説明

燃料配合物

(i)C4−C8ジアルキルエーテル(DAE);(ii)ナフサ燃料成分;ならびに(iii)低沸点炭化水素、エーテル類、およびこれらの混合物から選択される低沸点成分;を含有する圧縮点火(CI)(一般にはディーゼル)燃料配合物。該配合物は、(1)ナフサ燃料成分を副生物としてもたらす方法でガソリン燃料配合物を製造すること;および(2)CI燃料配合物が得られるよう、ナフサ副生物の少なくとも一部とC4−C8のDAEおよび低沸点成分(iii)とをブレンドすること;によってガソリン燃料配合物と共に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮点火燃料配合物、それらの製造、およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
環境上の利益のために、そして益々厳しくなっている規制要求事項に従うために、自動車燃料に使用されるバイオ燃料の量を増やす必要がある。
バイオ燃料は、一般には生物源から誘導される可燃燃料であり、したがって“油井から自動車まで”(すなわち、供給源から燃焼まで)の温室効果ガスの排出量が少なくなる。火花点火エンジンに使用するためのガソリン燃料では、最も一般的なバイオ燃料はアルコール、特にエタノールである。これらは通常、ごく普通のガソリン燃料成分とブレンドされる。ディーゼルエンジンに使用する場合、従来のディーゼル燃料成分と最も一般的にブレンドされるバイオ燃料は、菜種油メチルエステル、大豆油メチルエステル、およびヤシ油メチルエステル等の脂肪酸メチルエステル(FAME)である。しかしながら、FAMEとそれらの酸化生成物はエンジンオイル中に堆積する傾向があり、したがって多くのディーゼルエンジン中で燃焼される燃料においては、FAMEの使用量が10容量%以下に制限されている。FAMEはさらに、より高い濃度では、燃料噴射器の汚損を引き起こすことがある。FAMEはさらに、エタノールと比較して製造するのにより多くのコストがかかり、それらの世界生産高はかなり低い。
【0003】
ジエチルエーテル(DEE)は、バイオエタノール(すなわち、生物源から誘導されるエタノール)から製造することができる成分である。揮発性が高く、自動点火温度が低いので、低温条件でのエンジン始動を促進するのに使用することができる。使用に際しては、一般にエアロゾルとして配合される。しかしながら、ジエチルエーテルは引火限界が並外れて広いことから、セタン特性が良好であるにもかかわらず、圧縮点火燃料として使用するには不適となる。貯蔵タンクやパイプラインにおいて、空気との爆発性混合物を形成する可能性があるからである。ディーゼル燃料およびDEE燃料の沸点と引火点との間のミスマッチはさらに、これら2つのブレンドが爆発性の気相混合物を生じる可能性がある、ということを意味している。このため、DEEは、圧縮点火燃料成分としてはほとんど注目されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の問題点を克服できるか、あるいは少なくとも軽減することができる新規のバイオ燃料含有圧縮点火燃料配合物を提供するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、(i)C4−C8ジアルキルエーテル(DAE);(ii)ナフサ燃料成分;ならびに(iii)低沸点炭化水素、エーテル類、およびこれらの混合物から選択される低沸点成分;を含有する圧縮点火(CI)燃料配合物が提供される。
【0006】
“圧縮点火”もしくは“CI”燃料配合物は、圧縮点火(CI)エンジンにおいて使用するのに適した及び/又は適合させた燃料配合物である。CI燃料配合物は、具体的には、ディーゼルエンジンにおいて使用するのに適した及び/又は適合させたディーゼル燃料配合物であってよい。
【0007】
ナフサは、その物理化学的特性(特に、揮発性と引火点)により、ジエチルエーテル(DEE)等のDAEとブレンドするのに好適である。ブレンドして得られる混合物は、ナフサだけを使用して達成できるよりも高いセタン価を有していて、なおかつ低沸点成分(iii)を含み、その特性は、爆発性の燃料混合物を生じることなく安全に貯蔵・配送することができると同時に、蒸発ガスの排出量に対して適切な制御レベルを保持する、というようなものである。したがって本発明は、より高い濃度のFAMEを使用することで生じうるインジェクター汚損やエンジンオイル希釈という面倒な事態を引き起こすことなく、CI燃料において比較的高いバイオ燃料濃度の使用を可能にする。
【0008】
本発明の配合物に対しては、多くの潜在的利点がある。DAEはFAMEより高い濃度にて使用することができ、したがってより高いバイオエネルギー含量が得られる。その結果、温室効果ガスの排出量が大幅に減少しうる。さらに、DAEは、従来のディーゼル燃料より煤と微粒子の排出量が少ないと同時に、ナフサの炭素含量が比較的少ない(従来のディーゼルガスオイルと比較して)ことから、微粒子の生成を少なくするのにも役立ちうる。これら2つのファクターが組み合わさって、本発明の配合物にかかわる、CIエンジン中の微粒子トラップに対する負荷が少なくなる。
【0009】
さらなる工業上の利点は、アルコール(特にエタノール)をガソリン燃料成分に対する代替品として使用してその使用量を増やすと、モーターオイルのガソリンプール中の、未使用のナフサ燃料成分とC4炭化水素の余剰がより多くなる、という事実から生じる。本発明により、燃料製造業者は、これらの余剰を利用することができるようになると同時に、CI燃料配合物中に使用されるバイオ燃料の割合が増大する。したがって本発明は、ガソリン燃料中へのアルコールの高容量使用に対応することができる。
【0010】
