説明

燃料ポンプの取付構造

【課題】燃料ポンプの取付構造において、歩行者保護のためにボンネットと内燃機関との間隙を十分に確保する技術を提供する。
【解決手段】燃料噴射弁に燃料を供給する燃料ポンプ6の内燃機関1への取付構造であって、内燃機関1のシリンダヘッド3の車両後方側の側面に燃料ポンプ6を取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ポンプを内燃機関へ取り付ける燃料ポンプの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筒内の燃料噴射弁から燃料を噴射するために高い燃圧が必要な内燃機関においては、燃圧を高めるために燃料ポンプが備えられる。燃料ポンプは、内燃機関内上部に配置されたカムシャフトから駆動力を得るため、内燃機関上部のヘッドカバーに取り付けられていた。
【0003】
しかし、燃料ポンプがヘッドカバーに取り付けられている場合には、燃料ポンプの振動がヘッドカバーに伝わり易く、騒音が生じ易かった。
【0004】
そのため、図2に示すように、内燃機関101において、燃料ポンプ106の振動に起因する騒音を抑制するべく、燃料ポンプ106を、ヘッドカバー102に形成した挿通孔114を挿通してシリンダヘッド103に締結ボルト110で固定する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ところで、近年では、車両における安全性向上が求められており、歩行者保護の観点から、歩行者がボンネットに衝突した際の衝撃を吸収できるだけのボンネットの変形しろを、車両のボンネットとエンジンルーム内に配置される内燃機関との間隙において確保することが望まれている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術においては、図2に示すように、燃料ポンプ106は内燃機関101の上方に突出してボンネットラインB側に接近してしまうため、間隙S’が狭く、ボンネットと内燃機関101との間隙を十分に確保することができなかった。
【特許文献1】特開2004−28079号公報
【特許文献2】特開2004−270557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、燃料ポンプの取付構造において、歩行者保護のためにボンネットと内燃機関との間隙を十分に確保する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にあっては、以下の構成を採用する。すなわち、
燃料噴射弁に燃料を供給する燃料ポンプの内燃機関への取付構造であって、
前記内燃機関の側面に前記燃料ポンプを取り付けたことを特徴とする燃料ポンプの取付構造である。
【0009】
これによると、燃料ポンプは内燃機関の側面に取り付けられ、内燃機関の上方に突出することがない。よって、車両のボンネットとエンジンルーム内に配置される内燃機関との間隙が、歩行者がボンネットに衝突した際の衝撃を吸収できるだけのボンネットの変形しろを確保できる。このように、歩行者保護のためにボンネットと内燃機関との間隙を十分に確保できる。
【0010】
シリンダヘッドのカムシャフトを支持するカムキャリアを備え、前記カムキャリアに前
記燃料ポンプを直接固定するとよい。
【0011】
これによると、カムキャリアが高い剛性を有することから、カムキャリアに燃料ポンプが直接固定されることで、燃料ポンプの作動時の振動はカムキャリアに吸収され、燃料ポンプの振動に起因する騒音を抑制でき、静粛性を向上できる。
【0012】
前記燃料ポンプの燃料を圧送するポンプリフタをガイドするリフタガイドを前記カムキャリアに設けるとよい。
【0013】
これによると、剛性の高いカムキャリアにリフタガイドが設けられるため、リフタガイドの加工精度が向上し、ポンプリフタを良好に稼動させることができると共に、リフタガイドの加工が容易になり、生産性が向上する。
【0014】
また、リフタガイドを配置することによる肉厚となる部分がカムキャリアに設けられることになり、リフタガイドをヘッドカバーに設ける場合に比して内燃機関の重心を下げることができ、内燃機関が安定する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、燃料ポンプの取付構造において、歩行者保護のためにボンネットと内燃機関との間隙を十分に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の具体的な実施例を説明する。
【0017】
<実施例1>
図1は、本実施例に係る燃料ポンプの取付構造を適用する内燃機関の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、内燃機関1の上部側から、ヘッドカバー2、シリンダヘッド3、シリンダブロック4、及びクランクケース5を備えている。また、内燃機関1の上方の図1に示すBはボンネットラインである。図1上紙面左側が車両前方である。
【0018】
