説明

熱風式焙煎装置

【課題】コーヒー生豆などを均一に焙煎処理することのできる簡易構造の熱風式焙煎装置を提供する。
【解決手段】焙煎処理する処理物が投入される焙煎容器2と、焙煎容器2内に供給するための熱風を生成する熱風生成手段と、その熱風生成手段により生成された熱風を焙煎容器2内に噴射する複数のノズル6とを備えた焙煎装置である。焙煎容器2は、上下両端が開口する容器本体21と、その下端開口部を開閉する蓋部材22とからなる。ノズル6は、それぞれ容器本体21の軸線に平行して該軸線回りに等間隔に配された上流管部61と、上流管部61に連続して上流管部61の軸線上から容器本体21の下端開口部の周縁部に向けて斜め下方に屈曲する下流管部62とを有する屈曲管であり、下流管部62は、容器本体21と上流管部61との軸線を含む平面fに対して交差する方向に向けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱風を利用してコーヒー豆(生豆)その他の食品類などを焙煎するのに用いられる熱風式焙煎装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱風式の焙煎装置として、複数の孔があけられた底板を備える焙煎容器(ケーシング)の下部に熱風室を形成し、その熱風室に供給した熱風を、多孔状の底板を通じて焙煎容器内に流入させながら、その風圧によって焙煎容器内の処理物を流動させるようにした構成のものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−7132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載される焙煎装置では、焙煎容器の底板にあけられた孔の上に位置する処理物が吹き上げられるだけで、処理物全体が大きく流動せず、このため均一な焙煎処理ができないという問題がある。
【0005】
又、焙煎容器は金属製とされることが通例であるところ、焙煎容器内での処理物の焙煎処理中において、処理物の状態を外部から視認することができないという問題があった。加えて、金属製の焙煎容器では、伝熱性、蓄熱性が高いため、焙煎容器内が高温状態に達した段階で熱風の温度を下げても、容器内温度が即応して降下せず、これにより焙煎容器の壁面や底面に接触する処理物が過熱されてしまうことがある。しかも、底板による閉鎖部分において、熱変形による隙間が生じて処理物から発生した脂成分を含む煙が周囲に漏れ出す虞があった。尚、この点、特許文献1では、焙煎容器の下部外周にシール材を設けているので煙の漏れ出しを防止できるが、係るシール材には耐熱性が要求されるので、その種のシール材を備えることにより装置コストが高くなる。
【0006】
本発明は以上のような諸般の事情に鑑みて成されたものであり、その主たる目的は熱風加熱式の焙煎装置にして、コーヒー生豆などを均一に焙煎処理できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するため、下記(1)〜(5)に記載する熱風式焙煎装置を提供する。
(1)焙煎処理する処理物が投入される焙煎容器と、その焙煎容器内に供給するための熱風を生成する熱風生成手段と、その熱風生成手段により生成された熱風を前記焙煎容器内に噴射する複数のノズルとを備えた焙煎装置であって、
前記焙煎容器は、上下両端が開口する容器本体と、その下端開口部を開閉する蓋部材とからなり、
前記ノズルは、それぞれ前記容器本体の軸線に平行して当該軸線回りに等間隔に配された上流管部と、その上流管部に連続して当該上流管部の軸線上から前記容器本体の下端開口部の周縁部に向けて斜め下方に屈曲する下流管部とを有する屈曲管であり、
前記上流管部の上端は、前記熱風生成手段からの熱風が流入する熱風流入口とされ、
前記下流管部は、前記容器本体と上流管部との軸線を含む平面に対して交差する方向に向けられ、その下端が前記容器本体の下端開口部の周縁部に臨む熱風噴射口とされていることを特徴とする熱風式焙煎装置。