本発明の配合物では、ジアルキルエーテル(i)は、対称ジアルキルエーテルであっても、あるいは非対称ジアルキルエーテルであってもよく、適切なのは対称ジアルキルエーテルである。対称ジアルキルエーテルは、合計で4〜8個の炭素原子を有する。その2つのアルキル基は、直鎖アルキル基であってよい(すなわち、エチル、n−プロピル、およびn−ブチルから選択される)。ジアルキルエーテルは、例えばジエチルエーテル(DEE)、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、およびこれらの混合物から選択することができる。ある実施態様では、ジアルキルエーテルはDEEである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ある実施態様では、ジアルキルエーテル(i)は、40以上の、あるいは45もしくは50以上の実測セタン価を有するC4−C8ジアルキルエーテルである。こうしたジアルキルエーテルを使用することで、ナフサ含有燃料配合物のセタン価を増大させることができる。
【0012】
本発明において使用されるDAEは、任意の公知の供給源(これらの中の多くが既に市販されている)から得ることができる。例えばDEEは、例えばアルミナ触媒上での低温転化を使用して、エタノール(陸上にあるバイオマスから製造される、現在最もコスト効率の高いバイオ燃料)の脱水により合成することができる。したがって、糖、澱粉、およびセルロース等の、エタノールの生物学的供給源も、本発明のバイオ燃料含有配合物用のDEEの供給源として使用することができる。
【0013】
ナフサ燃料成分(ii)は、炭化水素を含有する液体炭化水素蒸留物燃料成分であり、一般には205℃未満(例えば40〜205℃)にて沸騰する(ASTM D−86またはEN ISO 3405)。種々のタイプの広範囲のナフサを成分(ii)として使用することができる。成分(ii)は、例えば、“軽質ナフサ”(一般には100℃未満の沸点を有する成分)、“重質ナフサ(一般には100〜205℃の沸点を有する成分)”、またはこれらの混合物であってよい。成分(ii)の成分(あるいはその大部分、例えば95重量%以上)は、一般には5以上(通常は5〜12)の炭素原子を有する炭化水素であり、通常はパラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、および芳香族炭化水素である。成分(ii)は、一般には約20〜55(より一般的には約30〜40)のセタン価(ASTM D613)を有し、通常は20重量%未満の芳香族炭化水素を含有する。このような特性は、ある程度はナフサの供給源によって異なる。例えば、製油所ナフサの場合は、それが誘導される原油のタイプによって、あるいは合成ナフサの場合は、温度、圧力、触媒、および他の合成条件によって異なる。
【0014】
成分(ii)は、任意の適切な供給源から得ることができる。成分(ii)は、例えば石油、コールタール、天然ガス、または木材(特に石油)から誘導することができる。これとは別に、成分(ii)は、例えばフィッシャー・トロプシュ合成からの合成生成物であってもよい。ある実施態様では、成分(ii)が生物学的供給源から誘導され、したがって本発明の配合物のほとんど(全てではないが)を生物由来にすることが可能となる。
【0015】
本発明のある実施態様では、ナフサ燃料成分は、フィッシャー・トロプシュ合成の生成物である。なぜなら、このような生成物は、石油由来の対応物質より優れたセタン特性を有する傾向があるからである。ナフサ燃料成分は、例えば、フィッシャー・トロプシュ軽油合成の副生物として生成させることができる。フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ燃料成分は、最高で220℃の、または最高で180℃もしくは175℃の最終沸点を有してよい。フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ燃料成分の初留点は、少なくとも25℃、または少なくとも30℃もしくは35℃であってよい。沸点はASTM D86を使用して測定することができる。フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ燃料成分は、15℃にて0.67〜0.73g/cmの密度(ASTM D4052またはEN ISO3675)、及び/又は5mg/kg以下の、もしくは2mg/kg以下のイオウ含量(ASTM D2622またはEN ISO20846)を有してよい。
【0016】
フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ成分は、少なくとも70重量%の、または少なくとも80重量%の、または少なくとも90もしくは95もしくは98重量%の、または少なくとも99もしくは99.5もしくはさらには99.8重量%のパラフィン系成分(一般には、イソパラフィンとノルマルパラフィン)で構成されてよい。フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ成分は、20〜98重量%またはそれ以上のノルマルパラフィンを含有してよい。成分中におけるイソパラフィンとノルマルパラフィンとの重量比は、0.1より大きいのが適切であり、最大で12であってよく、2〜6であるのが適切である。
【0017】
フィッシャー・トロプシュ法によれば、フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサは、イオウと窒素を本質的に含有しないか、あるいは検出できないレベルにて含有する。こうしたヘテロ原子を含有する化合物は、フィッシャー・トロプシュ触媒に対しては触媒毒として作用する傾向があり、したがって合成ガス供給物から除去される。さらに、通常の形で操作されるフィッシャー・トロプシュ法では、芳香族成分は全く生成しないか、もしくは実質的に生成しない。フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサの芳香族化合物含量(ASTM D4629に従って測定するのが適切である)は、一般的には2重量%以下、または1重量%以下、または0.5もしくは0.2もしくは0.1重量%以下である。フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ成分のオレフィン含量は、2重量%以下、または1重量%以下、または0.5重量%以下であってよい。
【0018】
