燃料電池、その製造方法および分解方法
【課題】簡素な構造で、均一に電池スタックを締め付けられるようにする。
【解決手段】燃料電池は、複数の単位セルを積層した電池スタック1と、電池スタック1の積層方向の両端に配置されたエンドプレート2,3で挟んだ構造である。電池スタック1の積層方向には、エンドプレート2の外側に位置する端部からエンドプレート3の外側に位置する端部に延びるロッド5が配置される。エンドプレート2,3には、電池スタック1の積層方向にロッド5が貫通するように配置されるロッド受容部とロッド5が電池スタック1の積層方向に垂直な方向に通過可能なようにロッド受容部から外周まで延びる開口部とが互いに対向する位置に形成されている。ロッド5には、エンドプレート2,3の外側にロッド受容部よりも外径が大きい頭部がそれぞれ形成されていて、そのロッド5はロッド受容部に配置される。
【解決手段】燃料電池は、複数の単位セルを積層した電池スタック1と、電池スタック1の積層方向の両端に配置されたエンドプレート2,3で挟んだ構造である。電池スタック1の積層方向には、エンドプレート2の外側に位置する端部からエンドプレート3の外側に位置する端部に延びるロッド5が配置される。エンドプレート2,3には、電池スタック1の積層方向にロッド5が貫通するように配置されるロッド受容部とロッド5が電池スタック1の積層方向に垂直な方向に通過可能なようにロッド受容部から外周まで延びる開口部とが互いに対向する位置に形成されている。ロッド5には、エンドプレート2,3の外側にロッド受容部よりも外径が大きい頭部がそれぞれ形成されていて、そのロッド5はロッド受容部に配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池、その製造方法および分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高効率のエネルギー変換装置として燃料電池が注目を集めている。燃料電池は電解質の相違により幾つかの種類に分類される。このうち水素イオン伝導性を有する固体高分子を電解質とする固体高分子電解質型燃料電池は、コンパクトな構造で高出力密度を得ることができ、また簡素なシステムによる運転が可能であることから、宇宙用や車両用あるいは家庭用電源として大きく注目されている。高分子電解質として、最近では、パーフルオロカーボンスルホン酸膜などが用いられている。
【0003】
高分子電解質を電解質膜として用いる固体高分子電解質型燃料電池は、通常、単位セルを複数積層した電池スタックを有している。単位セル中の膜−電極接合体は、高分子電解質膜を相互に挟持するように配置された燃料極および酸化剤極を有している。燃料極および酸化剤極の基板は、それぞれ導電性多孔質材料からなる。
【0004】
また、燃料極および酸化剤極の基板上には、カーボン粉と撥水材を含むガス拡散層がそれぞれ形成されている。さらに、燃料極および酸化剤極のガス拡散層上には、触媒と電解質、あるいは撥水材も加えた触媒層がそれぞれ担持されている。
【0005】
電池スタックは、積層された単位セル相互の接触面に対して垂直方向に接触面圧が均等となるように、たとえば上下に配置されたエンドプレートと、締め付けスタッドおよび締め付けナットを介して加圧保持される。加圧保持を維持することにより、電極反応面の接触抵抗を低減し、燃料極や酸化剤極のガスシールを維持するとともに、電極面内のガス溝間のショートパスを防止してガス配流のばらつきを抑制する。これにより、電池特性を、安定して良好に維持することが可能となる。
【0006】
電池スタックを加圧保持する方法は、たとえば特許文献1ないし特許文献6に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−182684号公報
【特許文献2】特開平7−272745号公報
【特許文献3】特開2004−179057号公報
【特許文献4】特開平5−234613号公報
【特許文献5】特開平7−29592号公報
【特許文献6】特開平6−13100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1ないし特許文献3に開示されているような、電池スタックおよびその両端のエンドプレートを締め付けスタッドとナットによって加圧保持する構造では、締め付けスタッド毎にナットの取付け作業を行なう必要がある。また、電池スタックの締め付け圧が所定の管理値の範囲内になるように、スタッド毎にナットの取付け位置を調整する必要がある。取外し時にも、スタッド毎にナットの緩め作業が必要である。このため、電池スタックの組立ておよび分解の作業の簡素化が困難である。
【0009】
また、特許文献3に開示されているように、エンドプレートを挟み込むタイプレートを導入すると、さらに部品点数が増加する。このため、取付け作業やコストの増加につながるおそれがある。
【0010】
特許文献4に開示されているようなターンバックルを用いる構造でも、それぞれのターンバックルについて調節作業が必要となり、組み立ておよび分解の作業の簡素化が困難である。
【0011】
さらに、特許文献5に開示されているような、単位セル4辺に配置されるバネ部材によって単位セル同士を加圧保持する構造では、一台の燃料電池を製作するために多数のバネ部材が必要である。また、バネ部材の寸法などによって締め付け圧力が変わってしまうため、単位セル内に均一な圧力を得ることが難しい。
【0012】
特許文献6に開示されているようなベローズを用いる構造では、長期間に亘ってベローズ内の圧力を維持することが困難であり、この維持のために複雑な機構が必要となる場合もある。
【0013】
そこで、本発明は、簡素な構造で、均一に電池スタックを締め付けられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的を達成するため、本発明は、燃料電池において、複数の単位セルを積層した電池スタックと、前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に板状に広がって、前記電池スタックをその積層方向の両端で挟むように配置された第1および第2のエンドプレートと、前記電池スタックの積層方向に、前記第1のエンドプレートの外側に位置する第1の端部から、前記第2のエンドプレートの外側に位置する第2の端部に延びるロッドと、を有し、前記第1および前記第2のエンドプレートには、前記電池スタックの積層方向に前記ロッドが貫通するように配置されるロッド受容部と前記ロッドが前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に通過可能なように前記ロッド受容部から外周まで延びる開口部とが互いに対向する位置に形成されていて、前記ロッドには、前記第1および前記第2のエンドプレートの外側に前記ロッド受容部よりも外径が大きい頭部がそれぞれ形成されていて、そのロッドは前記ロッド受容部に配置されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、複数の単位セルを積層した電池スタックと第1の端部から第2の端部に延びてその軸方向の隣接部よりも外径が大きい頭部がその軸方向の2箇所に形成されたロッドとを備えた燃料電池の製造方法において、前記ロッドが貫通するように配置できるロッド受容部とそのロッド受容部につながって前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に前記ロッドが通過可能なように前記エンドプレートの外周まで延びる開口部とが互いに対向する位置に形成された第1および第2のエンドプレートで前記電池スタックを挟む工程と、前記ロッドを、前記電池スタックの積層方向を軸として、ロッドが貫通するように配置できる前記頭部の外径よりも小さなロッド受容部が互いに対向する位置に形成された一対のエンドプレートで前記電池スタックを挟む工程と、前記エンドプレートを介して前記電池スタックを外力により圧縮する圧縮工程と、前記圧縮工程で前記電池スタックを圧縮した状態で、前記電池スタックの積層方向を軸として前記ロッドの2つの頭部の間に前記第1および前記第2のエンドプレートが位置するように、前記ロッドを前記エンドプレートの開口部を通じて前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に移動させて、配置する嵌込工程と、前記嵌込工程の後に、前記外力を解放する工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、複数の単位セルを積層した電池スタックと、前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に板状に広がって、前記電池スタックをその積層方向の両端で挟むように配置された第1および第2のエンドプレートと、前記電池スタックの積層方向に、前記第1のエンドプレートの外側に位置する第1の端部から、前記第2のエンドプレートの外側に位置する第2の端部に延びるロッドと、を備え、前記第1および前記第2のエンドプレートには、前記電池スタックの積層方向に前記ロッドが貫通するように配置されるロッド受容部と前記ロッドが前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に通過可能なように前記ロッド受容部から外周まで延びる開口部とが互いに対向する位置に形成されていて、前記ロッドには、前記第1および前記第2のエンドプレートの外側に前記ロッド受容部よりも外径が大きい頭部がそれぞれ形成されていて、そのロッドは前記ロッド受容部に配置されている燃料電池の分解方法において、前記エンドプレートを介して電池スタックを外力により圧縮する圧縮工程と、前記圧縮工程で前記電池スタックを圧縮した状態で、前記ロッドを前記エンドプレートの開口部を通じて前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に移動させて取り外す取り外し工程と、前記取り外し工程の後に、前記電池スタックを外力により圧縮した状態から解放する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡素な構造で、均一に電池スタックを締め付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池の斜視図である。
【図2】本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池の、図3におけるII−II矢視平面図である。
【図3】図2のIII−III矢視一部断面側面図である。
【図4】本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池に用いるエンドプレートの平面図である。
【図5】図4のV−V矢視一部断面側面図である。
