説明

熱風発生装置

【課題】発火を誘発し易いヒーターを使用せずに、所定一定温度の安定した熱風を生成して送風できる安全性の高い温風発生装置を提供すること。
【解決手段】モーター15と、ルーツブロワ17と、蓄熱器22と、切換え弁27と、この切換え弁の一方の排出弁口27a側とルーツブロワの吸気側とを連結して蓄熱器から排出された圧縮空気をルーツブロワへ帰還させる帰還送風管Lと、モーター15などを制御する制御装置39とを備えている。制御装置39は、モーターを回転させてルーツブロワを作動させて、該ルーツブロワに外気を吸気すると共に圧縮した後に、圧縮空気を前記蓄熱器、切換え弁及び前記帰還送風管Lを介してルーツブロワへ帰還させ、再び同じ該ルーツブロワ17、蓄熱器22を経由する循環送風路を少なくとも1回以上循環させた後に、送風管35から外部へ熱風を送風する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱風発生装置に係り、さらに詳しくは、シーズヒーターやカーボンヒーターなどの発火を誘発し易いヒーターを使用せずに、いわゆるヒーターレスにして、代わってルーツブロワ(Roots Blower)を用いて、このルーツブロワからの熱を一度蓄熱・調温した後に所定温度の熱風を送風できる熱風発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車ボディ等の塗装乾燥には、熱源にニクロム線ヒーター、シーズヒーター、カーボンヒーターなどを用いて、これらの熱源にファン送風機から気体(空気)直接又は間接を吹き当てて、所定温度の熱風を生成して、この熱風を塗装面などに吹付けて乾燥する熱風発生装置が開発されている。例えば、下記特許文献1には、熱源にカーボンヒーターを用い、このカーボンヒーターに送風機から気体(空気)を吹付けて所定温度の熱風を生成する気体加熱器が記載されている。
【0003】
図11、図12を参照して、この特許文献1に記載された気体加熱器を説明する。なお、図11はこの特許文献1に記載された気体加熱器の外観斜視図、図12は図11の気体加熱器を構成する熱交換器を示し、図12Aは分解斜視図、図12Bは長手方向と直交する方向で切断した断面図である。この気体加熱器40は、ヒーター41と、一対の熱交換器42とを有している。ヒーター41は、発熱素子として帯状の炭素質発熱体が使用され、このヒーター41がヒーターパイプ45に収納されて、このヒーターの発熱素子の扁平な面に一対の対向面の外側面にそれぞれ熱交換器42が配設されると共に、これらの熱交換器42は、フレーム42aと、そのフレーム42aの内部に設けたコルゲートフィン43とで構成されている。また、熱交換器42の長さ方向の一端には、気体供給部47、他端に加熱気体排出部48が設けられている。
【0004】
この気体加熱器40は、ヒーター41に通電されると、ヒーターの発熱によって熱交換器42のコルゲートフィン43が加熱される。そして、この熱交換器42に気体供給部47の吸気口47aから気体が供給されると、熱交換された加熱気体が加熱気体排出部48の排出口48aから排出される。
【0005】
この気体加熱器40によれば、ヒーターパイプ45に熱交換器42を通過する気体と別系統の加圧気体の給排気口46a、46bが設けられているので、ヒーターパイプ45の内圧を高めた状態で使用することができ、揮発成分を含んだ気体がヒーター41に直接接触する恐が無くなる。また、熱交換器42は、ヒーター41の長さ方向に沿うと共に、その長さ方向の一端部が気体供給部、他端部が加熱気体排出部となっているので、その熱交換器42中を移動する気体は熱交換器42の全長にわたり熱交換作用を受けので、熱効率がよく均一な熱風を送風できるなどの特徴を備えている。
【0006】
また、下記特許文献2にも、カーボンヒーターを用いた熱風発生器が開示されている。この熱風発生器は、加熱ヒーターと、この加熱ヒーターからの熱を蓄熱する蓄熱部材と、気体が流入する流入口及び流出する流出口を有する容器とを備え、蓄熱部材は、複数の通風路を有する部材で形成されて、この蓄熱部材が収容ケースに収納されて蓄熱体ユニットが形成されている。また、この蓄熱体ユニットの収容ケースの少なくとも一側外壁面には、耐熱赤外線吸収塗料が塗布されて、この塗料を塗布した壁面に加熱ヒーターを配置して容器に収容されている。この熱風発生器によれば、容器内に、複数個の蓄熱体ユニットが間に加熱ヒーターを介在して多段に積層されて収納されているので、蓄熱容積の大きい熱風発生器を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−2640号公報(段落〔0013〕、〔0018〕、図1)
【特許文献2】特開2008−309367号公報(段落〔0035〕〜〔0036〕、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1、2の気体加熱器や熱風発生器によれば、被乾燥物に所定温度の熱風を吹付けて乾燥させることができる。しかしながら、これらの加熱器等は、熱源にカーボンヒーターを用い、このカーボンヒーターにファン送風機から気体(空気)を吹き当てることによって、所定温度の熱風を生成して、この熱風を被乾燥物に吹付ける構成となっているので、これらの機器構成から、以下の課題が潜在していることが判明した。
【0009】
その一つの課題は、熱源にカーボンヒーターを使用しているので、このヒーターが故障などして破損、例えばヒーターパイプが破損などすると熱源が露出して可燃物に引火する恐れがある。例えば、揮発性塗料を乾燥するときなどに、このような破損が発生すると安全性の問題が顕在化する。また、他の課題は、送風にファン送風機を使用しているので、風圧の調節が困難、特に風圧を強くするのが難しく、しかも、その風量をも多くするのが困難になっている。この風量、風圧が少なく、弱いと、熱風を送風する送風管の長さが制限されて、長く延長することができず、その結果、気体加熱器などを被乾燥物の近くに移動して、被乾燥物に接近した状態で作業しなければならなくなる。そのために、被乾燥物が揮発性ガスを発生するものであると、発火を誘発し易くなり、その結果、危険性が増大する。なお、風量、風圧を大にするためには、大型のファン送風機及び大容量のヒーターを使用すれば可能になるが、そうすると、機器が大型、高価になると共に、消費電力も増大して、省エネが実現できなくなる。
