説明

熱電子発電素子、及び当該熱電子発電素子を備えた熱電子発電装置

【課題】低温度域で作動する熱電子発電素子(10)を実現する
【解決手段】エミッタ(11)とコレクタ(12)を仕事関数が所定値以下の材料により構成するとともに、エミッタ(11)とコレクタ(12)との間に順方向バイアスをかけるバイアス回路(C2)を設け、発電時にエミッタ(11)を低仕事関数化するとともに、エミッタ(11)からコレクタ(12)への熱電子の移動を促進させる、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電子を放出するエミッタと該熱電子を捕集するコレクタとを備え、当該エミッタの対向面とコレクタの対向面とが所定の間隙を隔てて配置された熱電子発電素子、及び当該熱電子発電素子を備えた熱電子発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高温の金属表面から熱電子が放出される現象を利用して、熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換する熱電子発電素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。熱電子発電素子は、熱電子を放出するエミッタと該熱電子を捕集するコレクタとを備えている。熱電子発電装置は、エミッタを高温熱源に接続する一方、コレクタを低温熱源に接続することによって構成されており、エミッタとコレクタは、熱電子発電素子の発電効率を高めるために、例えば真空中で所定の間隙を隔てて配置され、熱的にほぼ絶縁されている。
【0003】
ここで、固体から真空中に電子を放出するのに必要な最低エネルギーは仕事関数と呼ばれており、熱電子発電素子の起電力はエミッタの仕事関数とコレクタの仕事関数の差によって定められる。このため、一般的に言って、起電力を高める上では、エミッタの仕事関数は大きいことが望ましく、コレクタの仕事関数は小さいことが望ましい。エミッタについては、より高温の熱源を採用すれば、仕事関数の大きな材料を使用でき、そうすると出力電圧もより大きくなる。逆に、コレクタについては、材料の特性上、仕事関数の下限値があり、その値は一般に2eV程度であるが、電極間にセシウムを封入すると、セシウムがコレクタに吸着されてコレクタの仕事関数が小さくなることが知られている。この熱電子発電素子でエミッタに仕事関数がおよそ2eVの材料を用いた場合、従来は、エミッタ側の温度をおよそ1200K以上の高温に設定することが必要であった。
【0004】
一方、例えば自動車のエンジンの排気ガスを熱源として熱電子発電を行おうとした場合、エミッタ側の熱源の温度はT=500K程度であるため、仕事関数と温度の関係式(リチャードソン−ダッシュマンの式)から、エミッタの仕事関数はおよそ0.7eV以下でなければならない。このような材料として、2003年に発見された12CaO・7Alの結晶を母体とするエレクトライド(C12A7エレクトライド)は、常温常圧で安定して存在し、仕事関数がおよそ0.6eVを示すので、この材料を用いると、500K程度の低温度域での熱電子発電が可能になると考えられる。
【0005】
そこで、本願出願人は、このような低仕事関数の材料をエミッタとコレクタの材料として用いるとともに、エミッタとコレクタの間に逆バイアスをかけることでエミッタの仕事関数をコレクタの仕事関数よりも高め、それにより低温での熱電子発電を可能にしたものを提案している(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−322659号公報
【特許文献2】特開2007−5589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2のものは、エミッタとコレクタに低仕事関数の材料を使うことで低温発電を実現しているものの、エミッタの仕事関数をコレクタの仕事関数よりも高めている分だけは、発電に要する熱量が増えてしまう。逆に言うと、エミッタの仕事関数を高めずに発電することができれば、熱電子発電をさらに低温で行うことが可能になると考えられる。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、エミッタとコレクタに低仕事関数の材料を用いた場合に、従来よりもさらに低温度域で作動する熱電子発電素子を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、熱電子を放出するエミッタ(11)と該熱電子を捕集するコレクタ(12)とを備え、当該エミッタ(11)の対向面とコレクタ(12)の対向面とが所定の間隙を隔てて配置された熱電子発電素子(10)を前提としている。
