説明

燃料棒集合体用緩衝部材及び輸送容器

【課題】燃料棒が受ける衝撃を低減すること。
【解決手段】燃料棒集合体用緩衝部材100は、燃料棒801の端部との間に軸方向隙間を有して、燃料棒801の端部と燃料棒801の軸方向で対向して配置されるノズルと、ノズルに連結されると共に、それぞれの側周部との間に径方向隙間RSを有し、それぞれの中心軸が軸方向に沿って設けられる複数の案内管803と、を含んで構成される燃料棒集合体に取り付けられる燃料棒集合体用緩衝部材100であって、径方向隙間RSに中心軸と直交する方向に向かって少なくとも一部が挿入されて、軸方向隙間に配置されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料棒集合体を構成する燃料棒が受ける衝撃を低減する燃料棒集合体用緩衝部材、及び輸送容器に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料棒集合体を輸送する場合、燃料棒集合体は、輸送容器に格納されて輸送される。ここで、輸送容器は、クレーンによって吊り上げられることがある。輸送容器は、落下することがないように、細心の注意が払われて輸送されており、現在でも、燃料棒集合体の輸送には十分な安全が確保されている。しかしながら、燃料棒集合体をより安全に輸送するためには、輸送容器が落下することを想定しておく必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、輸送中の振動による燃料棒集合体のダメージを低減するための技術として、燃料棒間に嵌合弾接される弾接用金属製屈曲格子板を備える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−117187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加圧水型原子炉用の燃料棒集合体では、燃料棒は、グリッドによって支持されている。ここで、燃料棒は、燃料棒の側周部とグリッドとの間の摩擦力によってグリッドに支持されている。よって、燃料棒は、前記摩擦力よりも大きい力を燃料棒の軸方向に受けると、軸方向に移動する。
【0006】
例えば、輸送容器が落下した場合を想定すると、輸送容器が地面と衝突する際の衝撃が、輸送容器に格納される燃料棒集合体にも伝わる。これにより、場合によっては燃料棒がグリッドに対して軸方向に移動することがあることを想定しておく必要がある。
【0007】
ここで、燃料棒集合体は、軸方向で燃料棒の端部と対向してノズルが配置される。ノズルと燃料棒の端部との間には隙間が形成される。よって、燃料棒が軸方向に移動すると、燃料棒の端部がノズルに衝突する場合もある。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている弾接用金属製屈曲格子板では、燃料棒の軸方向の移動を規制できず、仮に燃料棒の端部がノズルに衝突した場合には、燃料棒が受ける衝撃を低減できない。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、燃料棒が受ける衝撃を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る燃料棒集合体用緩衝部材は、燃料棒の端部との間に軸方向隙間を有して、前記燃料棒の前記端部と前記燃料棒の軸方向で対向して配置されるノズルと、前記ノズルに連結されると共に、それぞれの側周部との間に径方向隙間を有し、それぞれの中心軸が前記軸方向に沿って設けられる複数の案内管と、を含んで構成される燃料棒集合体に取り付けられる燃料棒集合体用緩衝部材であって、前記径方向隙間に前記中心軸と直交する方向に向かって少なくとも一部が挿入されて、前記軸方向隙間に配置されることを特徴とする。
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る輸送容器は、燃料棒集合体用緩衝部材が取り付けられている燃料棒集合体を格納する収納部と、前記収納部を格納する本体部と、を備える輸送容器であって、前記燃料棒集合体は、燃料棒の端部との間に軸方向隙間を有して、前記燃料棒の前記端部と前記燃料棒の軸方向で対向して配置されるノズルと、前記ノズルに連結されると共に、それぞれの側周部との間に径方向隙間を有し、それぞれの中心軸が前記軸方向に沿って設けられる複数の案内管と、を含んで構成され、前記燃料棒集合体用緩衝部材は、前記径方向隙間に前記中心軸と直交する方向に向かって少なくとも一部が挿入されて、前記軸方向隙間に配置されることを特徴とする。
【0012】
上記構成のように、本発明に係る燃料棒集合体用緩衝部材は、燃料棒集合体の軸方向隙間に取り付けられる。これにより、燃料棒集合体を格納する輸送容器が仮に落下した場合であっても、端部が燃料棒集合体用緩衝部材と軸方向で対向する燃料棒は、ノズルと直接衝突せずに、ノズルと燃料棒集合体用緩衝部材の端部との間に燃料棒集合体用緩衝部材が介在される。よって、燃料棒集合体用緩衝部材は、燃料棒に伝わる衝撃を低減できる。
【0013】
さらに、端部が燃料棒集合体用緩衝部材と軸方向で対向する燃料棒は、燃料棒集合体用緩衝部材が軸方向隙間に設けられない場合よりも、燃料棒集合体用緩衝部材の厚みの分、軸方向に移動できる距離が減少する。よって、仮に燃料棒が輸送中に軸方向に移動したとしても、燃料棒集合体用緩衝部材は、端部が燃料棒集合体用緩衝部材と軸方向で対向する燃料棒の軸方向の移動距離を低減できる。
【0014】
本発明の好ましい態様としては、前記中心軸と直交する第1方向に向かって形成されて、前記径方向隙間に挿入される複数の第1方向用棒状緩衝部と、前記中心軸と前記第1方向とに直交する第2方向に前記案内管の直径以上の間隔をあけて複数の前記第1方向用棒状緩衝部が前記案内管側の部分に連結される第1方向用連結緩衝部と、を含んで構成されることが望ましい。
【0015】
上記構成により、本発明に係る燃料棒集合体用緩衝部材は、仮に輸送容器が落下したとしても、複数の燃料棒のうち、端部が径方向隙間に対向する燃料棒が受ける衝撃を第1方向用連結緩衝部が吸収し、それ以外の燃料棒が受ける衝撃を第1方向用連結緩衝部が吸収する。これにより、本発明に係る燃料棒集合体用緩衝部材は、燃料棒が受ける衝撃を低減できる。
【0016】
本発明の好ましい態様としては、前記第1方向用棒状緩衝部は、前記軸方向隙間に複数配置されることが望ましい。
【0017】
例えば、燃料棒集合体がリサイクル燃料棒集合体である場合は特に、前記軸方向隙間の大きさにばらつきがある場合がある。この場合、本発明に係る燃料棒集合体用緩衝部材は、軸方向隙間に第1方向用棒状緩衝部が複数配置されることで、燃料棒の端部とノズルとの間の隙間を第1方向用棒状緩衝部で満たすことができる。これにより、本発明に係る燃料棒集合体用緩衝部材は、燃料棒の軸方向の移動距離を低減できる。
【0018】
本発明の好ましい態様としては、前記第2方向に向かって形成されて、前記径方向隙間に挿入される複数の第2方向用棒状緩衝部と、前記第1方向に前記案内管の直径以上の間隔をあけて複数の前記第2方向用棒状緩衝部が前記案内管側の部分に連結される第2方向用連結緩衝部と、を含んで構成されることが望ましい。
【0019】
上記構成により、本発明に係る燃料棒集合体用緩衝部材は、第1方向用棒状緩衝部及び第1方向用連結緩衝部のみが軸方向隙間に取り付けられる場合よりも、より多くの燃料棒で、燃料棒が受ける衝撃を低減できる。
【0020】
本発明の好ましい態様としては、前記第2方向用棒状緩衝部は、前記軸方向隙間に複数配置されることが望ましい。
【0021】
前記軸方向隙間の大きさにばらつきがある場合、本発明に係る燃料棒集合体用緩衝部材は、軸方向隙間に第2方向用棒状緩衝部が複数配置されることで、燃料棒の端部とノズルとの間の隙間を第2方向用棒状緩衝部で満たすことができる。これにより、本発明に係る燃料棒集合体用緩衝部材は、燃料棒の軸方向の移動距離を低減できる。
