説明

燃料噴射弁

【課題】燃料噴射弁全体の大型化を防ぎつつ、ストレーナを燃料噴射弁本体に設けて、エンジンへの適用時に当該エンジンの搭載性が損なわれない燃料噴射弁を提供する。
【解決手段】ノズルホルダ21に、燃料供給路が当該ノズルホルダ21の軸心方向と略平行に形成されるとともに、この燃料供給路に接続される燃料入口部がノズルホルダ21の軸心方向と略直交するように形成されて、この燃料供給路上にストレーナ40を設けた燃料噴射弁20において、前記ノズルホルダ21を複数の分割体22・23に分割して、この分割体22・23の分割面22gから前記燃料供給路にストレーナ取付穴22eを穿設し、このストレーナ取付穴22eに前記ストレーナ40を装入したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの燃料噴射弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料噴射弁のコンタミ浸入防止用ストレーナは、燃料噴射ポンプと燃料噴射弁との間に介設される燃料高圧管との接続部分に取り付けられている。例えば、特許文献1では、ストレーナが燃料噴射弁本体(燃料供給路)と燃料高圧管とを接続するアダプタ(継手)に内装され、このアダプタとともに燃料噴射弁本体の側面に取り付けられている。こうして、ストレーナが燃料噴射弁本体に形成される燃料供給路(燃料入口部)と燃料高圧管との間に設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−227270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術においては、アダプタが燃料噴射弁本体にその軸心方向と直交するように設けられるため、燃料噴射弁がアダプタの長さ分だけ側方に向かって突出することとなる。これにより、アダプタの長さが長くなると、燃料噴射弁のエンジンへの搭載性、さらにはこの燃料噴射弁を適用したエンジンの車両等への搭載性が損なわれるという問題があった。具体的には、例えば、空冷ディーゼルエンジン等の小形のエンジンに前記燃料噴射弁を取り付けると、アダプタや該アダプタと連結される燃料高圧管が、エンジンを搭載するために予め確保した所定の空間からはみ出して、エンジンを搭載する時に、他の部材に接触するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の如き課題を鑑みてなされたものであり、燃料噴射弁全体の大型化を防ぎつつ、ストレーナを燃料噴射弁本体に設けて、エンジンへの適用時に当該エンジンの搭載性が損なわれない燃料噴射弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
請求項1においては、燃料噴射弁本体に、燃料供給路が当該燃料噴射弁本体の軸心方向と略平行に形成されるとともに、この燃料供給路に接続される燃料入口部が当該燃料噴射弁本体の軸心方向と略直交するように形成されて、この燃料供給路上にストレーナを設けた燃料噴射弁において、前記燃料噴射弁本体を複数の分割体に分割して、この分割体の分割面から前記燃料供給路に取付穴を穿設し、この取付穴に前記ストレーナを装入したものである。
【0008】
請求項2においては、前記ストレーナの一端外周部に、装入方向に所定の長さを有する圧入部が形成され、前記燃料噴射弁本体の取付穴の奥底部に、前記圧入部が圧入可能な圧入嵌合部が形成されるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、ストレーナを燃料噴射弁本体に内装して、ストレーナの取り付けによる燃料噴射弁全体の大型化を防ぐことが可能となる。したがって、ストレーナを燃料噴射弁本体に取り付けた状態であっても、燃料噴射弁全体の大きさが変わらず、燃料噴射弁のエンジンへの適用時に、燃料噴射弁またはこれに接続される燃料高圧管が他の部材と干渉することがなくなって、当該燃料噴射弁を適用したエンジンの搭載性が損なわれることがない。
【0011】
