説明

燃料電池のための触媒担体

触媒担体上に支持された触媒を含む燃料電池のための触媒材料であって、触媒担体は第IV周期遷移金属リン化物を含む触媒材料が開示される。このような触媒材料を含む膜電極アセンブリ(MEA)および燃料電池スタックも同様に開示される。1つの実施形態において、触媒担体に支持された触媒を含む触媒材料が開示され、この触媒担体は、第IV周期遷移金属リン化物を含む。別の実施形態において、アノードとカソードとの間に配置されるプロトン交換膜を備える膜電極アセンブリが開示され、アノードとカソードのうちの少なくとも1つは触媒担体に支持された触媒を含み、そして触媒担体は第IV周期遷移金属リン化物を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(背景)
(技術分野)
本開示は、電気化学燃料電池のための触媒担体に関する。
【0002】
(関連技術の説明)
燃料電池システムは近年、多くの用途(たとえば自動車および定置式発電装置)における電力供給源としての使用のために開発されている。燃料電池システムは、環境的な利益および他の利益を有する送達電力の経済的な有望性を提供する。しかし、市販の実行可能な燃料電池システムは、燃料電池が好ましい作動範囲外の状況に供されるときでさえ、作動における適切な信頼を示す必要がある。輸送用途または定置式用途のいずれかにおいて商業的に使用されるプロトン交換膜(「PEM」)燃料電池において、5,000時間〜40,000時間の作動時間が必要であり得る。
【0003】
燃料電池は、2つの電極、すなわちカソードおよびアノードの間に入るPEMを備え得る。アノードおよびカソードの両方は、代表的にガス拡散層および触媒層を備える。
【0004】
アノード、PEMおよびカソード、または膜電極アセンブリ(MEA)は通常流動場プレート間に配置され、反応物および反応生成物の触媒層に対する進入および退出を可能にする。MEAおよび流動場プレートは、燃料電池として知られているが、燃料電池スタックの形成のために直列で(in series)結合され得る。
【0005】
アノードにおいて、燃料(代表的に水素ガスの形態)は、PEMの存在下で、電解触媒と反応し、水素イオンと電子を形成する。カソードにおいて、酸化剤(代表的に空気)はPEMの存在下で、電解触媒と反応し、アニオンを形成する。PEMは酸化剤流体から燃料流体を分離し、そしてアノードからカソードへの水素イオンの移動を容易にし、上記水素イオンはカソードで形成されるアニオンと反応する。電子は外部サーキットを通過し、電流を生成する。正味の反応生成物は水である。水素ガス燃料電池中のアノードおよびカソードの反応は、以下の式(1)および式(2)に示される。
【0006】
【化1】

触媒層は、代表的に触媒担体に支持された触媒からなる。当業者に公知の燃料電池触媒としては、白金および白金−ルテニウムが挙げられる。当業者に公知の燃料電池触媒担体は、カーボンブラックが挙げられ、ファーネスブラックおよびアセチレンブラックを含む。このような触媒担体は、これらの比較的低い価格、良好な導電性、および反応部位に対しておよび反応部位からの反応物および反応生成物の通過を可能にするように十分に多孔性にさせるこれらの能力のために使用される。実際には、十分に作動する燃料電池の寿命を一貫して得ることに関して、アノードおよび/またはカソードでの触媒担体の酸化に部分的に起因する、重大な困難に直面している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、電気化学燃料電池のための、特に触媒担体の酸化の軽減および/または解消に関して、改善された触媒担体の必要性が依然として存在する。本開示はこの必要性を満たし、そしてさらに関連する利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(摘要)
理論に縛られることを意図せずに、触媒担体の酸化は、触媒粒子が付着している触媒担体を腐食させると考えられる。このような酸化は、触媒粒子の触媒担体との電気的結合を失わせ、それにより正味の触媒活性および燃料電池の性能が低減する。本発明の実施において、第IV周期遷移金属を含む触媒担体の使用は、触媒担体の酸化を制限することにより長期安定性を著しく増強することが発見された。
【0009】
したがって、1つの実施形態において、触媒担体に支持された触媒を含む触媒材料が開示され、この触媒担体は、第IV周期遷移金属リン化物を含む。このような第IV周期遷移金属リン化物としては、(以下に限定されないが)スカンジウムリン化物、チタンリン化物、バナジウムリン化物、クロムリン化物、マンガンリン化物、鉄リン化物、コバルトリン化物、ニッケルリン化物、銅リン化物、亜鉛リン化物およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0010】
別の実施形態において、アノードとカソードとの間に配置されるプロトン交換膜を備える膜電極アセンブリが開示され、アノードとカソードのうちの少なくとも1つは触媒担体に支持された触媒を含み、そして触媒担体は第IV周期遷移金属リン化物を含む。