【0022】
本発明の好ましい態様としては、前記第1方向用棒状緩衝部と、前記第2方向用棒状緩衝部とは、それぞれ交互に前記軸方向隙間に配置されることが望ましい。
【0023】
軸方向隙間に複数の第1方向用棒状緩衝部と複数の第2方向用棒状緩衝部とが配置される場合、その配置には、燃料棒の軸方向に、例えば第1方向用棒状緩衝部、第1方向用棒状緩衝部、第2方向用棒状緩衝部、第2方向用棒状緩衝部という順番が考えられる。しかし、本発明に係る燃料棒集合体用緩衝部材は、このような配置よりも、第1方向用棒状緩衝部と、第2方向用棒状緩衝部とが、それぞれ交互に軸方向隙間に配置される方が好ましい。以下にその理由を説明する。
【0024】
例えば、第2方向用棒状緩衝部が、燃料棒の軸方向で、第1方向用棒状緩衝部よりも燃料棒側に配置されている場合、端部が第1方向用棒状緩衝部のみに軸方向で対向する燃料棒は、端部が第1方向用棒状緩衝部に当たるまで軸方向に移動することになる。
【0025】
ここで、第1方向用棒状緩衝部と、第2方向用棒状緩衝部とが、それぞれ交互に軸方向隙間に配置されると、第2方向用棒状緩衝部が軸方向で重ならない分、前記燃料棒の端部と第1方向用棒状緩衝部との間の距離が小さくなる。これにより、本発明に係る燃料棒集合体用緩衝部材は、燃料棒の軸方向の移動距離を低減できる。
【0026】
本発明の好ましい態様としては、前記第1方向は、複数の前記燃料棒が束ねられて構成される四角柱を前記中心軸に直交する仮想平面で切った断面の一辺に対して、前記仮想平面上で傾斜する方向であることが望ましい。
【0027】
上記構成により、本発明に係る燃料棒集合体用緩衝部材は、第1方向が前記一辺に対して平行な場合よりも、燃料棒集合体用緩衝部材の面のうち、案内管に直交する面の面積が大きくなる。よって、本発明に係る燃料棒集合体用緩衝部材は、第1方向が前記一辺に対して平行な場合よりも、より多くの燃料棒で、燃料棒が受ける衝撃を低減できる。
【0028】
本発明の好ましい態様としては、前記第1方向用棒状緩衝部に形成された格納スペースに格納され、前記第2方向に移動できるように設けられると共に、前記第1方向に向かって配列される複数の前記案内管のそれぞれの側周部との間に形成される前記径方向隙間の大きさ以下に前記第1方向の寸法が形成される突出緩衝部材と、前記突出緩衝部材に前記第2方向に向かって力を与える押付力付与手段と、を含んで構成されることが望ましい。
【0029】
上記構成により、本発明に係る燃料棒集合体用緩衝部材は、突出緩衝部材が第2方向に移動することにより、第1方向に向かって配列される複数の案内管のそれぞれの側周部との間に形成される径方向隙間に、突出緩衝部材が配置される。
【0030】
これにより、第1方向に向かって配列される複数の案内管のそれぞれの側周部との間に形成される径方向隙間に、端部が軸方向で対向する燃料棒が受ける衝撃を突出緩衝部材が吸収する。よって、本発明に係る燃料棒集合体用緩衝部材は、燃料棒が受ける衝撃を低減できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、燃料棒が受ける衝撃を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、キャスクを示す斜視図である。
【図2】図2は、燃料棒集合体を示す構成図である。
【図3】図3は、新燃料棒用の輸送容器を示す斜視図である。
【図4】図4は、他の輸送機を示す斜視図である。
【図5】図5は、燃料棒の中心軸に直交する方向に向かって燃料棒集合体を投影した投影図である。
【図6】図6は、燃料棒の中心軸に直交する平面で燃料棒集合体を切って示す断面図である。
【図7】図7は、燃料棒集合体に取り付けられている実施形態1の燃料棒集合体用緩衝部材を軸方向に投影した投影図である。
【図8】図8は、燃料棒集合体に取り付けられている実施形態2の燃料棒集合体用緩衝部材を軸方向に投影した投影図である。
【図9】図9は、燃料棒集合体に取り付けられている実施形態3の燃料棒集合体用緩衝部材を軸方向に投影した投影図である。
【図10】図10は、燃料棒集合体に取り付けられている実施形態4の燃料棒集合体用緩衝部材を軸方向に投影した投影図である。
【図11】図11は、燃料棒集合体に取り付けられている実施形態5の燃料棒集合体用緩衝部材を軸方向に投影した投影図である。
【図12】図12は、制御棒案内管の中心軸に直交する仮想平面でカム機構を切って示す断面図である。
【図13】図13は、制御棒案内管の中心軸と平行な仮想の平面で、カム機構を切って示す断面図である。
【図14】図14は、突出緩衝部材が格納スペースから突出した状態のカム機構を、制御棒案内管の中心軸と平行な仮想の平面で切って示す断面図である。
【図15】図15は、制御棒案内管の中心軸に直交する仮想平面でバネ押出機構を切って示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明に係る燃料棒集合体用緩衝部材及び輸送容器の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0034】
(実施形態1)
図1は、キャスクを示す斜視図である。図2は、燃料棒集合体を示す構成図である。図1に示すキャスク900は、図2に示す燃料棒集合体800を格納する輸送容器の一つであり、リサイクル燃料を格納するための容器である。図1に示すキャスク900は、本体部としての胴本体910と、底部920と、蓋部930と、収納部としてのバスケット940とを含んで構成される。
【0035】
胴本体910は、筒状に形成される。底部920は、胴本体910の一方の端部に隙間なく設けられる。蓋部930は、胴本体910の他方の端部に隙間なく取り付けられる。バスケット940は、胴本体910と、底部920と、蓋部930とに囲まれる空間に設けられる。バスケット940は、複数のセル941を含んで構成される。キャスク900は、各セル941に図2に示す燃料棒集合体800が格納される。
【0036】
図3は、新燃料棒用の輸送容器を示す斜視図である。図4は、他の輸送機を示す斜視図である。ここで、燃料棒集合体800を格納する輸送容器は、図1に示すキャスク900に限定されない。
【0037】
例えば、図3に示す輸送容器980は、これから使用される燃料棒集合体800である新燃料棒集合体を格納する輸送容器の一つである。輸送容器980は、容器本体981と蓋体982とを含んで構成される。輸送容器980は、本体部としての容器本体981と、蓋体982とで囲まれる空間に収納部983が設けられ、収納部983の内部に新燃料棒集合体が格納される。
【0038】
また、図4に示す輸送容器990は、燃料棒集合体800を格納する他の容器である。輸送容器990は、本体部としての基台991と、箱型の蓋体992とを含んで構成される。輸送容器990は、基台991と蓋体992とで囲まれる空間に収納部993が設けられ、収納部993の内部に燃料棒集合体800が格納される。
【0039】
図5は、燃料棒の中心軸に直交する方向に向かって燃料棒集合体を投影した投影図である。図6は、燃料棒の中心軸に直交する平面で燃料棒集合体を切って示す断面図である。図2と図5と図6とに示す燃料棒集合体800は、例えば、加圧水型原子炉用の燃料棒集合体である。燃料棒集合体800は、図2及び図5に示すように、燃料棒801と、グリッド810とを含んで構成される。
【0040】
燃料棒集合体800は、複数の燃料棒801が、例えば、第1方向と第2方向とに並んで配置される。ここで、本実施形態では、燃料棒集合体800は、中心軸と直交する仮想の平面で燃料棒集合体800を切った場合に、複数の燃料棒801から構成される燃料棒群802が略正方形に形成される。つまり、本実施形態の燃料棒集合体800は、燃料棒群802の行と列とが直交する。
【0041】
