熱間圧延用高圧流体式脱スケール方法および脱スケール装置
【課題】 熱間圧延用高圧流体式脱スケール方法および脱スケール装置を提供する。
【解決手段】 本装置は少なくとも1つの脱スケールユニットを含み、脱スケールユニットの主管ヘッダーの軸方向と圧延素材搬送方向が交差する。主管ヘッダーはジェット流体を供給するために使用される。脱スケールユニットの複数のノズルは主管ヘッダー上に配置され、各ノズルは圧延素材搬送方向と対向する方向に向けられ、衝突領域を形成するように圧延素材の表面上に流体を射出する。隣接する衝突領域は実質的に互いに平行であり、かつ圧延素材の表面上に互い違いのパターンで与えられる。縦方向に沿った衝突領域の中心線は特定距離だけ離間され、かつ中心線は圧延素材搬送方向に対して実質的に垂直である。隣接ノズルからのジェット噴霧のはね返りにより引き起こされる干渉は低減される。したがって脱スケール品質が改善される、すなわち製品の表面の巻き込みスケールが低減され、製品の表面品質が強化される。
【解決手段】 本装置は少なくとも1つの脱スケールユニットを含み、脱スケールユニットの主管ヘッダーの軸方向と圧延素材搬送方向が交差する。主管ヘッダーはジェット流体を供給するために使用される。脱スケールユニットの複数のノズルは主管ヘッダー上に配置され、各ノズルは圧延素材搬送方向と対向する方向に向けられ、衝突領域を形成するように圧延素材の表面上に流体を射出する。隣接する衝突領域は実質的に互いに平行であり、かつ圧延素材の表面上に互い違いのパターンで与えられる。縦方向に沿った衝突領域の中心線は特定距離だけ離間され、かつ中心線は圧延素材搬送方向に対して実質的に垂直である。隣接ノズルからのジェット噴霧のはね返りにより引き起こされる干渉は低減される。したがって脱スケール品質が改善される、すなわち製品の表面の巻き込みスケールが低減され、製品の表面品質が強化される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は脱スケール方法と脱スケール装置に関し、具体的には、脱スケール目的のために、鋼帯、鋼板、成形鋼、棒鋼、線材等の圧延などの熱間圧延プロセスにおいて半完成品(圧延素材と呼ぶ)の表面のスケールを除去するために高圧流体を適用する脱スケール方法と脱スケール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
一般的には、圧延素材の表面上のスケールは、鋼帯または鋼板等の従来の熱間圧延プロセスにおける巻き込みスケール(rolled-in-scale)欠陥を防止するために圧延に先立って除去さなければならない。したがって高圧流体式脱スケール装置(high-pressure fluid descaling apparatus)は通常、圧延機の前に配置される。
【0003】
図1(a)は従来の高圧流体式脱スケール装置のノズルの射出により形成される衝突領域の概略図を示す。図1(b)は脱スケール装置の配置の概略図を示す。図1(c)は従来の高圧流体式脱スケール装置の側面図を示す。図1(a)において、Bはジェット幅、Eはノズル距離、Oは重なり、γはヘッダー軸に対するノズル軸のオフセット角である。図1(b)においてαはノズル噴霧角、図1(c)のβは傾斜(進み)角である。
【0004】
従来の脱スケール装置の図1(a)〜図1(c)に示すように、傾斜角βは、鋼帯または鋼板等の圧延素材内の圧延欠陥を防止するようにスケールを上流に導くものである。換言すれば、一般的な従来の脱スケール法は圧延素材搬送方向に対向するようにスケールを洗い流し、傾斜角βは通常、約15°である。
【0005】
図2は従来の隣接ノズル間のジェット噴霧の重なりの周りの図1(b)のA−A断面を示す。図3は従来のノズルのジェット噴霧のはね返りを示す。ここでXははね返りによる発散角である。図4は2つの隣接衝突領域の浸食実験におけるアルミニウム板の使用を示す。ここでGは空白領域の幅、Wは浸蝕された後の軟化領域の幅である。
【0006】
図1(a)〜図3に示すように、ノズル11からのジェットカーテン12、13は、これらが互いに干渉することにより脱スケールの均一性を低減するのを防止するためにオフセット角γだけそらされる。圧延素材10の表面上の衝突領域14、15(連続ノズル11により射出されたジェットカーテン12、13により形成される)はスケールを均一に除去するように部分的に重ねられる。しかしながら試験用板としてアルミニウム板を使用することにより浸食試験を反復して行ったが、試験結果は期待したものではなかった。図4に示すように、隣接ノズル11の衝突領域14、15は重ならず、浸食効果が無い空白領域(G)が生じるということがわかった。
【0007】
空白領域(G)は、主として、重なり領域の背後のジェットカーテン13からのはね返り流体16が図2に示すように重なり領域前方のジェットカーテン12と干渉するために生じる。ジェットカーテン12の一部は、アルミニウム試験板上の重なり領域に効果的に到達しないことがあり、したがって衝突力は著しく低減される。別の重要な理由は、はね返り流体は圧力の低い2つの側面の方へ広がる傾向があるということである。その結果、はね返り流体16は図3に示すように外側に発散することになる。
【0008】
空白領域(G)では、わずかな痕跡だけが出現する。軟化領域(W)では、粗表面がアルミニウム試験用板上に形成されるが、浸食痕跡の幅と深さは狭くかつ浅くなる。換言すれば、空白領域(G)と軟化領域(W)に対する衝突力または脱スケール効果は、隣接ノズルからのジェット噴霧のはね返りにより引き起こされる干渉のために低減される。
【0009】
空白領域(G)と軟化領域(W)の存在は従来の高圧流体式脱スケールノズル11が適切に配置されていないことを示し、これはスケールが巻き込まれる(rolled in)主な理由の1つである。しかしながら従来の技術に関し、その問題は、衝突領域14と15の不十分な重なりを引き起こすノズル11の不適切な配置または脱スケール装置の不適切な配置としばしば見なされている。
【0010】
したがってはね返り流体が隣接ノズルのジェットカーテンから出現する重なり領域上の干渉を低減するために、熱間圧延プロセスのための高圧流体式脱スケール方法および装置を提供することは革新的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、熱間圧延プロセスにおいて適用される高圧流体式脱スケール方法および装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本装置は、主管ヘッダー(main pipe header)と複数のノズルとを含む少なくとも1つの脱スケールユニットを含み、圧延素材の表面上の主管ヘッダーの軸方向の投射線と圧延素材搬送方向とが交差し、主管ヘッダーはジェット流体を供給するために使用される。ノズルは主管ヘッダー上に配置される。各ノズルは、圧延素材の表面からスケールを浸蝕するように圧延素材搬送方向と対向する方向に向けられる。ノズルから射出されるジェット流体は、圧延素材の表面上に複数の衝突領域を形成し、その領域はお互いに互い違いに平行である。衝突領域の縦方向に沿った衝突領域の中心線は一様に離間され、かつ圧延素材搬送方向に垂直である。
【0013】
本発明による熱間圧延プロセスにおいて適用される高圧流体式脱スケール方法および脱スケール装置は、隣接ノズルのジェットカーテンからのはね返り流体により引き起こされる干渉を低減し、これにより脱スケール品質を改善し、圧延素材の表面上のスケールを低減することができ、ひいては製品の表面の品質を改善する。実際上、本発明は、熱間圧延プロセス、例えば鋼帯、鋼板、成形鋼、棒鋼と線材等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は従来の高圧流体式脱スケール装置のノズルの射出により形成される衝突領域の概略図、(b)は従来の高圧流体式脱スケール装置の配置の概略図、(c)は従来の高圧流体式脱スケール装置の側面図を示す。
