説明

熱電変換素子を製造する方法

本発明にしたがって、熱電変換素子を製造する方法が提供される。この方法は、以下の工程を有してなる:(a−1)上面を有する第1の電極をダイの中に配置する工程;(b−1)第1の電極上に第1の中間層を配置する工程;(c−1)前記上面に分割板を挿入して、ダイの内部空間を少なくとも2つの部分に垂直に分割し、これら少なくとも2つの部分の内のいくつかの部分の第1の中間層上に第1の熱電変換材料を充填し、他の部分の第1の中間層上に第2の熱電変換材料を充填する工程;(d−1)ダイを焼結する工程;および(e−1)焼結後に分割板を取り除いて、π型熱電変換素子を得る工程。本発明による熱電変換素子を製造する方法を使用することによって、嵩張った熱電変換材料を形成するプロセスおよび素子の高温末端電極と結合させる工程を同時に完了して、二度目の関連要素に影響する熱と圧力による悪影響が避けられる。

【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、「熱電変換素子を製造する方法」と題する、2008年12月26日に出願された中国特許出願第200810207957.8号に優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、熱電変換素子を製造する方法に関し、より詳しくは、熱電変換の技術分野に該当する、中間温度範囲(450〜600℃)内で充填スクッテルド鉱の熱電変換素子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
熱電気による発電は、熱から電気への直接変換を実現するために半導体材料におけるゼーベック効果を利用した技法であり、この技法は、長寿命、高い信頼性、安全な環境などを特徴とする。この技法には、幅広い用途があり、光電気と熱電気の太陽エネルギーによる発電および工業廃熱による発電の分野において潜在的な社会効果と経済効果がある。熱電変換材料の性能指数(figure of merit)の改善は、熱電式発電のエネルギー変換効率を改善するためのキーポイントである。したがって、熱電変換の分野における研究は、主に、高性能の新規の熱電変換材料を開発することに重点を置いている。別の態様において、新規の熱電変換材料素子を研究し開発するプロセスが、熱電式発電のエネルギー変換効率を改善するために同等に重要である。
【0004】
熱電変換素子は、主に、2つのタイプ、すなわち、p型とn型の熱電変換半導体要素からなる。単一の熱電変換素子の電圧は極めて低いので、熱電式発電モジュールを構築するために、電気伝導の理由で直列に接続されたか、または熱伝導の理由で並列に接続された様々なp型とn型の熱電変換構成要素を有する電極が通常使用され、それによって、利用できる高い電圧を得ている。電極材料の選択および電極材料と熱電変換要素との組合せは、熱電変換素子の製造において極めて重大である。最近、一般に電極として銅を有し、溶接のために従来のはんだ付け技法を採用した、低温でのBi2Te3系素子が商業化されてきた。中間温度と高温での素子に関して、まず第1に、素子の製造と使用中に熱応力をできるだけ低減させるように、かつ電極の溶接の失敗を避けるように、または過剰な熱応力による素子の使用中の無効を避けるように、電極材料の熱膨張係数(CTE)が、電極材料を選択するために熱電変換材料と一致することが要求される。第2に、電極により生じる電気抵抗および熱抵抗による、エネルギー変換効率などの素子の性能への悪影響を減少させるために、電極材料に、良好な導電率および熱伝導率が要求される。
【0005】
充填スクッテルド鉱が、中間温度で高性能を有する新規の熱電変換材料としてみなされており、これには将来有望な用途がある。Bi2Te3素子を溶接するための技法が、充填スクッテルド鉱の低温側で電極を溶接するために借用され、ここで、電極材料として銅が選択され、溶接にはんだ付け技法が採用される。既存の報告による、充填スクッテルド鉱素子の高温における電極の溶接に関して、Cu、Mo、Ni−Cr、W、Ta、およびそれらの合金、ステレンス鋼(特許文献1)、Ag、Ag−Au、Ag−Cu、Fe(特許文献2)およびNb(特許文献3)が電極材料として選択されるのに対し、銅ろう付け(特許文献1、4、5など)、銀ろう付け(特許文献2、6など)、焼結(特許文献7、3、8など)などが、電極とスクッテルド鉱材料の接合方法として採用されている。
