説明

熱転写リボン

【課題】作業性が遙かに向上し、且つ確実にエンドフリーの状態で熱転写リボンを安価に構成できる熱転写リボンの製造方法を提供する。
【解決手段】コアに熱転写シートを巻き取ることよりなる熱転写リボンの製造方法において、コアに溶剤を塗布し、塗布した溶剤を介して熱転写シートの巻き始め部をコアに仮固定した後、熱転写シートを巻き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱転写リボンの製造方法に関し、より詳しくは、印字時の終端部をコアに対してフリーな状態で熱転写シートを巻き取ることにより、プリンタ及びファクシミリ等のギヤ等に負荷をかけない熱転写リボンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーマルプリンタやファクシミリは、基材フィルムの片面に熱溶融性インク層が設けられた熱転写リボンの裏側(熱溶融性インク層が設けられた側とは反対の側)から印字パターンに応じて所望箇所を加熱、加圧することにより、熱溶融インクを溶融させて受像紙に転写を行っている。
【0003】
ところで、通常、上記熱転写リボン1は、図1に示すように熱転写シート2がコア3に巻き取られた形の熱転写リボン1の形態で用いられている。一般に、熱転写シート2がコア3に巻き取られる際にはエンドフィルムを介してコア3に巻き取られている。このエンドフィルムとしては、例えば樹脂フィルムの表面にアルミニウムが蒸着されたフィルムが用いられており、エンドフィルムは、そのアルミニウム蒸着面が光を透過しない点を利用して、例えばサーマルプリンタに設けられた透過型の検知センサと組み合わせて、熱転写リボンの印字の終端検知を行うためのエンド検知フィルムとしての機能を有している。
【0004】
しかしながら、例えば、熱転写リボンの終端に配置されているエンドフィルムが印字操作中に検知センサ上を通過するときに、本来行わなければならないエンド検知を行わず、即ち誤検知によりコアと熱転写シートとの接続点まで繰り出されることがある。この場合、熱転写シートとコアとを直接接着固定していると、機械に過負荷がかかり、ファクシミリまたはサーマルプリンタ等の故障の原因となっていた。これは、近年、ファクシミリおよびサーマルプリンタ等のギヤなど、従来金属製であった駆動部分が樹脂製になったことにより、ギヤの刃こぼれ等が起こりやすくなったためである。
【0005】
このような問題点を解決するため、また熱転写リボンが熱転写シートの終端でコアから外れることにより機械負荷が変動する点を利用して熱転写リボンの終端検知を行うために、熱転写リボンのコアから熱転写シートの終端が離れるようにする、いわゆる「エンドフリー」の状態で熱転写リボンを構成することが行われている(特許文献1参照)。しかしながら、このようなエンドフリーの状態を形成するための熱転写リボンの製造方法では、例えば弱接着性の両面接着テープまたはポリビニルアルコール等の接着剤をコアと熱転写シートとの間に介在させることにより製造しているが、いずれも擬似的なエンドフリー状態であり、(1)弱接着性のものを用いても、誤検知の際に機械に過負荷がかかる恐れがある、(2)特別な弱接着性の材料を用いることによりコスト高となる、(3)熱転写リボンの終端部がコアから外れる際に、接着剤が飛散したりまたは両面接着テープの接着面の一部がサーマルヘッドと接触して傷をつけたりする等の問題があった。
【特許文献1】特開平5−294038号公報
【0006】
そこで、このような問題点を解決するため、発明者らは、別途、熱転写シートをコアに巻き取る際に仮固定用テープを用いて、巻き始めとなる熱転写シートの一端部をコアに仮固定する熱転写リボンの製造方法を提案した。
【0007】
しかしながら、この方法では、用いている仮固定用テープが接着テープである場合にはテープの接着剤がはみ出て埃等を巻き込む等の問題や、はみ出た接着剤と熱転写シートとの間でブロッキングを引き起こすなどの不具合が発生する可能性を残していた。また、再利用できる可能性はあるがコアのほかに被間接固定部としてのスペーサを用いる必要があったり、仮固定用テープを切り離す手間が必要である等の問題は依然と残っており、さらなる作業性の改善および低コスト化が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、一般的に使用されている接着テープ、粘着テープ及び接着剤等を用いることなく、作業性が遙かに向上し、且つ確実にエンドフリーの状態で熱転写リボンを安価に構成できる熱転写リボンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は次のとおりである。すなわち、本発明は、コアに熱転写シートを巻き取ることよりなる熱転写リボンの製造方法において、コアに溶剤を塗布し、塗布した溶剤を介して熱転写シートの巻き始め部をコアに仮固定し、熱転写シートを巻き取ることを特徴とするエンドフリーの状態とした熱転写リボンの製造方法である。
