説明

燃料物質転換システム

本発明は、燃料物質を転換するためのシステム(1)に関し、該システムは、燃料物質が酸化物材料と反応して燃料粒子、灰および酸化物粒子を含む反応生成物を生成する第1の炉(2)と、第1の炉(2)で生成された酸化物粒子を酸化させる第2の炉(3)と、第1の炉(2)で生成された燃料粒子、灰、および酸化物粒子が入り、燃料粒子から酸化物粒子と灰とを分離するのに適した炭素分離器(4)であって、酸化物粒子の排出および灰の排出のための排気路(4c)を備えた炭素分離器(4)とを備え、炭素分離器(4)の排気路(4c)は、灰を酸化物粒子から分離する灰分離器(10)に接続されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラーなどの燃料物質を転換するためのシステムに関し、特に燃料転換に用いられる酸化還元炉システムに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
化学ループ技術は、直接的な酸素供給に代えて酸素キャリアを用いた、固体燃料を気化あるいは燃焼させるための有望な技術である。
【0003】
化学ループは、2つのステップで炭素系燃料の燃焼あるいは気化を発生させるプロセスである。第1のステップでは、酸素キャリアによって燃料炉に酸素が供給され、燃料炉において酸素キャリアが固体燃料によって還元され、その後、空気炉に移送される。燃料炉において、燃料粒子、灰および還元された酸素キャリアが生成される。第2のステップでは、空気炉において、還元された酸素キャリアが空気によって酸化される。化学ループプロセスでは、燃料炉における燃料の燃焼あるいは気化によって生じたガスは、全くもしくはほとんど窒素を含んでいない。典型的に、酸素キャリアは金属酸化物もしくはその他の酸素を豊富に含んだ化合物からなる。
【0004】
流動床に付随する優れた混合や高滞留時間といった利益を得るために、ほとんどの化学ループ技術において燃料炉に流動床技術が用いられている。流動床はバブリング流動床でも循環流動床でもよい。
【0005】
典型的に、従来の燃料物質を転換するためのシステムに導入される粉砕石炭は、2mmの平均直径を有し、該石炭の最大寸法は20mmに達する。従って、飛散灰とならない最大粒子を炉底灰として取り除かなければならない。
【0006】
現在の飛散灰と炉底灰との間の比率は60/40であり、40/60まで低下してきている。専用の炉底灰抽出システムを設計し、燃料物質を介してシステム内に導入される灰のほぼ半分を取り除かなくてはならない。
【0007】
従って、酸素キャリアを酸化および再生のために酸素炉に送る前に、燃料粒子と灰とを酸素キャリアから分離することが大きな課題である。
【0008】
従来の燃料物質を転換するための化学ループシステムは、例えば仏国特許第FR2850156号に述べられているように、炭素分離器を備えている。炭素分離器は、「炭素ストリッパー」とも呼ばれるものであり、空気炉と燃料炉との間に置かれる。
【0009】
従来の化学ループシステムは、システムから灰を排出するために、燃料炉および/または空気炉の底に置かれた灰分離器をさらに備えている。典型的に、この抽出は炉の最底部において行われる。抽出孔には、異なる位置における様々な設計が存在する。いくつかのノズルを除去することで炉の格子の中央に孔を位置させてもよく、この場合、垂直方向の抽出となる。炉の側壁に孔を位置させて、コーン弁によって流れが制御された横方向の抽出とすることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】仏国特許第FR2850156号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、これらのシステムには、灰分離器が燃料炉および/または空気炉の底もしくは底近傍に重く複雑な分離システムを必要とするという欠点がある。
【0012】
さらに、典型的には、燃料炉および空気炉の底における固体混合物は、およそ10%の灰を含んでいる。1kg/sの灰が抽出される場合には、1kg/sの灰を含む10kg/sの混合物が抽出されることになる。従って、処理する必要がある固体量は、実際に必要とされる固体量の10倍多いことになる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明の目的は、上記の問題を解決しながら燃料物質を転換するシステムを提供することである。
【0014】
上記目的は、燃料物質が酸化物材料と反応して燃料粒子、灰および酸化物粒子を含む反応生成物を生成する第1の炉と、第1の炉で生成された酸化物粒子を酸化させる第2の炉と、第1の炉で生成された燃料粒子、灰、および酸化物粒子が入り、燃料粒子から酸化物粒子と灰とを分離するのに適した炭素分離器であって、酸化物粒子の排出および灰の排出のための排気路を備えた炭素分離器とを備える、燃料物質を転換するためのシステムによって達成される。
【0015】
本発明によれば、炭素分離器の排気路は、灰を酸化物粒子から分離する灰分離器に接続されている。
【0016】
この特定の構成によって、燃料粒子、灰および酸化物粒子の混合物から、単純な方法でこれら3つの化合物を互いに分離させることが可能になる。炭素分離器および灰分離器からなる装置は、小型であり設置費用も経済的である。