しかしながら、燃料棒集合体は、中心軸と直交する仮想の平面で燃料棒集合体を切った場合に、複数の燃料棒801から構成される燃料棒群802が、例えばひし形に形成される場合も考えられる。この場合、燃料棒集合体は、燃料棒群802の行と列とが直交しない。このような燃料棒集合体の場合、第1方向と第2方向とは直交せずに交差する。
【0042】
燃料棒集合体800は、図6に示すように、複数の燃料棒801が、第1方向と第2方向とに並んで配置される。グリッド810は、複数の燃料棒801を束ねて支持する。具体的には、グリッド810は、軸方向に貫通する孔が板状の部材に複数形成されることによって格子状に形成される。
【0043】
グリッド810は、複数の前記孔に燃料棒801がそれぞれ挿入されることによって、複数の燃料棒801を支持する。このとき、隣接し合う燃料棒801のそれぞれの側周部との間には、隙間が形成される。なお、グリッド810は、前記孔の内周面と燃料棒801の側周部との間の摩擦力によって、燃料棒801を支持する。
【0044】
燃料棒集合体800は、さらに、図5及び図6に示すように、制御棒案内管803aと、複数の計装用案内管803bと、ノズル850とを含んで構成される。制御棒案内管803a及び計装用案内管803bは、筒状の部材である。以下、制御棒案内管803aと計装用案内管803bとを区別しない場合は、制御棒案内管803a及び計装用案内管803bを総じて案内管803という。
【0045】
案内管803は、図6に示すように、燃料棒群802の中に配置される。案内管803は、それぞれの中心軸が、燃料棒801の中心軸と平行に設けられる。制御棒案内管803aは、図5に示す燃料棒群802を1つの四角柱として見た場合に、前記四角柱を制御棒案内管803aの中心軸と直交する仮想平面VF01で切った断面の中央に配置される。
【0046】
計装用案内管803bは、制御棒案内管803aの側周部との間に隙間を有して配置される。また、複数の計装用案内管803bは、それぞれの側周部との間にも隙間を有して配置される。これにより、図5に示すように、制御棒案内管803aの中心軸に直交する方向に燃料棒集合体800を投影すると、燃料棒集合体800は、案内管803のそれぞれの側周部との間に隙間が形成される。以下、前記隙間を径方向隙間RSという。
【0047】
図2及び図5に示すように、ノズル850は、第1ノズル851と第2ノズル852とを含んで構成される。ここで、ノズル850は、第1ノズル851が図1に示す底部920側に配置され、第2ノズル852が蓋部930側に配置される。キャスク900は、通常、底部920が鉛直方向下側に配置されて輸送される。
【0048】
燃料棒集合体800は、輸送される際、通常は第1ノズル851が鉛直方向下側に配置される。つまり、ノズル850は、第1ノズル851がいわゆる下部ノズルであり、第2ノズル852がいわゆる上部ノズルである。
【0049】
第1ノズル851は、案内管803のそれぞれの一方の端部に連結される。第2ノズル852は、案内管803の他方のそれぞれの端部に連結される。これにより、燃料棒集合体800は、燃料棒801の一方の端部側に第1ノズル851が配置され、燃料棒801の他方の端部側に第2ノズル852が配置される。
【0050】
グリッド810は、軸方向で間隔をあけて複数配置される。グリッド810は、案内管803に連結される。以上により、燃料棒集合体800は、第1ノズル851と第2ノズル852との間に、案内管803によって支持される複数のグリッド810によって束ねられた複数の燃料棒801が、第1方向と第2方向とに並んで支持される。
【0051】
ここで、図5に示すように、燃料棒801の端部とノズル850との間には、軸方向の隙間が形成される。以下、前記隙間を軸方向隙間ASという。なお、軸方向隙間ASでは、案内管803は燃料棒群802に覆われておらず、燃料棒群802から露出する。
【0052】
ここで、上述のように、燃料棒801は、燃料棒801の側周部とグリッド810との間の摩擦力によってグリッド810に支持される。よって、燃料棒集合体800をより安全に輸送するためには、燃料棒集合体800の輸送中の振動や、燃料棒集合体800を格納するキャスク900が仮に落下した場合の衝撃によって、燃料棒801がグリッド810に対して軸方向に移動する場合を想定しておく必要がある。
【0053】
燃料棒801が軸方向に移動すると、燃料棒801の端部がノズル850に衝突する場合がある。この時の衝撃によって、燃料棒801がダメージを受ける場合があることを想定して、燃料棒集合体800は、輸送中に燃料棒801が受ける衝撃を低減するための燃料棒集合体用緩衝部材が取り付けられてキャスク900に格納される。以下に、燃料棒集合体用緩衝部材の構成を説明する。
【0054】
図7は、燃料棒集合体に取り付けられている実施形態1の燃料棒集合体用緩衝部材を軸方向に投影した投影図である。燃料棒集合体用緩衝部材100は、図5に示す第1ノズル851と燃料棒801の一方の端部との間の軸方向隙間ASと、第2ノズル852と燃料棒801の他方の端部との間の軸方向隙間ASとの両方に挿入されて燃料棒集合体800に取り付けられる。
【0055】
この2つの燃料棒集合体用緩衝部材100は、同様の構成であり、燃料棒集合体800へ取り付ける手順も同様である。なお、第1ノズル851と燃料棒801の一方の端部との間の軸方向隙間ASと、第2ノズル852と燃料棒801の他方の端部との間の軸方向隙間ASとのうちのどちらか一方の軸方向隙間ASに、燃料棒集合体用緩衝部材100が取り付けられても、燃料棒801の移動方向が燃料棒集合体用緩衝部材100が設けられている側であれば、燃料棒集合体用緩衝部材100は、燃料棒801が受ける衝撃を低減できる。
【0056】
但し、燃料棒801が軸方向のうちの2方向に移動する場合を想定して、燃料棒集合体用緩衝部材100は、第1ノズル851と燃料棒801の一方の端部との間の軸方向隙間ASと、第2ノズル852と燃料棒801の他方の端部との間の軸方向隙間ASとの両方に取り付けられると好ましい。これにより、燃料棒集合体用緩衝部材100は、燃料棒801が軸方向のうちの2方向のどちらに移動しても、燃料棒801が受ける衝撃を低減できる。
【0057】
燃料棒集合体用緩衝部材100は、例えば、木材や、ハニカム構造を成す金属部材や、発泡メタルである。燃料棒集合体用緩衝部材100の軸方向の寸法、つまり燃料棒集合体用緩衝部材100の厚みは、軸方向隙間ASの大きさ以下に形成される。
【0058】
なお、燃料棒集合体用緩衝部材100の厚みと軸方向隙間ASの大きさとの差は、燃料棒集合体用緩衝部材100が軸方向に移動できる距離でもある。よって、燃料棒集合体用緩衝部材100の厚みと軸方向隙間ASの大きさとの差は小さいほど好ましい。これにより、燃料棒集合体用緩衝部材100は、仮に燃料棒801が軸方向に移動したとしても、燃料棒801の軸方向の移動量を低減できる。
【0059】
燃料棒集合体用緩衝部材100は、図7に示すように、甲部材110と乙部材130とに分割されて構成される。燃料棒集合体用緩衝部材100は、例えば、制御棒案内管803aの中心軸を含む仮想平面VF02で、甲部材110と、乙部材130とに分割されて構成される。仮想平面VF02は、例えば、第1方向に沿う仮想の直線と直交する平面である。
【0060】
甲部材110と乙部材130とは、それぞれ同様に形成される。よって、以下の説明では、甲部材110を主に説明する。甲部材110は、第1方向用棒状緩衝部としての棒状緩衝部111と、第1方向用連結緩衝部としての連結緩衝部115とを含んで構成される。棒状緩衝部111は、例えば、四角柱や円柱に形成される。棒状緩衝部111は、中心軸が第1方向に沿って設けられる。
【0061】
なお、四角柱の場合、軸方向の辺の長さと第2方向の辺の長さとの比によっては、板状に見える場合もある。棒状緩衝部111には、軸方向の辺の長さに対して第2方向の辺の長さが比較的大きい構成も含まれる。
