説明

熱電子発電素子用の電極製造方法、その電極、及び、当該電極を用いた熱電子発電素子

【課題】熱電子発電素子用の電極(11,12)を低コストで製造可能にする。
【解決手段】導電材料によって、所定粗さの表面を有する電極本体(21)を作成する工程(P1)、電極本体(21)を構成する材料の仕事関数よりも低い仕事関数を有する低仕事関数材料により、電極本体(21)の表面に所定厚さのコーティング層(22)を形成する工程(P2)、及び、コーティング層(22)の形成後に、電極表面の一部に前記電極本体(21)が露出するように、コーティング層(22)を除去する工程(P3)、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電子を放出する電極と該熱電子を捕集する電極とが所定の間隙を隔てて配置された熱電子発電素子用の電極を製造する方法、その電極、及び当該電極を用いた熱電子発電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高温の金属表面から熱電子が放出される現象を利用して、熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換する熱電子発電素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。熱電子発電素子は、熱電子を放出するエミッタと該熱電子を捕集するコレクタとを備えている。熱電子発電装置は、エミッタを高温熱源に接続する一方、コレクタを低温熱源に接続することによって構成されており、エミッタとコレクタは、熱電子発電素子の発電効率を高めるために、例えば真空中で所定の間隙を隔てて配置され、熱的にほぼ絶縁されている。
【0003】
ここで、固体から真空中に電子を放出するのに必要な最低エネルギーは仕事関数と呼ばれており、熱電子発電素子の起電力はエミッタの仕事関数とコレクタの仕事関数の差によって定められる。このため、起電力を高める上では、エミッタの仕事関数は大きいことが望ましく、コレクタの仕事関数は小さいことが望ましい。エミッタについては、より高温の熱源を採用すれば、仕事関数の大きな材料を使用でき、そうすると出力電圧もより大きくなる。逆に、コレクタについては、材料の特性上、仕事関数の下限値があり、その値は一般に2eV程度であるが、電極間にセシウムを封入すると、セシウムがコレクタに吸着されてコレクタの仕事関数が小さくなることが知られている。この熱電子発電素子でエミッタに仕事関数がおよそ2eVの材料を用いた場合、従来は、エミッタ側の温度をおよそ1200K以上の高温に設定することが必要であった。
【0004】
一方、低温度域で熱電子発電を行うことを考えた場合、例えばエミッタ側の熱源の温度をT=500Kとすると、仕事関数と温度の関係式(リチャードソン−ダッシュマンの式)から仕事関数はおよそ0.7eV以下でなければならないが、従来は上述したようにこのような条件を満たす材料は発見されていなかった。しかし、2003年に発見された、12CaO・7Alの結晶を母体とするエレクトライド(C12A7エレクトライド:例えば、非特許文献1参照)は、常温常圧で安定して存在し、仕事関数がおよそ0.6eVを示す場合がある。そこで、この材料を用いると、500K程度の低温度域での熱電子発電が可能になると考えられる。尚、エレクトライドは、イオン結晶の中で、陰イオンの占めるべき位置を電子が占める物質である。
【特許文献1】特開平7−322659号公報
【非特許文献1】「機能材料」,シーエムシー出版,2005年3月5日発売号(2005年4月号),Vol.25 No.4,p.56〜64
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記のC12A7エレクトライド等の低仕事関数材料を、熱電子発電素子における電極に用いる場合には、電極表面に低仕事関数材料を薄膜状で設けることが望ましい。薄膜状にすることによって熱伝導性及び電気伝導性が向上し、熱電子発電素子の発電効率が向上すると考えられるためである。
【0006】
しかしながら、従来から一般的に行われているような薄膜形成方法に従って、低仕事関数材料による薄膜を、電極表面の全体に亘って均一に形成したのでは、電極の製造コストが増大してしまい、ひいては熱電子発電素子の高コスト化を招いてしまう。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱電子発電素子用の電極を低コストで製造可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、熱電子を放出する電極(11)と該熱電子を捕集する電極(12)とが所定の間隙を隔てて配置された熱電子発電素子用の電極を製造する方法を前提としている。