【図6】本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池に用いるロッドの、図7におけるVI−VI矢視側面図である。
【図7】図6におけるVII−VII矢視平断面図である。
【図8】本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池に用いる固定部品の、図9におけるVIII−VIII矢視平面図である。
【図9】図8におけるIX−IX矢視側断面図である。
【図10】本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池に用いる固定部品近傍を拡大した平面図である。
【図11】本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池に用いる固定部品近傍を拡大した部分側断面図である。
【図12】本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池の組み立ての経過を示す図であって、(a)は組み立て前、(b)は組み立て中、(c)は組み立て後の状態を示す側面図である。
【図13】本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池の組み立ての経過を示す図であって、(a)はロッドの取り付け時、(b)は固定部品の取り付け時を示す切り欠き部近傍の拡大平面である。
【図14】本発明に係る第2の実施の形態の燃料電池の、図15におけるXIV−XIV矢視平面図である。
【図15】図14のXV−XV矢視一部断面側面図である。
【図16】本発明に係る第3の実施の形態の燃料電池に用いるエンドプレートの平面図である。
【図17】本発明に係る第4の実施の形態の燃料電池に用いるエンドプレートの突出部近傍の平面図である。
【図18】本発明に係る第5の実施の形態の燃料電池に用いるロッドの側面図である。
【図19】本発明に係る第6の実施の形態の燃料電池に用いるロッドの側面図である。
【図20】本発明に係る第7の実施の形態の燃料電池の、図21におけるXX−XX矢視一部断面側面図である。
【図21】図20のXXI−XXI矢視平面図である。
【図22】本発明に係る第7の実施の形態の燃料電池の組み立ての経過を示す図であって、(a)は組み立て中、(b)は組み立て後の状態を示す側面図である。
【図23】本発明に係る第8の実施の形態の燃料電池の、図24におけるXXIII−XXIII矢視一部断面側面図である。
【図24】図23におけるXXIV−XXIV矢視平面図である。
【図25】本発明に係る第8の実施の形態の燃料電池に用いる第1のエンドプレートの平面図である。
【図26】本発明に係る第8の実施の形態の燃料電池に用いる第2のエンドプレートの平面図である。
【図27】本発明に係る第8の実施の形態の燃料電池の組み立ての経過を示す図であって、(a)は組み立て前、(b)は組み立て中、(c)は組み立て後の状態を示す側面図である。
【図28】本発明に係る第9の実施の形態の燃料電池の経過を示す図であって、(a)は組み立て中、(b)は組み立て後の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る燃料電池の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池の斜視図である。図2は、第1の実施の形態の燃料電池の、図3におけるII−II矢視平面図である。図3は、図2のIII−III矢視一部断面側面図である。
【0021】
燃料電池は、単位セルを複数積層した電池スタック1と、その積層方向の両端で電池スタック1を挟むエンドプレート2,3を有している。
【0022】
単位セルは、それぞれ平面状の電解質膜と、その電解質膜を挟持するように配置された燃料極および酸化剤極を有している。電解質膜としては、パーフルオロカーボンスルホン酸膜などの固体高分子電解質を用いることができる。燃料極および酸化剤極の周囲には、燃料ガスまたは酸化剤ガスが供給されるように適当な空間が形成される。また、単位セルは、隣り合う単位セルの燃料極と酸化剤極とが電気的に直列に接続されるようにセパレータを介して積層されて、電池スタック1を形成している。
【0023】
電池スタック1は、全体としては直方体であり、エンドプレート2,3は、ほぼ正方形の平板状である。エンドプレート2,3には、たとえばステンレス鋼などの金属や、フェノール樹脂、エポキシガラス、ポリエステルガラスなどの熱硬化性樹脂を含むエンジニアリングプラスチックなどを用いることができる。
【0024】
なお、エンドプレート2,3に導電性の低い金属構造材や絶縁性の素材を使用する場合には、電池スタック1とエンドプレート2,3が接する面に導電性の集電板14を配置し、エンドプレート2,3の一部を貫通して集電板14に至る通電部(図示せず)を形成しておく。電池を外部回路に繋ぐ電流ケーブルは、この通電部を通じて接続する。
【0025】
また、燃料電池は、電池スタック1の積層方向に、一方のエンドプレート2の外側から他方のエンドプレート3の外側に延びる円柱状の4本のロッド5を有している。2枚のエンドプレート2,3は、その四隅を貫通する4本のロッド5と、それぞれのロッド5に嵌合された固定部品6とによって、電池スタック1をその積層方向に圧縮するように押さえられている。固定部品6は、エンドプレート2,3の外側の面21,31に接するように配置されている。ここで、エンドプレート2,3の外側の面21,31とは、電池スタック1に接する面22,32に対する反対側の面である。
【0026】
図4は、第1の実施の形態の燃料電池に用いるエンドプレート2の平面図である。図5は、図4のV−V矢視一部断面側面図である。
【0027】
エンドプレート2は、ほぼ正方形の平板状であって、その四隅の近傍に電池スタック1の積層方向に貫通する切り欠き部7が形成されている。
【0028】
切り欠き部7は、内径がロッド5の外径よりも少し大きい概円弧状のロッド受容部71と、ロッド受容部71の内径と等しい幅でエンドプレート2の外周につながる開口部72を有している。また、エンドプレート2の外側の面21には、ロッド受容部71の周囲に、電池スタック1の積層方向に窪んだ段差部8が形成されている。
【0029】
なお、本実施の形態において、電池スタック1を挟む2つのエンドプレート2,3は同一の形状である。
【0030】
エンドプレート2,3に熱硬化性樹脂を用いる場合には加熱成形によって、あるいは、熱可塑性樹脂を用いる場合には加熱溶融して射出成形することによって、切削することなく上述のような形状のエンドプレート2,3を製作することができる。
【0031】
図6は、第1の実施の形態の燃料電池に用いるロッド5の、図7におけるVI−VI矢視側面図である。図7は、図6におけるVII−VII矢視平断面図である。
【0032】
ロッド5には、その軸方向の前後の部分よりも外径が細い細径部51が、軸方向の2箇所に形成されている。
【0033】
図8は、第1の実施の形態の燃料電池に用いる固定部品6の、図9におけるVIII−VIII矢視平面図である。図9は、図8におけるIX−IX矢視側面図である。
【0034】
固定部品6は段差部8の底面81よりも少し小さい円板状で、ロッド5の細径部51に嵌合されるように細径部51よりも少し広い幅で切り欠かれた開口部61が形成されている。
【0035】
図10は、第1の実施の形態の燃料電池に用いる固定部品近傍を拡大した平面図である。図11は、第1の実施の形態の燃料電池に用いる固定部品近傍を拡大した部分側断面図である。
【0036】
固定部品6は、細径部51の軸方向外側の端52と、段差部8の底面81との間に嵌合されている。
【0037】
次に、この燃料電池の組み立て方法について説明する。
【0038】
図12は、第1の実施の形態の燃料電池の組み立ての経過を示す図であって、(a)は組み立て前、(b)は組み立て中、(c)は組み立て後の状態を示す側面図である。図13は、第1の実施の形態の燃料電池の組み立ての経過を示す図であって、(a)はロッドの取り付け時、(b)は固定部品の取り付け時を示す切り欠き部近傍の拡大平面である。
【0039】
この燃料電池を組み立てる際には、まず、図12(a)に示すように、エンドプレート3を組み立て台91に接するように配置し、エンドプレート3の組み立て台91に接する面31に対する反対側の面32に電池スタック1およびエンドプレート2を順次配置する。
【0040】
その後、図12(b)に示すように、組み立て台91と接しない方のエンドプレート2の外側の面21を押し付け装置9によって電池スタック1を圧縮する方向に外力を加えて押す。押し付け装置9は、たとえば油圧もしくは空気圧ジャッキを用いたものである。電池スタック1は全体としては若干弾性を有しているため、押すことによって組み立て後の状態よりも、その積層方向に短くなる。
【0041】
ロッド5は、図13(a)の矢印で示す方向に移動され、切り欠き部7の開口部72からロッド受容部71に導入される。なお、切り欠き部7が開口部72を有しない場合とは異なり、ロッド5は電池スタック1の積層方向と垂直な方向に移動して配置されるため、上方に位置するエンドプレート2よりも上方に、ロッド5を移動させるための空間は不要である。
【0042】
また、電池スタック1が若干短くなっているため、ロッド5の端部に近いほうの細径部51の端52と、エンドプレート2の外側の面21との間には、固定部品6の厚さ以上の間隔が開いていて、固定部品6をロッド5の細径部51に嵌め込むことができる。この際、固定部品6は、図12(b)および図13(b)の矢印で示す方向に移動される。
【0043】
全てのロッド5を配置し、全ての固定部品6を細径部51に嵌めこんだ後に、図12(c)に示すように、押し付け装置9による押し付けをやめて外力を解放すると、電池スタック1は、弾性によって若干積層方向に伸びて、固定部品6は、段差部8に嵌合された状態となる。
【0044】
このようにして、4本のロッド5と一対のエンドプレート2,3は所定の締め付け圧力を保持したまま電池スタック1を固定した状態となる。
【0045】
本実施の形態の燃料電池を分解する場合には、まず、組み立て時と同様に、押し付け装置9により一時的に所定の締め付け圧力まで電池スタック1を仮締め加圧する(図12(b)参照)。加圧によってエンドプレート2,3とロッド5の固定が緩んだ状態で、ロッド5および固定部品6をエンドプレート2,3から取り外す。その後、押し付け装置9による圧縮をやめることにより電池スタック1の締め付けが解放される。これにより、不良セル交換などのメンテナンスや廃棄回収のために、燃料電池を分解することができる。
【0046】
このように、本実施の形態の燃料電池では、電池スタック1は、その積層方向の変位がロッド5および固定部品6によって制限された2枚のエンドプレート2,3によって均等に締め付けられている。その締め付け力は、ロッド5の形状によって決まる2枚のエンドプレートの間隔によって予め規定されている。このため、たとえばスタッドの両端に取り付けたナットの締め付け位置によって、電池スタック1の締め付け力を付与する場合のように、組み立てる度に電池スタック1のナット締め付け位置を計測し調節する必要がない。
