説明

熱音響装置

【課題】本発明は、熱音響装置に関し、特にカーボンナノチューブを利用した熱音響装置に関するものである。
【解決手段】本発明の熱音響装置は、基板と、発熱器と、複数の音波発生器と、を含む。前記複数の音波発生器は、前記基板の少なくとも一つの表面に設置され、少なくとも一つの前記音波発生器は、グラフェン構造体からなり、前記発熱器は、前記複数の音波発生器にエネルギーを提供し、前記複数の音波発生器に熱を発生させる。また、前記熱音響装置を利用した電子デバイスも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱音響装置に関し、特にグラフェンを利用した熱音響装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、音響装置は、信号装置及び音波発生器を含む。前記信号装置は、信号を前記音波発生器に伝送する。熱音響装置は、熱音響現象を利用した音響装置の一種である。非特許文献1及び非特許文献2には、導電体に交流電流を流すと熱により音が発生する熱音響装置が掲載されている。前記導電体に交流電流を流すと、熱音響装置に熱が生じ、周辺の媒体へ伝播される。伝播された熱によって生じた熱膨張及び圧力波が原因で、音波を発生させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004107196号公報
【特許文献2】特開2006161563号公報
【特許文献3】中国特許出願公開第101284662号明細書
【特許文献4】特開2008297195号公報
【特許文献5】中国特許出願公開第101239712号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“The Thermophone”,EDWARD C. WEMTE,Vol.XTX,No.4,p.333−345
【非特許文献2】“On Some Thermal Effects of Electric Currents”,William Henry Preece,Proceedings of the Roal Society of London,Vol.30,p.408−411(1879−1881)
【非特許文献3】H.D.Arnold、I.B.Crandall, “The thermophone as a precision source of sound”, Phys. 1917年、第10巻, 第22−38頁、
【非特許文献4】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献3に、熱音響現象によって製造されたサーモホン(thermophone)が掲載されている。熱音響現象とは、音と熱が関わり合う現象であり、エネルギー変換とエネルギー輸送という2つの側面がある。熱音響装置に信号を転送すると、熱音響装置に熱が生じ、周辺の媒体へ伝播される。伝播された熱によって生じた熱膨張及び圧力波により音波を発生させることができる。ここで、厚さが7×10−5cmの白金片が熱音響部品として利用されている。しかし、厚さが7×10−5cmの白金片に対して、単位面積当たりの熱容量は2×10−4J/cm・Kである。白金片の単位面積当たりの熱容量が非常に高いので、白金片を利用したサーモホンを室外で利用する場合、熱音響周波数及び熱音響効果が低いという課題がある。
【0006】
従って、本発明は、前記課題を解決するための熱音響装置及び電子装置を提供する。前記熱音響装置及び電子装置の熱音響周波数及び熱音響効果が高くなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱音響装置は、基板と、発熱器と、複数の音波発生器と、を含む。前記複数の音波発生器は、前記基板の少なくとも一つの表面に設置され、少なくとも一つの前記音波発生器は、グラフェン構造体からなり、前記発熱器は、前記複数の音波発生器にエネルギーを提供し、前記複数の音波発生器に熱を発生させる。
【0008】
本発明の電子デバイスは、熱音響装置を含む。前記熱音響装置は、基板と、発熱器と、複数の音波発生器と、を含み、前記複数の音波発生器は、前記基板の表面に設置され、少なくとも一つの前記音波発生器は、グラフェン構造体からなり、前記発熱器は、前記複数の音波発生器にエネルギーを提供し、前記複数の音波発生器に熱を発生させる。
【発明の効果】
【0009】
従来の技術と比べて、本発明の熱音響装置は、次の優れた点がある。第一には、本発明の熱音響装置はグラフェン構造体を含むので、構成が簡単であり、軽量化及び小型化が可能である。第二には、本発明の熱音響装置はグラフェン構造体を加熱することにより音波を発生するので、マグネットを利用する必要がない。第三には、グラフェン構造体は、単位面積当たりの熱容量が小さく、比表面積が大きく、熱交換の速度が速いので、音を良好に発生することができる。第四には、グラフェン構造体は薄いので、透明な音響装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1における熱音響装置の上面図である。
【図2】図1の線II−IIに沿った、実施例1における熱音響装置の断面図である。
【図3】本発明の実施例2における熱音響装置の上面図である。
【図4】図3の線IV−IVに沿った、実施例2における熱音響装置の断面図である。
【図5】本発明の実施例3における熱音響装置の上面図である。
【図6】図5の線VI−VIに沿った、実施例3における一つの熱音響装置の断面図である。
【図7】図5の線VI−VIに沿った、実施例3におけるもう一つの熱音響装置の断面図である。
【図8】本発明の実施例4における熱音響装置の上面図である。
【図9】図8の線IX−IXに沿った、実施例4における熱音響装置の断面図である。
【図10】図8の熱音響装置に利用された非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤの走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】図8の熱音響装置に利用されたねじれ状カーボンナノチューブワイヤの走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】本発明の実施例5における絶縁層でカーボンナノチューブ構造体の表面を被覆することによって形成した基板を含む熱音響装置の上面図である。
【図13】図12のカーボンナノチューブ構造体に利用したドローン構造カーボンナノチューブフィルムの走査型電子顕微鏡写真である。
【図14】図13中のカーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブセグメントの構造を示す図である。
【図15】図12のカーボンナノチューブ構造体に利用した綿毛構造カーボンナノチューブフィルムの走査型電子顕微鏡写真である。
【図16】カーボンナノチューブが配向せずに配置されるプレシッド構造カーボンナノチューブフィルムの走査型電子顕微鏡写真である。
