説明

燃料蒸気吸着フィルタ

【課題】 フィルタ本体の燃料蒸気吸着性能を向上させるとともに、燃料蒸気吸着フィルタの製作コストを低減させる。
【解決手段】 本発明に係る燃料蒸気吸着フィルタは、フィルタ本体12と、そのフィルタ本体12の周縁に形成された枠状部14とを備える燃料蒸気吸着フィルタであって、燃料蒸気を吸着可能に構成された吸着剤21と、熱可塑性樹脂繊維により形成されており、吸着剤21をほぼ均等に配置した状態で保持する吸着剤保持部と、その吸着剤保持部の周囲に位置する周縁部とからなる不織布24fとを有しており、フィルタ本体12は吸着剤21と不織布24fの吸着剤保持部とから構成されており、枠状部14は不織布24fの周縁部が熱を加えられた状態でプレスされることにより形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ本体と、そのフィルタ本体の周囲に形成された枠状部とを備えており、その枠状部によってエンジンの吸気通路に取付けられ、前記フィルタ本体の部分でエンジンの停止時に前記吸気通路内の燃料蒸気を吸着する構成の燃料蒸気吸着フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する従来の燃料蒸気吸着フィルタが特許文献1に記載されている。
前記燃料蒸気吸着フィルタは、図10(B)に示すように、フィルタ本体92と、そのフィルタ本体92の周囲に形成された枠状部94とを備えている。フィルタ本体92は、エンジンの動作時に吸入空気が通過し、エンジンの停止時に吸気通路内の燃料蒸気を吸着する部分であり、粒状活性炭からなる吸着剤92bと、その吸着剤92bを包んで保持する不織布92cと、その不織布92cをエンジンのバックファイヤから保護する樹脂製のネット92mとから構成されている。燃料蒸気吸着フィルタの枠状部94は、図10(A)に示すように、フィルタ本体92の縁部92fを成形型96にインサートした状態で、その成形型96内に樹脂を射出することにより成形される。これによって、枠状部94は、成形と同時にフィルタ本体92と一体化される。枠状部94には、周方向に複数個の取付孔94h(図10(C)参照)が形成されており、それらの取付孔94hにエアクリーナハウジング98の熱カシメ用ピン98pが通される。そして、各々の熱カシメ用ピン98pの先端部分が熱カシメされることによって、燃料蒸気吸着フィルタはエアクリーナハウジング98に取付けられる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−42017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した燃料蒸気吸着フィルタでは、枠状部94を射出成形する際に、図10(A)に示すように、フィルタ本体92の縁部92fを成形型96の合わせ面96a,96bの間にセットする必要がある。このため、フィルタ本体92の縁部92fには、粒状活性炭からなる吸着剤92bを配置することはできない。したがって、成形完了後の燃料蒸気吸着フィルタには、枠状部94の内側に一定幅で吸着剤92bが存在しない範囲(フィルタ本体92の縁部92f)がある。前述のように、フィルタ本体92は通気可能なように不織布92c等によって形成されているため、そのフィルタ本体92の縁部92fも通気可能である。したがって、エンジンの停止時にフィルタ本体92の縁部92fから燃料蒸気が漏れ出ることが考えられる。
さらに、上記燃料蒸気吸着フィルタでは枠状部94を射出成形するため、その枠状部94の成形用に別の材料が必要となり、コストが掛るという問題もある。