大まかに言えば、フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサは、例えば石油由来ナフサと比較して極性成分(特に極性界面活性剤)のレベルが比較的低い。このような極性成分としては、例えば、酸素化物、イオウ含有化合物、および窒素含有化合物などがある。フィッシャー・トロプシュ誘導ナフサ中のイオウのレベルが低いということは、一般には、酸素化物と窒素含有化合物のレベルも低いということを示している。なぜなら、これらは全て同じ処理法によって除去されるからである。
【0019】
ナフサとDAE(例えばDEE)の引火点は、従来のディーゼル燃料成分に対する引火点より低い。したがって、DAEとナフサとの混合物においては、液体燃料の上のガス状組成物(例えば、貯蔵タンクやパイプラインにおける)が、混合物の上方引火限界より高い温度にてそのまま存在する燃料蒸気を多量に含有しなければならないことが重要である。このことは、DAEおよびナフサ燃料成分と低沸点成分(iii)とを組み合わせることによって達成される。成分(iii)は、50℃以下または20℃以下の沸点を有するのが適切である。成分(iii)は、例えば、−50℃以上または−20℃以上(例えば、−50℃〜+50℃または−20℃〜+20℃)の沸点を有してよい。沸点が約−20℃未満であるということは、蒸発損失による蒸気圧の低下があまりにも速やかに起き、その結果、貯蔵および輸送時に爆発性蒸気が形成される可能性がある、ということを意味する。しかしながら、沸点が約20℃より高いと、燃料配合物中の成分(iii)の濃度をかなり高くする必要があり、その結果、ナフサ成分(ii)のブレンド比率が減少して望ましくない。
【0020】
本発明のある実施態様では、成分(iii)は、C3−C5炭化水素(例えば、プロパン、プロペン、n−ブタン、イソブタン、イソブテン、ブテ−1−エン、シス−ブテ−2−エン、トランス−ブテ−2−エン、2−メチル−ブテ−1−エン、3−メチル−ブテ−1−エン、2−メチル−ブテ−2−エン、n−ペンタン、イソペンタン、ペンテ−1−エン、シス−ペンテ−2−エン、トランス−ペンテ−2−エン、シクロペンタン、またはシクロペンテン)およびこれらの混合物から選択される炭化水素を含む。ある実施態様では、成分(iii)は、n−ブタン、イソブタン、イソブテン、ブテ−1−エン、シス−ブテ−2−エン、トランス−ブテ−2−エン、3−メチル−ブテ−1−エン、およびこれらの混合物から選択される炭化水素を含む。ある実施態様では、成分(iii)はC4炭化水素(特にn−ブタン、イソブタン、またはこれらの混合物)を含む。
【0021】
他の実施態様では、成分(iii)は、一般には、プロパン、プロペン、n−ブタン、イソブタン、イソブテン、ブテ−1−エン、シス−ブテ−2−エン、トランス−ブテ−2−エン、n−ペンタン、イソペンタン、および比較的少量の他の低沸点炭化水素の混合物を含んでなる製油所ストリームである“製油所ブタン”を含む。
【0022】
ある実施態様では、成分(iii)は、ジアルキルエーテル、特にジ(C1−C3アルキル)エーテル(例えば、ジメチルエーテルやメチルエチルエーテル)を含む。ある実施態様では、成分(iii)がジメチルエーテルではないことが好ましい場合がある。ある実施態様では、成分(iii)がDEEではないことが好ましい場合がある。ある実施態様では、成分(iii)はメチルエチルエーテルを含む。
【0023】
したがって低沸点成分(iii)は、n−ブタン、イソブタン、イソブテン、ブテ−1−エン、シス−ブテ−2−エン、トランス−ブテ−2−エン、3−メチル−ブテ−1−エン、メチルエチルエーテル、およびこれらの混合物から選択される成分を含んでよい。成分(iii)は、イソブタン、n−ブタン、メチルエチルエーテル、およびこれらの混合物から選択される成分を含んでよい。場合によっては、エーテル類およびエーテル類の混合物が好ましいことがある。エーテル類のセタン価がC3−C5炭化水素のセタン価より高い傾向があるからである。
【0024】
低沸点成分(iii)がエーテル類である場合、該エーテル類は、配合物中のDAE(i)とは異なるのが適切である。
本発明のある実施態様では、成分(iii)は、2種以上の異なる低沸点物質の混合物を含んでよい。成分(iii)を構成する個々の物質は、上記のタイプであってよい。
【0025】
本発明の燃料配合物は、20以上の、または30もしくは40以上の実測セタン価(ASTM D613)を有するのが適切である。本発明の燃料配合物は、45以上の、または50もしくは51以上の、または場合によっては55以上のセタン価を有してよい。本発明の燃料配合物のセタン価は、例えば最大で70であってよい。本発明の配合物のセタン価は、炭化水素に対する線形ブレンド則(linear blending rules)と共にエーテル成分に対する適切なブレンドセタン価(blending cetane numbers)を使用して、個々の成分(i)〜(iii)のセタン価から算出することができる。
【0026】
本発明の燃料配合物は、0℃でのその上方引火限界より大きい蒸気組成物を含むのが適切である。本発明の燃料配合物は、0℃での上方引火限界の少なくとも1.2倍、1.5倍、1.8倍、または2倍である蒸気組成物を含んでよい。本発明の燃料配合物は、特に、配合物が、より温暖な気候における夏グレードの燃料として使用するよう意図されている場合は、5℃、8℃、または10℃でのその上方引火限界より大きいか、あるいは少なくとも関連倍数(the relevant multiple)である蒸気組成物を含んでよい。
【0027】
引火限界により、混合物中の可燃性ガスの割合が決まり、この引火限界の間で該混合物は可燃性である。下方引火限界(LFL)が、まだ燃焼しうる最も希薄な混合物(すなわち、燃焼性ガスを最少の割合にて含む混合物)を表わしているのに対して、上方引火限界(UFL)は、最も引火しやすい混合物を表わしている。燃料配合物もしくは燃料成分に対するLFL値とUFL値は、例えば、Vaivads RHらによる、SAE950401の“Flammability tests of alcohol/gasoline vapours”に記載の方法を使用して測定することができる。
【0028】
燃料成分の混合物に対する引火限界は、可燃成分の体積分率に対するル・シャトリエの混合則を使用して算出することができる:
【0029】
【数1】