【0010】
上記特許文献1、2の気体加熱器や熱風発生器は、いずれも本願発明者の発明に係るものであるが、これらの気体加熱器などがこのような課題を抱えていることから、本願の発明者らは、発火を誘発し易いヒーター及び送風量/風圧に課題があるファン送風機を使用せずに、いわゆるヒーターレスなどにして、しかも、所望の送風量/風圧にして、所定温度の熱風を生成し送風できないかを試行錯誤を繰返して探求した。
【0011】
この探求過程において、発火を誘発し易いヒーターに代えて、回転送風機(Rotary Blower)に分類されているルーツブロワを用いると、このルーツブロワは高速回転にも耐える高い耐久性を有し、小型・軽量で所望の送風量/風圧の圧縮空気が吐出され、しかも、運転中、空気の圧縮の際に発生する摩擦熱などにより圧縮空気が加熱されて昇温するなどの特性を備えていることに着目して、このルーツブロワを高速運転すると、前記の圧縮空気の昇温温度がさらに高くなり、また、この昇温した圧縮空気をルーツブロワへ帰還させて該ルーツブロワ内で再圧縮すると、この昇温圧縮空気の温度がさらに上昇し、さらにこの帰還を繰返すとさらに温度が上昇して所望温度の熱風を生成できることに想到して、本発明を完成させるに至ったものである。
【0012】
そこで、本発明は、従来技術が抱える課題解決及び上記の着想に基づいてなされたもので、本発明の目的は、発火を誘発し易いヒーターを使用せずに、いわゆるヒーターレスにして、所定の一定温度の安定した熱風を生成して送風できる安全性の高い温風発生装置を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、所望の風圧及び風量の熱風を送風して、熱風発生部から被乾燥物へ吹付ける送風管の長さを長くできる温風発生装置を提供することにある。
【0014】
本発明のまた他の目的は、送風量を調節して送風できる温風発生装置を提供することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、熱風発生部からの熱を一度蓄熱・調温した後に送風管へ送風するようにして、安定した熱風を送風できる温風発生装置を提供することにある。
【0016】
本発明のさらにまた他の目的は、熱風発生部から発生する騒音を蓄熱する際に消音して送風できる温風発生装置を提供することにある。
【0017】
本発明のさらにまた他の目的は、上記の目的を備え、小型、軽量、省エネルギー化及び安価な温風発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様の熱風発生装置は、所定の回転数で回転するモーターと、前記モーターに連結されて外気を吸気し圧縮して吐出するルーツブロワと、前記ルーツブロワから吐出された圧縮空気を通過させると共に該圧縮空気の熱を蓄熱する蓄熱器と、前記蓄熱器の排出側に連結されて該蓄熱器から排出された前記圧縮空気を異なる方向へ切換えて送風する少なくとも2つの排出弁口を有する切換え弁と、前記切換え弁の一方の排出弁口側と前記ルーツブロワの吸気側とを連結して前記蓄熱器から排出された圧縮空気を前記ルーツブロワへ帰還させる帰還送風管と、前記切換え弁の他方の排出弁口側に連結されて前記蓄熱器から排出された圧縮空気を外部へ送風する送風管と、前記モーターを制御するモーター制御手段を含み前記モーターを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記モーター制御手段により前記モーターを回転させて前記ルーツブロワを作動させて、該ルーツブロワに外気を吸気させると共に圧縮した後に、前記圧縮空気を前記蓄熱器、前記切換え弁及び前記帰還送風管を介して前記ルーツブロワへ帰還させ、再び同じ該ルーツブロワ、前記蓄熱器を経由する循環送風路を少なくとも1回以上循環させた後に、前記送風管から外部へ熱風を送風制御することを特徴とする熱風発生装置。
【0019】
また、第2の態様の熱風発生装置は、前記第1の態様の熱風発生装置において、前記ルーツブロワは、2葉ルーツブロワ、3葉ルーツブロワ、ベーン式ブロワ、多段ターボブロワのいずれかであることを特徴とする。
【0020】
また、第3の態様の熱風発生装置は、前記第1又は2の態様の熱風発生装置において、前記モーターと前記ルーツブロワとは、電磁クラッチで連結して、前記電磁クラッチは、前記制御装置に設けたクラッチ制御手段により作動させることを特徴とする。
【0021】
また、第4の態様の熱風発生装置は、前記第1〜3のいずれかの態様の熱風発生装置において、前記ルーツブロワは、吸気口及び吐出口側の少なくともいずれか一方に消音フィルターが設けられていることを特徴とする。
【0022】
また、第5の態様の熱風発生装置は、前記第1の態様の熱風発生装置において、前記蓄熱器には、温度センサーを付設して、前記制御装置は、前記温度センサーからの出力により、前記蓄熱器を所定の一定温度に蓄熱制御することを特徴とする。
【0023】
また、第6の態様の熱風発生装置は、前記第1又は5の態様の熱風発生装置において、前記蓄熱器は、複数の通風路を有する蓄熱部材を一端に気体吸入口及び他端に気体排出口を有する密閉ケースに収納したものであることを特徴とする。
【0024】
また、第7の態様の熱風発生装置は、前記第6の態様の熱風発生装置において、前記蓄熱器は、前記密閉ケース内に消音フィルターが収納されていることを特徴とする。
【0025】
また、第8の態様の熱風発生装置は、前記第7の態様の熱風発生装置において、前記蓄熱部材は、所定の深さ及び高さの凹凸を交互に設けた波型部材に形成すると共に、前記凹凸壁面に熱風の一部を通過させる複数本のスリットが設けられていることを特徴とする。
【0026】
また、第9の態様の熱風発生装置は、前記第8の態様の熱風発生装置において、前記複数のスリットは、前記凹凸壁面に所定面積の複数の領域が区画されて、前記複数の区画領域に交互に通風風路が異なるものとなっていることを特徴とする。
【0027】
また、第10の態様の熱風発生装置は、前記第1の態様の熱風発生装置において、前記切換え弁には、弁開閉機構を設けて、前記弁開閉機構によって、前記送風管へ送風量を調節することを特徴とする。
【0028】
また、第11の態様の熱風発生装置は、前記第1の態様の熱風発生装置において、前記送風管には、長尺のホースが連結されて、前記ホースの先端に吹付けノズルが装着されて、前記吹付けノズルにエヤスイッチが付設されて、前記エヤスイッチからのエヤ信号によって熱風が制御されることを特徴とする。
