説明

燃料電池のガス流路構造、燃料電池の流路構造、燃料電池用セパレータ、および、燃料電池の冷媒流量制御装置

【課題】閉塞流路によるガス流路中流部におけるガス拡散電極層の排水性を向上させる。
【解決手段】本発明のガス流路構造において、溝状ガス流路は、上流端がガス供給口に接続され、下流端が閉塞された複数のガス供給側枝流路を有する略くし歯形状のガス供給側流路と、上流端が閉塞され、下流端がガス排出口に接続された複数のガス排出側枝流路を有する略くし歯形状のガス排出側流路と、に分離され、複数のガス供給側枝流路と複数のガス排出側枝流路とが交互に配列される。ガス供給側枝流路とガス排出側枝流路との間を仕切る隔壁の下側のガス拡散層を通過するガスの通気抵抗が、ガス供給側枝流路またはガス排出側枝流路の上流部よりも中流部のほうが低く、かつ、下流部よりも中流部のほうが低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガスの供給側と排出側のガス流路がリブ(隔壁)により分離され、供給側の下流端および排出側の上流端が閉塞された構造の溝状のガス流路(以下、「閉塞流路」とも呼ぶ)を有する固体高分子型燃料電池の排水性、特に、ガス流路内およびガス拡散層内に滞留した液水の排水性に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料ガスとしての水素(H)と酸化ガスとしての酸素(O)との電気化学反応によって電気エネルギーを取り出す発電装置である。なお、以下では、燃料ガスや酸化ガスを、特に区別することなく単に「反応ガス」あるいは「ガス」と呼ぶ場合もある。この燃料電池は、膜電極接合体(MEA:Membrane-Electrode Assembly,「発電体」とも呼ぶ)を、セパレータにより挟持した燃料電池セル(単に「セル」とも呼ぶ)により構成される。膜電極接合体は、プロトン(H)伝導性を有する固体高分子型電解質膜(以下、単に「電解質膜」とも呼ぶ)の両面に、それぞれ、触媒電極層およびガス拡散層が順に形成された構造を有している。セパレータは、ガス拡散層に接する面に反応ガスの流路としての溝が形成された構造を有している。なお、このセパレータは発電した電気の集電体としても機能する。
【0003】
上記燃料電池の一例として、上流端がガス供給口に接続され、下流端が閉塞された略くし歯形状のガス供給側流路の複数のガス供給側枝流路と、上流端が閉塞され、下流端がガス排出口に接続された略くし歯形状のガス排出側流路の複数のガス排出側枝流路と、が交互に配列されるとともに、ガス供給側流路とガス排出側流路とがリブ(隔壁)を介して分離された構造の溝状の閉塞流路を、ガス流路として有する燃料電池が知られている(特許文献1参照)。この閉塞流路構造のガス流路の場合、ガス供給口からガス供給側流路に供給される反応ガスは全てガス拡散層に導かれ、ガス拡散層を通過してガス排出側流路へ導かれてガス排出口へと排出される。これにより、閉塞流路ではない溝状のガス流路構造の場合において問題となっていた、流路間のリブ下のガス拡散層部分におけるガス供給性や排水性が悪いという点を改善することができ、濃度過電圧の発生を抑制することができ、均一な発電性能を得ることができる、という利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−141979号公報
【特許文献2】特開2005−166545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記閉塞流路を有する燃料電池セルでは、ガス供給側枝流路を流れるガスは、ガス供給側枝流路とガス排出側枝流路との差圧により、ガス供給側枝流路とガス排出側枝流路との間のリブ下のガス拡散層および触媒電極層からなるガス拡散電極層に導かれ、少なとも一部のガスが電気化学反応に寄与した後、残ったガスがガス排出側溝流路を介して排出される。このとき、ガス供給側枝流路とガス排出側枝流路との差圧は、流路の中流部(燃料電池セルの中央部)が上流部および下流部に比べて小さくなる、という特徴がある。このため、ガス供給側枝流路からガス排出側枝流路へ向かってリブ下のガス拡散電極層を通過するガスの流速は、上流部および下流部に対して中流部が遅くなる、という特性がある。また、ガス供給側枝流路からガス排出側枝流路へ向かってリブ下のガス拡散電極層を通過するガスの流量は、上流部および下流部に対して中流部が少なくなる、という特性がある。この特性により、中流部に対応する位置(燃料電池セルの中央部)のガス拡散電極層内に滞留した液水を押し出すには、ガスの流速や流量が不足する可能性が高く、滞留した液水が排出され難い、ということになる。このため、発電動作中においては、滞留した液水によりガスの供給が阻害され、発電性能の低下や電解質膜の劣化等の問題が生じることになり、発電性能の均一化の面で不十分である。また、この燃料電池セルにより構成された燃料電池を車両に搭載した場合には、氷点下始動に対応する必要があるが、そのために、発電停止時に実行する燃料電池セル内の残留水を除去する掃気処理にも時間がかかる、ということになる。
【0006】
そこで、本発明は、閉塞流路によるガス流路の中流部(燃料電池セルの中央部)におけるガス拡散電極層の排水性を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
膜電極接合体に含まれるガス拡散層に接する面に形成された溝状ガス流路および前記ガス拡散層により構成される燃料電池のガス流路構造であって、
前記溝状ガス流路は、上流端がガス供給口に接続され、下流端が閉塞された複数のガス供給側枝流路を有する略くし歯形状のガス供給側流路と、上流端が閉塞され、下流端がガス排出口に接続された複数のガス排出側枝流路を有する略くし歯形状のガス排出側流路と、に分離され、前記複数のガス供給側枝流路と前記複数のガス排出側枝流路とが交互に配列されており、
前記ガス供給側枝流路と前記ガス排出側枝流路との間を仕切る隔壁の下側の前記ガス拡散層を通過するガスの通気抵抗が、前記ガス供給側枝流路または前記ガス排出側枝流路の上流部よりも中流部のほうが低く、かつ、下流部よりも中流部のほうが低い
ことを特徴とするガス流路構造。
このガス流路構造によれば、中流部においてガス供給側枝流路からガス排出側枝流路へ流れるガスの流速・流量を増加させて、ガスの流速・流量の均一化を図ることが可能となり、中流部の隔壁の下側に滞留しやすい液水の排水性を向上させることが可能である。これにより、発電性能の均一化を図ることができる。
【0009】
[適用例2]
適用例1記載のガス流路構造であって、
前記ガス供給側枝流路と前記ガス排出側枝流路との間の前記隔壁の幅が、前記ガス供給側枝流路または前記ガス排出側枝流路の上流部よりも中流部のほうが狭く、かつ、下流部よりも中流部のほうが狭い
ことを特徴とするガス流路構造。
このガス流路構造によれば、中流部の通気抵抗を、容易に、上流部の通気抵抗より小さく、かつ、下流部の通気抵抗より小さくすることができる。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載のガス流路構造であって、
