説明

燃料供給装置

【課題】ポンプ作動音の燃料タンク外部への伝播を抑制してポンプ作動音を低減できる燃料供給装置を提供する。
【解決手段】燃料タンク2内に配置され、インペラ47が回転することで燃料タンク2内の燃料を吸引して内燃機関へと圧送する燃料ポンプ3を備え、燃料ポンプ3に、インペラ47の回転軸30bに沿って燃料ポンプ3の内外を連通する燃料吸入口41が形成されている燃料供給装置1であって、燃料吸入口41には、燃料ポンプ3内に燃料を導入する燃料導入管51が接続され、燃料導入管51内には、燃料吸入口41の投影面上に、燃料吸入口41の開口面41aと対向する上面63aを有する作動音低減部材63が設けられていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動二輪車や自動四輪車等の車両用の燃料供給装置として、燃料タンク内に燃料ポンプを設けた、いわゆるインタンク式の燃料供給装置が用いられる。インタンク式の燃料供給装置は、フランジユニットを燃料ポンプの上部に配置して燃料タンクの上壁に取り付ける構造のもの(以下「上付タイプ」という)と、フランジユニットを燃料ポンプの下部に配置して燃料タンクの底壁に取り付ける構造のもの(以下「下付タイプ」という)と、に大きく分類される。
【0003】
上述した燃料供給装置のうち下付タイプの燃料供給装置は、燃料ポンプと、燃料タンク内に設けられて燃料ポンプを外側から覆うアッパーカップと、アッパーカップの下端に設けられて燃料タンクに取り付けられるフランジユニットと、を備えている。燃料ポンプは、電動モータと、電動モータによって回転駆動させられるインペラとを有しており、インペラが回転することにより、燃料吸入口から燃料を吸引している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
フランジユニットの内周面と燃料ポンプとで囲まれた空間は、燃料が貯留されるリザーバ部として機能している。リザーバ部内には、燃料ポンプ内への異物の吸引を防止するためのフィルタが設けられている。
【0005】
また、下付けタイプの燃料供給装置では、濾過面積の確保のし易さや、フィルタの交換のし易さ等の観点から、フィルタをリザーバ部内ではなく燃料タンクの外部に設け、フィルタとリザーバ部内とを配管を介して接続する別体フィルタ方式が提案されている。
燃料ポンプの電動モータが駆動されると、インペラが回転し、このインペラの回転に伴って燃料タンクから燃料が吸引される。吸引された燃料は、リザーバ部内から配管を介してリザーバ部外のフィルタへ流入して濾過される。その後、燃料は、燃料導入管を通り燃料吸入口を介してインペラ内に吸引された後、燃料吐出管から内燃機関の燃料供給系に送給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−174895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年の車両には、質感の向上等を目的として静粛性が要求されている。このため、エンジン始動装置や車両用発電機等の各部品の作動音が課題となる場合がある。燃料供給装置においては、インペラが回転して燃料を攪拌する際に発生する音(以下、「ポンプ作動音」という。)が燃料吸入口を介して燃料タンク外部へ伝播してしまうという課題がある。
【0008】
ここで、フィルタは、メッシュ状のナイロン等により形成されており、柔軟性に優れている。したがって、リザーバ部内にフィルタが配置されている場合には、ポンプ作動音はフィルタにより減衰されて、燃料タンク外部への伝播が抑制される。
これに対し、リザーバ部外にフィルタが設けられた別体フィルタ方式にあっては、燃料吸入口から外部に向かって発生するポンプ作動音が燃料導入管に衝突し、この燃料導入管を介してポンプ作動音が外部に伝播してしまう。
また、車両には、更なる静粛性が要求されている。したがって、フィルタの配置がリザーバ部内であるかリザーバ部外であるかに関わらず、ポンプ作動音の燃料タンク外部への伝播を抑制し、更なるポンプ作動音の低減が望まれている。
【0009】