【0006】
表1には、充填スクッテルド鉱材料と金属材料の熱膨張係数(CTE)、導電率および熱伝導率が列記されている。充填スクッテルド鉱のものに近いCTEを有するTi、FeおよびNiを除いて、単一金属は、充填スクッテルド鉱とは大きく異なるCTEを示すのに対し、Ti、FeおよびNiは、Cu、Moなどよりも、ずっと低い導電率と熱伝導率を示すのが分かる。主にFe、Cr、Niなどからなるステンレス鋼は、充填スクッテルド鉱材料のものに最も近いCTEを有する。その上、Moは、充填スクッテルド鉱材料よりも低いCTEを有するのに対し、Cuは、充填スクッテルド鉱材料よりも高いCTEを有するのが分かる。MoおよびCuを合金で組み合わせた場合、その合金は、これら2つの相対比率を調整することによって、充填スクッテルド鉱材料のものに近いCTEを有するかもしれず、またCuおよびMoの良好な導電率および熱伝導率も維持するかもしれない。WとCuは極めて同じである。
【0007】
最近、熱電変換素子を製造するための一般に採用される方法(例えば、特許文献9に記載された熱電変換素子を製造する方法)は、主に、ダイの中で熱電変換素子のバルク要素を最初に製造(焼結)し、このバルク要素上に高温で電極を溶接し、低温で側部をセラミック板とはんだで溶接し、次いで、最終的に切断などによりπ型素子を形成する、各工程において特徴付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6005182号明細書
【特許文献2】米国特許第6759586号明細書
【特許文献3】米国特許第6563039号明細書
【特許文献4】米国特許出願第2002/0024154号明細書
【特許文献5】中国特許第101114692号明細書
【特許文献6】米国特許出願第2008/0023057号明細書
【特許文献7】米国特許出願第2006/0017170号明細書
【特許文献8】特開平11−195817号公報
【特許文献9】中国特許第200710044771.0号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、既存の方法は、複雑なだけでなく、必然的に熱電変換材料(充填スクッテルド鉱などの)を熱と圧力に再び曝露し、熱電変換材料の性能を劣化させる虞がある。したがって、プロセス手法を単純にし、熱電変換材料への悪影響を避けるために、素子を製造する新規の方法を開発することが差し迫った必要である。
【表1】

【0010】
本発明の目的の1つは、熱電変換素子を製造するための比較的単純な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
熱電変換素子を製造する方法が、本発明の1つの態様にしたがって提供される。この方法は:(a−1)上面を有する第1の電極をダイの中に配置する工程;(b−1)第1の電極上に第1の中間層を配置する工程;(c−1)前記上面に分割板を挿入して、ダイの内部空間を少なくとも2つの部分に垂直に分割し、これら少なくとも2つの部分の内のいくつかの部分の第1の中間層上に第1の熱電変換材料を充填し、他の部分の第1の中間層上に第2の熱電変換材料を充填する工程;(d−1)ダイを焼結する工程;および(e−1)焼結後に分割板を取り除いて、π型熱電変換素子を得る工程を有してなる。
【0012】
本発明の実施の形態によれば、π型熱電変換素子が得られた後、銅が被覆されたセラミック板上に複数のπ型熱電変換素子を溶接して、全体を形成する。
【0013】
本発明の1つの好ましい実施の形態によれば、銅が被覆されたセラミック板上に複数のπ型熱電変換素子を溶接して、全体を形成する工程は、複数のπ型熱電変換素子の片側に第2の中間層およびはんだ付け層を連続して提供し、銅が被覆されたセラミック板に溶接する各工程をさらに含む。
【0014】
