説明

燃料フィルタ

【課題】所望の流体速度および濾過レベルを維持するために長さを延長する必要のない洗浄流れフィルタを提供する。
【解決手段】燃料フィルタアセンブリ(12)は、洗浄/バリア流れフィルタ(14)内に複数のチューブ(24)を含む。このフィルタは、通常の洗浄流れモードと定期的なバリアモードとで交互に使用されるように設計されている。チューブは、メッシュもしくはスクリーン材料で製造される。洗浄流れモードでは、流れがフィルタを通過するに従っていくらかの流体がチューブの側壁を通って径方向に流出する。側壁は流体から粒子を濾過し、これらの側壁によって阻止された粒子は洗い流されてチューブの第2の端部から流出する。バリアモードでは、洗浄流れが中断され、潜在する全ての異物がスクリーン上に収集される。時間の経過とともにスクリーンの目詰まりが進行し、スクリーンにわたる圧力降下が増加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の並列チューブを使用する燃料濾過用の洗浄流れフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料装置、特に航空機用途の燃料装置では、比較的きれいな燃料が要求される。洗浄流れフィルタは、燃料から異物を濾過する整備不要の装置を提供するために燃料装置で一般的に使用されている。このようなフィルタは、典型的に円筒形または円錐形である。流体流れは、シリンダの一方の端部から流入するとともに反対側の端部から流出する。これらのシリンダは、フィルタとして機能するようにスクリーン材料で構成される。流体がシリンダを通過するにつれて、いくらかの流体はスクリーンを通って径方向に流出する。燃料に含まれる異物は、スクリーンによって捕捉されてシリンダ内に残る。シリンダから径方向に流出した流体は、濾過された燃料である。燃料流れの他の部分は、シリンダに沿って流れ続けるに従ってスクリーンから異物を取り除いて自浄式フィルタを提供する。
【0003】
燃料装置の必要条件によって、洗浄流れフィルタの寸法が決定される。スクリーンの表面積により、フィルタによって得られる濾過の程度が左右される。また、フィルタを通過する流体の速度は、フィルタ材料から異物を洗い流すのに重要である。流体速度は、シリンダの直径によって制御される。従って、異物を洗い流すのに必要な速度によってフィルタの直径が必然的に決まる。チューブの直径が制限されるので、濾過の程度を制御する変数はシリンダの長さである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料装置がより複雑になるにつれて、要求される濾過の程度が増加する。比較的高いレベルの濾過は、シリンダすなわちフィルタの長さを延長する。フィルタが長くなると、利用可能な装置空間内に要求されるフィルタを収容するのが困難になる。
【0005】
よって、所望の流体速度および濾過レベルを維持するために長さを延長する必要のない洗浄流れフィルタが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の燃料フィルタアセンブリは、洗浄流れフィルタ(wash flow filter)内に複数のチューブを含む。フィルタは、ボア内で組み立てられる。複数のチューブが、第1のヘッダから第2のヘッダまで延在する。ボアの外部およびチューブの内部の流体と、ボアの内部でかつチューブの外部の流体と、が混合されるのを防止するために、第1のヘッダに第1のシールが配置される。第2のヘッダは、第1のシールと同様の第2のシールを有する。
【0007】
流体は、第1の端部でフィルタに流入するとともに第2の端部でフィルタから流出する。上記のチューブは、メッシュすなわちフィルタ材料で製造される。よって、流れがチューブを通過するにつれていくらかの流体がチューブの側壁を通って径方向に流出する。側壁は、流体が通過するに従って流体から粒子を濾過して濾過された流体を提供する。より多くの流体が流体通路に沿って流れるに従って、側壁によって阻止された粒子は洗い流されてチューブの第2の端部から流出する。よって、フィルタは自浄式である。チューブの側壁から流出した洗浄流体は、エンジンなどの濾過された燃料を要する装置に導かれる。
【0008】