【図17】カーボンナノチューブが配向して配置されるプレシッド構造カーボンナノチューブフィルムの走査型電子顕微鏡写真である。
【図18】本発明の実施例6における熱音響装置の上面図である。
【図19】図18の線XVII−XVIIに沿った、実施例6における熱音響装置の断面図である。
【図20】本発明の実施例7における熱音響装置の上面図である。
【図21】図20の線XIX−XIXに沿った、実施例7における熱音響装置の断面図である。
【図22】本発明の実施例8における熱音響装置の側断面図である。
【図23】本発明の実施例9における熱音響装置の側断面図である。
【図24】本発明の実施例10における熱音響装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
(実施例1)
図1及び図2を参照すると、本実施例の熱音響装置10は、音波発生器102と、発熱器104と、を含む。
【0013】
前記発熱器104は、前記音波発生器102にエネルギーを提供し、前記音波発生器102に熱を生じさせることによって、前記熱音響装置10は音波を発生させることができる。本実施例において、前記発熱器104は、第一電極104aと、該第一電極104aと所定の距離で設置した第二電極104bと、を含む。それぞれ前記第一電極104a及び第二電極104bは、前記音波発生器102と電気的に接続されている。本実施例において、それぞれ前記第一電極104a及び第二電極104bは、前記音波発生器102の同じ表面に設置され、該音波発生器102の対向する二辺に平行する。
【0014】
前記第一電極104a及び第二電極104bは、前記音波発生器102に電気信号を提供し、前記音波発生器102に熱を発生させることによって、前記熱音響装置10は音波を発生することができる。前記第一電極104a及び第二電極104bは、層状、棒状、ストリップ状又は塊状に形成され、それらの断面は、円形、方形、台形、三角形又は多辺形である。前記第一電極104a及び第二電極104bは、接着剤で前記音波発生器102の一つの表面に固定される。前記音波発生器102から生じた熱は、前記第一電極104a及び第二電極104bで吸収されることを防止するために、前記第一電極104a及び第二電極104bと前記音波発生器102との接触面積は小さく設けることが好ましい。前記第一電極104a及び第二電極104bは、糸状または帯状であり、その材料は、金属、導電性接着剤、導電ペースト、ITO、カーボンナノチューブなどの導電性材料のいずれか一種である。本実施例において、前記第一電極104a及び第二電極104bは、導電銀ペーストを印刷して前記音波発生器102の一つの表面に形成された糸状の銀電極である。
【0015】
前記第一電極104a及び第二電極104bが、一定の強度を有する場合、該第一電極104a及び第二電極104bは、前記音波発生器102を支持することができる。例えば、それぞれ前記第一電極104a及び第二電極104bの両端が、一つのフレームに固定される場合、前記音波発生器102が、前記第一電極104a及び第二電極104bに設置して懸架される。
【0016】
前記熱音響装置10は、さらに、第一電極のリード線(図示せず)及び第二電極のリード線(図示せず)を含む。前記第一電極のリード線及び第二電極のリード線は、それぞれ前記第一電極104a及び第二電極104bと電気的に接続されている。前記熱音響装置10は、前記第一電極のリード線及び第二電極のリード線によって、外部回路(図示せず)と電気的に接続されている。
【0017】
前記音波発生器102は、グラフェン構造体からなる。前記グラフェン構造体は、一定の面積を有し、二次元構造のフィルム構造体である。前記グラフェン構造体は、少なくとも一つのグラフェンシートを含み、前記グラフェン構造体の厚さは、0.34nm〜10nmである。前記グラフェン構造体は、複数のグラフェンシートを含む場合、前記複数のグラフェンシートは、並列して、大寸法のグラフェン構造体を形成し、または、相互に積み重ねて、積層状のグラフェン構造体を形成する。前記グラフェン構造体は単層のグラフェンであることが好ましい。ここのグラフェンとは、一つの原子の厚さのsp結合炭素原子のシートであり、炭素原子とその結合からできた蜂の巣のような六角形格子構造をとっている。単層のグラフェンの透光率は、97.7%に達するので、該単層グラフェンからなるグラフェン構造体は、良好な透光性を有する。従って、前記グラフェン構造体を利用して、透明な熱音響装置を製造することができる。前記グラフェン構造体は、非常に薄いので、その熱容量が小さく、例えば、単層グラフェンの熱容量は、5.57×10−4J/K・molである。前記グラフェン構造体は、自立構造を有するものである。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記グラフェン構造体を独立して利用することができる形態のことである。すなわち、前記グラフェン構造体を対向する両側から支持して、前記グラフェン構造体の構造を変化させずに、前記グラフェン構造体を懸架させることができることを意味する。
【0018】
前記グラフェン構造体の製造方法は、化学気相成長法、塗布法又は機械的剥離法であることができる。本実施例において、化学気相成長法で前記グラフェン構造体は、金属膜からなる基板の表面に生成する。
【0019】
前記音波発生器102の作業媒体の電気抵抗率は、前記音波発生器102の電気抵抗率より大きい。これにより、前記作業媒体の単位体積当たりの熱容量は、大きくなるので、前記音波発生器102が生じた熱を伝導することができる。前記作業媒体は、気体又は液体であることができる。例えば、前記気体媒体は、空気であり、前記液体作業媒体は、非電解質溶液、水又は有機溶液の一種又は多種である。前記液体媒体の電気抵抗率は、0.01Ω・m以上であるが、純水であることが好ましい。本実施例において、前記音波発生器102の作業媒体は、空気である。
【0020】
前記熱音響装置10は、前記第一電極104a及び第二電極104bにより、外部回路と電気的に接続され、外部信号を転送して、音波を発生させることができる。前記熱音響装置10は、前記グラフェン構造体を含み、該グラフェン構造体の単位面積当たりの熱容量が小さいので、前記音波発生器104で生じた温度波により周辺の媒体に圧力振動を発生させることができる。前記音波発生器104のグラフェン構造体に信号を転送すると、信号強度及び/又は信号によってグラフェン構造体に熱を発生させる。温度波の拡散により、周辺の空気が熱膨張されて音が生じる。本実施例において、前記熱音響装置10は、電気―熱―音の変換方式によって作動する。
【0021】
前記熱音響装置10の音圧レベルは、50dBであり、その周波数応答範囲は、1Hz〜100KHzである。前記熱音響装置10の高調波歪みは非常に小さく、例えば、500Hz〜40KHzの範囲においてわずか3%以内とすることができる。
【0022】
(実施例2)
