説明

熱電変換材料及びその製造方法、熱電変換モジュール

【課題】均一かつ微粒、高密度であり電気抵抗の上昇を抑制可能な熱電変換材料、該熱電変換材料を短時間で簡便に製造することのできる熱電変換材料の製造方法、及び、該熱電変換材料を用いた熱電変換モジュールの提供。
【解決手段】本発明の熱電変換材料の製造方法は、主ノズルより主剤を基板上に静電噴霧して堆積させると同時に、前記主ノズルの周りに複数配置された補助ノズルより補助剤を基板上に静電噴霧して堆積させて、形成された堆積物を焼成させる熱電変換材料の製造方法であって、前記主剤は、少なくとも1種の金属元素を含み、前記補助剤は、加熱により蒸発除去可能あり、前記主ノズルと前記補助ノズルとを同極性に電圧印加させながら、前記主剤と前記補助剤とを噴霧することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換材料及びその製造方法、熱電変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
熱電変換発電とは、熱電変換材料に温度差を付けることにより熱起電力が発生するゼーベック効果を利用して、熱エネルギーを電気エネルギーに変換することによる発電である。熱電変換発電は、地熱や焼却炉の熱などの排熱を熱エネルギーとして利用できることから、環境保全型の発電として期待されている。
【0003】
熱電変換材料の、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する効率(以下、「エネルギー変換効率」ということがある。)は、熱電変換材料の性能指数の値(Z)に依存する。性能指数の値(Z)は、熱電変換材料のゼーベック係数の値(α)、電気伝導度の値(σ)および熱伝導度の値(κ)を用いて、以下の式(1)で求められる値であり、この性能指数の値(Z)が大きい熱電変換材料ほど、エネルギー変換効率が良好な熱電変換素子となるとされ、特に、式(1)中のα2×σの値が大きい熱電変換材料ほど、単位温度あたりの出力が良好な熱電変換素子となるとされている。また、このα2×σは出力因子(PF)と呼ばれている。
【0004】
【数1】

【0005】
熱電変換材料にはゼーベック係数が正の値であるp型熱電変換材料と、ゼーベック係数が負の値であるn型熱電変換材料とがある。通常、熱電変換発電には、p型熱電変換材料とn型熱電変換材料とを電気的に直列に接続した熱電変換素子が使用される。熱電変換素子のエネルギー変換効率は、このp型熱電変換材料およびn型熱電変換材料の性能指数の値(Z)に依存する。エネルギー変換効率が良好な熱電変換素子を得るために、性能指数の値(Z)が大きいp型熱電変換材料およびn型熱電変換材料が求められている。
【0006】
この熱電変換材料として、金属酸化物が注目されている。金属酸化物における金属元素は、様々な元素と置換することができ、この元素置換によって熱電特性が大きく変わることが知られている。従って、特性を最大限発揮する酸化物材料を見出すためには、置換元素の種類および置換量を変化させた数多くの試料を作製すると共に、それぞれの試料について特性を評価しなければならない。
【0007】
熱電変換材料の製造方法としては、特許文献1に示すように原料粉末を混合し、焼成した後に得られた試料を焼結させる方法などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−211971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載されるような固相法による製造方法の場合には、目的の熱電変換材料を生成するまでに、原料粉末を混合・仮焼成・本焼成という工程を経、さらに熱電特性を評価するためには、得られた生成物を焼結させる工程も必要になるため、評価までには多くの時間が費やされた。
【0010】
また、原料粉末の混合が十分でない場合には、焼成後にも未反応原料が残存したり、不純物相が形成されることが懸念された。
さらに、固相法により製造される熱電変換材料は、その粒径が不均一となったり、大きくなる場合があり、そのような場合には粒子間に空孔が発生し、その空孔部分で電気抵抗が上昇してしまい、電気伝導度が低下してしまう虞があった。
【0011】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、均一かつ微粒、高密度であり電気抵抗の上昇を抑制可能な熱電変換材料、該熱電変換材料を短時間で簡便に製造することのできる熱電変換材料の製造方法、及び、該熱電変換材料を用いた熱電変換モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決すべく、本発明者らは鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち、本発明は以下の構成を採用した。
本発明の熱電変換材料の製造方法は、主ノズルより主剤を基板上に静電噴霧して堆積させると同時に、前記主ノズルの周りに複数配置された補助ノズルより補助剤を基板上に静電噴霧して堆積させて、形成された堆積物を焼成させる熱電変換材料の製造方法であって、前記主剤は、少なくとも1種の金属元素を含み、前記補助剤は、加熱により蒸発除去可能であり、前記主ノズルと前記補助ノズルとを同極性に電圧印加させながら、前記主剤と前記補助剤とを噴霧することを特徴とする。