また、本発明は、前記溶剤が70℃以上150℃以下の沸点を有する低沸点溶剤であることを特徴とする熱転写リボンの製造方法である。
さらに、本発明は、低沸点溶剤がトルエン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、エタノール、酢酸エチル、水、1,1,1−トリクロルエタン又はこれらの混合物であることを特徴とする熱転写リボンの製造方法である。
また、本発明は、熱転写シートの巻き取り後、コアに塗布した溶剤を乾燥する乾燥工程を有することを特徴とする熱転写リボンの製造方法である。
【0010】
本発明では、コアに溶剤を塗布した後、その部分に熱転写シートを被せるので溶剤の分子間力、表面張力等により巻き取り時には一定の負荷をかけて熱転写シートをコアに仮固定することができるので、接着テープ等を用いなくても、巻き取る熱転写シートにシワ等を発生することを防止しつつ熱転写シートを巻き込むことができる。その後、溶剤が揮発する又は乾燥により蒸発するので熱転写シートをコアに仮固定していた負荷を取り除くことができるので、印字時の熱転写リボンの終端ではエンドフリーの状態を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱転写リボンの製造方法では、
(1)接着剤を有する接続部材を用いる必要がないので、ブロッキングの恐れがない。
(2)特別な接着テープなどを設計する必要がないので熱転写リボンを安価に製造することができる。
(3)熱転写シートをコアに仮固定するのに用いたテープを切断する等の作業の必要がない。
(4)コアと熱転写シートとの間に接着テープ等の接続部材が介在していないので、確実にエンドフリーな状態で熱転写リボンを構成でき、例えば熱転写リボンの終端に設けられたエンドフィルムに対して誤検知等があっても機械に過負荷をかける恐れがない。
(5)エンドフリーの状態(機械に負荷が掛からなくなった状態)を終端検知に利用する場合などでも、確実に終端部を検知することができる。
(6)使用後のコアには接着剤の付着や接着テープの残存等がなく、また塗布した溶剤も揮発又は蒸発により無くなっているので、コアの再利用が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図面を用いて本発明の熱転写リボンの製造方法について説明する。図1に、本発明の製造方法により得られる熱転写リボン1を示す。図1に示すように、熱転写シート2がコア3(例えば、巻き取りボビン)に巻き取られて、熱転写リボン1を構成する。
【0013】
図8に、本発明の方法に使用する熱転写シートの巻き取り装置の概略を示す。図8に示すように、熱転写シートの原反81からの1枚の熱転写シートはスリット刃82を用いて複数個の帯状の熱転写シート83に分割され、それぞれの熱転写シート83はそれぞれ対応するコア(例えば、巻き取りボビン)84に巻き取られ、熱転写リボンが形成される。コア84はスペーサ85と交互に並置されている。
【0014】
図2に、熱転写シートの巻き取り装置に対するコア5の配置の一例について概略を示す。図2に示すように、熱転写シートを巻き取るためのコア5とスペーサ6とは、交互に同一のシャフト7を通じて並置されている。コア5とスペーサ6とは、それぞれ別個独立しているが、それぞれ両者は隣接する面で接触している。
【0015】
本発明では、図2に示すように、コア5の表面上に、巻き取るべき熱転写シートを仮固定するため溶剤8、好ましくは低沸点の溶剤8を塗布しておく。次に、コア5の表面上の、溶剤8(好ましくは低沸点の溶剤8、以下同じ)を塗布した部分に熱転写シートの巻き始めとなる端部を貼り付ける。この場合、熱転写シート2がコア5上へ仮固定できる限り、溶剤8は、コア5の表面の一部だけに塗布しても良く、また、全面に塗布しても良い。熱転写シート2が、溶剤8が塗布された部分を介して、コア5上へ貼り付けられた状態を図3に示す。