【0062】
棒状緩衝部111は、第2方向に並んで複数設けられる。ここで、それぞれの棒状緩衝部111は、制御棒案内管803a及び計装用案内管803bの直径以上の間隔をあけて配置される。つまり、棒状緩衝部111の側壁面112と、隣接する棒状緩衝部の2つの側壁面のうち側壁面112と対向する側壁面との間の距離は、制御棒案内管803a及び計装用案内管803bの直径以上となる。
【0063】
また、棒状緩衝部111の第2方向の寸法、つまり幅は、制御棒案内管803a及び計装用案内管803bを第1方向に投影したときの、それぞれの側周部との間の距離以下に形成される。これにより、棒状緩衝部111は、径方向隙間RSに、第1方向に向かって挿入されることができる。
【0064】
ここで、棒状緩衝部111は、制御棒案内管803aと直交する平面の面積が大きいほど、端部が燃料棒集合体用緩衝部材100と軸方向で対向する燃料棒801の本数が増える。よって、棒状緩衝部111は、前記幅が大きいほど好ましい。
【0065】
棒状緩衝部111は、一方の端部である根元側端部113が連結緩衝部115の仮想平面VF02側の面に連結される。棒状緩衝部111は、他方の端部である先端部114が仮想平面VF02に向かって径方向隙間RSに挿入される。これにより、棒状緩衝部111は、径方向隙間RSから挿入されて軸方向隙間ASに取り付けられる。
【0066】
ここで、複数の棒状緩衝部111は、それぞれが連結緩衝部115に連結される構成に限定されない。複数の棒状緩衝部111は、連結緩衝部115に連結されずに、それぞれが別個に径方向隙間RSに挿入されてもよい。この場合であっても、燃料棒集合体用緩衝部材100は、端部が棒状緩衝部111と軸方向で対向する燃料棒801が受ける衝撃を低減できる。
【0067】
但し、燃料棒集合体用緩衝部材100は、複数の棒状緩衝部111が連結緩衝部115にそれぞれ連結されて、一体となって棒状緩衝部111が複数の径方向隙間RSに一気に挿入される方が好ましい。この場合、複数の棒状緩衝部111がそれぞれ別個に複数の径方向隙間RSに挿入される場合よりも、棒状緩衝部111を軸方向隙間ASに配置するために要する時間及び手間を低減できる。
【0068】
ここで、燃料棒集合体800には、制御棒案内管803aを中心として、複数の計装用案内管803bで囲まれる空間が形成される。連結緩衝部115は、前記空間の外側に配置される。具体的には、連結緩衝部115は、基部116と、2つの側部117とを含んで構成される。
【0069】
基部116は、第2方向に向かって形成される。側部117は、第1方向に向かって形成される。側部117は、一方の端部が、基部116の第1方向の両端部に連結されて、他方の端部である先端部118が仮想平面VF02側に配置される。このように構成されて、連結緩衝部115は、基部116と2つの側部117とで、案内管803を囲うように設けられる。
【0070】
ここで、燃料棒集合体用緩衝部材100は、例えば、甲部材110の先端部118と乙部材130の側部137の先端部138とが、互いに着脱できるように連結されると好ましい。この場合、先端部118及び先端部138は、例えば、面ファスナーや嵌合部が取り付けられて、前記面ファスナーや前記嵌合部によって互いに連結される。
【0071】
また、甲部材110の先端部114と、乙部材130の棒状緩衝部131の先端部134とが、互いに連結できるように構成されても好ましい。この場合、先端部114及び先端部134は、例えば、面ファスナーや嵌合部が取り付けられて、前記面ファスナーや前記嵌合部によって互いに連結される。
【0072】
このようにして、甲部材110と乙部材130とが互いに着脱できるように連結されることによって、燃料棒集合体用緩衝部材100は、輸送中に甲部材110と乙部材130とが、燃料棒集合体800から脱落するおそれを抑制できる。
【0073】
以上により、燃料棒集合体用緩衝部材100は、燃料棒集合体800の軸方向隙間ASに取り付けられる。これにより、端部が燃料棒集合体用緩衝部材100と軸方向で対向する燃料棒801は、燃料棒集合体用緩衝部材100が軸方向隙間ASに設けられない場合よりも、燃料棒集合体用緩衝部材100の厚みの分、軸方向に移動できる距離が減少する。
【0074】
よって、仮に燃料棒801が輸送中に軸方向に移動したとしても、燃料棒集合体用緩衝部材100は、端部が燃料棒集合体用緩衝部材100と軸方向で対向する燃料棒801の軸方向の移動距離を低減できる。
【0075】
さらに、燃料棒集合体800を格納するキャスク900が仮に落下した場合であっても、端部が燃料棒集合体用緩衝部材100と軸方向で対向する燃料棒801は、ノズル850と直接衝突せずに、ノズル850と燃料棒集合体用緩衝部材100の端部との間に燃料棒集合体用緩衝部材100が介在される。これにより、燃料棒集合体用緩衝部材100は、燃料棒801に伝わる衝撃を低減できる。
【0076】
ここで、図7に示す燃料棒集合体800は、実際に原子力発電プラントで用いられる燃料棒集合体が模式的に示されたものである。以下に、案内管803の具体的な配置を説明する。
【0077】
ここで、案内管803の具体的な配置を説明するために、燃料棒群802の4隅のうちの1つを基準座標として座標(1、1)とする。基準座標から第1方向に16離れた座標を座標(17、1)とし、基準座標から第2方向に16離れた座標を座標(1、17)とする。また、基準座標から最も遠い座標、つまり基準座標と対角の座標を座標(17、17)とする。
【0078】
制御棒案内管803aは、座標(9、9)に配置される。計装用案内管803bは、
座標(3、6)と、座標(3、9)と、座標(3、12)と、座標(4、4)と、座標(4、14)と、座標(6、3)と、座標(6、6)と、座標(6、9)と、座標(6、12)と、座標(6、15)と、座標(9、3)と、座標(9、6)と、座標(9、12)と、座標(9、15)と、座標(12、3)と、座標(12、6)と、座標(12、9)と、座標(12、12)と、座標(12、15)と、座標(14、4)と、座標(14、14)と、座標(15、6)と、座標(15、9)と、座標(15、12)と、にそれぞれ1本ずつ配置されて合計で24本設けられる。
【0079】
燃料棒801は、その他の座標にそれぞれ1本ずつ配置されて合計で264本設けられる。ここで、燃料棒集合体用緩衝部材100を燃料棒集合体800へ取り付ける構成の一例として、甲部材110の棒状緩衝部111が配置される座標を説明する。
【0080】
燃料棒集合体用緩衝部材100は、複数の棒状緩衝部111のうちの一本の根元側端部113が座標(3、5)に配置され、先端部114が座標(3、9)に配置される。また、燃料棒集合体用緩衝部材100は、別の棒状緩衝部111の根元側端部113が座標(3、7)及び座標(3、8)に配置され、先端部114が座標(9、7)及び座標(9、8)に配置される。
【0081】
また、燃料棒集合体用緩衝部材100は、別の棒状緩衝部111の根元側端部113が座標(3、10)及び座標(3、11)に配置され、先端部114が座標(9、10)及び座標(9、11)に配置される。また、燃料棒集合体用緩衝部材200は、別の棒状緩衝部111の根元側端部113が座標(3、13)に配置され、先端部114が座標(9、13)に配置される。なお、乙部材130の棒状緩衝部131は、仮想平面VF02を境に棒状緩衝部111と面対称に配置される。
【0082】
上記構成の燃料棒集合体800に、上記構成の燃料棒集合体用緩衝部材100が取り付けられると、最大で、264本の燃料棒801中の214本が、それぞれの端部と対向する位置に燃料棒集合体用緩衝部材100が配置されることになる。
【0083】
つまり、上記構成の燃料棒集合体800に取り付けられる場合、燃料棒集合体用緩衝部材100は、最大で、全体の81%の燃料棒801の軸方向の移動量を低減できると共に、全体の81%の燃料棒801で燃料棒が受ける衝撃を低減できる。
