説明

燃料ガスの深度脱硫のための方法、システム、および装置

メソポーラス基材に配置された金属ベースの吸着剤上にわたってウォーム燃料ガスを通過させることにより、これらのウォームガスの脱硫を可能にする、非常に効果的で再生可能な方法、システム、および装置を開示する。この技術は、燃料ガスの著しい冷却を伴うことなく、フィッシャー・トロプシュ合成触媒および他の硫黄感応触媒を保護する。本発明は、プロセスにおいて単独でまたは他の分離プロセスと共存させて用いることができ、かつそのようなガス中の全硫黄を500ppb未満に、場合によっては50ppbにまで減少させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府により出資される研究および開発の下で成された発明の権利に関する陳述
本発明は、米国エネルギー省によって与えられた契約DE-AC0576RLO1830の下で政府の支援によってなされた。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
石炭またはバイオマスのガス化によって発生される合成ガスは、炭化水素輸送燃料、化学物質(水素を含む)、および電力の生成を含む、多くの想定し得る用途を有する。殆どの合成ガスは、それを様々な最終用途に適さないようにしうる不純物を含有する。硫黄を含有する分子、主にH2SおよびCOSは、燃料および化学物質の生成において10億分の1のレベルまで除去されなければならない特に厄介な触媒毒である。これらの硫黄種を除去するための技術的アプローチは存在するが、これらのアプローチは、一般に、かなり費用がかかるとともに、温度変動を必要とし、多くの場合に補助的な犠牲吸着媒を必要とする傾向がある。燃料および化学物質の生成のための触媒プロセスは、一般に225〜300℃の範囲で作動するため、合成ガスの冷却およびその後の再加熱を必要とするプロセスは、エネルギー効率が悪い。合成工程の温度でまたはそれを幾分上回る温度で硫黄ガスを50ppbレベルまで除去できるプロセスが非常に好ましい。
【0003】
合成ガス組成は、ガス発生器(gasifier)のタイプ、作動条件、および燃料源を含む、幾つかのパラメータの関数である。石炭の場合には、酸化亜鉛と、再生可能な下流側のポリシング床との組み合わせが有望なアプローチである。一般に100ppm未満の硫黄ガスを発生するバイオマスにおいては、独立型の再生可能な硫黄吸着剤が魅力的なアプローチを提供する場合がある。従来、再生可能な金属吸着剤の開発は、一般に、再生プロセス中に金属が焼結するまたは凝集する強い傾向によって妨げられてきた。これは、表面積の損失、したがって硫黄吸着媒の容量の損失をもたらす。したがって、必要とされるものは、燃料ガスの深度(ppb)脱硫を可能にする方法、システム、および装置である。また必要とされるものは、再生可能な脱硫システムである。また必要とされるものは、ウォーム(warm)温度で効果的な脱硫を行う脱硫システムである。本発明は、これらの必要性に対する解決策を提供する。
【0004】
本発明の更なる利点および新規の特徴は、以下のように記載され、本明細書において記載される説明および実証から容易に明らかである。したがって、本発明の以下の説明は、本発明の例示として見なされるべきであり、決して限定的と見なされるべきではない。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、メソポーラス基材に配置された金属ベースの吸着剤上にわたってウォーム燃料ガスを通過させることにより、これらのウォームガスの深度脱硫を可能にする、非常に効果的で再生可能な方法、システム、および装置である。この技術は、燃料ガスの著しい冷却を伴うことなく、および再生プロセス中に金属吸着剤の焼結あるいは凝集を伴うことなく、フィッシャー・トロプシュ合成触媒および他の硫黄感応触媒(sulfur sensitive catalyst)を保護する。これにより、深度脱硫のための更にエネルギー効率の良いプロセスを設計できる。このシステムは、SBA-16などの多孔質基材、特にメソポーラスシリカに対して付着している、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Ag、Pt、Au、ならびにそれらの混合物および合金のような遷移金属(transient metal)などの活性金属ベースの吸着剤を特徴とする。