そこで本発明は、ポンプ作動音の燃料タンク外部への伝播を抑制してポンプ作動音を低減できる燃料供給装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の請求項1に係る燃料供給装置は、燃料タンク内に配置され、インペラが回転することで前記燃料タンク内の燃料を吸引して内燃機関へと圧送する燃料ポンプを備え、前記燃料ポンプに、前記インペラの回転軸に沿って前記燃料ポンプの内外を連通する燃料吸入口が形成されている燃料供給装置であって、前記燃料吸入口には、前記燃料ポンプ内に前記燃料を導入する燃料導入管が接続され、前記燃料導入管内には、前記燃料吸入口の投影面上に、前記燃料吸入口の開口面と対向する面を有する作動音低減部材が設けられていることを特徴としている。
【0011】
本発明によれば、作動音低減部材は、燃料吸入口の投影面上において燃料吸入口の開口面と対向する面を有しているので、燃料吸入口から放出されたポンプ作動音の振動を作動音低減部材で受けることができる。そして、作動音低減部材を軟質な材質で形成することにより、ポンプ作動音の振動を減衰できる。したがって、燃料導入管を介してポンプ作動音が燃料タンク外部へ伝播するのを抑制し、ポンプ作動音を低減できる。
【0012】
また、本発明の請求項2に係る燃料供給装置は、前記燃料タンクの底壁に取り付けられ、前記燃料ポンプを支持するとともに、前記燃料導入管が形成されたケースと、前記ケースの外部に前記燃料導入管を介して取り付けられ、前記燃料ポンプに吸入される前記燃料を濾過するためのフィルタユニットとを備えていることを特徴としている。
【0013】
本発明によれば、燃料タンクの底壁に取り付けられる燃料供給装置に、上述の構造を適用できる。とりわけ下側にケースが設けられている、いわゆる下付けタイプの燃料供給装置に好適に用いることができる。したがって、燃料タンクの底壁に固定される燃料供給装置で、ポンプ作動音の燃料タンク外部への伝播を抑制し、ポンプ作動音を低減できる。
また、フィルタユニットがケースの外部に設けられた、いわゆる別体フィルタ方式の燃料供給装置であっても、作動音低減部材を備えることでポンプ作動音の振動を良好に減衰できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、作動音低減部材は、燃料吸入口の投影面上において燃料吸入口の開口面と対向する面を有しているので、燃料吸入口から放出されたポンプ作動音の振動を作動音低減部材で受けることができる。そして、作動音低減部材を軟質な材質で形成することにより、ポンプ作動音の振動を減衰できる。したがって、燃料導入管を介してポンプ作動音が燃料タンク外部へ伝播するのを抑制し、ポンプ作動音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態の燃料供給装置の斜視図である。
【図2】実施形態の燃料供給装置の斜視図である。
【図3】図1のA−A線の沿った断面図である。
【図4】フランジユニット4の斜視図である。
【図5】図1のA−A線に沿った断面図であって、作動音低減部材周辺の拡大図である。
【図6】実施形態の変形例の説明図である。
【図7】燃料供給装置の作用の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、実施形態の燃料供給装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、後述する燃料ポンプ3の中心軸を中心軸Cとし、この中心軸Cに沿ったアッパーカップ25側を上側といい、フランジユニット4側を下側という。また、中心軸Cに直交する方向を径方向といい、中心軸C回りに周回する方向を周方向という。
【0017】
(燃料供給装置)
図1および図2は燃料供給装置1の外観斜視図である。また、図3は図1のA−A線に沿った断面図である。
図1に示すように、本実施形態の燃料供給装置1は、いわゆる下付けタイプのものであって、燃料タンク2の底壁2b(図3参照)に形成されている開口部2aから挿入され、燃料タンク2の底壁2bに取り付けられている。燃料供給装置1は、燃料タンク2内に配置される燃料ポンプ3(図3参照)と、燃料ポンプ3に上方から外挿されるアッパーカップ25と、燃料タンク2の底壁2bに取り付けられ、燃料ポンプ3を下方から支持するフランジユニット4(請求項の「ケース」に相当。)と、を備えている。
【0018】
(燃料ポンプ)
図3に示すように、燃料ポンプ3は、中心軸Cに沿う方向が上下方向に一致した略円柱形状に形成されており、上側に設けられたモータ部30と、下側に設けられたポンプ部40と、を有している。また、燃料ポンプ3の外周面は、例えば金属からなる略円筒状のハウジングケース33により形成されている。
