説明

熱陰極放電管点灯回路

【課題】 部品の点数を減少させるとともに、一体化・複合化することによって実装面積を小さくすることができる熱陰極放電管の点灯回路を提供するものである。また、その回路において大きな面積を占める、ヒータ用トランス部分に同期用、異常検出用の巻線を一体化させて装置および回路の小型化を図る。
【解決手段】 ヒータ用トランスと一体に放電用トランスと異常検出用の巻線を一体に構成することによって上記の課題を解決するものである。すなわち、複数の熱陰極放電管のそれぞれの電極にヒータトランスを介してヒータ電圧を印加するとともに、当該複数の熱陰極放電管の電極にインバータトランスの出力電圧を印加して当該複数の熱陰極放電管を点灯する熱陰極放電管点灯回路において、それぞれの熱陰極放電管のヒータトランスに3次巻線を具えろ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置のバックライトなどとして用いられる熱陰極放電管を点灯させるための熱陰極放電管点灯回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルは、液晶テレビ、ナビゲーションシステム、アミューズメント装置などの表示画面として利用されているが、最も大きな市場は大画面の液晶テレビとなっている。液晶画面のバックライトとしては、冷陰極蛍光管が主流となっているが、画面の大型化に伴って熱陰極蛍光管の利用が検討されている。
【0003】
この熱陰極蛍光管(HCFL)を駆動するためには、フィラメントを加熱するヒーター電源と放電を行わせる放電用電源とが必要となり、これらの電源は電源電圧をトランスを介して昇圧して得た高電圧を印加する構成を採用するのが一般的である。さらに放電管部分の断線や短絡などの異常を検出する回路や、ヒーターの断線や短絡などの異常を検出する回路などが必要となる。これらの機能はインバータトランスと周辺回路で構成されることになるが、回路構成が複雑になり装置の大型化や回路の複雑化は避けられない。
【0004】
また、大画面の液晶表示装置においては複数の放電管を並列に点灯することも必要となるので、それらの放電管の間で輝度のばらつきが生じないようにすることが必要である。そのために放電用電源の昇圧トランスの2次側と放電管の間にバランス回路(バランサ)を配置することも必要となり、一般にJinバランサコイルと呼ばれているコイルを用いている。
【特許文献1】特許第2643961号公報
【特許文献2】特開平6−140179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、熱陰極放電管を点灯させるためのインバータユニットの部品の点数を減少させるとともに、一体化・複合化することによって実装面積を小さくすることができる熱陰極放電管の点灯回路を提供するものである。また、その回路において大きな面積を占める、ヒータ用トランス部分に同期用、異常検出用の巻線を一体化させて装置および回路の小型化を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ヒータ用トランスと一体に放電用トランスと異常検出用の巻線を一体に構成することによって上記の課題を解決するものである。すなわち、複数の熱陰極放電管のそれぞれの電極にヒータトランスを介してヒータ電圧を印加するとともに、当該複数の熱陰極放電管の電極にインバータトランスの出力電圧を印加して当該複数の熱陰極放電管を点灯する熱陰極放電管点灯回路において、それぞれの熱陰極放電管のヒータトランスに3次巻線を具えたことに特徴を有するものである。
【0007】
また、複数の熱陰極放電管のそれぞれの電極にヒータトランスを介してヒータ電圧を印加するとともに、当該複数の熱陰極放電管の電極にインバータトランスの出力電圧を1次コイルと2次コイルで構成されるバランサを介して印加して当該複数の熱陰極放電管を点灯する熱陰極放電管点灯回路において、当該熱陰極放電管のヒータトランスはそれぞれ1次側がヒータ電源に、2次側が熱陰極放電管の電極に接続されるとともに、3次巻線を具えており、熱陰極放電管に接続される複数の当該バランサは1次側が直列に接続され、2次側がそれぞれインバータトランスの出力と熱陰極放電管の電極接続されることに特徴を有するものである。
