説明

燃料電池の製造方法

【課題】CNTの一端を電解質膜に、他端をGDLに夫々接続する燃料電池において、触媒層とGDLとの間の電子伝導性の低下を抑制可能な燃料電池の製造方法を提供する。
【解決手段】MEAを構成するCNT触媒層は、垂直配向CNT12と、その表面を被覆するアイオノマ16とを備える。先ず、このMEAの側面に予熱した治具18を配置し、これらの間に所定圧力を印加する。続いて、印加圧力を開放してMEAから治具18を取り外す。これにより、治具18の熱で軟化したアイオノマ16を治具18に付着させて除去できる。その後、CNT触媒層とGDLとを接合すれば、垂直配向CNT12の露出先端とGDLとを直接、点接触させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池の製造方法に関し、より詳細には、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」ともいう。)を含む触媒層を備える固体高分子形の燃料電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1には、アイオノマで表面が被覆された触媒粒子を含む触媒層と、ガス拡散層(以下、「GDL」ともいう。)と、を40℃〜120℃で接合する方法が開示されている。この方法に用いられる触媒粒子は、カーボン粒子に白金触媒を担持させたものであり、触媒層を40℃〜120℃に加温すれば、この触媒粒子の表面を被覆するアイオノマを接着剤として機能させることができる。従って、上記触媒層と上記GDLとの間を十分に接着できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−286560号公報
【特許文献2】特開2003−109629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、触媒層において、上記のようなカーボン粒子の代わりに、CNTを用いた燃料電池が知られている。更には、このCNTの一端を電解質膜に、他端をGDLに夫々接合した燃料電池も知られている。このような燃料電池を製造する際、CNTは、その表面全体をアイオノマで被覆した後にGDLと接合されるが、GDL接合前においては、CNTの両端はアイオノマで被覆されている。そのため、このようなCNTとGDLとを接合する場合、GDL表面に直接触れるのは、CNTの先端を被覆するアイオノマとなる。つまり、CNT先端のカーボン部分は、GDLと直接触れにくいことになる。従って、CNTとGDLとの間の電気的接続が不十分となり、触媒層とGDLとの間の電子伝導性が低くなる可能性があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものである。即ち、CNTの一端を電解質膜に、他端をGDLに夫々接続する燃料電池において、触媒層とGDLとの間の電子伝導性の低下を抑制可能な燃料電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、燃料電池の製造方法であって、
表面をアイオノマで被覆した複数の触媒担持カーボンナノチューブの夫々の一端を高分子電解質膜に接合した中間体を準備する中間体準備工程と、
前記中間体の準備後、前記アイオノマのうち、前記触媒担持カーボンナノチューブの夫々の他端の表面を被覆する他端被覆アイオノマを除去するアイオノマ除去工程と、
前記他端被覆アイオノマの除去後、前記夫々の他端をガス拡散層と接合するガス拡散層接合工程と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記アイオノマ除去工程は、
前記中間体の準備後、前記他端被覆アイオノマと治具とを接触させている際に、少なくとも前記他端被覆アイオノマを溶融状態とするアイオノマ溶融工程と、
前記他端被覆アイオノマと前記治具との接触を解除することで、溶融した前記他端被覆アイオノマを、前記治具に付着させるアイオノマ付着工程と、
を備える工程であることを特徴とする。
【0008】
また、第3の発明は、第2の発明において、
前記アイオノマ溶融工程は、
前記中間体の準備後、前記中間体を前記アイオノマのガラス転移温度以上分解温度未満に加熱した状態で、前記他端被覆アイオノマと前記治具とを接触させる工程であることを特徴とする。
【0009】
また、第4の発明は、第2の発明において、