図3及び図4を参照すると、本実施例の熱音響装置20は、音波発生器202と、発熱器204と、基板208とを含む。本実施例と実施例1との異なる点は、前記熱音響装置20は、更に基板208を含むことである。前記音波発生器202は、前記基板208の一つの表面に設置される。前記発熱器204は、第一電極204aと、第二電極204bと、を含む。前記第一電極204a及び第二電極204bは所定の距離で離れるように、それぞれ前記音波発生器202に電気的に接続されている。本実施例において、それぞれ前記第一電極204a及び第二電極204bは、前記音波発生器202の、前記基板208に隣接する表面とは反対の表面に設置され、且つ該音波発生器202の対向する二辺に平行する。前記基板208の形状、寸法及び厚さは制限されない。前記基板208は平面状又は湾曲面状であり、その材料は、一定の強度を有する硬質材料又は柔軟性材料である。好ましくは、前記基板208は、良好な断熱性及び耐熱性を有し、その電気抵抗率が、前記音波発生器202の電気抵抗率より大きい。詳しくは、前記基板208の材料は、ガラス、セラミクス、石英、ダイヤモンド、プラスチック、樹脂及び木材である。
【0023】
本実施例において、前記基板208には、少なくとも一つのスルーホール208aが形成されている。前記スルーホール208aの深さH1と前記基板208の厚さH2との関係が次の式1のように示されている。
【0024】
H1≦H2 (式1)
【0025】
前記スルーホール208aの深さが、前記基板208の厚さより小さい場合、前記スルーホール208aは、止まり穴である。前記スルーホール208aの深さが、前記基板208の厚さと等しい場合、前記スルーホール208aは、貫通穴である。前記スルーホール208aの断面の形状は、円形、正方形、長方形、三角形、多辺形又は工字型である。前記基板208に複数のスルーホール208aが形成されている場合、隣接する二つの前記スルーホール208a間の距離は、100μm〜3mmである。本実施例において、前記基板208には、均一に複数のスルーホール208aが形成され、単一の前記スルーホール208aの断面の形状は、円形である。
【0026】
前記音波発生器202は、前記基板208の一つの表面に形成され、前記複数のスルーホール208aの上に懸架されている。本実施例において、前記複数の音波発生器202の一部は、前記複数のスルーホール208aの上に懸架され、その他部は、直接前記基板208の一つの表面に設置されている。これにより、前記熱音響発生器202は、前記基板208で支持される。
【0027】
(実施例3)
図5を参照すると、前記熱音響装置30は、音波発生器302と、発熱器304と、基板308と、を含む。実施例2と比べると、本実施例の熱音響装置30の基板308には、少なくとも一つの溝308aが形成されている。前記少なくとも一つの溝308aは、前記基板308の一つの表面に形成されている。前記溝308aの深さは、前記基板308の厚さより小さい。前記溝308aは、止まり溝または貫通溝である。前記溝308aが止まり溝である場合、その長さは前記基板308の側辺L3より小さい。前記溝308aが貫通溝である場合、その長さは前記基板308の側辺L3と同じである。前記溝308aの形状は、長方形、弓形、多辺形又は偏円形などの形状である。図6を参照すると、前記止まり溝308aの長手方向に沿う断面が長方形である場合、前記止まり溝308aは長方形の止まり溝308aと定義されている。図7を参照すると、前記止まり溝308aの長手方向に沿う断面が三角形である場合、前記止まり溝308aは三角柱の止まり溝308aと定義されている。図5を参照すると、本実施例において、前記基板308の表面には、均一な複数の長方形の止まり溝308aが設置される。隣接する二つの前記止まり溝308a間の距離は、制限されない。
【0028】
前記熱音響装置30において、前記基板308には、少なくとも一つの前記溝308aが形成されている。前記溝308aにより、前記音波発生器302の信号を反射することができるので、前記音波発生器302の信号強度が増加する。隣接する二つの前記止まり溝308a間の距離が、0に近づく場合に、前記基板308は、前記音波発生器302を支持すると同時に、前記音波発生器302と周辺の媒体との接触面積を最大にさせることができる。
【0029】
前記音波発生器302の熱音響効果を高めるために、前記溝308aの深さは、10μm〜10mmであることが好ましい。
【0030】
(実施例4)
図8及び図9を参照すると、実施例2と比べ、本実施例の熱音響装置40は、ネットワーク構造体である基板408を含む。前記熱音響装置40は、音波発生器402と、発熱器404と、基板408と、を含む。前記基板408は、ネットワーク構造体であり、複数の第一線状構造体408a及び複数の第二線状構造体408bからなる。前記複数の第一線状構造体408a及び複数の第二線状構造体408bは、相互に交叉してネットワーク構造体を形成する。前記複数の第一線状構造体408aが相互に平行し、前記複数の第二線状構造体408bが相互に平行する場合、前記複数の第一線状構造体408aは、第一方向L1に沿って延伸し、前記複数の第二線状構造体408bは、第二方向L2に沿って延伸する。隣接する二つの前記第一線状構造体408a間の距離は0〜1cmであり、隣接する二つの前記第一線状構造体408b間の距離は0〜1cmであることが好ましい。本実施例において、前記複数の第一線状構造体408aは、等間隔で相互に平行して設置される。隣接する二つの前記第一線状構造体408a間の距離は1cmである。前記複数の第二線状構造体408bは、等間隔で相互に平行して設置される。隣接する二つの前記第二線状構造体408b間の距離は1cmである。前記第一方向L1及び第二方向L2は、角度α(0°<α≦90°)で交叉する。
【0031】
前記基板408は、複数のメッシュ408cを有する。前記メッシュ408cは、前記複数の第一線状構造体408a及び複数の第二線状構造体408bが、相互に交叉することによって形成される。前記メッシュ408cは、四辺形であり、例えば、正方形、長方形又は菱形である。前記メッシュ408cの寸法は、隣接する二つの前記第一線状構造体408a間の距離及び隣接する二つの前記第二線状構造体408b間の距離により決定される。本実施例において、前記メッシュ408cは、正方形であり、その辺長は、1cmである。
【0032】
前記複数の第一線状構造体408a及び複数の第二線状構造体408bの直径は、制限されないが、10μm〜5mmであり、それらの材料は、繊維、プラスチック、樹脂又はシリコーンのような絶縁材料である。詳しくは、前記複数の第一線状構造体408a及び複数の第二線状構造体408bは、植物繊維、動物繊維、木材繊維、鉱物繊維の一種または多種からなるが、一定の耐熱特性を有するナイロンコード、スパンデックスのようなフレキシブル材料からなることが好ましい。また、前記複数の第一線状構造体408a及び複数の第二線状構造体408bは、絶縁層で被覆された導電性線状材料からなることもできる。前記導電性線状材料は、金属線又は線状カーボンナノチューブ構造体である。前記金属線は、純金属又は合金からなる。前記純金属は、アルミニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、チタン、ネオジウム、パラジウム、またはセシウムである。前記合金は、アルミニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、チタン、ネオジウム、パラジウム、セシウムの二種または多種により構成される。前記絶縁層は、樹脂、プラスチック、二酸化シリコンまたは金属酸化物である。同一の実施例において、前記複数の第一線状構造体408aと複数の第二線状構造体408bとの構造及び材料は、同じでも、異なってもよい。本実施例において、前記複数の第一線状構造体408a及び複数の第二線状構造体408bは、二酸化シリコンで被覆された線状カーボンナノチューブ構造体である。