本発明の熱電変換材料の製造方法において、前記基板を20℃以上900℃以下に加熱しながら、前記主剤および前記補助剤を噴霧することが好ましい。
また、前記形成された堆積物を、500℃以上1500℃以下の温度で加熱して焼成することもできる。
本発明の熱電変換材料の製造方法において、前記主剤が、典型金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素であるAまたはAを含む化合物と、遷移金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素であるMまたはMを含む化合物とを、x:y(但し、0≦x≦4、0≦y≦5である。)のモル比で含むことが好ましい。
さらに、前記Aが、少なくともNaおよび/またはCaを含むことも好ましい。
【0013】
本発明の熱電変換材料は、上記製造方法により得られることを特徴とし、金属酸化物であることが好ましい。
本発明の熱電変換材料は、以下の組成式(I)で示されることがより好ましい。
【0014】
【化1】

(ここで、Aは典型金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、Mは遷移金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、0≦x≦4、0≦y≦5、0<z≦10である。)
また、前記Aが、少なくともNaおよび/またはCaを含むことも好ましい。
さらに本発明は、上記熱電変換材料を含む熱電変換モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の熱電変換材料の製造方法によれば、従来の固相法による製造方法に比べて、形成される熱電変換材料の粒径を小さく、均一にすることができる。そのため、本発明により製造される熱電変換材料の表面及び内部は、微細粒子により高密度、且つ均一であり、内部の空孔等に起因する電気抵抗の上昇を抑制することができる。従って、本発明によれば、均一、且つ高密度で、電気抵抗の低い、すなわち、電気伝導度の高い熱電変換材料を提供することができる。
【0016】
また、本発明の製造方法によれば、従来の固相法による製造方法のように原料粉末を混合・仮焼成・本焼成という工程を経た後、さらに熱電特性を評価するために、得られた生成物を焼結させるという多段階の工程が必要なく、基板上で噴霧、焼成を行うという簡便な工程で熱電変換材料を製造でき、かつ、得られる熱電変換材料は均一であるため、そのまま熱電特性の評価を行うことも可能である。
【0017】
本発明の熱電変換材料は、前記した本発明の熱電変換材料の製造方法により製造されることにより、均一、且つ微粒、高密度である。そのため、従来の固相法により製造された熱電変換材料のように、材料中の粒径が大きく、内部の空孔等に起因する電気抵抗の上昇等の問題が発生することを抑制することができる。従って、本発明によれば、均一、且つ高密度で、電気抵抗の低い、すなわち、電気伝導度の高い熱電変換材料を提供することができる。
また、本発明の熱電変換モジュールは、本発明の熱電変換材料を備えることにより、熱電変換効率の良好な熱電変換モジュールとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る熱電変換材料を用いた熱電変換モジュールの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る熱電変換材料を用いた熱電変換モジュールの他の例を示す断面図である。
【図3】実施例1で得られた熱電変換材料のX線回折図形である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[熱電変換材料の製造方法]
まず、本発明の熱電変換材料の製造方法について説明する。
本発明の熱電変換材料の製造方法は、主ノズルより主剤を基板上に静電噴霧して堆積させると同時に、主ノズルの周りに複数配置された補助ノズルより補助剤を基板上に静電噴霧して堆積させて、形成された堆積物を焼成させる熱電変換材料の製造方法であって、主剤は、少なくとも1種の金属元素を含み、補助剤は、加熱により蒸発除去可能であり、主ノズルと補助ノズルとを同極性に電圧印加させながら、主剤と補助剤とを噴霧することを特徴とする。
静電噴霧法とは、ノズルに高電圧を印加し、ノズルから液体を噴霧させる技術である。ノズルから液体を放出させる際には、接地された基板に向けて霧状化された液体が拡散噴霧され、これを堆積させることで均一な膜として堆積物を得ることができる。さらに、噴霧範囲は自由に制御することが可能であることが知られている。
【0020】
まず、主剤および補助剤を調製する。
主剤には、少なくとも1種の金属元素を含む金属原料が含まれ、また溶媒も含ませることができる。金属原料は、焼成することにより金属酸化物を形成し得るものであれば、特に限定されず、液体、スラリー、若しくは粉体等を使用できる。主剤としては、金属塩溶液、金属錯体溶液などの1種以上の金属又は金属化合物を含む溶液又はスラリー等を例示することができる。また、主剤に含まれる溶媒に溶解することができれば、金属原料として金属元素の単体を使用することも可能である。
【0021】
上記金属塩は、金属有機酸塩および金属無機酸塩のいずれでもよい。金属有機酸塩として、カルボン酸塩、スルホン酸塩などを例示することができる。
【0022】