【0019】
モータ部30には、例えば、ブラシ(不図示)付きの直流モータ30aが使用される。
モータ部30における径方向の中央には、上下方向に沿って延在する回転軸30bが配置されており、モータ部30の上側とポンプ部40の下側とで回転自在に軸支されている。
図1に示すように、モータ部30の上側には、ブラシと電気的に接合している一対のモータ端子32が、中心軸Cを間に挟んで径方向で対向する位置において、中心軸Cと略平行に立設されている。一対のモータ端子32は、アッパーカップ25の上壁25bから上方に向けて突出して、この突出部分にハーネス6の一方側が接続されている。なお、ハーネス6の他方側は、燃料ポンプ3の下側においてコネクタ端子34の一端側34a(図2参照)に接続されている。そして、ハーネス6により外部電源とモータ部30とが電気的に接続され、外部電源からモータ部30を駆動するための電力が供給される。
【0020】
図3に示すように、モータ部30の上側は、モータ部30の下側よりも若干縮径され、この縮径部分に段部30cが形成されている。段部30cには、上述したハウジングケース33の上端がカシメられている。
また、モータ部30の上側には、燃料を排出する排出ポート31と、この排出ポート31と連通するチェックバルブ74と、が設けられている。排出ポート31及びチェックバルブ74は、後述する燃料流路ユニット58に接続されている。
チェックバルブ74は、排出ポート31から排出された燃料が、燃料流路ユニット58から燃料ポンプ3内に逆流しないようにするためのものである。
【0021】
ポンプ部40は、インペラ47を有する非容積型のポンプが用いられており、インペラ47と、インペラ47の全体を覆うように形成されたポンプケース45と、により構成されている。
インペラ47は、樹脂からなる略円板状に形成された部材である。インペラ47の略中央には、挿通孔47cが形成されており、直流モータ30aの回転軸30bが挿通されている。すなわち、直流モータ30aの回転軸30bは、インペラ47の回転軸30bとなっている。
【0022】
インペラ47の上面及び下面における外周側には、複数の羽根部(不図示)が形成されており、複数の羽根部の間は、インペラ47の下面と上面とを貫通している。また、インペラ47の挿通孔47cと羽根部との間には、インペラ47の下面と上面とを貫通する燃料流路孔(不図示)が形成されている。直流モータ30aが駆動されてインペラ47が回転することにより、燃料は燃料流路孔を通過してインペラ47の下側から上側に向かって圧送される。
【0023】
ポンプケース45は、インペラ47の上下および側方を覆うように配置されている。ポンプケース45の下面45aの外周縁には、段部48が形成されている。段部48は、ポンプケース45の下面45a側を縮径させることにより形成される。段部48内には、シール部材としての角リング46が装着されている。そして、段部48には、角リング46を間に挟んで、ハウジングケース33の下端がカシメられている。
【0024】
ポンプケース45における下面45aの外周側には、下方に向けて突出した燃料吸入口41が形成されている。燃料吸入口41は略円筒状に形成されており、燃料吸入口41の内側が燃料の通路となっている。燃料吸入口41には、後述する後述するフランジユニット4の燃料導入管51が接続されている。燃料吸入口41の外周面にはOリング42が設けられており、燃料吸入口41と燃料導入管51との間のシールを確保している。
【0025】
(アッパーカップ)
図1に示すように、アッパーカップ25は、耐油性に優れた樹脂により形成されるとともに、下方に向けて開放された有底筒状の部材であり、例えばインジェクション成型等により形成される。
アッパーカップ25の上側には、液面検出器60の取付部61が形成されている。取付部61は、径方向外側に向かって延出された板状に形成されており、アッパーカップ25を形成する際、同時にインジェクションにより成型される。液面検出器60は、取付部61にスナップフィット等により固定される。
【0026】
図2に示すように、アッパーカップ25は、燃料ポンプ3(図3参照)に外挿される筒部24を有している。筒部24は、下側に配置された大径部26と、上側に配置された小径部27とを備えている。