【0009】
そして、この製造方法は、導電材料によって、所定粗さの表面を有する電極本体(21)を作成する工程(P1)、前記電極本体(21)を構成する材料の仕事関数よりも低い仕事関数を有する低仕事関数材料により、前記電極本体(21)の前記表面に所定厚さのコーティング層(22)を形成する工程(P2)、及び、前記コーティング層(22)の形成後に、前記電極表面の一部に前記電極本体(21)が露出するように、前記コーティング層(22)を除去する工程(P3)、を含むことを特徴としている。
【0010】
この第1の発明では、所定の表面粗さを有する、つまり、表面に所定の凹凸を有する電極本体(21)の、その表面に対して低仕事関数材料による所定厚さのコーティング層(22)を形成する。このことによって、電極本体(21)の表面の凹凸を埋めつつ、その電極本体(21)の表面からさらに所定の厚みを有するコーティング層(22)が形成される。
【0011】
次に、そのコーティング層(22)を除去することによって、電極表面の一部に電極本体(21)が露出するようにする。こうすることによって、電極(11,12)の表面には、前記の電極本体(21)が露出した部分(21a)が形成されると共に、電極本体(21)の表面に所定の凹凸が存在していることから、低仕事関数材料によって形成された薄膜部分(11a,12a)も電極(11,12)の表面の一部に形成されることになる。
【0012】
熱電子発電素子用の電極(11,12)としては、低仕事関数材料による薄膜が電極表面の全体に亘って均一に形成されている必要はなく、低仕事関数材料による薄膜(11a,12a)が、電極表面の少なくとも一部に存在していれば、実効面積は小さくなるものの、熱電子発電素子用の電極(11,12)として機能し得る。
【0013】
そのため、第1の発明の如き製造方法では、例えば薄膜形成のために電極本体(21)の表面を平坦化する必要はなく、そうした平坦化工程は省略できる。また、電極本体(21)に形成するコーティング層(22)も、その厚みを均一にする必要はない。従って、第1の発明では、工程の省略や、工程の単純化が図られる結果、電極(11,12)の製造コストは大幅に低減する。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、前記電極本体(21)の前記表面の粗さRaは、1μm以下であることを特徴としている。
【0015】
電極本体(21)の表面の粗さが大きすぎるときには、電極(11,12)における薄膜部分(11a,12a)の面積が小さくなってしまう虞がある。そのため、電極本体(21)の表面の粗さRaは、1μm以下であることが望ましい。そうすることで、電極表面における薄膜部分(11a,12a)の面積が増大し、電極(11,12)の実効面積が拡大する。
【0016】
第3の発明は、熱電子を放出する電極(11)と該熱電子を捕集する電極(12)とが所定の間隙を隔てて配置された熱電子発電素子用の電極を前提としている。
【0017】
そして、この電極(11,12)は、導電材料により構成された電極本体(21)を備え、その表面に、前記電極本体(21)が露出した部分(21a)と、前記電極本体(21)を構成する材料の仕事関数よりも低い仕事関数を有する低仕事関数材料によって形成された薄膜部分(11a,12a)と、が少なくとも形成されていることを特徴としている。
【0018】
第3の発明は、第1の発明によって製造される電極(11,12)の特徴を特定している。つまり、電極(11,12)の表面の一部に低仕事関数による薄膜部分(11a,12a)が形成されていることによって、当該薄膜部分(11a,12a)において主に、熱電子が放出される、又は、熱電子が捕集されることになり、熱電子発電素子(10)における電極(11,12)として利用することが可能になる。
【0019】
第4の発明は、第3の発明において、その表面に、前記低仕事関数材料によって形成された、相対的に厚膜の部分(22a)がさらに形成されていることを特徴としている。
【0020】
この第4の発明では、第1の発明によって製造される電極(11,12)のさらなる特徴を特定している。つまり、電極(11,12)の表面に、低仕事関数によって形成された厚膜の部分(22a)が形成されていることによって、薄膜部分(11a,12a)のみならず当該厚膜の部分(22a)においても、熱電子が放出される、又は、熱電子が捕集されることになる。従って、電極(11,12)の実効面積が拡大する。
【0021】
第5の発明は、第3又は4の発明に係る電極を備えた熱電子発電素子に係り、当該電極が、熱電子を放出するエミッタ(11)として用いられていることを特徴としている。
【0022】