【0047】
ロッド5は、その延びる軸方向に垂直な方向に移動させることにより所定の位置に配置することが可能である。このため、たとえばエンドプレート2,3に形成された切り欠き部7の開口部72を経由するので、ロッド5の軸方向からロッド受容部71にロッド5を通す必要がなく、ロッド5の移動距離を短くすることができ、組み立て、分解作業が容易になる。
【0048】
押し付け装置9で、仮締め加圧した固定部品6の取り付け、取り外し時には、ロッド5の細径部51の端52とエンドプレート2,3との間に、固定部品6が通る空隙があるため、取り付け、取り外しが容易である。一方、固定部品6の取付け後には、固定部品6は段差部8に嵌合され、細径部51の軸方向外側の端52とエンドプレート2,3との間に、固定部品6が通る空隙がなくなる。このため、燃料電池の搬送時に加えられる外力や振動などによって、固定部品6がはずれるおそれは小さい。
【0049】
なお、燃料電池の組み立て後の状態において、固定部品6とエンドプレート2,3との摩擦力を所定の大きさ以上に保持すると、固定部品6がはずれることがない。この摩擦力は、固定部品6およびエンドプレート2,3の表面状態によって決まる摩擦係数と、電池スタック1の押し付け圧力によって決まる。そこで、燃料電池の組み立て後の摩擦係数および押し付け圧力によっては、段差部8が形成されていないエンドプレート2,3を用いてもよい。
【0050】
また、本実施の形態の燃料電池は、ロッド5および固定部品6だけでエンドプレートの変位を制限する。このため、たとえば両端をねじ切りしたスタッド、ナットおよびワッシャを用いて加圧保持する場合に比べて、電池スタック1の加圧保持に必要な部品数が少ない。また、燃料電池を組み立てる際に、ナットの締め付け作業が不要であり、作業が容易であるとともに、ナットの締め付け位置を計測して調節する必要もなく、さらに、燃料電池を分解する際にも、ナットを緩める作業などが不要である。
【0051】
エンドプレートを熱硬化性樹脂によって形成する場合には加熱成形でき、熱可塑性樹脂によって形成する場合には射出成形できるため、切削する必要がない。このため、短期間で、低コストのエンドプレートを製造することもできる。
【0052】
なお、本実施の形態の燃料電池に用いる電池スタック1としては、固体高分子型燃料電池でなくても、単位セルの積層方向に固定部品6をロッド5とエンドプレート2,3の間に嵌め合わせる空隙ができる程度まで、その健全性を損なわずに圧縮することができるものであれば、どのようなものにも適用できる。
【0053】
また、エンドプレート2,3とロッド5に導電性材料を用いている場合には、ロッド5および固定部品6がエンドプレート2,3と接触する部分に、絶縁性材料の被覆を施すことにより、電池スタック1の燃料極と酸化剤極間との絶縁を確保することができる。また、絶縁性材料の被覆を施す代わりに、絶縁性材料によって形成されたスペーサーを介装してロッド5および固定部品6を配置してもよい。
【0054】
また、時間の経過に伴う電池スタック1のクリープ変形に起因して締め付け圧力が低下した場合には、厚みが大きい固定部品に変更したり、固定部品6と同様に開口部が形成された調整用スペーサやワッシャを挿入して、締め付け圧力を高めることもできる。
【0055】
[第2の実施の形態]
図14は、本発明に係る第2の実施の形態の燃料電池の、図15におけるXIV−XIV矢視平面図である。図15は、図14のXV−XV矢視一部断面側面図である。
【0056】
本発明に係る第2の実施の形態の燃料電池は、第1の実施の形態とロッドなどの数が異なる。
【0057】
この燃料電池のエンドプレート2,3では、切り欠き部7は正方形の四隅および四辺の中央の合計8箇所に形成されている。これら8箇所の切り欠き部7には、それぞれロッド5が配置されていて、ロッド5の細径部51にはそれぞれ固定部品6が嵌合されている。
【0058】
このように、エンドプレート2,3を締め付けるロッド5の本数は、第1の実施の形態のように4本に限定されるものではなく、本実施の形態のように8本でもよい。さらに、電池スタック1、ロッド5およびエンドプレート2,3などの構成部品の大きさや材質などを考慮して、適宜増減してもよい。
【0059】
[第3の実施の形態]
図16は、本発明に係る第3の実施の形態の燃料電池に用いるエンドプレートの平面図である。
【0060】
本発明に係る第3の実施の形態の燃料電池は、第1の実施の形態の燃料電池とエンドプレートの形状が異なる。
【0061】
本実施の形態の燃料電池に用いるエンドプレート2は、正方形の4隅に、対角線を延長する方向に突出する突出部73を有している。この突出部73に開口部72が形成されて、ロッド受容部71とともに切り欠き部7を形成している。
【0062】
エンドプレート2の外側の面21には、切り欠き部7の周りに段差部8が形成されている。
【0063】
このようなエンドプレート2は、第1の実施の形態の燃料電池に用いるエンドプレートに比べて、同一の電池スタックを用いる際のエンドプレートの成形に要する材料が少なくなり、電池スタック1の外形のコンパクト化に有効である。
【0064】
[第4の実施の形態]
図17は、本発明に係る第4の実施の形態の燃料電池に用いるエンドプレートの突出部近傍の平面図である。
【0065】
本発明に係る第4の実施の形態の燃料電池は、第2の実施の形態の燃料電池とエンドプレートに形成された段差部および固定部品の形状が異なる。
【0066】
本実施の形態の燃料電池に用いるエンドプレート2は、段差部8の形状が六角形に形成されている。固定部品6は、六角形の段差部8に嵌合されるように六角形に形成されている。
【0067】
このようなエンドプレート2および固定部品6を用いると、燃料電池が組み立てられて嵌合された固定部品6は、ロッド5の軸を中心としてその周りに回動できなくなるため、固定部品6に形成された開口部61の切り欠きが、エンドプレート2の開口部72と同じ方向を向くことがない。したがって、固定部品6が回動して、ロッド5がエンドプレート2からはずれるおそれが小さくなる。
【0068】
なお、固定部品6および段差部8の形状は、六角形に限定されるものではなく、固定部品6が段差部8に嵌め合わされた場合に、ロッド5の軸方向の周りの回動が制限される形状であればどのような形状でもよい。たとえば、固定部品6および段差部8を楕円形としてもよい。また、円形の固定部品6であっても、ロッド5と嵌め合わされる開口部61が、その円の中心以外の位置になるように、固定部品6および段差部8を形成してもよい。
【0069】
[第5の実施の形態]
図18は、本発明に係る第5の実施の形態の燃料電池に用いるロッドの側面図である。
【0070】
本発明に係る第5の実施の形態の燃料電池は、第1の実施の形態の燃料電池とロッドの形状が異なる。
【0071】
このロッド5の軸方向の一箇所には、細径部51が形成されていて、細径部51から遠いほうの端部には、ロッド受容部71(たとえば図10参照)の内径よりも径が大きい円板状の頭部63が形成されている。このロッド5の頭部63は、エンドプレートに形成された段差部8(たとえば図11参照)に嵌合されるようになっている。
【0072】
このようなロッド5を用いると、第1の実施の形態の燃料電池よりも固定部品が少なくてすむ。このため、燃料電池の組み立て、分解作業が容易になる。
【0073】
[第6の実施の形態]
本発明に係る第6の実施の形態の燃料電池は、第5の実施の形態の燃料電池とロッドの形状が異なる。
【0074】
図19は、本発明に係る第6の実施の形態の燃料電池に用いるロッドの側面図である。
【0075】
このロッド5の軸方向の両端には、ロッド受容部71(たとえば図10参照)の内径よりも径が大きい円板状の頭部64がそれぞれ形成されている。このロッド5の頭部64は、エンドプレートに形成された段差部8(たとえば図11参照)に嵌合されるようになっている。
【0076】
このようなロッド5を用いると、第5の実施の形態の燃料電池に用いている固定部品が不要である。このため、燃料電池の組み立て、分解作業が容易になる。
【0077】
[第7の実施の形態]
図20は、本発明に係る第7の実施の形態の燃料電池の、図21におけるXX−XX矢視一部断面側面図である。図21は、図20のXXI−XXI矢視平面図である。
【0078】
本実施の形態の燃料電池に用いる電池スタック1、エンドプレート2,3および固定部品6は、第1の実施の形態の燃料電池と同じものである。
【0079】
この燃料電池に用いるロッド5には、一箇所に細径部51が形成されていて、細径部51から遠い方の端部には、ねじ57が形成されている。燃料電池が組み立てられた状態では、ロッド5のねじ57にはナット55が取り付けられて、ナット55とエンドプレート3との間には、両側をワッシャ54,56で挟まれた皿ばね53が配置されている。皿ばね53とエンドプレート3との間のワッシャ56は、段差部8に位置して、エンドプレート3の開口部72の方向へのロッド5の移動を制限している。なお、ナット55の代わりに、第1の実施の形態における細径部51と固定部品6と同様な構成で差し込みビスを用いてもよい。
【0080】
図22は、本実施の形態の燃料電池の組み立ての経過を示す図であって、(a)は組み立て中、(b)は組み立て後の状態を示す側面図である。
【0081】
本実施の形態の燃料電池を組み立てる際には、上述の組み立て中の状態(図22(a))の固定部品6がはずれた状態で床92の上に燃料電池を配置する。その後、押し付け装置9によってエンドプレート2を介して電池スタック1を圧縮する方向に外力を加えて押す。電池スタック1が圧縮された状態で、固定部品6をロッド5の細径部51に嵌め込む(図22(b))。
【0082】
本実施の形態の燃料電池は、弾性体である皿ばね53を用いて電池スタック1を押し付けている。このため、このような弾性体を用いない場合に比べて電池スタック1の押し付け力を長期に亘り維持し、時間の経過に伴う電池スタック1のクリープ変形に起因する締め付け圧力の低下を抑制することもできる。さらに、電池スタック1の積層方向の固定長さは、個体毎にばらつきがある場合には、ナット55の位置を変えることで締め付け圧力を調節することもできる。
【0083】
[第8の実施の形態]
図23は、本発明に係る第8の実施の形態の燃料電池の、図24におけるXXIII−XXIII矢視一部断面側面図である。図24は、図23におけるXXIV−XXIV矢視上面図である。
【0084】
本実施の形態の燃料電池は、第7の実施の形態の燃料電池とエンドプレート2,3の形状が異なっている。また、これら2つのエンドプレート2,3は互いに形状が異なっている。以下の説明では、固定部品6と接する方を第1のエンドプレート2と呼び、他方を第2のエンドプレート3と呼ぶこととする。
