説明

燃料電池の操作方法

本発明は、燃料電池を操作するための方法、特に燃料電池をスイッチオフするための方法に関する。本発明に従う方法により、燃料電池がより良好な方法で保管され、規定された低い化学ポテンシャルが両方の電極に施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を操作するため、特に燃料電池をスイッチオフにするための方法に関する。本発明に従う方法により、燃料電池は、より良好な方法で保管され、両電極では、規定された低い化学的ポテンシャルがかかっている。
【背景技術】
【0002】
近年、スルホン酸−変性ポリマーが、ポリマー電解質膜(PEM)内のプロトン伝導性膜として、ほとんど独占的に使用されている。ここで、主にペルフルオロポリマーが使用される。DuPont de Nemours,Willmington,USAからのNafionTMが、この際立った例である。プロトンの伝導のために、水の比較的高い含有量が膜に必要とされる(水の含有量は、典型的には、スルホン酸基につき水が4〜20分子の量である)。必要とされる水の含有量、及び酸性の水及び反応ガスの水素と酸素と関連したポリマーの安定性は、PEM燃料電池スタックの操作温度を80〜100℃に制限する。これよりも高い温度で操作すると、燃料電池の性能が低下する。与えられた圧力レベルで、水の露点よりも高い温度で、膜は完全に乾燥し、そして燃料電池は、もはや電力を提供しない。この理由は、膜の抵抗が非常に高くなり、所定の電流がもはや流れないからである。
【0003】
上述した技術に基づいた膜電極アセンブリは、例えば特許文献1(US5,464,700)に記載されている。
【0004】
システムの特定の理由により、しかしながら、燃料電池内の操作温度は100℃を超えることが望ましい。貴金属に基づく(膜電極アセンブリー(MEA)に含まれる)触媒の活性は、高い温度で大きく改良される。
【0005】
特に、炭化水素からのいわゆる改質油(reformate)が使用される場合、改質油ガスは、相当量の二酸化炭素を含んでおり、該二酸化炭素ガスは、通常、入念なガス調整(gas conditioning)又はガス精製工程で除去する必要がある。操作温度が高いと、触媒のCO不純物に対する耐性(許容性)が増す。
【0006】
更に、燃料電池の操作の間、熱が生成される。しかしながら、これらのシステムを80℃未満に冷却することは、非常に高価になる。電力の出力に依存して、冷却装置は、より単純に構成することができる。このことは、100℃を超える温度で操作された燃料電池システム内の廃熱は、有用性が明らかに良好であり、そして従って、燃料電池システムの効率を増加することができることを意味する。
【0007】
これらの温度を達成するために、通常、新規な伝導メカニズムを有する膜が使用される。この目的のためのあるアプローチは、水を使用することなくイオン性の伝導性を示す膜を使用することである。この方針の最初の確実な発展が、特許文献2(WO96/13872)に開示されている。
【0008】
更に、高温燃料電池が、特許文献3(JP−A−2001−196082)及び特許文献4(DE1023560)に開示されており、同文献では、電極膜アセンブリーのシーリングシステムが、具体的に試験されている。
【0009】
上述した膜電極アセンブリーは、通常、平面的なバイポーラー板(バオポーラー板内には、ガス流のためのチャンネルが形成されている)と結合されている。膜電アセンブリーの一部が、前述したガスケットよりも厚さが厚いので、ガスケットが、膜電極アセンブリーのガスケットとバイポーラー板(通常、PTFEで製造されている)の間に挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US5,464,700
【特許文献2】WO96/13872
【特許文献3】JP−A−2001−196082
【特許文献4】DE1023560
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
連続的に操作されない、又はしばしばスイッチがオン及びオフされる燃料電池は、寿命(耐用年数)と性能が低下することがわかった。観察される性能の低下は、部分的にしか回復することができない。すなわち、次の操作では、部分的にしか可逆的に補償することができず、寿命(service life)は更に低下する。
【0012】
本発明の目的は、特に、性能におけるこれらの損失を防止し、及び寿命の低下を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの課題、及び明確に記載してはいない課題は、請求項1に従う方法によって解決される。
【0014】
従って、これに対応して、本発明は、燃料電池を操作する方法であって、該燃料電池が、
(i)プロトン伝導性ポリマー電解質膜又はポリマー電解質マトリックス、
(ii)プロトン伝導性ポリマー電解質膜又はポリマー電解質マトリックスの両側に配置された、少なくとも1種の触媒層、
(iii)触媒層の両方の相反する側に配置された、少なくとも1種の導電ガス拡散層、
(iv)ガス拡散層の両方の相反する側に配置された、少なくとも1種のバイポーラー板、
を含み、以下の工程、
a)水素含有ガスを、バイポーラー板内に存在するガス流路を使用して、ガス拡散層を通して、アノード側の触媒層に供給する工程、
b)酸素と窒素を含むガスを、バイポーラー板内に存在するガス流路を使用して、ガス拡散層を通して、カソード側の触媒層に供給する工程、
c)アノード側の触媒でプロトンを発生させる工程、
d)発生したプロトンを、プロトン伝導性ポリマー電解質膜又はポリマー電解質マトリックスを通して拡散させる工程、
e)プロトンとカソード側から供給された酸素含有ガスを反応させる工程、
f)アノード側とカソード側のバイポーラー板を使用して、形成された電位(電圧電位)をタップする工程、
を含む方法において、
燃料電池をスイッチオフするために、酸素と窒素を含むガス混合物の供給が中止され、そしてカソードに存在する酸素が、存在するプロトンとの反応により反応して消費され、及び燃料電池のカソード側の残存する酸素含有量が、5体積%の濃度、及び好ましくは3体積%未満、及び特に1体積%未満にまで低減されることを特徴とする方法である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】0.2W/cmでの電池1と2の電池電圧を、スタート/ストップサイクルの数の関数として示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
プロトン−伝導性ポリマー電解質膜及びマトリックス
本発明の目的に適したポリマー電解質膜及びポリマー電解質マトリックスは、それ自体は、公知である。
【0017】
通常、このために所定の膜が使用され、該膜は酸を含み、該酸は、ポリマーに共有結合的に結合していても良い。更に、適切な膜を形成するために、平坦な材料を酸でドープ(dope)しても良い。
【0018】
これらのドープされた膜は、特に、平坦な材料、例えばポリマーフィルムを酸含有化合物を含んだ液体で膨れさせるか、又はポリマーと酸含有化合物の混合物を作り、そして次に平坦な構造物を作り、次に(膜を形成するために)固体化させることによって膜を形成することによって製造することができる。
【0019】
この目的のために適切なポリマーは、特に、ポリオレフィン、例えばポリ(クロロプレン)、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリ(p−キシレン)、ポリアリールメチレン、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルエーテル、ポリビニルアミン、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルクロリド、ポリビニリデンクロリド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、PTFEとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、とペルフルオロプロピルビニルエーテルのコポリマー、とトリフルオロニトロソメタンのコポリマー、とカルボアルコキシペルフルオロアルコキシビニルエーテルのコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニルフルオリド、ポリビニリデンフルオリド、ポリアクロライン、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリシアノアクリレート、ポリメタクリルイミド、シクロオレフィンコポリマー、特にノルボルネンのもの;
バックボーンにC−Oボンドを有するポリマー、例えば、ポリアセタール、ポリオキシメチレン、ポリエーテル、ポリプロピレンオキシド、ポリエピクロルヒドリン、ポリテトラヒドロフラン、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルケトン、ポリエステル、特にポリヒドロキシ酢酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヒドロキシベンゾエート、ポリヒドロキシプロピオン酸、ポリピバロタクトン、ポリカプロラクトン、ポリマロン酸、ポリカーボネート;
バックボーン中のポリマー性C−S結合、例えば、ポリスルフィッドエーテル、ポリフェニレンスルフィッド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン;
バックボーン中のポリマー性C−N結合、例えば、ポリイミン、ポリイソシアニド、ポリエーテルイミン、ポリエーテルイミド、ポリアニリン、ポリアラミド、ポリアミド、ポリヒドラジド、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアゾール、ポリアゾールエーテルケトン、ポリアジン;
液体−結晶性ポリマー、特にベクトラン、及び無機ポリマー、例えば、ポリシラン、ポリカルボシラン、ポリシロキサン、ポリケイ酸、ポリシリケート、シリコーン、ポリホスファゼン及びポリチアジルを含む。
【0020】
ここで、好ましいものは、アルカリ性ポリマーで、これは特に酸でドープされた膜に適用される。プロトンを運ぶことができる殆ど全ての公知のポリマー膜が、酸でドープされたアルカリ性ポリマー膜として考慮される。追加的な水を必要とすることなく、例えばいわゆるグロッタスメカニズムを使用してプロトンを運ぶことができる酸が好ましい。
【0021】
本発明において、アルカリ性ポリマーとして、繰り返し単位内に少なくとも1個の窒素原子を有するアルカリ性ポリマーを使用することが好ましい。
【0022】
好ましい実施の形態に従えば、アルカリ性ポリマー中の繰り返し単位は、少なくとも1個の窒素原子を有する芳香族環を含む。芳香族環は、好ましくは1〜3個の窒素原子を有する5員環又は6員環で、これらは、他の環、特に他の芳香族と縮合(fuse)していても良い。
【0023】
本発明の特定の局面に従えば、高温で安定な、少なくとも1個の窒素、酸素及び/又はサルファー原子を一つ繰り返し単位中、又は異なる繰り返し単位中に含むポリマーが使用される。
【0024】
本発明において、「高温で安定」は、ポリマー性電解質として、燃料電池内で120℃を超える温度で、長期間にわたり操作(運転)可能なポリマーを意味する。「長期間」は、本発明に従う膜は、少なくとも100時間、好ましくは少なくとも500時間、少なくとも80℃の温度、好ましくは少なくとも120℃の温度、特に好ましくは少なくとも160℃の温度で、初期の性能(該性能はWO01/18894A2に記載された方法に従い測定可能である)に対してその性能が50%以上低減されること無く、操作可能であることを意味する。更に、高温で安定であるポリマー電解質膜、又は高温で安定であるポリマー電解質マトリックスは、プロトン伝導性が、120℃で、少なくとも1mS/cm、好ましくは少なくとも2mS/cm、特に少なくとも5mS/cmであることを意味すると理解される。ここで、これらの値は、加湿(湿潤)することなく達成される。
【0025】
上述したポリマーは、個々に、又は混合物として(ブレンド)使用することができる。ここで、ポリアゾール及び/又はポリスルホンを含むブレンドが特に好ましい。ここで、好ましいブレンド成分は、WO02/36249に記載されているように、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン及びスルホン酸基で変性されたポリマーである。ブレンドを使用することにより、機械的特性を改良することができ、そして材料コストを低減することができる。
【0026】
ポリアゾールは、アルカリ性ポリマーの特に好ましいグループを構成する。ポリアゾールに基づくアルカリ性ポリマーは、一般式(I)及び/又は(III)及び/又は(IV)及び/又は(V)及び/又は(VI)及び/又は(VII)及び/又は(VIII)及び/又は(IX)及び/又は(X)及び/又は(XI)及び/又は(XIII)及び/又は(XIV)及び/又は(XV)及び/又は(XVI)及び/又は(XVI)及び/又は(XVIII)及び/又は(XIX)及び/又は(XX)及び/又は(XXI)及び/又は(XXII)の繰り返しアゾール単位を含む
【0027】
【化1】