【0033】
前記線状カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一つのカーボンナノチューブワイヤを含む。前記カーボンナノチューブワイヤは、複数のカーボンナノチューブからなる。前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブの一種または多種である。
【0034】
前記カーボンナノチューブワイヤは、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ又はねじれ状カーボンナノチューブワイヤであることができる。図10を参照すると、前記カーボンナノチューブワイヤが、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤである場合、端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。前記カーボンナノチューブセグメントは、同じ長さ及び幅を有する。さらに、各々の前記カーボンナノチューブセグメントに、同じ長さの複数のカーボンナノチューブが平行に配列されている。前記複数のカーボンナノチューブはカーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列されている。前記カーボンナノチューブセグメントの長さ、厚さ、均一性及び形状は制限されない。一本の前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤの長さは制限されず、その直径は、0.5nm〜100μmである。
【0035】
図11を参照すると、前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤの長手方向に沿う対向する両端に相反する力を印加することにより、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを形成することができる。好ましくは、前記ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。さらに、各々の前記カーボンナノチューブセグメントに、同じ長さの複数のカーボンナノチューブが平行に配列されている。前記カーボンナノチューブセグメントの長さ、厚さ、均一性及び形状は制限されない。一本の前記ねじれ状カーボンナノチューブワイヤの長さは制限されず、その直径は、0.5nm〜100μmである。前記カーボンナノチューブワイヤの製造方法は、特許文献1及び特許文献2に掲載されている。
【0036】
本実施例の熱音響装置40の前記基板408は、前記ネットワーク構造体であるので、前記熱音響装置40には、次の優れた点がある。第一に、前記基板408は、前記ネットワーク構造体であるので、該基板408が、良好なフレキシブル性を有する。前記複数の第一線状構造体408a及び/または複数の第二線状構造体408bは、絶縁層で被覆された線状カーボンナノチューブ構造体である場合、前記線状カーボンナノチューブ構造体の直径が小さいので、前記音波発生器402と周辺の空気との接触面積を大きくなり、前記熱音響装置40の熱音響効果が高くなる。第三に、前記線状カーボンナノチューブ構造体は、良好なフレキシブル性を有するので、何回曲げられても、前記線状カーボンナノチューブ構造体が損傷されず、熱音響装置40の使用寿命を長くすることができる。
【0037】
前記基板408が、一本の前記線状構造体からなる場合、前記線状構造体を数回曲げて交叉させることにより、ネットワーク構造体を形成する。
【0038】
(実施例5)
図12を参照すると、実施例2と比べ、本実施例の熱音響装置50は、カーボンナノチューブ複合構造体である基板508を含むという異なる点がある。音波発生器502は、前記基板508の一つの表面に設置される。前記発熱器504は、第一電極504aと、第二電極504bと、を含む。前記第一電極504a及び第二電極504bは、所定の距離で離れるように、それぞれ前記音波発生器502と電気的に接続されている。本実施例において、それぞれ前記第一電極504a及び第二電極504bは、前記音波発生器502の、前記基板508に隣接する表面とは反対の表面に設置され、且つ該音波発生器502の対向する二辺に平行する。前記基板508の形状、寸法及び厚さは制限されない。前記基板508は平面状又は湾曲面状である。
【0039】
前記カーボンナノチューブ複合構造体は、カーボンナノチューブ構造体及び絶縁性材料(図示せず)からなる。前記カーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブからなる。前記絶縁性材料は、前記複数のカーボンナノチューブの表面に被覆される。前記カーボンナノチューブ構造体には、複数のカーボンナノチューブが均一に分散されている。各々の前記カーボンナノチューブは分子間力で接続されている。前記カーボンナノチューブ構造体に、前記複数のカーボンナノチューブが配向し又は配向せずに配置されている。前記複数のカーボンナノチューブの配列方式により、前記カーボンナノチューブ構造体は非配向型のカーボンナノチューブ構造体及び配向型のカーボンナノチューブ構造体の二種に分類される。本実施例における非配向型のカーボンナノチューブ構造体では、カーボンナノチューブが異なる方向に沿って配置され、又は絡み合っている。配向型のカーボンナノチューブ構造体では、前記複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されている。又は、配向型のカーボンナノチューブ構造体において、カーボンナノチューブ構造体が二つ以上の領域に分割される場合、各々の領域における複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されている。この場合、異なる領域におけるカーボンナノチューブの配列方向は異なる。前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブである。前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、直径は0.5nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、直径は1nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、直径は1.5nm〜50nmに設定される。前記カーボンナノチューブ構造体の厚さは0.5nm〜100μmに設けられる。前記カーボンナノチューブ構造体に、隣接するカーボンナノチューブは、隙間を有するように並列され、前記複数の微孔が形成される。前記複数の微孔の直径は50μm以下に設定される。
