説明

熱陰極放電管点灯装置

【課題】放電管の片側エミッタレスの状態や両側エミッタレスの状態においてもエミッタッレス現象を精度よく検出し、熱陰極放電管が寿命に達したこと、あるいは寿命間近であることを検出して点灯装置を遮断するなどして、エミッタレス現象による火災の原因を排除した熱陰極放電管点灯装置を提供する。
【解決手段】熱陰極放電管点灯装置において、放電管(FL)の管放電交流電流の正側・負側の電流値を個別に検出(5、6)し、正側・負側のいずれか一方、もしくは両方の電流値が予め設定した基準値(Vref)より下回った場合、放電管(FL)に流入する電流を遮断する(S)などして放電管点灯機能を無効にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱陰極放電管(HCFL)のエミッタレス検出の手段に関する。
【背景技術】
【0002】
熱陰極放電管の点灯装置は図4に示すブロック図による方法が一般的によく知られている。
【0003】
図4に示すように、熱陰極放電管FLを点灯させる熱陰極放電管点灯装置は、熱陰極放電管FLのフィラメントに予熱電流を流す予熱用インバータ回路3と、熱陰極放電管FLに放電電圧を供給する点灯用インバータ回路2からなり、管電流検出回路10からの検出値を基に点灯用インバータ回路2の放電電圧を制御する制御回路4から成る構成である。
【0004】
しかしながら、このような熱陰極放電管点灯装置においては、熱陰極放電管の寿命あるいは寿命間近の時にフィラメントに塗布されたエミッタ物質が消耗してエミッタレス現象が発生する。このエミッタレス現象を放置するとやがては異常発熱が起こり、当該発熱が熱陰極放電管の口金を介して器具に達し、時として火災を引き起こす原因ともなっていた。
【0005】
このエミッタレスの検出方法として、特許文献1は高周波電源に直列接続される放電管と直列に反転コンデンサを用い、該反転コンデンサの充電電流と放電電流のいずれか他方よりも大きい状態を検出する。このエミッタレス検出時には充電電流と放電電流に差が生じる放電管の両端のフィラメントの状態による正負いずれかの半波で検出するか、電圧波形の方向性に依存する。しかしながら、この方法は、高圧部からエミッタレス検出信号を取り出しているために使用部品の耐圧等考慮する必要がある。また、制御部に(Cnt)に正負両電源が必要であり、小型化、安価にすることが難しい。
【0006】
他の方法として、特許文献2には、両側エミッタレスの状態でも管電圧検出回路により回路を保護する蛍光灯点灯装置を開示している。この装置において、管電圧検出回路は管電圧の任意一方の負側電圧を検出する負側電圧検出回路と他方の正側電圧を検出する正側電圧検出回路とを備え、前記各検出回路の出力を受けてそれらの差分の信号を出力する差動増幅回路からなり、作動増幅回路の出力信号をインバータの出力を制御回路で制限している。しかしながら、この方法は、両側エミッタレス状態のときも管電圧を非対称検知の機能をさせるために電圧検出回路のコンデンサ(68と78)の誤差がそのまま電圧検出誤差になるため高精度の検出は期待できない。また、この回路においても高圧部からエミッタレス検出信号を取り出しているために使用部品の耐圧等考慮する必要がある。
【0007】
【特許文献1】特開2002−50496号公報
【特許文献2】特開2004−165106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は放電管の片側エミッタレスの状態や両側エミッタレスの状態においてもエミッタッレス現象を精度よく検出し、熱陰極放電管が寿命に達したこと、あるいは寿命間近であることを検出して点灯装置を遮断するなどして、エミッタレス現象による火災の原因を排除した熱陰極放電管点灯装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の熱陰極放電管点灯装置は、放電管の管放電交流電流の正側・負側の電流値を個別に検出し、正側・負側のいずれか一方、もしくは両方の電流値が予め設定した基準値より下回った場合、放電管に流入する電流を遮断するなどして放電管点灯機能を無効にすることを特徴とする。
すなわち、放電管の一方のフィラメントとグランド間に管電流検出抵抗を備え、該管電流検出抵抗に降下した交流電圧の正側電圧または負側電圧を検出する第1の直線検波器と第2の直線検波器とを備え、該第1の直線検波器の出力と該第2の直線検波器の出力とを予め設定した基準電圧を備えたコンパレータに印加し、該コンパレータの出力により入力電源をオンオフするスイッチを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、放電管の管放電交流電流の正側・負側の電流値を個別に検出し、正側・負側のいずれか一方、もしくは両方の電流値が予め設定した基準値より下回った場合、放電管に流入する電流を遮断することにより、エミッタレス現象による放電管の交換および火災を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態における熱陰極放電管点灯装置について、添付の図1、図2、図3を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施例の熱陰極放電管点灯装置のブロック図である。