(2)前記容器本体は、透明な耐熱ガラスからなる一体成形物であり、その下部は下端開口部に向かって内径が漸次小さくなるテーパ部とされ、前記容器本体の上端外周には鍔部が形成されていることを特徴とする上記(1)記載の熱風式焙煎装置。
(3)前記蓋部材は、金属基材の表面にセラミックコーティングを施した板状構造物であって、前記容器本体の下端開口部を密閉する閉口位置と、前記下端開口部を全開する開口位置との間で移動可能とされていることを特徴とする上記(2)記載の熱風式焙煎装置。
(4)前記ノズルの上端部が連通接続する給気チャンバと、その給気チャンバを内蔵すると共に下端部に前記焙煎容器を保持する容器接続部を有して前記ノズルから焙煎容器内に噴射された熱風を排気ダクトへと導く排気チャンバとを備え、
前記容器接続部は、前記容器本体の上端面が宛がわれる固定枠と、前記容器本体の鍔部を介し前記固定枠に対向してその固定枠に向けてバネ付勢される可動枠とを有してなることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の熱風式焙煎装置。
(5)前記熱風生成手段は送風機と空気加熱器とからなり、
前記容器本体の下方には棚板が設けられ、その棚板に前記容器本体の直下となる位置で前記送風機の吸込口に連通する外気取込口が形成されていると共に、
底面部が通気性を有して前記外気取込口上に嵌合状態で配置される可搬型の処理物受容器を備え、前記容器本体の下端開口部を開放したとき、焙煎処理された処理物が前記容器本体内から前記処理物受容器内に落下して収容されるようにしたことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の熱風式焙煎処理装置。
(6)前記送風機の吸込口と外気取込口が吸気ダクトにより連通され、
前記吸気ダクトは、前記外気取込口から前記送風機に直通する本流部と、前記外気取込口からエアフィルタを介して前記送風機に連なる副流部とを有すると共に、
前記吸気ダクトには、焙煎処理された処理物を前記処理物受容器内において前記外気取込口に引き込まれる外気で空冷するときに、外気の流路を前記本流部から副流部に切り換える流路切換手段が設けられていることを特徴とする上記(5)記載の熱風式焙煎処理装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る熱風式焙煎装置によれば、ノズルから噴射される熱風により焙煎容器内の処理物を上下にうねらせながら回流させることができる。このため、処理物を良好に撹拌して過不足なく均一に焙煎処理することができる。
【0009】
又、ノズルは、容器本体の軸線に平行して当該軸線回りに等間隔に配された上流管部と、その上流管部に連続して当該上流管部の軸線上から容器本体の下端開口部の周縁部に向けて斜め下方に屈曲する下流管部とを有する屈曲管とされていることから、複数のノズルを組み付けるに際し、上流管部を回転させながら下流管部の向きを容易かつ適切に設定することができる。
【0010】
加えて、焙煎容器本体が透明な耐熱ガラス製とされることにより、処理物の状態を外部から視認できるほか、処理物の挙動により見物者の目を楽しませるという魅力的な演出効果が得られる。しかも、容器本体の下部がテーパ部とされることにより、熱風による処理物のうねりを大きくすることができる。
【0011】
更に、蓋部材が金属基材の表面にセラミックコーティングを施した板状構造物とされることにより、容器本体との間に熱変形による隙間が生ずることを防止できるので、シール材を使用せずして密閉性を確保することが可能となるほか、焙煎容器が熱風を受けて蓄熱過熱しないので、ノズルから噴射される熱風の温度、風量によって焙煎容器内を目標温度に制御して、処理物全体を過不足なく一様に加熱することができる。
【0012】
又、排気チャンバと焙煎容器との間に、容器本体の上端部をバネ力によって固定枠に押し付ける構造の容器接続部が介在される構成では、容器本体の上部取付部分においてもシール材を使用せずして密閉性を確保することができる。
【0013】