【0009】
そして、この熱電子発電素子(10)は、前記エミッタ(11)とコレクタ(12)が、少なくとも前記対向面の仕事関数を所定値以下にした材料により構成され、エミッタの仕事関数を発電時に小さくする低仕事関数化手段(C2)を備え、前記低仕事関数化手段(C2)が、前記エミッタ(11)とコレクタ(12)との間に順方向バイアスをかけるバイアス手段(B)により構成されていることを特徴としている。
【0010】
この第1の発明では、バイアス手段(B)によって、エミッタ(11)とコレクタ(12)との間に順方向バイアスをかけることで、エミッタの仕事関数が発電時に小さくなる。一方、この順方向バイアスによってエミッタ(11)からコレクタ(12)への熱電子の移動が促進される。これによって、低温度域で作動する熱電子発電素子(10)が実現する。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記エミッタ(11)の対向面及びコレクタ(12)の対向面にそれぞれ、仕事関数が所定値以下の低仕事関数材料によるコーティング層(11a,12a)を形成することを特徴としている。
【0012】
第2の発明では、エミッタ(11)及びコレクタ(12)の対向面それぞれに、低仕事関数材料によるコーティング層(11a,12a)が形成されているため、エミッタ(11)及びコレクタ(12)の全体を低仕事関数材料により構成しなくても、熱電子発電素子(10)を低温度域で作動させることができる。
【0013】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記バイアス手段(B)が、前記コレクタ(12)における前記対向面とは逆側の背面に、不導体層(12b)を介して設けられた導体層(12c)を備えていて、前記エミッタ(11)側に負電圧を印加すると共に、前記コレクタ(12)の導体層(12c)側に正電圧を印加するように構成されることを特徴としている。
【0014】
第4の発明は、第1又は2の発明において、前記バイアス手段(B)が、前記エミッタ(11)の対向面とコレクタ(12)の対向面との間におけるコレクタ(12)寄りの位置に配設された導体部材(10a)を備えていて、前記エミッタ(11)側に負電圧を印加すると共に、前記導体部材(10a)側に正電圧を印加するように構成されることを特徴としている。
【0015】
第5の発明は、第1又は2の発明において、前記バイアス手段(B)が、前記コレクタ(12)における前記対向面に、不導体層(12b)を介して設けられた導体層(12c)を備えていて、前記エミッタ(11)側に負電圧を印加すると共に、前記コレクタ(12)の導体層(12c)側に正電圧を印加するように構成されることを特徴としている。
【0016】
第3乃至5の発明では、バイアス手段(B)の具体的構成がそれぞれ特定され、低温発電であっても、そのバイアス手段(B)によってエミッタ(11)からコレクタ(12)への熱電子の移動が促進される。
【0017】
第6の発明は、第1乃至5のいずれかの発明に係る熱電子発電素子(10)を少なくとも1つ備えた熱電子発電装置(1)に係り、前記エミッタ(11)が、コレクタ(12)側の熱源に比べて高温の熱源に接続されていることを特徴としている。第6の発明では、熱電子発電素子(10)が低温度域で作動するに伴い、低温度域で作動する熱電子発電装置(1)が構成される。
【発明の効果】
【0018】
上記第1の発明によれば、エミッタ(11)とコレクタ(12)との間に順方向バイアスをかけることで、エミッタ(11)の発電時の仕事関数が低くなり、しかも電子の移動が促進されるから、従来よりも低温度域で作動する熱電子発電素子(10)が実現する。つまり、本来はエミッタ(11)の仕事関数を高めるのが発電自体にとっては効果的であるにもかかわらず、逆に順方向バイアスによりエミッタ(11)の仕事関数を下げつつ電子の移動を促進することにより、低温での熱電子発電が可能となる。
【0019】
上記第2の発明によれば、エミッタ(11)及びコレクタ(12)の対向面それぞれに、低仕事関数材料からなるコーティング層(11a,12a)を設けることで、エミッタ(11)及びコレクタ(12)の全体を低仕事関数材料により構成しなくても、低温度域で安定に作動する熱電子発電素子(10)が実現する。
【0020】
上記第3、4又は5の発明によれば、バイアス手段(B)の具体的構成を特定したことにより、従来よりも低温度域で作動し得る熱電子発電素子(10)を実現できる。