【0084】
ここで、本実施形態では、甲部材110及び乙部材130は、軸方向隙間ASに各1つずつ取り付けられるものとして説明したが、甲部材110及び乙部材130は、軸方向隙間ASに軸方向にそれぞれ複数取り付けられてもよい。
【0085】
例えば、甲部材110及び乙部材130の軸方向の厚みが、軸方向隙間ASの大きさに満たない場合、甲部材110及び乙部材130が軸方向隙間ASに追加されて取り付けられる。これにより、燃料棒集合体用緩衝部材100は、燃料棒801の端部とノズル850との間の隙間を甲部材110及び乙部材130で満たすことができる。結果として、燃料棒集合体用緩衝部材100は、燃料棒801の軸方向の移動距離を低減できる。
【0086】
(実施形態2)
図8は、燃料棒集合体に取り付けられている実施形態2の燃料棒集合体用緩衝部材を軸方向に投影した投影図である。実施形態2の燃料棒集合体用緩衝部材200は、さらに、第2方向用緩衝部材210を含んで構成される点に特徴がある。
【0087】
第2方向用緩衝部材210は、第2方向用棒状緩衝部としての棒状緩衝部211と、第2方向用連結部緩衝部としての連結緩衝部215とを含んで構成される。棒状緩衝部211は、第2方向に沿って設けられる。また、棒状緩衝部211は、第1方向に並んで複数設けられる。
【0088】
ここで、それぞれの棒状緩衝部211は、案内管803の直径以上の間隔をあけて配置される。つまり、棒状緩衝部211の側壁面と、隣接する棒状緩衝部の2つの側壁面のうち上述の側壁面と対向する側壁面との間の距離は、案内管803の直径以上となる。
【0089】
また、棒状緩衝部211の第1方向の寸法、つまり幅は、案内管803を第2方向に投影したときの、それぞれの側周部との間の距離以下に形成される。これにより、棒状緩衝部211は、径方向隙間RSに、第2方向に向かって挿入されることができる。
【0090】
ここで、棒状緩衝部211は、制御棒案内管803aと直交する平面の面積が大きいほど、端部が燃料棒集合体用緩衝部材100と軸方向で対向する燃料棒801の本数が増える。よって、棒状緩衝部211は、前記幅が大きいほど好ましい。
【0091】
棒状緩衝部211は、一方の端部である根元側端部212が連結緩衝部215の制御棒案内管803a側の部分に連結される。棒状緩衝部211は、他方の端部である先端部213が第2方向に向かって径方向隙間RSに挿入される。これにより、棒状緩衝部211は、径方向隙間RSから挿入されて軸方向隙間ASに取り付けられる。
【0092】
ここで、複数の棒状緩衝部211は、それぞれが連結緩衝部215に連結される構成に限定されない。複数の棒状緩衝部211は、連結緩衝部215に連結されずに、それぞれが別個に径方向隙間RSに挿入されてもよい。この場合であっても、燃料棒集合体用緩衝部材100は、棒状緩衝部211と軸方向で対向する燃料棒801が受ける衝撃を低減できる。
【0093】
但し、燃料棒集合体用緩衝部材100は、複数の棒状緩衝部211が連結緩衝部215にそれぞれ連結されて、一体となって棒状緩衝部211が複数の径方向隙間RSに一気に挿入される方が好ましい。この場合、複数の棒状緩衝部211がそれぞれ別個に複数の径方向隙間RSに挿入される場合よりも、棒状緩衝部211を軸方向隙間ASに配置するために要する時間及び手間を低減できる。
【0094】
第2方向用緩衝部材210は、木材や、ハニカム構造を成す金属部材や、発泡メタルで構成されてもよいが、例えば、甲部材110及び乙部材130よりも厚みが薄い金属の薄板で構成されてもよい。但し、第2方向用緩衝部材210が薄板で構成される場合、第2方向用緩衝部材210は、甲部材110及び乙部材130とノズル850との間ではなく、甲部材110及び乙部材130と燃料棒801の端部との間に配置される。
【0095】
また、第2方向用緩衝部材210は、燃料棒集合体800を格納するキャスク900が仮に落下した場合であっても、燃料棒801の端部が衝突した時の衝撃によって、燃料棒801が第2方向用緩衝部材210を軸方向に突き破らない程度の剛性が必要とされる。
【0096】
この場合、端部が第2方向用緩衝部材210と軸方向で対向する燃料棒801が、軸方向に移動して第2方向用緩衝部材210に接触すると、第2方向用緩衝部材210とノズル850との間に介在される甲部材110及び乙部材130が燃料棒801に伝わる衝撃を吸収する。
【0097】
このように、甲部材110及び乙部材130と同等の厚みの第2方向用緩衝部材210を、甲部材110及び乙部材130と共に燃料棒集合体800の軸方向隙間ASに挿入できない場合であっても、第2方向用緩衝部材210が甲部材110及び乙部材130よりも厚みが薄い金属の薄板で構成されて、軸方向隙間ASに挿入されることによって、燃料棒集合体用緩衝部材200は、燃料棒801に伝わる衝撃を吸収する。
【0098】
なお、第2方向用緩衝部材210が薄板の場合、軸方向の寸法と第1方向の寸法との比によって、第2方向用緩衝部材210が棒状には見えず、板状に見える場合もある。この場合のように、軸方向の寸法に対して第1方向の寸法が比較的大きい構成も、棒状緩衝部211に含まれる。
【0099】
上記構成の第2方向用緩衝部材210が径方向隙間RSに第2方向に向かって挿入されると、燃料棒集合体用緩衝部材200全体での案内管803の中心軸に直交する面の面積が、甲部材110及び乙部材130のみが軸方向隙間ASに取り付けられる場合よりも増加する。よって、燃料棒集合体用緩衝部材200は、より多くの燃料棒801で、燃料棒801が受ける衝撃を低減できる。
【0100】
具体的には、燃料棒集合体用緩衝部材200が軸方向隙間ASに取り付けられると、端部が甲部材110及び乙部材130と軸方向で対向しない燃料棒801であっても、端部が第2方向用緩衝部材210と軸方向で対向する場合が生じる。これにより、燃料棒集合体用緩衝部材200は、より多くの燃料棒801で軸方向の移動量を低減できると共に、より多くの燃料棒801で燃料棒801が受ける衝撃を低減できる。
【0101】
ここで、以下に棒状緩衝部211の具体的な配置の一例を説明する。燃料棒集合体用緩衝部材200は、複数の棒状緩衝部211のうちの一本の根元側端部212が座標(5、3)に配置され、先端部213が座標(5、14)に配置される。また、燃料棒集合体用緩衝部材200は、別の棒状緩衝部211の根元側端部212が座標(7、3)及び座標(8、3)に配置され、先端部213が座標(7、15)及び座標(8、15)に配置される。
【0102】
また、燃料棒集合体用緩衝部材200は、別の棒状緩衝部211の根元側端部212が座標(10、3)及び座標(11、3)に配置され、先端部213が座標(10、15)及び座標(11、15)に配置される。また、燃料棒集合体用緩衝部材200は、別の棒状緩衝部211の根元側端部212が座標(13、3)に配置され、先端部213が座標(13、14)に配置される。
【0103】
以上のように第2方向用緩衝部材210が燃料棒集合体800に配置されると、燃料棒集合体用緩衝部材200は、264本の燃料棒801中の252本が、それぞれの端部と対向する位置に燃料棒集合体用緩衝部材200が配置されることになる。
【0104】
つまり、上記構成の燃料棒集合体800に取り付けられる場合、燃料棒集合体用緩衝部材200は、最大で、全体の95%の燃料棒801の軸方向の移動量を低減できると共に、全体の95%の燃料棒801で燃料棒801が受ける衝撃を低減できる。
【0105】
ここで、本実施形態では、甲部材110及び乙部材130と、第2方向用緩衝部材210とは、軸方向隙間ASに各1つずつ取り付けられるものとして説明したが、甲部材110及び乙部材130と、第2方向用緩衝部材210とは、軸方向隙間ASに軸方向にそれぞれ複数取り付けられてもよい。
【0106】