又、前記容器本体の直下となる位置において、送風機の吸込口に連通する外気取込口が形成され、その外気取込口上に底面部が通気性を有する可搬型の処理物受容器が嵌合状態で配置される構成では、焙煎処理された高温状態の処理物をすぐさま空冷することができる。
【0014】
特に、前記送風機の吸込口と外気取込口が吸気ダクトにより連通され、その吸気ダクトが外気取込口から送風機に直通する本流部と、外気取込口からエアフィルタを介して送風機に連なる副流部とを有すると共に、吸気ダクトには、焙煎処理された処理物を処理物受容器内において外気取込口に引き込まれる外気で空冷するときに、外気の流路を本流部から副流部に切り換える流路切換手段が設けられていることから、焙煎直後の処理物から発生する脂成分を含む煙をエアフィルタにより除去し、送風機の羽根に脂が付着することによる送風性能の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る熱風式焙煎装置を示す正面概略図
【図2】図1に示した装置の平面概略図
【図3】ホッパの部分を示す断面図
【図4】焙煎容器とその上部構造を示す断面図
【図5】焙煎容器を部分的に破断して示した部分拡大断面図
【図6】ノズルの側面図
【図7】図4のX−X拡大断面図
【図8】蓋部材を移動させる機構を示す側面図
【図9】図8の部分拡大図
【図10】蓋部材の下部構造を示す部分断面図
【図11】蓋部材が閉口位置にある状態を示す説明図
【図12】蓋部材が閉口位置から降下した状態を示す説明図
【図13】外気取込口の周辺を示す斜視図
【図14】本発明に係る熱風式焙煎装置のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明を詳しく説明する。先ず、図1および図2により係る熱風式焙煎装置の構成を概説すれば、1は装置のフレームであり、フレーム1の内側上部には焙煎容器2が設けられている。焙煎容器2は、その内部に投入された処理物に焙煎処理を施すものであり、その上端は容器接続部3を介して排気チャンバ4の下端部に連通接続されている。
【0017】
5は焙煎容器2内に処理物を供給するホッパで、その下端が傾斜状の移送管5aを介して排気チャンバ4内に連通しており、これによりホッパ5内の処理物が移送管5aを通じて排気チャンバ4内から焙煎容器2内に投入されるようになっている。
【0018】
又、焙煎容器2内には、焙煎用の熱媒として熱風を噴射する複数のノズル6が設けられている。ノズル6の各上端部は、排気チャンバ4内に設けられた給気チャンバ7の底部に連通接続されており、その給気チャンバ7はフレーム1の下部に設置した送風機8の吹出口に送気ダクトDFを介して連通されている。
【0019】
給気チャンバ7内には、空気加熱器9(電気ヒータ)が設けられており、その空気加熱器9と送風機8により熱風を生成する熱風生成手段が構成されている。送風機8は例えば遠心ブロワであり、その吸込口は吸気ダクトDSを介して外気取込口10に連通されている。
【0020】
尚、図1において、11は送風機8や空気加熱器9を制御する制御部、12は送風機8の吸込口と外気取込口10との間に介在するエアフィルタ、13はフレーム1の中段に設けた棚板であり、この棚板13に焙煎容器2の直下となる位置で外気取込口10が形成されている。又、14は外気取込口10上に嵌合状態で配置された可搬型の処理物受容器であり、この処理物受容器14内に焙煎処理された処理物が焙煎容器2内から落下して収容されるようになっている。
【0021】
一方、排気チャンバ4の上端は、排気ダクトDE1を介して固気分離器15に連通している。本例において、固気分離器15は円錐形の分離器本体15aを有して排気中から固体成分を遠心分離するサイクロンであり、その分離器本体15aの下端に集塵部15bが設けられていると共に、分離器本体15aの上端には浄化ガスを排出するための排気ダクトDE2が接続されている。
【0022】