【0016】
図4に、熱転写シート2をコア5上へ巻き込む態様を示す。コア5上の溶剤が塗布された部分へ熱転写シート2の巻き取り始めの端部を貼り付けた後、図4に示すように、熱転写シート2をコア5上へ巻き込む。その時、溶剤の表面張力などの作用により、熱転写媒体シート2にシワなどを発生させることなく容易に熱転写シート2をコア5上へ巻き込むことができる。その後、巻き込みを続け、所定量の熱転写シートをコア5上へ巻き取る。
【0017】
図5に、所定量の熱転写シート2をコア5上へ巻き取ったときの状態を示す。図5に示すように、所定量の熱転写シート2をコア5上へ巻き取った後、熱転写体シート2の巻き終わり部分9を切り離し熱転写リボンとする。
【0018】
次に、図6に示すように、スペーサ6と、熱転写シート2を巻き取ったコア5とを、シャフト7から取り外す。
以上の工程からなる本発明の製造方法により、エンドフリーの状態とした熱転写リボンが製造される。
【0019】
図7に、印字を行った後の熱転写リボンの終端部分、換言すれば、熱転写シート2の巻き始め部分を示す。前述したように、熱転写シートの巻き始め部分は溶剤、好ましくは低沸点の溶剤を介してコア5へ貼り付けられていたが、溶剤は揮発又は蒸発しており、熱転写シート2とコア5との間にはもはや存在しない。印字を行った後の熱転写リボンの終端部分は、エンドフリーの状態となっており、負荷がかからない状態で熱転写媒体シート2の終端部分2aが容易にコア5から外れることになる。なお、溶剤として低沸点の溶剤を用いない場合等には、溶剤が揮発し又は蒸発するのに時間を要することがあるが、その際には熱転写シートの巻き取り完了後、コアに塗布した溶剤を乾燥する乾燥工程を導入することにより、溶剤の揮発又は蒸発を促進させることができる。
【0020】
<溶剤>
本発明で用いる溶剤は、巻き取る熱転写シートの端部をコア上へ巻き込むことができる程度に、溶剤を介して熱転写シートをコア上へ仮固定できるものであれば、特に限定はない。例えば、トルエン(沸点111℃)等の芳香族炭化水素類、ジクロルメタン(沸点39.8℃)等の塩化脂肪族炭化水素類、1,1,1−トリクロルエタン等のエタン誘導体、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸エチル等のエステル類、メチルエチルケトン等のケトン類、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、シクロヘキサノール(沸点161℃)等の脂環式炭化水素類、水、その他脂肪族炭化水素類、エーテル類、エチレン誘導体等及びこれらの混合物が挙げられる。これらの溶剤の中でも、好ましくは150℃以下、より好ましくは100℃以下の沸点を有する低沸点溶剤が、揮発又は蒸発する時間が短く好ましい。それらの中で安全性を考慮すると、トルエン(同111℃)、エタノール(沸点78.4℃)、イソプロピルアルコール(IPA)(同83℃)、水(同100℃)、酢酸エチル(同77.15℃)、メチルエチルケトン(同79.5℃)、1,1,1−トリクロルエタン(同74.1℃)、又はこれらの混合物が好ましい。また、溶剤を選定する際には、溶剤と接する面、例えば熱転写シートのインク面が接する場合であれば、インクを構成するバインダの溶解性を考慮することが好ましい。但し、沸点が低すぎると一般的に作業環境での飽和蒸気圧が高くなり、作業中に溶剤が多量に揮発又は蒸発し、安全性の高い溶剤を選択したとしても、溶剤の高濃度雰囲気になり好ましくない。従って、本発明で使用する溶剤の沸点は70℃以上であることが好ましい。
溶剤をコア上へ塗布する方法は限定されないが、霧吹き及び刷毛塗り等が好ましい。
【0021】
<コア>
本発明で用いるコアとしては、通常用いられるものであれば特に限定がなく、例えば、プラスチック製のコアおよび紙管等が挙げられる。ただし、コアとして紙管を用いると塗布された溶剤によっては、溶剤が紙管にすぐに吸収されてしまい、熱転写シートを紙管に仮固定することが困難となる場合がある。なお、紙管に溶剤を適用する場合、水はアルコール類等に比して蒸発速度が遅く、且つ紙管に対して適度の速度で吸収されるので、熱転写シートを紙管に容易に固定でき、且つ乾燥工程を要することなくエンドフリーの状態を達成することができることが確認できている。