【0006】
これらの装置は、20〜900℃の温度を有する天然ガス、合成ガス、H2、CO、および炭化水素ガス、炭化水素ガスの混合物、および炭化水素ガスと不活性ガスとの混合物などのウォーム燃料ガスをこれらの吸着剤上にわたって通過させ、それによりppbレベルに至るまでこれらのガスの脱硫を実施するプロセスを可能にする。また、これらの装置は、これらの材料の再生を、その使用後に、100℃〜900℃の温度でH2、CO、O2、N2、空気、不活性ガスおよび様々な組み合わせの蒸気を用いる循環「酸化還元」プロセスによって行うこともできる。これらのプロセスは、プロセスにおいて単独でまたは他の分離プロセスと共存させて用いることができる。高硫黄炭ガス浄化において、ナノ構造の金属ベース吸着剤床は、硫黄をppmレベルまで除去できる別個のプロセス(酸化亜鉛および関連する酸化物吸着媒)に付随させてもよい。その後、本発明は、硫黄をppbレベルまで除去することによってこのガスストリームをポリシングする。本発明は、そのようなガス中の全硫黄を100ppb未満に、場合によっては10ppbにまで減少させることができる。
【0007】
本発明は、ウォーム燃料ガスの脱硫を可能にする制御されたナノポーラス基材上に分散している、安定化された活性金属吸着剤粒子を用いる。本発明の幾つかの態様において、金属ベースの吸着剤は、基材に対して0.1〜100重量パーセントの金属を含む。吸着剤として作用し得る様々なタイプの金属の例には、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Rh、Pd、Ag、Pt、Au、およびそれらの合金が含まれる。この群のうち、特別な成功は、Ni、Cu、Fe、Ag、Co、およびそれらの合金からなる群より選択される遷移金属を用いたシステムにおいて示された。
【0008】
様々なタイプの基材の例には、シリカベースの材料(任意の形態のメソポーラスシリカ、任意の形態のヒュームドシリカ、および任意の形態のゼオライトを含む)が含まれる。これらのタイプの材料は、様々な形態で組み合わされてもよく、天然ガス、合成ガス(石炭合成ガスおよびバイオマス合成ガスの両方を含む)、H2、CO、および他の炭化水素ガス、それらの混合物、および不活性ガスとのそれらの混合物を含むがこれらに限定されない様々なガスを処理するために用いられてもよい。捕捉されうる材料のタイプの例は、H2S、COS、メルカプタン、硫化物、二硫化物、およびチオフェンを含むがこれらに限定されない。
【0009】
これらの金属メソポーラス材料は、大気温度(20℃)〜900℃の範囲内の温度を有するウォーム燃料ガスを効果的に処理できるシステムに組み入れられうる。本発明の一つの態様において、この温度は、好ましくは100℃〜700℃であり、より好ましくは150℃〜500℃である。これらの吸着剤がこの処理プロセスにおいて満たされた後、「酸化還元」処理の組み合わせにより、一連のサイクルにわたって、これらの吸着剤を再生することができる。一般に、この再生工程は、1〜10サイクルで、好ましくは2〜5サイクルで行われる。この「酸化還元」再生プロセスは、金属硫化物を酸化できる任意のガスストリーム(O2および不活性ガスとのその混合物ならびに蒸気など)および金属酸化物を還元できる任意のガスストリーム(H2、CO、合成ガス、および不活性ガスとのそれらの混合物ならびに蒸気など)を使用して行うことができる。そのような形態の例には、酸化性ガスが2%のO2を含むN2である例が含まれる。
【0010】
本発明は、ウォームガスの深度脱硫を可能にする。記載されるメソポーラス構造は、金属粒子凝集および細孔ブロッキングを防止し、活性金属部位へのアクセスを維持する。これらのナノ構造吸着剤は、ウォーム燃料ガスからの硫黄濃度を50ppbをかなり下回るまで減らすことができるとともに、複合酸化・還元プロセスを使用して繰り返し再生させることができる。
【0011】
要約書の目的は、一般に米国特許商標局ならびに公衆、特に科学者、技術者、および特許または法律の用語または言葉遣いに精通していない当技術分野における専門家が、大まかな検討によって出願の技術的開示内容の性質および本質を迅速に決定できるようにすることである。要約書は、特許請求の範囲によって判定される出願の発明を定義しようとするものではなく、本発明の範囲を何ら限定しようとするものでもない。
【0012】