【0021】
上記第6の発明によれば、第1から第5の発明の熱電子発電素子(10)を用いることによって、従来より低温度域で作動する熱電子発電装置(1)を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態の熱電子発電装置は、自動車のエンジンの排気ガスを熱源として発電を行うように構成されている。
【0023】
《発明の実施形態1》
図1は、実施形態1に係る熱電子発電装置(1)の電気回路を示す説明図である。この熱電子発電装置(1)は熱電子発電素子(10)を備え、熱電子発電素子(10)は、熱電子を放出するエミッタ(11)と、該熱電子を捕集するコレクタ(12)とを備えている。エミッタ(11)とコレクタ(12)は、真空中もしくは電気的に中性で電気の通りやすいプラズマ中で所定の微細な間隙を隔てて配置され、熱的にほぼ絶縁されている。
【0024】
エミッタ(11)とコレクタ(12)には、負荷(R)を介して発電回路(C1)が接続されている。この発電回路(C1)は、自動車のバッテリーに接続されている。
【0025】
この実施形態では、低仕事関数材料の1つとしての、12CaO・7Alの結晶を母体とするエレクトライド(C12A7エレクトライド:「機能材料」,シーエムシー出版,2005年3月5日発売号(2005年4月号),Vol.25 No.4,p.56〜64参照)が、エミッタ(11)及びコレクタ(12)の材料として用いられている。尚、エレクトライドは、イオン結晶の中で、陰イオンの占めるべき位置を電子が占める物質である。このC12A7エレクトライドは、常温常圧で安定して存在し、仕事関数がおよそ2.4eVの材料である。しかしながら、この材料は、発電時に順方向バイアスをかけることによって、エミッタ(11)の仕事関数が小さくなり、0.6eV程度になる。そのため、この材料を用いることによって、500K程度の低温度域での熱電子発電が可能になる。尚、低仕事関数材料は、C12A7エレクトライドに限定されるものではない。
【0026】
具体的に、このC12A7エレクトライドは、エミッタ(11)及びコレクタ(12)の表面(対向面)にコーティング層(11a,12a)として設けられている。
【0027】
また、コレクタ(12)には、対向面とは逆側の背面側に、不導体層(12b)を介して導体層(12c)が形成されている。
【0028】
そうして、エミッタ(11)とコレクタ(12)の導体層(12c)とに、発電時に順方向にバイアス電圧(V)をかけるバイアス回路(低仕事関数化手段)(C2)が接続されている。従って、導体層(12c)及びバイアス回路(C2)によって、バイアス手段(B)が構成されており、このバイアス手段(B)によって、エミッタ(11)からコレクタ(12)への熱電子の移動が促進されるとともに、エミッタ(11)の仕事関数が低くなるようになっている。
【0029】
図1において、エミッタ(11)に熱が印加されると、エミッタ(11)から熱電子が放出され、この熱電子がコレクタ(12)に捕集される。この熱電子は発電回路(C1)内を流れ、発電が行われることとなる。
【0030】
−実施形態1の効果−
以上のように、この実施形態では、エミッタ(11)及びコレクタ(12)の間に、順方向バイアスがかけられている。エミッタ(11)の仕事関数が低下するとともに、電子の移動も促進されるので、低温度域でも作動する熱電子発電装置(1)が実現する。つまり、普通であればエミッタ(11)側の仕事関数をコレクタ(12)側より高めて発電する必要があるが、本実施形態ではエミッタ(11)の仕事関数を下げることで、より低温での発電が可能となる。
【0031】
特にエミッタ(11)の対向面に、C12A7エレクトライドのコーティング層(11a)が形成されていることで、エミッタ(11)の仕事関数を0.6eV程度にすることができ、熱電子がエミッタ(11)から放出される温度を500K程度にすることができる。これは、自動車の排気ガスから得ることができる温度であり、自動車の排気ガスを熱源とした熱電子発電が実現する。
【0032】
《発明の実施形態2》
次に、本発明の実施形態2について説明する。実施形態2に係る熱電子発電装置(1)は、バイアス手段(B)の構成が実施形態1とは異なる。
【0033】
具体的には図2に示すように、エミッタ(11)とコレクタ(12)との間に、多数の貫通孔を有するメッシュ状の導体部材(10a)が配設されており、エミッタ(11)と導体部材(10a)とに、順方向のバイアス電圧(V)をかけるバイアス回路(低仕事関数化手段)(C2)が接続されている。