【図2】従来の隣接ノズル間のジェット噴霧の重なりの周りの図1(b)のA−A断面を示す。
【図3】従来のノズルのジェット噴霧のはね返りを示す。ここでXははね返りによる発散角である。
【図4】2つの隣接衝突領域の浸食実験におけるアルミニウム板の使用を示す。
【図5】(a)は本発明の第1の実施形態による熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置のノズルのジェットカーテンにより圧延素材の表面上に形成される衝突領域の概略図、(b)は本発明の第1の実施形態による熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置の脱スケールノズルの配置の概略図、(c)は本発明の第1の実施形態による熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置の側面図を示す。
【図6】本発明の第1の実施形態によるノズルの3つの異なる配置の概略図を示す。
【図7】本発明の第1の実施形態によるノズルの3つの異なる配置の概略図を示す。
【図8】本発明の第1の実施形態によるノズルの3つの異なる配置の概略図を示す。
【図9】本発明の第1の実施形態による延在部を有する熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置の概略図を示す。
【図10】本発明の第1の実施形態による延在部を有する熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置の概略図を示す。
【図11】本発明の第2の実施形態による熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置の概略図を示す。
【図12】試験用板としてアルミニウム板を使用する従来の実験のノズルの配置に基づく隣接ノズルのジェットカーテンによりアルミニウム板の表面上に形成される浸食痕跡をシミュレートする概略図を示す。
【図13】本発明に基づく隣接ノズルのジェットカーテンによりアルミニウム板の表面上に形成される浸食痕跡をシミュレートする概略図を示す。
【図14】本発明に基づく隣接ノズルのジェットカーテンによりアルミニウム板の表面上に形成される浸食痕跡をシミュレートする概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
図5(a)は、本発明の第1の実施形態による熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置のノズルのジェットカーテンにより圧延素材の表面上に形成される衝突領域をシミュレートする概略図を示す。図5(b)は、本発明の第1の実施形態による熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置の脱スケールノズルの配置の概略図を示す。図5(c)は、本発明の第1の実施形態による熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置の側面図を示す。
【0016】
図5(a)〜図5(c)に示すように、本発明の第1の実施形態による熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置2は、主管ヘッダー21と複数のノズル22とを含む少なくとも1つの脱スケールユニット20を含む。圧延素材の表面上の主管ヘッダー21の軸方向の投射線と圧延素材3の圧延素材搬送方向は交差し、主管ヘッダー21はジェット流体を供給するために使用される。本発明の実施形態では、主管ヘッダー21の軸方向は圧延素材搬送方向に対し垂直である。圧延素材3はストリップ、板、鋼片、棒、棒、成形ビーム等であってよい。
【0017】
ノズル22は主管ヘッダー21上に配置される。各ノズル22は圧延素材搬送方向と対向する方向に向けられる。すなわち高圧流体による脱スケールジェットの方向は圧延素材搬送方向と反対である。本発明の実施形態では、ノズル22は複数の第1のノズル221と第1のノズル221に隣接する複数の第2のノズル222とを含む。
【0018】
第1のノズル221と第2のノズル222は、複数の第1の衝突領域31と第1の衝突領域31に隣接する複数の第2の衝突領域32とを形成するように圧延素材3の表面上に流体を射出し、2つの領域はお互いに互い違いに平行である。第1の衝突領域31と第2の衝突領域32は圧延素材3の表面上の圧延方向に重ねられる。衝突領域の縦方向に沿った領域の中心線は距離Dだけ一様に離間され、かつ圧延素材搬送方向に垂直である。
【0019】
本実施形態では、第1のノズル221とその隣接する第2のノズル222は主管ヘッダー21の軸方向に沿って離間され、互い違いに配置される。すなわち第1のノズル221はジェットカーテン23を射出し、隣接する第2のノズル222はジェットカーテン24を射出し、これらが衝突領域31を形成する。衝突領域32は連続ノズルにより配置される次の衝突領域に生成される。ノズルとその隣接するノズルは互い違いに配置される。したがって衝突領域は個々に生じる(図5(a)と図5(b)を参照)。
【0020】
第1のノズル221と第2のノズル222の位置は、図5(c)に示すように第1のノズル221の中心線223とその隣接する第2のノズル222の中心線224が互いに平行であり、かつ主管ヘッダー21の軸を通る放射状線212に対し対称となるような態様で配置されてもよい。あるいは第1のノズル221の中心線223とその隣接する第2のノズル222の中心線224は図6に示すように互いに平行であり、かつ主管ヘッダー21の軸を通らない放射状線212に対し対称である。ここでは第2のノズル222の中心線224と主管ヘッダー21の軸211が交差する。
【0021】
第1のノズル221の中心線223と第2のノズル222の中心線224が互いに平行である配置では、Dは第1の衝突領域31と第2の衝突領域32間の距離であり、D’は第1のノズル221と第2のノズル222間の距離であり、βは第1のノズル221/第2のノズル222の中心線と圧延素材の表面の法線との傾斜角である。その関係はD’=Dcosβとなるであろう。
【0022】
あるいは、第1のノズル221と第2のノズル222の位置はそれらの対応する中心線が互いに平行にならない態様で配置されてもよい。この場合それらの中心線223と224は図7と図8に示すように縦方向に沿った主管ヘッダー21の軸211と交差してもよいし、交差しなくてもよい。
【0023】
本配置では、Dは第1の衝突領域31と第2の衝突領域32間の距離であり、Hは圧延素材の表面から中心線223、224の交点まで距離である。β1は第1のノズル221の中心線223と圧延素材の表面の法線との第1の傾斜角であり、β2は第2のノズル222の中心線224と圧延素材の表面の法線との第2の傾斜角である。その関係はD=H(sinβ1−sinβ2)となるであろう。
【0024】