第5の発明の如く、低仕事関数材料による薄膜部分(11a)を有する電極を、熱電子発電素子(10)におけるエミッタ(11)として用いることによって、当該熱電子発電素子(10)を、低温度域で作動させることが実現する。従って、第3又は4の発明に係る電極は、熱電子を放出するエミッタ(11)として最適である。尚、当該電極は、コレクタ(12)としても利用可能である。
【発明の効果】
【0023】
上記第1の発明によれば、表面の一部に、低仕事関数材料による薄膜部分(11a,12a)が形成された電極(11,12)を製造することができるから、低コストで熱電子発電素子用の電極(11,12)を製造することができる。
【0024】
上記第2の発明によれば、電極(11,12)の実効面積が拡大するため、発電効率の点で有利な電極(11,12)を製造することができる。
【0025】
上記第3又は4の発明によれば、表面の一部に、低仕事関数材料による薄膜部分(11a,12a)が形成されているから、熱電子発電素子用の電極(11,12)として用いることができる。
【0026】
上記第5の発明によれば、前記の電極を熱電子発電素子(10)のエミッタ(11)として用いることにより、低温度域でも作動可能な熱電子発電素子(10)を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態の熱電子発電装置は、自動車のエンジンの排気ガスを熱源として発電を行うように構成されている。
【0028】
図1は、実施形態に係る熱電子発電装置(1)の電気回路を示す説明図である。この熱電子発電装置(1)は熱電子発電素子(10)を備え、熱電子発電素子(10)は、熱電子を放出するエミッタ(11)と、該熱電子を捕集するコレクタ(12)とを備えている。エミッタ(11)とコレクタ(12)は、真空中もしくは電気的に中性で電気の通りやすいプラズマ中で所定の微細な間隙を隔てて配置され、熱的にほぼ絶縁されている。
【0029】
エミッタ(11)とコレクタ(12)には、負荷(R1)を介して発電回路(C1)が接続されている。この発電回路(C1)は、自動車のバッテリーに接続されている。
【0030】
この実施形態では、低仕事関数材料の1つとしての、12CaO・7Alの結晶を母体とするエレクトライド(C12A7エレクトライド)が、エミッタ(11)及びコレクタ(12)の材料として用いられている。尚、エミッタ(11)及びコレクタ(12)の材料として用いることができる低仕事関数材料は、C12A7エレクトライドに限らない。このC12A7エレクトライドは、この実施形態では、エミッタ(11)及びコレクタ(12)の表面(対向面)に薄膜(11a,12a)として設けられている。尚、エミッタ(11)及びコレクタ(12)の製造方法の詳細は、後述する。
【0031】
図1において、エミッタ(11)に熱が印加されると、エミッタ(11)から熱電子が放出され、この熱電子がコレクタ(12)に捕集される。この熱電子は発電回路(C1)内を流れ、発電が行われることとなる。この実施形態では、排気ガスを熱源としており、500K程度という低温度域での発電であるから、熱電子発電素子(10)の1つについて出力電圧が小さい。そこで、本実施形態では、電圧を上げるために、複数の熱電子発電素子(10)を直列に接続するようにしている。
【0032】
具体的には、図2に示すように、この熱電子発電装置(1)は複数の熱電子発電素子(10)を備えている。
【0033】
各エミッタ(11)は高温側部材(第1熱源)(13)に接続され、各コレクタ(12)は低温側部材(第2熱源)(14)に接続されている。高温側部材(13)は、図示していないが、自動車の排気ガスが流れる排気ガス通路を備え、排気ガスの熱をエミッタ(11)に伝達する。また、低温側部材(14)は、図示していないが、冷却水が流れる冷却水通路を備え、コレクタ(12)から放出される熱を冷却水に吸熱させる。この冷却水通路は、図示しないラジエータに接続されている。
【0034】
そして、この熱電子発電装置(1)は、各熱電子発電素子(10)を電気的に直列に接続する導線部(15)を有している。各導線部(15)には銅線が用いられており、一端がエミッタ(11)に、他端がコレクタ(12)に接続されている。
【0035】
各導線部(15)は、多数のフィンからなる熱交換器(16)を貫通している。この熱交換器(16)は、導線部(15)を伝わる熱を冷却用流体としての空気に吸熱させることにより、導線部(15)を冷却するものであって、導線部(15)におけるエミッタ(11)側からコレクタ(12)側への熱伝導を抑制する熱伝導抑制部を構成している。この熱交換器(16)の近傍には、該熱交換器(16)に送風するためのファンが配置されている(図示せず)。
【0036】