請求項2においては、ストレーナを燃料噴射弁本体の分割体に圧入して取り付けることが可能となる。したがって、ストレーナを圧入するだけで簡単に取付穴に取り付けることができ、ひいては燃料噴射弁の組み立てを容易とすることができる。また、取付穴の圧入嵌合部を簡単に形成することができる。また、ストレーナの逆洗浄も容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料噴射弁を適用したエンジンの断面正面図。
【図2】燃料噴射弁の断面正面図。
【図3】ノズルホルダの分解図。
【図4】(a)ストレーナ装入前の第一分割体を示す図。(b)ストレーナ装入後の第一分割体を示す図。
【図5】(a)ストレーナの正面図。(b)ストレーナの平面図。(c)ストレーナの底面図。
【図6】ストレーナ近傍における燃料の流れを示す図。
【図7】燃料噴射弁の組み立てを示す図。
【図8】燃料噴射弁の組み立てを示す図。
【図9】燃料噴射弁の組み立てを示す図。
【図10】従来の燃料噴射弁におけるストレーナの取付構造の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る燃料噴射弁20を適用したエンジン1においては、シリンダブロック2の中央部分にシリンダ2aが形成され、このシリンダ2aにピストン3が往復摺動可能に内装される。
【0015】
シリンダブロック2の下部にはクランクケース2bが一体的に設けられ、このクランクケース2bにクランク軸4が回転可能に支持される。そして、シリンダ2a内のピストン3とクランク軸4とがコンロッド5により連結されて、ピストン3の往復摺動運動がクランク軸4に回転運動として伝動する構成とされる。
【0016】
シリンダブロック2の上部には、シリンダヘッド6が固設される。このシリンダヘッド6と、シリンダ2aと、シリンダ2a内のピストン3とによって燃焼室7が形成される。
【0017】
また、シリンダブロック2の側部には、燃料噴射ポンプ8が設けられる。燃料噴射ポンプ8は、クランク軸4と連結連動するカム軸9に設けられたポンプ駆動カム10によって駆動される。そして、この燃料噴射ポンプ8は、燃料タンク11から燃料を吸入し、高圧化した燃料を燃料噴射弁20に供給するように構成される。
【0018】
燃料噴射弁20は、シリンダヘッド6に燃焼室7に臨むように設けられる。燃料噴射弁20は、燃料高圧管8aを介して燃料噴射ポンプ8と接続され、燃料噴射ポンプ8から送られてくる高圧の燃料を所定のタイミングで所定量燃焼室7へ噴射するように構成される。
【0019】
次に、図2から図3を用いて、燃料噴射弁20の構成について説明する。
尚、以下の説明においては、図2における矢印U方向を上方向として上下方向を規定する。
【0020】
図2に示すように、燃料噴射弁20には、燃料噴射弁本体としてのノズルホルダ21と、ディスタンスピース24と、ノズルボディ25と、ノズルナット26等が備えられる。後述するように、ノズルホルダ21と、ディスタンスピース24と、ノズルボディ25とは上から下に向かって順に同軸心上に配置され、その外側からノズルナット26と螺合することにより一体的に固定される。
【0021】
図3に示すように、ノズルホルダ21は、複数の分割体に分割して構成される。本実施形態においては、ノズルホルダ21は、軸心方向を上下方向とした略円柱形状に形成されて、その軸心方向と直交する面で上下に2分割されて、上側の第一分割体22と、下側の第二分割体23とで構成される。これらの第一分割体22と第二分割体23とは、第一位置決めピン31により位置決めされた状態で連結される。
【0022】
第一分割体22は、略円柱形状に形成され、上下方向に延長される。第一分割体22には、燃料入口部となる高圧管取付穴22aと、第一燃料供給路22bと、第一燃料排出路22cと、位置決め穴22dと、ストレーナ取付穴22eと、外ネジ部22fとが備えられる。
【0023】
高圧管取付穴22aは、ノズルホルダ21の上部側面にその軸心方向に対して直交する方向に穿設される。高圧管取付穴22aは、ノズルホルダ21の上部内で第一燃料供給路22bと接続されて、燃料噴射弁20の燃料入口部とされる。この高圧管取付穴22aには、ノズルホルダ21の上部側面から見て奥側の部分を残して燃料高圧管8aの一端部が挿嵌される。