本発明の様々な利点および新規の特徴は、本明細書において記載され、以下の詳細な説明から更に当業者に容易に明らかになる。先の説明および以下の説明では、本発明を実行するために考えられた最良の様式の例示として、本発明の単なる好ましい態様を図示して説明している。言うまでもなく、本発明は、本発明から逸脱することなく様々な観点で変更することができる。したがって、以下に記載される好ましい態様の図面および説明は、事実上、例示と見なされるべきであり、限定的と見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1Aおよび図1Bは本発明の好ましい態様の概略図である。図1Cは図1Aおよび図1Bに示される本発明の好ましい態様のTEM図である。
【図2】図2Aは従来技術の脱硫方法の概略図である。図2Bは本発明の一つの態様の概略図である。
【図3】本発明の一つの態様の硫黄除去容量を示すグラフである。
【図4】本発明の一つの態様に関する試験結果のまとめを示すグラフである。
【図5】一つの再生サイクルを示すチャートである。
【図6】様々な態様および材料の試験結果を示す表である。
【図7】本発明の一態様に関する試験の結果を示すチャートである。
【図8】本発明の第2の態様における試験の結果を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
以下の説明は、本発明の一つの態様の好ましい最良の様式を含んでいる。本発明のこの説明から明らかなように、本発明はこれらの図示の態様に限定されず、本発明は様々な変形およびその態様も含む。したがって、本説明は、例示的と見なされるべきであり、限定的と見なされるべきではない。本発明は様々な変形および別の構成が可能であるが、本発明を、開示された特定の形態に限定しようとする意図はなく、それどころか、特許請求の範囲で規定される本発明の精神および範囲内に入る全ての変形、別の構成、および等価物を本発明が網羅しようとするものであることは言うまでもない。
【0015】
図1〜8は本発明の様々な態様を示している。最初に図1Aおよび図1Bを参照すると、本発明の一つの態様の概略図が示されている。第1の好ましい態様では、合成用途における、ガス発生器に由来する合成ガスの浄化において一般的な用途を見出し得る、再生可能な硫黄ガス吸着剤について説明する。本発明の好ましい態様では、ニッケル(Ni)または銅(Cu)などの金属がナノポーラス材料中で用いられる。このナノポーラス材料は、バルク硫化物形成ではなく表面化学吸着を可能にするとともに、50ppbの最大残留硫黄レベルを得ることができるようにする。金属ベースの硫黄ゲッターを使用しようとする従来の試みは、再生プロセス中に金属が焼結するまたは凝集する強い傾向に主に起因して、犠牲吸着媒に限られてきた。この焼結または凝集プロセスは、表面積の損失および硫黄吸着媒の能力の損失をもたらす。
【0016】
この態様は、小さい金属粒子(Ni-Cu合金を含む)がナノポーラスシリカ構造中に含有されて安定化される、独特な金属ベース吸着媒の構造および用途を示す。小さい金属粒子の隔離および安定化は、焼結および能力損失を最小限に抑えて、複数のサイクルを通じて、完全に詰め込まれた(loaded)吸着剤の再生を可能にする。図1に示される態様では、3次元立方細孔構造メソポーラスシリカ(SBA-16)中に詰め込まれる活性吸着媒材料としてニッケル金属が選択された。高い表面積および優れた化学的不活性を提供することに加えて、SBA 16は、チャネル交差部に比較的大きな孔径(5nm)を有する固有の3次元相互接続チャネル構造(〜3nmの直径)も含んでいた。SBA-16のチャネル交差部を満たすニッケル粒子は、3nmの小さい接続孔径に起因して拘束される。
【0017】
SBA-16の構造は、Ni粒子が焼結するのを防止するとともに、3次元相互接続細孔構造を通じた拡散によって硫黄含有分子がNi粒子に対して容易にアクセスするのを可能にする。本明細書においてはSBA-16について記載したが、言うまでもなく、本発明はそれに限定されず、本発明の精神および範囲内で様々な他のタイプのメソポーラス材料が用いられてもよい。この態様では、ニッケル塩溶液を使用してシリカ担持体の含浸処理を行った後に、乾燥させて空気酸化(焼成)し、その場で還元することによってニッケルが導入された(16.6重量%)。この調製方法を記載しているが、言うまでもなく、本発明は、それに限定されず、それぞれのニーズおよび特定のユーザの必要性にしたがって様々に具体化されてもよい。図1Cは、SBA-16中に16.6重量%のNiを含む新鮮な硫黄吸着媒の透過電子顕微鏡(TEM)画像を示している。