例えば、甲部材110及び乙部材130と、第2方向用緩衝部材210との軸方向の合計の厚みが、軸方向隙間ASの大きさに満たない場合、甲部材110及び乙部材130と、第2方向用緩衝部材210とのうち、少なくとも一方が軸方向隙間ASに追加されて取り付けられる。
【0107】
これにより、燃料棒集合体用緩衝部材100は、燃料棒801の端部とノズル850との間の隙間を甲部材110及び乙部材130と、第2方向用緩衝部材210とで満たすことができる。結果として、燃料棒集合体用緩衝部材100は、燃料棒801の軸方向の移動距離を低減できる。
【0108】
ここで、軸方向隙間ASに複数の甲部材110及び乙部材130と複数の第2方向用緩衝部材210とが配置される場合、その配置には、燃料棒の軸方向に、例えば甲部材110及び乙部材130、甲部材110及び乙部材130、第2方向用緩衝部材210、第2方向用緩衝部材210という順番が考えられる。
【0109】
しかし、燃料棒集合体用緩衝部材100は、このような配置よりも、甲部材110及び乙部材130と、第2方向用緩衝部材210とが、それぞれ交互に軸方向隙間ASに配置される方が好ましい。以下にその理由を説明する。
【0110】
例えば、第2方向用緩衝部材210が、燃料棒の軸方向で、甲部材110及び乙部材130よりも燃料棒801側に配置されている場合、端部が甲部材110及び乙部材130のみに軸方向で対向する燃料棒801は、端部が甲部材110及び乙部材130に当たるまで軸方向に移動することになる。
【0111】
ここで、甲部材110及び乙部材130と、第2方向用緩衝部材210とが、それぞれ交互に軸方向隙間ASに配置されると、第2方向用緩衝部材210が軸方向で重なって配置されない分、前記燃料棒の端部と甲部材110及び乙部材130との間の距離が小さくなる。これにより、本発明に係る燃料棒集合体用緩衝部材100は、燃料棒の軸方向の移動距離を低減できる。
【0112】
(実施形態3)
図9は、燃料棒集合体に取り付けられている実施形態3の燃料棒集合体用緩衝部材を軸方向に投影した投影図である。実施形態3の燃料棒集合体用緩衝部材300は、軸方向隙間ASへの棒状緩衝部111の挿入方向が、図7に示す燃料棒集合体用緩衝部材100と異なる。
【0113】
ここで、図7及び図9に示す燃料棒集合体800は、燃料棒801が図2に示すグリッド810によって束ねられて、燃料棒群802全体で四角柱のように構成される。ここで、制御棒案内管803aの中心軸に直交する仮想平面VF01で前記四角柱を切ると、図7に示す前記四角柱の断面の一辺802aは第1方向に沿う。また、一辺802aと隣接する辺802bは、第2方向に沿う。つまり、図7に示す燃料棒集合体用緩衝部材100は、棒状緩衝部111が一辺802aと平行に径方向隙間RSに挿入される。
【0114】
一方、図9に示す第1方向は、制御棒案内管803aの中心軸と直交する仮想平面VF01上で、前記四角柱の断面の一辺802aに傾斜する方向となる。具体的には、第1方向は、仮想平面VF01上で一辺802aに対して例えば45度傾斜する方向である。
【0115】
また、第2方向は、一辺802aと隣接する辺802bに傾斜する方向となる。具体的には、第2方向は、仮想平面VF01上で一辺802bに対して例えば45度傾斜する方向である。本実施形態では、第1方向と第2方向とは、互いに直交する。なお、第1方向と第2方向とは、互いに直交する方向ではなくても、互いに交差する方向であればよい。
【0116】
このようにして、図9に示す燃料棒集合体用緩衝部材300は、第1方向用棒状緩衝部としての棒状緩衝部311が一辺802aに対して傾斜する方向に向かって径方向隙間RSに挿入される。
【0117】
燃料棒集合体用緩衝部材300は、甲部材310と乙部材330とに分割されて構成される。燃料棒集合体用緩衝部材300は、例えば、制御棒案内管803aの中心軸を含む仮想平面VF03で、甲部材310と、乙部材330とに分割されて構成される。仮想平面VF03は、例えば、第1方向に沿う仮想の直線と直交する平面であって、一辺802aに対して傾斜する平面である。
【0118】
甲部材310は、棒状緩衝部311が仮想平面VF03に向かう方向に向かって径方向隙間RSに挿入される。また乙部材330は、棒状緩衝部331が仮想平面VF03に向かう方向に向かって径方向隙間RSに挿入される。
【0119】
上記構成の棒状緩衝部311が径方向隙間RSに挿入されると、第1方向が一辺802aに対して平行な場合よりも、燃料棒集合体用緩衝部材300全体での案内管803の中心軸に直交する面の面積が増加する。よって、燃料棒集合体用緩衝部材300は、より多くの燃料棒801で、燃料棒801が受ける衝撃を低減できる。
【0120】
ここで、燃料棒集合体用緩衝部材300を燃料棒集合体800へ取り付ける構成の一例として、甲部材310の棒状緩衝部311が配置される座標を説明する。
【0121】
燃料棒集合体用緩衝部材300は、複数の棒状緩衝部311のうちの一本の根元側端部312が座標(15、7)及び座標(15、8)に配置され、先端部313が座標(13、5)及び座標(13、6)に配置される。また、燃料棒集合体用緩衝部材300は、別の棒状緩衝部311の根元側端部312が座標(15、10)及び座標(15、11)に配置され、先端部313が座標(12、7)及び座標(11、7)に配置される。
【0122】
また、燃料棒集合体用緩衝部材300は、別の棒状緩衝部311の根元側端部312が座標(15、13)及び座標(15、14)に配置され、先端部313が座標(10、8)及び座標(10、9)に配置される。また、燃料棒集合体用緩衝部材300は、別の棒状緩衝部311の根元側端部312が座標(14、15)及び座標(13、15)に配置され、先端部313が座標(9、10)及び座標(8、10)に配置される。
【0123】
また、燃料棒集合体用緩衝部材300は、別の棒状緩衝部311の根元側端部312が座標(15、11)及び座標(15、10)に配置され、先端部313が座標(7、11)及び座標(7、12)に配置される。また、燃料棒集合体用緩衝部材300は、別の棒状緩衝部311の根元側端部312が座標(8、15)及び座標(7、15)に配置され、先端部313が座標(6、13)に配置される。なお、乙部材330の棒状緩衝部331は、仮想平面VF03を境に棒状緩衝部311と面対称に配置される。
【0124】
上記構成により、燃料棒集合体用緩衝部材300が燃料棒集合体800に取り付けられると、264本の燃料棒801中の234本が、それぞれの端部と対向する位置に燃料棒集合体用緩衝部材300が配置されることになる。
【0125】
つまり、燃料棒集合体用緩衝部材300は、甲部材310及び乙部材330のみで、最大で、全体の89%の燃料棒801の軸方向の移動量を低減できると共に、全体の89%の燃料棒801で燃料棒801が受ける衝撃を低減できる。
【0126】
(実施形態4)
図10は、燃料棒集合体に取り付けられている実施形態4の燃料棒集合体用緩衝部材を軸方向に投影した投影図である。実施形態4の燃料棒集合体用緩衝部材400は、図8に示す第2方向用緩衝部材210と同様に構成される第2方向用緩衝部材410を備える。
【0127】
但し、図8に示す第2方向用緩衝部材210は、制御棒案内管803aの中心軸と直交する仮想平面VF01上で、辺802bと平行に径方向隙間RSに挿入されるが、図10に示す第2方向用緩衝部材410は、第2方向用棒状緩衝部としての棒状緩衝部411が辺802bに対して傾斜する方向に向かって径方向隙間RSに挿入される。
【0128】
上記構成の棒状緩衝部411が径方向隙間RSに第2方向に向かって挿入されると、燃料棒集合体用緩衝部材400全体での案内管803の中心軸に直交する面の面積が、甲部材310及び乙部材330のみが軸方向隙間ASに取り付けられる場合よりも増加する。よって、燃料棒集合体用緩衝部材400は、より多くの燃料棒801で、燃料棒801が受ける衝撃を低減できる。