前記ガス供給側枝流路と前記ガス排出側枝流路との間の前記隔壁の下側の前記ガス拡散層のガスの透気度が、前記ガス供給側枝流路または前記ガス排出側枝流路の上流部よりも中流部のほうが高く、かつ、下流部よりも中流部のほうが高い
ことを特徴とするガス流路構造。
このガス流路構造によっても、中流部の通気抵抗を、容易に、上流部の通気抵抗より小さく、かつ、下流部の通気抵抗より小さくすることができる。
【0010】
[適用例4]
適用例3記載のガス流路構造であって、
前記ガス供給側枝流路と前記ガス排出側枝流路との間の前記隔壁の下側の前記ガス拡散層の厚さが、前記ガス供給側枝流路または前記ガス排出側枝流路の上流部および下流部よりも中流部のほうが厚い
ことを特徴とするガス流路構造。
このガス流路構造によれば、中流部の透気度を、容易に、上流部の透気度より高く、かつ、下流部の透気度より高くすることができる。
【0011】
[適用例5]
適用例3記載のガス流路構造であって、
前記ガス供給側枝流路と前記ガス排出側枝流路との間の前記隔壁の下側の前記ガス拡散層の気孔径が、前記ガス供給側枝流路または前記ガス排出側枝流路の上流部および下流部よりも中流部のほうが大きい
ことを特徴とするガス流路構造。
このガス流路構造によっても、中流部の透気度を、容易に、上流部の透気度より高く、かつ、下流部の透気度より高くすることができる。
【0012】
[適用例6]
膜電極接合体を挟持し、前記膜電極接合体に含まれるガス拡散層に接する面に形成された溝状ガス流路を有する燃料電池用セパレータであって、
前記溝状ガス流路は、上流端がガス供給口に接続され、下流端が閉塞された複数のガス供給側枝流路を有する略くし歯形状のガス供給側流路と、上流端が閉塞され、下流端がガス排出口に接続された複数のガス排出側枝流路を有する略くし歯形状のガス排出側流路と、に分離され、前記複数のガス供給側枝流路と前記複数のガス排出側枝流路とが交互に配列されており、
前記ガス供給側枝流路と前記ガス排出側枝流路との間のリブの幅が、前記ガス供給側枝流路または前記ガス排出側枝流路の上流部および下流部よりも中流部のほうが狭い
ことを特徴とするセパレータ。
このセパレータを用いれば、中流部の通気抵抗を、容易に、上流部の通気抵抗より小さく、かつ、下流部の通気抵抗より小さくしたガス流路を構成することができる。これにより、中流部においてガス供給側枝流路からガス排出側枝流路へ流れるガスの流速・流量を増加させて、ガスの流速・流量の均一化を図ることが可能となり、中流部の隔壁の下側に滞留しやすい液水の排水性を向上させることが可能である。これにより、発電性能の均一化を図ることができる。
【0013】
[適用例7]
膜電極接合体に含まれるガス拡散層に接する面に形成された溝状ガス流路と、前記溝状ガス流路に対向するように形成され、前記膜電極接合体を冷却するための溝状冷媒流路と、を有する燃料電池の流路構造であって、
前記溝状ガス流路は、上流端がガス供給口に接続され、下流端が閉塞された複数のガス供給側枝流路を有する略くし歯形状のガス供給側流路と、上流端が閉塞され、下流端がガス排出口に接続された複数のガス排出側枝流路を有する略くし歯形状のガス排出側流路と、に分離され、前記複数のガス供給側枝流路と前記複数のガス排出側枝流路とが交互に配列されており、
前記溝状ガス流路の中流部に対する前記溝状冷媒流路の対向面積が、前記溝状ガス流路の上流部に対する前記溝状冷媒流路の対向面積よりも小さく、かつ、前記溝状ガス流路の下流部に対する前記溝状冷媒流路の対向面積よりも小さい
ことを特徴とする流路構造。
この流路構造によれば、中流部においてガス供給側枝流路からガス排出側枝流路へ流れるガスの温度を上流部および下流部のガスの温度よりも高く維持することにより、ガスによる液水の持ち去り量を増加させることが可能となり、中流部の隔壁の下側に滞留しやすい液水の排水性を向上させることが可能である。これにより、発電性能の均一化を図ることができる。
【0014】
[適用例8]
適用例7記載の流路構造であって、
前記溝状ガス流路の中流部に対する前記溝状冷媒流路のピッチが、前記溝状ガス流路の上流部に対する前記溝状冷媒流路のピッチよりも広く、かつ、前記溝状ガス流路の下流部に対する前記溝状冷媒流路のピッチよりも広い
ことを特徴とする流路構造。
この流路構造によれば、溝状ガス流路の中流部に対する溝状冷媒流路の対向面積を、容易に、溝状ガス流路の上流部に対する溝状冷媒流路の対向面積よりも小さく、かつ、溝状ガス流路の下流部に対する溝状冷媒流路の対向面積よりも小さくすることができる。
【0015】
[適用例9]
適用例7記載の流路構造であって、
前記溝状ガス流路の中流部に対する前記溝状冷媒流路の流路幅が、前記溝状ガス流路の上流部に対する前記溝状冷媒流路の流路幅よりも狭く、かつ、前記溝状ガス流路の下流部に対する前記溝状冷媒流路の流路幅よりも狭い
ことを特徴とする流路構造。
この流路構造によっても、溝状ガス流路の中流部に対する溝状冷媒流路の対向面積を、容易に、溝状ガス流路の上流部に対する溝状冷媒流路の対向面積よりも小さく、かつ、溝状ガス流路の下流部に対する溝状冷媒流路の対向面積よりも小さくすることができる。
【0016】
[適用例10]
膜電極接合体に含まれるガス拡散層に接する面に形成された溝状ガス流路に対向するように形成され、前記膜電極接合体を冷却するための溝状冷媒流路に流れる冷媒の流量を制御する燃料電池の冷媒流量制御装置であって、
前記溝状ガス流路は、上流端がガス供給口に接続され、下流端が閉塞された複数のガス供給側枝流路を有する略くし歯形状のガス供給側流路と、上流端が閉塞され、下流端がガス排出口に接続された複数のガス排出側枝流路を有する略くし歯形状のガス排出側流路と、に分離され、前記複数のガス供給側枝流路と前記複数のガス排出側枝流路とが交互に配列されており、
前記溝状冷媒流路は、前記膜電極接合体の前記溝状ガス流路の上流部に対応する上流領域と中流部に対応する中流領域と下流部に対応する下流領域とを、それぞれ冷却するための上流冷媒流路と中流冷媒流路と下流冷媒流路とに分離されており、
前記中流冷媒流路の流量が、前記上流冷媒流量よりも少なく、かつ、前記下流冷媒流量よりも少なくなるように制御する
ことを特徴とする冷媒流量制御装置。
この冷媒流路制御装置によれば、中流部においてガス供給側枝流路からガス排出側枝流路へ流れるガスの温度を上流部および下流部のガスの温度よりも高く維持することにより、ガスによる液水の持ち去り量を増加させることが可能となり、中流部の隔壁の下側に滞留しやすい液水の排水性を向上させることが可能である。これにより、発電性能の均一化を図ることができる。
【0017】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃料電池用のガス流路構造、燃料電池用セパレータ、燃料電池の流路構造、燃料電池の冷媒流量制御装置だけでなく、これらを用いた燃料電池、燃料電池システム等の種々の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した燃料電池を構成する燃料電池セルの概略構成を表わす断面模式図である。