【0022】
本発明では、熱転写シートの巻き始め側の端部には、任意で、検知フィルム、リードフィルム等を接続してもよい。
【0023】
(検知フィルム)
検知フィルムは、合成樹脂フィルムからなる基材の表面にアルミニウムが蒸着されたもの(透過検知型センサ用)、無蒸着のもの(反射検知型センサ用)が好適に用いられる。基材は、特に限定はないが、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、アラミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエチレンフィルム、セロファン等の合成樹脂フィルムであることが好ましい。基材の厚みは特に限定はないが、通常は5〜30μm程度である。また、アルミニウムの蒸着膜の厚さは400〜800Åであることが好ましい。
【0024】
(リードフィルム)
ポリエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、アラミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエチレンフィルム、セロファン等の合成樹脂フィルムのみのいわゆるリードテープが単独又は上記のような検知フィルムとともに熱転写リボンの巻始め部に設けられていてもよい。
【0025】
その他、必要により、ニアエンドを検知するための検知マークを印刷等により形成したり、または熱溶融性インク層の一部を他の部材に転写する等によりインクを一部剥がしたりして形成してもよい。
【0026】
(熱転写シートの構成)
熱転写シートの代表的な構成について説明するが、この説明は一般的な熱転写リボンの製造に共通するもので、本発明に用いることができる熱転写シートがこれらに限定されるものではない。熱転写シートは、一般的には、基材の一方の面に耐熱保護層を設け、基材の他方の面に剥離層を設け、その上に熱溶融性インク層を設けて構成する。
【0027】
基材としては、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、アラミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエチレンフィルム、セロファン等の合成樹脂フィルム、或いはコンデンサー紙、グラシン紙、トレーシング紙のような薄葉紙等が挙げられる。基材としては耐熱性フィルムが好ましく、特にポリエステルフィルムが価格、機械的強度、寸法安定性、耐熱性等の総合的見地から好ましい。基材の厚さは、一般的には1〜30μm、好ましくは2〜15μmである。
【0028】
基材の熱溶融性インク層が積層されている面とは反対側の面には、転写時の加熱から基材等を保護するために、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂とイソシアネート樹脂との反応生成物、または耐熱粒子を含むアクリル樹脂等を含む、所謂耐熱保護層を形成することが好ましい。
【0029】
熱溶融性インク層は、顔料または染料のような着色剤、ワックス、結着樹脂などを含有する。着色剤としては顔料および染料が含まれ、カーボンブラック、酸化鉄、群青、レーキレッド、酸化チタン、塩基性ベース系、ネオザポン系、ジスアゾ系、アゾ系、アントラキノン系、インジゴイド系、可溶性染料系、硫化系、フタロシアニン系、キノンイミン系、シアニン系、ニトロソ系、ニトロ系、スチルベン系、キノリン系、ピラゾロン系、金属錯塩系、ベンゾキノン系、ナフトキノ系等が挙げられるが、これらに限定されない。ワックスとしては、カルナウバワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス、キャンデリラワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、木ロウ、蜜ロウ、イボタロウ、羊毛ロウ、部分変性ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等が含まれ、これらに限定されない。結着樹脂としては、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、テルペン樹脂やロジン樹脂等の石油系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等が含まれ、これらに限定されない。