【0024】
第一燃料供給路22bは、第一分割体22の内部に、高圧管取付穴22aの奥側部分からノズルホルダ21の分割面である第一分割体22の平面状の下面22gまで延びるように、当該第一分割体22の軸心方向と略平行に形成される。第一燃料供給路22bの下部はストレーナ取付穴22eで構成され、ここにストレーナ40が挿嵌されて第一燃料排出路22cに取り付けられる。こうして、燃料噴射ポンプ8から当該燃料高圧管8aを介して送られてきた燃料が、高圧管取付穴22aの奥側部分を通じて第一燃料供給路22bに供給され、ストレーナ40を介して下流側に送られる。
【0025】
第一燃料排出路22cは、第一分割体22の内部に、下面22gから上方に向かって延びるように、第一燃料供給路22bと略平行に形成される。そして、第一燃料排出路22cの上端部がノズルホルダ21にその軸心方向と直交するように挿嵌された漏油管33と接続されて、燃料噴射弁20で使用されなかった余剰の燃料が第一燃料排出路22cおよび漏油管33を通じて燃料タンク11に還流される。この余剰燃料は、第二分割体23に上下方向に形成された第二燃料排出路23cを通じて第一燃料排出路22cに送られる。
【0026】
位置決め穴22dは、円柱形状で、下面22gから上方に向かって延びるように、第一分割体22の軸心方向と略平行に形成される。位置決め穴22dは、第一分割体22の半径方向において、前記第一燃料排出路22cより外周側に配置される。位置決め穴22dには、第一位置決めピン31の一側(上側)が挿嵌される。位置決め穴22dの穴径と、第一位置決めピン31の径とは略同一に設定される。
【0027】
外ネジ部22fは、第一分割体22の下部外周面に形成される。
【0028】
第二分割体23は、略円柱形状に形成される。第二分割体23には、バネ室23aと、第二燃料供給路23bと、第二燃料排出路23cと、位置決め穴23dと、位置決め穴23fとが備えられる。
【0029】
バネ室23aは、穴が第二分割体23の下面にその軸心方向と略平行に穿設されて構成される。バネ室23aは、第二分割体23の軸心上に配置される。
【0030】
図2に示すように、バネ室23aには、付勢バネ28と、調整シム29と、バネ受け30とが設けられる。付勢バネ28は、第二分割体23の下面から見てバネ室23aの奥側に配置される。調整シム29及びバネ受け30は、付勢バネ28の下方に配置される。そして、付勢バネ28により、バネ受け30が調整シム29を介して下方向(ノズルボディ25の方向)に付勢される。付勢バネ28の付勢力は調整シム29により調整される。
【0031】
図3に示すように、第二燃料供給路23bは、第二分割体23の内部に、第二分割体23の上面23eから下面まで延びるように、第二分割体23の軸心方向と略平行に形成される。第二燃料供給路23bは、第一分割体22と第二分割体23とが分離されていないとき、第一燃料供給路22bの延長上に位置するように配置され、この第一燃料供給路22bの下部をなすストレーナ取付穴22eと接続される。
【0032】
第二燃料排出路23cは、第二分割体23の内部に、バネ室23aの上端側から上方に向かって延びるように、第二燃料供給路23bと略平行に形成される。第二燃料排出路23cは、第一分割体22と第二分割体23とが分離されていないとき、第一燃料排出路22cの延長上に位置するように配置され、この第一燃料排出路22cの下部と接続される。こうして、バネ室23aと第一燃料排出路22cとが第二燃料排出路23cを介して接続される。
【0033】
位置決め穴23dは、円柱形状で、第二分割体23の上面23eから下方に向かって延びるように、第二分割体23の軸心方向と略平行に形成される。位置決め穴23dは、第二分割体23の半径方向において、前記バネ室23aより外周側に配置される。位置決め穴23dには、第一位置決めピン31の他側(下側)が挿嵌される。位置決め穴23dの穴径と、第一位置決めピン31の径とは略同一に設定される。
