説明

熱電発電素子を用いた原子力発電所非常用バッテリー充電装置

【課題】 原子力発電所への電源供給が遮断される事故が発生し、非常用ディーゼル発電機に故障が発生するなど、原子炉内の炉心の冷却のための非常用炉心冷却装置に円滑な電源供給ができない場合に、非常用炉心冷却装置の冷却機能を維持するために電源を供給する非常用バッテリーを原子炉で発生する熱を用いて充電する装置を提供する。
【解決手段】 電気ポンプまたはスチームポンプを備えた非常用炉心冷却装置に非常用電源を供給する非常用バッテリー充電装置であって、原子力発電所内で発生する崩壊熱及び残熱を感知し、前記感知された熱を電気エネルギーに変化させる熱電発電素子;前記熱電発電素子に連結され、前記熱電発電素子で発生した電流を一定電圧で出力するための電気エネルギー変換部;及び前記変換部から出力された電源を貯蔵する非常用バッテリー;を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原子力発電所の非常用炉心冷却装置に非常用電源を供給する非常用バッテリー充電装置に係り、より詳しくは原子力発電所の系統の中で温度差が発生する原子炉、高温管、低温管、蒸気発生器などに熱電発電素子を装着して原子力発電所内で発生する崩壊熱及び残熱を用いる非常用バッテリー充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧軽水炉型原子炉を用いた原子力発電所は十分な安全余裕度を考慮して設計するにもかかわらず、予想できない事故が発生することがある。大量の冷却水が漏水される事故が発生するとか電力供給が遮断される事故などが発生した場合、十分な非常用冷却水が供給できなければ原子炉の炉心が過熱して原子炉が損傷される事故が発生することになる。
【0003】
したがって、事故発生の際に炉心を冷却するためには、非常用炉心冷却装置が円滑に作動しなければならない。現在非常用炉心冷却装置は電気ポンプまたはスチームポンプを用いて冷却水を供給する方式を取っている。
【0004】
前記非常用炉心冷却装置の円滑な作動のためには、電気ポンプまたはスチームポンプを作動するための電源が確実に供給されなければならなく、一般に電源供給は所外電源、非常用ディーゼル発電機、バッテリーなどによってなされる。
【0005】
非常用炉心冷却装置に外部電源の供給が遮断される事故が発生すると同時に非常用ディーゼル発電機などに故障が発生する状況となれば、前記非常用炉心冷却装置及び事故対応のための器機に対する電源供給が遮断され、その作動ができなくなる。
【0006】
非常用バッテリーを用いて炉心に冷却水を供給するための非常用炉心冷却装置に電源を供給することができるが、現在国内原子力発電所で使っている一般的な非常用バッテリーは約8時間の容量に過ぎなくて、事故対応のための時間が長期間かかる場合、非常用炉心冷却装置への電源供給が中断される問題がある。
【0007】
事故発生の際、炉心の冷却のための先行技術としては、特許文献1(非常用炉心冷却水が最小に迂回する直接注入ノズル)、特許文献2(原子炉保護容器と圧縮タンクを用いた非常用炉心冷却方法と装置)などの多数があるが、非常用炉心冷却装置への電源供給が遮断された事故発生の際、非常用炉心冷却装置への円滑な電源供給のために熱電発電素子により、原子炉で発生する熱を用いて非常用バッテリーを充電する技術についての開示はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】大韓民国登録特許第10−056876号明細書
【特許文献2】大韓民国登録特許第10−0419194号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前述した従来技術の問題点を解決するためになされたもので、本発明の目的は、原子力発電所への電源供給が遮断される事故が発生するとか、非常用ディーゼル発電機に故障が発生するなど、原子炉内の炉心の冷却のための非常用炉心冷却装置に円滑な電源供給ができない場合に、非常用炉心冷却装置の冷却機能を維持するために電源を供給する非常用バッテリーを原子炉で発生する熱を用いて充電する装置を提供することにある。
【0010】
一方、原子炉で発生する熱を用いた電力は熱電発電素子で生産し、前記熱電発電素子は原電内に温度差が発生する多数の地点に装着することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の熱電発電素子を用いた原子力発電所非常用バッテリー充電装置は、電気ポンプまたはスチームポンプを備えた非常用炉心冷却装置に非常用電源を供給する非常用バッテリー充電装置であって、原子力発電所内で発生する崩壊熱及び残熱を感知し、前記感知された熱を電気エネルギーに変化させる熱電発電素子;前記熱電発電素子に連結され、前記熱電発電素子で発生した電流を一定電圧で出力するための電気エネルギー変換部;及び前記変換部から出力された電力を貯蔵する非常用バッテリー;を含む。
【0012】
前記熱電発電素子は、低温管、原子炉容器、高温管及び蒸気発生器の中で少なくとも1ヶ所以上に装着されることができる。