カルボン酸塩として、鎖状飽和脂肪酸塩(直鎖状、分枝状など);ナフテン酸塩などの環状飽和脂肪酸塩などを例示することができる。鎖状飽和脂肪酸塩として、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、2−メチルプロパン酸、3−メチルブタン酸、2,2−ジメチルプロパン酸などのモノカルボン酸の塩;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸などのジカルボン酸の塩などを例示することができる。
【0023】
スルホン酸塩として、システイン酸の塩、タウリン酸の塩などを例示することができる。
【0024】
金属無機酸塩としては、金属ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物など)、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などを例示することができる。
【0025】
金属錯体の配位子は特に制限されないが、例えば、アルコキシド、ヒドロキソ、シアノ、アミン、アンモニア、ハロゲンイオン(フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)などを例示することができる。配位子は、全て同一でもよく、2種以上が混在していてもよい。
【0026】
アルコキシドとして、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシドなどの低級アルコキシドを例示することができる。
【0027】
アミンとして、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミンなどを例示することができる。
【0028】
主剤に含まれる金属元素は、特に制限されず、典型金属元素、遷移金属元素(3〜12族の金属元素)のいずれでもよい。例えば、Li,Na,K,Rb,Csなどのアルカリ金属、Be,Mg,Ca,Sr,Baなどのアルカリ土類金属、Sc,Y,Laなどの3族、Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luなどのランタノイド、Th,Pa,Uなどのアクチノイド、Ti, Zr,Hfなどの4族、V,Nb,Taなどの5族、Cr,Mo,Wなどの6族、Mn, Reなどの7族、Fe,Ru,Osなどの8族、Co,Rh,Irなどの9族、Ni, Pd,Ptなどの10族、Cu,Ag,Auなどの11族、Zn,Cd,Hgなどの12族、Al,Ga,In,Tlなどの13族の金属元素、Si,Ge,Sn,Pbなどの14族の金属元素、As,Sb,Biなどの15族の金属元素、Teなどの16族の金属元素などを例示することができ、Na、Mg、Ca、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Biから選ばれる少なくとも1種の元素を含むことが好ましい。
【0029】
本発明の熱電変換材料の製造方法により製造される熱電変換材料としては、後述するような金属酸化物が好ましく、中でも、以下の組成式(I)で示される化合物であることがより好ましい。
【0030】
【化2】

(ここで、Aは典型金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、Mは遷移金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、0≦x≦4、0≦y≦5、0<z≦10である。)
【0031】
そのため、本発明においては、上記組成式(I)で示される熱電変換材料を得るために、主剤が、典型金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素であるAまたはAを含む化合物と、遷移金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素であるMまたはMを含む化合物とを、x:y(但し、0≦x≦4、0≦y≦5である。)のモル比で含む組成とすることが好ましい。
【0032】
典型金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素であるAとして具体的には、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Ga、Rb、Sr、In、Cs、Ba、Tl、Pb、およびFrからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。なお、高い熱電変換特性を示す傾向にあるため、Aは少なくともNa、Ca、Alを含むことが好ましく、より好ましくはNaおよび/またはCaである。
【0033】
遷移金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素であるMとして具体的には、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znが好ましいものとして挙げることができる。
【0034】
また、高い熱電特性を維持できる範囲で、本発明の熱電変換材料における元素Aおよび元素Mの一部が半金属元素であってもよい。具体的にはB、C、Si、P、Ge、As、Se、Sn、Sb、Te、Bi、Po、Atを挙げることができる。
【0035】