【0034】
位置決め穴23fは、円柱形状で、第二分割体23の下面から上方に向かって延びるように、第二分割体23の軸心方向と略平行に形成される。位置決め穴23fは、第二分割体23の半径方向において、前記バネ室23aより外周側に配置される。位置決め穴23fには、第二位置決めピン32の一側(上側)が挿嵌される。位置決め穴23fの穴径と、第二位置決めピン32の径とは略同一に設定される。
【0035】
図2に示すように、ディスタンスピース24は、燃料噴射弁20全体におけるノズルボディ25の上下位置を調整するものである。ディスタンスピース24は、第二分割体23と略同一の径を有して、円板形状に形成される。ディスタンスピース24は、第二分割体23の下方にこれと同軸心上に配置される。このディスタンスピース24には、貫通孔24aと、第三燃料供給路24bと、位置決め穴24cとが備えられる。
【0036】
貫通孔24aは、ディスタンスピース24を上下方向に貫通するように、ディスタンスピース24の軸心方向と略平行に形成される。貫通孔24aは、ディスタンスピース24の軸心上に配置され、第二分割体23のバネ室23aと接続される。
【0037】
第三燃料供給路24bは、ディスタンスピース24を上下方向に貫通するように、ディスタンスピース24の軸心方向と略平行に形成される。第三燃料供給路24bは、第二燃料供給路23bの延長上に位置するように配置され、この第二燃料供給路23bと接続される。
【0038】
位置決め穴24cは、ディスタンスピース24を上下方向に貫通するように、ディスタンスピース24の軸心方向と略平行に形成される。位置決め穴24cは、ディスタンスピース24の半径方向において、前記貫通孔24aより外周側に配置される。位置決め穴24cには、第二位置決めピン32が挿嵌される。位置決め穴24cの穴径と、第二位置決めピン32の径とは略同一に設定される。
【0039】
ノズルボディ25は、尖端を下方とした略円錐形状に形成される。ノズルボディ25は、ディスタンスピース24の下方にこれと同軸心上に配置される。このノズルボディ25には、ニードル孔25aと、第四燃料供給路25bと、油溜り部25cと、燃料噴射口25dと、位置決め穴25eとが備えられる。
【0040】
ニードル孔25aは、ノズルボディ25の内部に、ノズルボディ25の上面から下方に向かって延びるように、尖端を先細形状として形成される。ニードル孔25aは、ノズルボディ25の軸心上に配置され、ディスタンスピース24の貫通孔24aと接続されるとともに、ディスタンスピース24の第三燃料供給路24bと油溜り部25cを介して接続される。
【0041】
第四燃料供給路25bは、ノズルボディ25の内部に、ノズルボディ25の上面からノズルボディ25の軸心部側に斜め下方に向かって延びるように形成される。第四燃料供給路25bは、ディスタンスピース24の第三燃料供給路24bと接続される。
【0042】
油溜り部25cは、環状の穴がニードル孔25aの上下中途部の内周面に穿設されて構成される。油溜り部25cは、第四燃料供給路25bと接続される。第四燃料供給路25bから供給された燃料は、油溜り部25cに蓄えられる。
【0043】
燃料噴射口25dは、ノズルボディ25の尖端部に形成される。燃料噴射口25dは、ニードル孔25aに接続される。
【0044】
位置決め穴25eは、円柱形状で、ノズルボディ25の上面から下方に向かって延びるように、ノズルボディ25の軸心方向と略平行に形成される。位置決め穴25eは、ノズルボディ25の半径方向において、ニードル孔25aより外周側に配置される。位置決め穴25eには、第二位置決めピン32の他側が挿嵌される。位置決め穴25eの穴径と、第二位置決めピン32の径とは略同一に設定される。
【0045】
ニードル弁34は、燃料噴射口25dを開閉するものである。ニードル弁34は、ニードル孔25aの径と略同一の径を有して形成され、ニードル孔25aにノズルボディ25の軸心方向、即ち上下方向に摺動自在に内装される。
【0046】