【0017】
このように、酸化物粒子を空気炉に送って再生させることが可能である。燃焼しなかった炭素は燃料炉に送り返してさらに酸化させることができ、灰は取り除かれ、集塊することになりかねないシステム内の灰の濃縮を防ぐことができる。
【0018】
最後に、この特定の構成によって、燃料炉および/または空気炉の底における複雑で費用のかかる灰分離器の使用が不要となる。
【0019】
炭素分離器と灰分離器の両方が流動することおよびそのシステムが各分離器の流動速度を制御する手段を備えていることが好ましい。
【0020】
灰密度が燃料粒子密度よりも高いことから、灰分離器の流動速度が炭素分離器の流動速度よりも高いことが好ましい。
【0021】
炭素分離器および灰分離器は、共通の側壁を介して互いに近接した分離器であってよい。
【0022】
炭素分離器および灰分離器はパイプで接続されてもよい。この場合、灰分離器を炭素分離器の下側に設置してよい。
【0023】
燃料炉は、炭素分離器に接続された下側の排気口と高効率分離器に接続された上側の排気口とを備える低効率サイクロン分離器に接続されていることが望ましい。
【0024】
典型的には、燃料物質は石炭である。
【0025】
典型的には、酸化物材料は金属酸化物である。
【0026】
本発明のその他の特徴および利点は、本発明の例示的な実施形態を示す以下の詳細な説明と添付の図面を参照することによって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は本発明の燃料物質を転換するためのシステムを示す概略図である。
【図2】図2は第1の実施形態におけるシステムの一部を示す概略図である。
【図3】図3は第2の実施形態におけるシステムの一部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に示すように、本発明による燃料物質を転換するためのシステム1は、電力および/または蒸気を発生させるためのものであり、燃料炉2、空気炉3および炭素分離器4を備えている。
【0029】
燃料サイロ5からの固体燃料物質および酸化物サイロ6からの金属酸化物が燃料炉2に送られる。固体燃料物質は好ましくは石炭である。金属酸化物は、鉄、ニッケル、アルミナあるいはそれらの混合物を基に作られたものである。
【0030】
燃料炉2は、蒸気および/またはリサイクルされた燃焼排気および/または二酸化炭素により流動されている。第1の分離装置、好ましくは低効率分離サイクロン7には、燃料炉2から燃焼ガス、灰、燃料粒子および酸化物粒子が供給される。燃焼ガスは、主にCOおよび蒸気からなる。
【0031】
分離装置の効率とは、該装置の吸気口における固形物の量に対する該装置によって収集される粒子の量の比率である。
【0032】
低効率分離サイクロン7の固形物の上流部分が高分離装置、好ましくは高効率分離サイクロン8へと循環する。こうして、主に微細な炭素粒子からなる固形物が飛散灰から分離され、シールポット14を介して燃料炉2に再導入される。
【0033】
低効率サイクロン7から出た固形物はシールポット9に入り、そこから第1の部分が燃料炉2に送られ、第2の部分が炭素分離器4に送られる。シールポット9は蒸気および/またはリサイクルされた燃焼排気によって流動させることができる。
【0034】
炭素分離器4において、燃料炉2に送られる炭素含有残渣などの微細で軽量の粒子が、空気炉3に送られる高密度で大きな酸化物粒子および灰から分離される。本発明によると、炭素分離器4は、灰を排出する特定の排出口10aを有する灰分離器10に接続されている。燃料炉2に入る燃料物質の平均粒径は、酸化物材料の平均粒径よりも小さいことが好ましい。燃料物質の平均粒径を制御して酸化物材料の平均粒径の少なくとも2倍小さくすることがより好ましい。燃料物質の平均粒径は約50μm程度とすることができる。その値は50μmから60μmの間であってよい。
【0035】
この場合、酸化物粒子の密度は燃料粒子の密度よりも高く、灰の密度は燃料粒子の密度と酸化物粒子の密度との間の値となる。
【0036】
炭素分離器4および灰分離器10からの酸化物粒子は、空気炉3において空気により酸化される。空気炉3からの酸化物および消耗した空気が分離装置11、典型的にはサイクロン分離器に入り、そこで酸化物粒子がNおよびOからなるガスから分離される。
【0037】
サイクロン11の底部から抽出された固体酸化物粒子はシールポット12に入り、そこから第1の部分が空気炉3の底部に送られ、第2の部分が燃料炉2の底部に送られる。シールポット12は空気で流動させることができる。
【0038】
炭素分離器4と灰分離器10との関連の詳細図を図2および図3に示す。図2および図3は、本発明による燃料物質を転換するためのシステムにおいて用いられる炭素分離器と灰分離器との組み合わせの2つの実施形態を概略的に示している。
【0039】
炭素分離器4は吸気口4aを備え、そこから燃料粒子FP、酸化物粒子OPおよび灰Aが炭素分離器4に入る。酸化物粒子OPは、燃料炉において少なくとも部分的に還元された酸化物粒子である。炭素分離器4は、流動手段Fによって流動されている。流動手段Fは、炭素分離器4の底部に設置された蒸気吸気口および/またはリサイクルされた燃焼排気吸気口および/またはCO吸気口とすることができる。