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、燃料蒸気吸着フィルタの燃料蒸気吸着性能を向上させるとともに、その燃料蒸気吸着フィルタの製作コスト低減を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、フィルタ本体と、そのフィルタ本体の周囲に形成された枠状部とを備えており、その枠状部によってエンジンの吸気通路に取付けられ、前記フィルタ本体の部分でエンジンの停止時に前記吸気通路内の燃料蒸気を吸着可能な構成の燃料蒸気吸着フィルタであって、燃料蒸気を吸着可能に構成された吸着剤と、熱可塑性樹脂繊維により形成されており、前記吸着剤をほぼ均等に配置した状態で保持する吸着剤保持部と、その吸着剤保持部の周囲に位置する周縁部とからなる不織布とを有しており、前記フィルタ本体は、前記吸着剤と前記不織布の吸着剤保持部とから構成されており、前記枠状部は、前記不織布の周縁部が熱を加えられた状態でプレスされることにより形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、不織布の周縁部が熱を加えられた状態でプレス(熱プレス)されることで枠状部が形成される構成のため、従来のように射出成形により枠状部を形成する場合と比較して、枠状部の近傍まで吸着剤を配置できるようになる。したがって、枠状部の内側の吸着剤が存在しない範囲(フィルタ本体の縁部)を従来よりも小さくできる。これによって、吸着剤が存在しない範囲から漏れ出る燃料蒸気量が少なくなり、燃料蒸気吸着フィルタの燃料蒸気吸着性能が向上する。
また、不織布の周縁が熱プレスされることにより枠状部が形成されるため、その枠状部の成形用に別の材料が必要とされない。このため、燃料蒸気吸着フィルタの製作コストを低減させることができる。
【0008】
請求項2の発明によると、不織布の表面には、エンジンのバックファイヤからその不織布を保護可能な樹脂製のネットが被せられており、その樹脂製のネットの周縁部が前記不織布の周縁部と共にプレスされることで、枠状部が形成されていることを特徴とする。
即ち、樹脂製のネットの周縁部が不織布と共にプレスされることにより枠状部が形成されるため、枠状部の強度が向上する。
【0009】
請求項3の発明によると、不織布の吸着剤保持部は、吸着剤を包み込む保持層と、その保持層を覆うカバー層とから構成されており、前記不織布の周縁部は、前記保持層に対して所定寸法だけ外側に張出した前記カバー層の周縁部によって構成されており、前記不織布の吸着剤保持部を構成する前記保持層とカバー層とが連結手段により互いに連結されていることを特徴とする。
このため、不織布の吸着剤保持部を構成する保持層からカバー層が剥離することがなくなり、カバー層が保持層に対してバタツクことによる吸着剤の磨耗、割れ等を防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、燃料蒸気吸着フィルタの燃料蒸気吸着性能を向上させることができるとともに、その燃料蒸気吸着フィルタの製作コスト低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施形態1)
以下、図1〜図5に基づいて、本発明の実施形態1に係る燃料蒸気吸着フィルタについて説明する。本実施形態に係る燃料蒸気吸着フィルタは、エンジンのエアクリーナ内に取付けられて、エンジンの停止時に吸気通路内の燃料蒸気を吸着する働きをする。ここで、図1は本実施形態に係る燃料蒸気吸着フィルタの模式縦断面図等、図2は燃料蒸気吸着フィルタの製造方法の一例を表す模式図である。図3は燃料蒸気吸着フィルタの取付け構造を表す模式縦断面(図4のIII矢視拡大図)、図4は燃料蒸気吸着フィルタを備えるエアクリーナの全体縦断面図である。また、図5は燃料蒸気吸着フィルタの変更例を表す模式縦断面図等である。
【0012】
先ず、図4に基づいて、燃料蒸気吸着フィルタ10を備えるエアクリーナ1の説明を簡単に行う。
エアクリーナ1のハウジング2は、合成樹脂による成形品であり、インレットポート3eを有するロアハウジング3と、アウトレットポート4dを有するアッパハウジング4とから構成されている。ロアハウジング3の上面とアッパハウジング4の下面とはそれぞれ開放されており、ロアハウジング3の開放縁3fとアッパハウジング4の開放縁4fとの間にエアクリーナエレメント5の外周枠5eが挟み込まれている(図3参照)。これによって、エアクリーナエレメント5がハウジング2内を横断するように固定され、このエアクリーナエレメント5によってエンジンに供給される空気が濾過される。
【0013】