ニードル弁34の上面には突出部34aが上方へ突出するように形成される。ニードル弁34は、突出部34aをディスタンスピース24の貫通孔24aに装入し、この突出部34aを介してバネ受け30と連結される。こうして、ニードル弁34が付勢バネ28によりバネ受け30を介して下方向に付勢される。
【0047】
ニードル弁34の下端部は、ニードル孔25aの尖端形状にあわせて略円錐状に形成される。そして、付勢バネ28の付勢力によりニードル弁34が下方向に摺動することによって、ニードル弁34の下端部がニードル孔25aの尖端側内周面と密接して燃料噴射口25dを閉口するように構成される。
【0048】
ノズルナット26は、ノズルホルダ21の一部とディスタンスピース24とノズルボディ25とを隙間なく挿入することができる内径部、即ちインロー嵌合が可能な内径部を有するように、略円筒形状に形成される。ノズルナット26の内径部の上端側には第一分割体22と外ネジ部22fと螺合する内ネジ部26aが形成され、下端側にノズルボディ25を係止するよう段付部26bが形成される。そして、後述するようにして、このノズルナット26でノズルホルダ21の一部とディスタンスピース24とノズルボディ25とが連結される。
【0049】
このような構成により、燃料噴射ポンプ8から燃料高圧管8aを介して燃料噴射弁20に供給された高圧燃料は、第一燃料供給路22b、第二燃料供給路23b、第三燃料供給路24b、第四燃料供給路25bを順に流れて、油溜り部25cに溜まる。高圧燃料は、第二燃料供給路23bを流れる際、ストレーナ40で濾過される。
【0050】
油溜り部25cに燃料が溜まると、油溜り部25cの圧力が上昇するとともに、油溜り部26cに面するニードル弁34に圧力が加わる。ニードル弁34が油溜り部25cから受ける力が、ニードル弁34が付勢バネ28から受ける付勢力を上回ると、ニードル弁34が上方向に摺動し、ニードル孔25aの尖端側内周面から離間する。その結果、燃料噴射口25dが開口する。
【0051】
油溜り部25cに溜まる燃料は、ニードル弁34とニードル孔25aの内周面との間に形成された隙間を通って燃料噴射口25dまで流れ、この燃料噴射口25dから燃焼室7へ噴射されることとなる。燃料の噴射後、ニードル弁34が油溜り部25cから受ける力が、ニードル弁34が付勢バネ28から受ける付勢力を下回ると、ニードル弁34が下方向に摺動し、ニードル孔25aの尖端側内周面に密接して燃料噴射口25dを閉口する。
【0052】
ここで、油溜り部25cに溜まる燃料の一部(余剰の燃料)は、ニードル弁34とニードル孔25aの内周面との間に形成された隙間を通って第二分割体23のバネ室23aに流れる。バネ室23a内の燃料は、第二燃料排出路23cを通じて第一燃料排出路22cに流れ、この第一燃料排出路22cから漏油管33に排出される。
【0053】
次に、図4を用いて、ストレーナ40の取り付け方法について詳細に説明する。
【0054】
図4(a)に示すように、ストレーナ取付穴22eは、分割面となる第一分割体22の下面22gから前記第一燃料供給路22bに、その軸心方向と略平行に穿設される。ストレーナ取付穴22eは、ストレーナ40を取り付ける役目と、第一燃料供給路22bの下部をなす役目とを兼ねるものとされる。ストレーナ取付穴22eは、第一分割体22の下面22gから見て奥側の奥底部(上端部)22hで第一燃料供給路22bの上部と一体的に接続される。
【0055】
ストレーナ取付穴22eにおいて、その奥底部22hの内周面には、圧入嵌合部22iが形成される。ストレーナ取付穴22e、もしくは、ストレーナ取付穴22eの奥底部22hは、リーマ加工で形成され、面精度および穴径精度が確保される。ストレーナ取付穴22eの穴径は、第一燃料供給路22bの上部の径よりも大きく設定される。
【0056】
ストレーナ40は、燃料に混入したコンタミ(異物)を除去するものである。図5に示すように、ストレーナ40は、略円柱形状に形成される。ストレーナ40は、その長手方向における一端部から、第一分割体22のストレーナ取付穴22eに、当該第一分割体22の軸心方向と略平行に装入される。ストレーナ40の装入時、その他端部はストレーナ取付穴22eの第一分割体22の下面22gから見て手前側に配置される。