次に、係る熱風式焙煎装置の各部の構造を詳述すれば、図3において、16はホッパ5の中心部上に設けられた電動式シリンダであり、この電動式シリンダ16はヘッド側を下向きにしてシリンダ胴16aが上記フレーム1に固定されている。その伸縮ロッド16bにはプラグ16c(栓部材)が取り付けられており、そのプラグ16cが伸縮ロッド16bの伸縮により昇降し、これによってホッパ5の下端開口部が開閉されるようになっている。尚、このプラグ16cが図3の一点鎖線で示す下降端から実線で示される上昇端に移動すると、ホッパ5内の処理物が移送管5aを通じて上記焙煎容器2内に供給され、その後にプラグ16cが下降端へ移動されると、ホッパ5の下端開口部が密閉されて焙煎容器2内からホッパ5内への熱風の吹き出しが防止される。
【0023】
次に、図4において、給気チャンバ7に連通する送気ダクトDFは、排気チャンバ4の側面部を貫通し、その貫通部分がガスケット17により封止されている。又、図4および図5から明らかなように、焙煎容器2は、上下両端が開口した円筒状の容器本体21と、その下端開口部を開閉する蓋部材22とにより構成されている。このうち、容器本体21は透明な耐熱ガラスからなる一体成形物であり、その下部は下端開口部に向かって内径が漸次小さくなるテーパ部21aとされ、上端外周には鍔部21bが形成されている。そして、係る焙煎容器2は、容器本体21の上端が前述のように容器接続部3を介して排気チャンバ4の下端部に連通接続されている。
【0024】
容器接続部3は、排気チャンバ4の下端外周に固定したリング状の固定枠31と、容器本体21の鍔部21bを介して固定枠31に対向する可動枠32とを有し、その可動枠32がバネ33によって固定枠31側に付勢される構成とされている。尚、固定枠31には、鍔部21bより外周側で可動枠32を貫通する複数のバネ受けピン34が取り付けられており、そのバネ受けピン34の下端に形成される受座34aと可動枠32との間でバネ受けピン34の外周に上記のバネ33が設けられている。これによれば、固定枠31に容器本体21の上端面が密着されるために、シール材を用いずに容器本体21の接続部分を密封することができる。
【0025】
一方、前述のように、焙煎容器2内には複数のノズル6が設けられている。それらノズル6は、図5に示すように上端が熱風流入口6aとされる上流管部61と、その上流管部61に対して屈曲する下流管部62とが一体に連なる断面円形の屈曲管であり、その上端部は熱風流入口6aが給気チャンバ7に連通する状態で当該給気チャンバ7の底部を成す端板71に固着されている。尚、図6において、上流管部61と下流管部62は互いの軸線が鈍角状に交わるように屈曲されており、上流管部61に対する下流管部62の屈曲角θは図示例において30度とされている。
【0026】
又、図7から明らかなように、本例では3本のノズル6が用いられ、その各ノズル6が容器本体21の軸線回りに等間隔(120度間隔)に配列されている。そして、図4のように上流管部61は容器本体21の軸線に平行して上下方向に延び、下流管部62は上流管部61の軸線上から容器本体21の下端開口部の周縁部に向けて斜め下方に屈曲している。特に、図7から明らかなように、下流管部62は、容器本体21と上流管部61との軸線を含む仮想の平面fに対して交差する方向に向けられている。つまり、下流管部62は、それぞれ対応する上流管部61の軸線位置を基準にして、容器本体21の半径方向より周方向に所定の角度ψずつ偏角配向されている。
【0027】
したがって、それらノズル6の下端開口部(熱風噴射口6b)より噴射された熱風は、容器本体21の下部内周面に沿って旋回し、熱風噴射口6bの付近では焙煎容器2内の処理物が容器本体21のテーパ部21aに沿って吹き上げされる。このため、焙煎容器2内の処理物は、図5の点線で示されるよう上下にうねりながら回流する。これによれば、処理物が良好に撹拌されるために均一な焙煎処理を行なえるほか、焙煎処理中の処理物の挙動(うねり/回流)を外部から視認できるので、例えばコーヒーショップでのコーヒー生豆の焙煎に用いて、来客にコーヒー生豆の挙動を見る楽しみを与えられるという演出効果が得られる。
【0028】