【0011】
さらなる実施形態において、多数の燃料電池、アノードおよびカソードを含む多数の燃料電池のうちの少なくとも1つ、上記アノードとカソードとの間に配置されるプロトン交換膜を備える燃料電池スタックが開示され、上記アノードおよび上記カソードのうちの少なくとも1つは触媒担体に支持された触媒を含み、そして触媒担体は第IV周期遷移金属リン化物を含む。
【0012】
本開示のこれらおよび他の局面は、以下の詳細な説明を参照することで裏付けられる。
【0013】
図面において、同一の参照番号は、同様の要素または行為であると認識する。図面における要素の大きさおよび相対的な位置は、必ずしも目盛りに対して描かれない。例えば、種々の要素の形および角度は、目盛りに対して描かれず、そしてこれらの要素のいくつかは図面の視認性を改善するために自由に拡大され、位置決めされる。さらに、要素の特定の形は、描かれるように、特定の要素の実際の形に関する任意の情報を伝えることは意図されず、そして単に図面における認識を容易にするために選択される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】図1Aは、1つの例示的な実施形態に従う触媒材料の断面の概略図である。
【図1B】図1Bは、1つの例示的な実施形態に従う触媒材料の断面の概略図である。
【図2】図2は、1つの例示的な実施形態に従う燃料電池のための膜電極アセンブリの断面の概略図である。
【図3】図3は、1つの例示的な実施形態に従う燃料電池スタックの断面の概略図である。
【図4】図4は、電流対電極ポテンシャルのグラフである。
【図5】図5は触媒活性のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(詳細な説明)
状況が別の方法を必要としない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲にわたり、用語「含む(comprise)」およびこれらの変形(例えば、「含む(comprises)」)および「含んでいる(comprising)」は、開かれた、包括的な意味で、すなわち、「以下に限定されないが、〜が挙げられる(including)」として解釈されるべきである。また、状況が別の方法を必要としない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲にわたり、用語「組み合わせ(combination)」およびこれらの変形(例えば、「組み合わせ(combinations)」)は、例えば、合金、混合物および固体溶液を含む、開かれた、包括的な意味として解釈されるべきである。
【0016】
本明細書中で使用される場合、「第IV周期遷移金属」は、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)および亜鉛(Zn)である。また、本明細書中で使用される場合、リン化物は、より陽性の要素または群を有するリン化物である。したがって、第IV周期遷移金属リン化物としては、スカンジウムリン化物(例えば、ScP)、チタンリン化物(例えば、TiP)、バナジウムリン化物(例えば、VP)、クロムリン化物(例えば、CrP)、マンガンリン化物(例えば、MnP)、鉄リン化物(例えば、FeP、FePおよびFeP)、コバルトリン化物(例えば、CoPおよびCoP)ニッケルリン化物(例えば、NiP、およびNiP)、銅リン化物(例えば、CuP)および亜鉛リン化物(例えば、Zn)、ならびに他の化学量論物(stoichiometries)およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0017】
図1Aは、1つの例示的な実施形態に従う、触媒材料100aの断面の概略図である。図1Aは、触媒担体120上に配置される触媒110を示す。触媒担体120は、第IV周期遷移金属リン化物を含む。当業者は、特定の用途のために任意の触媒110を選択し得、上記触媒としては、白金またはルテニウムのような貴金属、非貴金属炭化物、非貴金属窒化物、非貴金属炭窒化物、非貴金属カルコゲニドおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0018】
図1Bは、1つの例示的な実施形態に従う、燃料電池のための触媒材料110bの断面の概略図である。図1Bは、PEM130と電気化学的に接触する触媒担体120上に配置される触媒110を示し、その結果、上記式(1)および式(2)によって示される燃料電池反応が起こり得る。触媒担体120は第IV周期遷移金属リン化物を含む。当業者は、当業者は、特定の用途のために任意の触媒110を選択し得、上記触媒としては、白金またはルテニウムのような貴金属、非貴金属炭化物、非貴金属窒化物、非貴金属炭窒化物、非貴金属カルコゲニドおよびこれらの組み合わせが挙げられる。当業者は、特定の用途のために任意のPEM130を選択し得、上記PEMとしては、パーフッ素化膜、部分的フッ素化膜および非フッ素化膜が挙げられる。