エアクリーナエレメント5の下流側(図4において上側)には、同じくハウジング2内を横断するように、燃料蒸気吸着フィルタ10が装着されている。燃料蒸気吸着フィルタ10は、エンジンの運転時に吸入空気が通過可能なように構成されており、エンジンの停止時に吸気通路内の燃料蒸気を吸着してその燃料蒸気が外部に漏れ出るのを防止する働きをする。燃料蒸気吸着フィルタ10は、エンジンの運転時に吸入空気が通過可能、かつエンジンの停止時に燃料蒸気を吸着可能なフィルタ本体12と、そのフィルタ本体12の周囲に設けられた枠状部14とから構成されている。そして、その枠状部14が後記する方法によってアッパハウジング4の内壁面に形成された支持部4sに固定されることで、燃料蒸気吸着フィルタ10はハウジング2内に装着される。
ここで、アッパハウジング4の支持部4sは、そのアッパハウジング4の開放縁に沿ってほぼ等間隔で複数箇所に形成されている。
即ち、エアクリーナ1のハウジング2が本発明の吸気通路に相当する。
【0014】
燃料蒸気吸着フィルタ10のフィルタ本体12は、図1(A)(B)に示すように、燃料蒸気の吸着剤である粒状の活性炭21を保持する保持層23と、その保持層23を覆うカバー層24と、そのカバー層24を覆うネット26とから構成されている。なお、図1(A)は枠状部14を成形する前の状態を表しており、図1(B)は枠状部14を成形した後の状態を表している。
保持層23は、活性炭21を熱可塑性樹脂繊維からなる不織布23fによって包み込んで保持する層であり、例えば、図2(A)に示す不織布製造装置40により形成される。
【0015】
不織布製造装置40はほぼ水平方向に延びるコンベヤ41を備えており、そのコンベヤ41の上方に紡糸ノズル44が下向きに設置されている。紡糸ノズル44は、例えばメルトブローン法を利用した紡糸ノズルであり、中央の樹脂噴射口44bから噴射された溶融樹脂に対して熱風噴出口44aから熱風を吹付けて樹脂繊維Fを紡出する。また、紡糸ノズル44の上流側(図中左側)には、紡糸ノズル44から紡出された樹脂繊維Fに対して粒状の活性炭21を自然落下させて接触させる活性炭供給装置50が設置されている。
紡糸ノズル44が半溶融状態の樹脂繊維Fを紡出している状態で、活性炭供給装置50が活性炭21を落下させると、その活性炭21が樹脂繊維Fの移動空間内でそれらの樹脂繊維Fと接触し、活性炭21が樹脂繊維Fに包み込まれた状態でコンベヤ41上に積層される。したがって、コンベヤ41を定速運転させることにより、活性炭21が不織布23fによって満遍なく包み込まれた保持層23(図2(B)参照)をほぼ一定厚みで形成することができる。
【0016】
前記保持層23は、図1に示すように、同じく熱可塑性樹脂繊維の不織布24fからなるカバー層24によって表裏から挟まれている。カバー層24は、保持層23から脱落した活性炭21を保持するための層であり、エンジンの運転時における通気性を考慮して、その保持層23の不織布23fよりも目が粗い不織布24fにより形成されている。また、カバー層24の不織布24fの繊維径は、エンジンのバックファイヤによる溶損等を考慮して保持層23の不織布23fの繊維径よりも大きく設定されている。
カバー層24は、保持層23上に不織布製造装置40の紡糸ノズル44から樹脂繊維Fを紡出させることにより形成される。
ここで、保持層23の不織布23f及びカバー層24の不織布24fの材料には、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が使用される。
さらに、カバー層24は、熱可塑性樹脂により形成されたネット26によって表裏から挟まれている。ネット26は、エンジンのバックファイヤからカバー層24及び保持層23の不織布23f,24fを保護するためのものであり、カバー層24よりも繊維径が大きく、かつ目が粗い網目状に形成されている。ネット26の材料には、融点の高い樹脂、例えば、ポリプロピレン(PP)等が使用され、その目付けは約450g/m2(表裏合わせて約900g/m2)に設定されている。
【0017】
カバー層24及びネット26は、図1(A)に示すように、活性炭21を保持する保持層23よりも一定寸法だけ外側に張出している。即ち、活性炭21の保持層23は、カバー層24及びネット26の周縁部よりも内側に配置されている。そして、カバー層24及びネット26の周縁部が、図1(B)に示すように、熱を加えられた状態でプレス(熱プレス)される。これによって、カバー層24の不織布24f及びネット26の周縁部が部分的に溶融した状態で圧着され、板状の枠状部14が形成される。