ここで、内燃機関1は、4つの気筒を有する水冷式の4サイクル・ディーゼル機関であり、各気筒の燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁を備えている。この燃料噴射弁から燃料を噴射するために高い燃圧が必要であり、燃圧を高めるために燃料ポンプ6が備えられる。
【0019】
本実施例の燃料ポンプ6は、図1に示すように、内燃機関1のシリンダヘッド3の車両後方側の側面に取り付けられている。
【0020】
燃料ポンプ6が内燃機関1の側面に取り付けられていると、内燃機関1の上方に燃料ポンプ6が突出しないので、内燃機関1の高さを低くできる。よって、図1に示すようにボンネットラインBと内燃機関1上部との間隙Sが大きくとれる。つまり、車両のボンネットとエンジンルーム内に配置される内燃機関1との間隙が、歩行者がボンネットに衝突した際の衝撃を吸収できるだけのボンネットの変形しろを確保できる。このように、歩行者保護のためにボンネットと内燃機関1との間隙を十分に確保できる。
【0021】
また、燃料ポンプ6が内燃機関1の側面に取り付けられていると、燃料ポンプ6から内燃機関1のシリンダヘッド3の下部において燃料噴射弁に接続されるデリバリパイプ7までの燃料パイプ8の経路が、燃料ポンプ6が図2のように内燃機関1上部に取り付けられている場合に比して短縮でき、燃料パイプ8の容積が低減できる。よって、内燃機関1の始動時の燃圧の昇圧性が向上できるので、始動時に燃圧が足りずに燃料を噴射してしまう
ことで生じるスモークを低減できる。
【0022】
なお、本実施例では、内燃機関1のシリンダヘッド3の車両後方側の側面に燃料ポンプ6が取り付けられている。しかし、これに限られず、燃料ポンプ6が内燃機関1の上方に突出しない構成であればよく、例えば内燃機関1のシリンダヘッド3の車両左右の側面などに燃料ポンプ6が取り付けられていてもよい。
【0023】
そして、燃料ポンプ6は、内燃機関1のシリンダヘッド3内のカムシャフト(不図示)を支持するカムキャリア9に締結ボルト10で直接固定される。
【0024】
ここで、カムキャリア9は、カムシャフトを支持するため、高い剛性を有する。このため、カムキャリア9に燃料ポンプ6が直接固定されることで、燃料ポンプ6の作動時の振動はカムキャリア9に吸収され、振動が他の部材に伝達することが防止できる。よって、燃料ポンプ6の振動に起因する騒音を抑制でき、静粛性を向上できる。
【0025】
燃料ポンプ6が燃圧を高めて燃料を送り出すために、高圧ポンプリフタ11が、ポンプカム12の駆動によって往復運動して燃圧を高め、燃料を圧送する。高圧ポンプリフタ11を駆動するポンプカム12は、シリンダヘッド3内のカムシャフトによって回転駆動され、高圧ポンプリフタ11を押す。
【0026】
ここで、高圧ポンプリフタ11は、リフタガイド13に摺動してガイドされている。リフタガイド13は、燃料ポンプ6が直接固定されるカムキャリア9に設けられている。リフタガイド13と燃料ポンプ6との間は、Oリング14でシールされている。
【0027】
このように剛性の高いカムキャリア9にリフタガイド13が設けられるため、リフタガイド13の加工精度が向上し、高圧ポンプリフタ11を良好に稼動させることができると共に、リフタガイド13の加工が容易になり、生産性が向上する。
【0028】
また、リフタガイド13を配置することによる肉厚となる部分がカムキャリア9に設けられることになり、図2のように燃料ポンプを内燃機関上部に取り付けたためにリフタガイドをヘッドカバーに設ける場合に比して内燃機関1の重心を下げることができ、内燃機関1が安定する。
【0029】
本発明に係る燃料ポンプの取付構造は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1に係る内燃機関を示す図である。
【図2】従来技術の内燃機関を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 内燃機関
2 ヘッドカバー
3 シリンダヘッド
4 シリンダブロック
5 クランクケース
6 燃料ポンプ
7 デリバリパイプ
8 燃料パイプ
9 カムキャリア
10 締結ボルト
11 高圧ポンプリフタ
12 ポンプカム
13 リフタガイド
14 Oリング




【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射弁に燃料を供給する燃料ポンプの内燃機関への取付構造であって、
前記内燃機関の側面に前記燃料ポンプを取り付けたことを特徴とする燃料ポンプの取付構造。
【請求項2】
シリンダヘッドのカムシャフトを支持するカムキャリアを備え、前記カムキャリアに前記燃料ポンプを直接固定したことを特徴とする請求項1に記載の燃料ポンプの取付構造。
【請求項3】
前記燃料ポンプの燃料を圧送するポンプリフタをガイドするリフタガイドを前記カムキャリアに設けることを特徴とする請求項2に記載の燃料ポンプの取付構造。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−13803(P2009−13803A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173912(P2007−173912)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)