【0040】
前記カーボンナノチューブ構造体は、自立構造の薄膜の形状に形成されている。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブ構造体を独立して利用することができる形態のことである。すなわち、前記カーボンナノチューブ構造体を対向する両側から支持して、前記カーボンナノチューブ構造体の構造を変化させずに、前記カーボンナノチューブ構造体を懸架させることができることを意味する。
【0041】
本発明のカーボンナノチューブ構造体としては、以下の(一)〜(三)のものが挙げられる。
【0042】
(一)ドローン構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、図13に示すように、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム143aを含む。このカーボンナノチューブフィルムはドローン構造カーボンナノチューブフィルム(drawn carbon nanotube film)である。前記カーボンナノチューブフィルム143aは、超配列カーボンナノチューブアレイから引き出して得られたものである。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って、端と端が接続されている。即ち、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、分子間力で長さ方向端部同士が接続された複数のカーボンナノチューブを含む。図13及び図14を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、複数のカーボンナノチューブセグメント143bを含む。前記複数のカーボンナノチューブセグメント143bは、長さ方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメント143bは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145を含む。単一の前記カーボンナノチューブセグメント143bにおいて、前記複数のカーボンナノチューブ145の長さが同じである。前記カーボンナノチューブフィルム143aを有機溶剤に浸漬させることにより、前記カーボンナノチューブフィルム143aの靭性及び機械強度を高めることができる。有機溶剤に浸漬された前記カーボンナノチューブフィルムの単位面積当たりの熱容量が低くなるので、その熱音響効果を高めることができる。前記カーボンナノチューブフィルム143aの幅は100μm〜10cmに設けられ、厚さは0.5nm〜100μmに設けられる。
【0043】
前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、前記超配列カーボンナノチューブアレイを提供する第一ステップと、ピンセットなどの工具を利用して前記カーボンナノチューブアレイから、少なくとも、一枚のカーボンナノチューブフィルムを引き伸ばす第二ステップと、を含む。詳しい説明は、特許文献5に掲載されている。
【0044】
前記カーボンナノチューブ構造体は、積層された複数の前記カーボンナノチューブフィルムを含むことができる。この場合、隣接する前記カーボンナノチューブフィルムは、分子間力で結合されている。隣接する前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、それぞれ0°〜90°の角度で交差している。隣接する前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが0°以上の角度で交差する場合、前記カーボンナノチューブ構造体に複数の微孔が形成される。又は、前記複数のカーボンナノチューブフィルムは、隙間なく並列されることもできる。
【0045】
(二)綿毛構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含む。このカーボンナノチューブフィルムは綿毛構造カーボンナノチューブフィルム(flocculated carbon nanotube film)である。図15を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブは、絡み合い、等方的に配列されている。前記カーボンナノチューブ構造体においては、前記複数のカーボンナノチューブが均一に分布されている。複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されている。単一の前記カーボンナノチューブの長さは、100nm以上であり、100nm〜10cmであることが好ましい。前記カーボンナノチューブ構造体は、自立構造の薄膜の形状に形成されている。前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で接近して、相互に絡み合って、カーボンナノチューブネット状に形成されている。前記複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されて、多くの微小な穴が形成されている。ここで、単一の前記微小な穴の直径が10μm以下になる。前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブは、相互に絡み合って配置されるので、該カーボンナノチューブ構造体は柔軟性に優れ、任意の形状に湾曲して形成させることができる。用途に応じて、前記カーボンナノチューブ構造体の長さ及び幅を調整することができる。前記カーボンナノチューブ構造体の厚さは、1μm〜1mmである。
【0046】
前記綿毛構造カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、カーボンナノチューブ原料(綿毛構造カーボンナノチューブフィルムの素になるカーボンナノチューブ)を提供する第一ステップと、前記カーボンナノチューブ原料を溶剤に浸漬し、該カーボンナノチューブ原料を処理して、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を形成する第二ステップと、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶液をろ過して、最終的な綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を取り出す第三ステップと、を含む。詳しい説明は、特許文献3に掲載されている。
【0047】
