説明

熱音響機関

【課題】小さな温度差で大きな発電力が得られる熱音響機関を提供する。
【解決手段】ループ管2と、ループ管2の管軸方向に加熱器3と再生器4と冷却器5を有することにより、熱エネルギを音響エネルギに変換する原動機6と、ループ管2に一端が接続されて直線状に延びた共鳴管7と、共鳴管7の反対端に挿入され音響エネルギで加振されるピストン8と、ピストン8の振動エネルギを電気エネルギに変換する発電機9とを備えた熱音響機関1において、共鳴管7に、共鳴管7の管軸方向に加熱器10と再生器11と冷却器12を有することにより、共鳴管7内をループ管2からピストン8に向かって進む進行波を増幅する増幅機13を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ループ管と共鳴管と発電機とを繋ぎ合わせた熱音響機関に係り、小さな温度差で大きな発電力が得られる熱音響機関に関する。
【背景技術】
【0002】
図3に示されるように、従来の熱音響機関31は、原動機6を備えたループ管2に共鳴管7の一端が接続され、その共鳴管7の他端にピストン8を介して発電機9が接続されている。
【0003】
この熱音響機関31では、原動機6がループ管2の管軸方向に並んだ加熱器3と再生器4と冷却器5を有することにより、原動機6において熱エネルギが音響エネルギに変換され、ループ管2内に定在波が生じる。
【0004】
ループ管2で発生した音響エネルギが進行波として共鳴管7を通ってピストン8に伝搬し、ピストン8によって発電機9の振動子が加振される。発電機9では、振動子の振動により、固定子と振動子との位置関係が変動し、磁束が変化する。磁束の変化が巻き線に作用して起電力が生じる。
【0005】
このように、原動機6において熱エネルギが音響エネルギに変換され、その音響エネルギが最終的に発電機9において電気エネルギに変換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3050543号公報
【特許文献2】特開2007−237020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図3の熱音響機関31では、共鳴管7内に定在波と進行波が混在している。すなわち、共鳴管7内の定在波成分により、ループ管2と共鳴管7内の作動流体が安定な周波数で振動し、一方、進行波によって音響エネルギが輸送される。
【0008】
しかしながら、図3の熱音響機関31では、原動機6におけるエネルギの供給能力によっては、発電機9において電力需要に対して十分な電力供給が果たせないことがある。
【0009】
また、熱音響機関31の利用用途として、例えば、車両の廃熱から電力を得ようとする場合、廃熱の温度と大気の温度(あるいは冷却水の温度)の温度差が小さいために、発電機9から取り出せる電力が大きくできない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、小さな温度差で大きな発電力が得られる熱音響機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、ループ管と、前記ループ管の管軸方向に加熱器と再生器と冷却器を有することにより、熱エネルギを音響エネルギに変換する原動機と、前記ループ管に一端が接続されて直線状に延びた共鳴管と、前記共鳴管の反対端に挿入され音響エネルギで加振されるピストンと、前記ピストンの振動エネルギを電気エネルギに変換する発電機とを備えた熱音響機関において、前記共鳴管に、前記共鳴管の管軸方向に加熱器と再生器と冷却器を有することにより、前記共鳴管内を前記ループ管から前記ピストンに向かって進む進行波を増幅する増幅機を備えたものである。
【0012】
前記増幅機を前記共鳴管の管軸方向に複数備えてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0014】
(1)小さな温度差で大きな発電力が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態を示す熱音響機関の構成図である。
【図2】図1の熱音響機関における共鳴管の管軸方向の音響パワー分布図である。
【図3】従来の熱音響機関の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0017】
図1に示されるように、本発明に係る熱音響機関1は、ループ管2と、ループ管2の管軸方向に加熱器3と再生器4と冷却器5を有することにより、熱エネルギを音響エネルギに変換する原動機6と、ループ管2に一端が接続されて直線状に延びた共鳴管7と、共鳴管7の反対端に挿入され音響エネルギで加振されるピストン8と、ピストン8の振動エネルギを電気エネルギに変換する発電機9とを備えた熱音響機関1において、共鳴管7に、共鳴管7の管軸方向に加熱器10と再生器11と冷却器12を有することにより、共鳴管7内をループ管2からピストン8に向かって進む進行波を増幅する増幅機13を備える。
【0018】
ループ管2は、断面が円形で中空の円筒管が4箇所の曲がり部にてそれぞれ90°曲がっていることにより、ほぼ矩形のループ状に閉じられたものである。その1箇所の曲がり部に共鳴管7が接続される。共鳴管7は、断面が円形で、一端から他端まで曲がりのない中空の円筒管である。ループ管2及び共鳴管7に充填される作動流体は、音波の媒体となるものであり、空気、ヘリウム、窒素、アルゴンなどの気体が好ましい。ループ管2及び共鳴管7は、ステンレス等の金属で構成される。