【0019】
図2は、1つの例示的な実施形態に従う、燃料電池200のための膜電極アセンブリの断面図である。図2は、アノード220とカソード230との間に配置されるPEM210を示す。アノード220は、アノード触媒担体(示されていない)上に支持されたアノード触媒(示されていない)を含む。カソード230は、カソード触媒担体(示されていない)上に支持されたカソード触媒(示されていない)を含む。アノード触媒およびカソード触媒は、上記に記載のものであり得、同じもしくは異なる組成物のものであり得、そして同じもしくは異なる局所濃度および全体濃度のものであり得る。同様に、アノード触媒担体およびカソード触媒担体は、上記に記載のものであり得、同じもしくは異なる組成物のものであり得る。アノード220およびカソード230は、アノード触媒担体上に支持されたアノード触媒およびカソード触媒が堆積され得る場合、ガス拡散層(「GDL」)(示されていない)を含み得る。アノード触媒担体およびカソード触媒担体上に支持されたアノード触媒またはカソード触媒はまた、PEM210上に直接堆積され得る。アノード触媒担体およびカソード触媒担体上に支持されたアノード触媒またはカソード触媒が、PEM210上に直接堆積される場合、GDLがまた使用され得る。当業者はまた、特定の用途のための材料のさらなる層を含め得る。例えば、反応物毒除去触媒(reactant poison scrubbing catalyst)層は、例えば燃料が電解触媒毒種(例えば、一酸化炭素)を含む場合、含まれ得る。
【0020】
図3は、1つの例示的な実施形態に従う、燃料電池スタックの断面図である。図3は、アノード320とカソード330との間に配置され、さらに反応部位に対しておよび反応部位から、反応物と反応生成物を提供するための流動場プレート340の間に配置される、PEM310を示す。流動場プレート340はまた燃料電池に構造支持体を提供する。当該分野で公知のように、流動場プレート340は、金属材料または黒鉛材料を含む適切な導電性材料からなり得る。当業者は、特定の用途のための流動場プレート340のための材料を選択し得る。
【0021】
一般的な用語において、第IV周期遷移金属リン化物は、当業者により、公知の技術によって、例えば(NHPOを所望の第IV周期遷移金属(複数を含む)と合わせることにより、調製され得る。より具体的には、および第IV周期遷移金属リン化物としてのニッケルリン化物(例えば、NiP)の場合には、NiPは、第一に5gの(NHPOを攪拌ビーカー中の300mlの水へ溶解すること、および11gのNi(NO・6HOを100mlの水へ溶解することにより調製され得る。Ni(NO・6HO溶液は、上記(NHPOへと滴下漏斗を介して滴下して加えられる。HNOが次いで加えられて、透明な緑色溶液を生成し、この透明な緑色の溶液は加熱により濃縮され、ならびに乾燥されてNiHPOの緑色結晶を生成する。このNiHPOの結晶は次いで、瑪瑙乳鉢および乳棒によって微細粉末にすり潰され、石英チューブ炉中の磁器燃焼ボート中に置かれ、1時間アルゴンガスでパージされ、50:50のAr:Hガス混合物中で1K/分で850°Kまで加熱され、850Kで4時間維持され、その後アルゴン下で周囲温度まで冷却されて、NiPを生成する。炉が開いているとき、少量の空気はまず炉チューブ中においてサンプルの表面を不動態化させ、サンプルの燃焼の機会を排除する。
【0022】
遷移金属リン化物は、当該分野で周知のゾル−ゲル製造方法を使用して調製される、大きい表面積を有する遷移金属ホスフェートを還元することにより、大きい表面積を有するように作製され得る。例えば、遷移金属ホスフェートは、Bogdanovら(Structure of zirconium phosphate gels produced by the sol−gel method,J.Phys.:Condens.Matter 9,4031−4036,1997)により記載されるゾル−ゲル方法の製造法によって大きい表面積を有するように作製され得る。大きな表面積の遷移金属ホスフェートの大きな表面積の遷移金属リン化物への還元は、Shu(Synthesis,characterization,and hydrotreating activity of carbon−supported transition metal phosphides.,Carbon 43,1517−1532,2005)により記載される。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
触媒担体の調製法
遷移金属リン化物触媒担体、ニッケルリン化物(NiP)を以下の方法により調製した。第一に、2.000gのNi(NO・6HOを7.434gのHOに溶解し、透明な緑色溶液を形成し、そして0.908gの(NHHPOを上記溶液に加えて、沈殿を形成した。濃HNOを次いで、溶液が再び透明な緑色になるまで滴下して加えた。次に、3.964gのドデシル硫酸ナトリウムを加え、このドデシル硫酸ナトリウムが溶解して濃厚で粘着性の緑色溶液を形成するまで穏やかに加熱しながら攪拌した。この溶液を次いで、溶液が乾燥した緑色泡状構造体を形成するまで50℃の水浴中に置いた。乾燥後、この泡状物質を、5℃/分で120℃まで加熱し、180分維持し、次いで、5℃/分で500℃まで加熱し、360分維持することにより焼成し、次に周囲温度まで冷却し、褐色の多孔性構造体を残した。この褐色の多孔性構造体を、微細粉末にすり潰した。次いで、生成物を60分間アルゴンでパージし、20%Hガス下で1℃/分で577℃まで加熱し、240分間維持することにより還元した。そして周囲温度まで冷却し、サンプル番号1−1を得た。
【0024】
上記方法であるが、その調製において異なる第IV周期遷移金属を用いて、および/または異なるナイトレート対ドデシル硫酸ナトリウムの量を使用することにより、以下の触媒担体を調製した。
【0025】
【化2】


【0026】
(実施例2)
触媒担体の代替の調製法
遷移金属リン化物触媒担体、ニッケルリン化物(NiP)を以下の代替の方法により調製した。第一に、1.1584gのオクタデシルアミンを150mlのプロパン−1−オールおよび100mlのHOの溶液中に、攪拌しながらホットプレートで加熱しながら、溶解して無色透明な溶液を形成した。この溶液中に2.500gのNi(NO・6HOを溶解し、透明な黄緑色溶液を形成した。次に、1.136gの(NHHPOを上記溶液に加えて、沈殿を伴う不透明な黄緑色溶液を形成した。濃HNOを、溶液が透明な黄緑色に変わるまで滴下して加えた。次いで、溶液を150mlの容量までエバポレーションした。この溶液を次いで、50℃の水浴中で、溶液が乾燥した緑色泡状構造体を形成するまでゆっくりと乾燥した。この泡状構造体を5℃/分で120℃まで加熱し、泡状構造を180分維持し、次いで5℃/分で500℃まで加熱し、泡状構造を360分維持することにより焼成し、周囲温度まで冷却し、褐色の多孔性構造体を生じた。その後この多孔性構造体を微細粉末にすり潰した。生成物を次いで、アルゴン下で60分パージし、20%H2ガス下で1℃/分で577℃まで加熱し、240分維持することにより還元した。次いで周囲温度に冷却した。
【0027】
(実施例3)
触媒担体の表面積
BET理論は固体表面上のガス分子の物理的吸着のための周知の原則であり、そして固体の表面積の計算に幅広く使用されている。実施例1のサンプル番号1−1〜1−5の触媒担体の表面積を評価し、以下のBET表面積を示した。
【0028】
【化3】


(実施例4)
代表的な触媒材料の調製法
代表的な触媒材料(すなわち、NiP触媒担体上に20%Pt触媒)を、実施例1のサンプル番号1−1のNiP触媒単体の表面上に、米国特許第5,068,161号(本明細書中で参考として援用される)の実施例5に開示される方法であるがニッケルの添加のかわりに、触媒粒子(Pt)を加えることにより調製した。
【0029】
より具体的には、Pt合金触媒を以下のように20重量%Pt負荷量で調製した:37.0gの実施例1のサンプル番号1−1の触媒担体を、2,000cmの脱塩水に加え、15分間攪拌して、均一なスラリーを生成した。34.45gの重炭酸ナトリウムをスラリーに加え、5分間攪拌した。このスラリーを100℃まで加熱し、30分間沸点で維持した。塩化白金酸としての100cmの脱塩水中の10.0gの白金の溶液をスラリーに5分かけて加えた。このスラリーを2時間沸騰させた。7.8cmのホルムアルデヒド溶液を75cmに希釈したものを10分かけて加えた。このスラリーをさらに60分沸騰させ、次いで、上澄み液を除去し、そして脱塩水で洗浄して可溶性塩化物種を除去した。塩化物を含まないフィルターケーキを、含水量が2%未満になるまで80℃で減圧乾燥した。この材料を次いで、窒素雰囲気気流中で930℃の温度に加熱し、この温度を60分維持して、触媒材料を形成した。
【0030】
(実施例5)
代表的な触媒材料の活性
図4は2つのサンプルの電流対ポテンシャルのプロットである。上記2つのサンプルは、すなわち(1)実施例4に従って調製したニッケルリン化物(NiP)触媒担体上に20%Pt触媒を有する触媒材料、および(2)Vulcan(登録商標)XC72Rカーボンブラック触媒担体(Johnson Matthey Inc.より市販されている)上に40%Ptを有する触媒材料である。両方のサンプルを、30℃の温度で2000rpmで回転する、回転板電極上で試験した。ここでポテンシャルは、5mV/秒で酸素飽和0.5M硫酸中で掃引された。図4に見られ得るように、ニッケルリン化物(NiP)触媒担体上のPt触媒は触媒的に活性である。
【0031】
図5は、20秒後の1.8Vでの正常化電流対2つのサンプルのサイクル数のプロットである。上記2つのサンプルは、すなわち(1)実施例4に従って調製したニッケルリン化物(NiP)触媒担体上に20%Pt触媒を有する触媒材料、および(2)Vulcan(登録商標)XC72Rカーボンブラック触媒担体(Johnson Matthey Inc.より市販されている)上に40%Ptを有する触媒材料である。両方のサンプルを、N飽和0.5M硫酸中で、30℃の温度で2000rpmで回転する、回転板電極上で試験した。ここで上記サンプルを、0.6Vで60秒間、その後1.8Vで20秒間、全時間で1600秒の間のポテンシャルサイクルに供した。図5に見られ得るように、ニッケルリン化物(NiP)触媒担体上のPt触媒は、Vulcan(登録商標)XC72Rカーボンブラック触媒担体上のPtと比べてより良好な長期安定性を有する。
