説明

熱転写磁気記録媒体

【課題】熱転写に伴う印字の耐熱性、耐擦過性の低下を防止し高耐熱性で耐擦過性の良好な熱転写磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】熱転写性磁気インク層と支持体の間にTg点が90〜170℃である樹脂と融点が90〜150℃であるワックス粒子を含んだ透明層を塗設することを特徴とする熱転写磁気記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な磁気記録媒体に関する。さらに詳しくは、本発明は磁気インク文字読出装置(以下、MICRと略す)によって読みとられる高い磁気特性を持った印字像を熱転写プリンタにより簡単に形成し得るようにした熱転写磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
MICRは、磁性体粉末を含有したインクを用いて手形、小切手、クレジットカード、定期券、交通量調査票などに印字された文字や記号などの印字像を磁気ヘッドで読みとるものであって、磁気ヘッドは各種の文字や記号に対応する磁気部分の変化を所定の信号に変え、この電圧を検出して文字や記号を識別するものである。しかして磁気ヘッドによって読みとられる文字や記号は、所定の磁気信号レベルを有していると共に、所定の字体、寸法および寸法許容範囲を有していなければならない。そのため、たとえばアメリカ銀行協会で採用されているE13B書体について我が国でもJIS X 9002で許容範囲を規定している。
【0003】
JIS X 9002に規定されるE13B書体は数字10個(0〜9個)および特殊記号4個の合計14個の文字で構成されており、各文字について高さ、文字幅、かどの半径、さらにこれらの各公称寸法に対する許容範囲およびボイドの許容範囲が規定されている。MICR用文字は、前記E13BのほかにCMC−7と呼ばれる字形があり、このものは、7本の縦バーを2種類の間隔で配列して文字が形成され、2種類の間隔を組み合わせることによって磁気的に判別し得るように数字10個、英大文字26個、特殊記号5個の合計41個の文字からなっている。かかるCMC−7の寸法、磁気特性などの規格はEMCA(欧州電子計算機製造工業会)で決められている。
【0004】
これらのMICR用の印字像は、これまで磁性体粉末とベヒクルとからなる磁気インク組成物をプラスチックフィルムなどの基材上に塗布乾燥して得られる感圧転写磁気記録媒体を用いてタイプライターのごとき感圧プリンタにより前記磁気インクを所定の用紙に感圧転写せしめて形成されていたが、最近では低騒音化、低コスト化のために熱転写プリンタに置換されつつある。
【0005】
熱転写プリンタによる利点は、MICR文字のみでなく発行人や名義人等の情報も同時に印刷でき、システムのコンパクト化を図れることもあげられる。
【0006】
しかしながら、MICRを使用する小切手や手形は流通経路の中で再度レーザービームプリンタで名義人を印刷したり、自動読取装置で何度も搬送されるなど耐熱性や耐擦性を要求され、レーザービームプリンタの熱ロールに熱転写文字が触れて文字が融けてゴーストが発生したり、自動読取装置のローラーで擦られて熱転写文字が削れて読み取りができなくなるなどの問題があった。
【0007】
熱転写磁気記録媒体の耐熱性や耐擦性を向上させるには、樹脂のTg点を上げたり、含まれる低融点成分の量を減量させることで対応可能であるが、転写時の印字の切れ性の劣化や被転写紙の凹凸に追従することができず、余分な部分の転写や印字の欠け(ボイド)によりMICRの読み取りに支障を生じてしまうという欠点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上記の現状に鑑み、熱転写化に伴う印字の耐熱性、耐擦過性の低下を防止し、高耐熱で耐擦過性の良好な熱転写磁気記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(1)支持体上に磁性体顔料とバインダーからなる熱転写性磁気インク層が設けられた熱転写性磁気シートにおいて、該熱転写性磁気インク層と支持体の間に少なくともTg点が90〜170℃である樹脂と融点が90〜150℃であるワックス粒子が含まれる耐熱透明層を塗設したことを特徴とする熱転写磁気記録媒体に関する。