図1において、商用交流電源(図示しない)に接続された整流回路(図示しない)により得られた直流入力電源1に、放電管点灯手段としての熱陰極放電管点灯装置が接続されている。
【0013】
直流入力電源1を高周波の高電圧に変換して放電管FLに高周波電流を供給する点灯用インバータ回路2(放電電圧供給用DC/ACインバータ)、放電管FLのフィラメント7、8に電流を供給するための予熱用インバータ回路3(フィラメント電圧供給用DC/ACインバータ)、点灯用インバータ回路2の出力の一部を帰還して入力電圧の安定化を図るPWM制御回路4、フィラメント7、8の一方とグランド間に接続した管電流検出抵抗Rc、管電流検出抵抗Rcの交流出力を正側の電圧(電流)または負側の電圧(電流)を検出する第1の直線検波器5と第2の直線検波器6を備え、第1の直線検波器5と第2の直線検波器6の出力をコンパレータ9の非反転入力端子(+)に印加し、コンパレータ9の出力に応じて直流入力電源1を遮断するスイッチSを備えた構成である。ここで、コンパレータ9の反転入力端子(−)には予め設定(エミッタレスに対応)した基準電圧Vrefをグランド間に接続されている。
【0014】
つぎに動作について説明する。
管電流検出抵抗Rcの両端に降下した交流電圧Vrc=IL・Rcは、例えば、正側の電圧(電流)を第1の直線検波器5で、負側の電圧(電流)を第2の直線検波器6で各々整流・平滑し、それらの出力をコンパレータ9の非反転入力端子(+)に入力する。
ここで、放電管FLのフィラメント6または7のいずれか一方または両方の塗装されたエミッタ物質が消耗してくると、管電流検出抵抗Rcの両端に降下した交流電圧Vrcの正側電圧、負側電圧または両方の電圧検出値が低下する。その結果、第1の直線検波器5と第2の直線検波器6の出力を印可するコンパレータ9の出力信号は、予め設定(エミッタレスに対応)した基準電圧Vrefより低下した状態となると、直流入力電源1のスイッチSを遮断する信号を発生し、熱陰極放電管点灯装置を停止する。また、スイッチSと共に放電管FLがエミッタレスであることを知らせるランプ等設けてもよい。
【0015】
ここで、本発明に係る熱陰極放電管点灯装置に用いられる第1の直線検波器と第2の直線検波器について説明する。
ここでは、第1の直線検波器として正側の電圧を検出する回路を図2に、第2の直線検波器として負側の電圧を検出する回路を図3に示す。
【0016】
第1の直線検波器5は、図2に示すように、管電流検出抵抗Rcの両端に降下した交流電圧Vinの正側の電圧を検出する回路で、非反転型半波整流回路となる。
この回路は管電流検出抵抗Rcの検出電圧VinをオペアンプOP1の非反転入力端子(+)に印加し、オペアンプOP1の出力端子に二つのダイオードD1、D2を備え、一方のダイオードD1はカソード側を第1の出力端子Vo1に接続し、他方のダイオードD2はアノード側をグランドに接続されている。そして、オペアンプOP1の反転入力端子(−)は第1の出力端子Vo1に接続される。第1の出力端子Vo1とグランド間に出力抵抗R1と平滑コンデンサC1の並列回路が接続されている。
【0017】
この動作は、非反転入力端子(+)に正(Vrc>0)の電圧振幅が入力されたとき、反転入力端子(−)と仮想ショートが成り立ち、オペアンプOP1の入力の反転入力端子はVo1に接続されているのでVin=Vo1の関係が成り立つ。このとき、抵抗R1にはVo1/R1相当の電流がオペアンプOP1の出力端子からダイオードD1を通って抵抗R1に流れ込む。一方、ダイオードD2は逆方向にバイアスされているため、電流は流れない。
【0018】
つぎに、非反転入力端子(+)に負(Vrc<0)の電圧振幅が入力されたとき、オペアンプOP1の出力は負方向に推移するが、ダイオードD1は逆方向にバイアスされるため電流が流れない。したがって、出力端子Vo1にはゼロのままとなる。また、ダイオードD2は順方向にバイアスされるため、負電圧をクランプする役目を果たす。このダイオードD2がないと負方向にどんどん推移してしまう。
この結果、検出電圧Vinの交流電圧は正側のみ出力され、整流平滑された直流出力Vo1が得られる。
【0019】
第2の直線検波器S2は、図3に示すように、管電流検出抵抗Rcの両端に降下した交流電圧Vinの負側の電圧を検出する回路で、反転型半波整流回路となる。
この回路は管電流検出抵抗Rcの交流電圧Vinを抵抗R3を介してオペアンプOP2の反転入力端子(−)に印加し、オペアンプOP2の出力側に二つのダイオードD3、D4を接続し、一方のダイオードD3はアノード側を出力端子Vo2に接続し、他方のダイオードD4はカソード側を反転入力端子(−)に接続されている。そして、反転入力端子(−)と出力端子Vo2間に抵抗R4を接続し、負帰還ループとする。オペアンプOP2の非反転入力端子(+)はグランドに接続されている。出力端子Vo2とグランド間には抵抗R2と平滑コンデンサC2の並列回路が接続されている。