【図2】カソード側のセパレータ30に形成されている酸化ガス流路32を示す説明図である。
【図3】比較例としての従来のカソード側のセパレータ30Rに形成されている酸化ガス流路32Rを示す説明図である。
【図4】比較例の酸化ガス流路32Rの問題点を示す説明図である。
【図5】実施例のカソード側のセパレータ30に形成されている酸化ガス流路32の効果を示す説明図である。
【図6】酸化ガス流路32の第1の変形例を示す説明図である。
【図7】酸化ガス流路32の第2の変形例を示す説明図である。
【図8】酸化ガス流路32の第3の変形例を示す説明図である。
【図9】カソード側のガス拡散層の透気度を変化させたガス流路構造を示す説明図である。
【図10】カソード側のガス拡散層の透気度を変化させたガス流路構造の変形例を示す説明図である。
【図11】カソード側のセパレータ30Fに形成された酸化ガス流路32Fおよびアノード側のセパレータ20Fに形成された冷媒流路24Fを示す説明図である。
【図12】冷媒流路24Fの第1の変形例を示す説明図である。
【図13】冷媒流路24Fの第2の変形例を示す説明図である。
【図14】冷媒流路24Fの第3の変形例を示す説明図である。
【図15】冷媒流路制御装置について示す説明図である。
【図16】制御部90によって実行される冷媒流量制御の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を、実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
B.第2実施例:
C.第3実施例:
D.第4実施例:
E.変形例:
【0020】
A.第1実施例:
A1.燃料電池の構成概要:
図1は、本発明を適用した燃料電池を構成する燃料電池セルの概略構成を表わす断面模式図である。この燃料電池セル100は、膜電極接合体10と、膜電極接合体10を両面から挟持するアノード側のセパレータ20およびカソード側のセパレータ30と、を備えている。膜電極接合体10は、電解質層11と、電解質層11のそれぞれの面上に形成されるアノード側の触媒電極層13およびカソード側の触媒電極層15と、上記各触媒電極層に隣接して設けられたアノード側のガス拡散層17およびカソード側のガス拡散層19と、で構成されている。なお、触媒電極層およびガス拡散層を纏めてガス拡散電極あるいはガス拡散電極層とも呼ぶ。
【0021】
電解質層11は、固体高分子材料、例えばフッ素系樹脂により形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜であり、湿潤状態で良好なプロトン伝導性を示す。この電解質層11としては、例えば、ナフィオン膜(デュポン社製)が利用される。
【0022】
触媒電極層13,15は、電気化学反応を促進する触媒金属と、プロトン伝導性を有する電解質と、電子伝導性を有するカーボン粒子と、を備える。触媒金属としては、例えば、白金(Pt)、あるいはPtと他の金属とから成る合金(例えばコバルトやニッケルを混合したPt合金)を用いることができる。また、電解質としては、電解質層11と同様に、スルホン酸基を介して水和プロトンを伝導するフッ素系樹脂、例えば、ナフィオン溶液を用いている。上記触媒金属はカーボン粒子上に担持されており、各触媒電極層では、触媒金属を担持したカーボン粒子(触媒粒子)と電解質とが混在している。触媒金属を担持するためのカーボン粒子(以下、「担持用カーボン粒子」と呼ぶ。)は、例えば、一般に市販されているカーボン粒子(カーボン粉末)を加熱処理することにより自身の撥水性が高められた撥水化カーボン粒子が用いられる。
【0023】
ガス拡散層17,19は、ガス透過性を有する導電性部材、例えば、カーボンクロスやカーボンペーパー等のカーボン多孔質体、あるいは、金属メッシュや発泡金属などの金属多孔質体によって構成することができる。
【0024】
セパレータ20,30は、ガス不透過の導電性部材、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボンや、プレス成形した金属板によって形成することができる。セパレータ20のガス拡散層17側の表面には、燃料電池セル100に供給される反応ガスとしての燃料ガスである水素(H)の流路となる溝形状(凹凸形状)の燃料ガス流路22が形成されている。燃料ガス流路22が形成されている面とは反対側の面には、燃料電池セル100に供給される冷媒としての水(HO、以下、「冷却水」とも呼ぶ)の流路となる溝形状(凸凹形状)の冷媒流路24が形成されている。また、セパレータ30のガス拡散層19側の表面には、燃料電池セル100に供給される反応ガスとしての酸化ガスである空気(厳密には酸素[O])の流路となる溝形状(凹凸形状)の酸化ガス流路32が形成されている。
【0025】
図2は、カソード側のセパレータ30に形成されている酸化ガス流路32を示す説明図である。なお、図2は、膜電極接合体側から見た図である。
【0026】
図2に示すように、カソード側のセパレータ30の外周部の左上部には、冷媒供給マニホールド用の孔(以下、「冷媒供給マニホールド孔」あるいは冷媒供給口)と呼ぶ)30wiが設けられ、右下部には、冷媒排出マニホールド用の孔(以下、「冷媒排出マニホールド孔」あるいは「冷媒排出口」と呼ぶ)30woが設けられている。また、外周部の左中央部には、酸化ガス供給マニホールド用の孔(以下、「酸化ガス供給マニホールド孔」あるいは「酸化ガス供給口」と呼ぶ)30oiが設けられ、右中央部には、酸化ガス排出マニホールド用の孔(以下、「酸化ガス排出マニホールド孔」あるいは「酸化ガス排出口」と呼ぶ)30ooが設けられている。さらにまた、外周部の左下部には、燃料ガス供給マニホールド用の孔(以下、「燃料ガス供給マニホールド孔」あるいは「燃料ガス供給口」と呼ぶ)30hiが設けられ、右上部には、燃料ガス排出マニホールド用の孔(以下、「燃料ガス排出マニホールド孔」あるいは「燃料ガス供給口」と呼ぶ)30hoが設けられている。
【0027】
酸化ガス流路32は、酸化ガス供給マニホールド孔30oiに連通された酸化ガス供給側流路32iと、酸化ガス排出マニホールド孔30ooに連通された酸化ガス排出側流路32oとに分離されている。酸化ガス供給側流路32iは、酸化ガス供給マニホールド孔30oiに連通された上下方向に延びる溝流路(以下、「酸化ガス供給連通路」と呼ぶ)32ciと、酸化ガス供給連通路32ciから分岐して酸化ガス排出マニホールド孔30oo側に向かって横方向に延びる複数の溝流路(酸化ガス供給側枝流路)32biと、から構成された略くし歯形状のガス流路構造を有している。酸化ガス供給側枝流路32biは流路の下流端が閉塞されている。同様に、酸化ガス排出側流路32oは、酸化ガス排出マニホールド孔30ooに連通された上下方向に延びる溝流路(以下、「酸化ガス排出連通路」と呼ぶ)32coと、酸化ガス排出連通路32coから分岐して酸化ガス供給マニホールド孔30oi側に向かって延びる複数の溝流路(酸化ガス排出側枝流路)32boと、から構成された略くし歯形状のガス流路構造を有している。酸化ガス排出側枝流路32boは流路の上流端が閉塞されている。