【0008】
さらに、複数の熱陰極放電管のそれぞれの電極にヒータトランスを介してヒータ電圧を印加するとともに、当該複数の熱陰極放電管の電極にインバータトランスの出力電圧を1次コイルと2次コイルで構成されるバランサを介して印加して当該複数の熱陰極放電管を点灯する熱陰極放電管点灯回路において、当該熱陰極放電管のヒータトランスはそれぞれ1次側がヒータ電源に、2次側が熱陰極放電管の電極に接続されるとともに、3次巻線を具えており、熱陰極放電管に接続される複数の当該バランサは1次側が直列に接続され、2次側がそれぞれインバータトランスの出力と熱陰極放電管の電極に接続されるとともに、3次巻線を具えることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱陰極放電管固有のヒータ駆動トランスと熱陰極管のランプ電流制御用のバランサコイルを一体に構成することによって、スペースを大幅に節約することができる。このトランスは、1次/2次巻線構成による耐圧分離構造のトランスで構成することができる。
【0010】
また、ヒータ用トランスに3次巻線を一体に形成することができるので、ヒータの断線や短絡などの異常の検出が容易になるか、電流ばらつきの改善をするためにヒータ電流値を同じにすることが可能となる。
【実施例】
【0011】
以下図面を参照して、本発明の実施例について説明する。本発明による回路に用いるトランスの一例を図4に示す。磁性体のコア41と2つのボビン42、43とこれらのボビンに巻回された巻線で構成されるが、ボビン42にはバランサコイルとしてのいわゆるJinコイル1次巻線と3次巻線44とJinコイルの2次巻線45が巻回される。その際2次巻線45の巻溝数は耐圧に応じて決める。ボビン43にはヒータートランスの1次巻線と3次巻線46とヒータートランスの2次巻線47が巻回される。それぞれの巻線の端末はボビンに植設された端子と接続される。つまり、この一体型のトランスにはヒータートランスの1次巻線と2次巻線に加えて検出巻線等として作用する3次巻線が、バランサコイルの1次巻線と2次巻線に加えて検出巻線等として作用する3次巻線が巻回されている。
【0012】
図1は、本発明の実施例を示す回路図である。熱陰極放電管10の両端にはヒータトランスを介してヒータ駆動電流が印加される。すなわち、ヒータトランスの1次側がヒーター用電源に接続され、2次側が熱陰極放電管10にそれぞれ接続されている。ヒータトランスにはそれぞれ3次巻線が設けられており、これらは異常検出回路に接続されて、ヒータの断線・短絡等の異常が生じた場合の出力電圧(電流)の変化を検知して異常検出回路に検知信号を入力する。異常検出回路の作用によって異常信号が入力されるとヒータ電源を遮断することによって回路、装置を保護する。
【0013】
放電管10の点灯は、電源電圧が絶縁型のトランスで昇圧されてJinコイルの1次側を介して入力されることによって行われる。複数の放電管のJinコイルの2次側は互いに接続されており、複数の放電管の管電流を同じ値にするよう作用する。これによって、複数の放電管の輝度のばらつきを解消する。また、Jinコイルには3次巻線が設けられており、これらはJinコイルの出力の異常を検出することによって放電管の断線や短絡等の異常を検知する。図ではその接続を省略しているが、通常用いられるフィードバックが行われて異常時には電源を遮断する。
【0014】
図2は本発明の他の実施例を示す回路図で、基本的な構成は図1の例と同じである。この例においてはヒータトランスの3次巻線が互いに接続されているので、ヒータトランスの電流バランサとして作用する。すなわち、ヒータトランスの出力のばらつきを補正する作用がなされるので、放電管に印加されるヒータ電流のばらつきをなくすことができる。
【0015】
図3は本発明の他の実施例を示す回路図で、この例ではJinコイルの3次巻線とヒータトランスの3次巻線を直列に接続し全体としてループを構成するものである。この接続構成によって、放電部の電流のバランスをとるとともに、放電部とヒータ部を同期させることによって点灯の安定とヒーター部の電流バランスを同時に得ることが可能となる。
【0016】