前記アイオノマ溶融工程は、
前記中間体の準備後、前記治具を前記アイオノマのガラス転移温度以上分解温度未満に加熱した状態で、前記他端被覆アイオノマと前記治具とを接触させる工程であることを特徴とする。
【0010】
また、第5の発明は、第4の発明において、
前記アイオノマ溶融工程において、前記他端被覆アイオノマ以外のアイオノマを、前記アイオノマのガラス転移温度未満に保持することを特徴とする。
【0011】
また、第6の発明は、第1乃至第5の発明において、
前記触媒担持カーボンナノチューブの夫々が、前記高分子電解質膜の表面に対して垂直に配向していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、アイオノマ除去工程において、他端被覆アイオノマを除去できる。他端被覆アイオノマを除去できれば、CNTの先端を露出させることができる。従って、ガス拡散層接合工程において、先端の露出したCNTとGDLとを接合できるので、CNTとGDLとの間の電子伝導性の低下を良好に抑制した燃料電池を製造できる。
【0013】
第2の発明によれば、アイオノマ溶融工程において、少なくとも他端被覆アイオノマを溶融状態とし、アイオノマ付着工程において、溶融状態の他端被覆アイオノマを治具に付着させることができる。従って、他端被覆アイオノマを残さず綺麗に除去できる。
【0014】
第3の発明によれば、アイオノマのガラス転移温度以上分解温度未満に中間体を加熱した状態で、他端被覆アイオノマと治具とを接触させるので、中間体を構成するアイオノマの分解を防止しつつ、他端被覆アイオノマを溶融状態にできる。また、第4の発明によれば、治具をアイオノマのガラス転移温度以上分解温度未満に治具を加熱した状態で、他端被覆アイオノマと治具とを接触させるので、その分解を防止しながら他端被覆アイオノマ溶融状態にできる。
【0015】
第5の発明によれば、アイオノマ溶融工程において、他端被覆アイオノマ以外のアイオノマを、そのガラス転移温度未満に保持できる。そのため、治具接触時に、他端被覆アイオノマ以外のアイオノマが軟化してCNT表面の被覆状態が不均一となることを抑制できる。従って、燃料電池とした場合に、電解質膜側からガス拡散層側へのプロトン伝導が阻害されることを良好に抑制できる。
【0016】
第6の発明によれば、CNTの夫々が、高分子電解質膜の表面に対して垂直に配向される。このように配向されたCNTを用いれば、ガス拡散層接合工程において、先端の露出したCNTと、GDLとを確実に点接触させることができる。従って、CNTとGDLとの間の電子伝導性の低下を良好に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る燃料電池の製造方法の各工程を説明するための図である。
【図2】図1のステップ120の詳細を説明するための図である。
【図3】実施形態において、垂直配向CNTを含むCNT触媒層を用いる理由を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[燃料電池の製造方法]
以下、図1〜図3を参照して、本発明の実施の形態の燃料電池の製造方法について説明する。先ず、図1を参照して、本実施形態の燃料電池の製造方法の各工程について説明する。本実施形態の燃料電池の製造方法は、(1)CNT触媒層作製工程、(2)膜電極接合体(以下、「MEA」ともいう。)作製工程、(3)カーボン先端アイオノマ除去工程、(4)GDL接合工程、(5)セルモジュール化工程および(6)スタック化工程を備えている。
【0019】
(1)CNT触媒層作製工程
本工程は、基板上に、白金触媒、アイオノマを担持したCNTから構成されるCNT触媒層を作製する工程である(ステップ100)。本工程では、先ず、基板の表面に対して実質上垂直な方向にCNTを成長させ、次に、このCNTの表面に白金触媒、アイオノマをこの順で担持させる。ここで、基板の表面に対して実質上垂直とは、基板の表面と、CNTのチューブ長さ方向とのなす角度が90°±10°であることを意味する。これは、製造時の条件によって、必ずしも90°とならない場合を含む意味である。また、実質上垂直に成長させたCNTには、チューブ長さ方向の形状が直線状のものと、直線状でないものの両方が含まれる。そのため、チューブ長さ方向の形状が直線状でないCNTの場合には、CNTの両端面の中心部を結ぶ直線の方向をもってチューブの長さ方向とする。
【0020】