燃料フィルタアセンブリは、通常の洗浄流れモードとバリアフィルタモードとの2つの異なる動作モードを有する。“バリア”モードでは、フィルタを通過する軸方向流れが遮断され、全ての流れがスクリーンを径方向に通過するように強制的に導かれる。この期間中、スクリーンは、スクリーンの最小開口部よりも大きい全ての異物を収集し、軸方向の洗浄流れが回復して洗浄モードが再開されるまで目詰まりが進行する。スクリーンは、短期間で洗い流されて再び完全にきれいな状態になる。
【0009】
燃料装置の必要条件により、フィルタの寸法が決定される。構成要素のパッケージングによってフィルタの最大直径が定められる。しかし、フィルタから異物を洗い流すためには、フィルタを通過する流体の速度が重要である。流体速度は、フィルタ内の個々のチューブの直径によって制御される。
【0010】
チューブの側壁の表面積により、全体としてフィルタによって得られる濾過の程度が決定される。構成部品のパッケージングは、どちらかというと一定なので、追加のチューブを使用することで設計の自由度が高まる。フィルタに追加のチューブを加えることで、望ましくないフィルタの延長を要することなく、側壁の追加の表面積およびバリアモードの動作における異物保持能力の向上が得られる。チューブは、一定の断面直径を有しうる。また、チューブの長さにわたって断面直径を減少させて、径方向に引き込まれる洗浄流体に関連してチューブ内の流体速度を比較的一定に維持することもできる。
【0011】
複数の洗浄チューブの使用によってフィルタ表面積が増加し、最小の圧力降下でより大きい異物保持能力が得られるとともに、バリアモードの動作において理想的な洗浄速度を得るためにフィルタチューブ寸法を最適化することが可能になる。これにより、フィルタ要素の有効な洗浄と所定のスクリーン面積に対してより小型のフィルタパッケージが確実に得られ、従来のパッケージングに比べて軽量化が可能となる。
【0012】
本発明の上述および他の特徴は、以下の実施形態および図面により明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、通常の洗浄モードにおいて洗浄流れフィルタ14を含むフィルタアセンブリ12を有する燃料装置を示している。壁18には、フィルタ14を収容するボア16が設けられている。フィルタ14は、第1のヘッダ20と第2のヘッダ22とを含む。複数のチューブ24が、第1のヘッダ20から第2のヘッダ22まで延在する。これらのチューブ24は、異物を阻止する材料すなわちメッシュもしくはスクリーン(screen)材料で構成される。ボア16の外部およびチューブ24の内部の流体と、ボアの内部でかつチューブ24の外部の流体と、が混合されないように、第1のヘッダ20に第1のシール26が設けられている。第2のヘッダ22は、第1のシール26と同様の第2のシール28を有する。第2のシール28は、ボア16の外部およびチューブ24の内部の流体とボア16の内部の流体との混合を防止する。
【0014】
図2は、通常の洗浄モードにおける燃料装置10の流体流れを示す概略図である。貯蔵タンク32からの燃料が、入口33を介してフィルタアセンブリ12に入る。燃料は、チューブ24に流入する。燃料の一部は、チューブ24からボア16の内部に流出する。ボアの内部でかつチューブ24の外部の燃料は、通路30によって運ばれてエンジン34における燃焼に使用される。エンジン34は、特に航空機エンジンとすることができる。残りの流体は、チューブ24をまっすぐに通過してフィルタ14の第2の端部から出口戻り管路35に流出する。この流体は、貯蔵タンク32へ戻り、後にフィルタ14を再度通過する。
【0015】
図3は、通常の洗浄モードにおける洗浄流れフィルタ14の一部を示し、単一のチューブ24を示している。流体は、第1の端部36でフィルタ14に流入するとともに第2の端部38でフィルタ14から流出する。流体流れは、矢印Fによって示されている。よって、流れがチューブ24を通過するにつれて、いくらかの流体がチューブ24の側壁40から径方向に流出する。これらの側壁40は、流体が側壁40を通過するに従って流体から粒子を濾過して濾過された燃料を提供する。矢印Rは、側壁40を通過する径方向の流体流れを示す。流体が流体通路Fに沿って流れると、側壁40によって阻止された粒子が洗い流されてチューブ24の第2の端部38から流出する。従って、フィルタ14は自浄式である。チューブ24から径方向に流出した洗浄流体は、ボア16内の通路30を通ってエンジン34に運ばれる。