【0029】
また、第12の態様の熱風発生装置は、前記第11の態様の熱風発生装置において、前記送風管には、前記エヤスイッチからのエヤ信号を伝達するエヤパイプが組込まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明の第1の態様の熱風発生装置によれば、ルーツブロワを用いて、このルーツブロワからの熱を蓄熱器に一度蓄熱して安定した熱風を送風することが可能になる。すなわち、シーズヒーター、カーボンヒーターなどの発火誘発をし易いヒーターを使用しない、いわゆるヒーターレスの熱風発生装置を提供できる。また、ルーツブロワを使用するので、従来のファン送風機で送風する熱風発生器などに比べて、風量を多くすると共に、風圧を高くした熱風にして送風できる。その結果、所望の風圧及び風量の熱風を送風して、熱風発生部から被乾燥物へ吹付ける送風管の長さを長くできる温風発生装置を提供することにある。
【0031】
本発明の第2の態様の熱風発生装置によれば、各種のルーツブロワを選択して使用することによって、それぞれのルーツブロワの特性により、所望の熱風を生成できる。
【0032】
本発明の第3の態様の熱風発生装置によれば、電磁クラッチにより、モーターとルーツブロワとの連結、切離が簡単にでき、ルーツブロワでの温度制御も簡単にできる。
【0033】
本発明の第4の態様の熱風発生装置によれば、ルーツブロワは、高速運転され、この高速運転によって、高い騒音が発生するが、吸気口に消音手段を設けることによって、その騒音を低減できる。
【0034】
本発明の第5の態様の熱風発生装置によれば、熱風の温度を略一定に且つ安定した状態で送風可能になる。また、蓄熱器の過加熱、すなわち、オーバーヒートを防止し、損傷を未然に防止できる。
【0035】
本発明の第6の態様の熱風発生装置によれば、ルーツブロワで昇温された熱を効率よく蓄熱することができる。
【0036】
本発明の第7の態様の熱風発生装置によれば、蓄熱器は、密閉ケース内に消音フィルターを設けることによって、ルーツブロワからの騒音を低減して消音できる。
【0037】
本発明の第8の態様の熱風発生装置によれば、熱風からの熱を蓄熱部材に効率よく蓄熱できると共に、ルーツブロワからの騒音を低減して消音できる。
【0038】
本発明の第9の態様の熱風発生装置によれば、熱風が蛇行して蓄熱部材を通過するので、効率よく蓄熱できると共に、ルーツブロワからの騒音を低減して消音できる。
【0039】
本発明の第10の態様の熱風発生装置によれば、切換え弁に弁開閉機構を設けて、この弁開閉機構によって、切換え弁の排出弁口の開口度を設定して置くと、吹出しノズルへ所望の風量を送風させることができる。
【0040】
本発明の第11の態様の熱風発生装置によれば、吹付けノズルにエヤスイッチを付設することによって、電気スイッチのようにそのON/OFFにより火花が発生せず、揮発性ガスなどが発生する雰囲気にあっても、安全に使用が可能になる。
【0041】
本発明の第12の態様の熱風発生装置によれば、送風管にエヤスイッチからのエヤ信号を伝達するエヤパイプを組込むことによって、エヤパイプの管理が安全になる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る熱風発生装置の外観斜視図である。
【図2】図2は図1の熱風発生装置を構成する機器配列し配管などで接続した系統ブロック図である。
【図3】図3は図2の熱風発生装置を構成するルーツブロワの動作を説明する断面図である。
【図4】図4は図3のルーツブロワの特性図である。
【図5】図5は図2の熱風発生装置から送風される熱風の温度変化図である。
【図6】図6は蓄熱器を示し、図6Aは外観斜視図、図6Bは分解斜視図である。
【図7】図7は図6の蓄熱器を示し、図7Aは図6AのVIIA−VIIA線の断面図、図7Bは図6AのVIIB−VIIB線の断面図、図7Cは図6AのVIIC−VIIC線の断面図である。
【図8】図8Aは図6の蓄熱器を構成する蓄熱部材の分解図、図8Bは図6のVIIIB−VIIIB線の断面図である。
【図9】図9は図8の蓄熱部材を示し、図9Aは蓄熱部材の伸展した状態の平面図、図9Bは収容ケースに収納した状態の側面図、図9Cは上方からみた上面図、図9Dは熱風が通過する状態を説明する斜視図である。
【図10】図10は開閉機構を設けた切換え弁の斜視図である。
【図11】図11は従来技術の気体加熱器の外観斜視図である。
【図12】図12は図11の気体加熱器を構成する熱交換器を示し、図12Aは分解斜視図、図12Bは長手方向と直交する方向で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための熱風発生装置を例示するものであって、本発明をこれに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
【0044】
[実施形態]
図1、図2を参照して、本発明の実施形態に係る熱風発生装置を説明する。なお、図1は本発明の実施形態に係る熱風発生装置の外観斜視図、図2は図1の熱風発生装置を構成する機器配列し配管などで接続した系統ブロック図である。
【0045】
本発明の実施形態に係る熱風発生装置10は、図1に示す所定大きさの箱型ケース12内に、図2に示すモーター15、ルーツブロワ17及び蓄熱器22などの機器を収納して、これらの機器によって熱風を生成して外部へ吐出させる装置本体11を有し、この装置本体11からは、比較的長尺の送風管(ホース)35を導出させて、この送風管の先端に吹付けノズル36を装着して、この吹付けノズル36に設けた操作ハンドル36aの操作によって、ノズル口36bから被乾燥物などへ適宜所定量の熱風を吹付けるものとなっている。また、この装置本体11からは、図示を省略した電源ケーブルを導出して、この電力ケーブを電源に接続して該電力ケーブルを介して外部から内部の機器へ電力を供給するようになっている。更に、この装置本体11には、工場内に設置してあるコンプレッサー(図示省略)から圧縮空気が供給される供給管(図示省略)が接続されている。
【0046】