【0010】
さらに本発明は、(2)前記耐熱透明層に含まれる樹脂とワックス粒子の配合比が9:1〜4:6の範囲であることを特徴とする(1)項記載の熱転写磁気記録媒体であり、加えて(3)前記耐熱透明層の平均厚みが0.1〜2.0ミクロンであることを特徴とする(1)または(2)項記載の熱転写磁気記録媒体であり、さらに(4)前記耐熱透明層の樹脂がアクリル樹脂および/またはセルロース化合物であることを特徴とする(1)〜(3)項記載の熱転写磁気記録媒体であり、さらに(5)Tg点が90〜110℃のアクリル樹脂および/またはTg点が110〜170℃であるセルロースエステル化合物であることを特徴とする(1)〜(3)項記載の熱転写磁気記録媒体に関する。
【発明の効果】
【0011】
以上詳述したことから明らかなように本発明によれば、高Tg点樹脂としてのアクリル樹脂の持つ耐熱性、強靭さ、耐候性とセルロースエステル化合物の持つ耐熱性を有効に引き出し、かつ高Tg点樹脂バインダーによる感熱性の劣化を補うためにワックス粒子を添加し、かつ層の厚みを薄膜化することにより切れ性を保持することができる。
【0012】
なお本発明における磁気印字像は熱転写プリンタにより得られるものであるために、前述のごときE13B、CMC−7などの文字のみに限定されるものではなく、他の所定の文字をも容易に形成し得ることはもちろんである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の熱転写磁気記録媒体の基本構成は、サーマルヘッドなどの加熱装置によって基材の裏面から熱を加えられた場合に、熱が加えられた部分のインクが溶融し紙に付着して溶融した部分のみ他から分離して被転写紙に転移されて印像を形成するところの選択転写性の熱転写性磁気インク層を支持体上に有し、該熱転写性磁気インク層と支持体の間に耐熱透明層を有する構成であり、該耐熱透明層は、少なくともTg点が90〜170℃である樹脂と融点が90〜150℃であるワックス粒子が含まれ、さらに必要により適宜な体質顔料、分散剤を有機溶剤に加え均一に混合して調整される。該熱転写磁気インク層はワックス類、樹脂類を主成分としてなるベヒクル、強磁性の磁性体粉末、さらに必要により適宜な着色剤、体質顔料、分散剤を有機溶剤に加え、均一に混合して支持体上に順次塗布乾燥せしめて形成され、必要に応じて耐熱透明層と支持体の間にワックスを主成分とする離型層を塗設してもよい。
【0014】
本発明の特徴は、前記耐熱透明層において、少なくともTg点が90〜170℃である樹脂と融点が90〜150℃であるワックス粒子が含まれることにある。
【0015】
ここでいう樹脂とは代表としてアクリル樹脂、セルロース化合物があげられ、アクリル樹脂としてはアクリル酸あるいはメタクリル酸、これらのたとえばメチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、iso−プロピルエステル、n−ブチルエステル、iso−ブチルエステル、t−ブチルエステル等の炭素数1〜4の低級アルキルエステル等のモノマーの重合体あるいは共重合体、さらにはこれらモノマーの一種または二種以上と共重合可能なモノマー、たとえば酢酸ビニル、スチレン等との共重合体などがあげられる。これらアクリル樹脂の分子量は25,000〜550,000、さらに好ましくは50,000〜150,000である。本発明に用いられるアクリル樹脂としては、Tg点が90〜110℃の範囲であるものが好ましい。アクリル樹脂のTg点が90℃より低い場合、転写感度は良好となるが、耐熱性や耐擦性で性能が不足する。また、アクリル樹脂のTg点が110℃より高い場合、印字感度が低下し低温環境下での印字が劣化したり、寒冷地での使用が不可能となる恐れが考えられる。
【0016】
ここでいうセルロースエステル化合物としては、セルロースの炭素数1〜4の低級アルキルエステル等があげられる。アルキルエステルの例としては、たとえばメチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、iso−プロピルエステル、n−ブチルエステル、iso−ブチルエステル、t−ブチルエステル等があげられる。これらセルロースエステルの分子量は10,000〜70,000、さらに好ましくは20,000〜65,000である。本発明に用いられるセルロースエステル化合物としては、Tg点が110〜170℃の範囲であるものが好ましい。セルロースエステル化合物のTg点が110℃より低い場合、転写感度は良好となるが、耐熱性や耐擦性で性能が不足する。また、セルロースエステル化合物のTg点が170℃より高い場合、印字感度が低下し低温環境下での印字が劣化したり、寒冷地での使用が不可能となる恐れが考えられる。