また図9と図10に示すように、本発明による熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置2は柱(平方柱または円柱等)と見なされる延在部5をさらに含んでもよい。延在部5は、ただ1つがすべてのノズル22を主管ヘッダー21に接続する形式、あるいは少なくとも1つが1つまたは複数のノズル22を主管ヘッダー21に接続する形式のいずれかでよい。延在部5を有する熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置2では、第1のノズル221の中心線223とその隣接する第2のノズル222の中心線224は図9と図10に示すように互いに平行であってもよいし、平行でなくてもよい。
【0025】
各単一ノズルに加えられる延在部5はノズル22間の距離が大きい場合により好適であり、一方、2つ以上のノズル22に集合ユニットとして加えられる延在部5はノズル22間の距離が小さい場合により好適である。
【0026】
図11は、本発明の第2の実施形態に基づく熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置の概略図を示す。脱スケール装置6は図5(c)で述べたように2列の脱スケールユニット20を含む。前方の脱スケールユニット20内のノズル22の中心線は後方の脱スケール装置内の対応するノズルに対してノズル距離Eの1/2オフセットされ配置されることが好ましい。本発明の実施形態では、第1の実施形態における熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置2と同様な部品は同様な参照番号により示され、再度説明しない。2つの脱スケールユニット20は互いに同一であり、図6〜図10に示す図のいずれかの1つと見なしてよいことが理解される。
【0027】
図12は、試験用板としてアルミニウム板を使用する従来の高圧流体式脱スケール装置による実験に基づくジェット噴霧により圧延素材の表面上に形成された浸食痕跡をシミュレートする概略図を示す。隣接衝突領域14と15間の幾何学的関係は次の通りである。
【数1】
ここで、Xはジェット噴霧のはね返りによる発散角であり、Dは隣接衝突領域14と15間の垂直距離であり、Eは主管ヘッダーの軸方向に沿った隣接ノズルの中心線間の距離であり、Gはアルミニウム板の表面上の隣接衝突領域14と15間の空白領域(浸蝕されない領域)の幅であり、γは衝突領域14と15の縦方向と圧延素材搬送方向に対して垂直な方向との角度であるオフセット角であり、Oは隣接衝突領域14と15間の重なり領域の幅である。
【0028】
ノズル距離Eが大きければ大きいほど空白領域Gは広くなりその逆もまた真であることが式(2)から理解される。また式(2)からオフセット角γが大きければ大きいほど空白領域Gは広くなりその逆もまた真であることがわかる。
【0029】
図13〜図14は、本発明による隣接ノズルのジェット噴霧によりアルミニウム板の表面上に形成された浸食痕跡をシミュレートする概略図を示す。図5(a)〜図5(c)と図13〜図14を参照すると、本発明によれば、脱スケール装置2の第1のノズル221とその隣接する第2のノズル222を含むノズル22の配置により、対応する第1のノズル221と第2のノズル222から衝突領域31と32を生じる。衝突領域31と32は圧延素材3上に互い違いに出現し、衝突領域31と32は互いに平行である、すなわちオフセット角γは零に近づく。通常、ノズルのオフセット角γは従来の設計では15°である。従来の設計と比較して、本発明による熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置は、衝突領域間の同じ距離Dの条件下で空白領域の幅を効果的に低減することができ、したがって脱スケール品質を改善する。
【0030】
オフセット角γが零に近づくと(γ≒0)、式(3)から次式を導出することができる。
G=D tanX (4)
【0031】
空白領域Gの幅は、はね返り流体の発散角Xと衝突領域31と32間の距離Dに依存する。
【0032】
これは式(4)から導出される。図10に示すようにD≒tの場合、
G=t tanX (5)
空白領域Gの幅は理論的に最小限になる。それにもかかわらず脱スケールユニット20全体の製造、組み立ておよび設置から累算される誤差のために、衝突領域間の距離Dはtより小さくなることがある。ジェット噴霧23とジェット噴霧24もまた互いに干渉し、これにより空白領域Gの幅を増加することがある。本発明で先に述べたようにパラメータt、D、E間の関係は次のように調節されることが好ましい。
t<D≦E sin15°
【0033】
表1は、本発明と従来発明との脱スケール装置による浸食実験の比較である。
【0034】
空白領域Gの幅は従来の試験と比較して本発明では明らかに低減されていることが表1でわかる。したがって本発明による脱スケール装置2のノズル22の配置により、脱スケール品質を効果的に改善することができる。
【0035】
【表1】
【0036】
本発明は、熱間圧延用高圧流体式脱スケール実施に適用可能な方法でもある。本実施形態では、熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置2は、図5(b)、図5(c)、図11、図13に示すように熱間圧延用脱スケールを実行するために使用される。本発明による熱間圧延用高圧流体式脱スケール方法により、2組以上であってよい脱スケールユニット20の主管ヘッダー21内の流体は、第1のノズル221とその隣接する第2のノズルを含むノズル22を介し、圧延素材搬送方向と対向する方向に向けられスケールを洗浄するように圧延素材3の表面に対し射出される複数の対応する第1のジェット噴霧23とその隣接する第2のジェット噴霧24を形成するように、使用される。第1のジェット噴霧23と第2のジェット噴霧24は圧延素材3の表面上の対応する衝突領域31と32を形成する。
【0037】
第1の衝突領域31とその隣接する第2の衝突領域32は実質的に互いに平行であり、圧延素材3の表面上に互い違いに分布される。衝突領域31と32は圧延素材搬送方向に沿って重なり、縦方向に沿った衝突領域の中心線は衝突距離Dで離間される。衝突領域の縦方向は圧延素材搬送方向に実質的に垂直である。流体は5°〜45°の傾斜(進み)角を有するノズル22を介し圧延素材3の表面上に射出されることが好ましい。
【0038】
本発明による熱間圧延用高圧流体式脱スケール方法はまた、図11に示すような圧延素材3の脱スケールを実行するために2列の脱スケールユニット20を有する熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置6に適用されてもよい。2つの脱スケールユニット20の主管ヘッダー21内の流体は、脱スケールユニット20のノズル22を介し圧延素材3の表面に射出され、2つの脱スケールユニット20のノズル22の中心線は互い違いに配置され、ノズル距離Eの1/2離間される。
【0039】
本発明による熱間圧延用高圧流体式脱スケール方法および脱スケール装置では、オフセット角が零に近づき、もとの重なり衝突領域の幅が不変の場合、噴射角を低減することにより脱スケール衝突力を増強することができる、あるいは、配置されるノズルの数を減らし、したがって脱スケール流体の消費を節約し、かつ脱スケール効率を改善するために、ノズル間の距離を増加することができる。
【0040】