【0013】
前記原子力発電所非常用バッテリー充電装置は、前記熱電発電素子の両側に伝熱板を含むことができる。
【0014】
前記原子力発電所非常用バッテリー充電装置は、前記熱電発電素子の一側に冷却フィンを含むことができる。
【発明の効果】
【0015】
前記のような本発明によれば、電気ポンプまたはスチームポンプを備えた非常用炉心冷却装置に非常用電源を供給する非常用バッテリーを熱電発電素子で充電する装置を提供することで、電源が遮断され、非常用ディーゼル発電機などの故障によって非常用炉心冷却装置に円滑な電源供給ができない場合に非常用炉心冷却装置に電源を供給する非常用バッテリーを原子炉自体で発生する崩壊熱及び残熱を熱電素子の高温部として用いて充電することにより、非常用炉心冷却装置が作動する電源を供給するとか非常用冷却のために優先的に使われなければならない器機に電源を供給することができる。したがって、炉心が過熱して原子炉が損傷されることを遅延または防止することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による熱電発電素子が低温管、原子炉、高温管に装着された非常用バッテリー充電装置の構成図で、(1a)はA−A’線についての断面図である。
【図2】本発明に使われる熱電発電素子の構成を示す構成図である。
【図3】本発明に使われる熱電発電素子に冷却フィンが含まれた構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。まず、各図面の構成要素に参照符号を付けるに際して、同一構成要素に対してはたとえ他の図面上に表示されても、できるだけ同一符号を使う。また、下記の本発明の説明において、関連の公知機能または構成についての具体的な説明が本発明の要旨を不必要にあいまいにすることができると判断される場合にはその詳細な説明を省略する。
【0018】
図1〜図3に示すように、本発明の熱電発電素子を用いた原子力発電所非常用バッテリー充電装置(以下、‘本発明’)は、大別して原子力発電所内で発生する崩壊熱及び残熱を感知し、前記感知された熱を電気エネルギーに変化させる熱電発電素子100、前記熱電発電素子100で発生した電流を一定電圧で出力するための電気エネルギー変換部200、及び前記変換部200から出力された電源を貯蔵する非常用バッテリー300で構成されている。
【0019】
図1に具体的に示すように、現在原子力発電所は、事故発生の際、非常用炉心冷却装置が炉心冷却機能を遂行することになる。このときに必要な電源は所外電源を使い、所外電源が遮断されたときには非常用ディーゼル発電機で生産した電気を使う。一方、すべての電源供給が中断されたときには非常用バッテリー300を用いて電源を供給することになる。
【0020】
前記熱電発電素子100はゼーベック(seebeck)の原理を用いて金属の両端面に熱の差をかけると、起電力の差によって電流が発生する現象によって簡単に発電するもので、他の発電設備のような機械的な駆動部分なしに両端間の温度差を用いて起電力を発生させることができるので、原子炉で発生する熱を用いて充分に発電可能である。また、一定温度ではなくても起電力が発生し、原子炉の停止によって原子炉の正常出力ではないとしても原子炉が冷えるまで持続的な発電が可能である。
【0021】
前記電気エネルギー変換部200は前記熱電発電素子100で発生した電流を一定電圧の電流に変換して出力することで、前記非常用バッテリー300を充電することになる。
【0022】
原子力発電所の電源が遮断される事故が発生した場合にも非常用炉心冷却装置の機能を維持するために、非常用ディーゼル発電機、非常用バッテリー300などによって非常用炉心冷却装置に備えられた電気ポンプまたはスチームポンプに電源が供給される。したがって、非常用ディーゼル発電機、非常用バッテリー300などによって冷却水を炉心に供給することにより、炉心の過熱による炉心溶融及び原子炉の損傷を遅延または防止することになる。ただ、非常用ディーゼル発電機にも機械的な故障が発生した場合には、非常用バッテリー300によって非常用炉心冷却装置及び事故対応のための周辺器機に電源が供給される。しかし、前記非常用バッテリー300は容量に限界があるため、事故対応のための時間が長期間かかる場合には原子炉の非常用炉心冷却装置への円滑な電源供給が遮断されて冷却機能を喪失するので、炉心の過熱によって炉心が溶融されるなどの重大な事故が発生することになる。
【0023】