CNTを基板の表面に対して実質上垂直な方向に成長させる方法としては、例えば、シリコン等の基板上に成長触媒としての鉄微粒子を担持させて、高温雰囲気下、炭素源ガスを供給する熱CVD法(thermal Chemical Vapor Deposition)を用いることができる。この熱CVD法の詳細については、例えば特開2005−097015号公報、特開2007−257886号公報に記載されており公知である。そのため、本明細書においてはその説明を省略する。
【0021】
また、CNTに白金触媒を担持させる方法としては、例えば、白金塩を含む溶液をCNTの表面に塗布した後、水素雰囲気中で200℃以上に加熱して還元する方法を用いることができる。白金塩を含む溶液のCNTの表面への塗布は、この溶液中にCNTを浸漬する方法、CNTの表面に白金塩溶液を滴下する方法や、同表面に白金塩溶液を噴霧(スプレー)する方法を用いることができる。なお、超臨界流体を用いて白金を担持させる超臨界法を用いてもよい。
【0022】
また、CNTにアイオノマを担持させる方法としては、例えば、(i)アイオノマとしてのパーフルオロスルホン酸樹脂を分散又は溶解した溶液に、白金触媒担持後のCNTを浸漬し、減圧脱気することでこの溶液を均一に染み込ませ、(ii)その後、真空乾燥して溶媒を除去する含浸法が挙げられる。上記樹脂の溶液は、その溶液中にCNTを浸漬する代わりに、スプレー、ダイコーター、ディスペンサー、スクリーン印刷等によりCNTの表面に塗布してもよい。また、上記樹脂の前駆体と必要に応じて各種重合開始剤等の添加物とを含む重合組成物を、CNTの表面に塗布し、必要に応じて乾燥させた後に、紫外線などの放射線の照射又は加熱により重合させてアイオノマを担持させてもよい。
【0023】
(2)MEA作製工程
本工程は、上記(1)の工程により得られたCNT触媒層を、例えばパーフルオロスルホン酸樹脂から構成される電解質膜に転写し、MEAを作製する工程である(ステップ110)。本工程では、先ず、CNT触媒層のCNT成長端面と、電解質膜の表面とを対向させる。次に、例えば、CNT触媒層、電解質膜の両者を、アイオノマのガラス転移温度よりも高温に加温しつつ、これらの間に所定圧力を印加して接合する。続いて、上記ガラス転移温度よりも低温まで冷却し、印加圧力を開放する。最後に、CNTを成長させた基板を剥離する。上記(1)の工程で説明したように、CNTは、基板の表面に対して実質上垂直な方向に成長させたものである。そのため、本工程を実施することで、電解質膜の表面に対して実質上垂直に配向されたCNT(以下、「垂直配向CNT」ともいう。)を含むCNT触媒層と、電解質膜との接合体としてのMEAが得られる。なお、電解質膜の表面に対して実質上垂直とは、電解質膜の表面と、CNTのチューブ長さ方向とのなす角度が90°±10°であることを意味する。
【0024】
(3)カーボン先端アイオノマ除去工程
本工程は、上記(2)の工程後、上記CNT触媒層の温度を上記アイオノマの熱軟化点(ガラス転移点温度)よりも低温に保持した状態で、このCNT触媒層の側面に、上記熱軟化点よりも高温、かつ、分解温度よりも低温に予熱した治具を一時的に接触させる工程である(ステップ120)。
【0025】
本工程については、図2を参照しながら説明する。図2(A)は上記(2)の工程直後のMEAの断面図であり、図2(B)および(C)は本工程中のMEAの断面図である。図2(A)に示すように、電解質膜10の表面上には、白金触媒14、アイオノマ16を担持した垂直配向CNT12を含むCNT触媒層が形成されている。本工程では先ず、図2(B)に示すように、このCNT触媒層のCNT基端面に、予熱した治具18を配置し、CNT触媒層と治具18との間に所定圧力を印加する。
【0026】
この際、CNT触媒層の温度は、アイオノマ16の熱軟化点よりも低い温度に保持し、一方、治具18の予熱温度は、アイオノマ16の熱軟化点よりも高い温度かつ分解温度よりも低温とする。このような温度とすれば、治具18側からCNT触媒層に向けて熱を伝達させて、治具18に近い箇所のアイオノマ16を部分的に軟化できる。本工程では、次に、図2(C)に示すように、この段階で印加圧力を開放してCNT触媒層から治具18を取り外す。これにより、軟化したアイオノマ16を治具18に付着させて除去できる。つまり、垂直配向CNT12の先端を露出できる。
【0027】