【0028】
【化2】

【0029】
【化3】

【0030】
【化4】

【0031】
(但し、
Arが、同一又は異なり、単環式(mononuclear)又は複環式(polynuclear)であって良く、そして4つの共有結合を有する(tetracovalent)、芳香族又は複素環式芳香族基であり、
Arが、同一又は異なり、単環式又は複環式であって良く、そして2つの共有結合を有する(bicovalent)、芳香族又は複素環式芳香族基であり、
Arが、同一又は異なり、単環式又は複環式であって良く、そして2つ又は3つの共有結合を有する、芳香族又は複素環式芳香族基であり、
Arが、同一又は異なり、単環式又は複環式であって良く、そして3つの共有結合を有する(tricovalent)、芳香族又は複素環式芳香族基であり、
Arが、同一又は異なり、単環式又は複環式であって良く、そして3つの共有結合を有する、芳香族又は複素環式芳香族基であり、
Arが、同一又は異なり、単環式又は複環式であって良く、そして4つの共有結合を有する、芳香族又は複素環式芳香族基であり、
Arが、同一又は異なり、単環式又は複環式であって良く、そして2つの共有結合を有する、芳香族又は複素環式芳香族基であり、
Arが、同一又は異なり、単環式又は複環式であって良く、そして2つの共有結合を有する、芳香族又は複素環式芳香族基であり、
Arが、同一又は異なり、単環式又は複環式であって良く、そして3つの共有結合を有する、芳香族又は複素環式芳香族基であり、
Arが、同一又は異なり、単環式又は複環式であって良く、そして3つ又は4つの共有結合を有する、芳香族又は複素環式芳香族基であり、
Ar10が、同一又は異なり、単環式又は複環式であって良く、そして2つ又は3つの共有結合を有する、芳香族又は複素環式芳香族基であり、
Ar11が、同一又は異なり、単環式又は複環式であって良く、そして2つの共有結合を有する、芳香族又は複素環式芳香族基であり、
Xが、同一又は異なり、そして酸素、硫黄、又はアミノ基(これらは、水素原子、1〜20個の炭素原子を有す基、好ましくは、枝分かれした、又は枝分かれしていないアルキル−又はアルコキシ基、又はアリール基を更なる基として有する)であり、
Rが、同一又は異なり、そして水素、アルキル基、及び芳香族基であり(但し、式(XX)中のRは水素ではない)、
n、mが、10以上の整数、好ましくは100以上の整数である)。
【0032】
好ましい芳香族又は複素環式芳香族基は、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ビスフェノン、ジフェニルスルホン、キノリン、ピリジン、ビピリジン、ピリダジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、テトラジン、ピロール、ピラゾール、アントラセン、ベンゾピロール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサチアゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾピリジン、ベンゾピラジン、ベンゾピラジジン、ベンゾピリミジン、ベンゾピラジン、ベンゾトリアジン、インドリジン、キノリジン、ピリドピリジン、イミダゾピリミジン、ピラジノピリミジン、カルバゾール、アジリジン、フェナジン、ベンゾキノリン、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリジジン、ベンゾプテリジン、フェナンスロリン、及びフェナントレン(これらは置換されていても良い)から誘導されるものである。
【0033】
この場合、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar10、Ar11は、如何なる置換パターンを有していても良く、例えばフェニレンの場合、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar10、Ar11は、オルト−フェニレン、メタ−フェニレン、及びパラ−フェニレンであっても良い。特に好ましい基は、ベンゼン及びビフェニレン(これらは、置換されていても良い)から誘導される。
【0034】
好ましいアルキル基は、1〜4個の炭素原子を有する短鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル又はi−プロピル及びt−ブチル基である。
【0035】
好ましい芳香族基は、フェニル又はナフチル基である。アルキル基及び芳香族基は置換されても良い。
【0036】
好ましい置換基は、ハロゲン原子、例えば、フッ素、アミノ基、ヒドロキシ基又は短鎖アルキル基、例えばメチル又はエチル基である。
【0037】
繰り返し単位内の基Xが同一である、式(I)の繰り返し単位を有するポリアゾールが好ましい。
【0038】
ポリアゾールは、原則として、(例えば、その基Xで区別される)異なる繰り返し単位を有していても良い。しかしながら、繰り返し単位内に同一の基Xだけが存在していることが好ましい。
【0039】
更に好ましいポリアゾールポリマーは、ポリイミダゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリキノキサリン、ポリチアジアゾール、ポリ(ピリジン)、ポリ(ピリミジン)及びポリ(テトラザピレン)である。
【0040】
本発明の更なる実施の形態では、繰り返しアゾール単位を有するポリマーは、式(I)〜(XXII)の、互いに異なる少なくとも2つの単位を含むコポリマー又はブレンドである。ポリマーは、ブロックコポリマー(ジブロック、トリブロック)、ランダムブロックコポリマー、周期コポリマー及び/又は交互するポリマーの状態であることが可能である。
【0041】
本発明の特に好ましい実施の形態では、繰り返しアゾール単位を含むポリマーは、式(I)及び/又は(II)ポリアゾールの単位だけを含むポリアゾールである。
【0042】
ポリマー中の繰り返しアゾール単位の数は、10以上の整数である。特に好ましいポリマーは、少なくとも100の繰り返しアゾールを含む。
【0043】
本発明において、繰り返しベンズイミダゾールを含むポリマーが好ましい。最も目的に適した、繰り返しベンズイミダゾールを含むポリマーは、以下の式によって表される:
【0044】
【化5】

【0045】
【化6】

【0046】
【化7】

【0047】
【化8】

【0048】
(但し、n及びmが、10以上の整数、好ましくは100以上の整数である。)
【0049】
しかしながら、使用するポリアゾール、特にポリベンズイミダゾールは、高い分子量で特徴付けられる。固有粘度として測定して、これは好ましくは少なくとも0.2dl/g、好ましくは0.8〜10dl/g、特に1〜10dl/gである。
【0050】
このようなポリアゾールの製造は公知であり、該製造では、1種以上の芳香族テトラ−アミノ化合物を、溶融物(melt)中で、カルボン酸モノマー当たり少なくとも2つの酸性基を含む、1種以上の芳香族カルボン酸又はそのエステルと反応させプレポリマーが形成される。得られたプレポリマーは、反応容器内で固体化(凝固)し、そして次に、機械的に砕かれる。粉状のプレポリマーは、通常、400℃までの温度で、固体状態重合で、微細に重合される。
【0051】
好ましい芳香族カルボン酸は、特に、ジカルボン酸及びトリカルボン酸及びテトラカルボン酸又はそのエステル又はその無水物又はその酸塩化物である。芳香族カルボン酸という用語は、同様に、複素環式芳香族カルボン酸も含む。
【0052】
好ましくは、芳香族ジカルボン酸は、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシテレフタル酸、5−アミノイソフタル酸、5−N,N−ジメチルアミノイソフタル酸、5−N,N−ジエチルアミノイソフタル酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、2,6−ジヒドロキシイソフタル酸、4,6−ジヒロドキシイソフタル酸、2,3−ジヒドロキシフタル酸、2,4−ジヒドロキシフタル酸、3,4−ジヒドロキシフタル酸、3−フルオロフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、2−フルオロテレフタル酸、テトラフルオロフタル酸、テトラフルオロイソフタル酸、テトラフルオロテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4−トリフルオロメチルフタル酸、2,2−ビス−(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−スチルベンカルボン酸、4−カルボキシシナミック酸、又はそのC1−C20アルキルエステル、又はC5−C20アリール酸、又はその酸無水物又はその酸塩化物である。
【0053】
芳香族トリカルボン酸、テトラカルボン酸又はそのC1−C20アルキルエステル又はC5−C12アリールエステル又はその酸無水物又はその酸塩化物は、好ましくは1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、(2−カルボキシフェニル)イミノジアセチック酸、3,5,3’−ビフェニルトリカルボン酸又は3,5,4’−ビフェニルトリカルボン酸が好ましい。
【0054】
芳香族テトラカルボン酸、又はそのC1−C20アルキルエステル又はC5−C12アリールエステル又はその酸無水物又はその酸塩化物は、3,5,3’,5’−ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、又は1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸が好ましい。
【0055】
使用する複素環式芳香族カルボン酸は、好ましくは複素環式芳香族ジカルボン酸、トリカルボン酸及びテトラカルボン酸、又はそのエステル又はその無水物である。複素環式芳香族カルボン酸は、少なくとも1個の窒素、酸素、硫黄又はリン原子を芳香族基中に有する、芳香族系を意味すると理解される。好ましくは、これは、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン−2,4−ジカルボン酸、4−フェニル−2,5−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、2,6−ピリミジンジカルボン酸、2,5−ピラジンジカルボン酸、2,4,6−ピリジントリカルボン酸、又はベンズイミダゾール−5,6−ジカルボン酸及びそのC1−C20アルキルエステル又はC5−C12アリールエステル又はその酸無水物又はその酸塩化物である。
【0056】
トリカルボン酸又はテトラカルボン酸の含有量は、(使用するジカルボン酸に対して、)0〜30モル%、好ましくは0.1〜20モル%、特に0.5〜10モル%である。
【0057】
使用する芳香族、及び複素環式芳香族ジアミノカルボン酸は、好ましくはジアミノ安息香酸及びそのモノヒドロクロリド又はジヒドロクロリド誘導体である。
【0058】
少なくとも2種の芳香族カルボン酸が使用されることが好ましい。芳香族カルボン酸に加え、複素環式芳香族カルボン酸をも含む混合物が使用されることが特に好ましい。芳香族カルボン酸の複素環式芳香族カルボン酸に対する割合は、1:99〜99:1の範囲、好ましくは1:50〜50:1の範囲である。
【0059】
これらの混合物は、特に、N−複素環式芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジカルボン酸の混合物である。これらの例(該例に限定されない)は、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、2,5−ヒドロキシテレフタル酸、2,6−ジヒドロキシイソフタル酸、4,6−ヒドロキシイソフタル酸、2,3−ジヒドロキシフタル酸、2,4−ジヒドロキシフタル酸、3,4−ジヒドロキシフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4−トリフルオロメチルフタル酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン2,4−ジカルボン酸、4−フェニル−2,5−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、2,6−ピリミジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカボン酸の混合物である。
【0060】
好ましい芳香族テトラアミノ化合物は、特に、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル、2,3,5,6−テトラアミノピリジン、1,2,4,5−テトラアミノベンゼン、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルスルホン、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルエーテル、3,3’,4,4’−テトラアミノベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルメタン及び3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルジメチルメタン、及びこれらの塩、特に、そのモノヒドロクロリド、ジヒドロクロリド、トリヒドロクロリド及びテトラヒドロクロリド誘導体を含む。
【0061】
好ましいポリベンズイミダゾールは、商品名(登録商標)Celazoleで市販されている。
【0062】
好ましいポリマーは、ポリスルホン、特に、バックボーンに芳香族及び/又は複素環式芳香族基を有するポリスルホンである。本発明の特定の局面に従えば、好ましいポリスルホン及びポリエーテルスルホンは、溶融体積速度MVR300/21.6が、ISO 1133に従い測定して、40cm/10min以下、特に30cm/10min以下、及び特に好ましくは20cm/10min以下である。ここで、ビカー軟化温度VST/A/50が、180℃〜230℃のポリスルホンが好ましい。本発明の更なる好ましい実施の形態では、ポリスルホンの数平均分子量は、30000g/molを超えることが好ましい。
【0063】
ポリスルホンに基づくポリマーは、特に、一般式A、B、C、D、E、F及び/又はGに従う結合スルホン基(linking sulphone group)を有する繰り返し単位を有するポリマーを含む:
【0064】
【化9】