箱型ケース12は、図1に示すように、所定の横幅A及び縦幅Aを有する略矩形状の金属板基材からなる床板部12aと、この床板部の外周から所定高さH立設した側板部12b〜12eと、側板部の上方開口部を塞いだ天井板部12fとで囲んで、内部に所定大きさの空間を形成したものとなっている。横幅A、幅A及び高さHの寸法は、例えば、A、Aは450mm及びHは800mmである。床板部12aは、比較的肉厚で機械的強度の強い金属板基材で形成して、この金属板基材上に、モーター15、ルーツブロワ17、蓄熱器22などが支持固定される。また、この床板部12aの裏面には、複数個のキャスター13が取付けてある。これらのキャスター13を取付けることによって、装置本体11の移動が容易になる。なお、キャスター13の高さは、例えば120mmである。また、4方を囲む側板部12b〜12eのうち、一側板部12eには、この側板部を貫通する貫通孔を形成して、この貫通孔の開口に外気を吸気する外気フィルター14が装着されている。この外気フィルター14は、例えば不織布などを使用する。他の側板部12cには、管挿通孔12cを形成して、比較的長尺の送風管(ホース)35が導出されている。さらに、天井板部12fは、前面の傾斜面12fと後方の平坦面12fとに分けて、傾斜面12fに操作パネル11aが取付けられている。この操作パネル11aには、電源スイッチ、モーター駆動スイッチ、クラッチ切換え手段などが配設されている。
【0047】
送風管35は、比較的長尺のホースからなり、先端に吹付けノズル36が取付けてある。また、この吹付けノズル36には、エヤスイッチ37が付設されている。エヤスイッチ37と制御装置39とは、エヤパイプ35bで連結されている。すなわち、エヤパイプ35bは、2本の中空パイプを併設したものからなり、これらの中空パイプを介して、外部から圧縮空気を充填してエヤスイッチ37の操作により、そのスイッチ信号が制御装置に伝達される。エヤパイプ35bは、送風管と別ルートに施設してもよいが、送風管と一体にしたものを使用するのが好ましい。一体にすると、送風管35は、熱風を送風する管ホース35aと、エヤパイプ35bとで構成されたものとなる。エヤパイプ35bへの圧縮空気の充填は、工場設備の圧縮機(コンプレッサー)(図示省略)から供給される。したがって、エヤスイッチ37は、操作ハンドル36aの操作によって、ON/OFFされる。この吹付けノズル36は、操作ハンドル36aの操作によって、ノズル口36bから熱風を送出させると共に、エヤスイッチがONして、そのエヤ信号が制御装置39へ送られて圧力スイッチ38を作動させてモーターなどが制御される。吹付けノズル36にエヤスイッチ37を付設することによって、電気スイッチのようにそのON/OFFにより火花が発生せず、揮発性ガスなどが発生する雰囲気にあっても、安全に使用が可能になる。送風管(ホース)の長さは、後述する風量/風圧を大きくできるので、長く延長できて、例えば10m以上も可能になる。
【0048】
装置本体11は、図2に示すように、所定の回転数で回転するモーター15と、このモーターに電磁クラッチ16を介して連結して該モーターの回転により外気を吸気して該吸気した空気を圧縮させて吐出するルーツブロワ17と、このルーツブロワの吐出側に接続して圧縮空気の熱を蓄熱する蓄熱器22と、この蓄熱器の排出側に連結して該蓄熱器から排出された圧縮空気を異なる2方向へ切換えて送風する2つの排出弁口27a、27bを有する切換え弁27と、この切換え弁27の一方の排出弁口27a側とルーツブロワ17の吸気側とを連結して蓄熱器22から排出された圧縮空気をルーツブロワ17へ帰還させる帰還送風管Lと、また、この切換え弁27の他方の排出弁口27b側に連結して蓄熱器22から排出された圧縮空気を外部へ送風する送風管35、モーター15を制御するモーター制御手段を含みモーターなどを制御する制御装置39と、を備えている。
【0049】
ルーツブロワ17は、その吸入口19a側に外気の吸入管Lを接続し、吐出口19bと蓄熱器22との間は連結管L、蓄熱器22と切換え弁27との間は、連結管Lでそれぞれ連結されている。外気吸入管Lは、その先端に吸気口21を設け、この吸気口21から外気が吸気される。この外気は、箱型ケース12内に外気フィルター14を介して取込んだ新鮮な空気と、このケース内にあって、ルーツブロワ17などで温められた空気となっている。このような外気が吸気口から取込まれるので、箱型ケース12外から取込む外気温に比べて、温度が上がっており、熱効率がよくなる。また、吸入管Lの途中には、帰還送風管Lの一端が連結されている。
【0050】
ルーツブロワ17は、その吸入口19aに吸気する空気を洗浄するとともに消音機能を備えたブロワ・フィルター17Aが装着されている。モーター15とルーツブロワ17との間には、電磁クラッチ16を設置して、この電磁クラッチ16により連結及び切離される。モーター15及びルーツブロワ17は、それぞれ所定大きさのプーリー(図示省略)が装着されて、これらブーリー間に動力伝達手段、例えばベルト等が懸架されている。また、蓄熱器22には、温度センサー22aが取付けてある。制御装置39は、モーター15を制御する制御手段、電磁クラッチ16を制御するクラッチ制御装置、切換え弁27を制御する弁制御手段、熱風温度を制御する温度制御手段などを有している。
【0051】
これらの部品のうち、モーター15、ルーツブロワ17、蓄熱器22及び帰還送風管Lは、箱型ケース12内に収納されている。なお、制御装置39は、マイクロコンピュータを含む制御回路基板(図示省略)で構成し、この制御回路基板もこの箱型ケース内に収められている。また、この箱型ケース12の外気フィルター14の近傍に吸気ファン14aが配設されて、この吸気ファン14aがモーター15に連結されている。
【0052】
この熱風発生装置10は、制御装置39によって制御される。その制御概要は、制御装置39により、まず、モーター15を回転させてルーツブロワ17を作動させて、このルーツブロワに外気を吸気すると共に圧縮し、その後、この圧縮空気を蓄熱器22、切換え弁27及び帰還送風管Lを介してルーツブロワ17へ帰還させる。このルートの間に、外気はルーツブロワ17により、圧縮・昇温されて所定の温度になり、蓄熱器22はこの温度に蓄熱される。帰還された圧縮・昇温空気は、再び、該ルーツブロワ17で圧縮・昇温されて、蓄熱器22が更に高い温度に蓄熱される。以後、この循環ルートは、連続して継続されて、循環する毎に昇温されて、より高い温度が蓄熱器22に蓄熱される。したがって、この循環ルートを少なくとも1回以上経由させて、蓄熱器22に所定の温度に蓄熱した後に、送風管35から外部へ熱風を送風させる。すなわち、この循環ルートは、図2に示すように、ルートa→ルーツブロワ17→ルートa→蓄熱器22→ルートa→切換え弁27→ルートa→ルートaとなり、この循環ルートを少なくとも1回以上経由した後に切換え弁27の排出弁口27bを開成して、所定温度の熱風を送風管35から送風させる。また、送風管35へ熱風が送風されると、循環帰還路を通過する空気が減少するので、この減少分は外気から補充される。補充された空気は、循環ルートで昇温され、また、蓄熱器から略一定の熱風が送風される。