【0030】
蒸気の組成はさらに、Vaivads RHらによって説明されている方法(上記参照)を使用して測定することもできる。
本発明の配合物は、37.8℃にて100kPa以下の蒸気圧(リード蒸気圧、RVP)を有するのが適切である。本発明の配合物は、特に、夏グレードの燃料として使用するよう意図されている場合は、60kPa以下のRVPを有してよい。蒸気圧は、標準的な試験法であるEN13016−1を使用して測定することができる。燃料成分の混合物に対する蒸気圧は、後述の実施例に記載のように算出することができる。
【0031】
ある実施態様では、燃料配合物は、0℃での上方引火限界より大きい蒸気組成、および100kPa以下のリード蒸気圧(EN13016−1)を有する。このような配合物は、冬グレードの燃料として使用するのに適しているであろう。
【0032】
他の実施態様では、燃料配合物は、10℃での上方引火限界より大きい蒸気組成、および60kPa以下のリード蒸気圧(EN13016−1)を有する。このような配合物は、夏グレードの燃料として使用するのに適しているであろう。
【0033】
本発明の配合物は、圧縮点火(一般にはディーゼル)内燃機関での使用に適していなければならない。このような機関は、過酷な使用に耐えるものであっても、あるいは低負荷用のものであってもよい。本発明の配合物は特に、自動車燃料として使用するのに適しているであろう。
【0034】
本発明の燃料配合物では、DAEの濃度は、0.01容量%以上、または0.1もしくは0.5もしくは1容量%以上(例えば、少なくとも2もしくは5もしくは10容量%、または場合によっては、少なくとも15もしくは20もしくは25もしくは30もしくは35もしくは40重量%)であってよい。DAEの濃度は、最大で95もしくは94容量%、または最大で90もしくは85もしくは80もしくは75もしくは60容量%(例えば、最大で55もしくは50もしくは45もしくは40もしくは35もしくは30容量%)であってよい。ある実施態様では、DAEの濃度は、1〜60容量%または5〜50容量%または10〜30容量%であってよい。
【0035】
配合物中のナフサ燃料成分(ii)の濃度は、0.01容量%以上、または0.1もしくは1もしくは5容量%以上であってよい。ナフサ燃料成分(ii)の濃度は、10容量%以上、または15もしくは20もしくは25もしくは30もしくは35もしくは40容量%以上(例えば、少なくとも45もしくは50容量%)であってよい。ナフサ燃料成分(ii)の濃度は、最大で98容量%(例えば、最大で95もしくは90もしくは85容量%)であってよい。ナフサ燃料成分(ii)の濃度は、例えば45〜95容量%の範囲であってよい。
【0036】
配合物中の低沸点成分(iii)の濃度は、0.01容量%以上、または0.1もしくは0.5容量%以上(例えば、少なくとも1もしくは2もしくは5もしくは8容量%以上)であってよい。低沸点成分(iii)の濃度は、最大で30容量%(例えば、最大で25もしくは20容量%、または場合によっては最大で15もしくは12もしくは10容量%)であってよい。適切な濃度は、成分(iii)の性質、および全体的な燃料配合物に関して必要とされる特性に依存する。より低温の気候において使用するための冬グレードの配合物は、例えば、より高濃度の成分(iii)を必要とする。
【0037】
成分(i)と成分(iii)との相対濃度は、全体としての配合物に対する所望の特性(例えば、所望の最小セタン価及び/又は蒸気組成、及び/又は所望の最大RVP、理想的には3つ全て)を達成するように選定することができる。したがって相対濃度は、個々の成分の物理化学的特性にも依存する。適切な濃度は、個々の成分の特性(例えばセタン価)に適切なブレンド則を適用することによって算出することができ、三角形3方向組成プロット(a triangle three−way composition plot)を使用して視覚化することができる。これらの目的を達成するためには、成分(具体的にはエーテル類)の幾つかの特性に対し、ブレンド数(blending numbers)を使用する必要がある。例えば、本発明の燃料配合物のセタン価を算出する場合、DEEに対するブレンドセタン価を約90にすることができる。
【0038】
後述の実施例において適切な濃度比が記載されている。成分(iii)の特定の最小濃度は、配合物の気相組成において燃料含量が充分に高い一方で、濃度が高すぎることで蒸発ガスに対する制御を低下させる可能性があるということが確実である必要がある。
【0039】
本発明の燃料配合物は、圧縮点火(特にディーゼル)燃料に使用するのに適した標準的な燃料添加剤もしくは製油所添加剤を含有してよい。多くのこうした添加剤が知られており、市販されている。本発明の燃料配合物は、過酸化物(例えば、ジエチルエーテルヒドロペルオキシドや爆発性のジエチルエーテルペルオキシド)を形成しやすいというDAEの傾向を低下させるための酸化防止剤を含有してよい。市販のDEEは、微量の酸化防止剤(例えばBHT)を含有することが多く、これらの酸化防止剤も、本発明の燃料配合物中に組み込むことができる。
【0040】
本発明の燃料配合物は潤滑性向上添加剤を含有してよい。本発明の燃料配合物は、粘度調整剤または他の粘度増大用の燃料成分もしくは添加剤を含有してよい。
ある実施態様では、本発明の燃料配合物は、10容量%未満のアルコール、特にC1−C4もしくはC1−C3もしくはC1−C2脂肪族アルコール(例えば、メタノール、ブタノール、および特にエタノール)を含有する。本発明の燃料配合物は、このようなアルコールを8もしくは5もしくは3容量%未満にて含有してよい。場合によっては、本発明の燃料配合物は、このようなアルコールを全く含有しなくてもよいし、あるいは実質的に含有しなくてもよい(例えば、1容量%未満にて含有する)。
【0041】
ある実施態様では、本発明の配合物は、一般には25℃〜210℃もしくは220℃の沸点を有していて、火花点火(ガソリン)エンジンに使用するのに適している液体炭化水素燃料成分であるガソリン燃料成分を20容量%未満の量にて含有する。本発明の配合物は、このような成分を15もしくは10もしくは5もしくは3容量%未満の量にて含有してよい。場合によっては、本発明の配合物は、このような成分を全く含有しなくてもよいし、あるいは実質的に含有しなくてもよい(例えば、1容量%未満にて含有する)。