上述した実施の形態において、第1の中間層は、第1の電極と接触した接合強化層、およびこの接合強化層上に積層されたバリア層を含む。
【0015】
上述した実施の形態において、ダイを焼結する工程は、ダイを放電プラズマ装置内で電気により焼結する工程をさらに含む。好ましい実施の形態によれば、焼結工程は、30〜60MPaの圧力および550〜680℃の焼結温度において焼結する工程を含む。
【0016】
好ましい実施の形態によれば、分割板は、ZrO2、Al23、AlN、SiO2、ガラス、グラファイト、Ni、Cu、Feおよびステンレス鋼の1種類または数種類の材料からなる。
【0017】
好ましい実施の形態によれば、第1の電極は、二成分または三成分合金もしくは複合材料からなり、第1の金属は、Cu、Ag、AlまたはAuから選択され、第2の金属は、Mo、W、Zr、Ta、Cr、Nb、VまたはTiから選択される。
【0018】
より好ましい実施の形態によれば、第1の電極は、x(質量%)が20≦x≦80である一般式MoxCu1-xを有するモリブデン−銅合金から選択される、またはx(質量%)が50≦x≦90である一般式WxCu1-xを有するタングステン−銅合金から選択される、合金または複合材料からなる。
【0019】
本発明のある実施の形態によれば、第1の熱電変換材料は、n−CoSb3、n−PbTeまたはn−Zn4Sb3から選択されるn型熱電変換材料からなり、第2の熱電変換材料は、p−CoSb3、p−PbTeまたはp−Zn4Sb3から選択されるp型熱電変換材料からなる。
【0020】
本発明の別の実施の形態によれば、以下の工程が、工程(c−1)と工程(d−1)との間にさらに含まれてもよい:第1の熱電変換材料および第2の熱電変換材料の上に第2の中間層を提供する工程、第2の中間層上に第2の電極を提供する工程。
【0021】
この別の実施の形態によれば、第2の電極は、x(質量%)が20≦x≦80である一般式MoxCu1-xを有するモリブデン−銅合金から選択される、またはx(質量%)が50≦x≦90である一般式WxCu1-xを有するタングステン−銅合金から選択される、合金または複合材料からなる。
【0022】
この別の実施の形態によれば、第1の層または第2の層を提供する工程は、プラズマ溶射、フレーム溶射、アーク溶射または電気メッキによって行うことができる。
【0023】
この別の実施の形態によれば、π型熱電変換素子が得られた後、銅が被覆されたセラミック板上に複数のπ型熱電変換素子を溶接して、全体を形成する。
【0024】
この別の実施の形態によれば、第1の電極と第2の電極の熱膨張係数は、充填された第1の熱電変換材料と第2の熱電変換材料のものに近い。
【0025】
本発明は、一工程焼結によりπ型要素を得て、従来技術におけるπ型要素を得るための複雑な手法を単純にし、従来技術における二度目の熱と圧力への、充填された熱電変換材料の曝露により生じる充填された熱電変換材料の性能への悪影響を防ぐという利点を包含する。
【0026】
本発明の先の一般的な説明および以下の詳細な説明は、例示と説明であり、特許請求の範囲による本発明のさらなる解釈を提供することを意図していることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明をさらに理解するために提供された図面が、本発明の一部として含まれ、体現される。それらの図面は、本発明の実施の形態を示し、明細書と共に本発明の原理を説明するものである。
【図1a】バリア層の前処理を示す説明図
【図1b】接合強化層の前処理を示す説明図
【図1c】分割板の前処理を示す説明図
【図1d】電極の前処理を示す説明図
【図2】本発明のある実施の形態による放電プラズマ焼結によりπ型素子を形成するスキームを示す説明図
【図3a】分割板を取り除く前のπ型素子を示す斜視図
【図3b】分割板を取り除いた後の1つのπ型素子を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0028】