上記の例においては、熱陰極放電管とバランサコイル・ヒータトランスを1対1として説明したが、ヒータトランス1個で複数の熱陰極放電管を駆動する場合にも本発明を用いることができる。また、バランサコイルを他のバラスト手段に代えた場合にもヒータトランスに3次巻線を備えた本発明によるヒータトランスを適用できる。トランスについても、図4の2つのボビンを一体化したものでなく、図5に示したようにボビン52にヒータトランスの1次〜3次巻線を巻回したものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、熱陰極放電管全般に利用可能で、特に液晶テレビなど大型の液晶表示装置に適した熱陰極放電管点灯回路である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例を示す回路図
【図2】本発明の他の実施例を示す回路図
【図3】本発明の他の実施例を示す回路図
【図4】本発明に用いるトランスの一例の斜視図
【図5】本発明に用いるトランスの他の例の斜視図
【符号の説明】
【0019】
41:コア
42、43:ボビン
44:Jinコイルの1次巻線と3次巻線
45:Jinコイルの2次巻線
46:ヒータトランスの1次巻線と3次巻線
47:ヒータトランスの2次巻線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱陰極放電管のそれぞれの電極にヒータトランスを介してヒータ電圧を印加するとともに、当該複数の熱陰極放電管の電極にインバータトランスの出力電圧を印加して当該複数の熱陰極放電管を点灯する熱陰極放電管点灯回路において、
それぞれの熱陰極放電管のヒータトランスに3次巻線を具えたことを特徴とする熱陰極放電管点灯回路。
【請求項2】
前記3次巻線がヒータトランスの異常検出回路に接続された請求項1記載の熱陰極放電管点灯回路。
【請求項3】
前記3次巻線が直列に接続された請求項1記載の熱陰極放電管点灯回路。
【請求項4】
複数の熱陰極放電管のそれぞれの電極にヒータトランスを介してヒータ電圧を印加するとともに、当該複数の熱陰極放電管の電極にインバータトランスの出力電圧を1次コイルと2次コイルで構成されるバランサを介して印加して当該複数の熱陰極放電管を点灯する熱陰極放電管点灯回路において、
当該熱陰極放電管のヒータトランスはそれぞれ1次側がヒータ電源に、2次側が熱陰極放電管の電極に接続されるとともに、3次巻線を具えており、
熱陰極放電管に接続される複数の当該バランサは1次側が直列に接続され、2次側がそれぞれインバータトランスの出力と熱陰極放電管の電極接続されることを特徴とする熱陰極放電管点灯回路。
【請求項5】
複数の熱陰極放電管のそれぞれの電極にヒータトランスを介してヒータ電圧を印加するとともに、当該複数の熱陰極放電管の電極にインバータトランスの出力電圧を1次コイルと2次コイルで構成されるバランサを介して印加して当該複数の熱陰極放電管を点灯する熱陰極放電管点灯回路において、
当該熱陰極放電管のヒータトランスはそれぞれ1次側がヒータ電源に、2次側が熱陰極放電管の電極に接続されるとともに、3次巻線を具えており、
熱陰極放電管に接続される複数の当該バランサは1次側が直列に接続され、2次側がそれぞれインバータトランスの出力と熱陰極放電管の電極に接続されるとともに、3次巻線を具えることを特徴とする熱陰極放電管点灯回路。
【請求項6】
前記ヒータトランスの3次巻線がヒータトランスの異常検出回路に接続された請求項4または請求項5記載の熱陰極放電管点灯回路。
【請求項7】
前記ヒータトランスの3次巻線が直列に接続された請求項4または請求項5記載の熱陰極放電管点灯回路。
【請求項8】
前記ヒータトランスとバランサが一体に構成された請求項4または請求項5記載の熱陰極放電管点灯回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−301870(P2009−301870A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155067(P2008−155067)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)
【Fターム(参考)】