【0085】
図25は、第8の実施の形態の燃料電池に用いる第1のエンドプレート2の平面図である。図26は、第8の実施の形態の燃料電池に用いる第2のエンドプレート3の平面図である。
【0086】
本実施の形態における第1および第2のエンドプレート2,3に形成されたロッド受容部71には、第1の実施の形態のエンドプレートのような開口部(図4における符号72参照)はつながらずにシリンダ状の穴形状となっている。固定部品6と接する第1のエンドプレート2のロッド受容部71の周囲には、電池スタック1の積層方向に窪んだ段差部8が形成されている。一方、第2のエンドプレート3のロッド受容部71の周囲には段差部は形成されていない。
【0087】
また、本実施の形態の燃料電池に用いるロッド5は、第7の実施の形態におけるロッド(図20参照)と同じものである。
【0088】
第1のエンドプレート2のロッド受容部71の周りには段差部8が形成されているため、嵌合された固定部品6が移動することなく、固定部品6の開口部61が開いた部分でロッド5からはずれないようになっている。
【0089】
なお、第2のエンドプレート3には、段差部は形成されていない。第2のエンドプレート3のロッド受容部71に挿入したロッド5に取り付けられたナット55や皿ばね53などは、エンドプレート3に対してロッド受容部71により移動が制限されているからである。
【0090】
次に、この燃料電池の組み立て方法について説明する。
【0091】
図27は、本実施の形態の燃料電池の組み立ての経過を示す図であって、(a)は組み立て前、(b)は組み立て中、(c)は組み立て後の状態を示す側面図である。
【0092】
まず、第2のエンドプレート3のロッド受容部71に配置された4本のロッド5を、第2のエンドプレート3とともに、床92に置く。この際、それぞれのロッド5には、ナット55を予め設定した位置まで移動して取り付け、ナット55と第2のエンドプレート3の間には、一対のワッシャ54,56で挟まれた皿ばね53を配置しておく。その後、エンドプレート3の上に、電池スタック1およびもう一つのエンドプレート2を配置する(図27(a)参照)。
【0093】
その後、図27(b)に示すように、上方に位置する第1のエンドプレート2の外側の面21を、押し付け装置9によって電池スタック1を圧縮する方向に外力を加えて押す。下方に位置する第2のエンドプレート3が組み立て台91の上面と接触する位置まで押し付けた状態で締め付ける。
【0094】
床92と組み立て台91の上面との距離は固定されているため、所定のナット55位置から、締め付けられた皿ばね積層高さは常に一定となる。
【0095】
また、ロッド5の端に近いほうの細径部51の端52と、第1のエンドプレート2の外側の面21との間に、固定部品6の厚さ以上の間隔が開くまで押し付け装置9によって外力を加えて押し付けた状態で、固定部品6をロッド5の細径部51に嵌め込む。
【0096】
全てのロッド5を配置し、全ての固定部品6を細径部51に嵌め込んだ後に、図27(c)に示すように、押し付け装置9による押し付けをやめると、電池スタック1は若干積層方向に伸びて、固定部品6は、段差部8に嵌合された状態となる。
【0097】
[第9の実施の形態]
図28は、本発明に係る第9の実施の形態の燃料電池の組み立ての経過を示す図であって、(a)は組み立て中、(b)は組み立て後の状態を示す側面図である。
【0098】
本実施の形態の燃料電池は、第8の実施の形態の燃料電池と同一のものであり、組み立ての際の上下を逆に配置したものである。
【0099】
燃料電池を組み立てる際には、まず、第1のエンドプレート2を組み立て台91の上面に接するように配置し、第1のエンドプレート2の組み立て台91に接する面21に対する反対側の面22に電池スタック1および第2のエンドプレート3を順次配置する。また、ナット55、一組のワッシャ54,56に挟まれた皿ばね53が取り付けられたロッド5を、ロッド受容部71に通す。
【0100】
その後、図28(a)に示すように、ロッド5の上端を、押し付け装置9によって電池スタック1を圧縮する方向に外力を加えて押す。電池スタック1は全体としては若干弾性を有しているため、押すことによって組み立て後の状態よりも、その積層方向に短くなる。
【0101】
細径部51の軸方向外側の端52と、エンドプレート2の外側の面21との間に、固定部品6の厚さ以上の間隔が開くまで押し付け装置9により押し付けた状態で、固定部品6をロッド5の細径部51に嵌めこむ。
【0102】
なお、以上の説明は単なる例示であり、本発明は上述の各実施の形態に限定されず、様々な形態で実施することができる。説明の便宜上、電池スタックの積層方向を上下方向としたが、その向きに限定されるものではない。また、各実施の形態の特徴を組み合わせて実施することもできる。
【符号の説明】
【0103】
1…電池スタック、2,3…エンドプレート、5…ロッド、6…固定部品、7…切り欠き部、8…段差部、9…押し付け装置、14…集電板、51…細径部、52…細径部の端、53…皿ばね、54…ワッシャ、55…ナット、56…ワッシャ、57…ねじ、61…固定部品の開口部、71…ロッド受容部、72…エンドプレートの開口部、73…突出部、81…段差部の底面、91…組み立て台、92…床
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池、その製造方法および分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高効率のエネルギー変換装置として燃料電池が注目を集めている。燃料電池は電解質の相違により幾つかの種類に分類される。このうち水素イオン伝導性を有する固体高分子を電解質とする固体高分子電解質型燃料電池は、コンパクトな構造で高出力密度を得ることができ、また簡素なシステムによる運転が可能であることから、宇宙用や車両用あるいは家庭用電源として大きく注目されている。高分子電解質として、最近では、パーフルオロカーボンスルホン酸膜などが用いられている。
【0003】
高分子電解質を電解質膜として用いる固体高分子電解質型燃料電池は、通常、単位セルを複数積層した電池スタックを有している。単位セル中の膜−電極接合体は、高分子電解質膜を相互に挟持するように配置された燃料極および酸化剤極を有している。燃料極および酸化剤極の基板は、それぞれ導電性多孔質材料からなる。
【0004】
また、燃料極および酸化剤極の基板上には、カーボン粉と撥水材を含むガス拡散層がそれぞれ形成されている。さらに、燃料極および酸化剤極のガス拡散層上には、触媒と電解質、あるいは撥水材も加えた触媒層がそれぞれ担持されている。
【0005】
電池スタックは、積層された単位セル相互の接触面に対して垂直方向に接触面圧が均等となるように、たとえば上下に配置されたエンドプレートと、締め付けスタッドおよび締め付けナットを介して加圧保持される。加圧保持を維持することにより、電極反応面の接触抵抗を低減し、燃料極や酸化剤極のガスシールを維持するとともに、電極面内のガス溝間のショートパスを防止してガス配流のばらつきを抑制する。これにより、電池特性を、安定して良好に維持することが可能となる。
【0006】
電池スタックを加圧保持する方法は、たとえば特許文献1ないし特許文献6に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−182684号公報
【特許文献2】特開平7−272745号公報
【特許文献3】特開2004−179057号公報
【特許文献4】特開平5−234613号公報
【特許文献5】特開平7−29592号公報
【特許文献6】特開平6−13100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1ないし特許文献3に開示されているような、電池スタックおよびその両端のエンドプレートを締め付けスタッドとナットによって加圧保持する構造では、締め付けスタッド毎にナットの取付け作業を行なう必要がある。また、電池スタックの締め付け圧が所定の管理値の範囲内になるように、スタッド毎にナットの取付け位置を調整する必要がある。取外し時にも、スタッド毎にナットの緩め作業が必要である。このため、電池スタックの組立ておよび分解の作業の簡素化が困難である。
【0009】
また、特許文献3に開示されているように、エンドプレートを挟み込むタイプレートを導入すると、さらに部品点数が増加する。このため、取付け作業やコストの増加につながるおそれがある。
【0010】
特許文献4に開示されているようなターンバックルを用いる構造でも、それぞれのターンバックルについて調節作業が必要となり、組み立ておよび分解の作業の簡素化が困難である。
【0011】
さらに、特許文献5に開示されているような、単位セル4辺に配置されるバネ部材によって単位セル同士を加圧保持する構造では、一台の燃料電池を製作するために多数のバネ部材が必要である。また、バネ部材の寸法などによって締め付け圧力が変わってしまうため、単位セル内に均一な圧力を得ることが難しい。
【0012】
特許文献6に開示されているようなベローズを用いる構造では、長期間に亘ってベローズ内の圧力を維持することが困難であり、この維持のために複雑な機構が必要となる場合もある。
【0013】
そこで、本発明は、簡素な構造で、均一に電池スタックを締め付けられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的を達成するため、本発明は、燃料電池において、複数の単位セルを積層した電池スタックと、前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に板状に広がって、前記電池スタックをその積層方向の両端で挟むように配置された第1および第2のエンドプレートと、前記電池スタックの積層方向に、前記第1のエンドプレートの外側に位置する第1の端部から、前記第2のエンドプレートの外側に位置する第2の端部に延びるロッドと、を有し、前記第1および前記第2のエンドプレートには、前記電池スタックの積層方向に前記ロッドが貫通するように配置されるロッド受容部と前記ロッドが前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に通過可能なように前記ロッド受容部から外周まで延びる開口部とが互いに対向する位置に形成されていて、前記ロッドには、前記第1および前記第2のエンドプレートの外側に前記ロッド受容部よりも外径が大きい頭部がそれぞれ形成されていて、そのロッドは前記ロッド受容部に配置されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、複数の単位セルを積層した電池スタックと第1の端部から第2の端部に延びてその軸方向の隣接部よりも外径が大きい頭部がその軸方向の2箇所に形成されたロッドとを備えた燃料電池の製造方法において、前記ロッドが貫通するように配置できるロッド受容部とそのロッド受容部につながって前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に前記ロッドが通過可能なように前記エンドプレートの外周まで延びる開口部とが互いに対向する位置に形成された第1および第2のエンドプレートで前記電池スタックを挟む工程と、前記ロッドを、前記電池スタックの積層方向を軸として、ロッドが貫通するように配置できる前記頭部の外径よりも小さなロッド受容部が互いに対向する位置に形成された一対のエンドプレートで前記電池スタックを挟む工程と、前記エンドプレートを介して前記電池スタックを外力により圧縮する圧縮工程と、前記圧縮工程で前記電池スタックを圧縮した状態で、前記電池スタックの積層方向を軸として前記ロッドの2つの頭部の間に前記第1および前記第2のエンドプレートが位置するように、前記ロッドを前記エンドプレートの開口部を通じて前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に移動させて、配置する嵌込工程と、前記嵌込工程の後に、前記外力を解放する工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、複数の単位セルを積層した電池スタックと、前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に板状に広がって、前記電池スタックをその積層方向の両端で挟むように配置された第1および第2のエンドプレートと、前記電池スタックの積層方向に、前記第1のエンドプレートの外側に位置する第1の端部から、前記第2のエンドプレートの外側に位置する第2の端部に延びるロッドと、を備え、前記第1および前記第2のエンドプレートには、前記電池スタックの積層方向に前記ロッドが貫通するように配置されるロッド受容部と前記ロッドが前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に通過可能なように前記ロッド受容部から外周まで延びる開口部とが互いに対向する位置に形成されていて、前記ロッドには、前記第1および前記第2のエンドプレートの外側に前記ロッド受容部よりも外径が大きい頭部がそれぞれ形成されていて、そのロッドは前記ロッド受容部に配置されている燃料電池の分解方法において、前記エンドプレートを介して電池スタックを外力により圧縮する圧縮工程と、前記圧縮工程で前記電池スタックを圧縮した状態で、前記ロッドを前記エンドプレートの開口部を通じて前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に移動させて取り外す取り外し工程と、前記取り外し工程の後に、前記電池スタックを外力により圧縮した状態から解放する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡素な構造で、均一に電池スタックを締め付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池の斜視図である。
【図2】本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池の、図3におけるII−II矢視平面図である。
【図3】図2のIII−III矢視一部断面側面図である。
【図4】本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池に用いるエンドプレートの平面図である。
【図5】図4のV−V矢視一部断面側面図である。
【図6】本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池に用いるロッドの、図7におけるVI−VI矢視側面図である。
【図7】図6におけるVII−VII矢視平断面図である。
【図8】本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池に用いる固定部品の、図9におけるVIII−VIII矢視平面図である。
【図9】図8におけるIX−IX矢視側断面図である。
【図10】本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池に用いる固定部品近傍を拡大した平面図である。
【図11】本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池に用いる固定部品近傍を拡大した部分側断面図である。
【図12】本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池の組み立ての経過を示す図であって、(a)は組み立て前、(b)は組み立て中、(c)は組み立て後の状態を示す側面図である。
【図13】本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池の組み立ての経過を示す図であって、(a)はロッドの取り付け時、(b)は固定部品の取り付け時を示す切り欠き部近傍の拡大平面である。
【図14】本発明に係る第2の実施の形態の燃料電池の、図15におけるXIV−XIV矢視平面図である。
【図15】図14のXV−XV矢視一部断面側面図である。
【図16】本発明に係る第3の実施の形態の燃料電池に用いるエンドプレートの平面図である。
【図17】本発明に係る第4の実施の形態の燃料電池に用いるエンドプレートの突出部近傍の平面図である。
【図18】本発明に係る第5の実施の形態の燃料電池に用いるロッドの側面図である。
【図19】本発明に係る第6の実施の形態の燃料電池に用いるロッドの側面図である。
【図20】本発明に係る第7の実施の形態の燃料電池の、図21におけるXX−XX矢視一部断面側面図である。
【図21】図20のXXI−XXI矢視平面図である。
【図22】本発明に係る第7の実施の形態の燃料電池の組み立ての経過を示す図であって、(a)は組み立て中、(b)は組み立て後の状態を示す側面図である。
【図23】本発明に係る第8の実施の形態の燃料電池の、図24におけるXXIII−XXIII矢視一部断面側面図である。
【図24】図23におけるXXIV−XXIV矢視平面図である。
【図25】本発明に係る第8の実施の形態の燃料電池に用いる第1のエンドプレートの平面図である。
【図26】本発明に係る第8の実施の形態の燃料電池に用いる第2のエンドプレートの平面図である。
【図27】本発明に係る第8の実施の形態の燃料電池の組み立ての経過を示す図であって、(a)は組み立て前、(b)は組み立て中、(c)は組み立て後の状態を示す側面図である。
【図28】本発明に係る第9の実施の形態の燃料電池の経過を示す図であって、(a)は組み立て中、(b)は組み立て後の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る燃料電池の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明に係る第1の実施の形態の燃料電池の斜視図である。図2は、第1の実施の形態の燃料電池の、図3におけるII−II矢視平面図である。図3は、図2のIII−III矢視一部断面側面図である。
【0021】
燃料電池は、単位セルを複数積層した電池スタック1と、その積層方向の両端で電池スタック1を挟むエンドプレート2,3を有している。
【0022】
単位セルは、それぞれ平面状の電解質膜と、その電解質膜を挟持するように配置された燃料極および酸化剤極を有している。電解質膜としては、パーフルオロカーボンスルホン酸膜などの固体高分子電解質を用いることができる。燃料極および酸化剤極の周囲には、燃料ガスまたは酸化剤ガスが供給されるように適当な空間が形成される。また、単位セルは、隣り合う単位セルの燃料極と酸化剤極とが電気的に直列に接続されるようにセパレータを介して積層されて、電池スタック1を形成している。
【0023】
電池スタック1は、全体としては直方体であり、エンドプレート2,3は、ほぼ正方形の平板状である。エンドプレート2,3には、たとえばステンレス鋼などの金属や、フェノール樹脂、エポキシガラス、ポリエステルガラスなどの熱硬化性樹脂を含むエンジニアリングプラスチックなどを用いることができる。
【0024】
なお、エンドプレート2,3に導電性の低い金属構造材や絶縁性の素材を使用する場合には、電池スタック1とエンドプレート2,3が接する面に導電性の集電板14を配置し、エンドプレート2,3の一部を貫通して集電板14に至る通電部(図示せず)を形成しておく。電池を外部回路に繋ぐ電流ケーブルは、この通電部を通じて接続する。
【0025】
また、燃料電池は、電池スタック1の積層方向に、一方のエンドプレート2の外側から他方のエンドプレート3の外側に延びる円柱状の4本のロッド5を有している。2枚のエンドプレート2,3は、その四隅を貫通する4本のロッド5と、それぞれのロッド5に嵌合された固定部品6とによって、電池スタック1をその積層方向に圧縮するように押さえられている。固定部品6は、エンドプレート2,3の外側の面21,31に接するように配置されている。ここで、エンドプレート2,3の外側の面21,31とは、電池スタック1に接する面22,32に対する反対側の面である。
【0026】
図4は、第1の実施の形態の燃料電池に用いるエンドプレート2の平面図である。図5は、図4のV−V矢視一部断面側面図である。
【0027】
エンドプレート2は、ほぼ正方形の平板状であって、その四隅の近傍に電池スタック1の積層方向に貫通する切り欠き部7が形成されている。
【0028】
切り欠き部7は、内径がロッド5の外径よりも少し大きい概円弧状のロッド受容部71と、ロッド受容部71の内径と等しい幅でエンドプレート2の外周につながる開口部72を有している。また、エンドプレート2の外側の面21には、ロッド受容部71の周囲に、電池スタック1の積層方向に窪んだ段差部8が形成されている。
【0029】
なお、本実施の形態において、電池スタック1を挟む2つのエンドプレート2,3は同一の形状である。
【0030】
エンドプレート2,3に熱硬化性樹脂を用いる場合には加熱成形によって、あるいは、熱可塑性樹脂を用いる場合には加熱溶融して射出成形することによって、切削することなく上述のような形状のエンドプレート2,3を製作することができる。
【0031】
図6は、第1の実施の形態の燃料電池に用いるロッド5の、図7におけるVI−VI矢視側面図である。図7は、図6におけるVII−VII矢視平断面図である。
【0032】
ロッド5には、その軸方向の前後の部分よりも外径が細い細径部51が、軸方向の2箇所に形成されている。
【0033】
図8は、第1の実施の形態の燃料電池に用いる固定部品6の、図9におけるVIII−VIII矢視平面図である。図9は、図8におけるIX−IX矢視側面図である。
【0034】
固定部品6は段差部8の底面81よりも少し小さい円板状で、ロッド5の細径部51に嵌合されるように細径部51よりも少し広い幅で切り欠かれた開口部61が形成されている。