大径部26の外周面には、径方向外側に突出した係合凸部25aが形成されている。これらアッパーカップ25の係合凸部25aと、後述するフランジユニット4の係合孔15bとによって、両者がスナップフィットし、アッパーカップ25とフランジユニット4とが一体化される。
【0027】
図3に示すように、アッパーカップ25の内側には、燃料ポンプ3から吐出された燃料が通る燃料流路ユニット58が設けられている。燃料流路ユニット58は、径方向から見た断面が略L字状に形成されている。燃料流路ユニット58は、上述したチェックバルブ74、およびプレッシャレギュレータ76にそれぞれ連通している。
【0028】
プレッシャレギュレータ76は、アッパーカップ25の小径部27の内側において、中心軸Cを挟んでチェックバルブ74とは反対側に設けられている。プレッシャレギュレータ76は、燃料流路ユニット58内の燃圧を一定に保つためのものであり、燃料流路ユニット58内に余剰な燃圧が発生した場合に、燃料流路ユニット58内の燃料を後述するリザーバ部11に排出している。
【0029】
(フランジユニット)
図4は、フランジユニット4の斜視図である。
フランジユニット4は、耐油性に優れた樹脂等からなる部材であり、インジェクションにより成型される。
フランジユニット4は、略円盤形状のフランジ部12と、フランジ部12の上側に形成される係合部15と、有底筒状のユニット本体10とにより構成されている。
【0030】
フランジ部12には、燃料タンク2の開口部2aに対応する部位に、環状部13が形成されている。燃料タンク2にフランジ部12を取付けることで、フランジ部12よりも下側が燃料タンク2の外部に露出し、フランジ部12よりも上側が燃料タンク2内の燃料に浸漬された状態になる。なお、フランジ部12と燃料タンク2の底壁2bとの間には、ゴム等からなるシール部材(不図示)が設けられており、燃料供給装置1と燃料タンク2との間のシール性を確実に確保できるようになっている。
【0031】
フランジ部12の上側には、アッパーカップ25の係合凸部25aと係合する係合部15が設けられている。係合部15は、軸方向からみて略円形状に形成されている。係合部15の周縁には、上側に突出する係合片15aが複数個所(本実施形態では4箇所)形成されている。係合片15aは、先端側が拡径する方向に向かって弾性変形可能に形成されている。また、係合片15aには、アッパーカップ25に形成されている係合凸部25aと係合可能な係合孔15bが形成される。アッパーカップ25に係合部15をスナップフィットさせて、フランジユニット4とアッパーカップ25とを固定している
【0032】
フランジユニット4のユニット本体10は有底筒状に形成されており、燃料ポンプ3の下側から燃料ポンプ3に外挿される。ユニット本体10の内周面10aは、燃料ポンプ3の外径よりも大径となるように設定されており、ユニット本体10の内周面10aと燃料ポンプ3の外周面との間にはクリアランスが形成される。このクリアランスにより、プレッシャレギュレータ76とリザーバ部11とを連通する、燃料のリターン流路が形成される。
【0033】
図3に示すように、ユニット本体10の内側には、ユニット本体10の内周面10aと底面10bとによりスペースが形成されている。このスペースは、燃料が貯留されるリザーバ部11として機能している。
また、ユニット本体10の外側には、外部電源と電気的に接続されるコネクタ14(図2参照)と、燃料の流路となる燃料吐出管57、フィルタ導入管52(図2参照)および燃料導入管51と、が形成されている。
【0034】
図2に示すように、コネクタ14は、有底筒状に形成されており、径方向外側に開口するコネクタ嵌合面を有している。コネクタ14の内部にはコネクタ端子34が設けられており、コネクタ端子34の一端側34aは、中心軸Cに沿ってフランジ部12の上側に突出している。コネクタ端子34の一端側34aにはハーネス6が接続され、外部電源からモータ部30および液面検出器60に対して電力が供給される。
また、コネクタ端子34の他端側34bは、開口するコネクタ嵌合面の内側において径方向外側に突出している。このコネクタ端子34の他端側34bには、外部電源(不図示)に電気的に接続された外部コネクタ(不図示)が嵌着される。
【0035】