【0028】
酸化ガス供給側枝流路32biと酸化ガス排出側枝流路32boとは、互いに交互となるように配列されており、酸化ガス供給側枝流路32biと酸化ガス排出側枝流路32boとの間は隔壁32bwで仕切られて分離されている。隔壁32bwの幅は、酸化ガス供給側枝流路32biの下流端と、酸化ガス排出側枝流路32boの上流端との間の中間位置を含む所定の幅領域を中流部、中流部よりも上流側を上流部、中流部よりも下流側を下流部とし、上流部、中流部、および下流部の幅をそれぞれWu、Wm、Wdとした場合に、Wu>Wm、かつ、Wd>Wmの関係を満たすように設定されており、この構造を有することにより後述する効果を得ることができる。
【0029】
アノード側のセパレータ20に形成されている燃料ガス流路22も、図示は省略するが、カソード側のセパレータ30に形成されている酸化ガス流路と同様の構成を有している。なお、図1には、燃料ガス供給側流路の燃料ガス供給側枝流路22biと、燃料ガス排出側流路の燃料ガス排出側枝流路22boとが示されている。また、図1に示すように、燃料ガス流路22が形成されている面とは反対側の面には、冷媒としての水(HO、以下、「冷却水」とも呼ぶ)が流れる冷媒流路24が形成されている。通常燃料電池は、燃料電池セル100を複数積層したスタック構造を有しており、冷媒流路24は、アノード側のセパレータ20に接する他の燃料電池セル100のカソード側のセパレータ30の酸化ガス流路が形成されている面とは反対側の面に接するように配置される。なお、本例では、アノード側のセパレータ20に冷媒流路24が形成されている場合を示しているが、カソード側のセパレータ30に冷媒流路が形成されていてもよいし、アノード側のセパレータ20とカソード側のセパレータ30との両方に冷媒流路が形成されていてもよい。
【0030】
燃料電池セル100の外周部には、反応ガスのガスシール性を確保するためのシール部材が配設されている(図示せず)。また、スタック構造の燃料電池の外周部には、燃料電池セル100の積層方向と平行であって反応ガス(燃料ガスあるいは酸化ガス)や冷媒が流通する複数のマニホールドが設けられている(図示せず)。これら複数のマニホールドのうちの燃料ガス供給マニホールドを流れる燃料ガスは、各燃料電池セル100の燃料ガス供給マニホールド孔(燃料ガス供給口)から分配され、電気化学反応に供されつつ各燃料電池セル100の燃料ガス流路を通過し、その後、各燃料電池セル100の燃料ガス排出マニホールド孔(燃料ガス排出口)を介して燃料ガス排出マニホールドに集合する。同様に、酸化ガス供給マニホールドを流れる酸化ガスは、各燃料電池セル100の酸化ガス供給マニホールド孔(酸化ガス供給口)から分配され、電気化学反応に供されつつ各燃料電池セル100の酸化ガス流路を通過し、その後、各燃料電池セル100の酸化ガス排出マニホールド孔(酸化ガス排出口)を介して酸化ガス排出マニホールドに集合する。
【0031】
上記燃料電池セル100では、カソード側のセパレータ30の酸化ガス供給側枝流路32biにより供給された酸化ガスは、酸化ガス供給側枝流路32biと酸化ガス排出側枝流路32boとの差圧により、ガス拡散層19に導かれる。そして、ガス拡散層19に導かれた酸化ガスは触媒電極層15に供給されて触媒電極層15による電気化学反応に寄与した後、酸化ガス排出側枝流路32boに押し出されて排出される。同様に、アノード側のセパレータ20の燃料ガス供給側枝流路22biにより供給された燃料ガスも、ガス拡散層17に導かれる。そして、ガス拡散層17に導かれた燃料ガスは触媒電極層13に供給されて触媒電極層13による電気化学反応に寄与した後、燃料ガス排出側枝流路22boに押し出されて排出される。
【0032】
燃料電池セル100は、以上のように、アノード側およびカソード側に供給された反応ガスが電気化学反応に供され、その結果として電力を発生するとともに、その副産物として水を生成する。なお、酸化ガス供給側枝流路32biに供給された酸化ガスは、隔壁32bwの下側のガス拡散層19に導かれ、また、燃料ガス供給側枝流路22biに供給された燃料ガスは、隔壁22bwの下側のガス拡散層17に導かれる。これにより、ガスの供給側と排出側とが分離させていない構造のガス流路において、隔壁の下側へガスが供給されない、という不具合を抑制する効果がある。
【0033】
なお、本実施例は、上記したように、酸化ガス流路32において、隔壁32bwの幅を、酸化ガス供給側枝流路32biの下流端と、酸化ガス排出側枝流路32boの上流端との間の中間位置を含む所定の幅領域を中流部、中流部よりも上流側を上流部、中流部よりも下流側を下流部とし、上流部、中流部、および下流部の幅をそれぞれWu、Wm、Wdとした場合に、Wu>Wm、かつ、Wd>Wmの関係を満たすように設定していることに特徴を有している。また、燃料ガス流路22においても同様の特徴を有している。そして、この特徴を有することにより、以下で説明する効果を得ることができる。
【0034】
A2.ガス流路構造の効果:
図3は比較例としての従来のカソード側のセパレータ30Rに形成されている酸化ガス流路32Rを示す説明図である。図4は、比較例の酸化ガス流路32Rの問題点を示す説明図である。図5は、実施例のカソード側のセパレータ30に形成されている酸化ガス流路32の効果を示す説明図である。なお、図3は、膜電極接合体側から見た図である。
【0035】
比較例のカソード側のセパレータ30Rに形成されている酸化ガス流路32Rは、実施例のカソード側のセパレータ30の酸化ガス流路32と同様に、略くし歯形状の酸化ガス供給側流路32Riと、略くし歯形状の酸化ガス排出側流路32Roとに分離されている。ただし、交互に配列された酸化ガス供給側枝流路32Rbiと酸化ガス排出側枝流路32Rboとの間を仕切る隔壁32Rbwの幅が、上流部、中流部、および、下流部にわたって一定である点のみが、実施例の酸化ガス流路32の構造と異なっている。
【0036】
比較例の酸化ガス流路32Rの場合、図4(a)に示すように、酸化ガス供給側枝流路と酸化ガス排出側枝流路との間に発生する差圧は、酸化ガス流路の入口(酸化ガス排出側枝流路の上流端)側および出口(酸化ガス供給側枝流路の下流端)側で大きく、中央部(酸化ガス供給側枝流路および酸化ガス排出側枝流路の中央部)ほど、小さくなる。このため、酸化ガス供給側枝流路と酸化ガス排出側枝流路との間の隔壁の下を流れる酸化ガス(以下、「潜り込み酸化ガス」とも呼ぶ)の流速および流量は、図4(b)に示すように、酸化ガス流路の入口側および出口側で大きく、中央部ほど小さくなる。なお、図3では、矢印の大きさで、流速・流量の大きさを示している。これにより、酸化ガス流路の枝流路の中央部ほど、潜り込み酸化ガスの流速・流量が不足しやすくなる。例えば、図5(a)に示すように、酸化ガス流路の入口および出口から中央部に向かうにつれて、流速が低下し、閾値Vthよりも低い領域(中流部)では、隔壁(リブ)の下に液水が滞留することになる。一方、実施例のカソード側のセパレータ30の酸化ガス流路32の場合には、比較例において、潜り込み酸化ガスの流速・流量が不足しやすくなる中流部のリブ幅を、上流部および下流部の1/2に狭めて、ガス拡散層の通気抵抗を1/2にすることにより、この中流部における潜り込み酸化ガスの流速・流量を、比較例の場合の約2倍に高めている。これにより、図5(b)に示すように、中流部における潜り込み酸化ガスの流速を閾値Vth以上とすることができ、滞留水の発生を抑制することができる。