【0065】
(但し、基Rが、相互に独立して、同一又は異なって、芳香族又は複素環式芳香族基礎を表しており、そしてこれらの基は、上述したものである。)これらは、特に、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、4,4’−ビフェニル、ピリジン、キノリン、ナフタレン、フェナントレンを含む。
【0066】
本発明の範囲内で、好ましいポリスルホンは、ホモポリマー及びコポリマー、例えばランダムコポリマーである。特に好ましいポリスルホンは、式H〜Nの繰り返し単位を含む:
【0067】
【化10】

(但しn>0)
【0068】
【化11】

(但しn<0)
【0069】
【化12】

【0070】
上述したポリスルホンは、商品名(登録商標)Victrex200P、(登録商標)Victrex720P、(登録商標)Ultrason E、(登録商標)Ultrason S、(登録商標)Mindel、(登録商標)Radel A、(登録商標)Radel R、(登録商標)Victrex HTA、(登録商標)Astrel及び(登録商標)Udelで市販されている。
【0071】
更に、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン及びポリアリールケトンが特に好ましい。これらの高性能ポリマーは、それ自体公知であり、そして商品名Victrex(登録商標)PEEKTM、(登録商標)Hostatec、(登録商標)Kadelとして市販されている。
【0072】
上述したポリスルホン及び上述したポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン及びポリアリールケトンは、上述のように、アルカリ性ポリマーとのブレンド成分として存在することができる。更に、上述したポリスルホン及び上述したポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン及びポリアリールケトンは、スルホン酸化された状態で、ポリマー電解質として使用することができ、スルホン酸化した材料は、アルカリ性ポリマー、特にポリアゾールをブレンド材料として特徴付けることもできる。上述した、及びアルカリ性ポリマー又はポリアゾールに関して好ましい実施の形態は、これらの実施の形態にも適用される。
【0073】
ポリマーフィルムを製造するために、ポリマー、好ましくはアルカリ性ポリマー、特にポリアゾールを、追加的な工程で、極性、非プロトン性の溶媒、例えばジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させることができ、そしてフィルムを従来の方法で製造することができる。
【0074】
溶媒の残りを除去するために、WO02/071518に記載されているように、このように得られたフィルムを洗浄液で処理することができる。ドイツ特許出願に記載された、溶媒の残りを除去するためにポリアゾールフィルムを洗浄することよって、フィルムの機械的特性は驚く程改良される。これらの特性は、特に、フィルムのE−モジュール、引裂強度及び破壊強度を含む。
【0075】
更に、ポリマーフィルムは、更なる変性(modification)を、例えば、WO02/070592又はWO00/44816に記載されているように、架橋によって有することがでる。好ましい実施の形態では、アルカリ性ポリマー及び少なくとも1種のブレンド成分から成る、使用するポリマーは、WO03/016384に記載されているように、追加的に架橋剤を含む。
【0076】
ポリアゾールフィルの厚さは、広い範囲に取ることができる。好ましくは、酸でドープする前のポリアゾールフィルムの厚さは、通常、5μm〜2000μm、特に好ましくは、10μm〜1000μmの範囲であるが、これらの範囲に限られるものではない。
【0077】
プロトン伝導性を達成するために、フィルムが酸でドープされる。ここで、酸は、公知の全てのルイス・ブレンステッド酸、好ましくは無機のルイス・ブレンステッド酸を含む。
【0078】
更に、多塩基酸(polyacid)、特に、イソ多塩基酸及びヘテロ多塩基酸及び異なる酸の混合物の適用も可能である。ここで、本発明の概念において、ヘテロ多塩基酸は、少なくとも2個の異なる中心原子を有する無機の多塩基酸を定義し、それぞれは、部分的に混合された無水物として、金属(好ましくはCr、MO、V、W)と非金属(好ましくはAs、I、P、Se、Si、Te)の、弱い多塩基の酸素酸を形成している。これらは特に、12−リンモリブデン酸及び12−リンタングステン酸を含む。
【0079】
ドーピングの程度は、ポリアゾールフィルムの伝導性に影響を及ぼすことができる。伝導性は、ドーピング物質の濃度が増加するまで、その値が最大値に達するまで増加する。本発明に従い、ドーピングの程度は、ポリマーの繰り返し単位の1モル当たりの酸のモルとして与えられる。本発明の範囲内で、2〜50の範囲のドーピングの程度、特に5〜40の範囲のドーピングの程度が好ましい。
【0080】
特に好ましいドーピング物質は、硫酸、及びリン酸(ホスホリックアシッド)又は(例えば、加水分解の間、又は温度に依存して)これらの酸を放出する化合物である。極めて好ましいドーピング物質は、リン酸(HPO)である。ここで、高度に濃縮された酸が通常では使用される。本発明の特定の局面に従えば、リン酸の濃度は、ドーピング物質に対して、少なくとも50質量%、特に少なくとも80質量%である。
【0081】
更に、プロトン伝導性膜は、以下の工程、
I)ポリマー、特にポリアゾールをリン酸に溶解させる工程、
II)工程I)に従い得られる溶液を、不活性ガスの存在下に、400℃以下の温度にまで加熱する工程、
III)工程II)に従うポリマーの溶液を使用して、膜を支持体上に形成する工程、
IV)工程III)で形成された膜を自立可能(self-supporting)になるまで処理する工程、
を含む方法によって得ることができる。
【0082】
更に、ドープされたポリアゾールフィルムは、以下の工程、
A)1種以上の芳香族テトラアミノ化合物を、(カルボン酸モノマーにつき、少なくとも2個の酸基を含む)1種以上の芳香族カルボン酸又はそのエステルと混合するか、又は1種以上の芳香族及び/又は複素環式芳香族ジアミノカルボン酸を、ポリリン酸中で混合し、溶液及び/又は分散物を形成する工程、
B)工程A)に従う混合物を使用して、支持体又は電極に層を施す工程、
C)工程B)に従い得られる平坦な構造物/層を、不活性ガスの存在下に、350℃以下の温度にまで、好ましくは280℃以下の温度にまで加熱し、ポリアゾールポリマーを形成する工程、
D)工程C)で形成された膜を(自立可能になるまで)処理する工程、
を含む方法によって得ることができる。
【0083】
工程A)で使用する芳香族又は複素環式芳香族カルボン酸及びテトラアミノ化合物については上述した。
【0084】
工程A)で使用するポリリン酸は、例えばRiedel−de Haenから入手可能な通常のポリリン酸である。ポリリン酸Hn+23n+1(n>1)は、通常、Pとして(酸滴定により)計算して、少なくとも83%の濃度を有している。モノマーの溶液の替わりに、分散物(分散液)/懸濁物(懸濁液)を製造することも可能である。
【0085】
工程A)で製造された混合物は、ポリリン酸の全モノマーの合計に対する割合が、1:100000〜10000:1、好ましくは1:1000〜1000:1、特に1:100〜100:1である。
【0086】
工程B)に従う層処方(layer formation)は、ポリマーフィルム製造の従来技術では公知である(それ自身は公知の)方法(注ぎ、吹きつけ、ドクターブレードでの塗布)で行われる。この条件下では不活性と考えられる全ての支持体が、支持体として適切である。粘度を調整するために、必要であれば、リン酸(濃度、リン酸、85%)を溶液に加えることができる。従って、粘度を所望の値に調節することができ、そして膜の形成が容易化される。
【0087】
工程B)に従い製造された層は、厚さが20〜4000μm、好ましくは30〜3500μm、特に50〜3000μmである。
【0088】
工程A)に従う混合物が、トリカルボン酸又はテトラカルボン酸も含む場合、ポリマーの枝分かれ/架橋が達成される。このことは、機械的特性の改良に貢献する。工程C)に従い製造されたポリマー層の処理は、所定の水分(湿度)と温度の存在下に、及び層が燃料電池に使用するために十分な強度を有するのに十分な期間で行われる。この処理は、膜が自立性(self-supporting)になり、膜を何ら損なうことなく支持体から取り外すことができるようになる範囲まで行われる。
【0089】
工程C)に従い、工程B)で得られた平坦な構造物は、350℃以下の温度にまで、好ましくは280℃以下の温度にまで、及び特に好ましくは200℃〜250℃の範囲に加熱される。工程C)で使用される不活性ガスは、この技術分野の当業者にとって公知である。これらは、特に窒素、希ガス、例えばネオン、アルゴン、ヘリウムを含む。
【0090】
本発明の変形例では、オリゴマー及び/又はポリマーの形成は、工程A)からの混合物を350℃以下までの温度、好ましくは280℃以下までの温度に加熱することによって行うことができる。温度と存続期間に依存して、次に工程C)で加熱することを部分的又は完全に省略することができる。この変形例は、本発明の目的の一つでもある。
【0091】
工程Dにおける膜の処理は、0℃を超え、150℃未満の温度、好ましくは10℃〜120℃の温度、特に室温(20℃)〜90℃の温度で、湿分又は水及び/又は蒸気及び/又は水を含むリン酸(85%以下)の存在下に行われる。処理は、標準圧で行われることが好ましいが、圧力を作用させて行うことも可能である。処理は、本質的に、十分な湿分(水分)の存在下に行われ、存在するポリリン酸は、低分子量のポリリン酸及び/又はリン酸を形成する、部分的な加水分解によって膜を固化することに貢献する。
【0092】
加水分解流体は、溶液であっても良く、この流体は、懸濁した及び/又は分散した成分を含んでも良い。加水分解流体の粘度は、広い範囲に及ぶことが可能であり、粘度を調節するために、溶媒の添加又は温度の上昇を行うこともできる。動的粘度は、好ましくは0.1〜10000mPas、特に0.2〜2000mPasの範囲で、これらの値は、例えばDIN53015に従い測定することができる。
【0093】
工程D)に従う処理は、公知の如何なる方法によってでも行うことができる。工程C)で得られた膜は、例えば流体槽(fluid bath)に漬けることができる。更に、加水分解流体は、膜に吹き付けることができる。追加的に、加水分解流体を、膜に注ぐこともできる。後者の方法は、加水分解の間、加水分解流体中の酸の濃度が一定に維持されるという長所を有している。しかしながら、最初の方法は、実際には、しばしばより安価である。
【0094】
リン及び/又は硫黄のオキソ酸は、特にホスフィン酸、ホスホン酸、リン酸(ホスホリック・アシッド)、次二ホスホン酸(ハイポジホスホニック・アシッド)、次二リン酸(ハイポジホスホリック・アシッド)、オリゴリン酸、亜硫酸、二亜硫酸、及び/又は硫酸を含む。これらの酸は、個々に、又は混合物として使用することができる。
【0095】
更に、リン及び/又は硫黄のオキソ酸は、ラジカル重合(free-radical polymerization)によって処理可能であり、そしてホスホン酸及び/又はスルホン酸基を含むモノマーを含む。
【0096】
ホスホン酸基を含むモノマーは、当業者にとって公知である。これらは、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合、及び少なくとも1個のホスホン酸基を有する化合物である。好ましくは、炭素−炭素二重結合を形成する2個の炭素原子は、少なくとも2個、好ましくは3個の、基への結合(これらは、二重結合の最小の立体障害をもたらす)を有する。これらの基は、特に、水素原子及びハロゲン原子、特にフッ素原子を含む。本発明の範囲内で、ホスホン酸を含むポリマーは、ホスホン酸基を含むモノマーを単独で重合することにより、又は他のモノマー及び/又は架橋剤と一緒に重合することにより得られる重合生成物から得られる。
【0097】
ホスホン酸基を含むモノマーは、1個、2個、3個又はそれ以上の炭素−炭素二重結合を含んでも良い。更に、ホスホン酸基を含むモノマーは、1個、2個、3個又はそれ以上のホスホン酸基を含んでも良い。
【0098】
通常、ホスホン酸基を含むモノマーは、2〜20個、好ましくは2〜10個の炭素原子を含む。
【0099】
ホスホン酸基を含むモノマーは、好ましくは、式
【0100】
【化13】