主剤に用いられる溶媒は、加熱して蒸発除去できるものであれば特に制限はないが、低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールなど)、多価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチルカルビトール(2−(2−n−ブトキシエトキシ)エタノール)など)、芳香族系溶媒(トルエン、ベンゼンなど)、アミン系溶媒(エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなど)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、水などを例示することができ、これらのうち1または2種以上を選んで混合することもできる。
【0036】
主剤として金属原料と溶媒を含む溶液を使用する場合、主剤における金属原料と溶媒の混合比は、主ノズルより噴霧可能であれば特に限定されることはなく、適宜調整可能であるが、例えば、金属原料を0.01〜5.0mol/Lの濃度で含むように調製することができる。このような範囲に金属濃度や溶媒との混合比を制御することにより、堆積物の微細構造や厚みを制御することができる。また、主剤である少なくとも1種の金属元素を含む溶液またはスラリーの混合方法は特に限定されず、従来公知の方法で混合すればよい。
【0037】
補助剤は、主剤に用いられる溶媒と同様、加熱して蒸発除去できるものであれば特に制限はないが、低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールなど)、多価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチルカルビトール(2−(2−n−ブトキシエトキシ)エタノール)など)、芳香族系溶媒(トルエン、ベンゼンなど)、アミン系溶媒(エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなど)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、水などを例示することができ、これらのうち1または2種以上を選んで混合することもでき、主剤に用いられる溶媒と同じでも良い。
【0038】
次に、調製した主剤および補助剤を静電噴霧装置にセットする。
この静電噴霧装置は、接地された基板と、基板の上方に噴霧口が基板と対向するように設置された主ノズル及び補助ノズルとを備えてなる。また、主ノズルおよび補助ノズルには、高圧電源装置が連通されており、この高圧電源装置により主ノズルおよび補助ノズルに電圧を印加可能とされている。また、補助ノズルは、主ノズルの周りに複数設置されている。主ノズルは主剤を、補助ノズルは補助剤を噴霧する。
【0039】
前記基板の種類は、後述する加熱または焼成温度でも溶融・分解などが起こらなければ特に限定されるものではなく、Y−ZrO(イットリア安定化ジルコニア:以下、YSZと称することがある。)、ZrO、Al、AlN基板などが例示できる。また、前記基板は、主剤および/または補助剤に含まれる溶媒を揮発させることができることから、加熱素子上に載置されていることが好ましい。
【0040】
主ノズル及び補助ノズルには電圧が掛けられるため、これらの材質としては、電気伝導性があり耐腐食性のチューブを用いることが好ましい。例えば、ジーエルサイエンス社製の「カットチューブ 1/16CT−1(内径0.25mm)」や「カットチューブ 1/16CT−4(内径0.50mm)」、「カットチューブ 1/16CT−7(内径0.80mm)」などのステンレスノズルなどを挙げることができる。
【0041】
また、主ノズル及び補助ノズルについては、液体を押し出す流量や印加する電圧の値によってチューブの内径は拡げられるので、産業上の噴霧機械の内径(最小内径0.1mm程度)に相当する範囲まで適用可能である。
【0042】
主ノズルおよび補助ノズルの先端から前記基板までの距離は特に制限されないが、発明の効果をより高めるために、5mm以上150mm以下が好ましい。また、主ノズルと補助ノズルとの間隔は、5mm以上50mm以下が好ましい。このような範囲に主ノズルと補助ノズルの位置および間隔を制御しつつ、主剤および補助剤の流量、流速、並びに主ノズルおよび補助ノズルへの印加電圧を制御することにより、噴霧による基材上への堆積物の面積を自由に制御することができる。
【0043】
主剤は主ノズルから噴霧されるよう、主ノズルに連通されたシリンダポンプ等にセットする。補助剤は、主ノズルの周囲に複数設置された補助ノズルから噴霧されるよう、補助ノズルに連通されたシリンダポンプ等にセットする。
【0044】
次いで、高圧電源装置を作動させて、主ノズルおよび補助ノズルに同極性に電圧を印加する。主ノズルおよび補助ノズルに印加する電圧は、3kV以上120kV以下とすることが好ましく、得られる熱電変換材料がより均一な膜として堆積することができることから、3kV以上10kV以下の電圧範囲がより好ましい。
主ノズルおよび補助ノズルに電圧が印加された状態で、主ノズルおよび補助ノズルより主剤および補助剤を、同時に基板上に噴霧する。
【0045】