ところで、本実施形態においては、垂直配向CNT12を含むCNT触媒層を用いる。この理由について、図3を用いて説明する。図3は、カーボン粒子を用いた触媒層に対し、本工程を実施した場合の問題点を説明するための図である。図3に示すように、カーボン粒子22を被覆するアイオノマ24は、垂直配向CNT12を被覆するアイオノマ16同様、電解質膜20側から移動してきたプロトンを本図上方、即ち治具18の配置側に運搬する役割を果たす。しかしながら、このアイオノマ24は、カーボン粒子22同士を結合する接着剤としての役割をも果たしている。そのため、本工程によってカーボン粒子22を露出すると、露出したカーボン粒子22がバラバラとなってしまい触媒層構造を維持できない。
【0028】
この点、垂直配向CNT12は、CNTの基端側(治具18配置側)から成長端側(電解質膜10側)まで連続した結晶体構造を有している。そのため、本工程によって垂直配向CNT12の先端を露出させたとしても、触媒層構造を維持できる。以上のことから、本実施形態では、垂直配向CNT12を含むCNT触媒層を用いている。なお、燃料電池の触媒層は電解質膜の両側に設けられるため、電解質膜の片面にCNT触媒層を設け、反対面にカーボン粒子を用いた触媒層を設ける場合が考えられる。その場合、CNT触媒層側にのみ本工程を実施すればよい。
【0029】
(4)GDL接合工程
本工程は、上記(3)の工程後、上記CNT触媒層のCNT基端面にGDLを配置し、上記CNT触媒層とGDLとの間に所定圧力を印加して接合する工程である。上記(3)の工程後のCNT触媒層は、垂直配向CNT12の先端が露出されたものである。そのため、本工程で、CNT触媒層とGDLと接合すれば、垂直配向CNT12の露出先端とGDLとを直接、点接触させることができる。従って、アイオノマで被覆されている場合に比して、CNT触媒層とGDLとの間の電気的抵抗を低下させることができる。
【0030】
(5)セルモジュール化工程および(6)スタック化工程
本工程は、上記(4)の工程後、GDLの側面に、ガス流路が形成されたセパレータを配置してセルモジュール化し、その後、セルモジュールを積層したセル積層体を締結し、スタック化する工程である(ステップ140、150)。本工程は、先ず、MEAとセパレータとを樹脂モールドしてセルモジュール化する。次いで、セルモジュールを積層してセル積層体とし、このセル積層体のセル積層方向の両端に、ターミナル、インシュレータ、エンドプレートを配置し、次いで、セル積層体をセル積層方向に締め付け、セル積層体の外側でセル積層方向に延びるテンションプレート、ボルト・ナットにて固定して燃料電池スタック化する。以上により、燃料電池が製造できる。
【0031】
以上、本実施形態の製造方法によれば、上記(3)の工程において、上記CNT触媒層の温度を、上記アイオノマの熱軟化点よりも低温に保持した状態で、このCNT触媒層の側面に、上記熱軟化点よりも高温、かつ、分解温度よりも低温に予熱した治具18を一時的に接触させて、アイオノマ16を付着除去できる。従って、上記(4)の工程において、垂直配向CNT12の露出先端とGDLとを直接、点接触させることができるので、CNT触媒層とGDLとの間の電気的抵抗を低下させることができる。従って、CNT触媒層とGDLとの間の電子伝導性が良好な燃料電池を得ることが可能となる。
【0032】
ところで、本実施形態においては、上記(3)の工程において、予熱した治具18を上記CNT触媒層に一時的に接触させてアイオノマ16を付着除去したが、アイオノマ16を付着除去は、上記(3)の工程とは異なる工程によっても実現可能である。例えば、上記CNT触媒層の温度と上記治具の温度を逆にしてもよい。具体的には、上記CNT触媒層の全体の温度を上記熱軟化点よりも高温、かつ、分解温度よりも低温に予熱しておき、このCNT触媒層の側面に、アイオノマ16の熱軟化点よりも低い温度に保持した治具を一時的に接触させてもよい。また、例えば、上記CNT触媒層と上記治具の両者を上記熱軟化点よりも高温、かつ、分解温度よりも低温に予熱しておき、これらを一時的に接触させてもよい。また、例えば、CNT触媒層の側面に治具を接触させた後に、治具やCNT触媒層を加熱してもよい。具体的には、CNT触媒層の側面に治具を接触させた後に、上記治具や上記CNT触媒層の温度を上記熱軟化点よりも高温、かつ、分解温度よりも低温に加熱してもよい。つまり、CNT触媒層と治具とを接触させている際に、CNT触媒層が治具に接触する箇所を少なくとも軟化できる他の工程であれば、上記(3)の工程の変形として適用が可能である。