(三)プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含む。このカーボンナノチューブフィルムは、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム(pressed carbon nanotube film)である。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは、等方的に配列されているか、所定の方向に沿って配列されているか、または、異なる複数の方向に沿って配列されている。前記カーボンナノチューブフィルムは、押し器具を利用することにより、所定の圧力をかけて前記カーボンナノチューブアレイを押し、該カーボンナノチューブアレイを圧力で倒すことにより形成された、シート状の自立構造を有するものである。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向は、前記押し器具の形状及び前記カーボンナノチューブアレイを押す方向により決められている。
【0048】
図16を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向せずに配置される。該カーボンナノチューブフィルムは、等方的に配列されている複数のカーボンナノチューブを含む。隣接するカーボンナノチューブが分子間力で相互に引き合い、接続する。該カーボンナノチューブ構造体が平面等方性を有する。該カーボンナノチューブフィルムは、平面を有する押し器具を利用して、カーボンナノチューブアレイが成長された基板に垂直な方向に沿って前記カーボンナノチューブアレイを押すことにより形成される。
【0049】
図17を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向して配列される。該カーボンナノチューブフィルムは、同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含む。ローラー形状を有する押し器具を利用して、同じ方向に沿って前記カーボンナノチューブアレイを同時に押す場合、基本的に同じ方向に配列されるカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。また、ローラー形状を有する押し器具を利用して、異なる方向に沿って、前記カーボンナノチューブアレイを同時に押す場合、前記異なる方向に沿って、選択的な方向に配列されるカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0050】
前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの傾斜の程度は、前記カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブと該カーボンナノチューブフィルムの表面とは、角度αを成し、該角度αは0°以上15°以下である。好ましくは、前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが該カーボンナノチューブフィルムの表面に平行する。前記圧力が大きくなるほど、前記傾斜の程度が大きくなる。前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは、前記カーボンナノチューブアレイの高さ及び該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。即ち、前記カーボンナノチューブアレイの高さが大きくなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が小さくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さが大きくなる。これとは逆に、カーボンナノチューブアレイの高さが小さくなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が大きくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さが小さくなる。前記プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、特許文献4に掲載されている。
【0051】
前記カーボンナノチューブ構造体と前記音波発生器502とは電気的絶縁を保持するために、前記絶縁層は、前記カーボンナノチューブ構造体の、前記音波発生器502に隣接する表面に設置される。また、前記絶縁層は、前記カーボンナノチューブ構造体における各々のカーボンナノチューブの表面に被覆され、複数の微孔を有するカーボンナノチューブ複合構造体が形成される。この場合、前記音波発生器502の一部は、前記複数の微孔に対して懸架され、その他部は、直接前記絶縁層一つの表面に設置される。
【0052】
(実施例6)
図18及び図19を参照すると、本実施例の熱音響装置60は、基板608と、発熱器604と、音波発生器602と、を含む。前記発熱器604は、複数の第一電極604aと、複数の第二電極604bと、を含む。前記複数の第一電極604a及び複数の第二電極604bは、それぞれ前記音波発生器602と電気的に接続されている。
【0053】
前記複数の第一電極604a及び複数の第二電極604bは、間隔をあけて、且つ交互に、前記基板608の一つの表面に設置される。前記音波発生器602は、前記複数の第一電極604a及び複数の第二電極604bの、前記基板608に隣接する表面とは反対の表面に設置され、前記音波発生器602は、前記基板608に対して懸架される。即ち、前記基板608、前記複数の第一電極604a、前記複数の第二電極604b及び前記音波発生器602によって複数の隙間601が形成される。それぞれ前記隣接の第一電極604a及び第二電極604b間の距離は、同じでも、異なってもよいが、好ましくは、同じである。それぞれ前記隣接の第一電極604a及び第二電極604b間の距離は、制限されないが、10μm〜1cmであることが好ましい。
【0054】
前記基板608は、前記複数の第一電極604a及び複数の第二電極604bを支持するために用いられている。前記基板608は、良好な絶縁特性を有する絶縁材料又は導電性が低い材料からなり、その形状及び寸法は制限されない。本実施例において、前記基板608は、ガラス、樹脂及びセラミックスなどの材料からなる。本実施例において、前記基板608は、正方形のガラス板であり、その辺長が4.5cmであり、厚さが1mmである。
【0055】
単一の前記隙間601は、前記基板608、一つの前記第一電極604a、一つの前記第二電極604b及び前記音波発生器602によって画定される。前記隙間601の高さは、前記第一電極604a及び前記第二電極604bの高さに関係する。本実施例において、前記第一電極604a及び前記第二電極604bの高さは、1μm〜1cmであるが、15μmであることが好ましい。
【0056】