−発電動作−
自動車の運転時、排気ガスが高温側部材(13)の排気ガス通路内を流れ、排気ガスの熱が各熱電子発電素子(10)のエミッタ(11)に与えられる。これによって、各エミッタ(11)から熱電子が放出され、各コレクタ(12)で熱電子が捕集される。そうして各熱電子発電素子(10)において起電力が発生する。コレクタ(12)から放出される熱は、低温側部材(14)の冷却水通路内を流れる冷却水に吸熱され、ラジエータとの間を循環する。
【0037】
この実施形態では複数の熱電子発電素子(10)が導線部(15)で直列に接続されているので、出力電圧が所定値(バッテリー電圧)まで高められる。そうして、直列構造をとることによって、自動車の排熱のような低温度域の熱源で作動する熱電子発電装置(1)を実用化することができる。
【0038】
また、各導線部(15)が熱交換器(16)を貫通する構造を採用したことによって、導線部(15)におけるエミッタ(11)側からコレクタ(12)側への熱伝導を抑制するようにしている。このため、エミッタ(11)とコレクタ(12)との熱的な絶縁状態が阻害されるのを抑制し、発電効率が低下するのを防止できる。
【0039】
−電極の製造方法−
前記熱電子発電素子(10)におけるエミッタ(11)及びコレクタ(12)(以下、これらを総称して電極という)は、前述したように、C12A7エレクトライドが材料として用いられており、このC12A7エレクトライドは、電極(11,12)の対向面に、薄膜状に設けられている。
【0040】
ここで、図3を参照しながら、電極(11,12)の製造手順について説明する。先ず、例えば銅やアルミニウム等の導電材料からなる電極本体(21)を作成する(図3の工程P1参照)。この電極本体(21)は、電極(11,12)において対向面となる面の粗さが、所定の粗さ、例えばRaが1μm以下にされている。従って、電極本体(21)の表面粗さの条件はそれほど厳しいものではなく、電極本体(21)の表面粗さRaが、元々1μm以下であるならば、その表面を研磨等する平坦化処理は不要である。
【0041】
次に、前記の電極本体(21)の表面に対し、C12A7エレクトライドのコーティング層(22)を所定の厚みで形成する(図3の工程P2参照)。ここでのコーティング層(22)を形成する手法としては特に限定されるものではなく、レーザアブレーション法、真空蒸着法、及びスパッタリング法等を含むPVD(Physical Vapor Deposition)やCVD(Chemical Vapor Deposition)を含む気相法、液相法、並びに、スピンコーティング法や、めっき法等を含む塗布法の内から適宜採用すればよい。この内でも、レーザアブレーション法、真空蒸着法、スパッタリング法、及びCVDが好ましい。
【0042】
また、ここで形成するコーティング層(22)は、その厚みを均一にする必要はなく、少なくとも電極本体(21)の表面の凹凸を埋めると共に、その表面から所定以上の厚みを有していればよい。
【0043】
そうして、コーティング層(22)が形成されれば、そのコーティング層(22)を除去する。コーティング層(22)を除去する手法も特に限定されるものではない。例えば研磨等を採用することができる。この除去工程では、少なくとも表面の一部に電極本体(21)が露出するまで、コーティング層(22)を除去する(図3の工程P3参照)。こうすることによって、その表面に電極本体(21)が露出した部分(21a)、C12A7エレクトライドの薄膜部分(11a,12a)、及びC12A7エレクトライドの厚膜部分(22a)がそれぞれ形成された電極(11,12)が完成する。
【0044】
−実施形態の効果−
以上のように、この実施形態では、電極(11,12)の対向面に、C12A7エレクトライドの薄膜(11a,12a)が形成されているため、低温度域でも作動する熱電子発電素子(10)が実現する。ここで、薄膜(11a,12a)は、電極(11,12)の対向面の全体に亘って形成されているのではなく、図3に示すように、対向面の一部分に形成されているものの、エミッタ(11)に熱が加えられたときには、その薄膜の部分(11a)から、熱電子が放出される。また、薄膜の部分(11a)よりも効率は低下するものの、厚膜の部分(22a)からも、熱電子が放出される。また、コレクタ(12)における薄膜の部分(12a)及び厚膜の部分(22a)において熱電子が捕集される。従って、電極(11,12)の対向面の面積に比べて実効面積は小さくなるものの、前記の電極は、熱電子発電素子用のエミッタ(11)及びコレクタ(12)として機能し得る。
【0045】