【0035】
図10は、第1の実施の形態の燃料電池に用いる固定部品近傍を拡大した平面図である。図11は、第1の実施の形態の燃料電池に用いる固定部品近傍を拡大した部分側断面図である。
【0036】
固定部品6は、細径部51の軸方向外側の端52と、段差部8の底面81との間に嵌合されている。
【0037】
次に、この燃料電池の組み立て方法について説明する。
【0038】
図12は、第1の実施の形態の燃料電池の組み立ての経過を示す図であって、(a)は組み立て前、(b)は組み立て中、(c)は組み立て後の状態を示す側面図である。図13は、第1の実施の形態の燃料電池の組み立ての経過を示す図であって、(a)はロッドの取り付け時、(b)は固定部品の取り付け時を示す切り欠き部近傍の拡大平面である。
【0039】
この燃料電池を組み立てる際には、まず、図12(a)に示すように、エンドプレート3を組み立て台91に接するように配置し、エンドプレート3の組み立て台91に接する面31に対する反対側の面32に電池スタック1およびエンドプレート2を順次配置する。
【0040】
その後、図12(b)に示すように、組み立て台91と接しない方のエンドプレート2の外側の面21を押し付け装置9によって電池スタック1を圧縮する方向に外力を加えて押す。押し付け装置9は、たとえば油圧もしくは空気圧ジャッキを用いたものである。電池スタック1は全体としては若干弾性を有しているため、押すことによって組み立て後の状態よりも、その積層方向に短くなる。
【0041】
ロッド5は、図13(a)の矢印で示す方向に移動され、切り欠き部7の開口部72からロッド受容部71に導入される。なお、切り欠き部7が開口部72を有しない場合とは異なり、ロッド5は電池スタック1の積層方向と垂直な方向に移動して配置されるため、上方に位置するエンドプレート2よりも上方に、ロッド5を移動させるための空間は不要である。
【0042】
また、電池スタック1が若干短くなっているため、ロッド5の端部に近いほうの細径部51の端52と、エンドプレート2の外側の面21との間には、固定部品6の厚さ以上の間隔が開いていて、固定部品6をロッド5の細径部51に嵌め込むことができる。この際、固定部品6は、図12(b)および図13(b)の矢印で示す方向に移動される。
【0043】
全てのロッド5を配置し、全ての固定部品6を細径部51に嵌めこんだ後に、図12(c)に示すように、押し付け装置9による押し付けをやめて外力を解放すると、電池スタック1は、弾性によって若干積層方向に伸びて、固定部品6は、段差部8に嵌合された状態となる。
【0044】
このようにして、4本のロッド5と一対のエンドプレート2,3は所定の締め付け圧力を保持したまま電池スタック1を固定した状態となる。
【0045】
本実施の形態の燃料電池を分解する場合には、まず、組み立て時と同様に、押し付け装置9により一時的に所定の締め付け圧力まで電池スタック1を仮締め加圧する(図12(b)参照)。加圧によってエンドプレート2,3とロッド5の固定が緩んだ状態で、ロッド5および固定部品6をエンドプレート2,3から取り外す。その後、押し付け装置9による圧縮をやめることにより電池スタック1の締め付けが解放される。これにより、不良セル交換などのメンテナンスや廃棄回収のために、燃料電池を分解することができる。
【0046】
このように、本実施の形態の燃料電池では、電池スタック1は、その積層方向の変位がロッド5および固定部品6によって制限された2枚のエンドプレート2,3によって均等に締め付けられている。その締め付け力は、ロッド5の形状によって決まる2枚のエンドプレートの間隔によって予め規定されている。このため、たとえばスタッドの両端に取り付けたナットの締め付け位置によって、電池スタック1の締め付け力を付与する場合のように、組み立てる度に電池スタック1のナット締め付け位置を計測し調節する必要がない。
【0047】
ロッド5は、その延びる軸方向に垂直な方向に移動させることにより所定の位置に配置することが可能である。このため、たとえばエンドプレート2,3に形成された切り欠き部7の開口部72を経由するので、ロッド5の軸方向からロッド受容部71にロッド5を通す必要がなく、ロッド5の移動距離を短くすることができ、組み立て、分解作業が容易になる。
【0048】
押し付け装置9で、仮締め加圧した固定部品6の取り付け、取り外し時には、ロッド5の細径部51の端52とエンドプレート2,3との間に、固定部品6が通る空隙があるため、取り付け、取り外しが容易である。一方、固定部品6の取付け後には、固定部品6は段差部8に嵌合され、細径部51の軸方向外側の端52とエンドプレート2,3との間に、固定部品6が通る空隙がなくなる。このため、燃料電池の搬送時に加えられる外力や振動などによって、固定部品6がはずれるおそれは小さい。
【0049】
なお、燃料電池の組み立て後の状態において、固定部品6とエンドプレート2,3との摩擦力を所定の大きさ以上に保持すると、固定部品6がはずれることがない。この摩擦力は、固定部品6およびエンドプレート2,3の表面状態によって決まる摩擦係数と、電池スタック1の押し付け圧力によって決まる。そこで、燃料電池の組み立て後の摩擦係数および押し付け圧力によっては、段差部8が形成されていないエンドプレート2,3を用いてもよい。
【0050】
また、本実施の形態の燃料電池は、ロッド5および固定部品6だけでエンドプレートの変位を制限する。このため、たとえば両端をねじ切りしたスタッド、ナットおよびワッシャを用いて加圧保持する場合に比べて、電池スタック1の加圧保持に必要な部品数が少ない。また、燃料電池を組み立てる際に、ナットの締め付け作業が不要であり、作業が容易であるとともに、ナットの締め付け位置を計測して調節する必要もなく、さらに、燃料電池を分解する際にも、ナットを緩める作業などが不要である。
【0051】
エンドプレートを熱硬化性樹脂によって形成する場合には加熱成形でき、熱可塑性樹脂によって形成する場合には射出成形できるため、切削する必要がない。このため、短期間で、低コストのエンドプレートを製造することもできる。
【0052】
なお、本実施の形態の燃料電池に用いる電池スタック1としては、固体高分子型燃料電池でなくても、単位セルの積層方向に固定部品6をロッド5とエンドプレート2,3の間に嵌め合わせる空隙ができる程度まで、その健全性を損なわずに圧縮することができるものであれば、どのようなものにも適用できる。
【0053】
また、エンドプレート2,3とロッド5に導電性材料を用いている場合には、ロッド5および固定部品6がエンドプレート2,3と接触する部分に、絶縁性材料の被覆を施すことにより、電池スタック1の燃料極と酸化剤極間との絶縁を確保することができる。また、絶縁性材料の被覆を施す代わりに、絶縁性材料によって形成されたスペーサーを介装してロッド5および固定部品6を配置してもよい。
【0054】
また、時間の経過に伴う電池スタック1のクリープ変形に起因して締め付け圧力が低下した場合には、厚みが大きい固定部品に変更したり、固定部品6と同様に開口部が形成された調整用スペーサやワッシャを挿入して、締め付け圧力を高めることもできる。
【0055】
[第2の実施の形態]
図14は、本発明に係る第2の実施の形態の燃料電池の、図15におけるXIV−XIV矢視平面図である。図15は、図14のXV−XV矢視一部断面側面図である。
【0056】
本発明に係る第2の実施の形態の燃料電池は、第1の実施の形態とロッドなどの数が異なる。
【0057】
この燃料電池のエンドプレート2,3では、切り欠き部7は正方形の四隅および四辺の中央の合計8箇所に形成されている。これら8箇所の切り欠き部7には、それぞれロッド5が配置されていて、ロッド5の細径部51にはそれぞれ固定部品6が嵌合されている。
【0058】
このように、エンドプレート2,3を締め付けるロッド5の本数は、第1の実施の形態のように4本に限定されるものではなく、本実施の形態のように8本でもよい。さらに、電池スタック1、ロッド5およびエンドプレート2,3などの構成部品の大きさや材質などを考慮して、適宜増減してもよい。
【0059】
[第3の実施の形態]
図16は、本発明に係る第3の実施の形態の燃料電池に用いるエンドプレートの平面図である。
【0060】
本発明に係る第3の実施の形態の燃料電池は、第1の実施の形態の燃料電池とエンドプレートの形状が異なる。
【0061】
本実施の形態の燃料電池に用いるエンドプレート2は、正方形の4隅に、対角線を延長する方向に突出する突出部73を有している。この突出部73に開口部72が形成されて、ロッド受容部71とともに切り欠き部7を形成している。
【0062】
エンドプレート2の外側の面21には、切り欠き部7の周りに段差部8が形成されている。
【0063】
このようなエンドプレート2は、第1の実施の形態の燃料電池に用いるエンドプレートに比べて、同一の電池スタックを用いる際のエンドプレートの成形に要する材料が少なくなり、電池スタック1の外形のコンパクト化に有効である。
【0064】
[第4の実施の形態]
図17は、本発明に係る第4の実施の形態の燃料電池に用いるエンドプレートの突出部近傍の平面図である。
【0065】
本発明に係る第4の実施の形態の燃料電池は、第2の実施の形態の燃料電池とエンドプレートに形成された段差部および固定部品の形状が異なる。
【0066】
本実施の形態の燃料電池に用いるエンドプレート2は、段差部8の形状が六角形に形成されている。固定部品6は、六角形の段差部8に嵌合されるように六角形に形成されている。
【0067】
このようなエンドプレート2および固定部品6を用いると、燃料電池が組み立てられて嵌合された固定部品6は、ロッド5の軸を中心としてその周りに回動できなくなるため、固定部品6に形成された開口部61の切り欠きが、エンドプレート2の開口部72と同じ方向を向くことがない。したがって、固定部品6が回動して、ロッド5がエンドプレート2からはずれるおそれが小さくなる。
【0068】
なお、固定部品6および段差部8の形状は、六角形に限定されるものではなく、固定部品6が段差部8に嵌め合わされた場合に、ロッド5の軸方向の周りの回動が制限される形状であればどのような形状でもよい。たとえば、固定部品6および段差部8を楕円形としてもよい。また、円形の固定部品6であっても、ロッド5と嵌め合わされる開口部61が、その円の中心以外の位置になるように、固定部品6および段差部8を形成してもよい。
【0069】
[第5の実施の形態]
図18は、本発明に係る第5の実施の形態の燃料電池に用いるロッドの側面図である。
【0070】
本発明に係る第5の実施の形態の燃料電池は、第1の実施の形態の燃料電池とロッドの形状が異なる。
【0071】
このロッド5の軸方向の一箇所には、細径部51が形成されていて、細径部51から遠いほうの端部には、ロッド受容部71(たとえば図10参照)の内径よりも径が大きい円板状の頭部63が形成されている。このロッド5の頭部63は、エンドプレートに形成された段差部8(たとえば図11参照)に嵌合されるようになっている。