【0057】
ストレーナ40の長手方向における一端部(上端部)の外周部には、圧入部40aが形成される。圧入部40aの圧入代は、装入方向において所定長さに設定され、圧入部40aの径はストレーナ取付穴22eの奥底部22hにおける内径と略同一または若干大きく設定される。
【0058】
また、圧入部40aを除いた部分におけるストレーナ40の径は、ストレーナ取付穴22eの内径よりも若干小さく設定される。すなわち、この部分の径は圧入部40aの径よりも小さく設定される。こうして、ストレーナ40のストレーナ取付穴22eへの装入時、ストレーナ40の圧入部40aを除いた部分において、ストレーナ40の外周面とストレーナ取付穴22eの内周面との間に所定幅が確保される。
【0059】
ストレーナ40の外周面には、半円切り込みがストレーナ40の半径方向内側に凹みつつ長手方向に沿って形成され、ストレーナ40の周方向において90度毎の四箇所に配置される。これらの半円切り込みは、180度対向位置にあるもの同士を一対の半円切り込みとして、一対の半円切り込み40b・40bと一対の半円切り込み40c・40cとに分けられる。
【0060】
一方の半円切り込み40b・40bは、ストレーナ40の長手方向における一端部から他端部の手前まで、圧入部40aをも切り欠いた状態で形成される。他方の半円切り込み40c・40cは、ストレーナ40の長手方向における他端部から圧入部40aの手前まで形成される。
【0061】
つまり、一対の半円切り込み40b・40bがストレーナ40のストレーナ取付穴22eへの装入側寄りに、一対の半円切り込み40c・40cが第一分割体22の下面22g側寄りに配置される。こうして、一対の半円切り込み40b・40bと一対の半円切り込み40c・40cとは互いの端部をストレーナ40の長手方向においてずらした状態に配置される。
【0062】
さらに、隣り合う半円切り込み40bと半円切り込み40cとの間には、ストレーナ40の周方向に所定幅が確保される。こうして、ストレーナ40のストレーナ取付穴22eへの取り付け時、ストレーナ40の圧入部40aを除いた部分において、ストレーナ40の外周面とストレーナ取付穴22eの内周面との間、かつ隣り合う半円切り込み40bと半円切り込み40cとの間に隙間40dが形成される。
【0063】
このような構成において、第一分割体22と第二分割体23とが分離されている燃料噴射弁20の組み立て時に、図4(b)に示すように、ストレーナ40が第一分割体22のストレーナ取付穴22eに当該第一分割体22の下面22g側から装入される。そして、ストレーナ40の圧入部40aが、第一分割体22の奥底部22hに形成された圧入嵌合部22iに圧入される。すなわち、ストレーナ40は、一端部に形成された圧入部40aのみで、ストレーナ取付穴22eの圧入嵌合部22に保持されることとなる。こうして、ストレーナ40が圧入部40aで第一分割体22に固定され、第一分割体22ひいてはノズルホルダ21に内装された状態で、当該ノズルホルダ21に取り付けられることとなる。
【0064】
図6に示すように、ストレーナ40がノズルホルダ21に取り付けられた状態では、第一燃料供給路22bの上部からストレーナ40に向かって流れてきた燃料は、第一燃料供給路22bの上流側に位置する一方の半円切り込み40b・40bから、図6に示す黒塗り矢印のように流れて、ストレーナ40の外周面とストレーナ取付穴22eの内周面との隙間40dを通過し、第一燃料供給路22bの下流側に位置する他方の半円切り込み40c・40cに流れ、つづいて第二燃料供給路23bに流れる。そして、燃料が隙間40dを通過する際、コンタミ(異物)が除去されることとなる。
【0065】
なお、ストレーナ40は、本実施形態では隙間40dを用いてコンタミ(異物)を除去する構成としているが、網等を用いてコンタミ(異物)を除去する構成とすることも可能である。つまり、ストレーナ40における異物を除去するための構成は特に限定するものではない。