本発明による熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置は、1つの脱スケールユニットまたは2つの脱スケールユニットを有してもよく、これらは脱スケールを強化するように、圧延機、研磨式(mill)脱スケールPSB(主スケールブレーカー:Primary Scale Breaker)またはFSB(最終スケールブレーカー:Finishing Scale Breaker)の前のスケール除去のために適用されてもよい。本発明による熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置は圧延素材の表面上に互いに平行な衝突領域を形成する。隣接ノズルのジェット噴霧からのはね返り流体により引き起こされる干渉は、空白領域の幅を低減するように最小限まで低減される。また、脱スケール装置が2列の脱スケールユニットを含む場合、前方の脱スケールユニット内のノズルの中心線は後方の脱スケールユニット内の対応するノズルに対してノズル距離Eの1/2オフセットされて配置されることが好ましく、これにより隣接ノズルからのジェット噴霧の干渉を介し生成される空白領域の問題を解決する。
【0041】
したがって本発明による熱間圧延用高圧流体式脱スケール方法および脱スケール装置は、脱スケール品質を改善し、製品の表面の巻き込みスケール(roll-in-scale)を低減し、したがって製品の表面品質を改善することができる。実際上、本発明による熱間圧延用高圧流体式脱スケール方法および脱スケール装置は、鋼帯、鋼板、成形鋼、棒鋼、線材等の熱間圧延プロセスに適用されることができる。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態が示され説明されたが、様々な変更と改善が当業者により行われ得る。したがって本発明の実施形態は限定的ではなく例示的な意味で説明された。本発明は図示された特定の形式に限定されるべきでなく、本発明の精神と範囲を保持するすべての変更は添付の特許請求の範囲内に入るように意図されている。
【符号の説明】
【0043】
D:衝突領域間垂直距離
E:ノズル中心線間距離
G:空白領域幅
O:重なり領域幅
X:発散角
W:軟化領域
α:ノズル噴霧角
β、β1、β2:傾斜角
γ:オフセット角
2:熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置
3、10:圧延素材
11、22:ノズル
12、13:ジェットカーテン
14、15:衝突領域
16:はね返り流体
20:脱スケールユニット
21:主管ヘッダー
23、24:ジェット噴霧
31:第1の衝突領域
32:第2の衝突領域
211:主管ヘッダーの軸
212:放射状線
221:第1のノズル
222:第2のノズル
223:第1のノズルの中心線、
224:第2のノズルの中心線
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は脱スケール方法と脱スケール装置に関し、具体的には、脱スケール目的のために、鋼帯、鋼板、成形鋼、棒鋼、線材等の圧延などの熱間圧延プロセスにおいて半完成品(圧延素材と呼ぶ)の表面のスケールを除去するために高圧流体を適用する脱スケール方法と脱スケール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
一般的には、圧延素材の表面上のスケールは、鋼帯または鋼板等の従来の熱間圧延プロセスにおける巻き込みスケール(rolled-in-scale)欠陥を防止するために圧延に先立って除去さなければならない。したがって高圧流体式脱スケール装置(high-pressure fluid descaling apparatus)は通常、圧延機の前に配置される。
【0003】
図1(a)は従来の高圧流体式脱スケール装置のノズルの射出により形成される衝突領域の概略図を示す。図1(b)は脱スケール装置の配置の概略図を示す。図1(c)は従来の高圧流体式脱スケール装置の側面図を示す。図1(a)において、Bはジェット幅、Eはノズル距離、Oは重なり、γはヘッダー軸に対するノズル軸のオフセット角である。図1(b)においてαはノズル噴霧角、図1(c)のβは傾斜(進み)角である。
【0004】
従来の脱スケール装置の図1(a)〜図1(c)に示すように、傾斜角βは、鋼帯または鋼板等の圧延素材内の圧延欠陥を防止するようにスケールを上流に導くものである。換言すれば、一般的な従来の脱スケール法は圧延素材搬送方向に対向するようにスケールを洗い流し、傾斜角βは通常、約15°である。
【0005】
図2は従来の隣接ノズル間のジェット噴霧の重なりの周りの図1(b)のA−A断面を示す。図3は従来のノズルのジェット噴霧のはね返りを示す。ここでXははね返りによる発散角である。図4は2つの隣接衝突領域の浸食実験におけるアルミニウム板の使用を示す。ここでGは空白領域の幅、Wは浸蝕された後の軟化領域の幅である。
【0006】
図1(a)〜図3に示すように、ノズル11からのジェットカーテン12、13は、これらが互いに干渉することにより脱スケールの均一性を低減するのを防止するためにオフセット角γだけそらされる。圧延素材10の表面上の衝突領域14、15(連続ノズル11により射出されたジェットカーテン12、13により形成される)はスケールを均一に除去するように部分的に重ねられる。しかしながら試験用板としてアルミニウム板を使用することにより浸食試験を反復して行ったが、試験結果は期待したものではなかった。図4に示すように、隣接ノズル11の衝突領域14、15は重ならず、浸食効果が無い空白領域(G)が生じるということがわかった。
【0007】
空白領域(G)は、主として、重なり領域の背後のジェットカーテン13からのはね返り流体16が図2に示すように重なり領域前方のジェットカーテン12と干渉するために生じる。ジェットカーテン12の一部は、アルミニウム試験板上の重なり領域に効果的に到達しないことがあり、したがって衝突力は著しく低減される。別の重要な理由は、はね返り流体は圧力の低い2つの側面の方へ広がる傾向があるということである。その結果、はね返り流体16は図3に示すように外側に発散することになる。
【0008】
空白領域(G)では、わずかな痕跡だけが出現する。軟化領域(W)では、粗表面がアルミニウム試験用板上に形成されるが、浸食痕跡の幅と深さは狭くかつ浅くなる。換言すれば、空白領域(G)と軟化領域(W)に対する衝突力または脱スケール効果は、隣接ノズルからのジェット噴霧のはね返りにより引き起こされる干渉のために低減される。
【0009】
空白領域(G)と軟化領域(W)の存在は従来の高圧流体式脱スケールノズル11が適切に配置されていないことを示し、これはスケールが巻き込まれる(rolled in)主な理由の1つである。しかしながら従来の技術に関し、その問題は、衝突領域14と15の不十分な重なりを引き起こすノズル11の不適切な配置または脱スケール装置の不適切な配置としばしば見なされている。
【0010】
したがってはね返り流体が隣接ノズルのジェットカーテンから出現する重なり領域上の干渉を低減するために、熱間圧延プロセスのための高圧流体式脱スケール方法および装置を提供することは革新的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、熱間圧延プロセスにおいて適用される高圧流体式脱スケール方法および装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本装置は、主管ヘッダー(main pipe header)と複数のノズルとを含む少なくとも1つの脱スケールユニットを含み、圧延素材の表面上の主管ヘッダーの軸方向の投射線と圧延素材搬送方向とが交差し、主管ヘッダーはジェット流体を供給するために使用される。ノズルは主管ヘッダー上に配置される。各ノズルは、圧延素材の表面からスケールを浸蝕するように圧延素材搬送方向と対向する方向に向けられる。ノズルから射出されるジェット流体は、圧延素材の表面上に複数の衝突領域を形成し、その領域はお互いに互い違いに平行である。衝突領域の縦方向に沿った衝突領域の中心線は一様に離間され、かつ圧延素材搬送方向に垂直である。