前記第一電極604a及び前記第二電極604bは、層状、棒状、ストリップ状または塊状に形成され、それらの断面は、円形、方形、台形、三角形又は多辺形である。前記第一電極604a及び第二電極604bは、ボルト又は接着剤で前記基板608の一つの表面に固定される。前記音波発生器602から生じた熱が、前記第一電極604a及び第二電極604bで吸収されることを防止するために、前記第一電極604a及び第二電極604bと前記音波発生器602との接触面積は小さく設けることが好ましい。前記第一電極604a及び第二電極604bは、糸状または帯状であり、その材料は、金属、導電性接着剤、導電ペースト、ITO、カーボンナノチューブ又は炭素繊維などの導電性材料のいずれか一種である。本実施例において、前記第一電極104a及び第二電極104bは、線状カーボンナノチューブ構造体であることができる。該線状カーボンナノチューブ構造体の構造は、実施例4における線状カーボンナノチューブ構造体の構造と同じである。
【0057】
前記熱音響装置60は、更に、第一電極のリード線610及び第二電極のリード線612を含む。前記第一電極のリード線610及び第二電極のリード線612は、それぞれ前記第一電極604a及び第二電極604bに電気的に接続されている。前記熱音響装置60は、前記第一電極のリード線610及び第二電極のリード線612によって、外部回路と電気的に接続されている。これにより、前記音波発生器602の電気抵抗を減少させるので、前記音波発生器602の熱音響効果を高めることができる。
【0058】
本実施例において、前記複数の第一電極604a及び複数の第二電極604bは、前記音波発生器602を支持することもできる。この場合、前記熱音響装置60は、前記基板608を含まなくてもよい。
【0059】
本実施例において、前記第一電極604a及び第二電極604bは、導電銀ペーストを印刷して形成された糸状の銀電極である。前記熱音響装置60において、四つの前記第一電極604a及び四つの前記第二電極604bを含む。それぞれ四つの前記第一電極604a及び四つの第二電極604bは、等間隔をあけて、且つ交替に、前記基板608の一つの表面に設置される。各々の前記第一電極604及び前記第二電極604bの長さは、3cmであり、その高さは、15μmである。隣接の前記第一電極604及び前記第二電極604b間の距離は5mmである。
【0060】
前記熱音響装置60において、前記音波発生器602は、前記複数の第一電極604a及び複数の第二電極604bによって懸架される。これにより、前記音波発生器402と周辺の空気との接触面積が大きくなり、前記熱音響装置60の熱音響効果が高くなる。
【0061】
(実施例7)
図20及び図21を参照すると、本実施例の熱音響装置70は、基板708と、発熱器704と、音波発生器702と、を含む。前記発熱器704は、複数の第一電極704aと、複数の第二電極704bと、を含む。それぞれ前記第一電極704a及び第二電極704bは、前記音波発生器702と電気的に接続されている。前記音波発生器702は、グラフェン構造体からなる。本実施例と実施例6との異なる点は、本発明の熱音響装置70は、隣接する前記第一電極704aと、前記第二電極704bとの間に、少なくとも一つのスペーサー714を含む。
【0062】
前記スペーサー714は、ボルトまたは接着剤で前記基板708の表面に固定できる。前記スペーサー714と前記基板708とが、一体成型して形成される場合、前記スペーサー714及び前記基板708は同一の材料からなる。前記スペーサー714の形状は、例えば、球形、糸状または帯状である。前記熱音響装置70は、良好な熱音響効果を有するために、前記スペーサー714と前記基板708との接触方式は、点接触または線接触であることが好ましい。
【0063】
本実施例において、前記スペーサー714の材料は、例えば、ガラス、セラミックス、樹脂のような絶縁材料または金属、合金、ITOのような導電性材料である。前記スペーサー714は、導電性材料からなる場合、それぞれ前記第一電極704a及び第二電極704bと電気的に絶縁された状態を保持させる。好ましくは、前記スペーサー714は、それぞれ前記第一電極704a及び第二電極704bと相互に平行する。前記スペーサー714の高さは制限されないが、10μm〜1cmであることが好ましい。本実施例において、前記スペーサー714は、シルクスクリーン印刷法で形成された銀糸であり、前記第一電極704a及び第二電極704bに平行して設置される。前記スペーサー714の高さは、20μmであり、前記第一電極704a及び第二電極704bの高さと同じである。
【0064】
前記音波発生器702は、前記スペーサー714、前記第一電極704a及び第二電極704bの、前記基板708に隣接する表面とは反対の表面に設置される。前記音波発生器702は、前記スペーサー714、前記第一電極704a及び第二電極704bによって、前記基板708と間隔を有して設置される。前記音波発生器702は、前記第一電極704a又は第二電極704bと、前記スペーサー714と、前記基板708と空間701を形成する。前記音波発生器702に定常波が発生することを防止し、良好な熱音響効果を有するために、前記音波発生器702と前記基板708との距離は、10μm〜1cmであることが好ましい。本実施例において、前記スペーサー714、前記第一電極704a及び第二電極704bの高さは、20μmであるので、前記音波発生器702と前記基板708との距離は、20μmである。
【0065】
(実施例8)
図22を参照すると、本実施例の熱音響装置80は、第一発熱器804と、第二発熱器806と、基板808と、第一音波発生器802aと、第二音波発生器802bと、を含む。
【0066】
前記基板808は、第一表面(図示せず)と、第二表面(図示せず)と、を含み、その形状、寸法及び厚さは制限されない。前記第一表面及び第二表面は、平面、曲面または凹凸面である。本実施例において、前記基板808は、長方体構造体であり、前記第一表面及び第二表面は、相互に対向する。前記基板808には、更に、複数のスルーホール808aが形成されている。各々の前記スルーホール808aは、相互に平行して設置され、且つ前記基板808を貫通している。
【0067】
前記第一音波発生器802aは、前記基板808の前記第一表面に設置され、前記スルーホール808aによって、その少なくとも一部が懸架されている。前記第二音波発生器802bは、前記基板808の前記第二表面に設置され、前記スルーホール808aによって、その少なくとも一部が懸架されている。前記第一音波発生器802aは、グラフェン構造体からなり、前記第二音波発生器802bは、グラフェン構造体又はカーボンナノチューブ構造体からなる。前記カーボンナノチューブ構造体の構造は、実施例5におけるカーボンナノチューブ構造体の構造と同じである。
【0068】
前記第一発熱器804は、第一電極804aと、第二電極804bと、を含む。それぞれ前記第一電極804a及び第二電極804bは、所定の距離で離れるように、前記音波発生器802と電気的に接続されている。本実施例において、それぞれ前記第一電極804a及び第二電極804bは、前記音波発生器802の、前記基板808の第一表面に隣接する表面とは反対の表面に設置され、且つ該音波発生器802の対向する二辺に平行する。前記第二発熱器806は、第一電極804aと、第二電極804bと、を含む。それぞれ前記第一電極804a及び第二電極804bは、所定の距離で離れるように、前記音波発生器802と電気的に接続されている。本実施例において、それぞれ前記第一電極804a及び第二電極804bは、前記音波発生器802の、前記基板808の第二表面に隣接する表面とは反対の表面に設置され、且つ該音波発生器802の対向する二辺に平行する。