【0053】
この熱風発生装置10によれば、ルーツブロワを用いて、このルーツブロワからの熱を蓄熱器に一度蓄熱・調温するので、安定した熱風を送風することができる。すなわち、従来の熱源、例えばシーズヒーター、カーボンヒーターなどの発火を誘発し易いヒーターを使用せずに、いわゆるヒーターレスで熱風を生成して送風できる。また、ルーツブロワを使用するので、従来のファン送風機で送風する熱風発生器などに比べて、風量を多くすると共に、風圧を強くした熱風にして送風できる。その結果、所望の風圧及び風量の熱風を送風して、熱風発生部から被乾燥物へ吹付ける送風管の長さを長くできる。送風管を長くすると、装置本体11をブースの外に設置してブース内に持込むことが必要でなくなり、例えば揮発性の塗料に対して安全性が確保される。また、風圧が強く及び風量を多くできるので、小型化、安価にできる。以下、個々の構成を詳述する。
【0054】
まず、図3、図4を参照して、ルーツブロワを説明する。なお、図3は図2の熱風発生装置を構成するルーツブロワの動作を説明する断面図、図4は図3のルーツブロワの特性図である。
【0055】
ルーツブロワ17は、回転送風機に分類されており、2軸式ルーツブロワ(Roots Blower)が一般的なものとなっている。このルーツブロワ17は、容積式のブロワであって、回転速度に比例して一定量の気体(空気)を圧縮して送出し、低速から高速までの全域において高効率での運転が可能である。すなわち、所望の風量にして、しかも所望の強い風力を吐出(送風)できる特徴を有し、従来の送風機に比べて風量及び風力を大にすることができる。
【0056】
このルーツブロワ17は、図2、図3に示すように、一端に吸入口19a、対向する他端に吐出口19b及び内部に所定形状の空間を有するケーシング18内に、一対のローター20a、20bを互いに90°位相をずらして取付け、これら一対のローター20a、20bを互いに反対方向に回転させることによって、ケーシング18とローター20a、20bとの間に閉じ込められた一定量の気体(空気)21aが吐出口でこの吐出側の抵抗によって圧力が高められて吐出する。
【0057】
このルーツブロワ17は、ケーシング18はアルミニウム、ローターは耐熱樹脂で形成されている。この構成により、軽量になり、また、高速回転も可能になる。さらに、ケーシング18とローター20a、20bとの間に微小狭隙(例えば、約0.2mm)gがあいている。このルーツブロワ17は、空気圧縮の際に発生する圧縮熱、高速回転ローターにより発生する摩擦熱及び隙間を高速ローターが通過する際に発生する摩擦熱などにより、吸気し空気が所定温度の高温に昇温される。
【0058】
このルーツブロワ17は、図2に示すように、吸入口19aにブロワ・フィルター17Aが装着されている。このブロワ・フィルター17Aは、ステンレス製ウールからなり、外気の吸入管Lからの空気をこのフィルターで洗浄すると共に、ルーツブロワ17の高速運転に伴って発生する騒音を低減するものとなっている。ブロワ・フィルター17Aは、ステンレス製ウールに限定されず、他の部材、例えば金属網でもよい。吐出口19bは、連結管Lを介して蓄熱器22に連結されている。ブロワ・フィルター17Aは、吸入口に設けたが吐出口側に設けてもよく、また、吸入口及び吐出口の両方に設けてもよい。
【0059】
このルーツブロワ17は、図4に示す特性を有している。この特性図は、横軸に吐出量(Discharge.m/h;D〜D10)、縦軸に圧縮比(Presser Rasio;Pd/Ps:P〜P)をとったときにおける、ルーツブロワ17の温度(K)、モーター15の回転数(Rv)、モーター容量(W〜W)の変化の状態を示し、図4のKは温度曲線、Rvは回転数曲線、Wはモーターの容量、Eは効率曲線となっている。この特性図から、モーターの回転数に応じて、所定の温度曲線が描かれる。例えば、モーター15の回転数を上げて、回転数がRVのときに、温度曲線Kと交差する点での昇温温度はKRとなる。この昇温温度KRは、ルーツブロワ17から吐出される温度であり、外気がルーツブロワ17に取込まれて、圧縮昇温され吐出する、帰還前の昇温温度であって、外気温にプラスされたものとなっている。すなわち、ルーツブロワ17へ外気を取込み、帰還させずに連続運転したときに、このルーツブロワ17からこの昇温温度KRの熱風が送風される。例えば、1460cm/revのルーツブロワに8KWのモーター15を連結して、このモーターを5000rpmで回転させると、常温プラス80℃〜90℃となる。
【0060】
このルーツブロワ17は、2軸式ルーツブロワに限定されるものでなく、他のルーツブロワ、例えば3葉ルーツブロワ、ベーン式ブロワ、多段ターボブロワのいずれかを使用してもよい。これらのルーツブロワを選定使用することにより、それぞれのブロワの特性を利用して、所望の風量、風圧にすると共に、所望の温度に昇温した熱風の生成が可能になる。
【0061】
図6〜図9を参照して、蓄熱器を説明する。なお、図6は蓄熱器を示し、図6Aは外観斜視図、図6Bは分解斜視図、図7は図6の蓄熱器を示し、図7Aは図6AのVIIA−VIIA線の断面図、図7Bは図6AのVIIB−VIIB線の断面図、図7Cは図6AのVIIC−VIIC線の断面図、図8Aは図6の蓄熱器を構成する蓄熱部材の分解図、図8Bは図6のVIIIB−VIIIB線の断面図、図9は図8の蓄熱部材を示し、図9Aは蓄熱部材の伸展した状態の平面図、図9Bは収容ケースに収納した状態の側面図、図9Cは上方からみた上面図、図9Dは熱風が通過する状態を説明する斜視図である。
【0062】