【0101】
(但し、
Rが、結合、2つの共有結合を有するC1−C15アルキレン基、2つの共有結合を有するC1−C15アルキレンオキシ基、例えば、エチレンオキシ基、又は2つの共有結合を有するC5−C20アリール、又はヘテロアリール基であり、上述した基はそれ自体、ハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZで置換されても良いものであり、
Zが、互いに独立して、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、エチレンオキシ基、又はC5−C20アリール又はヘテロアリール基であり、上述した基はそれ自体、ハロゲン、−OH、−CNで置換されても良いものであり、及び
xが、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の整数であり、
yが、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の整数である、)
及び/又は式
【0102】
【化14】

【0103】
(但し、
Rが、結合、2つの共有結合を有するC1−C15アルキレン基、2つの共有結合を有するC1−C15アルキレンオキシ基、例えば、エチレンオキシ基、又は2つの共有結合を有するC5−C20アリール、又はヘテロアリール基であり、上述した基はそれ自体、ハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZで置換されても良いものであり、
Zが、互いに独立して、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、エチレンオキシ基、又はC5−C20アリール又はヘテロアリール基であり、上述した基はそれ自体、ハロゲン、−OH、−CNで置換されても良いものであり、及び
xが、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の整数である、)
及び/又は式
【0104】
【化15】

【0105】
(但し、
Aが、式COOR、CN、CONR、OR及び/又はRの基であり、そしてRは、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、エチレンオキシ基、又はC5−C20アリール又はヘテロアリール基であり、上述した基はそれ自体、ハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZで置換されても良いものであり、
Rが、結合、2つの共有結合を有するC1−C15アルキレン基、2つの共有結合を有するC1−C15アルキレンオキシ基、例えば、エチレンオキシ基、又は2つの共有結合を有するC5−C20アリール、又はヘテロアリール基であり、上述した基はそれ自体、ハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZで置換されても良いものであり、
Zが、互いに独立して、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、エチレンオキシ基、又はC5−C20アリール又はヘテロアリール基であり、上述した基はそれ自体、ハロゲン、−OH、−CNで置換されても良いものであり、及び
xが、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の整数である、)
の化合物である。
【0106】
ホスホン酸基を含む、好ましいモノマーは、特に、ホスホン酸基を含むアルケン、例えば、エテンホスホン酸、プロペンホスホン酸、ブテンホスホン酸;ホスホン酸基を含むアクリル酸化合物、及び/又はメタクリル酸化合物、例えば、2−ホスホノメチルアクリル酸、2−ホスホノメチルメタクリル酸、2−ホスホノメチルアクリルアミド、及び2−ホスホノメチルメタクリルアミドを含む。
【0107】
市販されているビニルホスホン酸(エテンホスホン酸)(これは、例えば、Aldrich社又はClariant GmbHから市販されている)が、使用するのに特に好ましい。好ましいビニルホスホン酸は、純度が70%を超え、特に90%を超え、及び特に好ましくは97%を超える。
【0108】
ホスホン酸基を含むモノマーは、更に、誘導体の状態で使用することもできる。該誘導体は、次に酸に変換され、酸への変換は重合された状態で行うことができる。これらの誘導体は、特に、ホスホン酸基を含むモノマーの、塩、エステル、アミド、及びハロゲン化物を含む。
【0109】
更に、加水分解の後、ホスホン酸基を含むモノマーを、膜の上又は中に導入することも可能である。これは、(従来技術から公知の)それ自身は公知の方法(例えば、吹きつけ、浸漬、等)で行うことができる。
【0110】
本発明の特定の局面に従えば、リン酸、ポリリン酸、及びポリリン酸の加水分解生成物の合計の、ラジカル重合により処理可能なモノマー、例えばホスホン酸を含むモノマーの質量に対する質量割合(ratio of the weight)は、好ましくは1:2以上、特に1:1以上、特に好ましくは2:1以上である。
【0111】
好ましくは、リン酸、ポリリン酸、及びポリリン酸の加水分解生成物の合計の、ラジカル重合により処理可能なモノマーの質量に対する質量割合は、1000:1〜3:1の範囲、特に100:1〜5:1の範囲、及び特に好ましくは50:1〜10:1の範囲である。
【0112】
この割合は、通常の方法で容易に決定することができ、該割合で、リン酸、ポリリン酸、及びポリリン酸の加水分解生成物が何重にも、膜から洗い落とされることができる。これにより、ポリリン酸及びその加水分解生成物は、リン酸への加水分解が完了した後に得ることができる。通常、このことは、ラジカル重合によって処理できるモノマーにも適用される。
【0113】
スルホン酸基を含むモノマーは、当業者(professional circle)にとって公知である。これらは、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合、及び少なくとも1個のスルホン酸基を有する化合物である。好ましくは、炭素−炭素二重結合を形成している2個の炭素原子は、少なくとも2個、好ましくは3個の(基への)結合を有ており、これにより、二重結合の立体障害が最小限にされる。これらの基は、特に、水素原子及びハロゲン原子、特にフッ素原子を含む。本発明の範囲内で、スルホン酸を含むポリマーは、スルホン酸基を含むモノマーを単独で重合することにより、又は他のモノマー及び/又は架橋剤と一緒に重合することにより得られる重合生成物から得られる。
【0114】
スルホン酸基を含むモノマーは、1個、2個、3個又はそれ以上の炭素−炭素二重結合を含んでも良い。更に、スルホン酸基を含むモノマーは、1個、2個、3個又はそれ以上のホスホン酸基を含んでも良い。
【0115】
通常、スルホン酸基を含むモノマーは、2〜20個、好ましくは2〜10個の炭素原子を含む。
【0116】
スルホン酸基を含むモノマーは、好ましくは、式
【0117】
【化16】