【0020】
この動作は、反転入力端子(−)の抵抗R3に正(Vrc>0)の電圧振幅が入力されたとき、ダイオードD3がON、ダイオードD4がOFFになり、ダイオードD1と抵抗R4を通る負帰還ループができる。このとき回路は、反転増幅回路として働く。すなわち、Vo2=−Vinとなる。
そして、反転入力端子(−)の抵抗R3に負(Vrc<0)の電圧振幅が入力されたとき、ダイオードD4がON、ダイオードD3がOFFになり、ダイオードD2を通る負帰還ループができる。このとき回路は、ダイオードD3は非導通なので、出力はオペアンプOP2の反転入力端子(−)(仮想ショート点)から直接得られる。すなわち、Vo2=0 となる。
この結果、検出電圧Vinの交流電圧は負側のみ出力され、整流平滑された直流出力Vo2が得られる。
【0021】
上記、第1、第2の直線検波器を用いることは、2乗検波を有するダイオード検波より、検出交流信号を精度よく直流信号に変換し、ほぼゼロボルトから直線的に直流変換できる。この直線検波器を用いることによりエミッタレス状態を精度よく検知でき、火災などの事故をより高い信頼度で未然に防止することができる。なお、上記説明では、第1の直線検波器を非反転型半波整流回路を用い、第2の直線検波器を反転型半波整流回路を用いたが、第1の直線検波器を反転型半波整流回路を用い、第2の直線検波器を非反転型半波整流回路を用いてもよい。
【0022】
また、上記オペアンプOP1とOP2およびコンパレータ9において、エミッタレス検出をほぼグランド電位レベルとし、グランド電位に対して正の微小信号を得ている。このことから、本願は全て単電源作動型のオペアンプOP1、OP2、コンパレータ9を用いることができ、低耐電圧素子が使用可能な回路構成とすることから、合理的に小型化、軽量化、および安価にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の熱陰極放電管点灯装置の一実施例を示すブロック図
【図2】本発明の熱陰極放電管点灯装置の一実施例に用いた第1の直線検波回路
【図3】本発明の熱陰極放電管点灯装置の一実施例に用いた第2の直線検波回路
【図4】従来の熱陰極放電管点灯装置のブロック図
【符号の説明】
【0024】
1 直流入力電源
2 点灯用インバータ回路
3 予熱用インバータ回路
4 制御回路
5、6 直線検波器
FL 熱陰極放電管
7,8 フィラメント
9 コンパレータ
Rc 管電流検出抵抗
S スイッチ
OP1、OP2 オペアンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱陰極放電管点灯装置において、放電管の管放電交流電流の正側・負側の電流値を個別に検出し、正側・負側のいずれか一方、もしくは両方の電流値が予め設定した基準値より下回った場合、放電管に流入する電流を遮断するなどして放電管点灯機能を無効にすることを特徴とする熱陰極放電管点灯装置。
【請求項2】
熱陰極放電管点灯装置において、放電管の一方のフィラメントとグランド間に管電流検出抵抗を備え、該管電流検出抵抗に降下した交流電圧の正側電圧または負側電圧を検出する第1の直線検波器と第2の直線検波器とを備え、該第1の直線検波器の出力と該第2の直線検波器の出力とを予め設定した基準電圧を備えたコンパレータに印加し、該コンパレータの出力により入力電源をオンオフするスイッチを備えたことを特徴とする熱陰極放電管点灯装置。
【請求項3】
前記第1の直線検波器と第2の直線検波器はオペアンプと複数のダイオードからなることを特徴とする請求項2記載の熱陰極放電管点灯装置。
【請求項4】
前記第1の直線検波器は前記管電流検出抵抗に降下した交流電圧の正側電圧を検出する反転型半波整流回路からなり、前記第2の直線検波器は前記管電流検出抵抗に降下した交流電圧の負側電圧を検出する非反転形半波整流回路からなることを特徴とする請求項2乃至請求項3記載の熱陰極放電管点灯装置。
【請求項5】
前記第1の直線検波器は前記管電流検出抵抗に降下した交流電圧の負側電圧を検出する非反転型半波整流回路からなり、前記第2の直線検波器は前記管電流検出抵抗に降下した交流電圧の正側電圧を検出する反転型半波整流回路からなることを特徴とする請求項2乃至請求項3記載の熱陰極放電管点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−129663(P2009−129663A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302598(P2007−302598)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)
【Fターム(参考)】