【0016】
燃料フィルタアセンブリ12は、通常の洗浄流れモードとバリアフィルタモードの2つの異なる動作モードを有する。燃料装置10の一実施例では、フィルタ14を通過する軸方向の洗浄流れを定期的に遮断して、全ての流れが矢印Rで示す径方向でチューブ24を通るように強制的に導かれる。流体通路Fは、第2の端部38で閉鎖され、流体がフィルタ14から出口戻り管路35に流出して貯蔵タンク32に戻るのを防ぐ。これにより、スクリーンは純粋な“バリア”モードとなる。この期間中、スクリーンは、スクリーンの最小開口部よりも大きい全ての異物を収集し、軸方向の洗浄流れが回復して洗浄モードが再開されるまで目詰まりが進行する。洗浄流れの回復は、流体通路Fの第2の端部38が開かれることを意味する。スクリーンは、短期間で洗い流されて再び完全にきれいな状態になる。
【0017】
図4は、洗浄流れフィルタ14の斜視図である。燃料装置の必要条件によって、フィルタ14に要求される濾過レベルと濾過面積が決定される。ボア16の直径および長さにより、フィルタの最大エンベロープが定まる。しかし、流体の異物を洗い流すためには、フィルタ14を通過する流体の速度が重要である。流体速度は、各々のチューブ24の直径Dによって制御される。よって、濾過装置の寸法決めに熟練した者は、最大エンベロープ内に収容される濾過チューブの数および寸法と、ボア16の長さと、を繰り返し試行して所望の洗浄速度および濾過面積を得ることができる。
【0018】
側壁40の表面積は、フィルタ14によって得られる濾過の程度とバリアモードにおける異物保持能力を決定する。バリアモードにおける圧力降下を減少させるとともに異物保持能力を増加させるために、フィルタアセンブリ内で追加のチューブを利用することができる。フィルタ14に追加のチューブを加えることで、望ましくないフィルタ14の延長を要することなく側壁40の追加の表面積が得られる。また、複数のチューブを用いることで直径が小さく維持され、洗浄モードにおいて所望の高い流体速度を維持するのを助ける。図示の実施例では4つのチューブ24が示されているが、当業者であれば分かるようにチューブの数はそれぞれの用途で異なりうる。図示のチューブ24は、一定の断面直径を有する。図5を参照すると、チューブ24の断面直径は、長さLにわたって減少してもよい。これにより、チューブ24から流体が流出するときに、チューブ24内の流体速度が一定に維持される。
【0019】
フィルタ14は、チューブ24の第1の端部36を第1のヘッダ20内に配置し、チューブ24の第2の端部を第2のヘッダ22内に配置することによって組み立てられる。第1のヘッダ20と第2のヘッダ22とは、所要のチューブ24に対してそれぞれ1つの穴42を有するように製造される。また、第1のヘッダ20および第2のヘッダ24の全ての穴が対応するチューブ24を有するまで、各々のチューブ24の第1の端部36を第1のヘッダ20に挿入してから各々のチューブ24の第2の端部38を第2のヘッダ22に挿入することもできる。
【0020】
本発明の好適実施例を開示したが、当業者であれば特定の改良も本発明の範囲内に含まれることが分かるであろう。よって、本発明の真の範囲と趣旨を定めるためには請求項の検討が必要である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る洗浄流れフィルタとボアのアセンブリの側面図である。
【図2】燃料濾過装置を通る流体流れの概略図である。
【図3】本発明に係る洗浄流れフィルタの一部を通る流体流れの概略図である。
【図4】本発明に係る洗浄流れフィルタの一実施例の斜視図である。
【図5】本発明に係る洗浄流れフィルタの円錐形のフィルタチューブの説明図である。
【符号の説明】
【0022】
10…燃料装置
12…フィルタアセンブリ
14…フィルタ
16…ボア
18…壁
20…第1のヘッダ
22…第2のヘッダ
24…チューブ
26…第1のシール
28…第2のシール
30…通路
33…入口
35…出口戻り管路
F…流体流れ
R…径方向の流体流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部と第2の端部とをそれぞれ有する複数のフィルタチューブと、