【0118】
(但し、
Rが、結合、2つの共有結合を有するC1−C15アルキレン基、2つの共有結合を有するC1−C15アルキレンオキシ基、例えば、エチレンオキシ基、又は2つの共有結合を有するC5−C20アリール、又はヘテロアリール基であり、上述した基はそれ自体、ハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZで置換されても良いものであり、
Zが、互いに独立して、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、エチレンオキシ基、又はC5−C20アリール又はヘテロアリール基であり、上述した基はそれ自体、ハロゲン、−OH、−CNで置換されても良いものであり、及び
xが、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の整数であり、
yが、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の整数である、)
及び/又は式
【0119】
【化17】

【0120】
(但し、
Rが、結合、2つの共有結合を有するC1−C15アルキレン基、2つの共有結合を有するC1−C15アルキレンオキシ基、例えば、エチレンオキシ基、又は2つの共有結合を有するC5−C20アリール、又はヘテロアリール基であり、上述した基はそれ自体、ハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZで置換されても良いものであり、
Zが、互いに独立して、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、エチレンオキシ基、又はC5−C20アリール又はヘテロアリール基であり、上述した基はそれ自体、ハロゲン、−OH、−CNで置換されても良いものであり、及び
xが、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の整数である、)
及び/又は式
【0121】
【化18】

【0122】
(但し、
Aが、式COOR、CN、CONR、OR及び/又はRの基であり、そしてRは、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、エチレンオキシ基、又はC5−C20アリール、又はヘテロアリール基であり、上述した基はそれ自体、ハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZで置換されても良いものであり、
Rが、結合、2つの共有結合を有するC1−C15アルキレン基、2つの共有結合を有するC1−C15アルキレンオキシ基、例えば、エチレンオキシ基、又は2つの共有結合を有するC5−C20アリール、又はヘテロアリール基であり、上述した基はそれ自体、ハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZで置換されても良いものであり、
Zが、互いに独立して、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、エチレンオキシ基、又はC5−C20アリール又はヘテロアリール基であり、上述した基はそれ自体、ハロゲン、−OH、−CNで置換されても良いものであり、及び
xが、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の整数である、)
の化合物である。
【0123】
スルホン酸基を含む、好ましいモノマーは、特に、スルホン酸基を含むアルケン、例えば、エテンスルホン酸、プロペンスルホン酸、ブテンスルホン酸;スルホン酸基を含むアクリル酸化合物、及び/又はメタクリル酸化合物、例えば、2−スルホノメチルアクリル酸、2−スルホノメチルメタクリル酸、2−スルホノメチルアクリルアミド、及び2−スルホノメチルメタクリルアミドを含む。
【0124】
市販されているビニルスルホン酸(エテンスルホン酸)(これは、例えば、Aldrich社又はClariant GmbHから市販されている)が、使用するのに特に好ましい。好ましいビニルスルホン酸は、純度が70%を超え、特に90%を超え、及び特に好ましくは97%を超える。
【0125】
スルホン酸基を含むモノマーは、更に、誘導体の状態で使用することもできる。該誘導体は、次に酸に変換され、酸への変換は重合された状態で行うことができる。これらの誘導体は、特に、スルホン酸基を含むモノマーの、塩、エステル、アミド、及びハロゲン化物を含む。
【0126】
更に、加水分解の後、スルホン酸基を含むモノマーを、膜の上又は中に導入することも可能である。これは、(従来技術から公知の)それ自身は公知の方法(例えば、吹きつけ、浸漬、等)で行うことができる。
【0127】
本発明の他の実施の形態に従えば、架橋可能なモノマーを使用することができる。これらのモノマーは、加水分解流体に加えることができる。更に、架橋可能なモノマーを、加水分解の後に得られる膜に施す(付ける)ことができる。
【0128】
架橋可能なモノマーは、特に、少なくとも2個の炭素−炭素二重結合を有する化合物である。ジエン、トリエン、テトラエン、ジメチルアクリレート、トリメチルアクリレート、テトラメチルアクリレート、ジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレートが好ましい。
【0129】
特に好ましいものは、式、
【0130】
【化19】