【0034】
この構成においても、エミッタ(11)からコレクタ(12)への熱電子の移動が促進されるとともに、エミッタ(11)の仕事関数が低下して、低温度域でも作動可能な熱電子発電装置(1)が実現する。
【0035】
《発明の実施形態3》
次に、本発明の実施形態3について説明する。実施形態3に係る熱電子発電装置(1)は、バイアス手段(B)の構成が実施形態1及び2とは異なる。
【0036】
具体的には図3に示すように、コレクタ(12)におけるコーティング層(12a)に対して不導体層(12b)が形成されると共に、その不導体層(12b)の表面に導電体からなる薄膜(12c)が形成されている。そうして、エミッタ(11)と導電体薄膜(12c)とに、順方向のバイアス電圧(V)をかけるバイアス回路(低仕事関数化手段)(C2)が接続されている。
【0037】
この構成においても、エミッタ(11)からコレクタ(12)への熱電子の移動が促進されるとともに、エミッタ(11)の仕事関数が低下して、低温度域でも作動可能な熱電子発電装置(1)が実現する。尚、この構成では、エミッタ(11)から放出された熱電子は、導電体薄膜(12c)を通過してコレクタ(12)に捕集される。
【0038】
《発明の実施形態4》
自動車の排気ガスを熱源とした低温度域での発電では、熱電子発電素子(10)の1つについての出力電圧は小さくなってしまう。そこで、実施形態4では、熱電子発電装置(1)の出力電圧を上げるために、複数の熱電子発電素子(10)を直列に接続するようにしている。
【0039】
具体的には、図4に示すように、この熱電子発電装置(1)は複数の熱電子発電素子(10)を備えている。尚、図4では、熱電子発電素子(10)のバイアス手段(B)の構成については、図示を省略しているが、実施形態1乃至3のいずれの構成を採用してもよい。
【0040】
各エミッタ(11)は高温側部材(第1熱源)(13)に接続され、各コレクタ(12)は低温側部材(第2熱源)(14)に接続されている。高温側部材(13)は、図示していないが、自動車の排気ガスが流れる排気ガス通路を備え、排気ガスの熱をエミッタ(11)に伝達する。また、低温側部材(14)は、図示していないが、冷却水が流れる冷却水通路を備え、コレクタ(12)から放出される熱を冷却水に吸熱させる。この冷却水通路は、図示しないラジエータに接続されている。
【0041】
そして、この熱電子発電装置(1)は、各熱電子発電素子(10)を電気的に直列に接続する導線部(15)を有している。各導線部(15)には銅線が用いられており、一端がエミッタ(11)に、他端がコレクタ(12)に接続されている。
【0042】
各導線部(15)は、多数のフィンからなる熱交換器(16)を貫通している。この熱交換器(16)は、導線部(15)を伝わる熱を冷却用流体としての空気に吸熱させることにより、導線部(15)を冷却するものであって、導線部(15)におけるエミッタ(11)側からコレクタ(12)側への熱伝導を抑制する熱伝導抑制部を構成している。この熱交換器(16)の近傍には、該熱交換器(16)に送風するためのファンが配置されている(図示せず)。
【0043】
−発電動作−
自動車の運転時、排気ガスが高温側部材(13)の排気ガス通路内を流れ、排気ガスの熱が各熱電子発電素子(10)のエミッタ(11)に与えられる。これによって、各エミッタ(11)から熱電子が放出され、各コレクタ(12)で熱電子が捕集される。そうして各熱電子発電素子(10)において起電力が発生する。コレクタ(12)から放出される熱は、低温側部材(14)の冷却水通路内を流れる冷却水に吸熱され、ラジエータとの間を循環する。
【0044】
この実施形態では複数の熱電子発電素子(10)が導線部(15)で直列に接続されているので、出力電圧が所定値(例えばバッテリー電圧)まで高められる。
【0045】
また、各導線部(15)が熱交換器(16)を貫通する構造を採用したことによって、導線部(15)におけるエミッタ(11)側からコレクタ(12)側への熱伝導を抑制するようにしている。このため、エミッタ(11)とコレクタ(12)との熱的な絶縁状態が阻害されるのを抑制し、発電効率が低下するのを防止できる。
【0046】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0047】
例えば、上記実施形態では、熱電子発電装置を自動車の排気ガスの排熱を利用して発電するものとして説明したが、ガスバーナー、ガス給湯器又はガスストーブなどにおけるガスの燃焼熱を利用した発電装置に応用したり、燃料電池の排熱を利用した発電装置に応用することもできる。