発電に関する効率および信頼性が高い、充填スクッテルド鉱熱電変換素子を製造する新規の方法が、従来技術における様々な欠点を克服するために、本出願の発明者により提供される。この方法は:前処理された高温端電極、接合強化層およびバリア層を連続してダイの中に配置し;スクッテルド鉱粉末をp/n充填し;次いで、バリア層、接合強化層および低温端電極を連続して配置し;放電プラズマ焼結を行って、π型要素を直接得て;セラミック板上に複数のπ型要素をはんだ付けして、充填スクッテルド鉱素子を形成する各工程において特徴付けられる。
【0029】
添付の図面と共に、本発明の詳細な説明を行う。全ての実施の形態の以下の説明において、スクッテルド鉱は例示の熱電変換材料と解釈されることに留意されたい。しかしながら、以下の実施の形態におけるスクッテルド鉱は、本発明を実現するために他の公知の熱電変換材料により置き換えてもよいことが当業者に理解されよう。したがって、本発明は、以下の実施の形態における任意の特定の材料に制限されるものではない。
【0030】
実施の形態1
最初に、前処理5のプロセスを実施する。
【0031】
図1a〜1dに示されるように、バリア層1、接合強化層2、分割板3および電極4上に砂吹付けまたは超音波洗浄を行って、表面の酸化物または他の不純物を除去し、電極4の表面上を粗くする。この処理は、30秒から3分に亘り0.1〜0.5MPaの吹付け圧で高純度のケイ砂により行うことが好ましく、超音波洗浄の時間は5〜15分であってよい。
【0032】
次に、図2を参照して、充填および焼結のプロセスを行う。
【0033】
高温端電極41、接合強化層2およびバリア層1をダイの中に連続的に提供する。接合強化層2およびバリア層1は、単純な様式で配置しても、またはプラズマ溶射、フレーム溶射、アーク溶射または電気メッキなどの技法を採用してもよい。もちろん、本発明における配置に特別な制限はなく、よって、当業者に公知の任意の配置を採用して、本発明を実現してよい。次に、いずれかの部分に別々にp型熱電変換材料およびn型熱電変換材料を配置して、例えば、好ましい実施の形態によるp/n充填スクッテルド鉱粉末を充填するために、高温端電極41の上面に、ダイを2つの部分に分割する分割板3を垂直に挿入する。次いで、バリア層1、接合強化層2および低温端電極42を熱電変換材料上に連続して配置する。積層構造は、上側プレスヘッド21と下側プレスヘッド22により予め加圧される。次に、ダイを焼結する。図2に示された実施の形態において、例えば、ダイは、焼結のために放電プラズマ焼結装置内に配置される。したがって、p/n充填スクッテルド鉱粉末のバルクの形成および電極との組合せは、同時に完了する。
【0034】
上述した実施の形態において、高温端電極および低温端電極の両方について、選択された熱電変換材料とCTEが一致し、良好な導電性および熱伝導性を有する金属材料を選択することが好ましい。例えば、二成分または三成分材料を形成するために、充填スクッテルド鉱のCTEより低いCTEを有する金属材料(Mo、W、Zr、Ta、Cr、Nb、V、Tiなどの)が、充填スクッテルド鉱のCTEより高いCTEを有し、良好な導電性および熱伝導性を有する金属材料(Cu、Ag、Al、Auなどの)と組み合わされる。その組合せ方法は、焼結後の溶融または圧延であって差し支えない。電極の好ましい厚さは0.5〜1.5mmであってよい。上述した高温端電極および低温端電極は、x(質量%)が20≦x≦80である一般式MoxCu1-xを有するモリブデン−銅合金から選択される、またはx(質量%)が50≦x≦90である一般式WxCu1-xを有するタングステン−銅合金から選択されることがより好ましい。
【0035】
さらに、上述した分割板4は、ZrO2、Al23、AlN、SiO2、ガラス、グラファイト、Ni、Cu、Feおよびステンレス鋼の1種類または数種類の材料から選択されることが好ましい。分割板4の好ましい厚さは0.2〜1.0mmであってよい。
【0036】
n型熱電変換材料は、上述したn型熱電変換材料の例として、n−CoSb3、n−PbTeおよびn−Zn4Sb3から選択されるであろう。p型熱電変換材料は、上述したp型熱電変換材料の例として、p−CoSb3、p−PbTeおよびp−Zn4Sb3から選択されるであろう。
【0037】