【0066】
次に、図7から図9を用いて、燃料噴射弁20の組み立て手順を説明する。
【0067】
まず、図7(a)に示すように、第二分割体23の位置決め穴23dに第一位置決めピン31の他側を挿嵌する。そして、図7(b)に示すように、第一分割体22の位置決め穴22dに、第一位置決めピン31の一側を挿嵌して、第一分割体22に対する第二分割体23の位置決めを行い、第一分割体22の下面22gと、第二分割体23の上面23eとを当接させる。
【0068】
次に、図8(a)に示すように、第二分割体23のバネ室23aに付勢バネ28と、調整シム29と、バネ受け30とを内装する。そして、ノズルボディ25のニードル孔25aにニードル弁34を内装するとともに、ディスタンスピース24の位置決め穴24dと、ノズルボディ25の位置決め穴25eとに、第二位置決めピン32の他側を挿嵌して、第二分割体23に対するディスタンスピース24と、ノズルボディ25との位置決めを行い、第二分割体23とディスタンスピース24とを、ディスタンスピース24とノズルボディ25とをそれぞれ当接させる。そして、図8(b)に示すように、第二位置決めピン32の一側を、第二分割体23の位置決め穴23fに挿嵌して、第二分割体23に対するディスタンスピース24の位置決めを行い、第二分割体23とディスタンスピース24とを当接させる。
【0069】
最後に、図9(a)に示すように、上下方向で適宜に当接された状態にある第一分割体22と第二分割体23とディスタンスピース24とノズルボディ25とに、ノズルナット26を、これらの下方から外嵌して、図9(b)に示すように、ノズルボディ25を段付部26bに当接させ、第一分割体22の外ネジ部22fとノズルナット26の内ネジ部26aを螺合する。これにより、第一分割体22と第二分割体23とディスタンスピース24とノズルボディ25とが、ノズルナット26により連結され、燃料噴射弁20が組み立てられることとなる。このとき、複数の分割体(第一分割体22と第二分割体23)に分割されたノズルホルダ21は、連結されて一体的に構成される。
【0070】
以上のように、本発明の一実施形態に係る燃料噴射弁20は、ノズルホルダ21に、燃料供給路が当該ノズルホルダ21の軸心方向と略平行に形成されるとともに、この燃料供給路に接続される燃料入口部がノズルホルダ21の軸心方向と略直交するように形成されて、この燃料供給路上にストレーナ40を設けた燃料噴射弁20において、前記ノズルホルダ21を複数の分割体22・23に分割して、この分割体22・23の分割面22gから前記燃料供給路にストレーナ取付穴22eを穿設し、このストレーナ取付穴22eに前記ストレーナ40を装入したものとされる。
【0071】
これにより、ストレーナ40をノズルホルダ21に内装して、ストレーナ40の取り付けによる燃料噴射弁20全体の大型化を防ぐことが可能となる。したがって、ストレーナ40をノズルホルダ21に取り付けた状態であっても燃料噴射弁20全体の大きさが変わらず、燃料噴射弁20のエンジン1への適用時に、燃料噴射弁20またはこれに接続される燃料高圧管8aが他の部材と干渉することがなくなって、当該燃料噴射弁20を適用したエンジン1への搭載性が損なわれることがない。
【0072】
また、燃料噴射弁20においては、ストレーナ40がノズルホルダ21(第一分割体22)の軸心方向と略平行に配置される。そのため、ストレーナ40の外周面に形成される一つの半円切り込み40b・40bおよび一つの半円切り込み40c・40c、ひいては隙間40dを燃料の流れる方向において長く形成して、この隙間40dで十分な濾過面積ひいては濾過性能を確保することができる。
【0073】
本発明の一実施形態に係る燃料噴射弁20は、また、前記ストレーナ40の一端外周部に、装入方向に所定の長さを有する圧入部40aが形成され、ノズルホルダ21のストレーナ取付穴22eの奥底部22hに、前記圧入部40aが圧入可能な圧入嵌合部22iが形成されるものとされる。
【0074】