【0018】
使用時、合成ガスなどの燃料ガスのウォームストリームがこれらの吸着剤上にわたって通過する。ここで図2Aおよび図2Bを参照すると、従来技術の方法の概略図である2Aおよび本発明の方法の一つの態様である2Bが示されている。最初に図2Aを参照すると、レクチゾル(Rectisol)プロセスを使用して合成ガスから硫黄を除去するためのハイレベル工程図が示されている。そのようなプロセスは、冷メタノールを使用して-40℃で硫黄除去を可能にするようにガスストリームの温度が変動することを必要とする。そのようなプロセスは、脱硫が行われるようにガスの温度を上げ下げするために達成されなければならない温度スイングに起因して、エネルギー効率が悪い。
【0019】
図2Bは、本発明の方法の一つの態様のハイレベル工程図を示している。ここでは、ZnOおよびNiCuを詰め込んだSBA-16複合吸着剤を使用して、ウォーム合成ガスから深度硫黄除去を行うハイレベル工程図である。このプロセスは、350℃(ZuOベースの床)および300℃(NiCuを詰め込んだSBA-16床)での硫黄除去を示している。650℃(空気/N2を用いた、ZuOベースの床)および500℃(空気/N2および清浄合成ガス/N2の代替処理を用いた、NiCuを詰め込んだSBA-16床)における吸着剤の再生。再生中、ZnO床からのオフガスおよびNiCu-SBA-16床の酸化処理からのオフガスは、硫黄生成のために組み合わされる。還元処理中のNiCu-SBA-16床からのオフガスは、還元剤を酸化し、かつ硫黄を吸収するためにオフガス処理システムを通り抜ける。このオフガスストリームは、S生成のための主要なオフガスストリームと組み合わせることもできる。
【0020】
一つの例では、10ppm H2Sを含有する合成ガスを使用して石炭ガス深度脱硫が行われ(事後ZnO床の典型)、処理されたガス中で100ppb H2Sが観察される前に0.75重量%の硫黄容量が得られた。硫黄-対-Ni原子比率のおおよそな計算から、除去されたH2SはNi表面上の化学吸着によって説明がつき得る(Ni2S表面化学量論を前提とすると、〜1.0重量%の容量)ことが裏付けられる。したがって、バルク硫化ニッケル形成は、硫黄容量全体に大きく寄与する可能性が低い。この反応の結果が図3に示されている。
【0021】
図4は、五つのサイクルにわたるNi-SBA-16吸着剤についての試験結果のまとめを示している。第2サイクルは、おそらく金属再分布に起因して、最も高い硫黄容量を与えた。清浄な合成ガス(14% CO2、38% H2、48% CO)を使用した第3サイクルは、純粋な水素が用いられたときよりも低い後続容量を与えた。0.68重量%の硫黄容量の定常状態性能レベルは、第4および第5サイクルで達せられた。この容量値は、硫黄ガスを3ppm〜50ppbまで下げるために必要とされる再生可能保護床としては幾分低いように見えるが、本発明者らの試験で使用した流速において、再生サイクルと再生サイクルとの間の時間は約100時間である。高硫黄炭ガスを1000ppm〜3ppmまで下げるためのZnOベースの吸着剤については、再生サイクルと再生サイクルとの間の時間は約20時間である。したがって、統合された(integrated)再生可能床において、このNi-SBA-16吸着剤のZnOに対する相対重量は約1〜5である。
【0022】
使用後、一連の酸化還元サイクルによって硫化Ni-SBA-16の再生が行われた。これらのサイクルでは、酸化性ガスが10%の空気を含むArであり、還元性ガスが純粋なH2であった。再生プロセス中の質量分析によるオフガスのモニタリングは、酸化的シーケンスおよび還元的シーケンスの両方の下でSO2が主要な硫黄種であることを示した。この「酸化還元」プロセスは一般に5回繰り返された。このプロセスでは様々な反応が行われた。これらの反応には以下が含まれる。
酸化:Ni2S + 2O2 = 2NiO + SO2 (2)
2Ni2S + 5O2 = 2NiSO4 + 2NiO (3)
2NiO + 2SO2 + O2 = 2NiSO4 (4)
2Ni(バルク) + O2 = 2NiO(バルク) (5)
