態を示す図であり、(a)は、側面図であり、(b)は、(a)に示すX−X’断面図である。図である。
【図9】図1に示すリボン巻き取りリール9の状態を識別する状態識別動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0040】
1 プラテンローラ
2 サーマルヘッド
3 ラベル
4 帯状台紙
5 ラベル連続体
6 インクリボン
7 用紙供給部
8 インクリボン供給部
9 リボン巻き取りリール
10 ラベル検出センサ
11 回転検出センサ
12 駆動モータ
13 本体ケース
20 制御部
21 ROM
22 CPU
23 RAM
24 搬送制御部
25 印字制御部
26 ラベル検出部
27 回転検出部
30 外部I/F
31 I/F
40 ホスト
50 入力部
60 表示部
91 リボン巻き取り軸
92 回転板
93 巻き取り軸解除レバー(切換手段)
94 第1リール本体
95 第2リール本体
96 ネジ
97 ナット
98 バネ
911 留め具
912 取り付け穴
921 スリット
922 被係合部
931 係合部
932 開口
934 操作部
935 当接部
941 リボン保持用シート
951 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印字媒体にインクリボンのインクを転写させて印字を行い、印字後の前記インクリボンをリボン巻き取りリールに巻き取る熱転写プリンタであって、
前記リボン巻き取りリールは、一方端が軸支され、他方端が解放端となっているリボン巻き取り軸と、
該リボン巻き取り軸に回転方向において固定されて取り付けられたリール本体と、
前記リボン巻き取り軸に緩装された回転板と、
該リール本体の形状を、前記リール本体に前記インクリボンを巻き取るリボン巻き取り状態と当該リボン巻き取り状態よりも前記リール本体の外径が小さくなるリボン抜き取り状態とに切り換えると共に、前記リボン巻き取り状態では、前記回転板を前記リボン巻き取り軸と回転方向において固定させ、前記リボン抜き取り状態では、前記回転板と前記リボン巻き取り軸との回転方向における固定を解除させる切換手段とからなり、
前記リボン巻き取り軸を回転駆動させる回転駆動手段と、
前記回転板を用いて前記リボン巻き取りリールの回転を検出する回転検出手段と、
前記回転駆動手段による前記リボン巻き取り軸の回転速度よりも前記回転検出手段によって検出された前記リボン巻き取りリールの回転速度が予め定められた所定速度以上遅い場合には、印字動作を停止させる印字制御手段とを具備することを特徴とする熱転写プリンタ。
【請求項2】
前記回転駆動手段による前記リボン巻き取り軸の回転速度よりも前記回転検出手段によって検出された前記リボン巻き取りリールの回転速度が予め定められた所定速度以上遅い場合には、前記リボン巻き取りリールが前記リボン抜き取り状態であることをユーザに通知する通知手段を具備することを特徴とする請求項1記載の熱転写プリンタ。
【請求項3】
前記リール本体は、前記リボン巻き取り軸に対して周面が平行になるように取り付けられた略半円筒状の第1リール本体と、
該第1リール本体との間に前記リボン巻き取り軸を挟み、周面が前記リボン巻き取り軸に対して平行な状態を保った状態で前記リボン巻き取り軸の法線方向に移動可能に取り付けられた略半円筒状の第2リール本体とからなり、
前記切換手段は、前記第2リール本体を前記リボン巻き取り軸の法線方向に移動させることにより、前記第1リール本体および前記第2リール本体の外周が略円形状になる前記リボン巻き取り状態と前記第1リール本体および前記第2リール本体の外径が前記リボン巻き取り状態よりも小さくなる前記リボン抜き取り状態とを切り換える移動手段であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱転写プリンタ。
【請求項4】
前記移動手段は、前記リボン巻き取り軸にスライド可能に環装され、前記リボン巻き取り軸の解放端側から延出した操作部を有する筒状の巻き取り軸解除レバーであり、
該巻き取り軸解除レバーをスライドさせることにより、前記リボン巻き取り状態と前記リボン抜き取り状態とが切り換えられることを特徴とする請求項3記載の熱転写プリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−229945(P2007−229945A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50755(P2006−50755)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000130581)株式会社サトー (1,153)
【Fターム(参考)】