図3に示すように、燃料吐出管57は、コネクタ14(図2参照)に対して周方向で約90°異なる位置に配置されており、車両の内燃機関(不図示)に連通している。また、燃料吐出管57は、フランジユニット4の内側を上方に向かって延在しており、上述した燃料流路ユニット58と接続されている。
【0036】
図1に示すように、フィルタ導入管52は、コネクタ14(図2参照)に対して、径方向で対向する位置(周方向で約180°異なる位置)に配置されている。フィルタ導入管52は、リザーバ部11内と、リザーバ部11の外部に設けられたフィルタユニットとを連通している。リザーバ部11内に貯留された燃料は、フィルタ導入管52を通じて、フィルタユニットに導入されている。
【0037】
図3に示すように、燃料導入管51は、燃料吐出管57に対して径方向で対向する位置(周方向で約180°異なる位置)に配置されている。燃料導入管51は、径方向から見た断面が略L字状に形成されており、径方向に沿って配置された第1導入管51aと、中心軸C方向に沿って配置された第2導入管51bとを有している。
第1導入管51a側には、不図示の配管等を介して、リザーバ部11の外部に設けられたフィルタユニットが接続されている。
第2導入管51b側には、ポンプ部40の燃料吸入口41が装着されている。第2導入管51bの内径は、燃料吸入口41の外径よりも若干大きく形成されており、第2導入管51b内に燃料吸入口41が挿入されている。これにより、燃料導入管51は、ポンプ部40の燃料吸入口41と、リザーバ部11の外部に設けられたフィルタユニットとを連通している。
【0038】
図5は、図1のA−A線に沿った断面図であって、作動音低減部材63周辺の拡大図である。
図5に示すように、燃料導入管51の内壁には、燃料吸入口41の投影面上に凹部51cが形成されている。凹部51cには、作動音低減部材63が配置されている。
作動音低減部材63は、ゴム等の軟質な材料により形成されている。作動音低減部材63は、中心軸C方向から見て略円形状をした平板部材であり、1mm〜2mmの厚さに形成されている。作動音低減部材63の直径は、燃料吸入口41の外径と略同一に形成されている。燃料吸入口41の投影面上に形成された凹部51c内に作動音低減部材63が配置されることで、作動音低減部材63も燃料吸入口41の投影面上に配置される。
作動音低減部材63の上面63aは、平面に形成されている。作動音低減部材63の上面63aは、燃料吸入口41の開口面41aと対向して配置される。
【0039】
燃料吸入口41の開口面41aと、作動音低減部材63の上面63aとの間には、スペーサ64が配置されている。スペーサ64は、例えば耐油性に優れた樹脂や金属等からなる略円筒状の部材である。スペーサ64の外径は、作動音低減部材63の直径および燃料吸入口41の外径と略同一に形成されている。スペーサ64は、第2導入管51bと同心に配置されて第2導入管51bに内挿されている。
【0040】
スペーサ64の中心軸Cに沿う方向の長さは、燃料吸入口41の開口面41aと、作動音低減部材63の上面63aとの離間距離と略同一か若干長く形成されている。これにより、スペーサ64の上端面が燃料吸入口41の開口面41aと当接し、スペーサ64の下端面が作動音低減部材63の上面63aを押圧して、作動音低減部材63の移動を規制している。
【0041】
スペーサ64の周壁には、スペーサ64の内面と外面とを貫通する開口64aが形成されており、燃料吸入口41と燃料導入管51とは、開口64aを介して連通している。フィルタユニットで濾過された燃料は、燃料導入管51の第1導入管51a、スペーサ64の開口、スペーサ64の内部の順に移動して、燃料吸入口41に吸入される。
【0042】
(実施形態の変形例)
続いて、実施形態の変形例について説明をする。
図6は、実施形態の変形例の説明図である。
上述の実施形態では、作動音低減部材63が燃料導入管51の内壁に形成された凹部51c内に配置されていた。これに対して、本変形例では、作動音低減部材63が燃料吸入口41の下方において、燃料吸入口41と当接して配置されている点で、実施形態とは異なっている。なお、実施形態と同様の構成部分については説明を省略する。
【0043】
図6に示すように、第2導入管51bの内径は、燃料吸入口41の下方において、燃料吸入口41の外径よりも小さく形成されている。これにより、燃料吸入口41の下方には段差部51dが形成されている。