のジエン、トリエン、テトラエン、式、
【0131】
【化20】

のジメチルアクリレート、トリメチルアクリレート、テトラメチルアクリレート、式、
【0132】
【化21】

のジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレート、
(但し、
Rが、C1−C15アルキル基、C5−C20アリール又はヘテロアリール基、NR’、−SO、PR’、Si(R’)であり、ここで、上述した基は、それ自体置換されても良く、
R’が、互いに独立して、水素、C1−C15アルキル基、C1−C15アルコキシ基、C5−C20アリール又はヘテロアリール基であり、
nが少なくとも2である)
である。
【0133】
上述した基Rは、好ましくはハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシ、カルボキシル、カルボキシルエステル、ニトリル、アミン、シリル、シロキサン基である。
【0134】
特に好ましい架橋剤は、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート及びポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ジウレタンジメタクリレート、トリメチルプロパントリメタクリレート、エポキシアクリレート、例えばエバクリル、N’,N−メチレンビスアクリルアミド、カルビノール、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ジビニルベンゼン及び/又はビスフェノールAジメチルアクリレートである。これらの化合物は、例えば、Sartomer Company Exton,Pennsylvanisから、CN−120、CN104及びCN−980という名称で市販されている。
【0135】
架橋剤の使用は、任意のものであり、これらの化合物は、代表例では、膜の質量に対して、0.05〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%、特に好ましくは1〜10質量%の範囲で使用可能である。
【0136】
架橋モノマーを、加水分解の後、膜の上又は中に導入することも可能である。これは、(従来技術から公知の)それ自身は公知の方法(例えば、吹きつけ、浸漬、等)で行うことができる。
【0137】
本発明の特定の局面に従えば、ホスホン酸及び/又はスルホン酸、又は架橋モノマーを含むモノマーが重合され、重合はラジカル重合が好ましい。基(radical)の形成は、熱的、光化学的、化学的、及び/又は電気化学的に行うことができる。
【0138】
例えば、少なくとも1種の基(ラジカル)を形成可能な物質を含む開始溶液(starter solution)を、加水分解溶液中に加えることができる。更に、加水分解の後、開始溶液を膜に施すことも可能である。このことは、(従来技術から公知の)それ自身は公知の方法(例えば、吹きつけ、浸漬、等)で行うことができる。
【0139】
適切な基形成剤(ラジカルフォーマー)は、特に、アゾ化合物、ペルオキシ化合物、過硫酸塩化合物、又はアゾアミジンである。例(該例に限定されるものではない)は、ジベンゾイルペルオキシド、ジクメンペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジポターシウムペルサルフェート、アンモニウムペルオキシスルフェート、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス(イソブチリックアシッドアミジン)ヒドロクロリド、ベンゾピナコール、ジベンジル誘導体、メチルエチルケトンペルオキシド、1,1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、メチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、ジデカノイルペルオイキシド、tert−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート、ケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、tert−ブチルペルオキシアセテート、ジクメンペルオキシド、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロヘルオキシド、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、及びDuPontから、(登録商標)Vazo、例えば(登録商標)Vazo V50及び(登録商標)Vazo WSの名称で市販されている基形成剤である。
【0140】
更に、放射に曝された時に遊離基(free radical)を形成する基形成剤を使用しても良い。好ましい化合物は、特に、ジエトキシアセトフェノン(DEAP、Upjon Corp)、n−ブチルベンゾインエーテル((登録商標Trigonal−14,AKZO))及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン((登録商標)Igacure651))及び1−ベンゾイルシクロヘキサノール((登録商標)Igacure184)、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド((登録商標)Igacure819)及び1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−フェニルプロパン−1−one((登録商標)Igacure2959)を含み、これらは、それぞれ、Ciba Geigy Corp.社から市販されている。
【0141】
代表例では、(ラジカル重合によって処理可能なモノマー;ホスホン酸基及び/又はスルホン酸基を含むモノマーもしくは架橋モノマーの質量に対して)0.0001〜5質量%、特に0.01〜3質量%の基形成剤が加えられる。基形成剤の量は、所望の重合の程度に従い、変動することができる。
【0142】
重合は、IR又はNIR(IR=赤外線、すなわち波長が700nmを超える光;NIR=近赤外線、すなわち波長が約700〜2000nmの範囲で、エネルギーが約0.6〜1.75eVの範囲の光)の作用によっても行うことができる。
【0143】
重合は、波長が400nm未満のUV光の作用によってでも行うことができる。この重合方法は、それ自身公知であり、そして例えばHans Joerg Elias,Makromolekulare Chemie,5th edition,volume1,pp.492−511;D.R.Arnold,N.C.Baird,J.R.Bolton,J.C.D.Brand,P.W.M Jacobs,P.de Mayo,W.R.Ware,Photochemistry−An Introduction,Academic Press,New York and M.K.Mishra,Radical Photopolymerization of Vinyl Monomers,J.Macromol.Sci.−Revs.Macromol.Chem.Phys.C22(1982−1983)409に記載されている。
【0144】
重合は、β線、γ線、及び/又は電子線に曝すことによって行っても良い。本発明の特定の実施の形態に従えば、膜は、1〜300kGy、好ましくは2〜200kGy、及び極めて好ましくは20〜100kGyの範囲の放射線量で照射される。
【0145】
ホスホン酸及び/又はスルホン酸基を含むモノマーないし架橋モノマーの重合は、それぞれ、室温(20℃)を超え及び200℃未満の温度、特に40℃〜150℃の温度、特に好ましくは50℃〜120℃の温度で行われることが好ましい。重合は、標準圧で行われることが好ましいが、しかし圧力の作用下に行なうことも可能である。重合は、平坦な構造の固化をもたらし、該固化は、微小硬さを測定することによって観察することができる。好ましくは、重合に起因する硬さの上昇は、モノマーの重合を行うことなく加水分解された、対応する膜の硬さに対して、少なくとも20%である。
【0146】
本発明の特定の局面に従えば、リン酸、ポリリン酸及びポリリン酸の加水分解生成物のモル合計の、(ホスホン酸基を含むモノマー及び/又はスルホン酸基を含むモノマーの重合によって得られる)ポリマー中のホスホン酸基及び/又はスルホン酸基のモル数に対するモル割合(モル比)は、好ましくは1:2以上、特に1:1以上、及び特に好ましくは2:1以上である。
【0147】
好ましくは、リン酸、ポリリン酸及びポリリン酸の加水分解生成物のモル合計の、(ホスホン酸基を含むモノマー及び/又はスルホン酸基を含むモノマーの重合によって得られる)ポリマー中のホスホン酸基及び/又はスルホン酸基のモル数に対するモル割合(モル比)は、1000:1〜3:1の範囲、特に100:1〜5:1の範囲、特に好ましくは50:1〜10:1の範囲である。
【0148】
モル割合は、通常の方法で測定することができる。この目的のために、特に分光法、例えばNMRスペクトロスコピーを使用することができる。このことについて、ホスホン酸基は、みかけの酸化段階(formal oxidation stage)が3、及びリン酸、ポリリン酸又はこれらの加水分解物中のリンは、それぞれ酸化段階が5であると考えられる。
【0149】
重合の所望の程度に依存して、重合の後に得られる平坦な構造は、自立性の膜である。好ましくは、重合の程度は、少なくとも2個の繰り返し単位数、特に少なくとも5個、特に好ましくは少なくとも30個、特に少なくとも50個、極めて好ましくは少なくとも100個の繰り返し単位数である。この重合の程度は、GPC法によって測定可能な、数平均分子量Mによって測定(決定)される。膜に含まれるホスホン酸基を含むポリマーを分離する問題のために、この値は、(ポリマーを加えることなく、ホスホン酸基を含むモノマーを重合することによって得られた)サンプルを使用して測定される。ここで、ホスホン酸基を含むモノマー、及びラジカルスターターの質量割合は、(膜の製造の割合と比較して、)一定に維持される。比較の重合で達成される変換は、使用されるホスホン酸を含むモノマーに対して、好ましくは20%以上、特に40%以上、及び特に好ましくは75%以上である。
【0150】
加水分解流体は、水を含み、水の濃度は、通常、特に重要ではない。本発明の特定の局面に従えば、加水分解流体は、5〜80質量%、好ましくは8〜70質量%、及び特に好ましくは10〜50質量%の水を含む。みかけ上(formally)オキソ酸中に含まれる水の量は、加水分解流体の水の含有量には考慮されない。
【0151】
上述した酸では、リン酸及び/又は硫酸が特に好ましく、そしてこれらの酸は、特に、5〜70質量%、好ましくは10〜60質量%、及び特に好ましくは15〜50質量%の水を含む。
【0152】
工程D)のポリリン酸の部分的加水分解は、ソル−ゲル遷移によって、膜の固化をもたらす。このことは、層厚さを15〜3000μm、好ましくは20〜2000μm、特に20〜1500μmに低減することにも繋がる(膜は、自立性である)。工程B)に従いポリリン酸中に存在する、分子間、及び分子間構造(相互貫入ネットワークIPN)は、形成される膜の特定の特性によって、工程C)で秩序膜(ordered membrane)の形成をもたらす。
【0153】
工程D)に従う処理のための温度の上限は、典型的には、150℃である。例えば過熱蒸気の水分の、極めて短い作用下で、これらの蒸気は、150℃よりも高くなることができる。処理の期間は、実質的に、温度の上限のためのものである。
【0154】
部分的な加水分解(工程D)は、気候室内で行うこともでき、そして加水分解を、規定された水分の作用下に、特定の状態に制御することができる。このことについて、水分(湿分)を、温度、又はこれに接する周囲領域、例えばガス、例えば空気、窒素、二酸化炭素又は他の適切なガス又は蒸気の飽和状態により、特定の状態に設定することができる。処理の期間は、前述のように選ばれたパラメーターに依存する。
【0155】
更に、処理の期間は、膜の厚さに依存する。
【0156】
典型的には、処理の期間は、例えば過熱蒸気を作用させて、数秒〜数分であり、又は例えば室温で開放された空気内で、及び比較的低い湿度で、数日間までである。好ましくは、処理の期間は、10秒〜300時間、特に1分〜200時間である。
【0157】
室温(20℃)で、及び相対湿度が40〜80%の環境の空気で、部分的な加水分解が所望される場合、処理の期間は、1〜200時間である。