【0013】
本発明による熱間圧延プロセスにおいて適用される高圧流体式脱スケール方法および脱スケール装置は、隣接ノズルのジェットカーテンからのはね返り流体により引き起こされる干渉を低減し、これにより脱スケール品質を改善し、圧延素材の表面上のスケールを低減することができ、ひいては製品の表面の品質を改善する。実際上、本発明は、熱間圧延プロセス、例えば鋼帯、鋼板、成形鋼、棒鋼と線材等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は従来の高圧流体式脱スケール装置のノズルの射出により形成される衝突領域の概略図、(b)は従来の高圧流体式脱スケール装置の配置の概略図、(c)は従来の高圧流体式脱スケール装置の側面図を示す。
【図2】従来の隣接ノズル間のジェット噴霧の重なりの周りの図1(b)のA−A断面を示す。
【図3】従来のノズルのジェット噴霧のはね返りを示す。ここでXははね返りによる発散角である。
【図4】2つの隣接衝突領域の浸食実験におけるアルミニウム板の使用を示す。
【図5】(a)は本発明の第1の実施形態による熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置のノズルのジェットカーテンにより圧延素材の表面上に形成される衝突領域の概略図、(b)は本発明の第1の実施形態による熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置の脱スケールノズルの配置の概略図、(c)は本発明の第1の実施形態による熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置の側面図を示す。
【図6】本発明の第1の実施形態によるノズルの3つの異なる配置の概略図を示す。
【図7】本発明の第1の実施形態によるノズルの3つの異なる配置の概略図を示す。
【図8】本発明の第1の実施形態によるノズルの3つの異なる配置の概略図を示す。
【図9】本発明の第1の実施形態による延在部を有する熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置の概略図を示す。
【図10】本発明の第1の実施形態による延在部を有する熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置の概略図を示す。
【図11】本発明の第2の実施形態による熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置の概略図を示す。
【図12】試験用板としてアルミニウム板を使用する従来の実験のノズルの配置に基づく隣接ノズルのジェットカーテンによりアルミニウム板の表面上に形成される浸食痕跡をシミュレートする概略図を示す。
【図13】本発明に基づく隣接ノズルのジェットカーテンによりアルミニウム板の表面上に形成される浸食痕跡をシミュレートする概略図を示す。
【図14】本発明に基づく隣接ノズルのジェットカーテンによりアルミニウム板の表面上に形成される浸食痕跡をシミュレートする概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
図5(a)は、本発明の第1の実施形態による熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置のノズルのジェットカーテンにより圧延素材の表面上に形成される衝突領域をシミュレートする概略図を示す。図5(b)は、本発明の第1の実施形態による熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置の脱スケールノズルの配置の概略図を示す。図5(c)は、本発明の第1の実施形態による熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置の側面図を示す。
【0016】
図5(a)〜図5(c)に示すように、本発明の第1の実施形態による熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置2は、主管ヘッダー21と複数のノズル22とを含む少なくとも1つの脱スケールユニット20を含む。圧延素材の表面上の主管ヘッダー21の軸方向の投射線と圧延素材3の圧延素材搬送方向は交差し、主管ヘッダー21はジェット流体を供給するために使用される。本発明の実施形態では、主管ヘッダー21の軸方向は圧延素材搬送方向に対し垂直である。圧延素材3はストリップ、板、鋼片、棒、棒、成形ビーム等であってよい。
【0017】
ノズル22は主管ヘッダー21上に配置される。各ノズル22は圧延素材搬送方向と対向する方向に向けられる。すなわち高圧流体による脱スケールジェットの方向は圧延素材搬送方向と反対である。本発明の実施形態では、ノズル22は複数の第1のノズル221と第1のノズル221に隣接する複数の第2のノズル222とを含む。
【0018】
第1のノズル221と第2のノズル222は、複数の第1の衝突領域31と第1の衝突領域31に隣接する複数の第2の衝突領域32とを形成するように圧延素材3の表面上に流体を射出し、2つの領域はお互いに互い違いに平行である。第1の衝突領域31と第2の衝突領域32は圧延素材3の表面上の圧延方向に重ねられる。衝突領域の縦方向に沿った領域の中心線は距離Dだけ一様に離間され、かつ圧延素材搬送方向に垂直である。
【0019】
本実施形態では、第1のノズル221とその隣接する第2のノズル222は主管ヘッダー21の軸方向に沿って離間され、互い違いに配置される。すなわち第1のノズル221はジェットカーテン23を射出し、隣接する第2のノズル222はジェットカーテン24を射出し、これらが衝突領域31を形成する。衝突領域32は連続ノズルにより配置される次の衝突領域に生成される。ノズルとその隣接するノズルは互い違いに配置される。したがって衝突領域は個々に生じる(図5(a)と図5(b)を参照)。
【0020】
第1のノズル221と第2のノズル222の位置は、図5(c)に示すように第1のノズル221の中心線223とその隣接する第2のノズル222の中心線224が互いに平行であり、かつ主管ヘッダー21の軸を通る放射状線212に対し対称となるような態様で配置されてもよい。あるいは第1のノズル221の中心線223とその隣接する第2のノズル222の中心線224は図6に示すように互いに平行であり、かつ主管ヘッダー21の軸を通らない放射状線212に対し対称である。ここでは第2のノズル222の中心線224と主管ヘッダー21の軸211が交差する。
【0021】
第1のノズル221の中心線223と第2のノズル222の中心線224が互いに平行である配置では、Dは第1の衝突領域31と第2の衝突領域32間の距離であり、D’は第1のノズル221と第2のノズル222間の距離であり、βは第1のノズル221/第2のノズル222の中心線と圧延素材の表面の法線との傾斜角である。その関係はD’=Dcosβとなるであろう。
【0022】
あるいは、第1のノズル221と第2のノズル222の位置はそれらの対応する中心線が互いに平行にならない態様で配置されてもよい。この場合それらの中心線223と224は図7と図8に示すように縦方向に沿った主管ヘッダー21の軸211と交差してもよいし、交差しなくてもよい。
【0023】
本配置では、Dは第1の衝突領域31と第2の衝突領域32間の距離であり、Hは圧延素材の表面から中心線223、224の交点まで距離である。β1は第1のノズル221の中心線223と圧延素材の表面の法線との第1の傾斜角であり、β2は第2のノズル222の中心線224と圧延素材の表面の法線との第2の傾斜角である。その関係はD=H(sinβ1−sinβ2)となるであろう。