一般に、バリア層1は、主に、材料上の性能劣化を生じ得る拡散を防ぐために構成される。接合強化層2は、主に、材料間の接合を強化するために構成される。その結果、上述した実施の形態において二層が同時に堆積されるが、バリア層または接合強化層のいずれが、電極と熱電変換材料との間の中間層として働くことが必要とされて、堆積されてもよい。それに加え、接合強化層2およびバリア層1は、Ti箔に加えたAg合金はんだ、銅合金はんだ、またはAg−Cu合金はんだであることが好ましい。はんだの厚さは80〜150μmの範囲にあり、Ti箔の厚さは30〜100μmである。接合強化層2およびバリア層1は、98%以上の純度および100〜500μmの粒径を有するTi粉末であっても差し支えない。Ti粉末を前処理する必要はない。Ti粉末は、20から100μmに及ぶ厚さを有する電極の上面に直接配置しても差し支えない。特に、接合強化層/バリア層として機能するように、単一の中間層を提供してもよい。この状況において、単一の中間層は、Ti粉末、Al粉末、もしくはそれら2つの混合粉末または合金粉末であってもよい。
【0038】
上述した予圧は5〜10MPaであり、焼結パラメータは、真空=1〜10Pa、焼結圧=30〜60MPa、加熱速度50〜200℃/分、焼結温度=550〜680℃、保持時間=5〜10分である。
【0039】
上述した低温端電極は、充填スクッテルド鉱とCTEが良好に一致し、良好な導電性および熱伝導性を有し、はんだ付け層を製造するためのはんだと良好な湿潤性を有する、金属材料または金属複合材料であることが好ましい。
【0040】
再度、分割板を取り除く。分割板3は、焼結後に取り除いてもよい。
【0041】
それゆえ、好ましくはライン切断により、分割板を取り除いた後に、π型素子が得られる。図3aおよび3bは、それぞれ、分割板を取り除く前と後のπ型熱電変換素子を示している。もちろん、本発明の原理から逸脱せずに、任意の適切な切断方法を採用してもよいことが理解されよう。
【0042】
本発明の1つの好ましい実施の形態によれば、焼結ダイは、図3aに示されるように、特に効率を改善するために、いくつかのπ型熱電変換素子を同時に焼結するように設計されてもよい。すなわち、分割板3を挿入する工程で、ダイの全空間を数個の部分に、例えば、図3aに示された実施の形態において、8つの部分に分割する。その数個の部分の内、それぞれ、p型熱電変換材料をいくつかの部分に堆積させ、p型熱電変換材料を他の部分に堆積させる。そのような状況において、複数のπ型熱電変換素子を、同様の手法による一工程焼結によって、同時に製造しても差し支えないことが当業者には理解されよう。
【0043】
最後に、銅が被覆されたセラミック板上に複数のπ型熱電変換素子を溶接する。
【0044】
詳しくは、溶接前に、π型熱電変換素子上の低温端電極上にはんだ層を製造し、次いで、スズが被覆された銅被覆セラミック板上にπ型熱電変換素子を溶接する。
【0045】
実施の形態2
実施の形態1と比べると、実施の形態2の主な違いは、実施の形態2では、熱電変換材料の低温側にバリア層と接合強化層を提供し、低温端電極を提供する各工程を省いていることにある。その結果、実施の形態における工程と同じ工程の記載は、以下において省かれている。
【0046】
実施の形態2によれば、実施の形態1における充填プロセス中に、p/n充填スクッテルド鉱粉末の充填後に、バリア層1、接合強化層2および低温端電極42を再度挿入しなくてよく、むしろ、上側プレスヘッド21をその中に直接配置する。焼結後に、低温端電極を有さないπ型要素が得られる。
【0047】
低温端電極を焼結しないπ型要素に関して、銅が被覆されたセラミック板上にπ型要素を溶接する前に、バリア層、接合強化層およびはんだ層を低温側に製造してもよい。次いで、π型要素を、銅が被覆されたセラミック板に溶接したときに、熱電変換素子が得られる。バリア層は、10〜80μmの範囲の厚さを有するMo金属層であることが好ましく、これはプラズマ溶射被覆により製造される。接合強化層は、10〜100μmの範囲の厚さを有するNi金属層であり、これは、プラズマ溶射、フレーム溶射または電気メッキにより製造される。はんだ層は、100〜500μmの範囲の厚さを有し、これは浸漬または電気メッキにより製造されてよい。