【0019】
原動機6は、管軸方向に順に配置された加熱器3と再生器4と冷却器5とからなる。加熱器3は、円筒管の内外にフィンを有することにより、円筒管内の作動流体を加熱する熱交換器である。再生器4は、金網、複数の細管の集合、多孔質セラミックなどで構成される。冷却器5は、円筒管の内外にフィンを有することにより、円筒管内の作動流体を冷却する熱交換器である。冷却器5、再生器4、加熱器3は、公知のものを使用することができるので、詳細な構造の説明は省略する。
【0020】
ピストン8は、共鳴管7の内壁に対して摩擦抵抗が無く、かつ、気密を保持して摺動可能なものである。
【0021】
発電機9は、永久磁石が取り付けられた振動子と巻き線が巻き付けられた固定子とを組み合わせてなり、ピストン8と連結された振動子が振動することで巻き線に起電力が生じるようになっている。なお、発電機9の細部はこれに限定されるものではなく、発電機9においてピストン8の振動エネルギを電気エネルギに変換することができればよい。
【0022】
増幅機13は、原動機6と同様、管軸方向に順に配置された加熱器10と再生器11と冷却器12とからなる。冷却器12、再生器11、加熱器10の構造は、原動機6に用いられるものと同様である。
【0023】
増幅機13は、管軸方向に適宜な間隔で任意の複数個が配置されるが、ここでは3つの増幅機13が示されている。各増幅機13における冷却器12には共通の冷熱源を適用することができ、また、各増幅機13における加熱器10には共通の加熱源を適用することができる。ここでは、各増幅機13における冷却器10の温度をTcとし、加熱器10の温度をTcより高温のThとする。
【0024】
以下、熱音響機関1の動作を説明する。
【0025】
原動機6において、加熱器3と冷却器5に異なる温度の熱源が適用され、再生器4に温度勾配が生じることにより、熱エネルギが音響エネルギに変換され、ループ管2に定在波が生じる。
【0026】
ループ管2で発生した音波は、共鳴管7内を管軸方向に進行波音波として進行する。進行波音波は、1段目の増幅機13に入力される。この進行波音波は、増幅機13を通過するとき冷却器12と加熱器10に異なる温度の熱源が適用され、再生器11に温度勾配が生じることにより、増幅される。
【0027】
増幅機13から出力された進行波音波は、共鳴管内を管軸方向に進行し、2段目の増幅機13に入力される。このようにして、進行波音波が順次増幅機13を通過すると、図2に示されるように1段目の増幅機、2段目の増幅機、3段目の増幅機を経るたびに、音響パワーが増大する。
【0028】
なお、熱音響機関1の共鳴管7に増幅機13を設置すると、音響パワーが増幅されること、及び共鳴管7に増幅機13を直列多段に配置すると、増幅機13を経るたびに、音響パワーが増幅されていくことについては、本発明者らがすでに実験で確認し、発明を出願している。
【0029】
このようにして、各段の増幅機13において、進行波音波が増幅されるので、最終段の増幅機13では従来よりもはるかに大きな音響エネルギを発電機9に輸送することが可能となる。この結果、従来よりも大きな発電力が得られる。したがって、原動機6のみによるエネルギの供給能力が発電機9における電力需要に対して十分でない場合でも、増幅機13からのエネルギの追加によって、電力需要に対して十分な電力供給が果たせるようになる。
【0030】
また、原動機6や各段の増幅機13において、例えば、車両の廃熱から電力を得ようとする場合のように廃熱の温度と大気の温度(あるいは冷却水の温度)の温度差が小さくても、段階的に増幅を行うことにより、発電機9から取り出せる電力が大きくできることになる。
【0031】
以上説明したように、本発明によれば、ループ管2に原動機6を備え、そのループ管2に接続された共鳴管7に増幅機13を備えるので、発電機9において従来よりも大きな発電力が得られる。
【0032】
また、共鳴管7に複数の増幅機13を備える構成により、個々の増幅機13における温度差が小さくても、段階的な増幅により発電機9には大きな音響エネルギが輸送され、その結果、大きな発電力が得られる。
【符号の説明】
【0033】
1 熱音響機関
2 ループ管
3 加熱器
4 再生器
5 冷却器
6 原動機
7 共鳴管
8 ピストン
9 発電機
10 加熱器
11 再生器
12 冷却器
13 増幅機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループ管と、前記ループ管の管軸方向に加熱器と再生器と冷却器を有することにより、熱エネルギを音響エネルギに変換する原動機と、前記ループ管に一端が接続されて直線状に延びた共鳴管と、前記共鳴管の反対端に挿入され音響エネルギで加振されるピストンと、前記ピストンの振動エネルギを電気エネルギに変換する発電機とを備えた熱音響機関において、
前記共鳴管に、前記共鳴管の管軸方向に加熱器と再生器と冷却器を有することにより、前記共鳴管内を前記ループ管から前記ピストンに向かって進む進行波を増幅する増幅機を備えたことを特徴とする熱音響機関。
【請求項2】
前記増幅機を前記共鳴管の管軸方向に複数備えたことを特徴とする請求項1記載の熱音響機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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