還元:NiSO4 + H2 = NiO + H2O + SO2 (6)
2NiSO4 + 6H2 = Ni2S + SO2 + 6H2O (7)
NiO(バルクおよび表面) + H2 = Ni(バルクおよび表面) + H2O (8)
3H2 + SO2 = H2S + 2H2O (9)
H2S + 2Ni = Ni2S + H2 (10)
酸化工程中、吸着された硫黄および任意の非硫化ニッケルの両方が酸化される。酸化された硫黄はSO2として部分的に解放されるが、一部の硫酸ニッケルは、表面Ni2Sの直接酸化によってあるいは酸素の存在下でのその後のSO2とNiOとの組み合わせ反応によって残存する。その後の還元工程中、硫酸ニッケルは、直接還元によってまたは還元されたNi部位上での中間体H2S再吸着によって生成される硫化ニッケルと共に、Ni、SO2および水へ変換される。吸着媒床の下流側では硫黄元素は観察されなかった。前記反応スキームは、使用済みの吸着媒を完全に再生するために幾つかの酸化還元サイクルを必要とする。全体的に、この酸化還元再生は、反応の全てが熱力学的に有利であるため、単純な還元再生よりも効果的である。これらの反応を示すグラフが図5に示されている。
【0023】
図6は様々な物質の例および比較を示している。いかなるニッケルも用いることなくSBA-16を使用して対照試験が実行された。硫黄除去は観察されなかった。市販のヒュームド(fumed)SiO2に担持されるNiは、幾らかの再生可能な硫黄容量を示した。しかしながら、この容量は低い。これは、大きなNi粒子が存在し、再生中にNi粒子が凝集して成長するのが容易だからである。異なるメソポーラスSiO2(2次元六角SBA-15)中に担持されたニッケルは、非常に高い第1サイクル硫黄除去容量(3重量%)を与えた。しかしながら、「酸化還元」プロセスを使用して吸着媒を再生することができなかった。TEM分析は、ニッケルが非常に細かい粒子として六角チャネル内に詰め込まれたことを裏付けた。しかしながら、吸着および再生後、ニッケル粒子は、メソ細孔構造から移動して焼結したことが分かった。γ-Al2O3を担持体として使用するNi吸着媒も合成されて検査された。この吸着媒は再生できない1.5重量%の容量を与えた。しかしながら、SBA-16の立方メソ構造は、この用途で最も有効であると見なされる小さいNi粒子の保持のための3次元フレーム構造を与えるようにみえる。しかしながら、この結果は、本発明の様々な態様の全てを網羅しようとするものではない。Niに加えて、他のタイプの材料が特別な利点のために用いられてもよい。
【0024】
SBA-16におけるNiの性能は、少量の銅をニッケルに対して加えることによって更に高めることができる。ニッケルおよび銅は合金を形成するが、合金の表面が還元状態下で銅中に濃縮される傾向があるという形跡が存在する。銅の付加は、Niベースの吸着剤の還元性を高める。結果として、Ni-Cuを伴う還元再生工程において希釈されたH2または合成ガスが使用されてもよいが、純粋な水素がNiと共に必要とされるのは既に分かっており、作動コストがかなり増大する。また、純粋な水素は、一般に、水素が意図的に生成されなければ、ガス発生器合成設備では入手できない。Ni-Cu合金における銅による表面濃縮は、それがNiメタン生成活性を有意に減少させることで知られているため、更なる利点をもたらす。
【0025】
以下の試験条件下でSBA-16中に1.6重量%のCuおよび15.0重量%のNiを含有する吸着媒の硫黄除去-再生性能が図7に示されている。1.6重量%のCuおよび15.0重量%のNiをドープしたSBA-16吸着媒を使用した、ウォーム石炭合成ガスからの硫黄除去。試験条件:T=300℃;石炭ガス組成:23% H2、29% CO、8% CO2、30% H2O、10% He、10ppm H2S;流速:12,000hr-1GHSV。再生条件:500℃において四つの「酸化還元」処理。24,000hr-1GHSVにおける10%の空気を含むAr中での酸化。24,000hr-1GHSVにおける2%のH2を含むAr中での還元(脱硫サイクル1〜5として)、ならびに24,000hr-1GHSVにおける5%のH2O不含およびS不含合成ガスを含むAr中での還元(脱硫サイクル6〜8として)。酸化処理と還元処理との間でのArを用いた3分間のパージ。
【0026】