原子炉が正常に運行している場合だけでなく稼動が停止した場合にも、低温管10、原子炉20、高温管30、蒸気発生器40などには依然として崩壊熱及び残熱が残ることになる。よって、前記熱電発電素子100を低温管10、原子炉20、高温管30、蒸気発生器40などに一つ以上装着することで、原子炉に残っている崩壊熱及び残熱を用いて電力を生産し、前記熱電発電素子100で生産された電力を前記電気エネルギー変換部200に一定電圧で出力することになり、前記電気エネルギー変換部200から出力された電源を前記非常用バッテリー300が貯蔵することにより、前記非常用バッテリー300を充電することができる。よって、電源が遮断され、非常用ディーゼルエンジンで機械的故障が発生して非常用炉心冷却装置に備えられた電気ポンプまたはスチームポンプへの電源供給が円滑でない場合に非常用バッテリー300によって非常用炉心冷却装置に電源を供給することができ、事故対応に長期間がかかり、人が接近することができなくて付加の電源を全然供給することができない状態でも、前記熱電発電素子を用いた原子力発電所非常用バッテリー充電装置によって非常用バッテリー300が安定的に電気ポンプまたはスチームポンプに電源を供給することにより、非常用炉心冷却装置が正常の冷却機能を遂行することができるようにする。
【0024】
一方、原子炉内の炉心が冷えて前記熱電発電素子100によってそれ以上電力を生産することができない場合には、非常用炉心冷却装置の作動も不要になり、炉心の核反応度が高くなり崩壊熱及び残熱の強さ高くなって高熱が発生する場合には、前記熱電発電素子100が前記崩壊熱及び残熱を用いて一定レベル以上の電力を生産して非常用バッテリー300に電力を供給することができ、前記非常用バッテリー300は非常用炉心冷却装置に備えられた電気ポンプまたはスチームポンプに円滑に電力を供給することにより、前記非常用炉心冷却装置の冷却機能を稼動することができる。
【0025】
また、図3に示すように、前記熱電発電素子100の効率的な電力生産のために十分な低温の確保が必要なので、前記熱電発電素子100の低温部に冷却フィン140を設置することができ、原子力発電所内で発生する崩壊熱及び残熱の伝熱率を高めるために前記熱電発電素子100に伝熱板をさらに含むことができる。
【0026】
以上、本発明の特定の実施例を詳細に説明したが、当該分野の通常の知識を持った者にとって、このような具体的な説明はただ好適な実施様態であるだけで、これによって本発明の範囲が制限されるものではない点は明らかであろう。したがって、本発明の実質的な範囲は添付の特許請求範囲とその等価物によって定義されると言える。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、原子力発電所の系統の中で温度差が発生する原子炉、高温管、低温管、蒸気発生器などに熱電発電素子を装着して原子力発電所内で発生する崩壊熱及び残熱を用いる非常用バッテリー充電装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
10 低温管
20 原子炉
30 高温管
40 蒸気発生器
100 熱電発電素子
110 セラミック板
120 電気伝導板
130 熱電半導体(P型半導体及びN型半導体)
140 冷却フィン
200 電気エネルギー変換部
300 非常用バッテリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気ポンプまたはスチームポンプを備えた非常用炉心冷却装置に非常用電源を供給する非常用バッテリー充電装置において、
原子力発電所内で発生する崩壊熱及び残熱を感知し、前記感知された熱を電気エネルギーに変化させる熱電発電素子100;
前記熱電発電素子100に連結され、前記熱電発電素子100で発生した電流を一定電圧で出力するための電気エネルギー変換部200;及び
前記変換部200から出力された電源を貯蔵する非常用バッテリー300;を含む、熱電発電素子を用いた原子力発電所非常用バッテリー充電装置。
【請求項2】
前記熱電発電素子100は、低温管10、原子炉容器20、高温管30及び蒸気発生器40の中で少なくとも1ヶ所以上に装着されることを特徴とする、請求項1に記載の熱電素子を用いた原子力発電所非常用バッテリー充電装置。
【請求項3】
前記熱電発電素子100の両側に伝熱板を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の原子力発電所非常用バッテリー充電装置。
【請求項4】
前記熱電発電素子100の一側に冷却フィン140を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の熱電発電素子を用いた原子力発電所非常用バッテリー充電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−57654(P2013−57654A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−283831(P2011−283831)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【出願人】(511314614)韓電原子力燃料株式会社 (5)
【氏名又は名称原語表記】KEPCO NUCLEAR FUEL CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】242,Deakjin−dong,Daedukdaero,989bunji,Yuseong−gu,Daejeon,305−353 Korea