【0042】
本発明の配合物は、CIエンジン内での燃焼に適した、1種以上の追加のCI燃料成分を含有してよい。追加のCI燃料成分は、例えば、公知のタイプのディーゼル燃料成分であってよい。ディーゼル燃料成分は、一般的には液体炭化水素中間留分燃料であり、より一般的には軽油である。ディーゼル燃料成分は石油由来であってよい。これとは別に、ディーゼル燃料成分は合成物質であってもよく、例えばフィッシャー・トロプシュ縮合の生成物であってよい。ディーゼル燃料成分は、生物学的供給源から誘導することができる。
【0043】
追加のCI燃料成分は、一般には150〜370℃の範囲にて沸騰する(ASTM D86またはEN ISO3405)。追加のCI燃料成分は、40以上、または45もしくは50もしくは51以上の実測セタン価(ASTM D613)を有するのが適切である。
【0044】
本発明の燃料配合物中における追加のCI燃料成分の濃度は、0.1〜60容量%、または0.1〜50もしくは40もしくは30容量%、または0.1〜20もしくは10容量%の範囲のようである。
【0045】
本発明の第2の態様によれば、CI燃料配合物の製造方法が提供され、該製造方法は、(i)C4−C8DAE;(ii)ナフサ燃料成分;および(iii)低沸点炭化水素、エーテル、およびこれらの混合物から選択される低沸点成分とを、そして必要に応じて1種以上の燃料添加剤とをブレンドすることを含む。本発明のメリット(例えば、微粒子排出物と油井から自動車までの温室効果ガス排出物を低減させるという社会への利益)をできるだけ大きくするために、本発明の製造方法を使用して、少なくとも1,000リットルの燃料配合物、または少なくとも5,000もしくは10,000もしくは20,000もしくは50,000リットルの配合物を製造することができる。
【0046】
本発明の第3の態様は、内燃機関及び/又は内燃機関によって駆動される車両の操作方法を提供し、該操作方法は、エンジンの燃焼室中に本発明の第1の態様によるCI燃料配合物を導入することを含む。エンジンは、圧縮点火(一般にはディーゼル)エンジンであるのが好ましい。エンジンは、ロータリーポンプ、インラインポンプ、ユニットポンプ、電子ユニットインジェクタ、またはコモンレールタイプの直接噴射タイプであっても、あるいは間接噴射タイプであってもよい。エンジンは、過酷な使用に耐えるエンジンであっても、あるいは低負荷用のエンジンであってもよい。エンジンは、比較的低粘度の燃料と共に使用するよう適合されている燃料ポンプ及び/又はシーリング材を装備することができる。DAEとナフサは共に、従来のディーゼル燃料成分より低い粘度を有するからである。代わりに、あるいはさらに、エンジンは、比較的低い燃料噴射圧力にて(例えば、従来のディーゼルエンジンの圧力の20%以下の圧力にて、あるいは従来のディーゼルエンジンの圧力の15もしくは10もしくは5もしくは3もしくは2%以下の圧力にて)操作することができる。ある実施態様では、エンジンはコモンレールタイプである。
【0047】
第4の実施態様によれば、ガソリン燃料配合物とCI燃料配合物の製造方法が提供され、該製造方法は、(1)ナフサ燃料成分を副生物としてもたらす仕方でガソリン燃料配合物を作製する工程;および(2)CI燃料配合物が得られるよう、ナフサ副生物の少なくとも一部と、C4−C8DAEおよび上記したタイプの低沸点成分(iii)とを、そして必要に応じて他の燃料成分もしくは添加剤とをブレンドする工程;を含む。この文脈においては、“副生物”とは、工程(1)において作製されるガソリン燃料配合物中には使用されない生成物を意味する。
【0048】
工程(1)は、原油等の供給源から、あるいはフィッシャー・トロプシュ縮合反応等の合成ルートによって、ナフサ燃料成分を含む燃料成分を生成させること;およびナフサ燃料成分の全て未満をガソリン燃料配合物中に使用すること;を含んでよい。工程(1)は、例えば、ガソリン配合物を作製するために、ナフサ燃料成分のある量をアルコール(特にエタノール)等の酸素化物で置き換えることを含んでよい。工程(1)はさらに、C3−C5(特にC4)炭化水素をさらなる副生物として生成してもよく、この場合、工程(2)は、DAEおよびナフサ副生物と、低沸点成分(iii)の代わりに、あるいは低沸点成分(iii)のほかに、このさらなる副生物の少なくとも一部とをブレンドすることを含んでよい。
【0049】
本明細書の説明および特許請求の範囲の全体にわたって、“含む(comprise)”や“含有する(contain)”という用語、およびこれらの用語のバリエーション〔例えば、“含む(comprising)”や“含む(comprises)”〕は、“含むが限定しない”ということを意味しており、他の部分、添加剤、成分、整数、または工程を除外していない。さらに、特に文脈によって必要とされない限り、単数形は複数形を含む。とりわけ不定冠詞が使用されている場合、特に文脈によって必要とされない限り、その規定は、単数のほかに複数も意図していると理解すべきである。
【0050】
本発明の各態様の好ましい特徴は、他の態様のいずれかと関連して説明されているとおりである。本発明の他の特徴は、下記の実施例から明らかとなろう。一般的に言えば、本発明は、本明細書に開示されている特徴の全ての新規特徴、または全ての新規組み合わせにも適用される(添付の全ての特許請求の範囲および図面も含めて)。したがって、本発明の特定の態様、実施態様、または実施例と関連して説明されている特徴、整数値、特性、化合物、化学成分、または化学的群は、互いに相容れない場合を除いて、本明細書に記載の他の全ての態様、実施態様、または実施例にも適用可能であると理解すべきである。さらに、特に明記しない限り、本明細書に開示の任意の特徴は、同一もしくは類似の目的を満たす代替の特徴で置き換えることができる。
【0051】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例よって本発明が限定されることはない。
【実施例】
【0052】
実施例1
本発明のCI燃料配合物は、DEE、ナフサ燃料成分、および低沸点炭化水素混合物C4を、下記の表1に示す濃度にてブレンドすることによって製造することができる。
【0053】
【表1】