【0072】
このようなロッド5を用いると、第1の実施の形態の燃料電池よりも固定部品が少なくてすむ。このため、燃料電池の組み立て、分解作業が容易になる。
【0073】
[第6の実施の形態]
本発明に係る第6の実施の形態の燃料電池は、第5の実施の形態の燃料電池とロッドの形状が異なる。
【0074】
図19は、本発明に係る第6の実施の形態の燃料電池に用いるロッドの側面図である。
【0075】
このロッド5の軸方向の両端には、ロッド受容部71(たとえば図10参照)の内径よりも径が大きい円板状の頭部64がそれぞれ形成されている。このロッド5の頭部64は、エンドプレートに形成された段差部8(たとえば図11参照)に嵌合されるようになっている。
【0076】
このようなロッド5を用いると、第5の実施の形態の燃料電池に用いている固定部品が不要である。このため、燃料電池の組み立て、分解作業が容易になる。
【0077】
[第7の実施の形態]
図20は、本発明に係る第7の実施の形態の燃料電池の、図21におけるXX−XX矢視一部断面側面図である。図21は、図20のXXI−XXI矢視平面図である。
【0078】
本実施の形態の燃料電池に用いる電池スタック1、エンドプレート2,3および固定部品6は、第1の実施の形態の燃料電池と同じものである。
【0079】
この燃料電池に用いるロッド5には、一箇所に細径部51が形成されていて、細径部51から遠い方の端部には、ねじ57が形成されている。燃料電池が組み立てられた状態では、ロッド5のねじ57にはナット55が取り付けられて、ナット55とエンドプレート3との間には、両側をワッシャ54,56で挟まれた皿ばね53が配置されている。皿ばね53とエンドプレート3との間のワッシャ56は、段差部8に位置して、エンドプレート3の開口部72の方向へのロッド5の移動を制限している。なお、ナット55の代わりに、第1の実施の形態における細径部51と固定部品6と同様な構成で差し込みビスを用いてもよい。
【0080】
図22は、本実施の形態の燃料電池の組み立ての経過を示す図であって、(a)は組み立て中、(b)は組み立て後の状態を示す側面図である。
【0081】
本実施の形態の燃料電池を組み立てる際には、上述の組み立て中の状態(図22(a))の固定部品6がはずれた状態で床92の上に燃料電池を配置する。その後、押し付け装置9によってエンドプレート2を介して電池スタック1を圧縮する方向に外力を加えて押す。電池スタック1が圧縮された状態で、固定部品6をロッド5の細径部51に嵌め込む(図22(b))。
【0082】
本実施の形態の燃料電池は、弾性体である皿ばね53を用いて電池スタック1を押し付けている。このため、このような弾性体を用いない場合に比べて電池スタック1の押し付け力を長期に亘り維持し、時間の経過に伴う電池スタック1のクリープ変形に起因する締め付け圧力の低下を抑制することもできる。さらに、電池スタック1の積層方向の固定長さは、個体毎にばらつきがある場合には、ナット55の位置を変えることで締め付け圧力を調節することもできる。
【0083】
[第8の実施の形態]
図23は、本発明に係る第8の実施の形態の燃料電池の、図24におけるXXIII−XXIII矢視一部断面側面図である。図24は、図23におけるXXIV−XXIV矢視上面図である。
【0084】
本実施の形態の燃料電池は、第7の実施の形態の燃料電池とエンドプレート2,3の形状が異なっている。また、これら2つのエンドプレート2,3は互いに形状が異なっている。以下の説明では、固定部品6と接する方を第1のエンドプレート2と呼び、他方を第2のエンドプレート3と呼ぶこととする。
【0085】
図25は、第8の実施の形態の燃料電池に用いる第1のエンドプレート2の平面図である。図26は、第8の実施の形態の燃料電池に用いる第2のエンドプレート3の平面図である。
【0086】
本実施の形態における第1および第2のエンドプレート2,3に形成されたロッド受容部71には、第1の実施の形態のエンドプレートのような開口部(図4における符号72参照)はつながらずにシリンダ状の穴形状となっている。固定部品6と接する第1のエンドプレート2のロッド受容部71の周囲には、電池スタック1の積層方向に窪んだ段差部8が形成されている。一方、第2のエンドプレート3のロッド受容部71の周囲には段差部は形成されていない。
【0087】
また、本実施の形態の燃料電池に用いるロッド5は、第7の実施の形態におけるロッド(図20参照)と同じものである。
【0088】
第1のエンドプレート2のロッド受容部71の周りには段差部8が形成されているため、嵌合された固定部品6が移動することなく、固定部品6の開口部61が開いた部分でロッド5からはずれないようになっている。
【0089】
なお、第2のエンドプレート3には、段差部は形成されていない。第2のエンドプレート3のロッド受容部71に挿入したロッド5に取り付けられたナット55や皿ばね53などは、エンドプレート3に対してロッド受容部71により移動が制限されているからである。
【0090】
次に、この燃料電池の組み立て方法について説明する。
【0091】
図27は、本実施の形態の燃料電池の組み立ての経過を示す図であって、(a)は組み立て前、(b)は組み立て中、(c)は組み立て後の状態を示す側面図である。
【0092】
まず、第2のエンドプレート3のロッド受容部71に配置された4本のロッド5を、第2のエンドプレート3とともに、床92に置く。この際、それぞれのロッド5には、ナット55を予め設定した位置まで移動して取り付け、ナット55と第2のエンドプレート3の間には、一対のワッシャ54,56で挟まれた皿ばね53を配置しておく。その後、エンドプレート3の上に、電池スタック1およびもう一つのエンドプレート2を配置する(図27(a)参照)。
【0093】
その後、図27(b)に示すように、上方に位置する第1のエンドプレート2の外側の面21を、押し付け装置9によって電池スタック1を圧縮する方向に外力を加えて押す。下方に位置する第2のエンドプレート3が組み立て台91の上面と接触する位置まで押し付けた状態で締め付ける。
【0094】
床92と組み立て台91の上面との距離は固定されているため、所定のナット55位置から、締め付けられた皿ばね積層高さは常に一定となる。
【0095】
また、ロッド5の端に近いほうの細径部51の端52と、第1のエンドプレート2の外側の面21との間に、固定部品6の厚さ以上の間隔が開くまで押し付け装置9によって外力を加えて押し付けた状態で、固定部品6をロッド5の細径部51に嵌め込む。
【0096】
全てのロッド5を配置し、全ての固定部品6を細径部51に嵌め込んだ後に、図27(c)に示すように、押し付け装置9による押し付けをやめると、電池スタック1は若干積層方向に伸びて、固定部品6は、段差部8に嵌合された状態となる。
【0097】
[第9の実施の形態]
図28は、本発明に係る第9の実施の形態の燃料電池の組み立ての経過を示す図であって、(a)は組み立て中、(b)は組み立て後の状態を示す側面図である。
【0098】
本実施の形態の燃料電池は、第8の実施の形態の燃料電池と同一のものであり、組み立ての際の上下を逆に配置したものである。
【0099】
燃料電池を組み立てる際には、まず、第1のエンドプレート2を組み立て台91の上面に接するように配置し、第1のエンドプレート2の組み立て台91に接する面21に対する反対側の面22に電池スタック1および第2のエンドプレート3を順次配置する。また、ナット55、一組のワッシャ54,56に挟まれた皿ばね53が取り付けられたロッド5を、ロッド受容部71に通す。
【0100】
その後、図28(a)に示すように、ロッド5の上端を、押し付け装置9によって電池スタック1を圧縮する方向に外力を加えて押す。電池スタック1は全体としては若干弾性を有しているため、押すことによって組み立て後の状態よりも、その積層方向に短くなる。
【0101】
細径部51の軸方向外側の端52と、エンドプレート2の外側の面21との間に、固定部品6の厚さ以上の間隔が開くまで押し付け装置9により押し付けた状態で、固定部品6をロッド5の細径部51に嵌めこむ。
【0102】
なお、以上の説明は単なる例示であり、本発明は上述の各実施の形態に限定されず、様々な形態で実施することができる。説明の便宜上、電池スタックの積層方向を上下方向としたが、その向きに限定されるものではない。また、各実施の形態の特徴を組み合わせて実施することもできる。
【符号の説明】
【0103】
1…電池スタック、2,3…エンドプレート、5…ロッド、6…固定部品、7…切り欠き部、8…段差部、9…押し付け装置、14…集電板、51…細径部、52…細径部の端、53…皿ばね、54…ワッシャ、55…ナット、56…ワッシャ、57…ねじ、61…固定部品の開口部、71…ロッド受容部、72…エンドプレートの開口部、73…突出部、81…段差部の底面、91…組み立て台、92…床
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単位セルを積層した電池スタックと、
前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に板状に広がって、前記電池スタックをその積層方向の両端で挟むように配置された第1および第2のエンドプレートと、
前記電池スタックの積層方向に、前記第1のエンドプレートの外側に位置する第1の端部から、前記第2のエンドプレートの外側に位置する第2の端部に延びるロッドと、
を有し、前記第1および前記第2のエンドプレートには、前記電池スタックの積層方向に前記ロッドが貫通するように配置されるロッド受容部と前記ロッドが前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に通過可能なように前記ロッド受容部から外周まで延びる開口部とが互いに対向する位置に形成されていて、前記ロッドには、前記第1および前記第2のエンドプレートの外側に前記ロッド受容部よりも外径が大きい頭部がそれぞれ形成されていて、そのロッドは前記ロッド受容部に配置されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記エンドプレートの前記頭部と接触する部分には、その頭部と嵌合するように前記ロッドの軸と平行な方向にへこんだ段差部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記段差部および前記頭部は、前記ロッドがその軸の周りに回動しない形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記段差部および前記頭部は、互いにほぼ同等形状の多角形に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記エンドプレートは、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれかによって形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項6】