加えて、焙煎容器2を構成する蓋部材22が金属基材の表面にセラミックコーティングを施した板状構造物とされていると共に、容器本体21が前述のように耐熱ガラスによる一体成形物とされていることにより、その両者の熱変形が抑制されるために、焙煎処理中において容器本体21の下端開口部を、シール材を使用せずして蓋部材22のみで密閉状態に保つことができるほか、焙煎容器2が熱風を受けて蓄熱過熱しないので、ノズル6から噴射される熱風の温度、風量によって焙煎容器2内を目標温度に制御して、処理物全体を過不足なく一様に加熱することができる。
【0029】
尚、焙煎容器2内には、ノズル6の下流管部62の半分程度まで処理物が収容され、その処理物が焙煎処理時にノズル6にも接触するので、これによる処理物の過熱を防止する観点から、ノズル6も蓋部材22と同じく金属基材の表面にセラミックコーティングを施した態様とされている。
【0030】
ここで、蓋部材22は、図4において実線で示される閉口位置と一点鎖線で示される開口位置との間で旋回移動し、その閉口位置において容器本体21の下端開口部が密閉され、開口位置では容器本体21の下端開口部が全開となる構成とされている。
【0031】
図8〜図12により蓋部材の移動機構について説明すると、図8から明らかなように、給気チャンバ7に接続する送気ダクトDFの外周には、下から順に外筒41、回転リング42、および固定リング43が設けられており、このうち外筒41および回転リング42が送気ダクトDFに対して回転自在とされている。外筒41の下部外周には、電動式シリンダ44のロッド部が接続されており、その伸縮により外筒41が所定の角度範囲内で回動するようになっている。
【0032】
又、図9から明らかなように、外筒41の上部には伝動ピン45が固着され、回転リング42の外周にはその半径方向に延びる旋回アーム46が設けられている。旋回アーム46は、一端が回転リング42に固定される芯軸46aと、その外周に回転可能に設けたスリーブ46bからなり、スリーブ46bの基部には伝動ピン45と係合する作動レバー47が固着され、先端部外周にはカム48が固着されている。
【0033】
一方、芯軸46aの先端にはブラケット49が固着され、そのブラケット49にカム48の上方に位置する蓋受け台座50がボルト止めされている。図10のように、蓋受け台座50は、筒状の台座本体51内に昇降スライダ52を設けた構成で、蓋部材22の底面中心部に設けたボス部22aに対して昇降スライダ52の上端部が球面対偶によって結合している。
【0034】
しかして、図8に示した電動式シリンダ44の伸縮動作により、外筒41を正逆に回動させると、これに同調して旋回アーム46が水平面内で旋回し、これによって蓋部材22が上記閉口位置と開口位置との間で移動することとなる。
【0035】
図11は、蓋部材22が閉口位置にあって、容器本体21の下端開口部が密閉された状態であり、この状態で外筒41を図11の矢印方向に回動させると、伝動ピン45に係合する作動レバー47が旋回アーム46を中心として図11の反時計回りに回動し、これに連動してスリーブ46b及びカム48が同方向に回動する。これにより、図10に示した昇降スライダ52が蓋部材22と共にカム48による支持位置まで自重で降下(焙煎容器2内の処理物が流出しない数mm程度降下)して図12に示される状態となる。更に、外筒41を同方向に回動し続けると、蓋部材22が旋回アーム46に同調して容器本体21の下端開口部の下方領域から外れる上記開口位置まで旋回移動し、これによって容器本体21内の処理物が外部に排出されることとなる。
【0036】
尚、蓋部材22を開口位置から閉口位置に移動させる場合は、外筒41が上記とは逆向きに回動されるのであるが、固定リング43には旋回アーム46の旋回移動範囲を規定する図示せぬストッパが設けられており、蓋部材22が開口位置から容器本体21の下端開口部を臨む位置(図12に示される位置)まで移動すると、旋回アーム46の旋回動作が停止されたまま作動レバー47を通じてスリーブ46b及びカム48の回動が行なわれ、そのカム48により昇降スライダ52が押し上げられることにより蓋部材22が閉口位置まで上昇移動する。
【0037】
ここに、容器本体21の直下には、前述のように容器本体21の下端開口部から落下した焙煎済みの処置物を収容する処理物受容器14が配置される。図13から明らかなように、処理物受容器14は把手14aをもつカップ形で、その底面部は金網などからなる通気性を有したメッシュプレート14bとされている。尚、メッシュプレート14bの網目は、空気の通過を許容して処理物を通さない大きさに設定されている。
【0038】
又、図13から明らかなように、外気取込口10は処理物受容器14を嵌合可能な縁枠10aを有し、これにより処理物受容器14の位置決めが行なわれるようになっている。
【0039】
そして、上記のような処理物受容器14によれば、焙煎処理が終わった処理物を収容しながら、外気取込口10に吸込まれる外気により高温状態の処理物をすぐさま空冷し、空冷後の処理物を所定位置まで持ち運ぶことができる。
【0040】
因みに、焙煎直後の処理物は、脂成分を含む煙を発生するので、その煙を送風機8で直に吸込んでしまうと、送風機8の羽根に脂が付着して送風性能が早期に劣化してしまうため、外気取込口10と送風機8の吸込口とを繋ぐ吸気ダクトDSは、図14のように主流部DS1と、エアフィルタ12を介在させた副流部DS2とに分岐され、その主流部DS1と副流部DS2とに設けたバルブVa,Vb(流路切換手段)により、焙煎処理時において外気が主流部DS1から送風機8に吸込まれ、処理物の空冷時において外気が副流部DS2のエアフィルタ12を通じて送風機8に吸込まれるよう流路が切り換えられるようになっている。
【0041】
尚、吸気ダクトDSに流路切換手段として設けられるバルブVa,Vbは、バタフライ弁、仕切弁、ダイヤフラム弁などであるが、これらは本流部DS1と副流部DS2とに設けることに限らず、係る流路切換手段を方向切換弁として本流部DS1と副流部DS2との分岐部分に設けても良い。
【0042】
次に、以上のように構成される本願装置の作用を図14により簡潔に説明すると、ホッパ5内には処理物として例えば定量のコーヒー生豆が入れられる。そのコーヒー生豆は、移送管5aを通じて焙煎容器2内に投入され、閉口位置にある蓋部材22上に溜まる。一方、送風機8からは給気チャンバ7内に外気が供給され、これが空気加熱器9により加熱されて熱風(150〜270℃)となり、その熱風がノズル6を通じて焙煎容器2内に噴射される。すると、焙煎容器2内のコーヒー生豆は、熱風により上下にうねって回流しながら均一加熱される。又、熱風は排気チャンバ4を通じて固気分離器15に送られ、コーヒー生豆から剥離したチャフ(渋皮)が集塵部15bに落下し、排気ダクトDE2からはチャフを取り除かれた熱風が排出される。
【0043】
尚、焙煎容器2内への熱風の噴射を開始してから10分程度経過すると、コーヒー生豆は茶褐色のコーヒー豆となり、これが蓋部材22の開放により処理物受容器14内に落下され、その処理物受容器14内において外気取込口10内に吸込まれる外気によって空冷される。
【0044】
以上、本発明について説明したが、係る熱風式焙煎装置は、コーヒー生豆に限らず、アーモンドやピーナッツなどの焙煎にも好適に用いることができる。
【0045】
又、空気加熱器9は給気チャンバ7内に設けることに限らず、送風機8内に組み込むなどしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
2 焙煎容器
21 容器本体
21a テーパ部
21b 鍔部
22 蓋部材
3 容器接続部
31 固定枠
32 可動枠
33 バネ
4 排気チャンバ
6 ノズル
6a 熱風流入口
6b 熱風噴射口
61 上流管部
62 下流管部
7 給気チャンバ
8 送風機(熱風生成手段)
9 空気加熱器(熱風生成手段)
10 外気取込口
12 エアフィルタ
13 棚板
14 処理物受容器
14b メッシュプレート
DS 吸気ダクト
DS1 本流部
DS2 副流部
DF 送気ダクト
DE1 排気ダクト
DE2 排気ダクト