主ノズルと補助ノズルとを共に同極性に電圧印加することで、主剤の霧状粒子と補助剤の霧状粒子とは共に同一極性に帯電された状態になるため、粒子同士が互いに反発し合う。このため、主剤の霧状粒子は、補助剤の霧状粒子により四方より噴霧範囲を絞られ基板の中心部に集中させることができる。このとき、補助剤および主剤に含まれる溶媒は加熱により基板において揮発し、後に主剤中の金属原料のみが残る。このことから、補助ノズルは主ノズルの周囲に複数設置させなければならない。補助ノズルの本数は特に制限はないが、主ノズルの周囲に2本以上、より効果的に噴霧範囲を絞ることができることから、3本以上を均一に配置することが好ましい。また、この際に形成される堆積物の厚さは、20nm〜5mmが好ましい。
【0046】
主剤に含まれる溶媒および補助剤を、基板上にて揮発させるために、基板は20℃以上900℃以下の温度で加熱されていることが好ましい。
【0047】
また、噴霧条件は0.1ml/h以上10ml/h以下の流量で5分以上5時間以下で噴霧することが好ましい。
【0048】
次に、基板上に形成された堆積物を焼成する。
より結晶性の高い熱電変換材料を得ることができる点から、静電噴霧工程後に基板ごと加熱することが好ましい。加熱温度としては500℃以上1500℃以下が好ましく、600℃以上1200℃以下がさらに好ましい。また、静電噴霧工程後の加熱の時間は特に限定されず、適宜調整可能であるが、1時間以上6時間以下が好ましい。
【0049】
静電噴霧中の加熱および静電噴霧後の加熱により、基板上に堆積した主剤中の金属原料が焼成されて、熱電変換材料である金属酸化物が得られる。
【0050】
静電噴霧中および静電噴霧後の加熱の雰囲気は特に限定されるものではなく、酸素を含有する酸化性雰囲気中や大気雰囲気中、窒素やアルゴンなどを含有する不活性雰囲気中、水素を含有する還元性雰囲気中などが挙げられる。当然、酸素と窒素、酸素とアルゴンなどを適宜混合し、酸化性雰囲気の状態を調整することもできるし、水素と窒素、水素とアルゴンなどを適宜混合し、還元性雰囲気の状態を調整することもできる。
【0051】
なお、本発明の熱電変換材料の製造方法において、金属酸化物を得るための酸素源としては、主剤に含まれる金属原料として酸素を含むものを用いる方法や、加熱による焼成工程における雰囲気を、大気中や酸化性雰囲気中とする方法等とすることができる。また、Arなどの不活性ガスに含まれる微量の酸化性ガスも酸素源とすることができる。
【0052】
また、静電噴霧法によって得られた熱電変換材料は成形して焼結させてもよいし、予め、基板上に設置した型内に噴霧し、噴霧後に型を除去することで成形体を得ることもできる。成形および焼結は同時に行ってもよい。成形は、直方体のような角柱状、板状、円柱状等の熱電変換モジュールにおける適切な形となるように成形すればよい。
【0053】
上記のような静電噴霧法を用いた本発明の熱電変換材料の製造方法によれば、噴霧範囲で均一な材料が得られ、材料の高密度化が可能であり、また、量産が可能であることから工業的に極めて有用である。
【0054】
また、本発明の熱電変換材料の製造方法によれば、静電噴霧法を用いることにより、従来の固相法による製造方法に比べて、金属原料が分子レベルで混合できるようになり、固溶状態へ至る熱エネルギーを制御することで、結晶の成長を抑えることができる。この効果により、形成される熱電変換材料の粒径を小さく、均一にすることができる。そのため、本発明により製造される熱電変換材料の表面及び内部は、微細粒子により高密度、且つ均一であり、内部の空孔等に起因する電気抵抗の上昇を抑制することができる。従って、本発明によれば、均一、且つ高密度で、電気抵抗の低い、すなわち、電気伝導度の高い熱電変換材料を提供することができる。
【0055】
さらに、本発明の製造方法によれば、従来の固相法による製造方法のように原料粉末を混合・仮焼成・本焼成という工程を経た後、さらに熱電特性を評価するために、得られた生成物を焼結させるという多段階の工程が必要なく、基板上で噴霧、焼成を行うという簡便な工程で熱電変換材料を製造でき、かつ、得られる熱電変換材料は均一であるため、そのまま熱電特性の評価を行うことも可能である。
【0056】
[熱電変換材料]
本発明の熱電変換材料は、上述した本発明の熱電変換材料の製造方法により製造されるものである。
本発明の熱電変換材料はとしては、製造コスト、大気中での安定性の観点から、少なくとも1種の金属元素を含む金属酸化物であることが好ましい。熱電変換材料である金属酸化物を構成する金属元素としては、前記本発明の熱電変換材料の製造方法において主剤に含まれる金属元素として挙げたものと同じものを挙げることができる。
【0057】
本発明の熱電変換材料としては、前記金属酸化物の中でも、良好な熱電変換特性を示すため以下の組成式(I)で示される化合物であることが好ましい。
【0058】
【化3】

(ここで、Aは典型金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、Mは遷移金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、0≦x≦4、0≦y≦5、0<z≦10である。)
【0059】
典型金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素であるAとして具体的には、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Ga、Rb、Sr、In、Cs、Ba、Tl、Pb、およびFrからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。なお、高い熱電変換特性を示す傾向にあるため、Aは少なくともNa、Ca、Alを含むことが好ましく、より好ましくはNaおよび/またはCaである。