複数の単位セルを積層した電池スタックと第1の端部から第2の端部に延びてその軸方向の隣接部よりも外径が大きい頭部がその軸方向の2箇所に形成されたロッドとを備えた燃料電池の製造方法において、
前記ロッドが貫通するように配置できるロッド受容部とそのロッド受容部につながって前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に前記ロッドが通過可能なように前記エンドプレートの外周まで延びる開口部とが互いに対向する位置に形成された第1および第2のエンドプレートで前記電池スタックを挟む工程と、
前記ロッドを、前記電池スタックの積層方向を軸として、ロッドが貫通するように配置できる前記頭部の外径よりも小さなロッド受容部が互いに対向する位置に形成された一対のエンドプレートで前記電池スタックを挟む工程と、
前記エンドプレートを介して前記電池スタックを外力により圧縮する圧縮工程と、
前記圧縮工程で前記電池スタックを圧縮した状態で、前記電池スタックの積層方向を軸として前記ロッドの2つの頭部の間に前記第1および前記第2のエンドプレートが位置するように、前記ロッドを前記エンドプレートの開口部を通じて前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に移動させて、配置する嵌込工程と、
前記嵌込工程の後に、前記外力を解放する工程と、
を有することを特徴とする燃料電池の製造方法。
【請求項7】
熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれかを加熱溶融し、その溶融された樹脂を射出成形して前記エンドプレートを作成する工程、
を有することを特徴とする請求項6に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項8】
熱硬化性樹脂を加熱成形して前記エンドプレートを作成する工程、
を有することを特徴とする請求項6に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項9】
複数の単位セルを積層した電池スタックと、前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に板状に広がって、前記電池スタックをその積層方向の両端で挟むように配置された第1および第2のエンドプレートと、前記電池スタックの積層方向に、前記第1のエンドプレートの外側に位置する第1の端部から、前記第2のエンドプレートの外側に位置する第2の端部に延びるロッドと、を備え、前記第1および前記第2のエンドプレートには、前記電池スタックの積層方向に前記ロッドが貫通するように配置されるロッド受容部と前記ロッドが前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に通過可能なように前記ロッド受容部から外周まで延びる開口部とが互いに対向する位置に形成されていて、前記ロッドには、前記第1および前記第2のエンドプレートの外側に前記ロッド受容部よりも外径が大きい頭部がそれぞれ形成されていて、そのロッドは前記ロッド受容部に配置されている燃料電池の分解方法において、
前記エンドプレートを介して電池スタックを外力により圧縮する圧縮工程と、
前記圧縮工程で前記電池スタックを圧縮した状態で、前記ロッドを前記エンドプレートの開口部を通じて前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に移動させて取り外す取り外し工程と、
前記取り外し工程の後に、前記電池スタックを外力により圧縮した状態から解放する工程と、
を有することを特徴とする燃料電池の分解方法。
【請求項1】
複数の単位セルを積層した電池スタックと、
前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に板状に広がって、前記電池スタックをその積層方向の両端で挟むように配置された第1および第2のエンドプレートと、
前記電池スタックの積層方向に、前記第1のエンドプレートの外側に位置する第1の端部から、前記第2のエンドプレートの外側に位置する第2の端部に延びるロッドと、
を有し、前記第1および前記第2のエンドプレートには、前記電池スタックの積層方向に前記ロッドが貫通するように配置されるロッド受容部と前記ロッドが前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に通過可能なように前記ロッド受容部から外周まで延びる開口部とが互いに対向する位置に形成されていて、前記ロッドには、前記第1および前記第2のエンドプレートの外側に前記ロッド受容部よりも外径が大きい頭部がそれぞれ形成されていて、そのロッドは前記ロッド受容部に配置されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記エンドプレートの前記頭部と接触する部分には、その頭部と嵌合するように前記ロッドの軸と平行な方向にへこんだ段差部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記段差部および前記頭部は、前記ロッドがその軸の周りに回動しない形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記段差部および前記頭部は、互いにほぼ同等形状の多角形に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記エンドプレートは、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれかによって形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項6】
複数の単位セルを積層した電池スタックと第1の端部から第2の端部に延びてその軸方向の隣接部よりも外径が大きい頭部がその軸方向の2箇所に形成されたロッドとを備えた燃料電池の製造方法において、
前記ロッドが貫通するように配置できるロッド受容部とそのロッド受容部につながって前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に前記ロッドが通過可能なように前記エンドプレートの外周まで延びる開口部とが互いに対向する位置に形成された第1および第2のエンドプレートで前記電池スタックを挟む工程と、
前記ロッドを、前記電池スタックの積層方向を軸として、ロッドが貫通するように配置できる前記頭部の外径よりも小さなロッド受容部が互いに対向する位置に形成された一対のエンドプレートで前記電池スタックを挟む工程と、
前記エンドプレートを介して前記電池スタックを外力により圧縮する圧縮工程と、
前記圧縮工程で前記電池スタックを圧縮した状態で、前記電池スタックの積層方向を軸として前記ロッドの2つの頭部の間に前記第1および前記第2のエンドプレートが位置するように、前記ロッドを前記エンドプレートの開口部を通じて前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に移動させて、配置する嵌込工程と、
前記嵌込工程の後に、前記外力を解放する工程と、
を有することを特徴とする燃料電池の製造方法。
【請求項7】
熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれかを加熱溶融し、その溶融された樹脂を射出成形して前記エンドプレートを作成する工程、
を有することを特徴とする請求項6に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項8】
熱硬化性樹脂を加熱成形して前記エンドプレートを作成する工程、
を有することを特徴とする請求項6に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項9】
複数の単位セルを積層した電池スタックと、前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に板状に広がって、前記電池スタックをその積層方向の両端で挟むように配置された第1および第2のエンドプレートと、前記電池スタックの積層方向に、前記第1のエンドプレートの外側に位置する第1の端部から、前記第2のエンドプレートの外側に位置する第2の端部に延びるロッドと、を備え、前記第1および前記第2のエンドプレートには、前記電池スタックの積層方向に前記ロッドが貫通するように配置されるロッド受容部と前記ロッドが前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に通過可能なように前記ロッド受容部から外周まで延びる開口部とが互いに対向する位置に形成されていて、前記ロッドには、前記第1および前記第2のエンドプレートの外側に前記ロッド受容部よりも外径が大きい頭部がそれぞれ形成されていて、そのロッドは前記ロッド受容部に配置されている燃料電池の分解方法において、
前記エンドプレートを介して電池スタックを外力により圧縮する圧縮工程と、
前記圧縮工程で前記電池スタックを圧縮した状態で、前記ロッドを前記エンドプレートの開口部を通じて前記電池スタックの積層方向に垂直な方向に移動させて取り外す取り外し工程と、
前記取り外し工程の後に、前記電池スタックを外力により圧縮した状態から解放する工程と、
を有することを特徴とする燃料電池の分解方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2012−119329(P2012−119329A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−22758(P2012−22758)
【出願日】平成24年2月6日(2012.2.6)
【分割の表示】特願2006−219586(P2006−219586)の分割
【原出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(301060299)東芝燃料電池システム株式会社 (358)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月6日(2012.2.6)
【分割の表示】特願2006−219586(P2006−219586)の分割
【原出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(301060299)東芝燃料電池システム株式会社 (358)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]