ここで、上記したネット26(目付け450g/m2のポリプロピレン製)を熱プレスすると厚み寸法約1mmの隙間のない板ができる。しかし、ネット26の目付けを低減させたとしても、そのネット26と共にカバー層24の不織布24fをプレスしているために、枠状部14に隙間が生じることはない。なお、カバー層24及びネット26の周縁部分にグラスファイバー等の補強材を混入すれば、枠状部14の強度を向上させることができる。
即ち、上記した保持層23と、カバー層24の周縁部よりも内側の範囲とが本発明の不織布の吸着剤保持部に相当し、前記カバー層24の周縁部が本発明の不織布の周縁部に相当する。
【0018】
燃料蒸気吸着フィルタ10の枠状部14は、図3に示すように、アッパハウジング4の各々の支持部4sに対して超音波溶着により固定される。これによって、燃料蒸気吸着フィルタ10はアッパハウジング4内の所定位置に装着される。なお、超音波溶着の代わりに振動融着やレーザ融着、インパルス溶着等を使用することも可能である。また、超音波溶着等が困難な場合には枠状部14を接着剤等によりアッパハウジング4の支持部4sに固定することも可能である。
また、支持部4sをアッパハウジング4の全周に渡って形成し、燃料蒸気吸着フィルタ10の枠状部14の全周を接着することも可能である。
【0019】
上記したように、本実施形態では、図2に示すように、紡糸ノズル44が樹脂繊維Fを紡出している状態で、その樹脂繊維Fの移動空間中に活性炭21を落下させ、活性炭21を樹脂繊維Fで包み込むように保持層23を形成する例を示した。しかし、図5(A)に示すように、例えば、樹脂コーティングしたガラス繊維からなるネット25に粒状の活性炭21を接着剤で貼り付けることにより、保持層23を形成することも可能である。
また、本実施形態では、カバー層24の表面をネット26で覆う例を示したが、図5(B)に示すように、カバー層24を構成する不織布24fの繊維径や目付け、あるいは材料を調整することで、エンジンのバックファイヤ対策を図り、ネット26を省略することも可能である。
【0020】
このように、本実施形態に係る燃料蒸気吸着フィルタ10によると、活性炭21が存在しない不織布24fの周縁部が熱を加えられた状態でプレス(熱プレス)されることにより、枠状部14が板状に形成されている。このように、不織布24fの周縁部が熱プレスされることで枠状部14が形成される構成のため、従来のように射出成形により枠状部を形成する場合と比較して、枠状部14の近傍まで活性炭21を配置できるようになる。したがって、枠状部14の内側の活性炭21が存在しない範囲(フィルタ本体12の縁部)を従来よりも小さくできる。これによって、活性炭21が存在しない範囲から漏れ出る燃料蒸気量が少なくなり、燃料蒸気吸着フィルタ10の燃料蒸気吸着性能が向上する。
また、不織布24fの周縁部が熱プレスされることにより枠状部14が形成されるため、その枠状部14の成形用に別の材料が必要となることがない。このため、燃料蒸気吸着フィルタ10の製作コストを低減させることができる。
【0021】
また、保持層23を覆うカバー層24には、エンジンのバックファイヤからその保持層23及びカバー層24の不織布23f,24fを保護する樹脂製のネット26が被せられており、そのネット26の周縁部がカバー層24の不織布24fと共にプレスされることで、枠状部14が形成されている。このため、カバー層24の不織布24fのみを熱プレスする場合と比較して、枠状部14の強度が向上する。
【0022】
(実施形態2)
以下、図6〜図9に基づいて、本発明の実施形態2に係る燃料蒸気吸着フィルタ60の説明を行う。実施形態1に係る燃料蒸気吸着フィルタ10では、活性炭21を保持する保持層23の不織布23fに対して不織布製造装置40の紡糸ノズル44から樹脂繊維Fを紡出することにより、その保持層23に対してカバー層24を積層するようにしている。しかし、保持層23を構成する樹脂繊維Fとカバー層24を構成する樹脂繊維Fとの接着力が小さい場合には、フィルタ本体12の位置でカバー層24が保持層23から経時的に剥離することがある。カバー層24が保持層23から剥離すると、カバー層24が保持層23に対してバタついてその保持層23の活性炭21が磨耗、あるいは割れたり、その活性炭21の微粉が燃料蒸気吸着フィルタ10から脱落することがある。