【0024】
また図9と図10に示すように、本発明による熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置2は柱(平方柱または円柱等)と見なされる延在部5をさらに含んでもよい。延在部5は、ただ1つがすべてのノズル22を主管ヘッダー21に接続する形式、あるいは少なくとも1つが1つまたは複数のノズル22を主管ヘッダー21に接続する形式のいずれかでよい。延在部5を有する熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置2では、第1のノズル221の中心線223とその隣接する第2のノズル222の中心線224は図9と図10に示すように互いに平行であってもよいし、平行でなくてもよい。
【0025】
各単一ノズルに加えられる延在部5はノズル22間の距離が大きい場合により好適であり、一方、2つ以上のノズル22に集合ユニットとして加えられる延在部5はノズル22間の距離が小さい場合により好適である。
【0026】
図11は、本発明の第2の実施形態に基づく熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置の概略図を示す。脱スケール装置6は図5(c)で述べたように2列の脱スケールユニット20を含む。前方の脱スケールユニット20内のノズル22の中心線は後方の脱スケール装置内の対応するノズルに対してノズル距離Eの1/2オフセットされ配置されることが好ましい。本発明の実施形態では、第1の実施形態における熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置2と同様な部品は同様な参照番号により示され、再度説明しない。2つの脱スケールユニット20は互いに同一であり、図6〜図10に示す図のいずれかの1つと見なしてよいことが理解される。
【0027】
図12は、試験用板としてアルミニウム板を使用する従来の高圧流体式脱スケール装置による実験に基づくジェット噴霧により圧延素材の表面上に形成された浸食痕跡をシミュレートする概略図を示す。隣接衝突領域14と15間の幾何学的関係は次の通りである。
【数1】
ここで、Xはジェット噴霧のはね返りによる発散角であり、Dは隣接衝突領域14と15間の垂直距離であり、Eは主管ヘッダーの軸方向に沿った隣接ノズルの中心線間の距離であり、Gはアルミニウム板の表面上の隣接衝突領域14と15間の空白領域(浸蝕されない領域)の幅であり、γは衝突領域14と15の縦方向と圧延素材搬送方向に対して垂直な方向との角度であるオフセット角であり、Oは隣接衝突領域14と15間の重なり領域の幅である。
【0028】
ノズル距離Eが大きければ大きいほど空白領域Gは広くなりその逆もまた真であることが式(2)から理解される。また式(2)からオフセット角γが大きければ大きいほど空白領域Gは広くなりその逆もまた真であることがわかる。
【0029】
図13〜図14は、本発明による隣接ノズルのジェット噴霧によりアルミニウム板の表面上に形成された浸食痕跡をシミュレートする概略図を示す。図5(a)〜図5(c)と図13〜図14を参照すると、本発明によれば、脱スケール装置2の第1のノズル221とその隣接する第2のノズル222を含むノズル22の配置により、対応する第1のノズル221と第2のノズル222から衝突領域31と32を生じる。衝突領域31と32は圧延素材3上に互い違いに出現し、衝突領域31と32は互いに平行である、すなわちオフセット角γは零に近づく。通常、ノズルのオフセット角γは従来の設計では15°である。従来の設計と比較して、本発明による熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置は、衝突領域間の同じ距離Dの条件下で空白領域の幅を効果的に低減することができ、したがって脱スケール品質を改善する。
【0030】
オフセット角γが零に近づくと(γ≒0)、式(3)から次式を導出することができる。
G=D tanX (4)
【0031】
空白領域Gの幅は、はね返り流体の発散角Xと衝突領域31と32間の距離Dに依存する。
【0032】
これは式(4)から導出される。図10に示すようにD≒tの場合、
G=t tanX (5)
空白領域Gの幅は理論的に最小限になる。それにもかかわらず脱スケールユニット20全体の製造、組み立ておよび設置から累算される誤差のために、衝突領域間の距離Dはtより小さくなることがある。ジェット噴霧23とジェット噴霧24もまた互いに干渉し、これにより空白領域Gの幅を増加することがある。本発明で先に述べたようにパラメータt、D、E間の関係は次のように調節されることが好ましい。
t<D≦E sin15°
【0033】
表1は、本発明と従来発明との脱スケール装置による浸食実験の比較である。
【0034】
空白領域Gの幅は従来の試験と比較して本発明では明らかに低減されていることが表1でわかる。したがって本発明による脱スケール装置2のノズル22の配置により、脱スケール品質を効果的に改善することができる。
【0035】
【表1】
【0036】
本発明は、熱間圧延用高圧流体式脱スケール実施に適用可能な方法でもある。本実施形態では、熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置2は、図5(b)、図5(c)、図11、図13に示すように熱間圧延用脱スケールを実行するために使用される。本発明による熱間圧延用高圧流体式脱スケール方法により、2組以上であってよい脱スケールユニット20の主管ヘッダー21内の流体は、第1のノズル221とその隣接する第2のノズルを含むノズル22を介し、圧延素材搬送方向と対向する方向に向けられスケールを洗浄するように圧延素材3の表面に対し射出される複数の対応する第1のジェット噴霧23とその隣接する第2のジェット噴霧24を形成するように、使用される。第1のジェット噴霧23と第2のジェット噴霧24は圧延素材3の表面上の対応する衝突領域31と32を形成する。
【0037】
第1の衝突領域31とその隣接する第2の衝突領域32は実質的に互いに平行であり、圧延素材3の表面上に互い違いに分布される。衝突領域31と32は圧延素材搬送方向に沿って重なり、縦方向に沿った衝突領域の中心線は衝突距離Dで離間される。衝突領域の縦方向は圧延素材搬送方向に実質的に垂直である。流体は5°〜45°の傾斜(進み)角を有するノズル22を介し圧延素材3の表面上に射出されることが好ましい。
【0038】
本発明による熱間圧延用高圧流体式脱スケール方法はまた、図11に示すような圧延素材3の脱スケールを実行するために2列の脱スケールユニット20を有する熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置6に適用されてもよい。2つの脱スケールユニット20の主管ヘッダー21内の流体は、脱スケールユニット20のノズル22を介し圧延素材3の表面に射出され、2つの脱スケールユニット20のノズル22の中心線は互い違いに配置され、ノズル距離Eの1/2離間される。
【0039】
本発明による熱間圧延用高圧流体式脱スケール方法および脱スケール装置では、オフセット角が零に近づき、もとの重なり衝突領域の幅が不変の場合、噴射角を低減することにより脱スケール衝突力を増強することができる、あるいは、配置されるノズルの数を減らし、したがって脱スケール流体の消費を節約し、かつ脱スケール効率を改善するために、ノズル間の距離を増加することができる。
【0040】