これらの結果は、8回の脱硫サイクルにわたって約0.75重量%の硫黄の安定した貫流交換容量(breakthrough capacity)が維持されたことを実証しており、この容量は、純粋なニッケル吸着剤を用いて実証される容量に非常に類似する。再生は、還元性ガスとして2%のH2(サイクル1〜5として)および5%の清浄合成ガス(サイクル6〜8として)を使用し、かつ酸化性ガスとして10%の空気を使用して500℃で行われた。それぞれの再生毎に四つの酸化還元処理が行われた。新鮮なNi-Cu-SBA-16を用いたメタン生成は、再生された銅不含ニッケル吸着媒に対して0.16mol%対0.7mol%であった。脱硫中、処理された合成ガス中のCO、CO2、およびH2の濃度変化は観察されなかった。また、純粋なCu-SBA-16が硫黄除去効率に関して評価された。NiサンプルおよびNi-Cuサンプルに非常に類似する高い初期硫黄容量(0.8重量%)が得られたが、SBA-16の閉じ込め細孔構造にもかかわらず、再生後に容量が0.2%未満まで減少した。これは金属Cuの焼結を示している。
【0027】
その後、バイオマスガス発生器からシミュレートされる合成ガスの脱硫に関してNi-Cu-SBA-16吸着剤(15重量%のNi、1.6重量%のCu)の試験が行われた。試験条件:T=300℃;バイオマスガス組成:18% H2、12% CO、10% CO2、50% H2O、4% He、36ppm H2S;流速:12,000hr-1GHSV。再生条件:500℃において四つの「酸化還元」処理。14,000hr-1GHSVにおける空気中での酸化。14,000hr-1GHSVにおける清浄な乾燥合成ガス中での還元。酸化処理と還元処理との間でのArを用いた3分間のパージ。バイオマスベースの合成ガスを用いた硫黄容量は、石炭ベースの合成ガスを用いる場合よりも有意に高く、3倍増の約2.3重量%である。硫化カルボニルが硫黄ガスとして使用された場合にも同様の取り込み容量が得られた。これは非常に肯定的な結果である。なぜなら、酸化亜鉛などの吸着媒は、H2SよりもCOS除去に有効でないからである。供給における高い硫黄濃度は、これらの高い容量に寄与する可能性がある(取り込み容量は、H2S分圧に伴って増大する)が、加えて、蒸気のより高い濃度およびCOのより低い濃度も、より良好な性能に寄与する場合がある。この取り込み容量では、硫黄除去を表面吸着メカニズムによって簡単に説明することができず、硫黄を詰め込んだ吸着剤のXRD分析によって明確に観察された硫化ニッケルのバルク形成を思い起こさなければならない。複数の再生サイクルにわたる性能が図8に与えられており、同図は、酸化還元再生手法が、バルク金属硫化物を用いても同様に有効であることを示している。
【0028】
簡略化された「酸化還元」手法は、多サイクル手法と同程度に有効であることが分かった。この手法は、20時間にわたる空気中における700℃での酸化と、希釈されたまたは希釈されていない清浄な合成ガスストリームなどの還元性ガス中における4時間にわたる500℃での還元との、二つの工程のみを必要とする。700℃では、NiSO4およびCuSO4が安定せず;これらは金属酸化物およびSO2に分解する。結果として、この工程中に、吸着剤上のほぼ全ての硫黄が除去され得る。この新規の手法は、ZnSの高温(〜700℃)酸化を必要とする、使用済みのZnOベースの吸着剤の再生手法と容易に統合させることができる。この再生手法中に起こる主要な反応には、以下が含まれる。
酸化(700℃):NixS +(1 + x/2)O2 = xNiO + SO2 (11)
CuxS +(1 + x/2)O2 = xCuO + SO2 (12)
還元(500℃):NiO + H2 = Ni + H2O (13)
CuO + H2 = Cu + H2O (14)
前述したニッケル・銅を詰め込む形態では、SBA-16のメソポーラス構造中にかなりの割合の空隙が残存する。これは、材料中に金属をより多く詰め込むことができることを示唆し、硫黄吸着容量を増大させるための手段を提供する。より高い容量では、上流側の酸化亜鉛床を必要とすることなく、Ni-Cu-SBA-16吸着剤を独立型の装置として作動させることができる。
【0029】