【0054】
ナフサ燃料成分は、Shell(商標)“Gas−to−Liquid”(GTL)processを使用して合成されるフィッシャー・トロプシュ誘導ナフサである。このフィッシャー・トロプシュ誘導ナフサは、44のセタン価、59〜182℃の沸点範囲、および15℃にて685kg/mの密度を有する(いずれもGC−FIDデータから測定)。ナフサの組成を下記の表2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
低沸点炭化水素混合物C4は、下記の表3に示す組成を有する製油所C4ストリーム(Shell社から市販)である。
【0057】
【表3】

【0058】
表4は、得られるブレンドのそれぞれに対する、ならびにニートの成分に対する、下方発熱量(正味の発熱量)(LHV)、リード蒸気圧(RVP)、セタン価、CN、酸素含量、水素:炭素比(H/C)、上方引火限界(UFL)、蒸気の組成、および密度を示す。ブレンドに対する数値は、受け入れられているブレンド則を使用して算出した。例えば蒸気圧は、Antoineの式(Clausius−Clapeyronの関係から誘導)を使用して算出した。
【0059】
【表4】

【0060】
表1と表4からわかるように、DAEとフィッシャー・トロプシュ誘導ナフサおよび低沸点炭化水素成分とのブレンドは、CIエンジンにおいて使用する上で容認できる範囲内のセタン価、RVP、および上方引火限界を有するように調整することができる。本発明によれば、これらのブレンドはCIエンジンにおいて燃焼させることができ、さらに、現行の液体燃料分配システム内にて安全に取り扱うこともできる。
【0061】
本発明の燃料配合物の重要な利点は、従来のガソリン燃料やディーゼル燃料を使用する場合と比較して、生成する可能性のある温室効果ガス(GHG)排出物が減少することである。比較的低いDAE濃度においてさえも、より高い炭素含量のディーゼル燃料成分ではなく、低炭素含量のナフサを燃焼させるという利点がある。しかしながら、DAE酸素化物の濃度が高くなるほど、GHGの節減がより大きくなる。
【0062】
実施例2
20.0容量%のDEE、73.1容量%のナフサ燃料成分、および6.9容量%のブタンをブレンドすることによって、本発明のさらなるCI燃料配合物を製造した。
【0063】
ナフサは、37.5のセタン価(reformulyzerデータから決定)と180℃未満の最終沸点(ASTM D86)とを有する炭化水素溶媒(Shell社から市販)のブレンドであった。ナフサの組成を下記の表5に示す。
【0064】
【表5】