この問題を解決するため、本実施形態に係る燃料蒸気吸着フィルタ60は、カバー層24が保持層23から剥離し難いように構成されている。
【0023】
即ち、燃料蒸気吸着フィルタ60は、図6に示すように、保持層23とカバー層24との間に接着シート62を備えている。接着シート62は熱を与えると低融点で溶融する樹脂シートであり、所定温度で加熱されることにより、保持層23の不織布23f及びカバー層24の不織布24fに浸透し、両者23,24を接着する。接着シート62は、通気性を考慮して、保持層23とカバー層24との接着に必要な部位にのみ配置するのが好ましい。
また、図7に示すように、保持層23とカバー層24との間に接着ネット64を配置することも可能である。接着ネット64は、例えば、樹脂コーティングされたガラス繊維からなるネットであり、その表面に液状接着剤が塗布されている。このため、保持層23とカバー層24との間に接着ネット64を挟み込むことにより、接着ネット64の接着剤によって保持層23とカバー層24とが接着される。なお、接着ネット64を使用しているため、エンジンの吸気が通過する際の圧損を抑制することができる。
【0024】
また、図8に示すように、保持層23とカバー層24とを表裏から一対の加熱ピン66(熱プレス66)によって挟んで押圧することにより、その保持層23の不織布23fとカバー層24の不織布24fとを部分的に融着させることも可能である。このように、一対の加熱ピン66で不織布23f,24fを部分的に融着させる方法によれば、図9に示すように、カバー層24を樹脂製のネット26で覆った後でも、不織布23f,24fの相互間、及び不織布24fとネット26間を融着させることが可能になる。
さらに、上記方法以外にも、例えば、保持層23とカバー層24とを部分的に縫い合わせて連結することも可能である。また、ニードルパンチを使用して、保持層23の不織布23fの繊維とカバー層24の不織布24fの繊維とを絡めて、その保持層23とカバー層24とを部分的に連結することも可能である。さらには、液状の接着剤を部分的に上下層に渡って浸透させ、固化させることにより、連結することも可能である。
【0025】
即ち、上記した接着シート62、接着ネット64及び加熱ピン66によって融着させられた樹脂等が本発明の連結手段に相当する。
このように、活性炭21を包み込む保持層23とその保持層23を覆うカバー層24とがフィルタ本体12の位置で連結手段(接着シート62等)によって連結されているため、カバー層24が保持層23から剥離し難くなる。これによって、カバー層24が保持層23に対してバタツクことによる活性炭21の磨耗、割れ等を防止できるようになる。
【0026】
ここで、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、実施形態1,2では吸着剤として粒状の活性炭21を使用する例を示したが、活性炭21以外にも燃料蒸気を吸着可能な部材であれば使用可能である。さらに、粒状の活性炭21の代わりに活性炭繊維を使用することも可能である。
また、実施形態1,2では、保持層23の不織布23f及びカバー層24の不織布24fの材料にポリブチレンテレフタレート(PBT)を使用し、ネット26の材料にポリプロピレン(PP)を使用する例を示したが、カバー層24の不織布24fの材料にポリプロピレン(PP)等を使用することも可能である。
また、保持層23の不織布23f及びカバー層24の不織布24fの材料に熱収縮性の樹脂を使用することも可能である。これにより、燃料蒸気吸着フィルタ10の枠状部14を形成した後、フィルタ本体12の保持層23及びカバー層24を冷却処理することにより、その保持層23及びカバー層24で枠状部14を内側に引っ張り、前記枠状部14のうねりを抑制することができる。
【0027】