蓄熱器22は、図6に示すように、上下2段に積層した一対の蓄熱ユニット23A、23Bと、これらの蓄熱ユニットの一端に取付けて空気の吸入口26を有する供給ヘッダー26Aと、他端に取付けて空気の排出口26を有する排出ヘッダー26Bとを有している。一対の蓄熱ユニット23A、23Bは、図8Aに示すように、天地を逆にして積層されるもので、同じ構成を有している。以下、一方の蓄熱ユニット23Aを他の蓄熱ユニット23Bを参照して説明する。
【0063】
この蓄熱ユニット23Aは、図8に示すように、蓄熱部材となる波型の蓄熱フィン25と、この蓄熱フィン25を収納する収容ケース24とを有している。収容ケース24は、略U字型の比較的長い樋状ケースとなっている。この樋状ケース24は、所定の幅長B及び長さBを有する長方形状の底板部24aと、この底板部の長手方向の両側縁から同一方向に直角に折曲した一対の所定高さの側板部24bと、両側板部間を開放した開口部24cとを有し、全体が略U字型をなし、所定板厚の金属材で形成されている。この金属材は、例えばアルミニウム或はアルミニウム合金などである。この収容ケース24の具体的な寸法は、例えば、幅長Bは70mm、長さBは400mm、側板部の高さB3は16〜30mm、金属板の板厚は1.2mmである。
【0064】
蓄熱フィン25は、蓄熱作用及び消音作用を兼ね備えたもので、所定肉厚の
金属板、例えばアルミニウム或はアルミニウム合金板などを加工した波型成型体で形成されている。この蓄熱フィン25は、図9Aに示すように、所定大きさの金属板(蓄熱板)25Aを用い、この金属板を所定領域、すなわち長手方向において幅広にした幅広領域xと、この領域に隣接し幅狭にした幅狭領域bとが交互に出現するように区画すると共に、この長手方向と直交する方向においても、同様の幅広領域yと、これに隣接する幅狭領域b'とに区画する。
これらの区画は、長手方向において順にx、b、x、b、x、b〜x、長手方向と直交する方向において順にy、b'、y、b'、y、b'〜yとなる。これらの領域で囲まれた領域、すなわち一つの所定面積の領域に所定の方向へ熱風の一部を分流して通過させる複数本の細溝(スリット)25aと、これに隣接する所定面積の領域に反対方向へ熱風の一部を分流して通過させる複数本の細溝(スリット)25bとを形成する。例えば、長手方向の領域、すなわち、領域x×yには一方の送風方向、隣接する領域x×yには他方の送風方向となるように、以下のこの順に繰返され、同様に、長手方向と直交する領域、すなわち、領域x×yには一方の送風方向、隣接する領域x×yでは他方の送風方向に以下の順に繰返される。したがって、図9で示す領域S〜Sでは、各領域のスリットがスリット25b、25a、25b、25aに配列されて、送風方向がジクザグに変更して送風される一種のルーバーとなっている。それぞれの領域の各スリット25b、25aは、略等間隔であって、送風する方向を異ならせたもので、パンチング加工などによって形成される。この金属板25Aは、波型への加工成型の際に幅狭領域bが山頂或いは谷底となり、また、幅狭領域b'は各領域を区分する区分領域となる。このようにパンチング加工した金属板25Aを用いて、折曲加工により波型に成型した後に、収容ケース24内に収納して、山頂或いは谷底となる幅狭領域bが収容ケース24の板壁面に溶接(ロー付)する。なお、開口部24cは、開放されているが、この開口部を蓋体(図示省略)で覆ってもよい。蓋体で覆うことにより、蓄熱フィン25をユニット化できる。この蓄熱フィン25は、図9Dに示すように、矢印C方向から熱風が送風されると、山型の隙間へ入り込み、この入り込んだ熱風は、そのまま山型の隙間から通り貫ける熱風C11と、スリットを通り抜ける熱風C12とに分かれて送風される。他の谷型の隙間へ入り込む熱風Cも同様にして谷型の隙間から通り貫ける熱風C21と、スリットを通り抜ける熱風C21とに分かれて送風される。したがって、熱風が蓄熱フィン25へ送風されると、熱風が蓄熱フィン25の表面及びスリット25a、25bを蛇行して通過するので、熱風との接触面積が増大して、効率よく蓄熱されると共に消音効果が発揮される。
【0065】
供給ヘッダー26Aは、図7Bに示すように、一端に吸入口26、他端に一対の蓄熱ユニット23A、23Bが嵌入される嵌入口26を有している。排出ヘッダー26Bは、図7Cに示すように、一端に排出口26、他端に一対の蓄熱ユニット23A、23Bが嵌入される嵌入口26を有している
【0066】
蓄熱器22の組立ては、まず、一対の蓄熱ユニット23A、23Bを組立てて、この組立体の両端に供給ヘッダー26A及び排出ヘッダー26Bを装着して組立てる。この蓄熱器22は、蓄熱部材がユニット化されているので、その個数を増減することにより、所望の蓄熱量を得ることが可能になる。この蓄熱器22には、蓄熱部材の蓄熱温度を検知するために、温度センサー22aが設けられている。また、蓄熱器22は、供給ヘッダー26A内に消音作用を有する部材、例えば、金属繊維フィルターを入れるのが好ましい。このフィルターによって、ルーツブロワの高速運転による騒音を低減できる。なお、消音フィルターは、供給ヘッダーに収納したが、蓄熱器22外に設置してもよく、また、ルーツブロワと蓄熱器との間に設置してもよい。また、蓄熱器は、蓄熱ユニット23A、23Bなどを密閉容器に収納し、この密閉容器の外部に断熱・保温部材を設けるのが好ましい。
【0067】
蓄熱フィン25は、上記のように、細溝(スリット)を設けた波型の成型体で構成したが、このものに限定するものではなく、他の形状のもの、或いは部材を用いたもので、蓄熱作用及び消音作用を兼ね備えたものであれば、いかなるものでもよい。
【0068】
図2、図10を参照して、切換え弁を説明する。なお、図10は弁開閉機構を設けた切換え弁の斜視図である。切換え弁27は、図10に示すように、3つの弁口を有する三方切換え弁、すなわち、一つの流入弁口27及び一対の排出弁口27a、27bと、これらの排出弁口27a、27bの弁口を開閉する弁蓋27cとを有し、ハンドル27dの操作によってこれらの排出弁口の開閉が行われる。この切換え弁27の開閉は、手動或いは動力により行われる。この切換え弁27は、ハンドル27dの回転角度に対応して弁蓋27cが排出弁口27bを塞ぐ弁口の面積が変更、すなわち、排出弁口27bの開口度が0%〜100%に変更される。この開口度の変更により、排出弁口27bを通過する熱風の風量が変更されて、この風量が送風管内を通って吹付けノズル36へ送風される。したがって、切換え弁27は、ハンドル27dの操作によって、吹付けノズル36へ所望の風量を送風させることが可能になる。
【0069】