【0037】
以上のように、本実施例の場合には、潜り込み酸化ガスの流速・流量の低下を抑制して、均一化を図ることが可能となり、中流部の隔壁の下側に滞留しやすい液水の排水性を向上させることが可能である。この結果、発電性能の均一化を図ることができ、発電性能を向上させることができる。また、酸化ガスの供給障害による電解質膜の劣化の防止や掃気性の向上に効果がある。
【0038】
なお、アノード側のセパレータ20に形成された燃料ガス流路22については、図3に示した比較例の酸化ガス流路と同様の構造としてもよいし、実施例の酸化ガス流路と同様の構成としてもよい。酸化ガス流路と同様の構造とすれば、同様に、排水性を向上させることができる。
【0039】
A3.ガス流路構造の変形例:
上記実施例の酸化ガス流路32は、酸化ガス供給側枝流路32biと酸化ガス排出側枝流路32boとの間の隔壁32bwの幅として、上流部の幅Wuおよび下流部の幅Wdに対して中流部の幅Wmが、Wm<Wu、かつ、Wm<Wdとなるように、酸化ガス供給側枝流路32biおよび酸化ガス排出側枝流路32boの流路の中流部の幅が上流部および下流部の幅に対して1段階広くなった構造の場合を例に示しているが、これに限定されるものではなく、以下に示す種々の変形も可能である。
【0040】
図6は、酸化ガス流路32の第1の変形例を示す説明図である。第1の変形例の酸化ガス流路32Aは、酸化ガス供給側枝流路32Abiと酸化ガス排出側枝流路32Aboとの間の隔壁32Abwの幅が、流路の上流端(入口)および下流端(出口)から中央部に向かって複数段階で順に狭くなるように、酸化ガス供給側枝流路32Abiおよび酸化ガス排出側枝流路32Aboの流路幅が複数段階で順に広くなる構造を有している。この構造の場合には、実施例の酸化ガス流路32の場合よりも、さらに、潜り込み酸化ガスの流速・流量の低下を抑制して均一化を図ることが可能である。
【0041】
図7は、酸化ガス流路32の第2の変形例を示す説明図である。第2の変形例の酸化ガス流路32Bは、酸化ガス供給側枝流路32Bbiと酸化ガス排出側枝流路32Bboとの間の隔壁32Bbwの幅が、流路の上流端(入口)および下流端(出口)から中央部に向かって連続的に狭くなるように、酸化ガス供給側枝流路32Bbiおよび酸化ガス排出側枝流路32Bboの流路幅が連続的に広くなる構造を有している。この構造の場合には、第1の変形例の酸化ガス流路32Aの場合よりも、さらに、潜り込み酸化ガスの流速・流量の低下を抑制して均一化を図ることが可能である。
【0042】
図8は、酸化ガス流路32の第3の変形例を示す説明図である。第3の変形例の酸化ガス流路32Cは、酸化ガス供給側枝流路32Cbiと酸化ガス排出側枝流路32Cboとの間の隔壁32Cbwの幅が、流路の上流端(入口)および下流端(出口)から中央部に向かって連続的に狭くなるように、酸化ガス供給側枝流路32Cbiまたは酸化ガス排出側枝流路32Cboのいずれかの流路幅が中央部に向かって連続的に広くなる構造を有している。図の例では、酸化ガス供給側枝流路32Cbiの流路幅が中央部に向かって連続的に広くなっている。この構造の場合にも、第2の変形例の酸化ガス流路32Bと同様に、第1の変形例の酸化ガス流路32Aの場合よりも、さらに、潜り込み酸化ガスの流速・流量の低下を抑制して均一化を図ることが可能である。
【0043】
以上説明したように、比較例において発生する可能性の高い酸化ガス流路の中流部における潜り込み酸化ガスの流速・流量の不足を解消して排水性を向上させるために、上流部および下流部に対する中流部のガス拡散層(ガス拡散電極層)を通過する酸化ガスの通気抵抗が小さくなるように、酸化ガス供給側枝流路と酸化ガス排出側枝流路との間を仕切る隔壁(リブ)の幅を変化させる構造であれば、どのような酸化ガス供給側枝流路および酸化ガス排出側枝流路の構造であってもよい。
【0044】
なお、上記変形例は、酸化ガス流路について説明したが、燃料ガス流路を同様の構造としてもよい。
【0045】
B.第2実施例:
B1.ガス流路構造:
上記第1実施例は、ガス供給側枝流路とガス排出側枝流路との間を仕切る隔壁の幅を変化させることにより、ガス流路の中流部のガス拡散層を通過するガスの通気抵抗を小さくすることにより、中流部における潜り込みガスの流速・流量を増加させて排水性を向上させたガス流路構造である。これに対して、中流部のガス拡散層の透気度を上流部および下流部よりも高くして、ガス流路の中流部のガス拡散層を通過するガスの通気抵抗を小さくすることにより、中流部における潜り込みガスの流速・流量を増加させて、潜り込みガスの流速・流量の低下を抑制して均一化を図り、排水性を向上させたガス流路構造とすることも考えられる。
【0046】
図9は、カソード側のガス拡散層の透気度を変化させたガス流路構造を示す説明図である。図9(a)は、カソード側のガス拡散層19Dおよびセパレータ30Dを電解質膜側から見た図であり、図9(b)は、A−A線における概略断面を示している。
【0047】
セパレータ30Dに形成されている酸化ガス流路32Dは、図3に示した比較例の酸化ガス流路32Rと同じである。本例のガス拡散層19Dは、酸化ガス流路32Dにおいて酸化ガスの流速・流量が不足する可能性のある中流部に対向する領域の厚さTmが、上流部に対向する領域の厚さTuおよび下流部に対向する領域の厚さTdよりも厚くなるように、例えば、2倍の厚さ(Tm=2・Tu=2・Td)になるように形成されている。これにより、中流部のガス拡散層のガスの透気度を、上流部の透気度および下流部の透気度に比べて高くすることができ、例えば、2倍に高めることができる。この結果、中流部のガス拡散層を通過するガスの通気抵抗を小さくすることができ、中流部における潜り込み酸化ガスの流速・流量の低下を抑制して均一化を図り、排水性を向上させることが可能である。この結果、発電性能の均一化を図ることができ、発電性能を向上させることができる。また、酸化ガスの供給障害による電解質膜の劣化の防止や掃気性の向上に効果がある。
【0048】
なお、厚さの異なるガス拡散層は、例えば、2枚のガス拡散層を重ね合わせることにより構成することができる。この場合、セパレータ側の隔壁の高さは、ガス拡散層の厚さの変化に応じて変化させる必要がある。
【0049】
また、上記実施例では、ガス拡散層の厚さを中流部において1段階厚くする構造を例に説明したが、第1実施例の隔壁の幅と同様に、複数段階厚くする構成としてもよい。複数段階厚くするガス拡散層は、例えば、3枚以上のガス拡散層を重ね合わせることにより構成することができる。また、連続的に厚さが変化するガス拡散層としてもよい。
【0050】
B2.ガス流路構造の変形例:
図10は、カソード側のガス拡散層の透気度を変化させたガス流路構造の変形例を示す説明図である。図10(a)は、カソード側のガス拡散層19Eおよびセパレータ30Eを電解質膜側から見た図であり、図10(b)は、B−B線における概略断面を示している。
【0051】
セパレータ30Eに形成されている酸化ガス流路32Eは、図3に示した比較例の酸化ガス流路32Rと同じである。本例のガス拡散層19Eは、酸化ガス流路32Eにおいて酸化ガスの流速・流量が不足する可能性のある中流部に対向する領域の気孔径Rmが、上流部に対向する領域の気孔径Ruおよび下流部に対向する領域の気孔径Rdよりも大きくなるように、例えば、2倍の大きさ(Rm=2・Ru=2・Rd)になるように形成されている。これにより、中流部のガス拡散層のガスの透気度を、上流部の透気度および下流部の透気度に比べて高くすることができ、例えば、2倍に高めることができる。この結果、中流部のガス拡散層を通過するガスの通気抵抗を小さくすることができ、中流部における潜り込み酸化ガスの流速・流量の低下を抑制して均一化を図り、排水性を向上させることが可能である。
【0052】
なお、気孔径の異なるガス拡散層は、例えば、気孔径の異なる種類のガス拡散層をそれぞれ対応する領域に並べて配置することにより構成することができる。
【0053】
また、上記変形例では、ガス拡散層の気孔径を中流部において1段階大きくする構造を例に説明したが、上記実施例のガス拡散層の厚さと同様に、複数段階変化させる構成としてもよい。また、連続的に気孔径が変化するガス拡散層としてもよい。
【0054】
以上説明したように、酸化ガス流路の中流部における潜り込み酸化ガスの流速・流量の不足を解消して排水性を向上させるために、中流部のガス拡散層の透気度を上流部および下流部よりも高くして、ガス流路の中流部のガス拡散層を通過するガスの通気抵抗を小さくすることにより、中流部における潜り込みガスの流速・流量を増加させることができる構成であれば、どのようなガス拡散層の構造であってもよい。
【0055】
なお、上記実施例および変形例は、酸化ガス流路に関して説明したが、燃料ガス流路に関しても同様の構成としてもよい。
【0056】
C.第3実施例:
C1.ガス流路構造および冷媒流路構造:
上記第1および第2実施例は、ガス流路の中流部におけるガスの通気抵抗を小さくすることにより、中流部における潜り込みガスの流速・流量を増加させて、潜り込みガスの流速・流量の低下を抑制して均一化を図り、排水性を向上させたガス流路構造を例に説明した。これに対して、以下で説明するように、中流部における潜り込みガスの流速・流量の低下を抑制するのではなく、中流部における潜り込みガス中に含んで持ち去ることができる水蒸気量を増加させることにより、排水性を向上させた流路構造も考えられる。
【0057】
図11は、カソード側のセパレータ30Fに形成された酸化ガス流路32Fおよびアノード側のセパレータ20Fに形成された冷媒流路24Fを示す説明図である。
【0058】
酸化ガス流路32Fは、図11(a)に示すように、図3に示した比較例の酸化ガス流路32Rと同じ構造であり、酸化ガス流路の枝流路の中央部ほど、潜り込み酸化ガスの流速・流量が不足しやすくなる。なお、図11(a)には、矢印の大きさで、流速・流量の大きさを示している。
【0059】
一方、冷媒流路24Fは、上流部および下流部に対向する領域に設けられた冷媒枝流路24Fbの間隔Pwu,Pwdに対して、中流部に対向する領域に設けられた冷媒流路24Fbの間隔Pwmを広くして、中流部の冷媒枝流路の数が上流部および下流部に対して少なくなるように設けられている。これにより、上流部に対向する冷媒流路の面積および下流部に対向する冷媒流路の面積に対して、中流部に対向する冷媒流路の面積が小さくなる。この結果、燃料電池セルの中流部の温度を上流部および下流部に比べて高く維持することができ、中流部の潜り込み酸化ガスの相対湿度を低下させることが可能となり、この潜り込み酸化ガスが持ち去ることが可能な水分を増加させることができる。これにより、中流部における潜り込み酸化ガスの流速・流量が不足していても、酸化ガス供給側枝流路32Fbiと酸化ガス排出側枝流路32Fboとの間の隔壁32Fbwの下のガス拡散層に滞留する液水の排水性を向上させることが可能である。この結果、発電性能の均一化を図ることができ、発電性能を向上させることができる。また、酸化ガスの供給障害による電解質膜の劣化の防止や掃気性の向上に効果がある。
【0060】
C2.冷媒流路構造の変形例:
上記実施例の冷媒流路24Fは、冷媒枝流路24Fbの中流部の間隔Pwmを、上流部の間隔Pwuおよび下流部の間隔Pwdよりも大きくした構造の場合を例に示しているが、これに限定されるものではなく、以下に示す種々の変形も可能である。
【0061】
図12は、冷媒流路24Fの第1の変形例を示す説明図であり、第1の変形例の冷媒流路24Gにおいても、実施例の冷媒流路24Fと同様に、上流部および下流部に対向する領域に設けられた冷媒枝流路24Gbの間隔Pwu,Pwdに対して、中流部に対向する領域に設けられた冷媒枝流路24Gbの間隔Pwmを広くして、中流部の冷媒枝流路の数が上流部および下流部に対して少なくなるように設けられている。これにより、上流部に対向する冷媒流路の面積および下流部に対向する冷媒流路の面積に対して、中流部に対向する冷媒流路の面積を小さくすることができる。これにより、上記実施例と同様に、燃料電池セルの中流部の温度を上流部および下流部に比べて上昇させることができ、中流部における潜り込み酸化ガスの流速・流量が不足していても、滞留する液水の排水性を向上させることが可能である。
【0062】
図13は、冷媒流路24Fの第2の変形例を示す説明図であり、第2の変形例の冷媒流路24Hにおいても、実施例の冷媒流路24Fと同様に、上流部および下流部に対向する領域に設けられた冷媒枝流路24Jbの間隔Pwu,Pwdに対して、中流部に対向する領域に設けられた冷媒枝流路24Hbの間隔Pwmを広くして、中流部の冷媒枝流路の数が上流部および下流部に対して少なくなるように設けられている。これにより、上流部に対向する冷媒流路の面積および下流部に対向する冷媒流路の面積に対して、中流部に対向する冷媒流路の面積を小さくすることができる。これにより、上記実施例と同様に、燃料電池セルの中流部の温度を上流部および下流部に比べて高く維持することができ、中流部における潜り込み酸化ガスの流速・流量が不足していても、滞留する液水の排水性を向上させることが可能である。
【0063】
図14は、冷媒流路24Fの第3の変形例を示す説明図である。第3の変形例の冷媒流路24Jは、上流部の冷媒枝流路24Jbuの流路幅Wluおよび下流部の冷媒枝流路24Jbdの流路幅Wldよりも中流部の冷媒枝流路24Jbmの流路幅Wlmを狭くした構造を有している。この構造の場合にも、上流部に対向する冷媒流路の面積および下流部に対向する冷媒流路の面積に対して、中流部に対向する冷媒流路の面積を小さくすることができる。これにより、上記実施例と同様に、燃料電池セルの中流部の温度を上流部および下流部に比べて上昇させることができ、中流部における潜り込み酸化ガスの流速・流量が不足していても、滞留する液水の排水性を向上させることが可能である。
【0064】