【0069】
本実施例において、前記熱音響装置80は、前記第一音波発生器802aと、第二音波発生器802bと、を含むので、前記第一音波発生器802a及び第二音波発生器802bによって、該熱音響装置80が生じた音を広く伝播する。前記熱音響装置80において、前記第一音波発生器802a及び第二音波発生器802bの任意の一つの熱音響装置又は二つの熱音響装置が、音波を生じさせるので、その応用範囲が広がる。更に、一つの前記熱音響装置は、一つの熱音響装置に障害がある場合、そのもう一つの前記熱音響装置は、動作することもできる。これにより、前記熱音響装置80の使用寿命を長くすることができる。
【0070】
(実施例9)
図23を参照すると、本実施例と実施例8との異なる点は、本実施例の熱音響装置90は、多面的な熱音響装置であるということである。本実施例の熱音響装置90は、基板908と、四つの音波発生器902と、四つの発熱器904と、を含む。本実施例において、前記基板908は、長方体であり、その六つの表面のうち四つの表面は、凹凸な表面である。前記四つの音波発生器902は、それぞれ前記四つの凹凸な表面に設置される。前記四つの音波発生器902において、少なくとも一つの音波発生器902は、グラフェン構造体からなり、他の音波発生器902は、グラフェン構造体またはカーボンナノチューブ構造体からなることができる。
【0071】
各々の前記発熱器904は、第一電極904aと、第二電極904bと、を含む。それぞれ前記第一電極904a及び第二電極904bは、所定の距離で離れるように、前記音波発生器902に電気的に接続されている。本実施例において、それぞれ前記第一電極904a及び第二電極904bは、前記音波発生器902の、前記基板908に隣接する表面とは反対の表面に設置され、且つ該音波発生器902の対向する二辺に平行する。
【0072】
前記熱音響装置90は、多面的な熱音響装置であるので、異なる方向に音を転送することができる。
【0073】
(実施例10)
図24を参照すると、本実施例と実施例2との異なる点は、本実施例の発熱器1004は、レーザーのような電磁波信号装置であるということである。前記発熱器1004からの電磁波信号1020は、前記音波発生器1002に転送され、前記音波発生器1002は、音波を発生する。
【0074】
前記発熱器1004は、間隔を空けて前記音波発生器1002に対向して設置されても、前記基板1008を介して、前記基板1008に対応して設置されてもよい。本実施例において、前記発熱器1004は、レーザーであり、間隔を空けて前記音波発生器1002に対向して設置される。前記レーザーから放出されたレーザービームは、前記基板1008を透過して前記音波発生器1002へ転送する。
【0075】
前記発熱器1004からの電磁波信号1020は、前記音波発生器1002に受信されて熱として放射される。前記音波発生器1002は、前記グラフェン構造体からなり、単位面積あたりの熱容量が小さいので、前記音波発生器1002で生じた温度波により周辺の媒体に圧力振動を発生させることができる。前記音波発生器1002の前記グラフェン構造体に電磁波信号1020を転送すると、信号強度及び/又は信号によってグラフェン構造体に熱が発生する。温度波の拡散により、周辺の空気が熱膨張されて音が生じる。
【0076】
本発明の熱音響装置は、グラフェン構造体を含む。前記グラフェン構造体が優れた機械強度及び強靭性を有するので、前記グラフェン構造体を、所望の形状及び寸法に設けることが可能であり、これにより、多数の所望の形状及び寸法の熱音響装置を得ることが可能である。前記熱音響装置は、例えば音響システム、携帯電話、MP3プレーヤー、MP4プレーヤー、TV、コンピューターなどの電子デバイスに利用できる。前記熱音響装置は電子デバイスの殼体内又はその殼体の外表面に設置されることができる。さらに、前記熱音響装置と、前記熱音響装置における他の電子部品と、同じ電源又は同じプロセッサを有することができる。ブルートゥースのような無線方式、または信号線路のような有線方式で前記電子デバイスに接続する。
【符号の説明】
【0077】
10、20、30、40、50、60、70、80、90、100 熱音響装置
102、202、302、402、502、602、702、802、902、1002 音波発生器
104、204、304、404、504、604、704、804、04、1004 発熱器
104a、204a、304a、404a、504a、604a、704a、804a、904a、1004a 第一電極
104b、204b、304b、404b、504b、604b、704b、804b、904b、1004b 第二電極
143a カーボンナノチューブフィルム
143b カーボンナノチューブセグメント
145 カーボンナノチューブ
208、308、408、608、708、808、908、1008 基板
208a、808a スルーホール
308a 溝
L3 側辺
408a 第一線状構造体
408b 第二線状構造体
408c メッシュ
601 隙間
610 第一電極のリード線
612 第二電極のリード線
714 スペーサー
802a 第一音波発生器
802b 第二音波発生器
804 第一発熱器
806 第二発熱器
1020 電磁波信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、発熱器と、複数の音波発生器と、を含み、
前記複数の音波発生器は、前記基板の少なくとも一つの表面に設置され、
少なくとも一つの前記音波発生器は、グラフェン構造体からなり、
前記発熱器は、前記複数の音波発生器にエネルギーを提供し、前記複数の音波発生器に熱を発生させることを特徴とする熱音響装置。
【請求項2】
熱音響装置を含む電子デバイスにおいて、
前記熱音響装置は、基板と、発熱器と、複数の音波発生器と、を含み、
前記複数の音波発生器は、前記基板の表面に設置され、
少なくとも一つの前記音波発生器は、グラフェン構造体からなり、
前記発熱器は、前記複数の音波発生器にエネルギーを提供し、前記複数の音波発生器に熱を発生させることを特徴とする電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図14】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−209920(P2012−209920A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190489(P2011−190489)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】