切換え弁27の操作は、動力を用いた弁開閉機構によっても行うことができる。図10は切換え弁27を開閉する開閉機構の一例を示している。弁開閉機構28は、図10に示すように、ハンドル27dの端部に連結されて排出弁口27bを常時閉成して置く方向へ付勢する圧縮バネ体(或いは捩じれバネでもよい)29と、同じハンドル27dに連結されて該ハンドルを圧縮バネ体のバネ力に抗して引っ張り排出弁口27bを開成させるエヤ駆動装置30と、このエヤ駆動装置へ圧縮空気を圧入及び抜く圧縮空気供給調整装置31と、エヤ駆動装置30と圧縮空気供給調整装置31との間にあってエヤ駆動装置30への圧縮空気量を調節する圧力調節器32とを備え、圧力調節器32及びエヤ駆動装置30は、圧縮空気供給調整装置31に所定太さのパイプで連結されている。バネ体29に圧縮バネ体(或いは捩じれバネ)を使用したので、エヤ駆動装置30の負担を軽減できる。すなわち、圧縮バネ体を用いることにより、エヤ駆動装置30を作動させないときに、排出弁口27bを常時閉成させておくことができる。なお、符号33はコンプレッサーなどに接続されて圧縮空気供給調整装置31へ圧縮空気を供給する供給管、また、符号34は排出管である。供給管33は、工場内に設置されているコンプレッサーに接続されている。
【0070】
この弁開閉機構28は、まず、圧力調節器32を所定の値、すなわち、ハンドル27dの回転角度を所定角度になるように設定する。この回転角度は、排出弁口27bの開口度となっており、この回転角度によって、排出弁口27bの開口度が0%〜100%の範囲に変更される。圧縮空気供給調整装置31から圧力調節器32を介してエヤ駆動装置30へ圧縮空気が供給されると、シリンダー30aが装置内へ引込められ、その結果、ハンドル27dが圧縮バネ体29のバネ力に抗して引っ張られて、排出弁口27bが圧力調節器32で設定された開口度で開口されて、この排出弁口27bを通る熱風量が調節される。
したがって、この弁開閉機構28を用いると、圧力調節器32でハンドル27dの回転角度を設定すると、排出弁口27bを所定の開口度で開口させて、送風量を調節できる。特に、排出弁口27bを100%に開成させると、最大の送風量で風圧が大きい熱風が吹付けノズル36へ送風されてしまうので、使用形態では好ましくない場合があるので、この調節によって、好ましい風量で使用できる。なお、この弁開閉機構28は、空気圧を利用したが、油圧或いはモーター等を用いたものでもよい。
【0071】
吹き付けノズル36は、操作ハンドル36aと、この操作ハンドルの操作によって外部へ送風するノズル口36bと、同様にこの操作ハンドルの操作によりON/OFFするエヤスイッチ37とを有している。この吹付けノズル36は、操作ハンドル36aの操作によって、ノズル口36bから熱風を送出させると共に、操作エヤイッチ37がONして、このエヤ信号が送風管を介して制御装置39へ送られて、モーター15などが制御される。
【0072】
制御装置39は、モーター15を制御する制御手段、電磁クラッチ16を制御するクラッチ制御装置、切換え弁27を制御する弁制御手段、温度センサー22aからの検出値によって温度を制御する温度制御手段、エヤスイッチ37からのエヤ信号によって圧力スイッチ38を作動させてモーターを制御する制御手段などを有している。温度制御は、マイクロコンピュータ(図示省略)を設置して、このコンピュータによってコントロールする。また、温度制御手段により、熱風温度をコントロールすると共に、蓄熱器及びルーツブロワの過加熱を防止する。なお、ルーツブロワの定格温度は130℃とされているので、このようにコントロールすることで、この温度を超えないようにすることができる。
【0073】
主に図2、図6を参照して、この熱風発生装置10の運転を説明する。まず、切換え弁27は、一方の排出弁口27aを開成し、他方の排出弁口27bを閉成する。この操作は、手動又は弁開閉機構28により行う。この状態にして、操作パネル11aの電源スイッチをONにすると共に電磁クラッチ16を作動させる。電源スイッチがONになると、モーター15を所定の高速回転数、例えば5000rpmで回転させて、電磁クラッチ16を介してルーツブロワ17を作動させる。電磁クラッチ16の作動は、制御装置39から信号により行う。モーター15が高速回転すると、モーター15とルーツブロワ17との間は、動力伝達手段(ベルト)で連結されているので、ルーツブロワ17は、モーター15の回転数に対応した高速運転となる。ルーツブロワ17が高速運転すると、このルーツブロワ17の吸入口19aには、吸入管Lを介して吸気口21から外気が吸気される。
【0074】
この外気は、ブロワ・フィルター17Aを介して吸入口19aへ吸気される。この吸気された外気は、ルーツブロワ17内で圧縮・昇温される。すなわち、吸気空気は、圧縮によって発生する圧縮熱、ローターの高速回転によって発生する摩擦熱及びケーシングとローターとの間の狭隙を高速ローターが通過する際に発生する摩擦熱などにより昇温される。昇温された圧縮空気は、吐出口19bから吐出されて蓄熱器22へ送風される。蓄熱器22内では、昇温された圧縮空気が蓄熱フィン25間を通過し、この通過の際に、昇温熱が蓄熱フィン25に蓄熱される。すなわち、熱風が蓄熱フィン25へ送風されると、熱風が蓄熱フィン25の表面及びスリット25a、25bを蛇行して通過するので、熱風との接触面積が増大して効率よく蓄熱されると共に消音される。蓄熱器22を通過した圧縮空気は、切換え弁27の排出弁口26aを通過して帰還送風管Lを通って、ルーツブロワ17へ帰還される。そして、このルーツブロワでは更に昇温されて蓄熱器22へ送られて、この昇温された熱が蓄熱器に蓄熱される。以後、この循環が繰返されて継続される。
【0075】
すなわち、図2に示すように、ルートa→ルーツブロワ17→ルートa→蓄熱器22→ルートa→切換え弁27→ルートa→ルートaの循環ルートを少なくとも1回以上経由させる。その後、この循環ルートにおける昇温圧縮空気の温度が所定の温度、すなわち蓄熱器22の温度が所定温度になったときに、切換え弁27の排出弁口27bを開成して、所定温度の熱風を送風管から送風する。また、送風管へ熱風が送風されると、循環帰還路を通過する空気が減少するので、この減少分は外気から補充される。補充された空気は、循環ルートで昇温され、また、蓄熱器から略一定の熱風が送風される。
【0076】