【0048】
また、本発明は低温度域での発電に特に有効であるが、それに限らず、高温度域の発電時に出力電圧を高めるのにも適用できる。
【0049】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明したように、本発明は、熱電子を放出するエミッタと該熱電子を捕集するコレクタとが所定の間隙を隔てて配置された熱電子発電素子、及び熱電子発電装置について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施形態1に係る熱電子発電装置の電気回路を示す説明図である。
【図2】実施形態2に係る熱電子発電装置の電気回路を示す説明図である。
【図3】実施形態3に係る熱電子発電装置の電気回路を示す説明図である。
【図4】実施形態4に係る熱電子発電装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0052】
1 熱電子発電装置
10 熱電子発電素子
10a 導体部材
11 エミッタ
11a コーティング層
12 コレクタ
12a コーティング層
12b 不導体層
12c 導体層
13 高温側部材(第1熱源)
B バイアス手段
C2 バイアス回路(低仕事関数化手段)
V バイアス電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電子を放出するエミッタ(11)と該熱電子を捕集するコレクタ(12)とを備え、当該エミッタ(11)の対向面とコレクタ(12)の対向面とが所定の間隙を隔てて配置された熱電子発電素子であって、
前記エミッタ(11)とコレクタ(12)は、少なくとも前記対向面の仕事関数が所定値以下の材料により構成され、
エミッタの仕事関数を発電時に小さくする低仕事関数化手段(C2)を備え、
前記低仕事関数化手段(C2)は、前記エミッタ(11)とコレクタ(12)との間に順方向バイアスをかけるバイアス手段(B)により構成されていることを特徴とする熱電子発電素子。
【請求項2】
請求項1に記載の熱電子発電素子において、
前記エミッタ(11)の対向面及びコレクタ(12)の対向面にはそれぞれ、仕事関数が所定値以下の低仕事関数材料によるコーティング層(11a,12a)が形成されていることを特徴とする熱電子発電素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱電子発電素子において、
前記バイアス手段(B)は、前記コレクタ(12)における前記対向面とは逆側の背面に、不導体層(12b)を介して設けられた導体層(12c)を備えていて、前記エミッタ(11)側に負電圧を印加すると共に、前記コレクタ(12)の導体層(12c)側に正電圧を印加するように構成されていることを特徴とする熱電子発電素子。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の熱電子発電素子において、
前記バイアス手段(B)は、前記エミッタ(11)の対向面とコレクタ(12)の対向面との間におけるコレクタ(12)寄りの位置に配設された導体部材(10a)を備えていて、前記エミッタ(11)側に負電圧を印加すると共に、前記導体部材(10a)側に正電圧を印加するように構成されていることを特徴とする熱電子発電素子。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の熱電子発電素子において、
前記バイアス手段(B)は、前記コレクタ(12)における前記対向面に、不導体層(12b)を介して設けられた導体層(12c)を備えていて、前記エミッタ(11)側に負電圧を印加すると共に、前記コレクタ(12)の導体層(12c)側に正電圧を印加するように構成されていることを特徴とする熱電子発電素子。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱電子発電素子(10)を少なくとも1つ備え、
前記エミッタ(11)が、コレクタ(12)側の熱源に比べて高温の熱源に接続されていることを特徴とする熱電子発電装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−294129(P2008−294129A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136550(P2007−136550)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)