【0017】
前記条件を充足すれば、従来公知のアクリル樹脂、セルロースエステル化合物がいずれも使用でき、これらは、1種でも2種以上を組み合わせても良い。
【0018】
さらに好ましくは、前記耐熱透明層に含まれる樹脂とワックス粒子の配合比が9:1〜4:6の範囲であり、加えて前記耐熱透明層の平均厚みが0.1〜2.0ミクロンであることにある。
【0019】
本発明に使用される前記耐熱透明層に含まれるワックス粒子は、平均粒径が1〜10ミクロンの範囲で融点が90〜150℃であることが好ましい。
【0020】
ワックス粒子の平均粒径が1ミクロンより小さい場合、樹脂の切断効果が得られにくく大量に添加が必要となり耐熱性、耐擦性が低下する。また、平均粒径が10ミクロンより大きい場合、塗布時の積層性や転写時のドット再現性が劣化する。
【0021】
ワックス粒子の融点が90℃より低い場合、転写感度は良好となるが、耐熱性が不足する。また、ワックス粒子の融点が150℃より高い場合、印字感度が低下し低温環境下での印字が劣化したり、寒冷地での使用が不可能となる。
【0022】
前記条件を充足すれば、従来公知のワックス粒子がいずれも使用でき、これらは、1種でも2種以上を組み合わせても良い。
【0023】
本発明における前記樹脂と前記ワックス粒子の前記耐熱透明層の中の固形分比率は、9:1〜4:6の範囲である。前記樹脂と前記ワックス粒子の前記耐熱透明層の中の固形分比率が、前記範囲外でワックス粒子が過剰となる場合、樹脂の不連続性が進むので転写感度は良好となるが、層全体としてはTg点が低くなるので耐熱性が劣化する。前記範囲外で樹脂が過剰となる場合、耐熱性や耐擦性は申し分なくなるが層自体の凝集力が強まり、転写に要する切断力が大きくなってしまい印字の鮮明性が損なわれる。
【0024】
さらに本発明で推奨される前記耐熱透明層の平均厚みは0.1〜2.0ミクロンである。前記耐熱透明層の平均厚みが0.1ミクロンより薄い場合、転写した際の被覆効果が少なくなり、耐熱性、耐擦性が低下する。また、2.0ミクロンより厚い場合、耐熱性や耐擦性は良好であるがコスト面や印字の鮮明性で劣化する。
【0025】
本発明における熱転写性磁気インク層は、磁性体粉末20〜70%、粘着樹脂10〜50%、ワックス類0〜30%、さらに要すれば着色剤0〜30%をトルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、ジオキサン、エチルベンゼンなどの有機溶剤に均一に分散して形成される。
【0026】
磁性体粉末の含有量は、感圧転写性磁気インク層の総量に対して20〜70%であるのが好ましく、磁性体粉末の含有量が前記範囲より少ないときは、得られる印字像の磁気特性が低く、MICRによる読みとりに支障をきたし、また前記範囲より大なるときはそれだけベヒクルの含有量が少なくなり、熱転写性および用紙に対する印字像の固着強度が低下する傾向がある。
【0027】
前記磁性粉末としては、従来より種々の磁気記録媒体に使用せられる磁性酸化鉄がそのまま使用し得る。かかる磁性酸化鉄としては、αFe23・H2Oを出発原料として得られる針状のガンマ型酸化鉄(γFe23)があげられ、該酸化鉄は、得られる磁気記録媒体の保磁力、磁気配向性、消去効果、熱安定性などが不安定とならないように微粉末状で使用されている。
【0028】
本発明においては、化合物結合水および物理的含有水を有さないガンマ型、スピネル型、マグネトプラムバイト型、ガーネット型、オルソフェライト型などの磁性酸化鉄または、鉄以外の金属酸化物またはこれら両者の共融物である磁性体がいずれも好適に使用せられるものである。前記鉄以外の金属酸化物としては、酸化クロムCr23などがあげられる。
【0029】
また前記共融物としては、CoO・Fe23、MnO・Fe23、NiO・Fe23、CuO・Fe23、MgO・Fe23、ZnO・Fe23などがあげられる。
【0030】