本発明による熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置は、1つの脱スケールユニットまたは2つの脱スケールユニットを有してもよく、これらは脱スケールを強化するように、圧延機、研磨式(mill)脱スケールPSB(主スケールブレーカー:Primary Scale Breaker)またはFSB(最終スケールブレーカー:Finishing Scale Breaker)の前のスケール除去のために適用されてもよい。本発明による熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置は圧延素材の表面上に互いに平行な衝突領域を形成する。隣接ノズルのジェット噴霧からのはね返り流体により引き起こされる干渉は、空白領域の幅を低減するように最小限まで低減される。また、脱スケール装置が2列の脱スケールユニットを含む場合、前方の脱スケールユニット内のノズルの中心線は後方の脱スケールユニット内の対応するノズルに対してノズル距離Eの1/2オフセットされて配置されることが好ましく、これにより隣接ノズルからのジェット噴霧の干渉を介し生成される空白領域の問題を解決する。
【0041】
したがって本発明による熱間圧延用高圧流体式脱スケール方法および脱スケール装置は、脱スケール品質を改善し、製品の表面の巻き込みスケール(roll-in-scale)を低減し、したがって製品の表面品質を改善することができる。実際上、本発明による熱間圧延用高圧流体式脱スケール方法および脱スケール装置は、鋼帯、鋼板、成形鋼、棒鋼、線材等の熱間圧延プロセスに適用されることができる。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態が示され説明されたが、様々な変更と改善が当業者により行われ得る。したがって本発明の実施形態は限定的ではなく例示的な意味で説明された。本発明は図示された特定の形式に限定されるべきでなく、本発明の精神と範囲を保持するすべての変更は添付の特許請求の範囲内に入るように意図されている。
【符号の説明】
【0043】
D:衝突領域間垂直距離
E:ノズル中心線間距離
G:空白領域幅
O:重なり領域幅
X:発散角
W:軟化領域
α:ノズル噴霧角
β、β1、β2:傾斜角
γ:オフセット角
2:熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置
3、10:圧延素材
11、22:ノズル
12、13:ジェットカーテン
14、15:衝突領域
16:はね返り流体
20:脱スケールユニット
21:主管ヘッダー
23、24:ジェット噴霧
31:第1の衝突領域
32:第2の衝突領域
211:主管ヘッダーの軸
212:放射状線
221:第1のノズル
222:第2のノズル
223:第1のノズルの中心線、
224:第2のノズルの中心線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの脱スケールユニットを含む熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置であって、前記少なくとも1つの脱スケールユニットが、
主管ヘッダーであって、圧延素材の表面上の前記主管ヘッダーの軸方向の投射線と圧延素材搬送方向とが交差し、前記主管ヘッダーは流体を供給するために使用される、主管ヘッダーと、
前記主管ヘッダー上に配置される複数のノズルと、を含み、
各ノズルは前記圧延素材搬送方向と対向する方向に向けられ、衝突領域を形成するように前記圧延素材の前記表面上に前記流体を射出し、
隣接する前記衝突領域は実質的に互いに平行であり、かつ前記圧延素材の前記表面上に互い違いのパターンで与えられ、
前記衝突領域自体の縦方向に沿った各衝突領域の中心線はその隣接する衝突領域と特定距離だけ離間され、
前記圧延素材上の前記中心線の投射線は前記圧延素材搬送方向に実質的に垂直である、装置。
【請求項2】
前記ノズルは前記主管ヘッダーの前記軸方向に沿って離間され、千鳥パターンで配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
隣接する前記ノズルの前記中心線は互いに平行である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記隣接ノズルの前記中心線は前記主管ヘッダーの軸を通る放射状線に関して対称であるか、あるいは対称ではない、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
Dは前記隣接衝突領域間の距離であり、D’は千鳥状に配置された前方ノズルと後方ノズル間の距離であり、βは前記ノズルの中心線と前記圧延素材の前記表面の法線との傾斜角であり、その関係式はD’=Dcosβである、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記隣接ノズルの前記中心線は互いに平行ではない、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
Dは前記隣接衝突領域間の距離であり、Hは前記圧延素材の前記表面から前記隣接ノズルの前記中心線の交点までの距離であり、β1は前記ノズルの前記中心線と前記圧延素材の前記表面の前記法線との第1の傾斜角であり、β2は前記隣接するノズルの前記中心線と前記圧延素材の前記表面の前記法線との第2の傾斜角であり、その関係式はD=H(sinβ1−sinβ2)である、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
Eは前記主管ヘッダーの前記軸方向に沿った前記隣接ノズルの前記中心線間の距離であり、tは前記衝突領域の厚さであり、Dは前記衝突領域間の距離であり、その関係式はt<D≦E sin15°である、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
Eは前記主管ヘッダーの前記軸方向に沿った前記隣接ノズルの前記中心線間の距離であり、tは前記衝突領域の厚さであり、Dは前記衝突領域間の距離であり、その関係式はt<D≦E sin15°である、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
すべてのノズルと前記主管ヘッダーと間に配置される延在部をさらに含む請求項1に記載の装置。
【請求項11】
それぞれが少なくとも1つのノズルと前記主管ヘッダーとの間に配置される複数の延在部をさらに含む請求項1に記載の装置。
【請求項12】
2つの脱スケールユニットを含む請求項1に記載の装置であって、
前記2つの脱スケールユニットの前記ノズルの前記中心線は互い違いのパターンで配置され、前方の脱スケールユニットのノズルと後方の脱スケールユニットの対応する隣接ノズル間のノズル距離の1/2離間される、装置。
【請求項13】
熱間圧延用高圧流体式脱スケール方法であって、
少なくとも1つの脱スケールユニットの主管ヘッダー内に流体を供給する工程と、
次に圧延素材の表面からスケールを除去するように、圧延素材搬送方向と対向する方向に向けられた複数のノズルを介し前記圧延素材の表面に前記流体を射出する工程と、を含み、
前記ノズルから射出された前記流体は前記圧延素材の前記表面上に複数の衝突領域を形成し、
隣接する前記衝突領域は実質的に互いに平行であり、かつ前記圧延素材の前記表面上に互い違いのパターンで与えられ、
前記衝突領域自体の縦方向に沿った各衝突領域の前記中心線はその隣接する衝突領域と特定距離だけ離間され、
前記圧延素材上の前記中心線の投射線は前記圧延素材搬送方向に実質的に垂直である、方法。
【請求項14】