【0060】
遷移金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素であるMとして具体的には、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znを好ましいものとして挙げることができる。
【0061】
また、高い熱電特性を維持できる範囲で、本発明の熱電変換材料におけるAおよびMの一部が半金属元素であってもよい。具体的にはB、C、Si、P、Ge、As、Se、Sn、Sb、Te、Bi、Po、Atを挙げることができる。
【0062】
また、高い熱電特性を維持できる範囲で、本発明の熱電変換材料におけるAおよびMおよびOの一部にハロゲン元素が含まれていてもよい。具体的にはF、Cl、Br、I、Atを挙げることができる。
【0063】
本発明の熱電変換材料は、n型半導体の熱電変換材料(以下、n型熱電変換材料と称する。)またはp型の熱電変換材料(以下、p型熱電変換材料と称する。)として機能する。
本発明の熱電変換材料であるp型熱電変換材料としては、例えば、CaCoやNaCoO等の金属複合酸化物が挙げられる。また、本発明の熱電変換材料であるn型熱電素子の材料としては、例えば、SrTiO、Zn1−xAlO、CaMnO、LaNiO、Bax’Ti16、Ti1−x’Nbx’O等の金属複合酸化物が挙げられる。
【0064】
本発明の熱電変換材料は、前記した本発明の熱電変換材料の製造方法により製造されることにより、均一、且つ微粒、高密度である。そのため、従来の固相法により製造された熱電変換材料のように、材料中の粒径が大きく、内部の空孔等に起因する電気抵抗の上昇等の問題が発生することを抑制することができる。従って、本発明によれば、均一、且つ高密度で、電気抵抗の低い、すなわち、電気伝導度の高い熱電変換材料を提供することができる。
【0065】
[熱電変換モジュール]
次に、本発明の熱電変換モジュールについて説明する。本発明の熱電変換モジュールは、複数のn型熱電変換材料および複数のp型熱電変換材料と、これらの熱電変換材料をp型n型交互に電気的に直列に接続させる複数の電極とを備え、前記n型熱電変換材料または前記p型熱電変換材料として、上記した本発明の熱電変換材料を用いる。
【0066】
本発明の熱電変換材料を用いた熱電変換モジュールの一実施形態について説明する。図1は、熱電変換材料10を用いた熱電変換モジュール1Aの断面図である。図1に示されるように、熱電変換モジュール1Aは、第1の基板2、第1の電極8、熱電変換材料10、第2の電極6及び第2の基板7を備える。
【0067】
第1の基板2は、例えば矩形状をなし、電気的絶縁性で、かつ熱伝導性を有し、複数の熱電変換材料10の一端を覆うものである。この第1の基板2の材料としては、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、マグネシア等が挙げられる。
【0068】
第1の電極8は、第1の基板2上に設けられ、互いに隣接する熱電変換材料10の一端面同士を電気的に接続するものである。この第1の電極8は、第1の基板2上の所定位置に、例えば、スパッタや蒸着等の薄膜技術、スクリーン印刷、めっき、溶射等の方法を用いて形成することができる。また、所定形状の金属板等を例えば、はんだ、ロウ付け等で第1の基板2上に接合させてもよい。第1の電極8の材料としては、導電性を有するものであれば特に制限されないが、電極の耐熱性、耐食性、熱電変換材料への接着性を向上させる観点から、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、銀、パラジウム、金、タングステン及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を主成分として含む金属が好ましい。ここで、主成分とは、電極材料中に50体積%以上含有されている成分を言う。
【0069】
第2の基板7は、例えば矩形状をなし、熱電変換材料10の他端側を覆うものである。また、第2の基板7は、第1の基板2と平行に対向配置されている。第2の基板7は、第1の基板2と同様に、電気的絶縁性で、かつ熱伝導性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、マグネシア等の材料を用いることができる。
【0070】
第2の電極6は、互いに隣接する熱電変換材料10の他端面同士を電気的に接続するものであり、第2の基板7の下面に、例えば、スパッタや蒸着等の薄膜技術、スクリーン印刷、めっき、溶射等の方法を用いて形成することができる。そして、この第2の電極6と、熱電変換材料10の下端面側に設けられた第1の電極8とにより、熱電変換材料10は電気的に直列に接続されている。
【0071】
p型熱電変換材料3及びn型熱電変換材料4は、第1の基板2及び第2の基板7間に交互に並んで配置されると共に、これらの両面が対応する第1の電極8及び第2の電極6の表面に対して、例えば、AuSb、PbSb系のはんだや銀ペースト等の接合材9により固定され、全体として電気的に直列に接続されている。この接合材は、熱電変換モジュールとしての使用時に固体であるものが好ましい。ここで、p型熱電変換材料3はp型半導体である熱電変換材料10であり、n型熱電変換材料4はn型半導体である熱電変換材料10である。