以下、実施形態に記載された発明のうちで特許請求の範囲には記載されていない発明を列記する。
請求項3に記載された燃料蒸気吸着フィルタであって、
カバー層の不織布を構成する樹脂繊維の材料は、保持層の不織布を構成する樹脂繊維の材料よりも融点の高いものが使用されている。
(2)(1)に記載された燃料蒸気吸着フィルタであって、
カバー層の不織布を構成する樹脂繊維の繊維径は、保持層の不織布を構成する樹脂繊維の繊維径よりも大きく設定されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の本実施形態1に係る燃料蒸気吸着フィルタにおけるフィルタ本体の模式縦断面図(A図)及び枠状部を表す模式縦断面図(B図)である。
【図2】燃料蒸気吸着フィルタの製造方法の一例を表す模式図(A図)及び保持層の模式断面図(B図)である。
【図3】燃料蒸気吸着フィルタの取付け構造を表す模式縦断面(図4のIII矢視拡大図)である。
【図4】燃料蒸気吸着フィルタを備えるエアクリーナの全体縦断面図である。
【図5】燃料蒸気吸着フィルタの変更例を表す模式縦断面図(A図、B図)である。
【図6】本発明の本実施形態2に係る燃料蒸気吸着フィルタの模式縦断面図である。
【図7】燃料蒸気吸着フィルタの変更例を表す模式縦断面図である。
【図8】燃料蒸気吸着フィルタの変更例を表す模式縦断面図である。
【図9】燃料蒸気吸着フィルタの変更例を表す模式縦断面図である。
【図10】従来の燃料蒸気吸着フィルタの製造方法を表す模式縦断面図(A図)、その燃料蒸気吸着フィルタの模式縦断面図(B図)及び燃料蒸気吸着フィルタの取付け構造を表す模式縦断面図(C図)である。
【符号の説明】
【0029】
2 ハウジング(吸気通路)
12 フィルタ本体
14 枠状部
21 活性炭(吸着剤)
23 保持層
23f 不織布
24 カバー層
24f 不織布
26 ネット
62 接着シート(連結手段)
64 接着ネット(連結手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ本体と、そのフィルタ本体の周囲に形成された枠状部とを備えており、その枠状部によってエンジンの吸気通路に取付けられ、前記フィルタ本体の部分でエンジンの停止時に前記吸気通路内の燃料蒸気を吸着可能な構成の燃料蒸気吸着フィルタであって、
燃料蒸気を吸着可能に構成された吸着剤と、
熱可塑性樹脂繊維により形成されており、前記吸着剤をほぼ均等に配置した状態で保持する吸着剤保持部と、その吸着剤保持部の周囲に位置する周縁部とからなる不織布とを有しており、
前記フィルタ本体は、前記吸着剤と前記不織布の吸着剤保持部とから構成されており、
前記枠状部は、前記不織布の周縁部が熱を加えられた状態でプレスされることにより形成されていることを特徴とする燃料蒸気吸着フィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載された燃料蒸気吸着フィルタであって、
不織布の表面には、エンジンのバックファイヤからその不織布を保護可能な樹脂製のネットが被せられており、その樹脂製のネットの周縁部が前記不織布の周縁部と共にプレスされることで、枠状部が形成されていることを特徴とする燃料蒸気吸着フィルタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された燃料蒸気吸着フィルタであって、
不織布の吸着剤保持部は、吸着剤を包み込む保持層と、その保持層を覆うカバー層とから構成されており、
前記不織布の周縁部は、前記保持層に対して所定寸法だけ外側に張出した前記カバー層の周縁部によって構成されており、
前記不織布の吸着剤保持部を構成する前記保持層とカバー層とが連結手段により互いに連結されていることを特徴とする燃料蒸気吸着フィルタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−2730(P2006−2730A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182617(P2004−182617)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】