段差部51dと燃料吸入口41との間には、作動音低減部材63が配置されている。これにより、作動音低減部材63は、燃料吸入口41の下方において、燃料吸入口41の投影面上に配置される。また、作動音低減部材63の上面63aは、燃料吸入口41の開口面41aと対向して配置される。
【0044】
作動音低減部材63の中央には、作動音低減部材63を厚さ方向(図6における上下方向)に貫通する開口63bが1個形成されている。作動音低減部材63の開口63bは、燃料吸入口41の開口よりも直径が小さくなるように形成されている。これにより、燃料吸入口41と燃料導入管51とが開口63bを介して連通するとともに、燃料吸入口41の開口面41aの一部が作動音低減部材63により覆われる。フィルタユニットで濾過された燃料は、燃料導入管51の第1導入管51a、第2導入管51b、作動音低減部材63の開口63bの順に移動して、燃料吸入口41に吸入される。
【0045】
(作用)
次に、上述した燃料供給装置1の作用について説明する。
図7は、実施形態の燃料供給装置1の作用の説明図である。
図7に示すように、燃料供給装置1を燃料タンク2(図3参照)に取り付け、燃料タンク2内に燃料を充填すると、燃料供給装置1は燃料内に浸漬される。そして、燃料タンク2内に貯留された燃料は、アッパーカップ25とフランジユニット4との隙間等を介してフランジユニット4内に流入し、リザーバ部11に貯留される。この状態で、直流モータ30aを駆動して燃料ポンプ3が作動すると、リザーバ部11内の燃料がフィルタ導入管52内を通って燃料供給装置1とは別体のフィルタユニットに供給される。フィルタユニットで濾過された燃料は、燃料導入管51を通って燃料ポンプ3の燃料吸入口41からポンプケース45内に吸い込まれる。
【0046】
ポンプケース45内に吸い込まれた燃料は、インペラ47の回転により燃料ポンプ3内を上方に向けて汲み上げられ、排出ポート31を通って燃料流路ユニット58に向けて圧送される。燃料流路ユニット58に向けて圧送された燃料は、チェックバルブ74を介して燃料流路ユニット58に流入する。その後、燃料流路ユニット58に流入した燃料は、燃料吐出管57を通って内燃機関に供給されるようになっている。
【0047】
ところで、インペラ47が回転するとポンプ作動音Sが発生する。ポンプ作動音Sは、主にポンプケース45内に吸い込まれた燃料が、インペラの回転によって攪拌されることで発生するものである。ポンプケース45内で発生したポンプ作動音Sは、燃料供給装置1内の燃料がポンプ作動音Sの振動の伝達媒体となって、燃料吸入口41の開口から燃料導入管51内に放出される。
【0048】
ここで、上述のように、燃料導入管51内における燃料吸入口41の投影面上には、作動音低減部材63が設けられており、作動音低減部材63の上面63aは、燃料吸入口41の開口面41aと対向している。したがって、燃料吸入口41の開口から放出されたポンプ作動音Sの振動は、作動音低減部材63の上面63aに衝突する。ここで、作動音低減部材63はゴム等の軟質な材料で形成されている。したがって、作動音低減部材63の上面63aに衝突したポンプ作動音Sの振動は、作動音低減部材63により減衰される。
【0049】
(効果)
実施形態および実施形態の変形例によれば、作動音低減部材63は、燃料吸入口41の投影面上において燃料吸入口41の開口面41aと対向する上面63aを有しているので、燃料吸入口41から放出されたポンプ作動音Sの振動を作動音低減部材63で受けることができる。そして、作動音低減部材63を軟質な材質で形成することにより、ポンプ作動音Sの振動を減衰できる。したがって、燃料導入管51を介してポンプ作動音Sが燃料タンク2外部へ伝播するのを抑制し、ポンプ作動音Sを低減できる。
【0050】
また、実施形態および実施形態の変形例によれば、燃料タンク2の底壁2bに取り付けられる燃料供給装置1に、上述の実施形態の構造を適用できる。とりわけ下側にフランジユニット4が設けられている、いわゆる下付けタイプの燃料供給装置1に好適に用いることができる。したがって、燃料タンク2の底壁2bに固定される燃料供給装置1で、ポンプ作動音Sの燃料タンク2外部への伝播を抑制し、ポンプ作動音Sを低減できる。また、フィルタユニットがフランジユニット4の外部に設けられた、いわゆる別体フィルタ方式の燃料供給装置1であっても、作動音低減部材63を備えることで、ポンプ作動音Sの振動を良好に減衰できる。