【0048】
要約すると、本発明の実施の形態の明白な特徴の1つは、嵩張る熱電変換材料を形成するプロセスおよび素子上で高温端電極と組み合わせるプロセスが同時に完了し、それによって、従来技術における熱電変換素子の高温端電極の溶接により生じる二度目の熱と圧力による熱電変換材料への悪影響を防ぐことである。
【0049】
本発明の精神および範囲から逸脱せずに、本発明の先の例示の実施の形態にどのような変更および改変を行っても差し支えないことが当業者には容易に認識されるであろう。したがって、これらの変更および改変は、添付の特許請求の範囲およびその同等の技術解決策の範囲に入ると考えるべきである。
【符号の説明】
【0050】
1 バリア層
2 接合強化層
3 分割板
21 上側プレスヘッド
22 下側プレスヘッド
41 高温端電極
42 低温端電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電変換素子を製造する方法において、
(a−1) 上面を有する第1の電極をダイの中に配置する工程;
(b−1) 前記第1の電極上に第1の中間層を配置する工程;
(c−1) 前記上面に分割板を挿入して、前記ダイの内部空間を少なくとも2つの部分に垂直に分割し、該少なくとも2つの部分の内のいくつかの部分の前記第1の中間層上に第1の熱電変換材料を充填し、他の部分の該第1の中間層上に第2の熱電変換材料を充填する工程;
(d−1) 前記ダイを焼結する工程;および
(e−1) 焼結後に前記分割板を取り除いて、π型熱電変換素子を得る工程;
を有してなる方法。
【請求項2】
前記π型熱電変換素子を得た後、銅が被覆されたセラミック板上に複数のπ型熱電変換素子を溶接して、全体を形成することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の電極が、x(質量%)が20≦x≦80である一般式MoxCu1-xを有するモリブデン−銅合金から選択される、またはx(質量%)が50≦x≦90である一般式WxCu1-xを有するタングステン−銅合金から選択される、合金または複合材料からなることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第1の熱電変換材料が、n−CoSb3、n−PbTeまたはn−Zn4Sb3から選択されるn型熱電変換材料からなり、
前記第2の熱電変換材料が、p−CoSb3、p−PbTeまたはp−Zn4Sb3から選択されるp型熱電変換材料からなることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
工程(c−1)と工程(d−1)との間に:
前記第1の熱電変換材料および前記第2の熱電変換材料の上に第2の中間層を提供する工程;および
前記第2の中間層上に第2の電極を提供する工程;
をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2012−514332(P2012−514332A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543566(P2011−543566)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/067868
【国際公開番号】WO2010/075028
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【出願人】(511112319)シャンハイ インスティテュート オブ セラミクス チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシーズ (6)
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI INSTITUTE OF CERAMICS, CHINESE ACADEMY OF SCIENCES