以上説明したように、比較例において発生する可能性の高い酸化ガス流路の中流部における潜り込み酸化ガスの流速・流量の不足を解消して排水性を向上させるために、上流部に対向する冷媒流路の面積および下流部に対向する冷媒流路の面積に対して、中流部に対向する冷媒流路の面積を小さくする構造であれば、どのような冷媒流路の構造であってもよい。
【0065】
なお、以上の実施例および変形例の説明では、酸化ガス流路の排水性を例に説明したが、燃料ガス流路に対しても排水性向上の効果を得ることができる。
【0066】
D.第4実施例:
D1.冷媒流量制御装置の構造:
上記第3実施例の冷媒流路構造は、ガス流路の中流部に対応する燃料電池セルの領域(燃料電池セルの中央部)の冷却能力を低下させることにより、排水性を向上させるものである。しかしながら、この場合、高温動作時において、燃料電池セルの中央部が乾燥して、発電性能が低下してしまう可能性がある。そこで、これに対応するために、以下で説明するように、冷媒流量を制御することが考えられる。
【0067】
図15は、冷媒流路制御装置について示す説明図である。酸化ガス流路および燃料ガス流路の構造は、第3実施例の場合(図11(a)参照)と同じとする。
【0068】
アノード側のセパレータ20Kに形成された冷媒流路24Kは、酸化ガス流路の上流部、中流部、および、下流部に対応して、それぞれ独立に形成された上流側冷媒流路24Ku、中流側冷媒流路24Km、および、下流側冷媒流路24Kdにより構成されている。
【0069】
上流側冷媒流路24Kuは上流側冷媒供給マニホールド孔20uwiおよび上流側冷媒排出マニホールド孔20uwoに接続され、中流側冷媒流路24Kmは中流側冷媒供給マニホールド孔20mwiおよび中流側冷媒排出マニホールド孔20mwoに接続され、下流側冷媒流路24Kdは下流側冷媒供給マニホールド孔20dwiおよび下流側冷媒排出マニホールド孔20dwoに接続されている。上流側冷媒供給マニホールド孔20uwi、中流側冷媒供給マニホールド孔20mwi、および、下流側冷媒供給マニホールド孔20dwiは、3つに分岐された冷媒供給配管50に接続されている。また、上流側冷媒排出マニホールド孔20uwo、中流側冷媒排出マニホールド孔20mwo、および、下流側冷媒排出マニホールド孔20dwoは、3つに分岐された冷媒排出配管60に接続されている。なお、冷媒供給配管50の各分岐配管部分には、冷媒流量を制御する流量制御弁70u,70m,70dが設けられている。また、冷媒排出配管60の各分岐配管部分には、冷媒温度を測定する温度センサー80u,80m,80dが設けられている。流量制御弁70u,70m,70dは、制御部90から供給される制御信号によって制御される。
【0070】
制御部90は、以下で説明するように、温度センサー80u,80m,80dの示す温度に基づいて流量制御弁70u,70m,70dを制御することにより、上流側冷媒流路24Ku、中流側冷媒流路24Km、および、下流側冷媒流路24Kdの冷媒流量を制御する。
【0071】
D2.冷媒流量制御:
図16は、制御部90によって実行される冷媒流量制御の手順を示すフローチャートである。燃料電池の発電動作時において、まず、3つの温度センサー80u,80m,80dの示す温度に基づいて3つの流量制御弁70u,70m,70dを制御することにより、上流側冷媒流路24Ku、中流側冷媒流路24Km、および、下流側冷媒流路24Kdの冷媒流量を制御して、燃料電池セルの温度が面内で均一になるように制御する(ステップS110)。この制御動作は、燃料電池セルの中央部(酸化ガス流路の中流部)に対応する冷媒(冷却水、HO)の排出側の温度を温度センサー80mにより監視(ステップS120)して、燃料電池セルの中央部に対応する冷媒の温度が閾値以下となるまで継続される。これにより、燃料電池セルの温度が閾値よりも高い高温の場合に、燃料電池セルの面内全体の温度が均一で閾値温度以下となるように制御して、燃料電池セルの乾燥を防止することができる。
【0072】
これに対して、燃料電池セルの中央部に対応する冷媒の温度が閾値以下となった場合には、中流側冷媒流路24Kmに接続されている流量制御弁70mを制御して、中流側冷媒流路24Kmの冷媒流量を、他の冷媒流路24Ku,24Kdの冷媒流量よりも減少(Down)させる(ステップS130)。そして、燃料電池セルの中央部に対応する冷媒の温度が閾値以上となるまで、温度センサー80mにより温度を監視する(ステップS140)。そして、燃料電池セルの中央部に対応する冷媒の温度が閾値以上となった場合には、ステップS110に戻って、燃料電池セルの面内の均一温度制御を実行する。これにより、燃料電池セルの温度が低温の場合には、燃料電池セルの中央部に対応する中流側冷媒流路24Kmの冷媒流量を、他の冷媒流路24Ku,24Kdの冷媒流量よりも減少させることができる。これにより、第3実施例と同様に、燃料電池セルの中央部の温度を上流部および下流部に比べて高く維持することができ、中流部における潜り込み酸化ガスの流速・流量が不足していても、滞留する液水の排水性を向上させることが可能である。
【0073】
以上説明したように、本実施例では、燃料電池セルの温度が閾値以上の高温の場合には、燃料電池セルの面内全体の温度が均一で閾値温度以下となるように制御して、燃料電池セルの乾燥を防止することが可能であり、燃料電池セルの温度が閾値以下の低温の場合には、燃料電池セルの中央部に対応するガス流路の中流部における潜り込み酸化ガスの流速・流量が不足していても、滞留する液水の排水性を向上させることが可能である。
【0074】
なお、以上の実施例の説明では、酸化ガス流路を例に説明したが、燃料ガス流路に対しても燃料電池セルの乾燥防止の効果と排水性向上の効果とを兼ね備えることができる。
【0075】
E.変形例:
なお、上記実施例における構成要素の中の、独立クレームでクレームされた要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0076】
上記各実施例は、それぞれ独立した構造について説明しているが、例えば、第1実施例と第2実施例、第1実施例と第3実施例、第1実施例と第4実施例、第2実施例と第3実施例、第2実施例と第4実施例、第1実施例と第2実施例と第3実施例、第1実施例と第2実施例と第4実施例、をそれぞれ組み合わせて適用してもよい。すなわち、各実施例を適宜組み合わせて実施することも可能である。
【符号の説明】
【0077】
10…膜電極接合体
11…電解質層
13…触媒電極層
15…触媒電極層
17…ガス拡散層
19…ガス拡散層
19D…ガス拡散層
19E…ガス拡散層
20uwi…上流側冷媒供給マニホールド孔
20uwo…上流側冷媒排出マニホールド孔
20mwi…中流側冷媒供給マニホールド孔
20mwo…中流側冷媒排出マニホールド孔
20dwi…下流側冷媒供給マニホールド孔
20dwo…下流側冷媒排出マニホールド孔
20,20F,20K…セパレータ
22…燃料ガス流路
22bi…燃料ガス供給側枝流路
22bo…燃料ガス排出側枝流路
22bw…隔壁
24,24F〜24H,24J,24K…冷媒流路