【0072】
そして、熱電変換モジュール1Aを構成する複数のp型熱電変換材料3及びn型熱電変換材料4において、各熱電変換材料10の互いに対向する2つの面a1、a2は、例えば接合材9を介して電極6、8と接合される。
【0073】
なお、本発明の熱電変換モジュールは、上述の実施形態に限られるわけではない。ここで、図2に、本発明の熱電変換材料を用いたいわゆるスケルトン型の熱電変換モジュールの一例における断面図を示す。図2に示す熱電変換モジュール1Bが図1に示す熱電変換モジュール1Aと異なる点は、熱電変換モジュール1Aにおける互いに対向する1対の基板2、7がなく、代わりに、複数の熱電変換材料10の間に介在し各熱電変換材料10の高さ方向の中央部を取り囲むように保持して各々の熱電変換材料を適切な位置に固定するための支持枠12を備える点であり、それ以外の構成は図1における熱電変換モジュール1Aと同様である。
【0074】
支持枠12は、熱的絶縁性及び電気的絶縁性を有し、この支持枠12には、熱電変換材料10が配置されるべき位置に、それぞれ複数の挿通孔12aが形成されている。この挿通孔12aは、熱電変換材料3、4の断面形状に対応する正方形、矩形状等の形状をなしている。
【0075】
挿通孔12aには、各熱電変換材料10が嵌合されている。そして、挿通孔12aの内壁面と熱電変換材料10の側面との間は非常に狭いため、支持枠12は複数の熱電変換材料10を保持し固定することができる。また、必要に応じて、例えば、挿通孔12aの内壁面には接着剤等を充填し、より強固に熱電変換材料10を固定することもできる。このようにして、各熱電変換材料10は、支持枠12により保持されている。
【0076】
支持枠12の材料としては、熱的絶縁性及び電気的絶縁性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、樹脂材料、セラミック材料を用いることができる。支持枠12の材料は、熱電変換モジュール1の作動温度で溶融しない材料から適宜選択すればよく、例えば、作動温度が室温程度の場合には、ポリプロピレン、ABS、ポリカーボネイト等を、また作動温度が室温〜200℃程度の場合には、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルケトン等のスーパーエンジニアリングプラスチック等を、また作動温度が200℃程度以上である場合には、アルミナ、ジルコニア、コージェライト等のセラミックス材料を用いればよい。これらの材料は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0077】
上記スケルトン型の熱電変換モジュール1Bは、図1に示す熱電変換モジュール1Aのように、複数の熱電変換材料10及び複数の電極6、8が基板2、7に挟まれていないため、各熱電変換材料10に作用する熱応力を低減させることができるとともに、接触熱抵抗を低減させることができる点で有用である。
【0078】
本発明の熱電変換モジュールは、本発明の熱電変換材料である、均一、且つ高密度で、電気抵抗の低い、すなわち、電気伝導度の高い熱電変換材料を備えることにより、熱電変換効率の良好な熱電変換モジュールとなる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例における電気抵抗測定は、低抵抗率計:ロレスタ−GP(三菱化学アナリテック社製)を用いて行った。また、ゼーベック係数の測定は、Kタイプの熱電対を二本使用し、一方の熱電対にはニクロム線による加熱をほどこし、二本の熱電対を試料に接触させ、二端子間に生じる温度差と起電力を測定することでゼーベック係数を得た。ゼーベック測定の計測機器としてはW7000(横河電機社製)を用いた。
【0080】
比較例1
Ca源として炭酸カルシウム(CaCO3)、Co源としての酸化コバルト(Co34)をCa:Co(元素比)=3:4となるように混合し、これを大気中、850℃で15時間加熱し、粉末状の生成物Rを得た。生成物RについてX線測定を行ったところ、CaCoが形成されていることが確認できた。また、生成物Rの成型体(15mmφ×5mmt)を作製し、電気抵抗を測定した。
【0081】
実施例1
カルシウム(Ca)原料として硝酸カルシウム4水和物、コバルト(Co)原料として硝酸コバルト6水和物を用い、溶媒および補助剤にエタノール:2−(2−n−ブトキシエトキシ)エタノール=1:4を用いた。Ca:Coのモル比を3:4とし、濃度を0.01mol/Lになるよう主剤を調製した。調製した主剤および補助剤を用いて、静電噴霧法により基板上に噴霧を行った。基板には10mmφ×0.5mmtのYSZを用い、基板と各ノズル間距離を35mm、主ノズルと補助ノズル間の距離を30mmに設定し、主ノズルとその周囲に配された4個の補助ノズルに9kVの電圧をかけて大気中にて液流量1ml/hで2時間噴霧させた。このとき、基板温度は400℃になる様設定した。
得られた堆積物の膜厚は200〜300nm程度であり、基板ごと700℃で大気中5時間焼成し、生成物Sを得た。
【0082】