【0030】
また、熱溶融性インク層には本発明の目的を損ねない範囲で、必要に応じてその他の添加剤を含有させてもよく、例えば、クロマン系化合物、フェノール系化合物等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、4−チアゾリドン系化合物、紫外線吸収性ポリマー等の紫外線吸収剤等を含有させてもよい。またこの他に有機及び/または無機の充填材等の微粒子、離型剤、可塑剤、分散剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、消泡剤、レベリング剤等を含ませてもよい。
【0031】
上記熱溶融性インク層を含む各層の形成に用いられる材料は、例えばホットメルト法により、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸ブチル、ジオキサン等の溶媒に加えられ、必要に応じて、ボールミル、バスケットミル、アトライター等を用いて均一に分散、溶解された後、基材に塗布、乾燥される。尚塗布に際してはグラビアコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、バーコーター、各種ブレードコーター、カーテンコーター等の従来使用されている各種塗布装置を使用することができる。
【0032】
本発明に用いられる熱転写リボンは、黒色のみや赤色のみの単色であっても、シアン、マゼンダ、イエロー又はR、G、Bの三色、又は黒色を加えた4色、更に特色を設けた複数色の熱転写リボンであってもよく、その場合線順次、面順次のいずれであってもよい。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を挙げて、本発明を詳細に説明する。
実施例1
ポリエステルフィルムをリードフィルムとして用い、これにポリエチレンテレフタレートフィルム(25μm)の表面にアルミニウムの蒸着層が設けられたアルミ蒸着フィルム(麗光社製)をセロテープ(登録商標)CT405AP−15(ニチバン社製粘着テープ、商品名)により接続する。接続されたアルミ蒸着フィルムの他端に下記の方法により製造された熱転写媒体を同じくセロテープ(登録商標)CT405AP−15(ニチバン社製粘着テープ、商品名)により接続し、ボビンの巻き取るための熱転写シートを準備する。
【0034】
熱転写シートの作製
厚さ5μmのポリエチレンフタレート(PET)フィルムの一方の面に下記組成(I)の塗布液を塗布量が0.3g/mとなるようにダイレクトグラビアコーターを用いて塗布し、乾燥させて耐熱保護層を形成した。
組成(I)シリコーン樹脂 10部
トルエン 45部
MEK 45部
【0035】
上記PETフィルムの他方の面に下記組成(II)の塗布液を塗布量が0.5g/mとなるようにダイレクトグラビアコーターを用いて塗布し、乾燥させて剥離層を形成した。
組成(II)ポリエチレンワックス 9部
エチレン−酢酸ビニル共重合体 1部
トルエン 10部
【0036】
この剥離層上に下記組成(III)の塗布液を塗布量が1.0g/mとなるようにダイレクトグラビアコーターを用いて塗布し、乾燥させて熱溶融性インク層を形成し、熱転写シートを得た。
組成(III)
カルナバワックス 10部
テルペンフェノール樹脂 30部
カーボンブラック 10部
トルエン 100部
【0037】
得られた熱転写シートを、図8に示す巻き取り装置を用いてコアに下記の方法で巻き取った。コアとして1インチ(外径33〜34mm、幅80mm)のプラスチックボビンを用い、エタノールにイソプロピルアルコールを1%混合した溶剤を霧吹きにてコアに吹きかけ、吹きかけられた溶剤の上部を覆うように熱転写シートのリードフィルム側を巻き始め端部として貼り付けコアに巻き取り、熱転写リボンを得た。
【0038】
巻き取り完了後1時間以内に得られた熱転写リボンのプラスチックボビンの中空部内に、そのボビンの内径より小さい外径を有するアルミニウム棒を差し込み、アルミニウム棒の両端を水平に支持しながら、熱転写リボンの熱転写シートを繰り出していき、終端部がコアから離れる際の張力を確認した。終端部がコアから離れる際の張力に変動はなく、熱転写リボンの終端部がフリーな状態で巻き取られていたことを確認した。
【0039】