第1の端部において前記複数のフィルタチューブを連結するヘッダと、
第2の端部において前記複数のフィルタチューブを連結する第2のヘッダと、を有することを特徴とする燃料フィルタ。
【請求項2】
前記複数のフィルタチューブは、それぞれ円筒形であることを特徴とする請求項1記載の燃料フィルタ。
【請求項3】
前記複数のフィルタチューブは、同じ直径をそれぞれ有することを特徴とする請求項2記載の燃料フィルタ。
【請求項4】
前記複数のフィルタチューブは、変動する断面直径をそれぞれ有することを特徴とする請求項1記載の燃料フィルタ。
【請求項5】
前記断面直径は、第1の端部から第2の端部へ向かって減少していることを特徴とする請求項4記載の燃料フィルタ。
【請求項6】
前記複数のフィルタチューブは、同じ長さをそれぞれ有することを特徴とする請求項1記載の燃料フィルタ。
【請求項7】
前記フィルタは、通常の洗浄モードとバリアモードとのいずれかの状態であり、該フィルタは、前記洗浄モードにおいて自浄式であることを特徴とする請求項1記載の燃料フィルタ。
【請求項8】
前記複数のチューブにより、前記バリアモードにおいて異物保持能力が増加するとともに圧力降下が最小になることを特徴とする請求項7記載の燃料フィルタ。
【請求項9】
前記複数のチューブは、該複数のチューブを洗浄するために流体の洗浄流れ速度を維持することを特徴とする請求項1記載の燃料フィルタ。
【請求項10】
複数の開口部を有する第1のヘッダと、
第1のヘッダの複数の開口部と連通する第1の端部をそれぞれ有する複数のフィルタチューブと、
第2の複数の開口部を有する第2のヘッダと、を有し、前記複数のフィルタチューブは、第2の複数の開口部と連通する第2の端部をそれぞれ有することを特徴とする燃料フィルタ。
【請求項11】
前記複数のフィルタチューブは、それぞれ円筒形であることを特徴とする請求項10記載の燃料フィルタ。
【請求項12】
前記複数のフィルタチューブは、同じ直径をそれぞれ有することを特徴とする請求項11記載の燃料フィルタ。
【請求項13】
前記複数のフィルタチューブは、変動する断面直径をそれぞれ有することを特徴とする請求項10記載の燃料フィルタ。
【請求項14】
前記断面直径は、第1の端部から第2の端部に向かって減少していることを特徴とする請求項13記載の燃料フィルタ。
【請求項15】
前記複数のフィルタチューブは、同じ長さをそれぞれ有することを特徴とする請求項10記載の燃料フィルタ。
【請求項16】
燃料タンクと、
前記燃料タンクに並列に連結された複数のフィルタチューブを有する燃料フィルタと、
前記燃料フィルタから濾過された燃料を受け入れるように該燃料フィルタに連結されたエンジンと、
濾過されていない燃料を前記燃料タンクに戻すように前記燃料フィルタと該燃料タンクとを連結するフィルタ戻り管路と、を有することを特徴とするエンジン。
【請求項17】
前記エンジンは、航空機エンジンであることを特徴とする請求項16記載のエンジン。
【請求項18】
前記複数のフィルタチューブは、それぞれ円筒形であることを特徴とする請求項16記載のエンジン。
【請求項19】
前記複数のフィルタチューブは、同じ直径をそれぞれ有することを特徴とする請求項18記載のエンジン。
【請求項20】
前記複数のフィルタチューブは、変動する断面直径をそれぞれ有することを特徴とする請求項19記載のエンジン。
【請求項21】
前記断面直径は、第1の端部から第2の端部に向かって減少していることを特徴とする請求項20記載のエンジン。
【請求項22】
前記複数のフィルタチューブは、同じ長さをそれぞれ有することを特徴とする請求項16記載のエンジン。
【請求項23】
前記複数のフィルタチューブは、第1のヘッダの第1の複数の開口部の1つに配置された第1の端部と、第2のヘッダの第2の複数の開口部の1つに配置された第2の端部と、をそれぞれ有することを特徴とする請求項16記載のエンジン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−132343(P2007−132343A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293787(P2006−293787)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.