【0065】
CI燃料配合物の特性を前述のように算出した。得られた結果を下記の表6に示す。RVPと密度は、それぞれEN13016−1およびASTM D4052に従って測定し、68.3kPaおよび723kg/mの値が得られた。表6はさらに、ナフサ燃料成分についての関連した特性を示す。
【0066】
【表6】

【0067】
16:1の圧縮比を有する0.537リットルの4バルブ単気筒ディーゼルエンジンは、4つの異なる速度と負荷条件に対し、この燃料配合物により適切に動作した。点火の問題やエンジン性能上の問題は起こらなかった。
【0068】
したがって、本発明の配合物は、圧縮点火エンジンでの使用に適したものとなるのに必要なセタン特性と他の特性を有するように調整することができる。
実施例3
本実施例では、ディーゼルエンジンでの燃焼に関して、本発明のCI燃料配合物によって生成される排出物を評価した。
【0069】
使用したエンジンは、16:1の圧縮比を有する0.537リットルの単気筒ディーゼルエンジンであった。排ガス再循環(EGR)を行うのにエンジン排ガスを使用し、使用時には、排ガスの背圧を入口圧力より0.2バール高く設定した。再循環ガスを、入口空気温度と同じ温度に冷却した。シリンダー内圧は、水冷式の圧電式圧力トランスデューサー〔Kistler(商標)6041A〕を使用して測定した。AVLシステムにより250サイクルに対して圧力信号を得、発熱量と発熱速度をスクリーン上でモニターした。
【0070】
排気ガスはHoriba(商標)MEXA−9500Hシステムを使用して測定し、煤はAVL(商標)415スモークメーターによって測定した。
燃料は、0.13mmの孔径を有するBosch(商標)7孔インジェクターによって噴射した。エンジンは、噴射圧力、クランク角位置、およびインジェクターパルスの持続時間を制御するのに使用される独立した燃料噴射システムを有した。吸気温度を公称40℃に保持し、ヒーターと圧縮中間冷却器を使用して制御した。燃料の流量は、「Dec JE,SAE 970873,1997,“A conceptual model of DI diesel combustion based on laser sheet imaging”」からの式4.64と4.65を使用して、そして実測空気消費率と排ガス量を使用して算出した。
【0071】
CI燃料配合物は、実施例2において使用した配合物であった。この配合物の排出性能を、下記の表7に示す組成と特性を有する市販のイオウ非含有ディーゼル燃料(ZSD、Shell社から市販)の排出性能と比較した。このディーゼル燃料は、製油所生成物であって、EN 590に適合した。
【0072】
【表7】

【0073】
排出物の結果を下記の表8〜11に示す。これらのデータを得るのに使用した条件は以下のとおりである:
表8− 燃料:ZSD;エンジン速度2,000rpm;IMEP6.9バール;入口マニホールド圧1.4バール;入口マニホールド温度40℃;噴射圧力1300バール;排気マニホールド圧1.6バール;燃料噴射のタイミングを、上死点の後に10°のクランク角にてピーク圧力を達成するように変える。
【0074】
表9− 燃料:実施例2のブレンド;エンジン速度2,000rpm;IMEP6.9バール;入口マニホールド圧1.4バール;入口マニホールド温度40℃;噴射圧力1300バール;排気マニホールド圧1.6バール;燃料噴射のタイミングを、上死点の後に10°のクランク角にてピーク圧力を達成するように変える。
【0075】
表10− 燃料:ZSD;エンジン速度2,000rpm;IMEP9.0バール;入口マニホールド圧1.6バール;入口マニホールド温度40℃;噴射圧力1300バール;排気マニホールド圧1.8バール;燃料噴射のタイミングを、上死点の後に10°のクランク角にてピーク圧力を達成するように変える。
【0076】
表11− 燃料:実施例2のブレンド;エンジン速度2,000rpm;IMEP9.0バール;入口マニホールド圧1.6バール;入口マニホールド温度40℃;噴射圧力1300バール;排気マニホールド圧1.8バール;燃料噴射のタイミングを、上死点の後に10°のクランク角にてピーク圧力を達成するように変える。
【0077】
【表8】

【0078】
【表9】

【0079】
【表10】

【0080】
【表11】

【0081】
表8〜11のデータは、2種の燃料を使用して、EGRの速度を増大させたときに、NOの対出力比放出量(brake specific NO engine−out emissions)がどのように減少するかを示している(表8と表10、および表9と表11を比較)。しかしながら、重要なことに、燃料を従来のディーゼル燃料ZSDから本発明のCI配合物に変えることによって、煙の排出量が大幅に減少する〔表8と9、および表10と11のFSN(Filter Smoke Number;フィルタースモーク数)を比較〕。この効果は、微粒子トラップに対する負担を軽減し、したがって再生処理を施す必要性の頻度が減少する。
【0082】
煙排出量が減少すると、HCとCOの対出力比放出量がわずかに増大するが、これらは、酸化触媒(路上走行車に一般的に取り付けられている)によってCOとHOに転化され、したがってCIエンジンからの排ガスが減少する。
【0083】
実施例4
本発明の他のCI燃料配合物を、ジエチルエーテル、水素処理した製油所ナフサ成分、および低沸点成分C4Aを下記の表12に示す濃度にてブレンドすることによって製造した。
【0084】
【表12】