【0033】
また、上記(3)の工程や上述の変形工程は、CNT触媒層と治具とを接触させている際に、CNT触媒層が治具に接触する箇所を少なくとも軟化させて、アイオノマ16を除去するものであるが、CNT基端面にレーザーを照射して、CNT基端面のアイオノマ16を蒸発除去してもよい。また、CNT基端面を、アイオノマが溶解する溶液に触れさせることで、CNT基端面のアイオノマ16を溶解除去してもよい。その他、マスク露光により、CNT基端面のアイオノマ16を分解することでアイオノマ16を除去してもよい。つまり、MEAを作製した後に、CNT基端面のアイオノマ16を選択的に除去できる他の手法であれば、上記(3)の工程の変形として適用が可能である。
【0034】
また、本実施形態においては、電解質膜の表面と、CNTのチューブ長さ方向とのなす角度が90°±10°のCNTを用いたが、電解質膜の表面と、CNTのチューブ長さ方向とのなす角度は、必ずしもこの範囲内に限られない。即ち、上記範囲以上に傾斜したCNTであっても、電解質膜側からGDL側まで連続した結晶体構造を形成できるものであれば、上記(3)の工程において触媒層構造を維持できる。また、上記範囲以上に傾斜したCNTは、露出先端以外でGDLと接触し易くなるものの、この露出先端がGDLと直接、接触できる点では垂直配向CNTと同じである。即ち、一端が電解質膜に、他端がGDLに接続するCNTを用いる限りにおいて、本実施形態と同様の効果が期待できる。
【符号の説明】
【0035】
10,20 電解質膜
12 垂直配向CNT
14 白金触媒
16,24 アイオノマ
18 治具
22 カーボン粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面をアイオノマで被覆した複数の触媒担持カーボンナノチューブの夫々の一端を高分子電解質膜に接合した中間体を準備する中間体準備工程と、
前記中間体の準備後、前記アイオノマのうち、前記触媒担持カーボンナノチューブの夫々の他端の表面を被覆する他端被覆アイオノマを除去するアイオノマ除去工程と、
前記他端被覆アイオノマの除去後、前記夫々の他端をガス拡散層と接合するガス拡散層接合工程と、
を備えることを特徴とする燃料電池の製造方法。
【請求項2】
前記アイオノマ除去工程は、
前記中間体の準備後、前記他端被覆アイオノマと治具とを接触させている際に、少なくとも前記他端被覆アイオノマを溶融状態とするアイオノマ溶融工程と、
前記他端被覆アイオノマと前記治具との接触を解除することで、溶融した前記他端被覆アイオノマを、前記治具に付着させるアイオノマ付着工程と、
を備える工程であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項3】
前記アイオノマ溶融工程は、
前記中間体の準備後、前記中間体を前記アイオノマのガラス転移温度以上分解温度未満に加熱した状態で、前記他端被覆アイオノマと前記治具とを接触させる工程であることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項4】
前記アイオノマ溶融工程は、
前記中間体の準備後、前記治具を前記アイオノマのガラス転移温度以上分解温度未満に加熱した状態で、前記他端被覆アイオノマと前記治具とを接触させる工程であることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項5】
前記アイオノマ溶融工程において、前記他端被覆アイオノマ以外のアイオノマを、前記アイオノマのガラス転移温度未満に保持することを特徴とする請求項4に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項6】
前記触媒担持カーボンナノチューブの夫々が、前記高分子電解質膜の表面に対して垂直に配向していることを特徴とする請求項1乃至5何れか1項に記載の燃料電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−133930(P2012−133930A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283436(P2010−283436)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】