生成物Sについて、X線測定をおこなったところ、図3に示すX線回折図形が得られ、CaCoが形成されていることが確認できた。また、実施例1の生成物Sは、その表面が均一であるため、生成物Sが基板に堆積された状態で電気抵抗およびゼーベック係数を測定することができ、比較例における生成物Rと比較すると電気抵抗の低い値が得られた。この結果より、実施例1の生成物Sは、比較例の生成物Rよりも均一で且つ、微粒、高密度であり、そのため、電気抵抗の上昇が抑制されていると考えられる。
【0083】
実施例2
金属原料に鉄(Fe)を加え、Ca:Co:Feのモル比を3:3.6:0.4に調製したこと以外、実施例1と同様にして生成物Sを得た。
【0084】
生成物Sについて、X線測定をおこなったところ、CaCoと同様のピークで、蛍光X線分析結果ではCa:Co:Fe=3.5:3.2:0.8であったことから、FeがCoサイトに固溶していることを確認した。生成物Sが基板に堆積された状態で電気抵抗を測定したところ、実施例1で得られた値より低い値が得られた。
【0085】
実施例3
金属原料にマンガン(Mn)を加え、Ca:Co:Mnのモル比を3:3.2:0.8に調製したこと以外、実施例1と同様にして生成物Sを得た。
【0086】
生成物Sについて、X線測定をおこなったところ、CaCoと同様のピークで、蛍光X線分析結果ではCa:Co:Mn=2.8:3.2:0.8であったことから、MnがCoサイトに固溶していることを確認した。生成物Sが基板に堆積された状態でゼーベック係数を測定したところ、実施例1で得られた値より高い値が得られた。
【0087】
実施例4
金属原料に鉄(Fe)とマンガン(Mn)を加え、Ca:Co:Fe:Mnのモル比を3:3.2:0.4:0.4に調製したこと以外、実施例1と同様にして生成物Sを得た。
【0088】
生成物Sについて、X線測定をおこなったところ、CaCoと同様のピークで、蛍光X線分析結果ではCa:Co:Fe:Mn=3.4:2.9:0.7:0.4であったことから、MnとFeがCoサイトに固溶していることを確認した。生成物Sが基板に堆積された状態でゼーベック係数を測定したところ、実施例1で得られた値より高い値が得られた。
【符号の説明】
【0089】
1A、1B…熱電変換モジュール、2…第1の基板、3…p型熱電変換材料、4…n型熱電変換材料、6…第2の電極、7…第2の基板、8…第1の電極、9…接合材、10…熱電変換材料、12…支持枠。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主ノズルより主剤を基板上に静電噴霧して堆積させると同時に、前記主ノズルの周りに複数配置された補助ノズルより補助剤を基板上に静電噴霧して堆積させて、形成された堆積物を焼成させる熱電変換材料の製造方法であって、
前記主剤は、少なくとも1種の金属元素を含み、
前記補助剤は、加熱により蒸発除去可能であり、
前記主ノズルと前記補助ノズルとを同極性に電圧印加させながら、前記主剤と前記補助剤とを噴霧することを特徴とする熱電変換材料の製造方法。
【請求項2】
前記基板を20℃以上900℃以下に加熱しながら、前記主剤および前記補助剤を噴霧することを特徴とする請求項1に記載の熱電変換材料の製造方法。
【請求項3】
前記形成された堆積物を、500℃以上1500℃以下の温度で加熱して焼成することを特徴とする請求項1または2に記載の熱電変換材料の製造方法。
【請求項4】
前記主剤が、典型金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素であるAまたはAを含む化合物と、遷移金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素であるMまたはMを含む化合物とを、x:y(但し、0≦x≦4、0≦y≦5である。)のモル比で含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱電変換材料の製造方法。
【請求項5】
前記Aが、少なくともNaおよび/またはCaを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱電変換材料の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られる熱電変換材料。
【請求項7】
金属酸化物であることを特徴とする請求項6に記載の熱電変換材料。
【請求項8】
請求項4に記載の製造方法により得られ、以下の組成式(I)で示される熱電変換材料。
【化1】

(ここで、Aは典型金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、Mは遷移金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、0≦x≦4、0≦y≦5、0<z≦10である。)
【請求項9】
前記Aが、少なくともNaおよび/またはCaを含むことを特徴とする請求項8に記載の熱電変換材料。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれかに記載の熱電変換材料を含む熱電変換モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−198989(P2011−198989A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63888(P2010−63888)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)