【0129】
ここで、燃料棒集合体用緩衝部材400を燃料棒集合体800へ取り付ける構成の一例として、第2方向用緩衝部材410の棒状緩衝部411が配置される座標を説明する。
【0130】
燃料棒集合体用緩衝部材400は、複数の棒状緩衝部411のうちの一本の根元側端部412が座標(3、8)及び座標(3、9)に配置され、先端部413が座標(7、4)に配置される。また、燃料棒集合体用緩衝部材400は、別の棒状緩衝部411の根元側端部412が座標(3、10)及び座標(3、11)に配置され、先端部413が座標(10、4)に配置される。
【0131】
また、燃料棒集合体用緩衝部材400は、別の棒状緩衝部411の根元側端部412が座標(4、13)に配置され、先端部413が座標(13、4)に配置される。また、燃料棒集合体用緩衝部材400は、別の棒状緩衝部411の根元側端部412が座標(5、14)に配置され、先端部413が座標(14、5)に配置される。
【0132】
また、燃料棒集合体用緩衝部材400は、別の棒状緩衝部411の根元側端部412が座標(7、15)及び座標(8、15)に配置され、先端部413が座標(14、8)に配置される。また、燃料棒集合体用緩衝部材400は、別の棒状緩衝部411の根元側端部412が座標(10、15)及び座標(11、15)に配置され、先端部413が座標(14、11)に配置される。
【0133】
上記構成により、燃料棒集合体用緩衝部材400が燃料棒集合体800に取り付けられると、264本の燃料棒801中の264本が、それぞれの端部と対向する位置に燃料棒集合体用緩衝部材400が配置されることになる。
【0134】
つまり、燃料棒集合体用緩衝部材400は、甲部材310及び乙部材330と第2方向用緩衝部材410が軸方向隙間ASに配置されることで、最大で、すべての燃料棒801の軸方向の移動量を低減できると共に、すべての燃料棒801で燃料棒801が受ける衝撃を低減できる。
【0135】
(実施形態5)
図11は、燃料棒集合体に取り付けられている実施形態5の燃料棒集合体用緩衝部材を軸方向に投影した投影図である。図11に示す実施形態5の燃料棒集合体用緩衝部材500は、第1方向に沿う棒状緩衝部511に、第2方向に移動できるように突出緩衝部材530が設けられる点に特徴がある。
【0136】
燃料棒集合体用緩衝部材500は、格納スペース513と、突出緩衝部材530とを含んで構成される。格納スペース513は、棒状緩衝部511の側壁面512に開口する穴である。突出緩衝部材530は、格納スペース513よりも小さく形成される。これにより、突出緩衝部材530は、格納スペース513から突出することなく格納スペース513に格納される。
【0137】
突出緩衝部材530は、棒状緩衝部511に対して、第2方向に移動できるように格納スペース513に格納される。具体的には、突出緩衝部材530は、格納スペース513の壁面のうち、制御棒案内管803aの中心軸と直交する仮想平面VF01に沿う壁面と、自身の壁面のうち仮想平面VF01に沿う壁面とが摺動し合うことによって棒状緩衝部511に対して第2方向に移動する。
【0138】
図12は、制御棒案内管の中心軸に直交する仮想平面でカム機構を切って示す断面図である。次に、突出緩衝部材530を第2方向に移動させるための押付力付与手段を説明する。燃料棒集合体用緩衝部材500は、例えば、押付力付与手段としてのカム機構540を備える。カム機構540は、シャフト541と、カム542と、係合部543と、引張バネ544とを含んで構成される。
【0139】
シャフト541は、第1方向に沿って設けられる。具体的には、シャフト541は、棒状緩衝部511に第1方向に沿って形成された孔の内部に設けられる。また、シャフト541は、前記孔の内部で回転できるように支持される。
【0140】
図13は、制御棒案内管の中心軸と平行な仮想の平面で、カム機構を切って示す断面図である。図14は、突出緩衝部材が格納スペースから突出した状態のカム機構を、制御棒案内管の中心軸と平行な仮想の平面で切って示す断面図である。
【0141】
図13に示すように、カム542は、シャフト541に取り付けられて、シャフト541と共に、シャフト541の中心軸を軸に回転する。カム542の側周部からシャフト541までの距離は不均一に形成される。係合部543は、突出緩衝部材530の部分のうち、カム542の側周部が接触する部分である。引張バネ544は、突出緩衝部材530が格納スペース513に格納される方向に突出緩衝部材530を引き付ける。
【0142】
以上により、カム機構540は、図14に示すように、シャフト541が回転して、カム542の側周部が係合部543を第2方向に押す力が引張バネ544のバネ力よりも大きくなると、突出緩衝部材530が第2方向に移動する。これにより、燃料棒集合体用緩衝部材500は、突出緩衝部材530が格納スペース513から第2方向に突出する。
【0143】
また、シャフト541が回転して、カム542の側周部が係合部543を第2方向に押す力が引張バネ544のバネ力よりも小さくなると、突出緩衝部材530が格納スペース513に格納される方向に突出緩衝部材530が第2方向に移動する。これにより、燃料棒集合体用緩衝部材500は、突出緩衝部材530が格納スペース513に格納される。
【0144】
ここで、第2方向には2方向あるが、図11に示すように、燃料棒集合体用緩衝部材500は、第2方向のうち一方方向に突出する突出緩衝部材530と、他方方向に突出する突出緩衝部材530とが形成される。つまり、複数の棒状緩衝部511には、両方の側壁面512に格納スペース513が開口するものが含まれる。
【0145】
ここで、突出緩衝部材530は、第1方向の長さが、第1方向に向かって配列される複数の案内管803のそれぞれの側周部との間に形成される径方向隙間RSの大きさ以下に形成される。これにより、突出緩衝部材530は、格納スペース513から第2方向に突出した際に、第1方向に向かって配列される案内管803のそれぞれの側周部との間に形成される径方向隙間RSに配置されることができる。
【0146】
次に、燃料棒集合体用緩衝部材500を燃料棒集合体800に取り付ける手順を説明する。まず、図11に示す突出緩衝部材530が格納スペース513に格納された状態で、棒状緩衝部511を第1方向に沿って径方向隙間RSに挿入する。次に、図12に示すシャフト541を回転させて、突出緩衝部材530を格納スペース513から第2方向に突出させる。
【0147】
次に、燃料棒集合体用緩衝部材500を燃料棒集合体800から取り外す手順を説明する。まず、図12に示すシャフト541を回転させて、突出緩衝部材530を格納スペース513に格納させる。次に、図11に示す突出緩衝部材530が格納スペース513に格納された状態で、棒状緩衝部511を第1方向に沿って径方向隙間RSから引き抜く。
【0148】
上記構成により、燃料棒集合体用緩衝部材500が燃料棒集合体800に取り付けられると、264本の燃料棒801中の264本が、それぞれの端部と対向する位置に燃料棒集合体用緩衝部材500が配置されることになる。つまり、燃料棒集合体用緩衝部材500は、最大で、すべての燃料棒801の軸方向の移動量を低減できると共に、すべての燃料棒801で燃料棒801が受ける衝撃を低減できる。
【0149】
ここで、押付力付与手段は、カム機構540に限定されない。押付力付与手段は、例えば、棒状緩衝部511に形成される孔であって、一方の端部が格納スペース513に開口し、他方の端部が棒状緩衝部511の外部に開口する孔を備え、前記孔を介して格納スペース513に空気が供給される構成でもよい。
【0150】
この場合、格納スペース513に供給された空気が突出緩衝部材530を第2方向に移動させる。この構成でも、押付力付与手段は、突出緩衝部材530を格納スペース513から第2方向に突出させることができる。
【0151】