これら磁性粉体はいずれも針状であって、そのアスペクト比(L/D)が5:1〜20:1、なかんづく5:1〜10:1であり、直径が0.01〜1ミクロン、なかんづく0.02〜0.5ミクロン、長さが0.05〜20ミクロン、なかんづく0.1〜5ミクロンであるのが好ましい。
【0031】
前記粘着樹脂としては、たとえばエチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、炭化水素系タッキファイヤー等があげられる。
【0032】
前記着色剤としては、通常の染料や顔料が制限なしに使用し得るものである。
【0033】
前記ワックスとしては、たとえば木ロウ、セレシンワックス、鯨ロウ、カルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、キャンデリラワックスなどがあげられる。
【0034】
本発明における前記熱転写性磁気インク層の厚みは、1〜10ミクロンの範囲が好適である。
【0035】
本発明において必要に応じて設けることのできる、耐熱透明層と支持体の間に設ける離型層としては、たとえばパラフィンワックス、木ロウ、セレシンワックス、鯨ロウ、カルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、キャンデリラワックスなどのワックス類を主成分として必要に応じて樹脂を添加しても良い。
【0036】
本発明における前記離型層の厚みは、0.1〜5.0ミクロンの範囲が好適である。
【0037】
本発明に用いる基材シートとしては、従来公知の種々のものを用いることができ、たとえばポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、セルロース系等のプラスチックフィルム類;コンデンサー紙、ラミネート紙、グラシン紙等の紙類;紙−プラスチックフィルムのごときラミネートフィルム紙;アルミ箔のごとき金属箔等がいずれも好適に用いられ、厚さは一般に2〜100ミクロン、さらには3.5〜6.0ミクロンのものが良好な転写感度を得る上で好ましく用いられる。
【0038】
本発明の熱転写磁気記録媒体は、その使用にあたり、所定の用紙(たとえば小切手など)と重ね合わされ、サーマルヘッドを備えた熱転写プリンタにパンケーキ状に巻かれたリボン状態で装着され、リボンの背面から当てられたサーマルヘッドの発熱によって熱のかかった部分が溶融して被転写紙に融着し、磁気印像を用紙上に転写せしめる。
【0039】
本発明では、耐熱性、擦過性と転写感度、印字の鮮明性を両立するために耐熱透明層を導入し含有される樹脂の物性の限定、切断材としてのワックス粒子の物性の限定を行い、樹脂とワックス粒子の比率の範囲規定および耐熱透明層の厚み範囲規定により最も効率的な耐熱性・耐擦性と転写性能を保持できる基本構成を定義づけた。
【0040】
基本構成においては、アクリル樹脂の持つ耐熱性、強靭さ、耐候性とセルロースエステル化合物の持つ耐熱性を有効に引き出し、かつ高Tg点樹脂バインダーによる感熱性の劣化を補うためにワックス粒子を添加し、かつ層の厚みを薄膜化することにより切れ性を保持することができる。
【0041】
なお本発明における磁気印字像は熱転写プリンタにより得られるものであるために、前述のごときE13B、CMC−7などの文字のみに限定されるものではなく、他の所定の文字をも容易に形成し得ることはもちろんである。
【0042】
[実施例および比較例]
次に、本発明を実施例および比較例でさらに具体的に説明するが、本発明はこの実施例で限定されるものではない。
【0043】
厚さ6ミクロンのポリエステルフィルム上に下記に示される処方の離型層をホットメルトコーターで1ミクロンの厚みで塗布した後、耐熱透明層用塗工液をバーコーターで均一に塗布し、乾燥して塗膜とし、その上にバーコーターで3ミクロンの厚みで熱転写性磁気インク層を積層して熱転写磁気記録媒体を製造した。
【0044】
離型層処方
パラフィンワックス155°F 90部
エチレン酢酸ビニル樹脂 EVA#310 10部
【0045】
熱転写性磁気インク層
磁性鉄粉 15部
エチレン酢酸ビニル樹脂 EVA#310 15部
トルエン 70部
【0046】
耐熱透明層処方
樹脂明細を表1に示した。
【0047】
【表1】

【0048】
耐熱透明層塗工液処方実施例を表2に示した。
【0049】
【表2】

【0050】