この熱風発生装置10は、予め、切換え弁27の排出弁口27bの開口度を設定して置くと、吹付けノズル36へ所望の風量を送風させることができる。
切換え弁27の調節は、手動又は弁開閉機構28により行う。
【0077】
熱風発生装置10と切換え弁27及び吹付けノズル36との関係は、図5に示すように、外気がルーツブロワ17へ吸気されると、このルーツブロワ17からは、外気温度Tより高い所定の昇温温度Tの熱風が吐出されて、この温度で蓄熱器22が蓄熱される。そして、図2の循環ルート、すなわちルートa→ルーツブロワ17→ルートa→蓄熱器22→ルートa→切換え弁27→ルートa→ルートaが繰返されると、所定時間tで所望する熱風温度Tに到達する。これらの間は、切換え弁27の排出弁口27aが開成され、他方の排出弁口27bが閉成されている。時間t後は、切換え弁27の排出弁口27bが開成される。切換え弁27が開成した状態で、吹付けノズル36の操作をして、熱風が送風される。
【0078】
[実施例]
モーター15の容量7.5KW、ルーツブロワの容量1460cm、蓄熱器22の蓄熱ユニットを4ユニットにして、モーター15の回転数を5000rpmとして、tは60秒で130〜140°に昇温した。蓄熱器にはこの温度で蓄熱される。送風管(ホース)35は、内径32mm、長さ10メートルにして吹付けノズル36の送風口で送風量などを計測し、送風量6〜7m/min、風圧40〜50KPSを得た。また、騒音は、消音対策を講じないものと比べて、約1/20以下に低下した。
【符号の説明】
【0079】
10 熱風発生装置
11 装置本体
11a 操作パネル
12 箱型ケース
14 吸気フィルター
15 モーター
16 電磁クラッチ
17 ルーツブロワ
17A ブロワ・フィルター
18 ケーシング
19a 吸入口
19b 吐出口
20a、20b ローター
22 蓄熱器
22a 温度センサー
23A、23B 蓄熱ユニット
24 収容ケース
25 蓄熱フィン
25A 金属板(蓄熱板)
25a、25b スリット
26A 供給ヘッダー
26B 排出ヘッダー
27 切換え弁
27a、27b 排出弁口
28 弁開閉機構
29 バネ体
30 エヤ駆動装置
31 圧力調節器
35 ホース(送風管)
36 吹付けノズル
37 エヤスイッチ
38 圧力スイッチ
39 制御装置
帰還送風管
吸入管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の回転数で回転するモーターと、前記モーターに連結されて外気を吸気し圧縮して吐出するルーツブロワと、前記ルーツブロワから吐出された圧縮空気を通過させると共に該圧縮空気の熱を蓄熱する蓄熱器と、前記蓄熱器の排出側に連結されて該蓄熱器から排出された前記圧縮空気を異なる方向へ切換えて送風する少なくとも2つの排出弁口を有する切換え弁と、前記切換え弁の一方の排出弁口側と前記ルーツブロワの吸気側とを連結して前記蓄熱器から排出された圧縮空気を前記ルーツブロワへ帰還させる帰還送風管と、前記切換え弁の他方の排出弁口側に連結されて前記蓄熱器から排出された圧縮空気を外部へ送風する送風管と、前記モーターを制御するモーター制御手段を含み前記モーターを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記モーター制御手段により前記モーターを回転させて前記ルーツブロワを作動させて、該ルーツブロワに外気を吸気させると共に圧縮した後に、前記圧縮空気を前記蓄熱器、前記切換え弁及び前記帰還送風管を介して前記ルーツブロワへ帰還させ、再び同じ該ルーツブロワ、前記蓄熱器を経由する循環送風路を少なくとも1回以上循環させた後に、前記送風管から外部へ熱風を送風制御することを特徴とする熱風発生装置。
【請求項2】
前記ルーツブロワは、2葉ルーツブロワ、3葉ルーツブロワ、ベーン式ブロワ、多段ターボブロワのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の温風発生装置。
【請求項3】
前記モーターと前記ルーツブロワとは、電磁クラッチで連結して、前記電磁クラッチは、前記制御装置に設けたクラッチ制御手段により作動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱風発生装置。
【請求項4】
前記ルーツブロワは、吸気口及び吐出口側の少なくともいずれか一方に消音フィルターが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱風発生装置。
【請求項5】
前記蓄熱器には、温度センサーを付設して、前記制御装置は、前記温度センサーからの出力により、前記蓄熱器を所定の一定温度に蓄熱制御することを特徴とする請求項1に記載の熱風発生装置。
【請求項6】
前記蓄熱器は、複数の通風路を有する蓄熱部材を一端に気体吸入口及び他端に気体排出口を有する密閉ケースに収納したものであることを特徴とする請求項1又は5に記載の熱風発生装置。
【請求項7】
前記蓄熱器は、前記密閉ケース内に消音フィルターが収納されていることを特徴とする請求項6に記載の熱風発生装置。
【請求項8】
前記蓄熱部材は、所定の深さ及び高さの凹凸を交互に設けた波型部材に形成すると共に、前記凹凸壁面に熱風の一部を通過させる複数本のスリットが設けられていることを特徴とする請求項7に記載の熱布発生装置。
【請求項9】
前記複数のスリットは、前記凹凸壁面に所定面積の複数の領域が区画されて、前記複数の区画領域に交互に通風風路が異なるものとなっていることを特徴とする請求項8に記載の熱布発生装置。
【請求項10】
前記切換え弁には、弁開閉機構を設けて、前記弁開閉機構によって、前記送風管へ送風量を調節することを特徴とする請求項に記載の熱風発生装置。
【請求項11】
前記送風管には、長尺のホースが連結されて、前記ホースの先端に吹付けノズルが装着されて、前記吹付けノズルにエヤスイッチが付設されて、前記エヤスイッチからのエヤ信号によって熱風が制御されることを特徴とする請求項1に記載の熱風発生装置。
【請求項12】
前記送風管には、前記エヤスイッチからのエヤ信号を伝達するエヤパイプが組込まれていることを特徴とする請求項11に記載の熱風発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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