これにより、ストレーナ40をノズルホルダ21の分割体である第一分割体22に圧入して取り付けることが可能となる。したがって、ストレーナ40を圧入するだけで簡単に取付穴であるストレーナ取付穴22eに取り付けることができ、ひいては燃料噴射弁20の組み立てを容易とすることができる。また、ストレーナ取付穴22eの圧入嵌合部22iを簡単に形成することができる。
【0075】
しかも、ノズルホルダ21の分割面、即ち第一分割体22の下面22gから見て、ストレーナ取付穴51aの手前側(開放側)と反対側となるストレーナ取付穴22eの奥底側でストレーナ40が圧入される。そのため、ストレーナ40の逆洗浄を第一分割体22の下面22g側から容易に行うことができる。
【0076】
また、燃料噴射弁20においては、前述のようにストレーナ取付穴22eがノズルホルダ21の平面状の分割面、即ち第一分割体22の下面22gに軸心方向と略平行に穿設される。そして、ストレーナ40の圧入部40aを圧入嵌合させる圧入嵌合部22iが、第一分割体22の下面22gから見て、ストレーナ取付穴22eの奥側(閉塞側)に形成されている。そのため、図10に示すような、ストレーナ60用のストレーナ取付穴51aが燃料噴射弁本体であるノズルホルダ51の上端面に穿設される燃料噴射弁50において生じる問題を解消して、ストレーナ取付穴22eの加工と、ストレーナ40のストレーナ取付穴22eへの組み立てが容易となっている。
【0077】
前記燃料噴射弁50における問題としては、次のようなことがあった。すなわち、ストレーナ60の取付時にストレーナ60の軸心方向とノズルホルダ51の軸心方向とが一致しないように、ストレーナ取付穴51aがノズルホルダ51の軸心方向に対して傾斜した状態に形成されている。そのため、ストレーナ60を圧入して組み立てる時の圧力を加える方向がノズルホルダ51の軸心方向に対して傾き、ストレーナ60やノズルホルダ51が歪むおそれがあり、またストレーナ取付穴の加工とストレーナのストレーナ取付穴への取り付けが困難であった。その上、ストレーナ60の圧入部60aを圧入嵌合させる圧入嵌合部が、ノズルホルダ51の上端面から見て、ストレーナ取付穴51aの手前側(開放側)に形成されている。そのため、ストレーナ60を挿入するための穴加工が難しくなっていた。
【符号の説明】
【0078】
1 エンジン
8 燃料噴射ポンプ
8a 燃料高圧管
20 燃料噴射弁
21 ノズルホルダ(燃料噴射弁本体)
22 第一分割体
22a 高圧管取付部
22b 第一燃料供給路
22c 第一燃料排出路
22d 位置決め穴
22e ストレーナ取付穴
22f 外ネジ部
22g 下面(分割面)
22h 奥底部
22i 圧入嵌合部
23 第二分割体
23a バネ室
23b 第二燃料供給路
23c 第二燃料排出路
23d 位置決め穴
23e 上面
23f 位置決め穴
24 ディスタンスピース
25 ノズルボディ
26 ノズルナット
28 付勢バネ
29 調整シム
30 バネ受け
31 第一位置決めピン
32 第二位置決めピン
33 漏油管
34 ニードル弁
40 ストレーナ
40a 圧入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射弁本体に、燃料供給路が当該燃料噴射弁本体の軸心方向と略平行に形成されるとともに、この燃料供給路に接続される燃料入口部が当該燃料噴射弁本体の軸心方向と略直交するように形成されて、この燃料供給路上にストレーナを設けた燃料噴射弁において、前記燃料噴射弁本体を複数の分割体に分割して、この分割体の分割面から前記燃料供給路に取付穴を穿設し、この取付穴に前記ストレーナを装入したことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項2】
前記ストレーナの一端外周部に、装入方向に所定の長さを有する圧入部が形成され、前記燃料噴射弁本体の取付穴の奥底部に、前記圧入部が圧入可能な圧入嵌合部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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