【0158】
工程D)に従い得られる膜は、膜が自立性であるように、すなわち、膜を支持体から、何ら損傷を与えることなく取外すことができるように形成することができ、そして場合によっては、更に直接的に加工される。
【0159】
リン酸の濃度、及び従ってポリマー膜の伝導性は、加水分解の程度(すなわち、期間、温度、及び環境湿度)によって設定可能である。リン酸の濃度は、ポリマーの繰り返し単位1モル当たりの酸のモルとして与えられる。リン酸の濃度が特に高い膜を、工程A)〜D)を含む方法によって得ることができる。10〜50の濃度(式(I)、例えばポリベンズイミダゾールの1個の繰り返し単位に対するリン酸のモル)、特に、12〜40の濃度が好ましい。市販されているオルトリン酸を使用して、ポリアゾールをドーピングすることによっては、このようなドーピングの高い程度(濃度)を得ることは、極めて困難であるか、又は不可能である。
【0160】
本発明に従う方法の一変形例では、ドープされたポリアゾールフィルムの製造(調製)は、以下の工程、
1)1種以上の芳香族テトラアミノ化合物を、1種以上の芳香族カルボン酸、又はそのエステル(これらは、カルボン酸モノマー当たり、少なくとも2個の酸性基を含む)、又は1種以上の芳香族、及び/又は複素環式ジアミノカルボン酸と溶融物中で、350℃以下までの温度、好ましくは300℃以下までの温度で反応させる工程、
2)工程1)で得られたプレポリマーを、ポリリン酸に溶解させる工程、
3)工程2)で得られる溶液を、不活性ガスの存在下に、300℃以下までの温度、好ましくは280℃以下までの温度に加熱し、溶解したポリアゾールポリマーを形成する工程、
4)工程3)に従うポリアゾールポリマーの溶液を使用して、膜を支持体上に形成する工程、及び
5)工程4)で形成された膜を、該膜が自立性になるまで処理する工程、
を含む方法を使用して行うこともできる。
【0161】
番号1)〜5)の下に記載された工程は、工程A)〜D)について前述したもので、特に、好ましい実施の形態を考慮して参照される。
【0162】
膜、特に、ポリアゾールに基づく膜は、更に、大気中の酸素の存在下に熱の作用で表面で架橋される。膜表面のこの硬化は、更に膜の特性を改良する。この目的のために、膜を、少なくとも150℃、好ましくは少なくとも200℃、及び特に好ましくは少なくとも250℃の温度にまで加熱することができる。この方法の工程で、酸素濃度は、通常、5〜50体積%、好ましくは10〜40体積%であるが、これに限られるものではない。
【0163】
架橋は、IR又はNIR(IR=赤外線、すなわち波長が700nmを超える光;NIR=近赤外線、すなわち波長が約700〜2000nmの範囲で、エネルギーが約0.6〜1.75eVの範囲の光)の作用によっても行うことができる。他の方法は、β線照射である。これについて、照射量は5〜200kGyである。
【0164】
架橋の所望の程度に依存して、架橋反応の期間は、広い範囲に及ぶ。通常、反応時間は、1秒〜10時間の範囲、好ましくは1分〜1時間の範囲であるが、これに限られるものではない。
【0165】
特に好ましいポリマー膜は、高い性能を示す。この理由は、特にプロトン伝導性が改良されることにある。これは、120℃で、少なくとも1mS/cm、好ましくは少なくとも2mS/cm、特に少なくとも5mS/cmである。ここで、これらの値は、湿潤化(moistening)なしで達成される。
【0166】
比伝導率は、定電位モードの4−極配列内で、インピーダンス分光法を使用して、及び白金電極(ワイヤー、直径0.25mm)を使用して測定される。集電電極(current-collecting electrode)間のギャップは、2cmである。得られたスペクトルは、オーム抵抗とキャパシターの平行配列から構成される単純なモデルを使用して評価される。リン酸でドープされた膜のサンプルの断面は、サンプルを取り付ける前に、直ぐに測定される。温度の依存性を測定するために、測定セルが、炉内で所望の温度にされ、そしてサンプルの直近に配置されたPt−100熱電対を使用して調節される。温度が到達すると、測定を開始する前に、サンプルはこの温度で10分間維持される。
【0167】
ガス拡散層
本発明に従う膜電極アセンブリーは、ポリマー電解質膜で分離された、2層のガス拡散層を有している。通常、平坦な、導電性及び酸−抵抗性の構造がこのために使用される。これらは、例えば、グラファイト−ファイバーペーパー、カーボン−ファイバーペーパー、グラファイトファブリック及び/又はカーボンブラックを加えることによって伝導性が付与されたペーパーを含む。これらの層によって、ガス及び/又は液体の微細な分散が達成される。適切な材料は、通常、当業者にとって公知である。
【0168】
通常、この層の厚さは、80μm〜2000μmの範囲、特に100μm〜1000μmの範囲、及び特に好ましくは150μm〜500μmの範囲である。
【0169】
特定の実施の形態に従えば、少なくとも1種のガス拡散層は、圧縮性の材料を含むことができる。本発明の範囲内で、圧縮性の材料は、ガス拡散層が圧力によって、(その品位を損なうことなく)オリジナルの厚さの半分、特に3分の1の厚さにまで圧縮可能であるという特性によって特徴付けられる。
【0170】
この特性は、通常、カーボンブラックを加えることによって伝導性が付与された、グラファイトファブリック及び/又はグラファイトペーパーによって作られたガス拡散層によって与えられる。ガス拡散層は、通常、更なる物質を加えることによって、その疎水性及び物質移動特性が最適化される。このことについて、ガス拡散層は、フッ素化又は部分的にフッ素化された材料、例えばPTFEを備えている。
【0171】
触媒層
触媒層(複数層の場合を含む)は、触媒的に活性な物質を含む。これらは、特に、白金族の貴金属、すなわち、Pt、Pd、Ir、Rh、Os、Ru、又は貴金属Au及びAgを含む。更に、上述した金属の合金も使用して良い。追加的に、少なくとも1種の触媒層が、白金族の元素と非−貴金属、例えばFe、Co、Ni、Cr、Mn、Zr、Ti、Ga、V等の合金を含むことも可能である。更に、上述した貴金属、及び/又は非−貴金属の酸化物も使用することができる。
【0172】
上述した物質を含む触媒的に活性な粒子は、金属粉、いわゆるブラック貴金属、特に白金、及び/又は白金合金として使用されて良い。このような粒子は、通常、粒径(サイズ)が、5nm〜200nmの範囲、好ましくは7nm〜100nmの範囲である。いわゆるナノ粒子も使用できる。
【0173】
更に、金属は、支持体材料上で使用することも可能である。好ましくは、この支持体は、特にカーボンブラック、グラファイト又は黒鉛化カーボンブラックの状態で使用しても良いカーボンを含む。更に、導電性の金属酸化物、例えばSnO、TiO、又はFePO、NbPO、Zr(POを支持体材料として使用することもできる。ここで、記号x、y及びzは、個々の化合物の酸素又は金属の含有量を示し、該含有量は、(遷移金属は、異なる酸化段階を取ることができるので、)公知の範囲に存在可能である。
【0174】
支持体上のこれらの金属粒子の含有量は、金属と支持体の結合に対して、通常、1〜80質量%、好ましくは5〜60質量%、及び特に好ましくは10〜50質量%であるが、しかしこれらの範囲に限られるものではない。支持体の粒子径、特に、カーボン粒子の粒径は、好ましくは20〜1000nmの範囲、特に30〜100nmの範囲である。その上に存在する金属粒子の粒径は、好ましくは1〜20nmの範囲、特に1〜10nmの範囲、及び特に好ましくは2〜6nmの範囲である。
【0175】
種々の(異なる)粒子の粒径(サイズ)は、平均値を表し、そして透過電子顕微鏡法又はX線粉末回折法によって測定することができる。
【0176】
上述した触媒的に活性な粒子は、通常、市販されている。市販されている触媒又は触媒粒子に加え、白金を含む合金で作られた触媒ナノ粒子、特にPt、Co及びCu又はPt、Ni及びCuに基づく触媒ナノ粒子(ここで、粒子は、外側殻に、核中よりも高い濃度のPtを有している)も使用することができる。このような粒子は、P.Strasser et al.in Angewandte Chemie2007に記載されている。
【0177】
更に、触媒的に活性な層は、通常の添加剤を含んでも良い。これらは、特に、フルオロポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、プロトン伝導性アイオノマー及び界面活性剤を含む。
【0178】
本発明の特定の実施の形態に従えば、フルオロポリマーの、(少なくとも1種の貴金属、及び任意に1種以上の支持体材料を含む)触媒材料に対する割合(比率)は、0.1を超え、この割合は、0.2〜0.6の範囲である。
【0179】
本発明の特定の実施の形態従えば、触媒層は厚さが、1〜1000μm、特に5〜500μm、好ましくは10〜300μmの範囲である。この値は、走査電子顕微鏡(SEM)を使用して得られる写真から測定した層の厚さの測定値を平均することによって得ることができる。
【0180】
本発明の特定の実施の形態に従えば、触媒層の貴金属の含有量は、0.1〜10.0mg/cm、好ましくは0.3〜6.0mg/cm、及び特に好ましくは0.3〜3.0mg/cmである。この値は、平坦なサンプルの要素分析によって得ることができる。
【0181】
触媒層は、通常、自立性ではなく、通常は、ガス拡散層及び/又は膜に施される。ここで、触媒層の一部を、例えば、ガス拡散層及び/又は膜に拡散させ、この結果、遷移層(transition layer)を形成することもできる。このことについて、触媒層が、ガス拡散層の一部であると理解することもできる。触媒層の厚さは、その上に触媒層が施される層、例えばガス拡散層、又は膜の厚さの測定(該測定により、触媒層と対応する層の合計、例えばガス拡散層と触媒層の合計が得られる)から得られる。触媒層は、好ましくは、勾配を有しており、すなわち、貴金属の含有量が、膜の方向に増加し、そして疎水性材料の含有量がこれに反する挙動を示す。
【0182】
膜電極アセンブリの更なる情報のために、技術文献、特に特許文献WO01/18894A2、DE19509748、DE19509749、WO00/26982、WO92/15121及びDE19757492が参照される。膜電極アッセンブリー及び電極の構造と製造、選択されるガス拡散層及び触媒について、上述した文献に含まれる開示内容は、本記載の一部である。
【0183】
ガスケット
より良好な取り扱い性を得、そしてガス拡散層/電極及びプロトン伝導性ポリマー電解質膜又はマトリックスの間の漏れを回避するために、ガスケットを使用することができる。これらのガスケットは、フルオロポリマーのクラスに属する溶融性ポリマー、例えば、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)FEP、ポリビニリデンフルオリドPVDF、ペルフルオロアルコキシポリマーPFA、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ペルフルオロ(メチルビニルエーテル))MFAから形成されることが好ましい。これらのポリマーは、多くの場合、例えばHostafon(登録商標)、Hyflon(登録商標)、Teflon(登録商標)、Dyneon(登録商標)、Nowoflon(登録商標)の商品名で市販されている。
【0184】
更に、ガスケット材料は、ポリフェニレン、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルフィドエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリイミン、ポリエーテルイミン、ポリアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリベンズオキサジアゾール、ポリベンゾトリアゾール、ポリホスファゼン、ポリエーテルケトン、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリフェニレンアミド、ポリフェニレンオキシド及びこれらのポリマーの混合物で作成することも可能である。
【0185】
上述した材料とは別に、ポリアミドに基づくガスケット材料も使用することができる。ポリイミドに基づくポリマーのクラスは、イミド基の他に、アミド(ポリアミドイミド)、エステル(ポリエステルイミド)及びエーテル基(ポリエーテルイミド)をもバックボーンの成分として含むポリマーも含む。
【0186】
好ましいポリイミドは、式(VI),
【0187】
【化22】