【0040】
密度が約1.2である微細で軽量の粒子FPが炭素分離器4の排気口4bを介して燃料炉に送られ、高密度で大きな酸化物粒子OPおよび灰Aが灰分離器10に送られる。
【0041】
灰分離器10は、流動手段Fによって流動されている。流動手段Fは、炭素分離器4の底部に設置された蒸気吸気口および/またはリサイクルされた燃焼排気吸気口および/またはCO吸気口とすることができる。軽量の灰Aは排出口10aからガス処理システムに向けて排出され、高密度の酸化物粒子OPは灰分離器10の排気口10bを通して空気炉に送られる。
【0042】
システム内の灰の濃度を制御するために、炭素分離器4と灰分離器10との流動速度を制御することができる。流動速度は、灰Aおよび酸化物粒子OPそれぞれの密度(それぞれ約2.5および4.5)に基づいてよい。従って、灰分離器10を0.3から0.8m/sの速度で流動させることができ、炭素分離器4を0.1から0.6m/sの速度で流動させることができる。
【0043】
第1の実施形態によると、図2に示すように、炭素分離器4と灰分離器10とは、共通の側壁13を介して近接している。炭素分離器4と灰分離器10とは、側壁13の開口部4cによって接続されている。
【0044】
第2の実施形態によると、図3に示すように、炭素分離器4と灰分離器10とは、パイプ4cで接続されている。さらに、酸化物粒子OPおよび灰Aの炭素分離器4から灰分離器10への移送を容易にするために、灰分離器10は炭素分離器4の下側に設置されていてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料物質が酸化物材料と反応して燃料粒子、灰および酸化物粒子を含む反応生成物を生成する第1の炉(2)と、
前記第1の炉(2)で生成された前記酸化物粒子を酸化させる第2の炉(3)と、
前記第1の炉(2)で生成された燃料粒子、灰、および酸化物粒子が入り、燃料粒子から酸化物粒子と灰とを分離するのに適した炭素分離器(4)であって、酸化物粒子の排出および灰の排出のための排気路(4c)を備えた炭素分離器(4)とを備えた燃料物質を転換するためのシステム(1)であって、
前記炭素分離器(4)の前記排気路(4c)は、灰を酸化物粒子から分離する灰分離器(10)に接続されていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステム(1)であって、
前記炭素分離器(4)および前記灰分離器(10)は両方共に流動されており、前記システム(1)は、各分離器(4、10)の流動速度を制御する手段を備えていることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステム(1)であって、
前記灰分離器(10)の流動速度は、前記炭素分離器(4)の流動速度よりも高いことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム(1)であって、
前記炭素分離器(4)および前記灰分離器(10)は、共通の側壁(13)を介して近接した分離器(4、10)であることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム(1)であって、
前記炭素分離器(4)および前記灰分離器(10)は、パイプ(4c)で接続されていることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステム(1)であって、
前記灰分離器(10)は、前記炭素分離器(4)の下側に設置されていることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のシステム(1)であって、
前記燃料炉(2)は、炭素分離器(4)に接続された下側の排気口と高効率分離器(8)に接続された上側の排気口とを備える低効率サイクロン分離器(7)に接続されていることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のシステム(1)であって、
前記燃料物質は石炭であることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のシステム(1)であって、
前記酸化物材料は金属酸化物であることを特徴とするシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−529614(P2012−529614A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514413(P2012−514413)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057300
【国際公開番号】WO2010/142533
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5400 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】