【0032】
上述の例示的な実施形態の記載は、要約に記載されるものも含むが、正確な形態で開示される実施例を排除または限定することを意図されない。特定の実施形態および実施例が例示の目的のために本明細書で記載されるが、種々の等価な改変が、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなくなされ得、このことは当業者により認識される。本明細書で提示される種々の実施形態の教示は、MEAに適用され得、一般的に記載される例示的なPEM MEAに適用される必要はない。また、前述の種々の実施形態は、組み合わされてさらなる実施形態を提供し得る。これらおよび他の変化は、上記の詳細な説明に関する実施例に対してなされ得る。一般に、添付の特許請求の範囲において、使用される用語は、本明細書および請求項で開示される特定の実施形態に対して請求項が制限されるように解釈されるべきではなく、このような請求項が与える均等物の全範囲内に加えてすべての可能な実施形態を含むように解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒担体上に支持された触媒を含む触媒材料であって、該触媒担体は第IV周期遷移金属リン化物を含む、触媒材料。
【請求項2】
前記第IV周期遷移金属リン化物が、ニッケルリン化物、コバルトリン化物およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の触媒材料。
【請求項3】
前記第IV周期遷移金属リン化物が、ニッケルリン化物からなる、請求項1に記載の触媒材料。
【請求項4】
前記第IV周期遷移金属リン化物が、コバルトリン化物からなる、請求項1に記載の触媒材料。
【請求項5】
アノードとカソードの間に配置されるプロトン交換膜を備える膜電極アセンブリであって、該アノードおよびカソードの少なくとも1つは触媒担体に支持された触媒を含み、該触媒担体は第IV周期遷移金属リン化物を含む、膜電極アセンブリ。
【請求項6】
前記第IV周期遷移金属リン化物が、ニッケルリン化物、コバルトリン化物およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項7】
前記第IV周期遷移金属リン化物が、ニッケルリン化物からなる、請求項5に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項8】
前記第IV周期遷移金属リン化物が、コバルトリン化物からなる、請求項5に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項9】
前記触媒が貴金属からなる、請求項5に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項10】
前記触媒が、非貴金属炭化物、非貴金属窒化物、非貴金属炭窒化物、非貴金属カルコゲニドおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5に記載の膜電極アセンブリ。
【請求項11】
多数の燃料電池を備える燃料電池スタックであって、該多数の燃料電池のうちの少なくとも1つは、アノードとカソード、該アノードと該カソードとの間に配置されるプロトン交換膜を供え、該アノードとカソードのうちの少なくとも1つは触媒担体によって支持された触媒を含み、該触媒担体は、第IV周期遷移金属リン化物を含む、燃料電池スタック。
【請求項12】
前記第IV周期遷移金属リン化物が、ニッケルリン化物、コバルトリン化物およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項11に記載の燃料電池スタック。
【請求項13】
前記第IV周期遷移金属リン化物が、ニッケルリン化物からなる、請求項11に記載の燃料電池スタック。
【請求項14】
前記第IV周期遷移金属リン化物が、コバルトリン化物からなる、請求項11に記載の燃料電池スタック。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−507220(P2010−507220A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533537(P2009−533537)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/081834
【国際公開番号】WO2008/049077
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(508238325)ビーディーエフ アイピー ホールディングス リミテッド (8)
【Fターム(参考)】