【0188】
(但し、基Arが、上述した意味を有し、及び基Rが、アルキル基又は炭素数が1〜40個の、2つの共有結合を有する芳香族又は複素環式芳香族基を表す)
の繰り返し単位を有する。好ましくは、基Rは、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルケトン、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ビスフェノン、ジフェニルスルホン、キノリン、ピリジン、ビピリジン、アントラセン、チアジアゾール、及びフェナントレンから誘導され、任意に置換も可能な、2つの共有結合を有する芳香族又は複素環式芳香族基を表す。インデックスnは、ポリマーの繰り返し単位部分を示す。
【0189】
このようなポリマーはDuPontからの(登録商標)Kapton、(登録商標)Vespel、(登録商標)Toray及び(登録商標)Pyralin、及びGE Plasticsからの(登録商標)Ultem、及びUbe Industriesからの(登録商標)Upilexの名称で市販されている。
【0190】
ガスケットの厚さは、好ましくは5〜1000μmの範囲、特に10μm〜500μmの範囲、及び特に好ましくは25μm〜100μmの範囲である。
【0191】
ガスケットは、複数の層で構成することも可能である。この実施の形態では、適切なポリマー(特にフルオロポリマーが適切な連結を形成するのに適切である)を使用して、異なる層が互いに結合される。適切なフルオロポリマーは、当業者にとって公知である。これらは、特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)(FEP)を含む。上述したガスケット層上に存在するフルオロポリマーで作成された層は、通常、厚さが少なくとも0.5μm、特に少なくとも2.5μmである。この層は、ポリマー電解質膜とポリイミド層の間に設けることができる。更に、この層は、ポリマー電解質膜から離れた(そむいた)側に施すこともできる。追加的に、ポリイミド層の両表面にフルオロポリマーで作成された層を設けることもできる。これにより、MEAの長期間にわたる安定性を改良することができる。
【0192】
本発明に従い使用することができるフルオロポリマーが設けられたポリイミドは、DuPontからの(登録商標)Kapton FNの商品名で市販されている。
【0193】
上述したガスケット及びガスケット材料は、(少なくとも1つのガスケットフレームが、導電性セパレーター(分離器)又はバイポーラー板と接触するように)ガス拡散層とバオポーラー板の間に挿入されても良い。
【0194】
バイポーラー板
バイポーラー板又は分離板は、典型的には、ガス拡散層に向いた側に、反応流体の分配のために、流域チャンネル(flow field channel)が設けられている。分離器又はバイポーラー板は、通常、グラファイト又は伝導性の、熱的に安定なプラスチックで作られている。更に、炭素複合体、伝導性セラミック材料が、通常、使用される。このリスト(列挙)は、例示にすぎず、そして限定するものではない。
【0195】
バイポーラー板の厚さは、好ましくは、0.2〜10mmの範囲、特に0.2〜5mmの範囲、及び特に好ましくは、0.2〜3mmの範囲である。バイポーラー板の比抵抗は、典型的には、1000μmOhmmである。
【0196】
本発明に従う膜電極アセンブリーの製造は、この技術分野の当業者にとって明確である。通常、膜電極アセンブリーの異なる成分が担持され、そして圧力と温度によって互いに結合される。通常、積層(lamination)が、10〜300℃の範囲の温度、特に20℃〜200℃の範囲の温度で、及び1〜1000バールの範囲の圧力、特に3〜300バールの圧力の範囲で行われる。ここで、内部領域で、膜に損傷を与えることを防止するために注意がなされる。このために、例えばシム、すなわちスペーサーを使用することができる。
【0197】
本発明の特定の局面に従えば、MEAの製造は、(このことに関連して)連続的に行なわれることが好ましい。
【0198】
冷却の後、仕上られた膜電極アセンブリー(MEA)は、操作可能であり、そして−バイポーラー板を備えて−燃料電池内で使用することができる。
【0199】
燃料電池を運転するために、(バイポーラー板内に存在するガス管を通して)ガス状の燃料が供給される。
【0200】
水素含有ガスがアノード側に供給される。水素含有ガスは、純粋な水素又は水素を含むガス、特にいわゆる改質油、すなわち上流側の変性(改質)工程で炭化水素から製造されたガスであることが可能である。水素含有ガスは、代表例では、少なくとも20体積%の水素を含む。
【0201】
アノード側への水素含有ガスの供給は、流速(flow rate)が、最大でも2倍の、理想的には、常圧(pressure-less)で、化学量論的に過剰量の範囲内で行われる。しかしながら、水素含有ガスを、4バールの正圧まで供給することができる。
【0202】
グロッタスメカニズムに基づいてプロトンを伝える、プロトン伝導性ポリマー電解質膜又はポリマー電解質マトリックスが使用される場合、燃料電池は100℃を超える温度で(及び、特にバーナーガスを加湿することなく)操作(運転)しても良い。
【0203】
より高い温度、特に120℃を超える温度では、純粋な、すなわち、他の如何なる合金成分も使用することのない(一酸化炭素に対して高い耐性を有する)白金触媒の使用が可能になる。このようにして、改質油を使用した操作が可能になる。160℃の温度では、例えば1体積%以上のCOを(燃料電池の性能を大きく損なうことなく)燃料内に含むことができる。
【0204】
プロトン伝導性ポリマー電解質膜又はポリマー電解質マトリックスが、グロッタスメカニズムに基づいてプロトンを伝える場合、そして特に、(特に好ましくはポリアゾールを含む酸又は酸性化合物に基づく)アルカリ性ポリマーを使用する場合、水素含有ガスは、5体積%までのCOを含むことができる。
【0205】
少なくとも酸素又は窒素を含むガス混合物がカソード側に送られる。このガス混合物は、酸化剤(オキシダント)として作用する。非自然的に発生する、すなわち合成的な、酸素と窒素のガス混合物に加え、ガス混合物として空気が好ましい。
【0206】
少なくとも酸素と窒素を含むガス混合物の、カソード側への供給は、理想的には、常圧で、化学量論的過剰が最大で5倍の範囲内の流速で行われる。しかしながら、少なくとも酸素と窒素を含むガス混合物の供給を、4バールの正圧までで行うことも可能である。
【0207】
本発明に従う燃料電池の制御されたスイッチオフは、カソード側で、ガスの供給を中断することによって行われる。カソード側へのガス供給は、環境(周囲)に対して閉じていること(閉鎖していること)が好ましい。カソード側へのガス供給が中止された場合、水素含有ガスは、まだアノード側に供給されており、そして少量の流れが短時間で取り出され、酸素濃度が、5体積%の濃度に低減されるまで、及び好ましくは3体積%未満、及び特に1体積%未満になるまでカソード側に存在する酸素が消費される。
【0208】
燃料電池のカソード側の酸素濃度が、5体積%未満、及び好ましくは3体積%未満、特に1体積%未満まで低減された場合、燃料電池をスイッチオフすることができ、そしてアノード側の水素含有ガスを中断することができる。アノード側のガス供給は、環境に対してアノード側をパージするためにも使用されて良い。
【0209】
次に燃料電池は、室温にまで及びそれ未満に、問題なく冷却することができる。燃料電池を再度スタートさせた後、燃料電池は、性能の不可逆的な損失が無いか、又はごく僅かにしかない。従って、燃料電池の耐用年数は、大きく延長される。
【0210】
本発明に従う方法を使用して操作される燃料電池は、(特に非−連続的な操作で)極めて長い期間にわたって安定である。
【0211】
実施例1:
この実施例は、参照用である。
【0212】
50cmの燃料電池を、T=180℃及びp=1barで操作した。組成が70%H、2%CO及び28%COの合成改質油をアノードガスとして使用した。カソードガスとして空気を使用した。燃料電池は、膜電極アセンブリ及び流域板(flow field plate)で構成されていた。膜電極アセンブリーは、ポリベンズイミダゾール及びリン酸から作られた膜、及び(膜の相反する側に積層された)2個のPt触媒−含有電極の組合せで構成されていた。両方の電極は、ガス拡散層も含んでいた。膜電極アセンブリーを、2枚の流域板の間の燃料電池内で操作した。流域板内のガス拡散は、ミルされた流路(milled duct)を通って行なわれた。
【0213】
燃料電池を、以下のサイクルで操作した:
・0.2W/cmで、180℃で、6時間
・電池操作が中止される(すなわち電流が0Aに設定されることを意味する)
・ガス供給が中止される(すなわち、アノードとカソードの流が零に設定される)
・電池を約60℃まで冷却
・電池の再加熱:120℃からガス供給を開始させる
・電池の再加熱:160℃から負荷を0.2W/cmに設定
・6時間、180℃、及び0.2W/cmで電池(cell)を操作
【0214】
実施例2:
この実施例は、本発明に従う燃料電池の操作を記載している。
【0215】
50cmの燃料電池を、T=180℃及びp=1barで操作した。組成が70%H、2%CO及び28%COの合成改質油をアノードガスとして使用した。カソードガスとして空気を使用した。燃料電池は、膜電極アセンブリ及び流域板(flow field plate)で構成されていた。バルブ1をカソードのガス入口の前に固定した。バルブ2をカソードのガス出口の後ろ側に固定した。両方のバルブは、必要に応じて開くことができ、及び閉めることができた。
【0216】
膜電極アセンブリーは、ポリベンズイミダゾール及びリン酸から作られた膜、及び(膜の相反する側に積層された)2個のPt触媒−含有電極の組合せで構成されていた。両方の電極は、ガス拡散層も含んでいた。膜電極アセンブリーを、2枚の流域板の間の燃料電池内で操作した。流域板内のガス拡散は、ミルされた流路(milled duct)を通って行なわれた。閉めたバルブ1と閉めたバルブ2の間のガス体積は、12.1NmLであった。
【0217】
燃料電池を、以下のサイクルで操作した:
・0.2W/cmで、180℃で、6時間
・電池電流を、10mA/cmに設定し、バルブ1とバルブ2を閉めた。10mA/cmの電流を、85秒間維持した。ファラデーの法則を考慮し、存在するカソード酸素の99.4%を消費した。
・電流を0に設定し、そしてアノードガス流を中止した。
・電池を約60℃まで冷却
・電池の再加熱:120℃からアノード側のガス供給を開始させる
・空気の供給の開始時に、バルブ2とバルブ1を開く
・電池の再加熱:160℃から負荷を0.2W/cmに設定
・6時間、180℃、及び0.2W/cmで電池を操作
【0218】
図1に、0.2W/cmでの電池1と2の電池電圧の比較を、スタート/ストップサイクルの数の関数として示す。データポイントを通る直線状の回帰スロープの傾斜から、燃料の劣化速度を測定した。従って、劣化速度は、スタート/ストップサイクルごとの電圧の損失として得られる。両方の実施例の結果を表1にまとめた。本発明に従う操作を行った電池2は、スイッチオフする時に、カソード側の酸素の分圧を0.6体積%に下げることにより、劣化速度が参照電池1よりも3倍低いことが明確に理解される。
【0219】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池を操作する方法であって、該燃料電池が、
(i)プロトン伝導性ポリマー電解質膜又はポリマー電解質マトリックス、
(ii)プロトン伝導性ポリマー電解質膜又はポリマー電解質マトリックスの両側に配置された、少なくとも1種の触媒層、
(iii)触媒層の両方の相反する側に配置された、少なくとも1種の導電ガス拡散層、
(iv)ガス拡散層の両方の相反する側に配置された、少なくとも1種のバイポーラー板、
を含み、以下の工程、
a)水素含有ガスを、バイポーラー板内に存在するガス流路を使用して、ガス拡散層を通して、アノード側の触媒層に供給する工程、
b)酸素と窒素を含むガス混合物を、バイポーラー板内に存在するガス流路を使用して、ガス拡散層を通して、カソード側の触媒層に供給する工程、
c)アノード側の触媒でプロトンを発生させる工程、
d)発生したプロトンを、プロトン伝導性ポリマー電解質膜又はポリマー電解質マトリックスを通して拡散させる工程、
e)プロトンとカソード側から供給された酸素含有ガスを反応させる工程、
f)アノード側とカソード側のバイポーラー板を使用して、生じた電位をタップする工程、
を含む方法において、
燃料電池をスイッチオフするために、酸素と窒素を含むガス混合物の供給が中止され、そしてカソードに存在する酸素が、存在するプロトンとの反応により反応して消費され、及び燃料電池のカソード側の残存する酸素含有量が、5体積%の濃度、及び好ましくは3体積%未満、及び特に1体積%未満にまで低減されることを特徴とする方法。
【請求項2】
プロトン伝導性ポリマー電解質膜は、ポリマーを含む物質を含み、前記ポリマーは、少なくとも1種の共有結合した酸を含むか、又は前記ポリマーは、酸がドープされていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プロトン伝導性ポリマー電解質マトリックスが、少なくとも1種のアルカリ性ポリマー及び少なくとも1種の酸を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
プロトン伝導性ポリマー電解質マトリックス又はポリマー電解質マトリックスが、少なくとも2種の異なるポリマーのブレンドであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
燃料電池が、少なくとも1種のアルカリ性ポリマーと少なくとも1種の酸を含む、プロトン伝導性ポリマー電解質膜又はプロトン伝導性ポリマー電解質マトリックスを含み、及び100℃を超える温度で、水素含有ガスの追加的な加湿が行われることなく操作されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
燃料電池が、120℃を超える温度で操作されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
水素含有ガスが、純粋な水素又は水素を少なくとも20体積%含むガスであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
水素含有ガスが、上流の改質工程の間、炭化水素から生成された改質油であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
水素含有ガスの供給が、好ましくは常圧で、及び流速が、最大で2倍の化学量論的過剰の範囲で行われることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
水素含有ガスが、5体積%以下のCOを含むことを特徴とする請求項5又は6の何れかに記載の方法。
【請求項11】
酸素と窒素を含むガス混合物が、酸素と窒素の合成ガス混合物、又は空気であることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも酸素と窒素を含むガス混合物のカソード側への供給が、好ましくは常圧で、及び流速が、最大で5倍の化学量論的過剰の範囲で行われることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
燃料電池のスイッチオフのために、酸素と窒素を含むガス混合物の供給が中止され、及びカソード側へのガス供給が環境に対して閉鎖されることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
燃料電池のスイッチオフのために、酸素と窒素を含むガス混合物の供給が中止され、及び水素含有ガスがなおアノード側に供給されることを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
燃料電池のスイッチオフの間、燃料電池の電圧が低下するまで、電流が取り出されることを特徴とする請求項1〜14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
水素含有ガスが、残存する酸素含有量が所望の濃度に達するまで、アノード側に供給されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
その後、アノード側へのガス供給が、環境に対して閉鎖されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
カソード側に残存する窒素が、アノード側をパージするために使用されることを特徴とする請求項17に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2011−517037(P2011−517037A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503378(P2011−503378)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002585
【国際公開番号】WO2009/124737
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】