前記の電極(11,12)は、電極本体(21)を作成する工程(P1)、電極本体(21)の表面に所定厚さのコーティング層(22)を形成する工程(P2)、及び、コーティング層(22)を除去する工程(P3)、によって製造されており、薄膜形成のために電極本体(21)の表面を平坦化する工程は省略されている。また、コーティング層(22)も均一の厚みに形成する必要はない。このように工程の省略や、工程の単純化が図られる結果、電極(11,12)の製造コストを大幅に低減させることができ、ひいては熱電子発電素子(10)を低コストで製造することができる。
【0046】
また、電極本体(21)の表面粗さRaを1μm以下に設定することによって、電極(11,12)表面における薄膜部分(11a,12a)の面積を確保することができる。それによって、電極(11,12)の最低限の実効面積を確保して、熱電子発電素子(10)の発電効率を向上させる上で有利である。
【0047】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0048】
例えば、上記実施形態では、熱電子発電装置を自動車の排気ガスの排熱を利用して発電するものとして説明したが、ガスバーナー、ガス給湯器又はガスストーブなどにおけるガスの燃焼熱を利用した発電装置に応用したり、燃料電池の排熱を利用した発電装置に応用することもできる。
【0049】
また、本発明は低温度域での発電に特に有効であるが、それに限らず、高温度域の発電時に出力電圧を高めるのにも適用できる。
【0050】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明したように、本発明は、熱電子を放出する電極と該熱電子を捕集する電極とが所定の間隙を隔てて配置された熱電子発電素子用の電極を製造する方法、並びにその電極及び熱電子発電素子について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施形態に係る熱電子発電装置の電気回路を示す説明図である。
【図2】実施形態に係る熱電子発電装置の概略構成図である。
【図3】実施形態に係る電極の製造手順を示す説明図である。
【符号の説明】
【0053】
1 熱電子発電装置
10 熱電子発電素子
11 エミッタ
12 コレクタ
11a 薄膜部分
12a 薄膜部分
21 電極本体
21a 電極本体が露出した部分
22 コーティング層
22a 厚膜の部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電子を放出する電極(11)と該熱電子を捕集する電極(12)とが所定の間隙を隔てて配置された熱電子発電素子用の電極を製造する方法であって、
導電材料によって、所定粗さの表面を有する電極本体(21)を作成する工程(P1)、
前記電極本体(21)を構成する材料の仕事関数よりも低い仕事関数を有する低仕事関数材料により、前記電極本体(21)の前記表面に所定厚さのコーティング層(22)を形成する工程(P2)、及び、
前記コーティング層(22)の形成後に、前記電極表面の一部に前記電極本体(21)が露出するように、前記コーティング層(22)を除去する工程(P3)、を含むことを特徴とする電極製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電極製造方法において、
前記電極本体(21)の前記表面の粗さRaは、1μm以下であることを特徴とする電極製造方法。
【請求項3】
熱電子を放出する電極(11)と該熱電子を捕集する電極(12)とが所定の間隙を隔てて配置された熱電子発電素子用の電極であって、
導電材料により構成された電極本体(21)を備え、
その表面に、前記電極本体(21)が露出した部分(21a)と、前記電極本体(21)を構成する材料の仕事関数よりも低い仕事関数を有する低仕事関数材料によって形成された薄膜部分(11a,12a)と、が少なくとも形成されていることを特徴とする電極。
【請求項4】
請求項3に記載の電極において、
その表面に、前記低仕事関数材料によって形成された、相対的に厚膜の部分(22a)がさらに形成されていることを特徴とする電極。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の電極を備え、当該電極が、熱電子を放出するエミッタ(11)として用いられていることを特徴とする熱電子発電素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−228386(P2008−228386A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59643(P2007−59643)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)