まとめると、3次元メソ構造シリカSBA-16においてNiおよびNi-Cu合金のナノ粒子をトラップすることにより、本発明者らは、石炭またはバイオマスのいずれかからのガス発生器により生成される合成ガスから、硫黄を50ppb未満のレベルまで除去できる金属ベース吸着媒類を開発した。硫黄化学吸着および(高い取り込みでの)バルク硫化物形成の組み合わせが起こるようにみえる。連続した酸化還元処理は、硫黄を詰め込んだ吸着媒を効果的に再生することができる。この固体吸着媒ベースのアプローチは、大気温度またはより低い温度の溶媒ベースの浄化システムに基づく既存の技術と比べて経済的な利点をもたらすことができる。数千ppmの硫黄を含有する場合がある石炭ベースの合成ガスを相手に、これらの吸着媒を高容量酸化亜鉛吸着媒と組み合わせて使用することができ、それにより、酸化亜鉛のみによってはもたらされ得ない必要なppm以下のポリシング能力が提供される。一般に30〜80ppmの硫黄ガスを含有する場合があるバイオマスベースの合成ガスを相手に、これらの吸着剤は、ppm以下の独立型脱硫システムのための基礎を形成することができる。
【0030】
本発明の様々な好ましい態様が示されて説明されているが、言うまでもなく、この発明は、それに限定されず、添付の特許請求の範囲内において実施されるように様々に具体化されてもよい。以上の説明から分かるように、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができる。
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材上に分散している活性金属ベースの吸着剤を特徴とする、ウォーム(warm)燃料ガスの深度脱硫のためのシステム。
【請求項2】
金属ベースの吸着剤が、基材に対して0.1〜100重量パーセントの金属を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
金属ベースの吸着剤が、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Ag、Pt、Au、およびそれら合金の群より選択される遷移金属(transient metal)を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
シリカベースの材料がメソポーラスシリカである、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
金属ベースの吸着剤が、「酸化還元」処理の組み合わせによって再生可能である、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
多孔質基材上に分散している活性金属ベースの吸着剤上にわたって、ウォーム燃料ガスを通過させる工程を特徴とする、ウォーム燃料ガスを深度脱硫するための方法。
【請求項7】
ウォーム燃料ガスが、天然ガス、合成ガス、H2、CO、および炭化水素ガス、炭化水素ガスの混合物、および炭化水素ガスと不活性ガスとの混合物を含み、かつ前記ウォーム燃料ガスが20〜900℃の温度を有する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
金属ベースの吸着剤を再生する工程を更に含む、請求項6記載の方法。
【請求項9】
金属ベースの吸着剤を再生する工程が、金属硫化物を酸化させる酸化性ガスおよび金属酸化物を還元する還元性ガスストリームを用いた「酸化還元」プロセスに対して、前記金属ベースの吸着剤を供することを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
「酸化還元」再生プロセスが100℃〜900℃の温度で実施される、請求項8記載のシステム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−530473(P2010−530473A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513370(P2010−513370)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/067298
【国際公開番号】WO2008/157580
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(506283798)バッテル メモリアル インスティチュート (19)
【Fターム(参考)】