前記流体は5°〜45°の傾斜角を有する前記ノズルを介し前記圧延素材の表面上に射出される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
Eは前記主管ヘッダーの軸方向に沿った前記隣接ノズルの前記中心線間の距離であり、tは前記衝突領域の厚さであり、Dは前記隣接衝突領域間の距離であり、その関係式はt<D≦E sin15°である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
2つの脱スケールユニットの前記主管ヘッダー内の前記流体は前記脱スケールユニットの複数のノズルを介して前記圧延素材の前記表面へ射出され、
2つの脱スケールユニットの前記ノズルの前記中心線は互い違いに配置され、前方の脱スケールユニットのノズルと後方の脱スケールユニットの対応する隣接ノズル間のノズル距離の1/2離間される、請求項13に記載の方法。
【請求項1】
少なくとも1つの脱スケールユニットを含む熱間圧延用高圧流体式脱スケール装置であって、前記少なくとも1つの脱スケールユニットが、
主管ヘッダーであって、圧延素材の表面上の前記主管ヘッダーの軸方向の投射線と圧延素材搬送方向とが交差し、前記主管ヘッダーは流体を供給するために使用される、主管ヘッダーと、
前記主管ヘッダー上に配置される複数のノズルと、を含み、
各ノズルは前記圧延素材搬送方向と対向する方向に向けられ、衝突領域を形成するように前記圧延素材の前記表面上に前記流体を射出し、
隣接する前記衝突領域は実質的に互いに平行であり、かつ前記圧延素材の前記表面上に互い違いのパターンで与えられ、
前記衝突領域自体の縦方向に沿った各衝突領域の中心線はその隣接する衝突領域と特定距離だけ離間され、
前記圧延素材上の前記中心線の投射線は前記圧延素材搬送方向に実質的に垂直である、装置。
【請求項2】
前記ノズルは前記主管ヘッダーの前記軸方向に沿って離間され、千鳥パターンで配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
隣接する前記ノズルの前記中心線は互いに平行である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記隣接ノズルの前記中心線は前記主管ヘッダーの軸を通る放射状線に関して対称であるか、あるいは対称ではない、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
Dは前記隣接衝突領域間の距離であり、D’は千鳥状に配置された前方ノズルと後方ノズル間の距離であり、βは前記ノズルの中心線と前記圧延素材の前記表面の法線との傾斜角であり、その関係式はD’=Dcosβである、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記隣接ノズルの前記中心線は互いに平行ではない、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
Dは前記隣接衝突領域間の距離であり、Hは前記圧延素材の前記表面から前記隣接ノズルの前記中心線の交点までの距離であり、β1は前記ノズルの前記中心線と前記圧延素材の前記表面の前記法線との第1の傾斜角であり、β2は前記隣接するノズルの前記中心線と前記圧延素材の前記表面の前記法線との第2の傾斜角であり、その関係式はD=H(sinβ1−sinβ2)である、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
Eは前記主管ヘッダーの前記軸方向に沿った前記隣接ノズルの前記中心線間の距離であり、tは前記衝突領域の厚さであり、Dは前記衝突領域間の距離であり、その関係式はt<D≦E sin15°である、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
Eは前記主管ヘッダーの前記軸方向に沿った前記隣接ノズルの前記中心線間の距離であり、tは前記衝突領域の厚さであり、Dは前記衝突領域間の距離であり、その関係式はt<D≦E sin15°である、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
すべてのノズルと前記主管ヘッダーと間に配置される延在部をさらに含む請求項1に記載の装置。
【請求項11】
それぞれが少なくとも1つのノズルと前記主管ヘッダーとの間に配置される複数の延在部をさらに含む請求項1に記載の装置。
【請求項12】
2つの脱スケールユニットを含む請求項1に記載の装置であって、
前記2つの脱スケールユニットの前記ノズルの前記中心線は互い違いのパターンで配置され、前方の脱スケールユニットのノズルと後方の脱スケールユニットの対応する隣接ノズル間のノズル距離の1/2離間される、装置。
【請求項13】
熱間圧延用高圧流体式脱スケール方法であって、
少なくとも1つの脱スケールユニットの主管ヘッダー内に流体を供給する工程と、
次に圧延素材の表面からスケールを除去するように、圧延素材搬送方向と対向する方向に向けられた複数のノズルを介し前記圧延素材の表面に前記流体を射出する工程と、を含み、
前記ノズルから射出された前記流体は前記圧延素材の前記表面上に複数の衝突領域を形成し、
隣接する前記衝突領域は実質的に互いに平行であり、かつ前記圧延素材の前記表面上に互い違いのパターンで与えられ、
前記衝突領域自体の縦方向に沿った各衝突領域の前記中心線はその隣接する衝突領域と特定距離だけ離間され、
前記圧延素材上の前記中心線の投射線は前記圧延素材搬送方向に実質的に垂直である、方法。
【請求項14】
前記流体は5°〜45°の傾斜角を有する前記ノズルを介し前記圧延素材の表面上に射出される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
Eは前記主管ヘッダーの軸方向に沿った前記隣接ノズルの前記中心線間の距離であり、tは前記衝突領域の厚さであり、Dは前記隣接衝突領域間の距離であり、その関係式はt<D≦E sin15°である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
2つの脱スケールユニットの前記主管ヘッダー内の前記流体は前記脱スケールユニットの複数のノズルを介して前記圧延素材の前記表面へ射出され、
2つの脱スケールユニットの前記ノズルの前記中心線は互い違いに配置され、前方の脱スケールユニットのノズルと後方の脱スケールユニットの対応する隣接ノズル間のノズル距離の1/2離間される、請求項13に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−176439(P2012−176439A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−37483(P2012−37483)
【出願日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【出願人】(507162256)チャイナ スティール コーポレーション (9)
【氏名又は名称原語表記】CHINA STEEL CORPORATION
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−37483(P2012−37483)
【出願日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【出願人】(507162256)チャイナ スティール コーポレーション (9)
【氏名又は名称原語表記】CHINA STEEL CORPORATION
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