耐熱透明層塗工液処方実施例を表3に示した。
【0051】
【表3】

【0052】
前記耐熱透明層塗工液は下記に示す4つの手順により調製した。
(手順1)樹脂の全量と溶剤の全量をホモジナイザーを用いて溶解する。
(手順2)ワックスをトルエンで加熱溶解する。
(手順3)手順1で得られた樹脂溶液を手順2のワックス溶液と混合しワックスを析出させる。
(手順4)手順3の析出混合液をボールミルで180分間分散する。
【0053】
前記で得られた各熱転写磁気記録媒体について、次の項目を評価した。結果を表1および表2に示す。
【0054】
評価試料の作製
実施例および比較例で得た感圧転写磁気記録媒体をAveryDennison社製64−05熱転写プリンタに装着しベック平滑度60秒の上質紙を被転写紙としてE13B書体を4inch/secの印字速度、100%のコントラストで転写した。
【0055】
1.文字鮮明性の評価
前記印字資料をRDM社製MICR Qualifier GT for Windows(登録商標)で読み取り検査して読み取りエラーの有無を確認した。
【0056】
読み取りエラーが発生しないことが鮮明性で問題ないといえる。
【0057】
2.耐擦過性の評価
前記印字資料上に500g/cm2の荷重をかけた印字していない指定紙を重ね5回往復した。擦られた磁性印字像の変形状態を次の基準で評価した。
◎・・磁性印字像の変化なし
○・・磁性印字像の輪郭の変化は見られるが規格内である
△・・磁性印字像の輪郭変化と地汚れが発生
×・・磁性印字像が規格外まで変形、汚損される
【0058】
3.耐熱性の評価
前記印字資料を被転写氏としてレーザービームプリンタ:シャープ製ARL501に装着し、無地の状態で複写を行った。
【0059】
熱ローラーを通過した磁性印字像の変形状態と無印字部分の汚れ(ゴースト)を次の基準で評価した。
◎・・磁性印字像の変化なし、ゴースト無し
○・・磁性印字像の輪郭の変化は見られるがゴースト無し
△・・磁性印字像の輪郭変化とゴーストが発生
×・・磁性印字像が規格外まで変形、はっきりとしたゴーストが発生
【0060】
表4に実施例の評価結果を示した。
【0061】
【表4】

【0062】
表5に比較例の評価結果を示した。
【0063】
【表5】

【0064】
各評価項目に対する許容値
文字鮮明性の評価=エラー無きこと
耐擦過性=○以上であること
耐熱性=○以上であること
【0065】
表4および表5の結果比較より実施例においては、いずれの場合も文字鮮明性が良好な磁性印字像を得ることができた。また、その磁性印字像は、耐擦過性、耐熱性に優れた性質を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に磁性体顔料とバインダーからなる熱転写性磁気インク層が設けられた熱転写性磁気シートにおいて、該熱転写性磁気インク層と支持体の間に少なくともTg点が90〜170℃である樹脂と融点が90〜150℃であるワックス粒子が含まれる耐熱透明層を塗設したことを特徴とする熱転写磁気記録媒体。
【請求項2】
前記耐熱透明層に含まれる樹脂とワックス粒子の配合比が9:1〜4:6の範囲であることを特徴とする請求項1記載の熱転写磁気記録媒体。
【請求項3】
前記耐熱透明層の平均厚みが0.1〜2.0ミクロンであることを特徴とする請求項1または2記載の熱転写磁気記録媒体。
【請求項4】
前記耐熱透明層の樹脂がアクリル樹脂および/またはセルロース化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱転写磁気記録媒体。
【請求項5】
前記耐熱透明層の樹脂が、Tg点が90〜110℃のアクリル樹脂および/またはTg点が110〜170℃であるセルロースエステル化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱転写磁気記録媒体。

【公開番号】特開2009−6656(P2009−6656A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172324(P2007−172324)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000237237)フジコピアン株式会社 (130)
【Fターム(参考)】