Va,Vb バルブ(流路切換手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙煎処理する処理物が投入される焙煎容器と、その焙煎容器内に供給するための熱風を生成する熱風生成手段と、その熱風生成手段により生成された熱風を前記焙煎容器内に噴射する複数のノズルとを備えた焙煎装置であって、
前記焙煎容器は、上下両端が開口する容器本体と、その下端開口部を開閉する蓋部材とからなり、
前記ノズルは、それぞれ前記容器本体の軸線に平行して当該軸線回りに等間隔に配された上流管部と、その上流管部に連続して当該上流管部の軸線上から前記容器本体の下端開口部の周縁部に向けて斜め下方に屈曲する下流管部とを有する屈曲管であり、
前記上流管部の上端は、前記熱風生成手段からの熱風が流入する熱風流入口とされ、
前記下流管部は、前記容器本体と上流管部との軸線を含む平面に対して交差する方向に向けられ、その下端が前記容器本体の下端開口部の周縁部に臨む熱風噴射口とされていることを特徴とする熱風式焙煎装置。
【請求項2】
前記容器本体は、透明な耐熱ガラスからなる一体成形物であり、その下部は下端開口部に向かって内径が漸次小さくなるテーパ部とされ、前記容器本体の上端外周には鍔部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の熱風式焙煎装置。
【請求項3】
前記蓋部材は、金属基材の表面にセラミックコーティングを施した板状構造物であって、前記容器本体の下端開口部を密閉する閉口位置と、前記下端開口部を全開する開口位置との間で移動可能とされていることを特徴とする請求項2記載の熱風式焙煎装置。
【請求項4】
前記ノズルの上端部が連通接続する給気チャンバと、その給気チャンバを内蔵すると共に下端部に前記焙煎容器を保持する容器接続部を有して前記ノズルから焙煎容器内に噴射された熱風を排気ダクトへと導く排気チャンバとを備え、
前記容器接続部は、前記容器本体の上端面が宛がわれる固定枠と、前記容器本体の鍔部を介し前記固定枠に対向してその固定枠に向けてバネ付勢される可動枠とを有してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱風式焙煎装置。
【請求項5】
前記熱風生成手段は送風機と空気加熱器とからなり、
前記容器本体の下方には棚板が設けられ、その棚板に前記容器本体の直下となる位置で前記送風機の吸込口に連通する外気取込口が形成されていると共に、
底面部が通気性を有して前記外気取込口上に嵌合状態で配置される可搬型の処理物受容器を備え、前記容器本体の下端開口部を開放したとき、焙煎処理された処理物が前記容器本体内から前記処理物受容器内に落下して収容されるようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱風式焙煎処理装置。
【請求項6】
前記送風機の吸込口と外気取込口が吸気ダクトにより連通され、
前記吸気ダクトは、前記外気取込口から前記送風機に直通する本流部と、前記外気取込口からエアフィルタを介して前記送風機に連なる副流部とを有すると共に、
前記吸気ダクトには、焙煎処理された処理物を前記処理物受容器内において前記外気取込口に引き込まれる外気で空冷するときに、外気の流路を前記本流部から副流部に切り換える流路切換手段が設けられていることを特徴とする請求項5記載の熱風式焙煎処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−254038(P2012−254038A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128993(P2011−128993)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【特許番号】特許第4847622号(P4847622)
【特許公報発行日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【出願人】(598141372)株式会社エムアンドシー (7)
【出願人】(591032703)群馬県 (144)
【Fターム(参考)】