【0085】
ナフサ燃料成分は、石油由来の水素処理製油所ナフサ(Shell社から市販)である。該ナフサは、32のセタン価、104〜186℃の沸点範囲、および15℃にて733kg/mの密度を有する(GC−FIDデータから決定)。該ナフサの組成を下記の表13に示す。
【0086】
【表13】

【0087】
低沸点成分C4Aは、35容量%のイソブタンと65容量%のn−ブタンとの混合物である。
表14は、得られるブレンドのそれぞれに対する、ならびにニートの成分に対する下方発熱量(正味の発熱量)LHV、リード蒸気圧RVP、セタン価CN、酸素含量、水素:炭素比H/C、上方引火限界(UFL)、蒸気の組成、および密度を示す。ブレンドに対する数値は、受け入れられているブレンド則を使用して算出した。例えば蒸気圧は、Antoineの式(Clausius−Clapeyronの関係から誘導)を使用して算出した。
【0088】
【表14】

【0089】
表12と14からわかるように、DEEと石油由来製油所ナフサおよび低沸点炭化水素成分とのブレンドは、CIエンジンにおいて使用する上で容認できる範囲内のセタン価、RVP、および上方引火限界を有するように調整することができる。これらのブレンドはCIエンジンにて燃焼させることができ、さらに、現行の液体燃料分配システム内で安全に取り扱うことができる。
【0090】
実施例5
本発明のさらに他のCI燃料配合物は、ジブチルエーテル(DBE)、水素処理した製油所ナフサ成分、および低沸点成分C4Aを、下記の表15に示す濃度にてブレンドすることによって製造することができる。
【0091】
【表15】

【0092】
ナフサ燃料成分は、実施例4に記載の、水素処理した石油由来製油所ナフサ(Shell社から市販)である。低沸点成分C4Aは、実施例4に記載のブタン混合物である。
表16は、得られるブレンドのそれぞれに対する、ならびにニートの成分に対する下方発熱量(正味の発熱量)LHV、リード蒸気圧RVP、セタン価CN、酸素含量、水素:炭素比H/C、上方引火限界(UFL)、蒸気の組成、および密度を示す。ブレンドに対する数値は、前述の実施例におけるように、受け入れられているブレンド則を使用して算出した。
【0093】
【表16】

【0094】
表15と16からわかるように、DBEと石油由来製油所ナフサとのブレンド、および低沸点炭化水素成分は、CIエンジンにおいて使用する上で容認できる範囲内のセタン価、RVP、および上方引火限界を有するように調整することができる。この場合も、これらのブレンドはCIエンジンにて燃焼させることができ、さらに、現行の液体燃料分配システム内で安全に取り扱うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)C4−C8ジアルキルエーテル(DAE);(ii)ナフサ燃料成分;ならびに(iii)低沸点炭化水素、エーテル類、およびこれらの混合物から選択される低沸点成分;を含有する圧縮点火(CI)燃料配合物。
【請求項2】
ジアルキルエーテルがDEEである、請求項1に記載の燃料配合物。
【請求項3】
ナフサ燃料成分がフィッシャー・トロプシュ誘導される、請求項1または請求項2に記載の燃料配合物。
【請求項4】
低沸点成分がC3−C5炭化水素またはこれらの混合物を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料配合物。
【請求項5】
低沸点成分が−20℃〜+20℃の沸点を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料配合物。
【請求項6】
40以上の実測セタン価(ASTM D613)を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料配合物。
【請求項7】
0℃での上方引火限界より高い蒸気組成と100kPa以下のリード蒸気圧(EN 13016−1)を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料配合物。
【請求項8】
10℃での上方引火限界より高い蒸気組成と60kPa以下のリード蒸気圧(EN 13016−1)を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の燃料配合物。
【請求項9】
DAEの濃度が5〜50容量%である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の燃料配合物。
【請求項10】
ナフサ燃料成分の濃度が10〜98容量%である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の燃料配合物。
【請求項11】
低沸点成分(iii)の濃度が0.5〜30容量%である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の燃料配合物。
【請求項12】
10容量%未満のアルコールを含有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の燃料配合物。
【請求項13】
(i)C4−C8のDAE;(ii)ナフサ燃料成分;および(iii)低沸点炭化水素、エーテル類、およびこれらの混合物から選択される低沸点成分;そして必要に応じて1種以上の燃料添加剤をブレンドすることを含む、CI燃料配合物の製造方法。
【請求項14】
エンジンの燃焼室に請求項1〜12のいずれか1項に記載のCI燃料配合物を導入することを含む、内燃機関及び/又は内燃機関によって駆動される車両の操作方法。
【請求項15】
(1)ナフサ燃料成分を副生物としてもたらす方法でガソリン燃料配合物を製造すること;および(2)CI燃料配合物が得られるよう、ナフサ副生物の少なくとも一部と、C4−C8のDAEおよび低沸点炭化水素、エーテル類、およびこれらの混合物から選択される低沸点成分、そして必要に応じて他の燃料成分もしくは添加剤とをブレンドすること;を含む、ガソリン燃料配合物とCI燃料配合物の製造方法。

【公表番号】特表2013−510940(P2013−510940A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539314(P2012−539314)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067674
【国際公開番号】WO2011/061221
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】