実施例2
エタノールにイソプロピルアルコールを1%混合した溶剤に代えて水を用いる以外は実施例1と同様に熱転写シートをコアとしてのプラスチックボビンに巻き取って熱転写リボンを製造した。
巻き取り完了後1時間以内に実施例1と同様の測定を行ったところ、熱転写リボンの終端部が離れる際に張力が0.2N増加した。プラスチックボビンの巻き取り面を確認したところ水分が残存していることが確認できた。そこで同様にして製造した熱転写リボンを50℃で30分乾燥炉に導入した後、同様の測定を行ったところ終端部が離れる際の張力変化はなく、終端部がフリーな状態となっていることがわかった。また、プラスチックボビンの巻き取り面を確認したところ、水分の残存も確認できなかった。
【0040】
実施例3
プラスチックボビンに代えて1インチ紙管(外径33〜34mm、幅80mm)を用いた以外は実施例2と同様にして熱転写リボンを製造した。
得られた熱転写リボンを巻き取り完了後1時間以内に実施例1および2と同様の測定を行ったところ、終端部がコアから離れる際の張力に変動はなく、熱転写リボンの終端部がフリーな状態で巻き取られていたことを確認した。また、紙管の表面を目視及び触手にて確認したところ、多少の湿りは感じられたが、明確な水分の残留は確認されなかった。
【0041】
実施例4
エタノールにイソプロピルアルコールを1%混合した溶剤に代えて酢酸エチルを用いた以外は実施例1と同様にして熱転写リボンを製造した。巻き取り完了後1時間以内に実施例1と同様の測定を行ったところ、熱転写リボンの終端部が離れる際の張力変動は確認されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の製造方法により得られた熱転写リボンを示す概略図である。
【図2】熱転写シートの巻き取り装置に用いるボビンの構成および溶剤、好適には低沸点の溶剤を塗布した状態を示す概略図である。
【図3】巻き取るべき熱転写シートをコアに貼り付ける態様を示す概略図である。
【図4】熱転写シートをコア上へ巻き込む態様を示す概略図である。
【図5】熱転写シートをコア上へ巻き取った状態を示す概略図である。
【図6】巻き取った熱転写リボンとスペーサとをボビンのシャフトから取り外した状態を示す概略図である。
【図7】印字を行った後の熱転写リボンの終端部分(巻き始め部分)を示す概略図である。
【図8】本発明の方法に使用する熱転写シートの巻き取り装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0043】
1 熱転写リボン
2 熱転写シート
3 コア
5 コア
6 スペーサ
7 ボビンのシャフト
8 塗布した溶剤
9 熱転写シートの巻き終わり部分
81 熱転写シートの原反
82 スリット刃
83 熱転写シート
84 コア
85 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアに熱転写シートを巻き取ることよりなる熱転写リボンの製造方法において、コアに溶剤を塗布し、塗布した溶剤を介して熱転写シートの巻き始め部をコアに仮固定し、熱転写シートを巻き取ることを特徴とするエンドフリーの状態とした熱転写リボンの製造方法。
【請求項2】
前記溶剤が70℃以上150℃以下の沸点を有する低沸点溶剤であることを特徴とする請求項1記載の熱転写リボンの製造方法。
【請求項3】
前記低沸点溶剤がトルエン、エタノール、イソプロピルアルコール、水、酢酸エチル、メチルエチルケトン、1,1,1−トリクロルエタン又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱転写リボンの製造方法。
【請求項4】
前記熱転写シートの巻き取り後、コアに塗布した溶剤を乾燥する乾燥工程を有することを特徴とする請求項1乃至3記載の熱転写リボンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−301794(P2007−301794A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131384(P2006−131384)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(505091905)ゼネラルテクノロジー株式会社 (117)
【Fターム(参考)】