24Fb〜24Hb,24Jb…冷媒枝流路
24Jbu,24Jbm,24Jbd…冷媒枝流路
24Ku…上流側冷媒流路
24Km…中流側冷媒流路
24Kd…下流側冷媒流路
30,30D〜30F,30R…セパレータ
30oi…酸化ガス供給マニホールド孔
30oo…酸化ガス排出マニホールド孔
32bw,32Abw〜32Cbw,32Fbw,32Rbw…隔壁
32,32A〜32F,32R…酸化ガス流路
32i…酸化ガス供給側流路
32o…酸化ガス排出側流路
32Ri…酸化ガス供給側流路
32Ro…酸化ガス排出側流路
32bi…酸化ガス供給側枝流路
32ci…酸化ガス供給連通路
32bo…酸化ガス排出側枝流路
32co…酸化ガス排出連通路
32Abi…酸化ガス供給側枝流路
32Abo…酸化ガス排出側枝流路
32Bbi…酸化ガス供給側枝流路
32Bbo…酸化ガス排出側枝流路
32Cbi…酸化ガス供給側枝流路
32Cbo…酸化ガス排出側枝流路
32Fbi…酸化ガス供給側枝流路
32Fbo…酸化ガス排出側枝流路
32Rbi…酸化ガス供給側枝流路
32Rbo…酸化ガス排出側枝流路
50…冷媒供給配管
60…冷媒排出配管
70u,70m,70d…流量制御弁
80u,80m,80d…温度センサー
90…制御部
100…燃料電池セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜電極接合体に含まれるガス拡散層に接する面に形成された溝状ガス流路および前記ガス拡散層により構成される燃料電池のガス流路構造であって、
前記溝状ガス流路は、上流端がガス供給口に接続され、下流端が閉塞された複数のガス供給側枝流路を有する略くし歯形状のガス供給側流路と、上流端が閉塞され、下流端がガス排出口に接続された複数のガス排出側枝流路を有する略くし歯形状のガス排出側流路と、に分離され、前記複数のガス供給側枝流路と前記複数のガス排出側枝流路とが交互に配列されており、
前記ガス供給側枝流路と前記ガス排出側枝流路との間を仕切る隔壁の下側の前記ガス拡散層を通過するガスの通気抵抗が、前記ガス供給側枝流路または前記ガス排出側枝流路の上流部よりも中流部のほうが低く、かつ、下流部よりも中流部のほうが低い
ことを特徴とするガス流路構造。
【請求項2】
請求項1記載のガス流路構造であって、
前記ガス供給側枝流路と前記ガス排出側枝流路との間の前記隔壁の幅が、前記ガス供給側枝流路または前記ガス排出側枝流路の上流部よりも中流部のほうが狭く、かつ、下流部よりも中流部のほうが狭い
ことを特徴とするガス流路構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガス流路構造であって、
前記ガス供給側枝流路と前記ガス排出側枝流路との間の前記隔壁の下側の前記ガス拡散層のガスの透気度が、前記ガス供給側枝流路または前記ガス排出側枝流路の上流部よりも中流部のほうが高く、かつ、下流部よりも中流部のほうが高い
ことを特徴とするガス流路構造。
【請求項4】
請求項3記載のガス流路構造であって、
前記ガス供給側枝流路と前記ガス排出側枝流路との間の前記隔壁の下側の前記ガス拡散層の厚さが、前記ガス供給側枝流路または前記ガス排出側枝流路の上流部および下流部よりも中流部のほうが厚い
ことを特徴とするガス流路構造。
【請求項5】
請求項3記載のガス流路構造であって、
前記ガス供給側枝流路と前記ガス排出側枝流路との間の前記隔壁の下側の前記ガス拡散層の気孔径が、前記ガス供給側枝流路または前記ガス排出側枝流路の上流部および下流部よりも中流部のほうが大きい
ことを特徴とするガス流路構造。
【請求項6】
膜電極接合体を挟持し、前記膜電極接合体に含まれるガス拡散層に接する面に形成された溝状ガス流路を有する燃料電池用セパレータであって、
前記溝状ガス流路は、上流端がガス供給口に接続され、下流端が閉塞された複数のガス供給側枝流路を有する略くし歯形状のガス供給側流路と、上流端が閉塞され、下流端がガス排出口に接続された複数のガス排出側枝流路を有する略くし歯形状のガス排出側流路と、に分離され、前記複数のガス供給側枝流路と前記複数のガス排出側枝流路とが交互に配列されており、
前記ガス供給側枝流路と前記ガス排出側枝流路との間のリブの幅が、前記ガス供給側枝流路または前記ガス排出側枝流路の上流部および下流部よりも中流部のほうが狭い
ことを特徴とするセパレータ。
【請求項7】
膜電極接合体に含まれるガス拡散層に接する面に形成された溝状ガス流路と、前記溝状ガス流路に対向するように形成され、前記膜電極接合体を冷却するための溝状冷媒流路と、を有する燃料電池の流路構造であって、
前記溝状ガス流路は、上流端がガス供給口に接続され、下流端が閉塞された複数のガス供給側枝流路を有する略くし歯形状のガス供給側流路と、上流端が閉塞され、下流端がガス排出口に接続された複数のガス排出側枝流路を有する略くし歯形状のガス排出側流路と、に分離され、前記複数のガス供給側枝流路と前記複数のガス排出側枝流路とが交互に配列されており、
前記溝状ガス流路の中流部に対する前記溝状冷媒流路の対向面積が、前記溝状ガス流路の上流部に対する前記溝状冷媒流路の対向面積よりも小さく、かつ、前記溝状ガス流路の下流部に対する前記溝状冷媒流路の対向面積よりも小さい
ことを特徴とする流路構造。
【請求項8】
請求項7記載の流路構造であって、
前記溝状ガス流路の中流部に対する前記溝状冷媒流路のピッチが、前記溝状ガス流路の上流部に対する前記溝状冷媒流路のピッチよりも広く、かつ、前記溝状ガス流路の下流部に対する前記溝状冷媒流路のピッチよりも広い
ことを特徴とする流路構造。
【請求項9】
請求項7記載の流路構造であって、
前記溝状ガス流路の中流部に対する前記溝状冷媒流路の流路幅が、前記溝状ガス流路の上流部に対する前記溝状冷媒流路の流路幅よりも狭く、かつ、前記溝状ガス流路の下流部に対する前記溝状冷媒流路の流路幅よりも狭い
ことを特徴とする流路構造。
【請求項10】
膜電極接合体に含まれるガス拡散層に接する面に形成された溝状ガス流路に対向するように形成され、前記膜電極接合体を冷却するための溝状冷媒流路に流れる冷媒の流量を制御する燃料電池の冷媒流量制御装置であって、
前記溝状ガス流路は、上流端がガス供給口に接続され、下流端が閉塞された複数のガス供給側枝流路を有する略くし歯形状のガス供給側流路と、上流端が閉塞され、下流端がガス排出口に接続された複数のガス排出側枝流路を有する略くし歯形状のガス排出側流路と、に分離され、前記複数のガス供給側枝流路と前記複数のガス排出側枝流路とが交互に配列されており、
前記溝状冷媒流路は、前記膜電極接合体の前記溝状ガス流路の上流部に対応する上流領域と中流部に対応する中流領域と下流部に対応する下流領域とを、それぞれ冷却するための上流冷媒流路と中流冷媒流路と下流冷媒流路とに分離されており、
前記中流冷媒流路の流量が、前記上流冷媒流量よりも少なく、かつ、前記下流冷媒流量よりも少なくなるように制御する
ことを特徴とする冷媒流量制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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