【0051】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0052】
実施形態および実施形態の変形例では、燃料タンク2の底壁2bに取り付けられた、いわゆる下付けタイプの燃料供給装置1に上述の作動音低減部材63を適用している。しかし、燃料タンク2の上壁に取り付けられた、いわゆる上付けタイプの燃料供給装置に上述の作動音低減部材63を適用してもよい。
【0053】
実施形態および実施形態の変形例では、フィルタがリザーバ部11の外部に設けられた、いわゆる別体フィルタ方式の燃料供給装置1に上述の作動音低減部材63を適用している。しかし、フィルタがリザーバ部11の内部に設けられた燃料供給装置1に、上述の作動音低減部材63を適用してもよい。
【0054】
実施形態および実施形態の変形例では、作動音低減部材63はゴムにより形成された板状部材であったが、作動音低減部材63の材料はゴムに限られることはなく、軟質な材料であればよい。また、作動音低減部材63は、例えばメッシュ状のナイロンや金属等であって、音に起因する振動を減衰できる部材であってもよい。
【0055】
実施形態および実施形態の変形例では、燃料導入管51内における燃料吸入口41の投影面上に、作動音低減部材63が1個配置されていた。しかし、作動音低減部材63の個数は1個に限定されることはなく、燃料吸入口41の投影面上に複数個配置されていてもよい。
【0056】
実施形態および実施形態の変形例では、燃料吸入口41の開口面41aと対向する作動音低減部材63の上面63aは平面に形成されていた。しかし、作動音低減部材63の上面63aは平面に限られることはなく、凹凸が設けられていてもよい。
【0057】
実施形態では、燃料吸入口41の開口面41aと作動音低減部材63の上面63aとの間にスペーサ64を配置し、スペーサ64の下端面が作動音低減部材63の上面63aを押圧することで作動音低減部材63の移動を規制していた。しかし、凹部51c内に作動音低減部材63を接着固定して、作動音低減部材63の移動を規制してもよい。
【0058】
実施形態の変形例では、作動音低減部材63の中央に開口63bが1個形成されていたが、開口63bの個数は1個に限られることはなく、複数形成してもよい。ただし、燃料吸入口41の開口面41aと対向する作動音低減部材63の上面63aを広く確保でき、ポンプ作動音Sの振動を効果的に減衰できる点で、本実施形態に優位性がある。
【符号の説明】
【0059】
1 燃料供給装置
2 燃料タンク
2b 底壁
3 燃料ポンプ
4 フランジユニット(ケース)
30b 回転軸
41 燃料吸入口
41a 燃料吸入口の開口面
47 インペラ
51 燃料導入管
63 作動音低減部材
63a 作動音低減部材の上面(燃料吸入口の開口面と対向する面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内に配置され、インペラが回転することで前記燃料タンク内の燃料を吸引して内燃機関へと圧送する燃料ポンプを備え、
前記燃料ポンプに、前記インペラの回転軸に沿って前記燃料ポンプの内外を連通する燃料吸入口が形成されている燃料供給装置であって、
前記燃料吸入口には、前記燃料ポンプ内に前記燃料を導入する燃料導入管が接続され、
前記燃料導入管内には、前記燃料吸入口の投影面上に、前記燃料吸入口の開口面と対向する面を有する作動音低減部材が設けられていることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記燃料タンクの底壁に取り付けられ、前記燃料ポンプを支持するとともに、前記燃料導入管が形成されたケースと、
前記ケースの外部に前記燃料導入管を介して取り付けられ、前記燃料ポンプに吸入される前記燃料を濾過するためのフィルタユニットとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−64329(P2013−64329A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201866(P2011−201866)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)