図15は、制御棒案内管の中心軸に直交する仮想平面でバネ押出機構を切って示す断面図である。押付力付与手段は、例えば、図15に示す、バネ押出機構640でもよい。バネ押出機構640は、押出バネ641と、テーパ642とを含んで構成される。
【0152】
押出バネ641は、第2方向のうち、突出緩衝部材530を格納スペース513から突出させる方向に突出緩衝部材530を押す。これにより、突出緩衝部材530は、外力が取り除かれると格納スペース513から突出する。
【0153】
カム542は、突出緩衝部材530の部分のうち、棒状緩衝部511が径方向隙間RSに挿入される際、及び径方向隙間RSから引き抜かれる際に、案内管803と干渉する部分に形成される。つまり、テーパ642は、突出緩衝部材530の壁面のうち、案内管803の側周部と対向する2つの壁面に形成される。テーパ642は、格納スペース513から離れるほど、案内管803の側周部までの距離が長くなる斜面である。
【0154】
上記構成により、格納スペース513から突出緩衝部材530が突出した状態で棒状緩衝部511が径方向隙間RSに挿入されると、テーパ642が案内管803の側周部と接触する。すると、突出緩衝部材530は、格納スペース513に格納される方向の力を案内管803から受ける。これにより、突出緩衝部材530は、格納スペース513に格納される。
【0155】
そして、棒状緩衝部511がさらに第1方向に向かって径方向隙間RSに挿入され、突出緩衝部材530が案内管803を通りすぎると、押出バネ641のバネ力によって、突出緩衝部材530が格納スペース513から突出する。これにより、燃料棒集合体用緩衝部材500は、突出緩衝部材530が第1方向に配列される案内管803の径方向隙間RSに配置される。
【0156】
また、格納スペース513から突出緩衝部材530が突出した状態で棒状緩衝部511が径方向隙間RSから引き抜かれるように移動されると、テーパ642が案内管803の側周部と接触して、突出緩衝部材530が、格納スペース513に格納される方向の力を案内管803から受ける。すると、突出緩衝部材530は、格納スペース513に格納される。これにより、棒状緩衝部511は、径方向隙間RSから引き抜かれることができる。
【0157】
上記構成により、バネ押出機構640は、部品点数の増加を抑制しつつ、突出緩衝部材530に第2方向に働く力を付与できる。
【産業上の利用可能性】
【0158】
以上のように、燃料棒集合体用緩衝部材は、燃料棒集合体をキャスクに格納して輸送する際に有用であり、燃料棒が受ける衝撃を低減することに適している。
【符号の説明】
【0159】
100 燃料棒集合体用緩衝部材
110 甲部材
111 棒状緩衝部
112 側壁面
113 根元側端部
114 先端部
115 連結緩衝部
116 基部
117 側部
118 先端部
130 乙部材
131 棒状緩衝部
134 先端部
137 側部
138 先端部
200 燃料棒集合体用緩衝部材
210 第2方向用緩衝部材
211 棒状緩衝部
212 根元側端部
213 先端部
215 連結緩衝部
300 燃料棒集合体用緩衝部材
310 甲部材
311 棒状緩衝部
312 根元側端部
313 先端部
330 乙部材
331 棒状緩衝部
400 燃料棒集合体用緩衝部材
410 第2方向用緩衝部材
411 棒状緩衝部
412 根元側端部
413 先端部
500 燃料棒集合体用緩衝部材
511 棒状緩衝部
512 側壁面
513 格納スペース
530 突出緩衝部材
540 カム機構
541 シャフト
542 カム
543 係合部
544 引張バネ
640 バネ押出機構
641 押出バネ
642 テーパ
800 燃料棒集合体
801 燃料棒
802 燃料棒群
802a 一辺
802b 辺
803 案内管
803a 制御棒案内管
803b 計装用案内管
810 グリッド
850 ノズル
851 第1ノズル
852 第2ノズル
900 キャスク
910 胴本体
920 底部
930 蓋部
940 バスケット
941 セル
AS 軸方向隙間
RS 径方向隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料棒の端部との間に軸方向隙間を有して、前記燃料棒の前記端部と前記燃料棒の軸方向で対向して配置されるノズルと、
前記ノズルに連結されると共に、それぞれの側周部との間に径方向隙間を有し、それぞれの中心軸が前記軸方向に沿って設けられる複数の案内管と、
を含んで構成される燃料棒集合体に取り付けられる燃料棒集合体用緩衝部材であって、
前記径方向隙間に前記中心軸と直交する方向に向かって少なくとも一部が挿入されて、前記軸方向隙間に配置されることを特徴とする燃料棒集合体用緩衝部材。
【請求項2】
前記中心軸と直交する第1方向に向かって形成されて、前記径方向隙間に挿入される複数の第1方向用棒状緩衝部と、
前記中心軸と前記第1方向とに直交する第2方向に前記案内管の直径以上の間隔をあけて複数の前記第1方向用棒状緩衝部が前記案内管側の部分に連結される第1方向用連結緩衝部と、
を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の燃料棒集合体用緩衝部材。
【請求項3】
前記第1方向用棒状緩衝部は、前記軸方向隙間に複数配置されることを特徴とする請求項2に記載の燃料棒集合体用緩衝部材。
【請求項4】
前記第2方向に向かって形成されて、前記径方向隙間に挿入される複数の第2方向用棒状緩衝部と、
前記第1方向に前記案内管の直径以上の間隔をあけて複数の前記第2方向用棒状緩衝部が前記案内管側の部分に連結される第2方向用連結緩衝部と、
を含んで構成されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の燃料棒集合体用緩衝部材。
【請求項5】
前記第2方向用棒状緩衝部は、前記軸方向隙間に複数配置されることを特徴とする請求項4に記載の燃料棒集合体用緩衝部材。
【請求項6】
前記第1方向用棒状緩衝部と、前記第2方向用棒状緩衝部とは、それぞれ交互に前記軸方向隙間に配置されることを特徴とする請求項3または請求項5に記載の燃料棒集合体用緩衝部材。
【請求項7】
前記第1方向は、
複数の前記燃料棒が束ねられて構成される四角柱を前記中心軸に直交する仮想平面で切った断面の一辺に対して、前記仮想平面上で傾斜する方向であることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の燃料棒集合体用緩衝部材。
【請求項8】
前記第1方向用棒状緩衝部に形成された格納スペースに格納され、前記第2方向に移動できるように設けられると共に、前記第1方向に向かって配列される複数の前記案内管のそれぞれの側周部との間に形成される前記径方向隙間の大きさ以下に前記第1方向の寸法が形成される突出緩衝部材と、
前記突出緩衝部材に前記第2方向に向かって力を与える押付力付与手段と、
を含んで構成されることを特徴とする請求項2に記載の燃料棒集合体用緩衝部材。
【請求項9】
燃料棒集合体用緩衝部材が取り付けられている燃料棒集合体を格納する収納部と、
前記収納部を格納する本体部と、
を備える輸送容器であって、
前記燃料棒集合体は、
燃料棒の端部との間に軸方向隙間を有して、前記燃料棒の前記端部と前記燃料棒の軸方向で対向して配置されるノズルと、
前記ノズルに連結されると共に、それぞれの側周部との間に径方向隙間を有し、それぞれの中心軸が前記軸方向に沿って設けられる複数の案内管と、
を含んで構成され、
前記燃料棒集合体用緩衝部材は、
前記径方向隙間に前記中心軸と直交する方向に向かって少なくとも一部が挿入されて、前記軸方向隙間に配置されることを特徴とする輸送容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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